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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06T
管理番号 1284729
審判番号 不服2013-10657  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-06 
確定日 2014-03-10 
事件の表示 特願2007-199896「画像処理装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月19日出願公開、特開2009- 37348、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年7月31日の出願であって、平成24年2月14日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月17日付けで手続補正がなされ、平成24年6月19日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月22日付けで手続補正がなされたが、平成25年3月4日付けで拒絶査定がなされたものであり、これを不服とし、平成25年6月6日に本件審判請求がなされると同時に同日付で手続補正がなされた。その後、平成25年8月6日付けの審尋で平成25年7月1日付けの前置報告書の内容が通知され、平成25年10月8日付けで回答書が提出された。

第2.拒絶の理由
1.原査定
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

この出願の請求項1-16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開2006-139606号公報
刊行物2:特開2004-147165号公報
刊行物3:特開昭63-263577号公報

2.前置報告
平成25年8月6日付けの審尋で通知された平成25年7月1日付けの前置報告書の内容において、次の文献が追加引用されている。

刊行物A:特開2002-152587号公報

第3.平成25年6月6日付け手続補正について
1.補正の内容
この補正により補正された請求項1-14の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
第1のメモリに保持されている画像データを処理する画像処理方法であって、
前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を前記第1のメモリから読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行う読出工程と、
前記読出処理に応じて、前記第2の方向に連続する予め定められた数の画素群の画素データをシフトレジスタに保持する保持工程と、
前記読出処理毎に、前記シフトレジスタから消去される画素データのうちの後に利用され、前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データで、第2のメモリに保持されている不要になった画素データを置換することにより前記第2のメモリの内容を更新する更新工程と、
前記シフトレジスタと前記第2のメモリに保持されている画素データを用いて、前記読出処理毎に、新たに読み込まれた画素群を含む予め定められたサイズの領域の画素データを画像処理部に提供する提供工程とを備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記第1の方向にfw画素、前記第2の方向にfh画素のサイズの処理対象画素群を処理し、
前記提供工程では、前記読出処理毎に、前記第1の方向に{(fw-1)+N}個、前記第2の方向にfh個の画素からなる領域の画素データから処理対象画素群を選択して前記画像処理部に提供することを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記提供工程では、前記領域からN個の処理対象画素群を順次に選択して、前記画像処理部に提供することを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記提供工程では、前記領域から取得されるN個の処理対象画素群を同時に取得し、N個の画像処理部へ同時に提供することを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記画像が、画像データを複数のバンド領域に分割して得られた画像であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記画像の前記第1の方向の画素数が、前記画像の前記第2の方向の画素数よりも多いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項7】
第1のメモリに保持されている画像データを処理する画像処理装置であって、
前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を前記第1のメモリから読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行う読出手段と、
前記読出処理に応じて、前記第2の方向に連続する予め定められた数の画素群の画素データを保持するシフトレジスタと、
前記読出処理毎に、前記シフトレジスタから消去される画素データのうちの後に利用され、前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データで、第2のメモリに保持されている不要になった画素データを置換することにより前記第2のメモリの内容を更新する更新手段と、
前記シフトレジスタと前記第2のメモリに保持されている画素データを用いて、前記読出処理毎に、新たに読み込まれた画素群を含む予め定められたサイズの領域の画素データを画像処理部に提供する提供手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記第1の方向にfw画素、前記第2の方向にfh画素のサイズの処理対象画素群を処理し、
前記提供手段は、前記読出処理毎に、前記第1の方向に{(fw-1)+N}個、前記第2の方向にfh個の画素からなる領域の画素データから処理対象画素群を選択して前記画像処理部に提供することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記提供手段は、前記領域からN個の処理対象画素群を順次に選択して、前記画像処理部に提供することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記提供手段は、前記領域から取得されるN個の処理対象画素群を同時に取得し、N個の画像処理部へ同時に提供することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記画像が、画像データを複数のバンド領域に分割して得られた画像であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記画像の前記第1の方向の画素数が、前記画像の前記第2の方向の画素数よりも多いことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
第1のメモリに保持されている画像データについて、前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行うことにより、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを複数のレジスタに転送する第1読出し工程と、
前記画像データの第2の領域に含まれる画素データを第2のメモリから読み出す第2読出し工程と、
前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データとについて、異なるN個の組合せの各々について画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程と、
前記第2のメモリに保持している画素データを、前記複数のレジスタに保持している画素データのうち後に前記画像処理部で利用する前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データによって置換する置換工程とを備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
画像データを保持する第1のメモリと、
前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行うことにより、前記画像データの第1の領域に含まれる画素データを前記第1のメモリから複数のレジスタに転送する第1読出し手段と、
前記画像データの第2の領域に含まれる画素データを第2のメモリから読み出す第2読出し手段と、
前記第1読出し手段により読み出した画素データと前記第2読出し手段により読み出した画素データについて、異なるN個(Nは2以上の整数)の組合せの各々について画像処理をおこなう画像処理手段と、
前記第2のメモリに保持している画素データを、前記複数のレジスタに保持している画素データのうち後に前記画像処理手段で利用する前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データによって置換する置換手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。」

