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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1284734
審判番号 不服2013-4409  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-06 
確定日 2014-03-05 
事件の表示 特願2008-549484「動的自動減衰デバイスアーキテクチャ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月19日国際公開、WO2007/081488、平成21年 6月11日国内公表、特表2009-522689、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年12月14日(優先権主張2006年1月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。
そして、当審において、平成25年6月5日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成25年8月12日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は平成25年11月8日付けで回答書を提出した。

第2 平成25年3月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
それぞれが使用中であるかどうかについての状態指標を伝えるように構成された1つ以の電力管理可能なグループと、電力管理ユニットとを備える装置であって、
前記電力管理ユニットは、
到着する命令を受け取り、
前記1つ以上の電力管理可能なグループから前記状態指標を受け取り、
それぞれが前記1つ以上の電力管理可能なグループの少なくとも1つのパワーグループに対応する複数のカウントを保持し、
受信クロック信号の各サイクルで前記複数のカウントのそれぞれのうち前記命令が検出されなかった現在使用中ではないパワーグループに対応する所定のカウントを更新し、
前記複数のカウントのうち前記命令が検出されたパワーグループに対応する特定のカウントを所定値にリセットし、
第1のパワーグループに対応するカウントが閾値に達していないことを検出することに応じて、前記第1のパワーグループが低電力状態に移行するのを阻止する指標を伝えるように構成され、
前記阻止する指標がなければ前記第1のパワーグループが低電力状態に自動的に移行し、
前記命令は、どのパワーグループが前記命令の実行のために必要とされるかを識別するパワーコードに関連しており、前記パワーコードはマッピング方法を用いて対応する命令に関連付けられる、装置。」
と補正するものである。

2.補正の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「到着する命令」について「前記命令は、どのパワーグループが前記命令の実行のために必要とされるかを識別するパワーコードに関連しており、前記パワーコードはマッピング方法を用いて対応する命令に関連付けられる」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用した特開2004-334872号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
ユニット電力調整機構を備えた集積回路装置(IC)であって、
複数の機能ユニットであって、前記複数の機能ユニットのうちのいくつかが供給線を備えている、複数の機能ユニットと、
前記複数の機能ユニットの各々について次に予期されるオペレーションを判断し、判断した前記次に予期されるオペレーションの各々についてターンオン時間およびターンオフ時間を予測する予測ユニットと、
前記供給線の各々に設けられた供給電圧選択回路であって、前記供給電圧選択回路の各々は予測されたターンオン時間に応答して対応する前記供給線へ供給電圧を選択的に通過させ、予測されたターンオフ時間に応答して前記対応する供給線への前記供給電圧を選択的に阻止する、供給電圧選択回路と
を備えた
集積回路装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

(イ)「【0030】
また、後述するように、ユニット・レベル・アクティビティ予測論理130は所定の作業負荷実行の間にプロセッサ100のサブユニットへの供給電圧(Vdd)を時宜に適った形で選択的に有効にしたり無効にしたりする。ユニット・レベル・アクティビティ予測論理130は入力132における現在サイクルのマシン状態ベクトルを用い、目標ユニットに対して「ウエイクアップ」、および「スリープ」または「パワーダウン」要求信号134を時宜に適った形で生成する。」(段落【0030】)

