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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 F02D |
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管理番号 | 1284837 |
審判番号 | 不服2013-13814 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-07-18 |
確定日 | 2014-03-04 |
事件の表示 | 特願2009-290209「内燃機関のノック判定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月 7日出願公開、特開2011-132814、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年12月22日の出願であって、平成25年4月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月18日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正がなされされたものである。 そして、当審において、平成25年8月19日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年9月2日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年10月31日に回答書が提出されたものである。 第2 平成25年7月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成25年2月15日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1を、下記の(a)に示す請求項1へと補正するものである。 (a)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 内燃機関の振動を検出するセンサと、 前記センサの検出信号からノッキング発生時に振動強度のピーク位置となる複数の周波数領域の振動成分を抽出する抽出手段と、 ノッキング以外の要因による振動であるバックグラウンドノイズを算出するバックグラウンドノイズ算出手段と、 抽出した複数の周波数領域から前記バックグラウンドノイズの振動強度に基づいて決定した周波数領域を除いた残りの周波数領域である特定周波数領域の振動強度に基づいてノッキングの有無を判定するノック判定手段と、 を備える内燃機関のノック判定装置において、 前記ノック判定手段は、燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズが有る場合とない場合で差が無い程度にバックグラウンドノイズが大きくなる運転領域では、前記燃料噴射弁又は前記可変動弁装置の固有周波数を、前記特定周波数領域に含めてノッキングの有無を判定し、その他の運転領域では、燃料噴射弁又は可変動弁装置の固有周波数を前記特定周波数領域に含めずにノッキングの有無を判定することを特徴とする内燃機関のノック判定装置。」 (b)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 内燃機関の振動を検出するセンサと、 前記センサの検出信号からノッキング発生時に振動強度のピーク位置となる複数の周波数領域の振動成分を抽出する抽出手段と、 ノッキング以外の要因による振動であるバックグラウンドノイズを算出するバックグラウンドノイズ算出手段と、 抽出した複数の周波数領域から前記バックグラウンドノイズの振動強度に基づいて決定した周波数領域を除いた残りの周波数領域である特定周波数領域の振動強度に基づいてノッキングの有無を判定するノック判定手段と、 を備える内燃機関のノック判定装置において、 前記ノック判定手段は、燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズが有る場合とない場合で差が無い程度にバックグラウンドノイズが大きくなる運転領域では、前記燃料噴射弁又は前記可変動弁装置の固有周波数を、前記特定周波数領域に含めてノッキングの有無を判定することを特徴とする内燃機関のノック判定装置。」 2.本件補正の適否 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関し、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ノック判定手段」の判定について、「その他の運転領域では、燃料噴射弁又は可変動弁装置の固有周波数を前記特定周波数領域に含めずにノッキングの有無を判定する」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 2-1.引用文献記載の発明及び技術 2-1-1.引用文献1記載の発明 (1)引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-24641号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 内燃機関の振動を検出するための手段と、 前記検出された振動から、ノッキングに対応する予め定められた複数の周波数帯の振動をそれぞれ抽出するための抽出手段と、 前記内燃機関の回転負荷に対応した物理量を検出するための手段と、 前記抽出された複数の周波数帯の振動の強度間の重み付けを、前記検出された回転負荷に応じて変更するための変更手段と、 前記複数の周波数帯の振動の強度に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における振動の波形を検出するための検出手段と、 前記検出された振動の波形を用いて前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段とを含む、内燃機関のノッキング判定装置。 