2.補正の適否
(1)新規事項及びシフト補正
本件の補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものである。また、補正前後の発明は、単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものである。
(2)補正の目的
ア.請求項の削除
補正前の請求項14、16は、補正により削除されたので、この補正は請求項の削除を目的とするものである。なお、この補正に伴い、補正前の請求項15は、請求項14に番号が繰り上げられた。
イ.限定的減縮
補正後の請求項1(及び請求項1を引用する請求項2-12)は、補正前の請求項1(及び請求項1を引用する請求項2-12)の「後に利用されるM画素」を、「後に利用され、前記第1の方向に連続するM画素」と限定したものであるから、この補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
補正後の請求項13は、補正前の請求項13の「第1のメモリに保持されている画像データについて、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを前記第1のメモリから読み出して複数のレジスタに転送する第1読出し工程」、及び、「M画素」を「第1のメモリに保持されている画像データについて、前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行うことにより、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを複数のレジスタに転送する第1読出し工程」、及び、「前記第1の方向に連続するM画素」と限定したものであるから、この補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
補正後の請求項14は、補正前の請求項15の「前記画像データの第1の領域に含まれる画素データを前記第1のメモリから読み出して複数のレジスタに転送する第1読出し手段」、及び、「M画素」を、「前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行うことにより、前記画像データの第1の領域に含まれる画素データを前記第1のメモリから複数のレジスタに転送する第1読出し手段」、及び、「前記第1の方向に連続するM画素」と限定したものであるから、この補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ.明りようでない記載の釈明
補正後の請求項13は、補正前の請求項13の「前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データとについて、異なるN個(Nは2以上の整数)の組合せの各々を画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程」を、「前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データとについて、異なるN個の組合せの各々について画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程」と補正したものであり、補正前の「各々を・・画像処理をおこなう」という「を」が重なって記載が明りようでない点を明りようにするものであるから、この補正は明りようでない記載の釈明を目的とするものである。

(3)独立特許要件
補正後の請求項1-14に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、これらの請求項に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

ア.本件補正発明
上記補正後の請求項1-14に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるとおりものであるところ、その請求項13に係る発明(以下、「本件補正発明」という)は、請求項13に記載された次のとおりのものである。

[本件補正発明]
「第1のメモリに保持されている画像データについて、前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行うことにより、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを複数のレジスタに転送する第1読出し工程と、
前記画像データの第2の領域に含まれる画素データを第2のメモリから読み出す第2読出し工程と、
前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データとについて、異なるN個の組合せの各々について画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程と、
前記第2のメモリに保持している画素データを、前記複数のレジスタに保持している画素データのうち後に前記画像処理部で利用する前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データによって置換する置換工程とを備えることを特徴とする画像処理方法。」

イ.刊行物
(ア)刊行物1
a.刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-139606号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面(特に、図4-6)とともに次の事項が記載されている。