(ウ)「【0032】
図2は好適なユニット・レベル・アクティビティ予測論理130のブロック図である。ユニット・レベル・アクティビティ予測論理130は先を見越しており、アクティブ/休眠ユニット状態への遷移を予測して要求する。現在サイクルのマシン・アクティビティ状態ベクトルを入力132においてユニット利用率ベクトル(UV)フィールドに供給する。ユニット利用率ベクトル(UV)フィールドには組み合わせUV/IFARレジスタ136内で命令フェッチ・アドレス・レジスタ(IFAR)が連結されている。UV/IFAR136は利用率履歴テーブル(UHT)140と呼ばれる予測テーブル・ユニットにテーブル・インデックス138を供給するとともに、ユニット利用率ベクトル142を出力する。UHT140は長期予測144(すなわち数百プロセッサ・サイクル)を供給する。UHT140のルックアップ・エントリ(UHT-1?UHT-n)は予測して管理し供給ゲーティングしている目標ユニットを特定している(nは管理している目標ユニットの個数である)。この例では説明を簡潔にするために、j番目のエントリ・フィールド(UHT-j)のみが示されている。IDU114は短期(最長数十サイクル)の先行予測を即パワーアップ要求ベクトル148としてゲーティング要求管理ユニット(GRCU)150に供給している。各即パワーアップ要求ベクトル148はmビットの2進ストリングであり、m個の下流受信実行ユニットのうち次の数サイクル内にオンさせるものを特定している(mは一般に供給ゲーティング可能なユニットの合計個数n以下の正整数である)。GRCU150はUHT140から使用率予測144(すなわち全n個のゲーティング可能なユニットに対するCDP値とADP値)も受け取り、UV/IFARレジスタ136からUVフィールド・エントリ142を受け取る。GRCU150は「ウエイクアップ」(つまりパワーアップ)および「スリープ」(つまりパワーダウン)、すなわちアクティブ/休眠要求信号134を目標ユニットに対して生成する。長期使用率予測/使用率信号144および短期使用率予測/使用率信号148に加え一般に、GRCU150は目標の(ゲーティング可能な)ユニットからアイドル履歴ベクトル(IHV)149も受け取る。IHV149はnビットの2進ストリングであり、どのユニットが所定の「長」期間(たとえば100000サイクル)アイドルでありパワーダウンさせる可能性のある候補であるかを示している。」(段落【0032】)

(エ)「【0034】
GRCU150はUV142入力を用いてどのユニットがすでにアクティブ(パワーオン)でありどのユニットが休眠(パワーオフ)であるかを判断する。したがって、(UHT140が出す)長期使用率予測144およびIDU114が出す短期使用率予測148によって、GRCU150はゲーティング可能な目標ユニットへの決定済みの「ターンオン」要求または「ターンオフ」要求から成る適時かつ非冗長の通信を開始する。
【0035】
図3は図2のGRCU出力reqj 134を生成する多数のパワーオン要求信号のうちの1つを生成する、GRCU150中のパワーオン要求論理152Aのブロック図の例を示す図である。選択/エンコード論理156はUV/IFAR136が出す利用率ベクトル142と使用率予測144とを組み合わせ、そのカウント値158をカウントダウン・レジスタ160に渡す。優先度マルチプレクサ162はカウントダウン・レジスタ160から予測されたアクティブ/休眠信号164を受け取り、IDU114から即アクティブ信号148を受け取る。優先度マルチプレクサ162はパワーオン要求信号154を対応するreqj 134に駆動する。
【0036】
図4はGRCU出力reqj 134を生成する多数のパワーオフ要求信号のうちの1つを生成する、GRCU150中のパワーオン要求論理152Bのブロック図の例を示す図である。各アクティブ期間の始めに期間カウンタ168をリセット170する。期間カウンタ168は現在のアクティブ期間を表わすカウント値を保持する。比較器172は現在の期間カウント値と使用率履歴テーブルが出す予測された期間カウント値とを比較する。利用率ベクトル(ビットベクトル142)は図2の予測ユニット140中の利用率テーブルにインデックス176を供給する。マルチプレクサ178はたとえば実際の期間カウント値が予測されたものより長い場合、現在の期間カウント値を選択的に通過させて予測ユニット140中の利用率履歴テーブルを更新する。ANDゲート180はパワーアップ134がアサートされていないとき、比較器の結果182をパワーオフ要求信号166とし通過させる。パワーオン要求信号134とパワーオフ要求信号166とを組み合わせ、たとえばセット/リセット・ラッチ(図示せず)を用いてGRCU出力reqj 134を生成する。」(段落【0034】?【0036】)