【請求項2】 前記変更手段は、前記抽出された複数の周波数帯の振動の強度のうち、ノッキングの判定に対してノッキング以外のノイズの重畳に起因した影響が大きい、少なくともいずれか一つの周波数帯の振動の強度の割合が、前記検出された回転負荷が低下するほど、減少するように重み付けを変更するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関のノッキング判定装置。 【請求項3】 前記変更手段は、前記回転負荷に加えて、前記回転数が小さくなるほど、前記周波数帯の振動の強度の割合が減少するように重み付けを変更するための手段を含む、請求項2に記載の内燃機関のノッキング判定装置。 【請求項4】 前記複数の周波数帯の振動は、タンジェンシャル1次の周波数帯の振動を含み、 前記変更手段は、前記検出された回転負荷が低下するほど前記タンジェンシャル1次の周波数帯の振動の強度の重み付けの度合が他の周波数帯の振動の強度の重み付けの度合よりも小さくなるように重み付けを変更するための手段を含む、請求項2または3に記載の内燃機関のノッキング判定装置。 【請求項5】 前記変更手段は、前記内燃機関の予め定められた回転数の範囲において、前記重み付けの度合が、前記内燃機関の回転数に比例して変化するように前記重み付けを変更するための手段を含む、請求項1?4のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。 【請求項6】 前記ノッキング判定装置は、前記検出された振動の波形の強度についての頻度分布を算出するための算出手段をさらに含み、 前記判定手段は、前記検出された振動の振動の波形に加えて、前記算出された頻度分布を用いて前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための手段を含み、 前記算出手段は、前記重み付けの変更に応じて前記頻度分布の中央値を補正するための手段を含む、請求項1?5のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。 【請求項7】 前記判定手段は、 前記複数の周波数帯の振動の強度についての予め定められたクランク角の間における積算値の総和に基づいてノック強度を算出するための手段と、 前記算出されたノック強度と予め定められた判定値との比較結果に基づいて前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための手段とを含む、請求項1?6のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。 【請求項8】 前記判定手段は、前記ノック強度の比較結果に加えて、前記検出された振動の波形と前記内燃機関の振動の波形の基準として予め定められた波形モデルとの比較結果に基づいて前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための手段を含む、請求項1?7のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項8】) (イ)「【0001】 本発明は、内燃機関のノッキングの判定に関し、特に、内燃機関の振動の波形に基づいてノッキングの有無を判定する技術に関する。」(段落【0001】) (ウ)「【0007】 本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ノッキングの誤判定を抑制する内燃機関のノッキング判定装置、ノッキング判定方法およびその方法をコンピュータで実現されるプログラムならびにそのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。 ・・・(後略)・・・」(段落【0007】) (エ)「【0027】 図1を参照して、本発明の実施の形態に係るノッキング判定装置を搭載した車両のエンジン100について説明する。このエンジン100には複数の気筒が設けられる。本実施の形態に係る内燃機関のノッキング判定装置は、たとえばエンジンECU(Electronic Control Unit)200が実行するプログラムにより実現される。 【0028】 エンジン100は、エアクリーナ102から吸入された空気とインジェクタ104から噴射される燃料との混合気を、燃焼室内で点火プラグ106により点火して燃焼させる内燃機関である。点火時期は、出力トルクが最大になるMBT(Minimum advance for Best Torque)になるように制御されるが、ノッキングが発生した場合など、エンジン100の運転状態に応じて遅角されたり、進角されたりする。 【0029】 混合気が燃焼すると、燃焼圧によりピストン108が押し下げられ、クランクシャフト110が回転する。燃焼後の混合気(排気ガス)は、三元触媒112により浄化された後、車外に排出される。エンジン100に吸入される空気の量は、スロットルバルブ114により調整される。 【0030】 エンジン100は、エンジンECU200により制御される。