(a)「【0028】
図4は、本実施形態の画像処理方法の一例を説明する図である。
図4(a)において、太枠で示している400は、デジタル画像データを示す。本実施形態では、バンド処理に特化した画像処理を行なうことで、前述した第1の従来技術よりも遅延メモリの省容量化を実現しつつ、前述した第2の従来技術よりもデータ・ハンドリングの効率化を実現できるようにすることを目的としている。このような目的を達成するために、本実施形態では、デジタル画像データの座標系(主走査方向-副走査方向)とは異なるバンド領域座標系で画像処理を行なう。
【0029】
まず、バンド領域の左上端の画素からバンド領域の高さ方向に沿って(デジタル画像データの副走査方向に画素が進むため、前述した第1の従来技術とは画素の走査方向が直行する)、一画素ずつ画像処理が実行される。バンド領域の下端の画素まで到達した時点で長さ方向に1画素だけ画像処理する画素を進め(デジタル画像データの主走査方向に画素が進むため、前述した第1の従来技術とは画素の走査方向が直行する)、再度バンド領域の上端の画素からバンド領域の高さ方向に沿って一画素ずつ下端まで画像処理が実行される。この一連の画像処理をバンド領域の右下端の画素まで実行し、1つのバンド処理が終了する。
【0030】
図4(a)に示す空間フィルタ領域410内の9つの画素は、図6(a)に示す画素a?iである。図4(a)は、画素iが、図5に示す画像処理装置(空間フィルタ回路230)に入力されて、空間フィルタ領域410内の9つの画素a?iがすべて画像処理装置内に揃った状態を示している。図5に示す画像処理装置(空間フィルタ回路230)では、図6(b)に示すような入力画素iの画素値が積和演算器565に代入される。また、図6(c)に示すような加重マトリクスを記憶するための、加重マトリクスレジスタ560から9つの加重値が積和演算器565に代入される。
【0031】
また、遅延レジスタ572によって遅延された画素cと画素fの画素値が夫々、積和演算器565に代入される。また画素a、b、d、e、g、hの画素値は遅延メモリ575に記憶されており、遅延回路570によって遅延メモリ575から取り出され、積和演算器565に代入される。積和演算器565は、加重マトリクスレジスタ560から9つの加重値と画素a?iの画素値とを用いて所定の演算を行ない、処理画素のフィルタ演算結果590を出力する。この出力した値が、図4(a)に示す処理画素eの画像処理結果となる。
【0032】
最後に、図5に示す画像処理装置(空間フィルタ回路230)は、遅延回路570を介して遅延メモリ575の画素aの画素値に画素cの画素値を上書きし、画素aの画素値を消去すると共に画素cの画素値を記憶する。このような遅延回路570のリング式FIFO(First-In First-Out)と同一の動作により、図4(a)に示す遅延メモリ575に記憶される画素領域450は、常に2ライン(空間フィルタ領域410の高さ3より1だけ小さいライン数)となる。処理画素が進むにつれ、入力画素iの走査方向440(バンド領域の高さ方向)とは垂直な方向(バンド領域の長さ方向)に、遅延メモリ575に記憶される画素領域450は遷移していくことになる。なお、図4(a)では、この遅延メモリ575に記憶される画素領域450が遷移する方向を、遅延メモリ走査方向455として図示している。このとき遅延メモリ575は、以下の(1式)に示すように、バンド領域の高さに依存した一定の容量となる。
【0033】
遅延メモリ容量Dbuf=Bdh×(fw-1)×pix ・・・(1式)
ここで、Bdhは、バンド領域の高さである。fwは、空間フィルタ領域410の幅である。pixは、1画素あたりのデータ量である。」

b.刊行物1発明
(a)「画像処理方法」
刊行物1の【0028】-【0033】には、画像処理方法の一例が記載されている。

(b)「バンドメモリに格納されたバンド領域の画像データについて、画素iがバンド領域の高さ方向を走査方向として画像処理装置に入力され、複数の遅延レジスタによって遅延され、」
刊行物1に記載された上記画像処理方法は、バンドメモリに格納されるバンド領域の画像データについて処理する方法(【図4】)であって、「画素iが、図5に示す画像処理装置(空間フィルタ回路230)に入力され」(【0030】)、入力画素iの走査方向は、「バンド領域の高さ方向」(【0032】)であり、また、入力された入力画素iは、複数ある「遅延レジスタ572によって遅延され」る(【図5】、【0031】)。
したがって、刊行物1に記載された画像処理方法は、「バンドメモリに格納されたバンド領域の画像データについて、画素iがバンド領域の高さ方向を走査方向として画像処理装置に入力され、複数の遅延レジスタによって遅延され、」るものである。