(オ)「【0038】
図5はたとえばユニット・レベル・アクティビティ予測論理130が図2の例中の所定のユニット用のVdd-ゲーティング機構を用いて好適な実施形態のプロセッサ・ユニットをパワーアップ/パワーダウンする状態図200を示す図である。たとえば、これは唯一かつ好適な変更であり、所定のゲーティング可能ユニットに望まれる電力-性能のトレードオフに応じて個別の管理機構に対しては調整がなされる。
【0039】
始めに(すなわちデフォルトでは)、各ユニットは休眠しているかアクティブであるかどちらかである。すなわち、各ユニットはデフォルトではパワーダウン状態すなわち休眠状態202にあるか、完全パワーアップ状態すなわちアクティブ状態204にあるかどちらかである。説明を簡潔にするために、任意の所定のユニットのデフォルト状態すなわち開始状態はパワーダウン(休眠)状態202であるとする。そして、このような各ユニットは上述したように、要求時にのみ長期または短期の先を見越した予測によってウエクアップするものとする。あるユニットが必要であるというアクティブ期間の指示を受け取ると、当該ユニットはパワーアップ準備状態208になる。このような指示があることが推測されるのは、(図2の)GRCU150が当該ユニットに対してパワーアップ「REQUEST」信号134をアサートしたときである。ある遅延ののち、当該ユニットはパワーアップ準備状態208からユニット・アクティブ(パワーアップ)状態204へ遷移する。この遅延はその最後のアイドル(休眠)期間によって決まる。この点については後述する。
【0040】
パワーアップしアクティブ状態204になったら、アクティブ・ユニットは普通に動作し、リセットもし、アイドル期間カウンタを始動させもする。アイドル期間カウンタはタイムアップし、またはユニットが処理すべきマシン命令を受け取るまでユニットをカウントし続ける。カウント値がプリセットされた閾値を超えたことに起因してアイドル期間カウンタがタイムアップしたら、ユニットはオーバライドする即パワーダウン要求を生成する。この即パワーダウン要求によって、ユニットは休眠状態202に直接に帰還し、リセットし、アクティブ期間カウンタを停止させる。これが本質的に当てはまるのは、マシンが誤予測(時期尚早)のパワーオン要求に遭遇した場合である。その結果、漏洩電力がいくぶん浪費される。状態202へ帰還する際に、関連する「カウントダウン予測」値をたとえば「1」を右シフトさせることにより現在値の2倍に増加させることにより、誤予測を結果したUHTエントリを更新する。ユニットがマシン命令を受け取ったら、当該ユニットはリセットし、アイドル期間カウンタを停止させ、リセットし、当該ユニットのアクティブ期間カウンタを始動させ、パワーダウン・カウントダウン状態206へ遷移する。
【0041】
(アクティブ命令の休止によりパワーオン要求を逆アサートし)アクティブ期間がUHT予測期間以上になったことによりパワーオフ要求を生成すると、ユニットはパワーダウン・カウントダウン状態206からユニット休眠状態202へ遷移する。アクティブ期間カウンタは上向きにカウントし続ける。ユニットは有効なマシン命令を受け取るかぎり、状態206に留まる。留意点を挙げると、ユニットが最後の命令を受け取ったのち微小サイクル・ウインドウ(たとえば10サイクル)の間、当該ユニットに対するパワーオン要求はアサートされ続ける。したがって、パワーオン要求を逆アサートするのは、ユニットが連続10サイクルの間、命令の受領を停止したのちのみである。アクティブ期間カウント値がいまだにUHT予測期間カウント値未満である間にユニットが再び有効な命令を受け取り始めたら、パワーオン要求を再アサートする。その間、ユニットは状態206に留まる。したがって、アクティブ期間カウンタはUHT予測期間カウント値を超えてカウントし続けることが可能である。ユニットが最終的に状態206から休眠状態202に戻ったら、アクティブ期間カウンタの現在の内容を反映させるためにUHTエントリを更新し、アクティブ期間カウンタをリセットしたのち停止させる。」(段落【0038】?【0041】)

