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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1284774
審判番号 不服2010-27917  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-09 
確定日 2014-02-12 
事件の表示 特願2000-602264「HIVペプチド、抗原、ワクチン組成物、免疫学的検定キット及びHIVによって誘発された抗体を検出する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日国際公開、WO00/52040、平成14年12月 3日国内公表、特表2002-541069〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年3月2日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年3月4日 ノールウェー)とする出願であって、その請求項1に記載の発明は、平成22年12月9日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「薬学的に受容可能な希釈剤及び任意にはアジュバント、担体及び/又はビヒクル及び任意には付加的な免疫刺激性化合物と共に、配列番号:3、配列番号:6、配列番号:11及び配列番号:18のペプチドであって、当該ペプチドの末端が遊離のカルボキシル基もしくはアミノ基、アミド、アセチル又はその塩であってよいものを含んで成るワクチン組成物。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定における拒絶の理由の概要
これに対して、原査定の拒絶の理由の1つは、本願の発明の詳細な説明には、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、この出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない、というものである。

3.当審の判断
(1)本願明細書の記載
本願明細書には、「有効な予防及び治療用ワクチンの必要性を満たすため、細胞障害性T細胞活性を拮抗することなくp24エピトープを擬態できる新規の合成ペプチドを設計する可能性について調査する決心をした。」(段落【0011】)と記載され、段落【0018】の記載によれば、配列番号6、11、及び18のペプチドは、T細胞エピトープの数をさらに増加させ、エスケープ突然変異体の発生の確率を低減させるため、3つの付加的なペプチド配列であると認められる。
また、本願明細書には、本願発明の配列番号3、配列番号6、配列番号11、及び配列番号18のペプチドを含むワクチン組成物について、段落【0035】?【0037】にかけて、
「さらに好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、次のような抗原を含有する:
RALGPAATLQTPWTASLGVG-NH2(配列番号:3)
RWLLLGLNPLVGGGRLYSPTSILG-NH2(配列番号:6)
RAIPIPAGTLLSGGGRAIYKRTAILG-NH2(配列番号:11)
及び
RFIIPNIFTALSGGRRALLYGATPYAIG-NH2(配列番号:18)
配列のうち1つはB細胞エピトープを含有し、体液性免疫系を活性化することになり、一方その他の配列はCTL-エピトープと共に貢献し、CTL-エピトープの枠内で実現されるアミノ酸変更は、増強された結合を達成するように設計される。ペプチドの合成を容易にしかつ/又はペプチドの可溶性を増大させるために、その他のアミノ酸変更が行なわれてきた。」と記載され、段落【0020】には、「本発明に従ったペプチドは、HIV-1-エピトープの独自性(感受性及び特異性)を維持する特性をもつ、上述のHIV-1コアタンパク質p24の4つの異なる保存された領域に由来している。さらに、本発明に従った新しいペプチドは、認識された細胞障害性Tリンパ球(CTL)拮抗効果を全くもたず、少なくとも1つの潜在的CTLエピトープを有することになる。」と記載されている。
しかしながら、本願発明の各ペプチドが実際にB細胞エピトープ又はCTLエピトープを含有することは確認されておらず、かつ、本願発明の4つのペプチドを含むワクチンが、HIVの予防用又は治療用ワクチンとして有効に使用できたことを示す実施例等の具体的記載はない。