(c)「入力画素iと、遅延レジスタによって遅延された画素c、fと、遅延メモリに記憶されている画素a、b、d、e、g、hとが積和演算器に代入され、積和演算器は9つの加重値と画素a?iの画素値とを用いて演算を行いフィルタ演算結果を出力し、」
刊行物1に記載された上記画像処理方法では、「入力画素iの画素値が積和演算器565に代入され」(【0030】)、「遅延レジスタ572によって遅延された画素cと画素fの画素値が夫々、積和演算器565に代入される。また画素a、b、d、e、g、hの画素値は遅延メモリ575に記憶されており、遅延回路570によって遅延メモリ575から取り出され、積和演算器565に代入される。積和演算器565は、加重マトリクスレジスタ560から9つの加重値と画素a?iの画素値とを用いて所定の演算を行ない、処理画素のフィルタ演算結果590を出力する。」(【0031】)
したがって、刊行物1に記載された画像処理方法は、「入力画素iと、遅延レジスタによって遅延された画素c、fと、遅延メモリに記憶されている画素a、b、d、e、g、hとが積和演算器に代入され、積和演算器は9つの加重値と画素a?iの画素値とを用いて演算を行いフィルタ演算結果を出力」するものである。

(d)「最後に、遅延メモリの画素aの画素値に画素cの画素値を上書きし、画素aの画素値を消去するとともに画素cの画素値を記憶する、」
刊行物1に記載された上記画像処理方法では、「最後に、図5に示す画像処理装置(空間フィルタ回路230)は、遅延回路570を介して遅延メモリ575の画素aの画素値に画素cの画素値を上書きし、画素aの画素値を消去すると共に画素cの画素値を記憶する。」(【0032】)
したがって、刊行物1に記載された画像処理方法は、「最後に、遅延メモリの画素aの画素値に画素cの画素値を上書きし、画素aの画素値を消去するとともに画素cの画素値を記憶する、」ものである。

以上をまとめると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
バンドメモリに格納されたバンド領域の画像データについて、画素iがバンド領域の高さ方向を走査方向として画像処理装置に入力され、複数の遅延レジスタによって遅延され、
入力画素iと、遅延レジスタによって遅延された画素c、fと、遅延メモリに記憶されている画素a、b、d、e、g、hとが積和演算器に代入され、積和演算器は9つの加重値と画素a?iの画素値とを用いて演算を行いフィルタ演算結果を出力し、
最後に、遅延メモリの画素aの画素値に画素cの画素値を上書きし、画素aの画素値を消去するとともに画素cの画素値を記憶する、
画像処理方法。

(イ)刊行物2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-147165号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0030】図27は、QCIF画像の第Nのラインの画素データに対する従来のフィルタ処理の説明図である。
【0031】図28は、QCIF画像の第N+1のラインの画素データに対する従来のフィルタ処理の説明図である。
【0032】図27に示すように、データ読み出し部505は、1回目のフィルタ処理を実行すべく、3画素×3画素の画像データ600を読み出す。
【0033】そして、フィルタ処理部506は、画素データ(N,2)に対して、周辺の画素データ(N-1,1)、(N,1)、(N+1,1)、(N-1,2)、(N+1,2)、(N-1,3)、(N,3)、(N+1,3)を用いて、フィルタ処理を実行する。
【0034】そして、データ書き込み部507は、フィルタ処理後の画素データ(FN,2)をラインバッファ504に書き込む。
【0035】次に、データ読み出し部505は、2回目のフィルタ処理を実行すべく、3画素×3画素の画像データ601を読み出す。
【0036】そして、フィルタ処理部506は、画素データ(N,3)に対して、周辺の画素データ(N-1,2)、(N,2)、(N+1,2)、(N-1,3)、(N+1,3)、(N-1,4)、(N,4)、(N+1,4)を用いて、フィルタ処理を実行する。
【0037】そして、データ書き込み部507は、フィルタ処理後の画素データ(FN,3)をラインバッファ504に書き込む。
【0038】以上のような処理を174回行って、ラインバッファ504に、第Nのラインの画素データ(N,1)、(FN,2)、…、(FN,175)、(N,176)が格納される。
【0039】第Nのラインのフィルタ処理が終了したら、次に、図27に示すように、N+1のラインの画素データに対してフィルタ処理を実行する。
【0040】そして、新たに、第N+2のラインが、第Nのラインの代わりに追加される。このように、順番にフィルタ処理対象のラインを変更して処理を繰り返す。」