そうすると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数の機能ユニットと、前記複数の機能ユニットの各々について次に予期されるオペレーションを判断し、判断した前記次に予期されるオペレーションの各々についてターンオン時間およびターンオフ時間を予測する予測ユニットと、予測されたターンオン時間に応答して対応する供給線へ供給電圧を選択的に通過させ、予測されたターンオフ時間に応答して前記対応する供給線への前記供給電圧を選択的に阻止する、供給電圧選択回路とを備えた集積回路装置(IC)であって、
前記予測ユニットのユニット・レベル・アクティビティ予測論理130は、利用率履歴テーブル(UHT)140、ゲーティング要求管理ユニット(GRCU)150を備え、所定の作業負荷実行の間に、目標ユニットに対して「ウエイクアップ」、および「スリープ」または「パワーダウン」要求信号134を生成するものであって、
現在サイクルのマシン・アクティビティ状態ベクトルが入力132においてUV/IFARレジスタ136のユニット利用率ベクトル(UV)フィールドに供給され、利用率履歴テーブル(UHT)140にテーブル・インデックス138を供給するとともに、ユニット利用率ベクトル142を出力し、UHT140のルックアップ・エントリ(UHT-1?UHT-n)は、供給ゲーティングしている目標ユニットを特定し、UHT140は長期予測144をゲーティング要求管理ユニット(GRCU)150に供給し、
IDU114は短期の先行予測を即パワーアップ要求ベクトル148としてゲーティング要求管理ユニット(GRCU)150に供給し、各即パワーアップ要求ベクトル148はmビットの2進ストリングであり、m個の下流受信実行ユニットのうち次の数サイクル内にオンさせるものを特定し、
GRCU150はUV142入力を用いてどのユニットがすでにアクティブ(パワーオン)でありどのユニットが休眠(パワーオフ)であるかを判断し、GRCU150中の選択/エンコード論理156はUV/IFAR136が出す利用率ベクトル142と使用率予測144とを組み合わせ、そのカウント値158をカウントダウン・レジスタ160に渡し、優先度マルチプレクサ162はカウントダウン・レジスタ160から予測されたアクティブ/休眠信号164を受け取り、IDU114から即アクティブ信号148を受け取り、優先度マルチプレクサ162はパワーオン要求信号154を対応するreqj 134に駆動し、
GRCU150は、各アクティブ期間の始めに期間カウンタ168をリセットし、期間カウンタ168は現在のアクティブ期間を表わすカウント値を保持し、比較器172は現在の期間カウント値と使用率履歴テーブルが出す予測された期間カウント値とを比較し、マルチプレクサ178はたとえば実際の期間カウント値が予測されたものより長い場合、現在の期間カウント値を選択的に通過させ、ANDゲート180はパワーアップ134がアサートされていないとき、比較器の結果182をパワーオフ要求信号166とし通過させ、パワーオン要求信号134とパワーオフ要求信号166とを組み合わせ、GRCU出力reqj 134を生成し、
GRCU150がユニットに対してパワーアップ「REQUEST」信号134をアサートしたとき、当該ユニットはパワーアップしアクティブ状態204になり、アイドル期間カウンタを始動させ、アイドル期間カウンタはタイムアップ、またはユニットが処理すべきマシン命令を受け取るまでカウントし続け、カウント値がプリセットされた閾値を超えたことに起因してアイドル期間カウンタがタイムアップしたら、オーバライドする即パワーダウン要求を生成し、この即パワーダウン要求によって、ユニットは休眠状態202に直接に帰還し、リセットし、アクティブ期間カウンタを停止させ、
ユニットがマシン命令を受け取ったら、当該ユニットはリセットし、アイドル期間カウンタを停止させ、リセットし、当該ユニットのアクティブ期間カウンタを始動させ、パワーダウン・カウントダウン状態206へ遷移し、アクティブ期間がUHT予測期間以上になったことにより(アクティブ命令の休止によりパワーオン要求を逆アサートし)パワーオフ要求を生成すると、ユニットはパワーダウン・カウントダウン状態206からユニット休眠状態202へ遷移し、アクティブ期間カウンタは上向きにカウントし続け、ユニットは有効なマシン命令を受け取るかぎり、状態206に留まり、当該ユニットに対するパワーオン要求はアサートされ続け、パワーオン要求を逆アサートするのは、ユニットが連続10サイクルの間、命令の受領を停止したのちのみであり、アクティブ期間カウント値がいまだにUHT予測期間カウント値未満である間にユニットが再び有効な命令を受け取り始めたら、パワーオン要求を再アサートし、その間ユニットはパワーダウン・カウントダウン状態206に留まり、アクティブ期間カウンタはUHT予測期間カウント値を超えてカウントし続けることが可能であり、ユニットが最終的に状態206から休眠状態202に戻ったら、アクティブ期間カウンタをリセットしたのち停止させる、集積回路装置。」