(2)判断
本願明細書には、本願発明の4つのペプチドを含むワクチン組成物が、HIVに対する予防用又は治療用ワクチンとして使用できることは具体的に記載されておらず、さらに、各ペプチド自体がB細胞エピトープ又はCTLエピトープを含有すること、すなわち、免疫原性又はCTL誘導性を有することが確認されていないのは、上記(1)に記載のとおりである。
そして、各ペプチドの合成に際し、HIV gag p24の保存された領域であるそれぞれの基となるアミノ酸配列から、どのような指針に基づき多数のアミノ酸を変更し又は挿入したのかの論理的説明は、本願明細書には記載されておらず、しかも、該変更又は挿入により、各ペプチドは基となるアミノ酸配列と約32?65%の同一性しか有しておらず、本願出願時の技術常識を参酌しても、これら各ペプチド自体が免疫原性又はCTL誘導性のいずれかを有しているとは、推認できない。
そればかりでなく、本願発明はワクチン組成物であり、本願出願時の技術常識は、B細胞エピトープ又はCTLエピトープを含む免疫原性又はCTL誘導性が確認されたペプチドであっても、ワクチンとしての生体防御効果を有する中和抗体又はウイルス増殖抑制能を有するものは、そのうちの一部であって、しかも、どのような免疫原性等のペプチドがそのようなワクチンとしての活性を有するかは、予測できないというものである。また、異なるエピトープを含む複数のペプチドの混合物を用いても、ワクチンとして有効になる蓋然性が高くなるという技術常識も存在しない。
しかも、本願発明の4つのペプチドは上述のように、野生型ウイルスの対応するアミノ酸配列と約35?68%も異なる配列を有するものであるから、たとえCTL誘導性が高いからといっても、誘導されたCTLによりウイルス感染細胞を溶解させることができるかどうかは、さらに不明であるといえる。
そうすると、上記のような本願明細書の記載からでは、本願発明のペプチド混合物がワクチンとしてHIVを予防又は治療し得るとは、本願出願時の技術常識を参酌しても推認できないことは明らかである。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明には、出願時の技術常識を考慮しても、本願発明の4つのペプチドを含むワクチン組成物を使用できる程度に記載されているとはいえない。
よって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

(3)審判請求人の主張
審判請求人は、平成22年12月9日付審判請求書中で、平成21年(行ケ)第10033号審決取消請求事件の判決で、「特許法第36条第4項第1号の所定の要件を充足しているか否かの判断に際しても、たとえ具体的な記載がなくとも、出願時において、当業者が、発明の解決課題、解決手段等技術的意義を理解し、発明を実施できるか否かにつき、一切の事情を総合考慮して、結論を導くべき筋合いである」と判示されている点に関し、本発明の解決課題がHIVワクチンの提供であることは明らかであり、また、本願明細書段落【0020】、【0037】の記載から、本発明の解決課題及び解決手段等技術的意義を当業者が理解できるように記載されていることは明らかであり、段落【0060】?【0062】のワクチン組成物の毒性が十分に低いとの記載は、発明を実施できるか否かについての考慮の対象とされるべきものであること、そして、審判請求書に添付の実験報告書から、本願発明のワクチン組成物が有効であることが確認できる旨、主張している。
しかしながら、上記判決は、特定の医薬用途発明について、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものではないとした審決の判断が誤りであると判示した上で、36条4項について傍論を述べたものであり、特許法第36条第4項の要件が争点の本件とは事案を異にするものである。
なお、上記事件の再戻し審において、特許法第36条第4項第1号の要件を満たすものではなく、特許を受けることができないとの審決が確定している。
そして、【0020】、【0037】から技術的意義が理解できたとしても、ワクチンとして使用できることが理解できるわけではなく、また、【0060】?【0062】に基づく主張も、毒性が低いだけで、ワクチンとして使用できるわけではない。そうすると、本願明細書には、本願発明のワクチン組成物を使用できる程度に記載されているといえないのは、上記(2)に記載したとおりである。
また、HIV gag p24のペプチド混合物であればワクチンとなるとはいえず、本願出願時の技術常識を考慮しても、本願明細書の記載は、本願発明のペプチド混合物がワクチンとして使用できる根拠に欠けている。このような発明の詳細な説明の記載が不足しているために、本願出願時の技術常識を考慮しても、発明の詳細な説明が、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえない場合は、出願後の実験により発明の詳細な説明の記載不足を補うことはできない。先願主義の下、十分な技術開示の代償として保護を与えるという特許制度の趣旨に反することになるからである。
このように、審判請求書に添付された実験報告書は、本願の実施可能要件を判断する上で参酌することはできず、審判請求人の上記主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に記載の発明について、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明については言及するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-12 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-09-30 
出願番号 特願2000-602264(P2000-602264)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 光本 美奈子  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 田中 晴絵
今村 玲英子
発明の名称 HIVペプチド、抗原、ワクチン組成物、免疫学的検定キット及びHIVによって誘発された抗体を検出する方法  
代理人 中島 勝  
代理人 中村 和広  
代理人 石田 敬  
代理人 福本 積  
代理人 青木 篤  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 古賀 哲次  
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