「【0089】また、図2の例では、図1のソースメモリ10は、最大で、3画素×6画素の画像データを格納可能な記憶容量を有しているとする。
【0090】また、フィルタ処理の単位は、3画素×3画素の画像データとし、3画素×3画素の中心に位置する画素に対応する画素データが、フィルタ対象画素データである。
【0091】さて、図2に示すように、最初に、3ライン×176画素の画像データ100を分割した3画素×5画素の画像データ101が、図1の画像メモリ2からソースメモリ10へ転送される。
【0092】そして、ソースメモリ10から、フィルタ処理回路3へ、画像データ101が、画素データ単位で順次与えられる。
【0093】フィルタ処理回路3は、与えられた3画素×3画素の画素データを用いて、1個のフィルタ対象画素データに対して、フィルタ処理を施す。
【0094】このようにして、画像データ101に含まれる3個全てのフィルタ対象画素データに対して、フィルタ処理を実行する。
【0095】さて、次に、3ライン×176画素の画像データ100を分割した3画素×6画素の画像データ102が、画像メモリ2からソースメモリ10へ転送される。
【0096】そして、ソースメモリ10から、フィルタ処理回路3へ、画像データ102が、画素データ単位で順次与えられる。
【0097】フィルタ処理回路3は、与えられた3画素×3画素の画素データを用いて、1個のフィルタ対象画素データに対して、フィルタ処理を施す。
【0098】このようにして、画像データ102に含まれる4個全てのフィルタ対象画素データに対して、フィルタ処理を実行する。
【0099】以上のような処理を繰り返して、3ライン×176画素の画像データ100に含まれる全てのフィルタ対象画素データに対して、フィルタ処理が施される。
【0100】その結果、フィルタ処理後の1ラインの画像データ105を得ることができる。」

(ウ)刊行物3
原査定の拒絶の理由で引用された特開昭63-263577号公報(以下、「刊行物3」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「第5A図の第1実施例によれば、画像メモリ10内の連続した3つの画素(n、n+1.n+2)は、とのPEに送られても構わない。即ち、並列処理の効率を上げるために、画素の情報は、アドレスと画像データのペアで、画像メモリ1゜からいずれかの空いているPEに送られ、そのPEで高速に画像処理され、その画像処理後、処理後の画像データと処理後のアドレスとがペアでR/Wコントローラ11に返送される。R/Wコントローラ11はこの返送された画像データを、同じく返送されたアドレスに従って格納する。
かくして、マスキング処理、γ変換処理、二値化処理等に代表される画像処理、即ち画像処理対象の画素は1つであり、そのためには当該1つの対象となる画素に関する情報のみが必要となるような画像処理を、第5A図に示した第1実施例で行なえば、全体の画像処理の効率は全<PEの個数に依存するものとなり、しかも、画像データとメモリアドレスとをペアで転送するために、処理後の画像としての全体性は失われない。
第5B図の第2実施例によれば、1つのPEでなされる画像処理の単位は複数個の画素を含むので、この一単位を、即ちこの単位の複数個の画素の情報をまとめて、PEに転送するようにする。
同じ単位内の画素は同-PEに転送されるのであれば、処理単位は第5B図に示したように任意のPEに転送することが可能となり、全体の画像処理の並列性が高まり、効率が向上する。」(第5頁右上欄第10行-右下欄第5行)