原査定の拒絶の理由で引用した特開2004-54943号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【0023】
マイクロエレクトロニック装置の機能ユニットを何時つけたり消したりするか、を判別するために本発明では幾つかの手法が採用されている。一つの手法では、ソースコードをマイクロエレクトロニック装置のオペレーションを制御するマシンコードに翻訳するコンパイラが使用されている。実行中、論理ユニットがマシンコードを評価し(即ち、解読または監視し)、コンパイラから得られた利用度情報に基づき、コンピュータ・プログラムの実行の各ステップに於いて、どの機能ユニットがプログラムの実行のために必要であるか、そして従ってどの機能ユニットがオンあるいはオフされるべきか、を判別するのである。例えば、非グラフィック・オペレーションの実行中はグラフィック・ユニットの駆動は必要でないかも知れないのである。同じく、通常のワークステーションでは浮動小数点ユニット(FPU)は実行時間の20%乃至30%のみ動作するもので、その遊休期間中はオンである必要はない。キャッシュメモリユニットも本発明に基づく制御でコントロールし得るものである。
【0024】
機能ユニットを何時つけたり消したりするか、を判別する目的で本発明で、採用されているもう一つの手法は、機能ユニットの実行とオペレーションを評価(視)するダイ上の論理ユニットを使用して行なわれる手法である。この監視機能は次のオペレーション(送出された命令の実行及び遅延を含む)の指示を生成するもので、そのような指示を使用して本発明のオン/オフオペレーションの制御が可能である。例えば、コンパクトな低コスト、オンチップFPUでは、衝突の可能性の故に、全てのユニットを同時に使用することは不可能である。FALUオペレーションの実行中、乗算器や除算器の動作は許可されない。従って、それらのユニットへ供給される電力を止めても構わないのである。
【0025】
実行中のコンピュータ・プログラムの要請に応じて、本発明では機能ユニットのオン/オフのためにどのような適切な、事前に選択された時間量でも使用できる。必要ならば最大の発熱量及び電力消費量の少なくとも一方の削減を得るためにオン/オフは1/2クロックサイクルの速度でも構わないが、オン/オフの目的で他のクロックサイクルを使用することも可能である。更に他の方法として、選択された一個のブロックまたは複数のブロックに対して動力線をオン/オフする方法もある。」(段落【0023】?【0025】)

(イ)「【0062】
図8は斯かる最適化を示す代表的ブロック図である。図示せる如く、最適化コンパイラ802は順序が変更されたマシンコード命令の形で出力を生成する。説明の便宜上、順序変更の概念を示すために、図6に於ける機能ユニットと対応するマシンコード命令と同じマシンコード命令が使用されている。マシンコード命令606、610、614、618、622、及び626と、対応するFUD608、612、616、620、624、及び628が並べ変えられることは明らかである。この例の目的は、電力消費の削減という点で、順序変更が最適化を達成することを示すことである。
【0063】
並べ変えられたマシンコード命令は次に機能ユニットに対して送出される。機能ユニットは図8に示されるオペレーションに従って論理ユニット116によって制御される。最適化コンパイラ802が、マシンコード命令1の後、幾つかのサイクル分、一個または複数の機能ブロックが使用されていないと判別すると、最適化コンパイラ802は無効化あるいはパワーダウン信号をそれらの機能ブロックに送り、一つあるいは複数のブロックが将来必要になるまでクロックを止めるか、入力をブロックするか、電源を止めるか、を行なうことができる。」(段落【0062】?【0063】)