エンジンECU200には、ノックセンサ300と、水温センサ302と、タイミングロータ304に対向して設けられたクランクポジションセンサ306と、スロットル開度センサ308と、車速センサ310と、イグニッションスイッチ312と、エアフローメータ314とが接続されている。 【0031】 ノックセンサ300は、エンジン100のシリンダブロックに設けられる。ノックセンサ300は、圧電素子により構成されている。ノックセンサ300は、エンジン100の振動により電圧を発生する。電圧の大きさは、振動の大きさと対応した大きさとなる。ノックセンサ300は、電圧を表わす信号をエンジンECU200に送信する。水温センサ302は、エンジン100のウォータージャケット内の冷却水の温度を検出し、検出結果を表わす信号を、エンジンECU200に送信する。」(段落【0027】ないし【0031】) (オ)「【0035】 本実施の形態において、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号およびクランク角に基づいて、予め定められたノック検出ゲート(予め定められた第1クランク角から予め定められた第2クランク角までの区間)におけるエンジン100の振動の波形(以下、振動波形と記載する)を検出し、検出された振動波形に基づいて、エンジン100にノッキングが発生したか否かを判定する。本実施の形態におけるノック検出ゲートは、燃焼行程において上死点(0度)から90度までである。なお、ノック検出ゲートはこれに限らない。 【0036】 エンジン100の筒内でノッキングが発生すると、筒内圧が共振する。この筒内圧の共振により、エンジン100のシリンダブロックが振動する。よって、シリンダブロックの振動、すなわちノックセンサ300により検出される振動の周波数は、筒内圧共振周波数帯に含まれる傾向がある。 【0037】 筒内圧共振周波数は、筒内気柱の共振モードに応じた周波数になる。ノッキング時に特有の振動が現れる周波数帯には、代表的なものとして、タンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯がある。 【0038】 筒内圧共振周波数は、共振モード、ボア径および音速から算出される。図2に、音速を一定とし、ボア径をX?Yまで変化させた場合における各共振モードの筒内圧共振周波数の一例を示す。図2から明らかなように、タンジェンシャル1次、タンジェンシャル2次、ラジアル1次、タンジェンシャル3次およびタンジェンシャル4次の順に、筒内圧共振周波数が高くなる。 【0039】 図2に示す筒内圧共振周波数は、ノッキングが発生したタイミングにおける筒内圧共振周波数である。ノッキングの発生後においては、ピストンの降下により燃焼室の体積が増加するため、燃焼室内の温度および圧力が低下する。そのため、音速が低下し、筒内圧共振周波数が低下する。したがって、図3に示すように、上死点(ATDC: After Top Dead Center)からクランク角度が大きくなるにつれ、筒内圧の周波数のピーク成分が低下する。 【0040】 このような特性を有する筒内圧の共振によりシリンダブロックが振動する。そのため、ノッキングが発生した点火サイクルにおいて、ノックセンサ300により検出された振動の中には、タンジェンシャル1次の共振モードの周波数帯と同じ周波数帯Aの振動、タンジェンシャル2次の共振モードの周波数帯と同じ周波数帯Bの振動、タンジェンシャル3次の周波数帯と同じ周波数帯Cの振動およびタンジェンシャル4次の共振モードの周波数帯と同じ周波数帯Dの振動が含まれる。」(段落【0035】ないし【0040】) (カ)「【0041】 ところで、図3に示すように、タンジェンシャル1次の共振モードの周波数帯Aは、シリンダブロック、ピストン108、コンロッドおよびクランクシャフト110などの共振周波数を含む。周波数帯Aには、ノッキングが発生していなくても、インジェクタ104、ピストン108、吸気バルブ116、排気バルブ118、インジェクタ104に燃料を圧送するポンプ120などの作動にともない必然的に発生する振動が現れる。また、エンジン100の低回転、低負荷の条件下においては、絶対振動レベルが小さいため、ノッキングの判定においては、上述のようなノッキング以外のノイズの振動の影響を受けやすい。 【0042】 そこで、本実施の形態においては、エンジンECU200が、ノックセンサ300により検出された振動から、周波数帯A、周波数帯Bおよび周波数帯Dの振動を抽出して、抽出された周波数帯A?Dの振動の強度間の重み付けを、エンジン100の回転負荷に応じて変更する点に特徴を有する。 【0043】 具体的には、エンジンECU200は、抽出された周波数帯A?Dの振動の強度のうち、ノッキングの判定に対してノッキング以外のノイズの重畳に起因した影響が大きい、少なくともいずれか一つの周波数帯の振動の強度の割合が、エンジン100の回転負荷が低下するほど、減少するように重み付けを変更する。これにより、エンジン100の低負荷、低回転時ノッキングの誤判定を防止することができる。」(段落【0041】ないし【0043】) (キ)「【0046】 ところで、振動を検出する帯域幅が狭いと、検出される振動の強度に含まれるノイズ成分を抑制することができる反面、振動波形からもノイズ成分の特徴的な部分(振動の発生タイミングや減衰率など)が除去される。この場合、実際はノイズ成分に起因する振動であっても、ノイズ成分を含まない振動波形、すなわちノッキング時における振動波形に類似した波形が検出される。そのため、振動波形からノッキングに起因する振動とノイズに起因する振動とを区別し難くなる。 