(エ)刊行物A
前置報告書で引用された特開2002-152587号公報(以下、「刊行物A」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0059】また、図9は、デジタルカメラ1における画像処理を説明するための図である。図9(a)は、画像データのメモリ領域Mi(図6)を表現した画素マトリクスHiを示している。このマトリクスHiについては、CCD303の画素行列に対応してm行n列となっている。図9(a)において、列方向がX方向、行方向がY方向を示している。図9(b)は、上記のバッファエリアMb(図6)を表現した画素マトリクスHbを示している。
【0060】この画像処理として、次の数1に示すする3行3列の平滑化の空間フィルタFiを用いた処理を例に挙げて説明する。
【0061】
【数1】
【0062】空間フィルタFiにおいては、数1に示す行列の中心(2行2列目)が画像処理で着目される注目画素に相当することとなる。この空間フィルタFiについては、マトリクスHbに内包されるとともに、マトリクスHbのY方向の幅に応じた正方行列となっている。
【0063】ステップS1では、マトリクスHiをX方向(列方向)に2つのマトリクスH1(平行斜線で図示)、H2に等分割指定する。具体的には、等分割されるメモリアドレスを指定する。ここで、マトリクスH1、H2のX方向の画素数は、(n/2+1)となっている。このように、厳密に2等分されずに境界部分に1画素分のマージンを見込んでいるのは、中心線Cx近傍の画素に関してステップS2での画像処理により不連続とならないようにするためである。
【0064】ステップS2では、マトリクスH1に関して空間フィルタFiを方向D1(X方向)に1画素づつ移動させながら画像処理を行う。この画像処理においては、例えばマトリクスH1における注目画素Fcの画素行直上の画素行および直下の画素行とをマトリクスHbに格納して順次画像処理を行い、その処理結果をマトリクスH1における注目画素Fcに戻す。これにより、空間フィルタFiによるフィルタ処理が適切に行えることとなる。
【0065】ここで、空間フィルタFiの右端がマトリクスH1の右端に到達した場合には、方向D2に示すようにY方向に1画素分移動させるとともに、空間フィルタFiの左端をマトリクスH1の左端に移動させる。この際、マトリクスHbには、マトリクスHiにおける1行下に移動した注目画素の直上の行および直下の行のデータが更新して格納される。そして、上記と同様に、空間フィルタFiを方向D3(X方向)に1画素づつ移動させながら画像処理を行う。このように、行方向に細分割してラスタ走査しつつ画像処理を行うことにより、確実に画像処理が行えるとともに画像処理の高速化が図れることとなる。
【0066】この画像処理で利用されるバッファエリアHbのX方向の長さは、分割された領域となるマトリクスH1のX方向の分割長さと等しくなっている。
【0067】ステップS3では、マトリクスH1についての画像処理が完了したか、すなわち、空間フィルタFiの端が最下行右端Eに到達したかを判定する。ここで、画像処理が完了した場合には、ステップS4に進み、完了していない場合には、ステップS2に戻る。
【0068】ステップS4では、ステップS2の動作と同様に、マトリクスH2に関して空間フィルタFiをラスタ走査しつつ画像処理を行う。
【0069】ステップS5では、ステップS3と同様に、マトリクスH2について画像処理が完了したかを判定する。ここで、画像処理が完了していない場合には、ステップS4に戻る。
【0070】以上のデジタルカメラ1の動作により、バッファエリアのサイズが、図11(b)に示すメモリ領域Hgに対して約1/2で足り、DRAM209のうちバッファエリアが占めるメモリ領域を低減できるため、メモリの有効活用が図れることとなる。」

ウ.本件補正発明と刊行物1発明との対比
(ア)「画像処理方法」
本件補正発明も刊行物1発明も「画像処理方法」である点で一致する。

(イ)「第1のメモリに保持されている画像データについて、前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行うことにより、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを複数のレジスタに転送する第1読出し工程」
刊行物1発明では、バンドメモリ(「第1のメモリ」といえる)に格納された画像データについて、画素iが画像処理装置に入力され、複数の遅延レジスタによって遅延される。バンドメモリに格納された画素iを画像処理装置に入力することは、バンドメモリから画素を読み出す読出処理といえ、それは高さ方向を走査方向として行うものであるから、順次に行うものといえる。また、読み出された結果、画素iは、複数の遅延レジスタによって遅延される、すなわち、複数の遅延レジスタに転送される。複数の遅延レジスタに転送され該複数のレジスタに保持されている複数の画素からなる、バンドメモリに格納された画像データの領域を「第1の領域」とし、以上の、画素iを読み出してレジスタに転送する処理を「第1読出し工程」とすると、刊行物1発明は、「第1のメモリに保持されている画像データについて、画素を読み出す読出処理を、順次に行うことにより、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを複数のレジスタに転送する第1読出し工程」を備えるといえる。
したがって、本件補正発明と刊行物1発明とは、「第1のメモリに保持されている画像データについて、画素を読み出す読出処理を、順次に行うことにより、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを複数のレジスタに転送する第1読出し工程」を備える点で共通するといえる。
しかしながら、第1読出し工程において、本件補正発明では、「前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行う」のに対し、刊行物1発明では、1画素を読み出す処理を順次に行う点で両者は相違する(仮に、相違点1とする)。

(ウ)「前記画像データの第2の領域に含まれる画素データを第2のメモリから読み出す第2読出し工程」
刊行物1発明では、遅延メモリに記憶されている画素a、b、d、e、g、hとが積和演算器に代入される。すなわち、画素a、b、d、e、g、hは、遅延メモリから読み出されたものであり、遅延メモリを「第2のメモリ」、画素a、b、d、e、g、hからなる、バンドメモリに格納された画像データの領域を「第2の領域」とし、遅延メモリから読み出す処理を「第2読出し工程」とすると、刊行物1発明は、「前記画像データの第2の領域に含まれる画素データを第2のメモリから読み出す第2読出し工程」を備えるといえる。
したがって、本件補正発明と刊行物1発明とは、「前記画像データの第2の領域に含まれる画素データを第2のメモリから読み出す第2読出し工程」を備える点で一致するといえる。