審尋で引用した特開2002-182807号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の記載がある。
(ア)「【0011】(第1の実施形態)図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロプロセッサの電力制御装置を示している。当該マイクロプロセッサ10は、プログラムカウンタ11と、複数の回路ブロック15とに加えて、パワーテーブル20と、条件判定器30と、電圧・クロックコントローラ40とで構成された電力制御装置を備えている。
【0012】パワーテーブル20は、各々電力制御情報を書き換え可能に記憶するための複数の電力制御レジスタ21を備えている。電力制御情報の各々は、複数の回路ブロック15のうち電力制御の対象とすべき1以上の回路ブロックを指定するためのブロック情報と、制御対象ブロックの電圧に関する情報(電圧情報)と、制御対象ブロックへ供給すべきクロックに関する情報(クロック情報)とを含んでいる。また、複数の電力制御レジスタ21のうちのいずれか1つが、条件判定器30から供給されるインデックス信号により選択されるようになっている。
【0013】電圧・クロックコントローラ40は、インデックス信号により選択された電力制御レジスタ21中の電力制御情報に従って制御対象回路ブロックの消費電力を制御するためのコントローラであって、ブロック情報と電圧情報とを受け取る電圧コントローラ41と、ブロック情報とクロック情報とを受け取るクロックコントローラ45とで構成されている。」(段落【0011】?【0013】)

(イ)「【0018】図5は、図1の電力制御装置の動作例を概念的に示している。図5において、パワーテーブル20は、各々インデックス番号0、1、2、3で識別される4個の電力制御レジスタを備えている。アドレステーブル31は、比較アドレス1000とインデックス番号3との組と、比較アドレス1400とインデックス番号2との組と、比較アドレス4B00とインデックス番号0との組と、比較アドレス7010とインデックス番号3との組と、比較アドレスC6FFとインデックス番号1との組と、比較アドレスD200とインデックス番号2との組と、比較アドレスD770とインデックス番号1との組とを記憶しているものとする。
【0019】図5によれば、マイクロプロセッサ10のプログラムフローに応じて、次のような電力制御が実現する。まず、アドレス0000からプログラムの実行が開始する。その後、アドレス1000の命令実行時に、プログラムカウンタ11が示すアドレスと、アドレステーブル31の中の1番目の比較アドレスとが一致する。これにより、番号3を表すインデックス信号がパワーテーブル20へ供給される。これを受けて、パワーテーブル20はインデックス番号3で指定された電力制御情報を電圧・クロックコントローラ40へ供給し、電圧・クロックコントローラ40は当該電力制御情報に応じた電圧制御とクロック制御とを実行する。続いて、プログラムの実行がアドレス1400に到達すると、プログラムカウンタ11が示すアドレスと、アドレステーブル31の中の2番目の比較アドレスとが一致し、番号2を表すインデックス信号がパワーテーブル20へ供給される。これを受けて、パワーテーブル20はインデックス番号2で指定された電力制御情報を電圧・クロックコントローラ40へ供給し、電圧・クロックコントローラ40は当該電力制御情報に応じた電圧制御とクロック制御とを実行する。更に、アドレスC6FFへ分岐すべくサブルーチンコール命令が実行されると、プログラムカウンタ11が示すアドレスと、アドレステーブル31の中の5番目の比較アドレスとが一致し、番号1を表すインデックス信号がパワーテーブル20へ供給される。これを受けて、パワーテーブル20はインデックス番号1で指定された電力制御情報を電圧・クロックコントローラ40へ供給し、電圧・クロックコントローラ40は当該電力制御情報に応じた電圧制御とクロック制御とを実行する。
【0020】以上のとおり、図1の電力制御装置によれば、パワーテーブル20とアドレステーブル31とをユーザが適宜書き換えることで、当該マイクロプロセッサ10の低消費電力動作をユーザがきめ細かく定義できる。例えば、サブルーチン単位での電力制御や、1命令単位での頻繁な電力制御も可能である。また、特定アドレス区間の命令実行時の電力制御や、多重ループ内の一部命令のみの実行時の電力制御も可能である。しかも、これら電力制御のための特別な命令の実行は不要であるので、電力制御によりアプリケーションプログラム本体の処理効率が低下することはなく、命令メモリ容量の増加を招くこともない。更に、図1の電力制御装置によれば、アプリケーションプログラムの開発と電力制御設計とを独立に行い得る。したがって、プログラム開発の効率向上、保守性向上を図ることができる。また、既存のアプリケーションプログラムを修正することなく、詳細な電力制御を実現することができる。」(段落【0018】?【0020】)