【0047】 そこで、本実施の形態においては、ノイズの発生時にはノイズを考慮してノッキングが発生したか否かを判定するため、ノイズを取り込むように、周波数帯A?周波数帯Dのすべてを含む広域の周波数帯Eにおける振動をさらに検出する。この周波数帯Eにおける振動が、エンジン100の振動波形を検出するために用いられる。 【0048】 周波数帯Eにおいて、ノッキングが発生した場合の振動波形は、振動波形のピーク値以降、振動が緩やかに減衰する形状になる。一方、ノッキングが発生しておらず、ノイズによる振動が発生した場合の振動波形は、ドーム状になる。したがって、周波数帯Eの振動波形からノッキングに起因する振動とノイズに起因する振動とを精度よく区別することができる。 【0049】 図4を参照して、エンジンECU200についてさらに説明する。エンジンECU200は、A/D(アナログ/デジタル)変換部400と、バンドパスフィルタ(1)410と、バンドパスフィルタ(2)420と、バンドパスフィルタ(3)430と、バンドパスフィルタ(4)440と、バンドパスフィルタ(5)450と、積算部460とを含む。 【0050】 A/D変換部400は、ノックセンサ300から送信されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。バンドパスフィルタ(1)410は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、周波数帯Aの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(1)410により、ノックセンサ300が検出した振動から、周波数帯Aの振動のみが抽出される。 【0051】 バンドパスフィルタ(2)420は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、周波数帯Bの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(2)420により、ノックセンサ300が検出した振動から、周波数帯Bの振動のみが抽出される。 【0052】 バンドパスフィルタ(3)430は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、周波数帯Cの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(3)430により、ノックセンサ300が検出した振動から、周波数帯Cの振動のみが抽出される。 【0053】 バンドパスフィルタ(4)440は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、周波数帯Dの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(4)440により、ノックセンサ300が検出した振動から、周波数帯Dの振動のみが抽出される。なお、バンドパスフィルタ(4)440は、タンジェンシャル4次に代えてタンジェンシャル2次ラジアル1次の周波数帯の振動を周波数帯Dの振動として抽出するようにしてもよい。 【0054】 バンドパスフィルタ(5)450は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、周波数帯Eの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(5)450により、ノックセンサ300が検出した振動から、周波数帯Eの振動のみが抽出される。 【0055】 積算部460は、バンドパスフィルタ(1)410?バンドパスフィルタ(5)450により選別された信号、すなわち振動の強度を、クランク角度で5度分づつ積算する。以下、積算された値を積算値と表す。積算値の算出は、周波数帯毎に行なわれる。 【0056】 合成部470は、積算部460において算出された積算値のうち、周波数帯A?周波数帯Dの積算値をクランク角度に対応して加算する。本実施の形態においては、合成部470は、算出された周波数帯Aに対応する重み付け係数Caを乗じた上で、周波数帯A?周波数帯Dの積算値をクランク角度に対応して加算する。このようにして、周波数帯A?周波数帯Dの振動波形が合成される。また、周波数帯Eの積算値が、エンジン100の振動波形として用いられる。なお、本実施の形態においては、周波数帯Aの振動の強度の積算値に重み付け係数Caを乗じるものとして説明するが、特に、周波数帯Aに限定されるものではなく、複数の周波数帯の振動の強度のうち、ノッキングの判定に対してノッキング以外のノイズの重畳に起因した影響が大きい、少なくともいずれか一つの周波数帯の振動の強度に周波数帯に対応する重み付け係数を乗じるようにしてもよい。」(段落【0046】ないし【0056】) (ク)「【0057】 なお、周波数帯Aに対応する重み付け係数Caは、図5に示すようなマップを用いて算出される。図5に示すされるマップにおいて、縦軸は回転負荷Lを示し、横軸はエンジン回転数NEを示す。たとえば、図5に示すように、クランクポジションセンサ306により検出されるエンジン回転数NEがNE(0)までであって、エアフローメータ314により検出される吸入空気量KLに基づく回転負荷LがL(0)までを領域(1)とし、エンジン回転数NEのNE(0)とNE(1)との間であって、かつ、回転負荷LのL(0)とL(1)との間を領域(2)とする。なお、Ne(0)、Ne(1)、L(0)およびL(1)は、予め定められた値であって、実験等により適合されるものである。 