(エ)「前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データとについて、異なるN個の組合せの各々について画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程」
刊行物1発明は、入力画素iと、遅延レジスタによって遅延された画素c、fと、遅延メモリに記憶されている画素a、b、d、e、g、hとが積和演算器に代入され、積和演算器は9つの加重値と画素a?iの画素値とを用いて演算を行いフィルタ演算結果を出力する。
積和演算器によるフィルタ演算は、「画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程」といえるものであり、その画像処理は9つの画素値の「組合せについて」行うものである。該画像処理の対象となる画素データは、入力画素iと、遅延レジスタによって遅延された画素c、fと、遅延メモリに記憶されている画素a、b、d、e、g、hであるから、「前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データ」といえる。
したがって、本件補正発明と刊行物1発明とは、「前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データとについて、組合せについて画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程」を備える点で共通するといえる。
しかしながら、画像処理工程において、本件補正発明では、「異なるN個の組合せの各々」について画像処理をおこなうのに対し、刊行物1発明では、1つの組合せについておこなう点で両者は相違する(仮に、相違点2とする)。

(オ)「前記第2のメモリに保持している画素データを、前記複数のレジスタに保持している画素データのうち後に前記画像処理部で利用する前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データによって置換する置換工程」
刊行物1発明は、遅延メモリ(前記第2のメモリ)の画素aの画素値に画素cの画素値を上書きし、画素aの画素値を消去するとともに画素cの画素値を記憶する、すなわち、遅延メモリの画素aの画素値を、複数の遅延レジスタによって遅延された画素cの画素値によって置換するものである。
刊行物1におけるフィルタ演算は、【図4】、【0029】によると、高さ方向に一行分終了すると、長さ方向に1画素ずつ移動していくものであるから、画素aは、積和演算器によるフィルタ演算が1画素終わると、その後は必要がないデータであり、画素cは、後のフィルタ演算で必要となるデータである。
よって、刊行物1発明は、「前記第2のメモリに保持している画素データを、前記複数のレジスタに保持している画素データのうち後に前記画像処理部で利用する画素の画素データによって置換する置換工程」を備えるといえる。
したがって、本件補正発明と刊行物1発明とは、「前記第2のメモリに保持している画素データを、前記複数のレジスタに保持している画素データのうち後に前記画像処理部で利用する画素の画素データによって置換する置換工程」を備える点で共通するといえる。
しかしながら、置換行程において、本件補正発明では、「前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データ」によって置換するのに対し、刊行物1発明では、1つの画素データによって置換する点で両者は相違する(仮に、相違点3とする)。

エ.一致点、相違点
上記ウ.で、仮に、相違点1?3とした各点は、互いに関連したものである。
つまり、相違点1に係る本件補正発明の「前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行う」ことにおける読出処理は、相違点2に係る本願補正発明の「異なるN個の組合せの各々について」の画像処理に必要な画素を読み出すための読出処理であり、該画像処理を行った結果、必要のなくなった画素データを後に利用する画素データで置換するのが、相違点3に係る本願補正発明の「前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データ」によって置換する置換行程である。
したがって、これらの相違点1?3は、「異なるN個の組合せの各々について」の画像処理に関連した1つの相違点として捉えられるものである。

以上をまとめると、本件補正発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
第1のメモリに保持されている画像データについて、画素を読み出す読出処理を、順次に行うことにより、当該画像データの第1の領域に含まれる画素データを複数のレジスタに転送する第1読出し工程と、
前記画像データの第2の領域に含まれる画素データを第2のメモリから読み出す第2読出し工程と、
前記第1読出し工程で読み出した画素データと前記第2読出し工程で読み出した画素データとについて、組合せについて画像処理部によって画像処理をおこなう画像処理工程と、
前記第2のメモリに保持している画素データを、前記複数のレジスタに保持している画素データのうち後に前記画像処理部で利用する画素の画素データによって置換する置換工程とを備えることを特徴とする画像処理方法。

[相違点]
第1読出し工程、画像処理工程、置換行程は、本件補正発明では、「前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行」い、「異なるN個の組合せの各々」について画像処理をおこない、「前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データ」によって置換するものであるのに対し、刊行物1発明では、1画素を読み出す処理を順次に行い、1つの組合せについて画像処理をおこない、1つの画素データによって置換するものである点。