(2)対比
補正発明と引用発明を対比する。
引用発明は、GRCU150はUV142入力を用いてどのユニットがすでにアクティブ(パワーオン)でありどのユニットが休眠(パワーオフ)であるかを判断しているから、引用発明の「ユニット利用率ベクトル142」、「UV142」は補正発明の「それぞれが使用中であるかどうかについての状態指標」に相当するといえ、引用発明は、目標ユニットをアクティブ(パワーオン)あるいは休眠(パワーオフ)に遷移させるから、引用発明の「機能ユニット」、「目標ユニット」、「ユニット」は、補正発明の「それぞれが使用中であるかどうかについての状態指標を伝えるように構成された1つ以上の電力管理可能なグループ」に相当するといえ、引用発明のターンオン時間およびターンオフ時間を予測する「予測ユニット」及び予測されたターンオン時間に応答して対応する供給線へ供給電圧を選択的に通過させ、予測されたターンオフ時間に応答して前記対応する供給線への前記供給電圧を選択的に阻止する「供給電圧選択回路」は、補正発明の「電力管理ユニット」に相当するといえる。
引用発明の「集積回路装置」は、補正発明の「それぞれが使用中であるかどうかについての状態指標を伝えるように構成された1つ以上の電力管理可能なグループと、電力管理ユニットとを備える装置」に相当するといえる。
引用発明の「GRCU150は、各アクティブ期間の始めに期間カウンタ168をリセット」する構成は、補正発明の「それぞれが前記1つ以上の電力管理可能なグループの少なくとも1つのパワーグループに対応する複数のカウントを保持し」に相当するといえる。
引用発明の「マシン命令」は、補正発明の「命令」相当し、引用発明の「ユニットがマシン命令を受け取ったら、」「アイドル期間カウンタを停止させ、リセットし、当該ユニットのアクティブ期間カウンタを始動させ」ている構成は、補正発明の「前記複数のカウントのうち前記命令が検出されたパワーグループに対応する特定のカウントを所定値にリセットし」に相当するといえる。
引用発明の「UHT予測期間カウント値」は、補正発明の「閾値」に相当し、引用発明の「アクティブ期間カウント値がいまだにUHT予測期間カウント値未満である間」は、補正発明の「第1のパワーグループに対応するカウントが閾値に達していないことを検出すること」に相当するといえる。
引用発明の「パワーダウン・カウントダウン状態206へ遷移し、アクティブ期間がUHT予測期間以上になったことにより(アクティブ命令の休止によりパワーオン要求を逆アサートし)パワーオフ要求を生成すると、ユニットはパワーダウン・カウントダウン状態206からユニット休眠状態202へ遷移し、アクティブ期間カウンタは上向きにカウントし続け、ユニットは有効なマシン命令を受け取るかぎり、状態206に留まり、当該ユニットに対するパワーオン要求はアサートされ続け、パワーオン要求を逆アサートするのは、ユニットが連続10サイクルの間、命令の受領を停止したのちのみであり、アクティブ期間カウント値がいまだにUHT予測期間カウント値未満である間にユニットが再び有効な命令を受け取り始めたら、パワーオン要求を再アサートし、その間ユニットはパワーダウン・カウントダウン状態206に留ま」る構成は、補正発明の「前記複数のカウントのうち前記命令が検出されたパワーグループに対応する特定のカウントを所定値にリセットし、第1のパワーグループに対応するカウントが閾値に達していないことを検出することに応じて、前記第1のパワーグループが低電力状態に移行するのを阻止する指標を伝えるように構成され、前記阻止する指標がなければ前記第1のパワーグループが低電力状態に自動的に移行し」に相当するといえる。

そうすると、両者は、次の点で一致する。
「それぞれが使用中であるかどうかについての状態指標を伝えるように構成された1つ以の電力管理可能なグループと、電力管理ユニットとを備える装置であって、
前記電力管理ユニットは、
前記1つ以上の電力管理可能なグループから前記状態指標を受け取り、
それぞれが前記1つ以上の電力管理可能なグループの少なくとも1つのパワーグループに対応する複数のカウントを保持し、
前記複数のカウントのうち前記命令が検出されたパワーグループに対応する特定のカウントを所定値にリセットし、第1のパワーグループに対応するカウントが閾値に達していないことを検出することに応じて、前記第1のパワーグループが低電力状態に移行するのを阻止する指標を伝えるように構成され、前記阻止する指標がなければ前記第1のパワーグループが低電力状態に自動的に移行する、装置。」