【0058】 エンジンECU200は、回転負荷Lが低負荷となり、エンジン回転数NEが低回転数となり、図5に示すマップにおいて、検出された回転負荷Lとエンジン回転数NEとにより特定されるマップ上の位置が領域(1)になると、周波数帯Aに対応する重み付け係数Caを領域(2)である場合よりも小さく変更する。 【0059】 たとえば、エンジンECU200は、検出された回転負荷Lとエンジン回転数NEとにより特定されるマップ上の位置が領域(1)であると、重み付け係数Caを「0.5」とする。また、エンジンECU200は、検出された回転負荷Lとエンジン回転数NEとにより特定されるマップ上の位置が領域(2)であると、重み付け係数Caを「1.0」とする。本実施の形態においては、領域(1)における重み付け係数を「0.5」とし、領域(2)における重み付け係数を「1.0」としたが、特にこれに限定されるものではなく、実験等により適合すればよい。また、マップ上に設定される領域は、2つに限定されるものではなく、3以上の複数の領域を設定し、設定された領域のそれぞれに異なる重み付け係数を設定するようにしてもよい。」(段落【0057】ないし【0059】) (2)引用文献1の記載事項から分かること ここで、上記(1)の(ア)ないし(ク)並びに図面の記載からみて、次のことが分かる。 (ケ)上記(1)の(ア)及び(エ)ないし(キ)並びに図1ないし4及び11の記載からみて、内燃機関のノッキング判定装置は、ノックセンサ300、バンドパスフィルタ410ないし440及びノッキングの判定手段を備えるものであることが分かる。 そして、前記ノックセンサ300は、内燃機関の振動を検出するものであり、また、バンドパスフィルタ410ないし440は、前記ノックセンサ300の検出信号からノッキング発生時にタンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯AないしDの振動を抽出するものであり、さらに、ノッキングの判定手段は、ノッキングの有無を判定するS120、S122及びS126から成るものといえる。 (コ)上記(1)の(ア)、(エ)ないし(ク)並びに図3、5、9及び11の記載からみて、内燃機関のノッキング判定装置のノッキングの有無の判定における前処理として、エンジンの低回転且つ低負荷の条件下では絶対振動レベルが小さく、インジェクタ104等の作動に伴い発生するノッキング以外のノイズの影響を受けやすいため、前記ノッキング以外のノイズの重畳に起因した影響が大きいタンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯AないしDの重み付けを小さくしているといえる。 (3)引用文献1記載の発明 上記(1)及び上記(2)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「内燃機関の振動を検出するノックセンサ300と、 前記ノックセンサ300の検出信号からノッキング発生時にタンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯AないしDの振動を抽出するバンドパスフィルタ410ないし440と、 ノッキングの有無を判定するS120、S122及びS126から成るノッキングの判定手段と、 を備える内燃機関のノッキング判定装置において、 エンジンの低回転且つ低負荷の条件下では絶対振動レベルが小さく、インジェクタ104等の作動に伴い発生するノッキング以外のノイズの影響を受けやすいため、前記ノッキング以外のノイズの重畳に起因した影響が大きいタンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯AないしDの重み付けを小さくする内燃機関のノッキング判定装置。」 2-1-2.引用文献2記載の技術 (1)引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-171900号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 本発明は、予め設定されたノック判定期間におけるノックセンサの出力信号に基づきノッキング検出を行い、その検出結果に基づきノック抑制制御を実施するエンジンのノック制御装置に関する。」(段落【0001】) (イ)「【0008】 ところで上記ノックセンサには、ノッキングに伴う振動以外に、インジェクタの燃料噴射に伴う作動音や吸排気バルブといった機関バルブの開閉時の着座音、ピストンの上死点及び下死点における動作方向の転換に伴い発生するピストンスラップ音等もノイズとして検出されてしまう。 【0009】 こうしたインジェクタの作動音、機関バルブの着座音、ピストンスラップ音等の機械ノイズは、ノッキングの検出精度を悪化させる要因となる。特にそうした機械ノイズがノック判定ゲート外に有る状態から同ゲート内に有る状態へと移行する遷移期間には、実際にはノッキングが発生していない状態で有るにも拘わらず、ノッキング有りと誤検出することがある。 【0010】 図24(a)は、上記インジェクタの作動に伴う機械ノイズ、すなわちインジェクタノイズが上記ノックセンサによって検出される時期が、完全にノック判定ゲート外に有るときのノックセンサ出力の推移を示している。このときのノック判定ゲート内のノックセンサ出力には、燃焼に伴う振動のみが検出される。 【0011】 一方、同図24(b)には、上記インジェクタノイズの検出時期がノック判定ゲート内に侵入するときのインジェクタのニードルバルブのリフト量及びノックセンサ出力の推移が示されている。インジェクタのニードルバルブの開閉弁に際しての同ニードルバルブの着座に伴う振動がノックセンサに到達することで、その出力に同図に示すようなインジェクタノイズが検出される。