オ.当審の判断
相違点について考察する。
この相違点の中心となる要点は、第2の方向に順次行う画像処理が、本件補正発明は、第1の方向でのN個(Nは2以上の整数)の画像処理であるのに対し、刊行物1発明は、1個の画像処理である点に集約される。
刊行物1には、第2の方向(刊行物1では、図4(a)の高さ方向)に順次行う画像処理を、第1の方向(刊行物1では、図4(a)の長さ方向)でのN個の画像処理とすることについて、その動機付けとなるような技術事項は存在しない。
刊行物2には、第Nラインのフィルタ処理をラインの方向に実行して終了したら、第N+1ラインに対してフィルタ処理を実行し、順番にフィルタ処理の対象のラインを変更して処理を繰り返すことは記載されている。
しかしながら、刊行物2におけるライン方向は、フィルタにより順次フィルタ処理が実行される方向であって、刊行物1発明における「高さ方向」(刊行物1の図4(a)の高さ方向)に対応付けられるものであるから、刊行物1と刊行物2は、画素に対する画像処理を行う順序が同じものであって、刊行物1発明に刊行物2に記載された技術を組み合わせても、本件補正発明の、第1の方向でのN個の画像処理を第2の方向に順次行う構成には至らない。
また、刊行物3は、請求項4、10に対して引用された並列処理に関する技術が記載されたものであり、刊行物3にも、刊行物1発明に組み合わせて、本願補正発明の、第1の方向でのN個の画像処理を第2の方向に順次行う構成には至る動機付けとなるような技術事項は存在しない。
刊行物A(【0064】、【0065】、【図9】)には、マトリクスH1に関して空間フィルタFiを方向D1(X方向)に1画素づつ移動させながら画像処理を行い、空間フィルタFiの右端がマトリクスH1の右端に到達した場合には、方向D2に示すようにY方向に1画素分移動させるとともに、空間フィルタFiの左端をマトリクスH1の左端に移動させ、同様に、空間フィルタFiを方向D3(X方向)に1画素づつ移動させながら画像処理を行うことは記載されている。
しかしながら、刊行物AにおけるX方向は、フィルタにより1画素づつ順次画像処理が実行される方向であって、刊行物1発明における「高さ方向」(刊行物1の図4(a)の高さ方向)に対応付けられるものであるから、刊行物1と刊行物Aは、画素に対する画像処理を行う順序が同じものであって、刊行物1発明に刊行物Aに記載された技術を組み合わせても、本件補正発明の、第1の方向でのN個の画像処理を第2の方向に順次行う構成には至らない。
結局、刊行物1発明に、刊行物2、3、Aに記載された技術を組み合わせても、本件補正発明の、「第1読出し工程」、「画像処理工程」、「置換行程」は、「前記画像データが表す画像の第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群を読み出す読出処理を、前記第1の方向と直交する第2の方向へ順次に行」い、「異なるN個の組合せの各々」について画像処理をおこない、「前記第1の方向に連続するM画素(MはNより小さい整数)の画素データ」によって置換するものであるという構成には至らない。

以上のとおりであるから、本件補正発明(請求項13に係る発明)は、刊行物1発明、及び刊行物2、3、Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
請求項1-12に係る発明は、上述した本件補正発明(請求項13に係る発明)と刊行物1発明との相違点と同様の「第1の方向に連続するN画素(Nは2以上の整数)からなる画素群」に対する画像処理を「第2の方向へ順次行う」構成を含むから、刊行物1発明及び刊行物2、3、Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
請求項14に係る発明は、請求項13に係る発明のカテゴリーを単に変えて記載したものであるから、本件補正発明(請求項13に係る発明)と同様に、刊行物1発明及び刊行物2、3、Aに記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に、補正後の請求項1-14に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
よって、補正後の請求項1-14に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。

3.まとめ
よって、平成25年6月6日付け手続補正は、特許法第17条の2第3項、第4項、第5項、及び、第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たす適法なものである。

第4.本願発明について
平成25年6月6日付け手続補正は上述のとおり適法なものであるから、本願の請求項1-14に係る発明は、同手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によっては本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-25 
出願番号 特願2007-199896(P2007-199896)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06T)
P 1 8・ 575- WY (G06T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐田 宏史松尾 淳一  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 千葉 輝久
小池 正彦
発明の名称 画像処理装置及び方法  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 永川 行光  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
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