他方、補正発明と引用発明は次の(A)、(B)の点で相違する。
<相違点>
(A)補正発明では、電力管理ユニットは、「到着する命令を受け取り、」「受信クロック信号の各サイクルで前記複数のカウントのそれぞれのうち前記命令が検出されなかった現在使用中ではないパワーグループに対応する所定のカウントを更新」するのに対し、引用発明の予測ユニットの「ユニット・レベル・アクティビティ予測論理130」は、「マシン命令」を受け取ることによって、上記のようなことを行う構成ではない点。

(B)補正発明では、「前記命令は、どのパワーグループが前記命令の実行のために必要とされるかを識別するパワーコードに関連しており、前記パワーコードはマッピング方法を用いて対応する命令に関連付けられる」のに対し、引用発明は、「マシン命令」についてそのような記載はない点。

(3)判断
・相違点(A)について
引用発明は、「GRCU150がユニットに対してパワーアップ「REQUEST」信号134をアサートしたとき、当該ユニットはパワーアップしアクティブ状態204になり、アイドル期間カウンタを始動させ、アイドル期間カウンタはタイムアップ、またはユニットが処理すべきマシン命令を受け取るまでカウントし続け」るものであるが、「到着する命令を受け取り、」「受信クロック信号の各サイクルで前記複数のカウントのそれぞれのうち前記命令が検出されなかった現在使用中ではないパワーグループに対応する所定のカウントを更新」することを示唆するものではない。
刊行物2には、「最適化コンパイラ802が、マシンコード命令1の後、幾つかのサイクル分、一個または複数の機能ブロックが使用されていないと判別すると、最適化コンパイラ802は無効化あるいはパワーダウン信号をそれらの機能ブロックに送り、一つあるいは複数のブロックが将来必要になるまでクロックを止めるか、入力をブロックするか、電源を止めるか、を行なうことができる」ことが記載されているが、電力管理ユニットが、「到着する命令を受け取り、」「受信クロック信号の各サイクルで前記複数のカウントのそれぞれのうち前記命令が検出されなかった現在使用中ではないパワーグループに対応する所定のカウントを更新」することを示すものではない。
したがって、引用発明において相違点(A)に係る補正発明の構成を採用することは、容易であるとはいえない。

・相違点(B)について
審尋で引用した刊行物3には、命令実行時に、プログラムカウンタが示すアドレスと、アドレステーブルの中の比較アドレスとが一致すると、そのインデックス信号がパワーテーブルへ供給され、パワーテーブルはそのインデックス番号で指定された電力制御情報(電力制御情報は、複数の回路ブロック15のうち電力制御の対象とすべき1以上の回路ブロックを指定するためのブロック情報と、制御対象ブロックの電圧に関する情報(電圧情報)と、制御対象ブロックへ供給すべきクロックに関する情報(クロック情報)とを含んでいる。)を電圧・クロックコントローラへ供給し、電圧・クロックコントローラは当該電力制御情報に応じた電圧制御とクロック制御とを対象ブロックに実行することが記載されているが、「命令」が「どのパワーグループが前記命令の実行のために必要とされるかを識別するパワーコードに関連しており、前記パワーコードはマッピング方法を用いて対応する命令に関連付けられる」ことは記載されておらず、示唆されてもいない。
そして、原査定の拒絶の理由にも、上記点は示されておらず、周知技術であるともいえないから、引用発明において相違点(B)に係る補正発明の構成を採用することは、容易であるとはいえない。

したがって、補正発明は、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
他に、補正発明を独立して特許を受けることができないものと判断すべき理由を発見しない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。

(4)むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願発明については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
本願の請求項2?13に係る発明も同様である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-17 
出願番号 特願2008-549484(P2008-549484)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三浦 みちる  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 清水 稔
山田 正文
発明の名称 動的自動減衰デバイスアーキテクチャ  
代理人 早川 裕司  
代理人 村雨 圭介  
代理人 佐野 良太  

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