よってインジェクタノイズの検出レベルがバックグランドノイズの検出レベルに比して大きければ、インジェクタノイズ検出時期のノック判定ゲート内への侵入に応じて、ノック判定ゲート内のノックセンサ出力のピークホールド値は、インジェクタノイズの検出レベルに応じた値に増大する。 【0012】 図25は、ノック判定ゲート外から同ゲート内へとインジェクタノイズの検出時期が移行する前後の上記ノック強度LVPK及びノック判定レベルVKDの推移を示している。同図の時刻t10にノック判定ゲート内にインジェクタノイズ検出時期が侵入すると、ノック強度LVPKは、インジェクタノイズの検出レベルに応じた値へと増大する。 【0013】 こうしてノック強度LVPKが増大すると、それに応じてノック判定レベルVKDも徐々に増大されるようになる。ただし、上記のようにノック判定レベルVKDは、増大前も含めたノック強度LVPKの分布に基づいて設定されるため、その増大はノック強度LVPKの増大に対して大きく遅れることとなる。その結果、上記インジェクタノイズの侵入直後には、ノック判定レベルVKDは、増大したノック強度LVPKに対応した適切な値に比して小さい値を取ることとなり、上述したようなノッキングの誤検出が生じてしまうようになる。 【0014】 なおノックセンサによるインジェクタノイズの検出時期には若干のばらつきがあり、またノック強度LVPKが増大しても、それはノッキングの発生によるものである可能性は否定できないことから、インジェクタノイズの侵入を正確に確認することは困難となっている。またノック判定ゲート内にインジェクタノイズが部分的に侵入した状態では、その侵入に伴うノック強度LVPKの増大量についても正確に予測することは困難である。そのため、ノック判定ゲートへのインジェクタノイズの出入りに応じたノッキング検出の精度低下の抑制は、非常に困難なものとなっている。 【0015】 本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、機械ノイズの影響によるノッキング検出の精度低下の抑制を容易とすることのできるエンジンのノック制御装置を提供することにある。 ・・・(後略)・・・」(段落【0008】ないし【0015】) (ウ)「【0091】 図3には、バックグランドノイズレベル、ノック判定レベルVKD及びノックレベルとエンジン回転速度NEとの関係が示されている。ここでバックグランドノイズレベルは、ノッキングが発生しておらず、且つ上記ノック判定ゲート内に上述の機械ノイズが全く無い状態における上記ノック強度LVPKの大きさを表し、同図におけるノック判定レベルVKDは、そうした状態で定常運転されたときのその設定値を表している。またノックレベルは、検出の必要な最小レベルのノッキングが発生したときの上記ノック強度LVPKを表している。同図に示すようにバックグランドノイズ、ノック判定レベルVKD及びノックレベルはエンジン回転速度NEの上昇と共に大きくなる。 【0092】 更に同図3には、ノッキングが発生しておらず、且つ上記ノック判定ゲート内にインジェクタノイズが位置するときの上記ノック強度LVPKであるインジェクタノイズレベルとエンジン回転速度NEとの関係が併せ示されてもいる。このインジェクタノイズレベルと上記バックグランドノイズレベル、ノック判定レベルVKD及びノックレベルとの関係から、エンジン1の運転領域は、上記ノック判定ゲートへのインジェクタノイズの進入がノッキング検出に与える影響度合に応じて、次の3つの領域I?III に区分けすることができる。 【0093】 (領域I)この領域では、インジェクタノイズレベルがノックレベルと同程度、或いはノックレベルよりも大きく、インジェクタノイズとノッキングとの識別が困難であるため、ノック判定ゲート内にインジェクタノイズが存在するとノッキングを検出不能となる。したがってインジェクタノイズの発生時期を常にノック判定ゲート外としておく必要がある。このエンジン1では、エンジン回転速度NEが1400rpm未満のエンジン運転領域がこの領域Iとなっている。 【0094】 (領域II)この領域では、インジェクタノイズレベルは、ノックレベルより十分小さく、両者の識別は可能である。ただし、本来のバックグランドノイズレベルよりは十分に大きいため、ノック判定ゲート内にインジェクタノイズが無い状態から有る状態へと移行した直後に、上述したような誤判定を招く虞がある。このエンジン1ではエンジン回転速度NEが1400rpm以上、且つ3900rpm以下のエンジン運転領域がそうした領域IIとなっている。」(段落【0091】ないし【0094】) (エ)「【0095】 (領域III )この領域では、インジェクタノイズレベルがバックグランドノイズレベルと同程度、或いはそれよりも小さく、ノッキング検出に対するインジェクタノイズレベルの影響は十分許容できる範囲内となっている。このエンジン1では、エンジン回転速度NEが3900rpmを超えるエンジン運転領域がそうした領域III となっている。」(段落【0095】) (オ)「【0096】 このように上記領域I及び領域IIでは、インジェクタノイズの影響でノッキングを誤検出する虞がある。そこでノック判定ゲート内にインジェクタノイズが存在すること自体が許容できない上記領域Iでは、インジェクタノイズの発生時期が常にノック判定ゲート外となるように燃料噴射時期を予め設定しておくことで、ノッキングの誤検出を回避している。 【0097】 また上記領域IIについても、可能な限りは、燃料噴射時期の設定によってインジェクタノイズの発生時期をノック判定ゲート外とするようにしてはいる。しかしながら、燃焼性の確保や上記スワール制御等の都合により、すべての運転状況でインジェクタノイズをノック判定ゲート外とすることは非常に困難となっている。 【0098】 そこで本実施形態では、そうした上記領域IIでのノック判定ゲート内へのインジェクタノイズの出入りに伴うノッキングの誤検出を回避すべく、次の対策(A)、(B)を行っている。 (A)ノックセンサ21a,21bによるインジェクタノイズの検出時期を推定する。そしてその推定された検出時期が上記ノック判定ゲート外から同ゲート内への移行直前の時期にある場合、ノック判定ゲートの拡大や燃料噴射時期の変更を通じて、インジェクタノイズがノック判定ゲート内で確実に検出されるようにする。 (B)インジェクタノイズの検出時期がノック判定ゲート外から同ゲート内に移行した直後に、該インジェクタノイズによる上記ノック強度LVPKの増大分、上記ノック判定レベルVKDを嵩上げする。」(段落【0096】ないし【0098】) (2)引用文献2の記載事項から分かること ここで、上記(1)の(ア)ないし(オ)並びに図面の記載からみて、次のことが分かる。 (カ)上記(1)の(ア)及び(エ)並びに図3の記載からみて、図3の領域III(運転領域)においては、インジェクタノイズレベルがバックグラウンドノイズレベルと同程度或いはそれよりも小さくなっており、ノッキング検出に対するインジェクタノイズレベルの影響が許容できる範囲内となるといえる。 (3)引用文献2記載の技術 上記(1)及び上記(2)の記載を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。 「エンジンのノック制御装置において、インジェクタノイズレベルがバックグラウンドノイズレベルと同程度或いはそれよりも小さくなる領域IIIにおいては、ノッキング検出に対するインジェクタノイズレベルの影響が許容できる範囲内となる技術。」 2-2.対比 本願補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「ノックセンサ300」は、その機能、構造及び技術的意義からみて、本願補正発明における「センサ」に相当し、以下同様に、「タンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯AないしDの振動」は「振動強度のピーク位置となる複数の周波数領域の振動成分」に、「バンドパスフィルタ410ないし440」は「抽出手段」に、「内燃機関のノッキング判定装置」は「内燃機関のノック判定装置」に、それぞれ相当する。 また、引用文献1記載の発明における「ノッキングの有無を判定するS120、S122及びS126から成るノッキングの判定手段」は、「ノッキングの有無を判定するノック判定手段」という限りにおいて、本願補正発明における「抽出した複数の周波数領域からバックグラウンドノイズの振動強度に基づいて決定した周波数領域を除いた残りの周波数領域である特定周波数領域の振動強度に基づいてノッキングの有無を判定するノック判定手段」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用文献1記載の発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 「内燃機関の振動を検出するセンサと、 前記センサの検出信号からノッキング発生時に振動強度のピーク位置となる複数の周波数領域の振動成分を抽出する抽出手段と、 ノッキングの有無を判定するノック判定手段と、 を備える内燃機関のノック判定装置。」 <相違点> ノッキングの有無の判定に関し、 本願補正発明においては、「ノッキング以外の要因による振動であるバックグラウンドノイズを算出するバックグラウンドノイズ算出手段と、抽出した複数の周波数領域から前記バックグラウンドノイズの振動強度に基づいて決定した周波数領域を除いた残りの周波数領域である特定周波数領域の振動強度に基づいてノッキングの有無を判定するノック判定手段」を備え、「燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズが有る場合とない場合で差が無い程度にバックグラウンドノイズが大きくなる運転領域では、前記燃料噴射弁又は前記可変動弁装置の固有周波数を、前記特定周波数領域に含めてノッキングの有無を判定し、その他の運転領域では、燃料噴射弁又は可変動弁装置の固有周波数を前記特定周波数領域に含めずにノッキングの有無を判定する」のに対し、 引用文献1記載の発明においては、「ノッキング以外の要因による振動であるバックグラウンドノイズを算出するバックグラウンドノイズ算出手段」を備えているか不明であり、「ノッキングの有無を判定するS120、S122及びS126から成るノッキングの判定手段」を備えてはいるが、「抽出したタンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯AないしD(複数の周波数領域)からノッキング以外のノイズ(バックグラウンドノイズ)の振動強度に基づいて決定した周波数領域を除いた残りの周波数領域である特定周波数領域の振動強度に基づいて」ノッキングの有無を判定してはおらず、「燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズが有る場合とない場合で差が無い程度にバックグラウンドノイズが大きくなる運転領域では、前記燃料噴射弁又は前記可変動弁装置の固有周波数を、前記特定周波数領域に含めてノッキングの有無を判定し、その他の運転領域では、燃料噴射弁又は可変動弁装置の固有周波数を前記特定周波数領域に含めずにノッキングの有無を判定する」ものでなく、ノッキングの有無の判定の前処理として、「エンジンの低回転且つ低負荷の条件下では絶対振動レベルが小さく、インジェクタ104等の作動に伴い発生するノッキング以外のノイズ(バックグラウンドノイズ)の影響を受けやすいため、前記ノッキング以外のノイズ(バックグラウンドノイズ)の重畳に起因した影響が大きいタンジェンシャル1次、2次、3次、4次の共振モードにおける周波数帯AないしD(周波数領域)の重み付けを小さくする」点(以下、「相違点」という。なお、( )内に、相当する本願補正発明の発明特定事項を示す。)。 2-3.当審の判断 上記相違点について以下に検討する。 (1)本願補正発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「エンジンのノック制御装置」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本願補正発明における「内燃機関のノック判定装置」に相当し、以下同様に、「インジェクタノイズレベル」は「燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズ」に、「バックグラウンドノイズレベル」は「バックグラウンドノイズ」に、「領域III」は「運転領域」に、それぞれ相当する。 (2)したがって、引用文献2記載の技術を本願補正発明における用語を用いて記載すると、 「内燃機関のノック判定装置において、燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズがバックグラウンドノイズと同程度或いはそれよりも小さくなる運転領域においては、ノッキング検出に対する燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズの影響が許容できる範囲内となる技術。」 となる。 (3)ところで、引用文献2記載の技術を簡明に表現すると、内燃機関のノック判定装置において、バックグラウンドノイズと燃料噴射弁等の固有周波数の振動強度との運転領域に応じての関連傾向があるといえるものではあるが、バックグラウンドノイズ、燃料噴射弁等の固有周波数及び特定周波数領域の相互の関連は不明である。 さらに、引用文献2には、インジェクタノイズの影響の排除が行われていることが記載されているが、これは、ノック判定ゲートノック判定ゲートの変更や燃料噴射時期の変更、又はノック判定レベルの嵩上げ(上記2-1-2.(1)(オ)参照。)である。このことは、ノイズの影響が大きい周波数帯を判定対象から外すという本願補正発明の技術思想とは異なる。 したがって、引用文献2記載の技術には、 「抽出した複数の周波数領域から前記バックグラウンドノイズの振動強度に基づいて決定した周波数領域を除いた残りの周波数領域である特定周波数領域の振動強度に基づいてノッキングの有無を判定するノック判定手段を備え、燃料噴射弁又は可変動弁装置の駆動ノイズが有る場合とない場合で差が無い程度にバックグラウンドノイズが大きくなる運転領域では、前記燃料噴射弁又は前記可変動弁装置の固有周波数を、前記特定周波数領域に含めてノッキングの有無を判定し、その他の運転領域では、燃料噴射弁又は可変動弁装置の固有周波数を前記特定周波数領域に含めずにノッキングの有無を判定する」点(以下、「特定周波数領域によるノッキングの有無の判定事項」という。) があるとはいえない。 (4)以上のことから、引用文献1及び引用文献2のいずれにも前記特定周波数領域によるノッキングの有無の判定事項は記載も示唆もされていない。 そうすると、引用文献1記載の発明において、引用文献2記載の技術を適用できたとしても、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 (5)そして、本願補正発明は、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を特定することによって本願の明細書の段落【0066】ないし【0069】に記載された効果を奏するものである。 (6)また、請求項2ないし4に係る発明はいずれも本願補正発明である請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含むものであるから、請求項2ないし4に係る発明も少なくとも上記(1)ないし(5)で検討したこととと同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2-4.まとめ したがって、本件補正発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 3.むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-02-20 |
出願番号 | 特願2009-290209(P2009-290209) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F02D)
P 1 8・ 575- WY (F02D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 寺川 ゆりか、小川 恭司 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
久島 弘太郎 柳田 利夫 |
発明の名称 | 内燃機関のノック判定装置 |
代理人 | 三田 康成 |
代理人 | 後藤 政喜 |
代理人 | 飯田 雅昭 |
代理人 | 野末 貴弘 |