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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1284840
審判番号 不服2013-8784  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-14 
確定日 2014-03-05 
事件の表示 特願2008-190482「コンテンツ配信システム、コンテンツ受信方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日出願公開、特開2010- 28693、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.経緯
1.手続
本願は、平成20年7月24日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成24年 8月10日(起案日)
手続補正 :平成24年10月11日
拒絶査定 :平成25年 2月12日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成25年 5月14日
手続補正 :平成25年 5月14日
拒絶理由通知(前置) :平成25年 6月10日(起案日)
手続補正 :平成25年 8月12日
前置審査報告 :平成25年 8月23日(起案日)
審尋 :平成25年 9月11日(起案日)
回答 :平成25年11月18日

2.原査定の概要
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の請求項1ないし10に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

記(刊行物)
刊行物1:特表2005-505999号公報
刊行物2:国際公開第2004/53842号
刊行物3:特開2004-348260号公報

また、前置審査において通知された拒絶理由に下記の刊行物4を提示しており、前置報告において下記の刊行物5ないし9を追加提示している。

記(刊行物)
刊行物4:特開2003-67280号公報
刊行物5:特開2003-162470号公報
刊行物6:国際公開第2008/74415号
刊行物7:特開2005-151000号公報
刊行物8:特開2003-208398号公報
刊行物9:特開2002-165155号公報

第2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成25年8月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載した事項により特定される下記のとおりのものである。


【請求項1】
コンテンツ配信サーバからコンテンツを受信するコンテンツ受信装置であって、
コンテンツをノンリアルタイムで受けるノンリアルタイム受信手段と、
少なくとも1つのコンテンツの再生開始時刻とそのコンテンツの配信方法およびファイルサイズとを含む番組情報を参照する番組情報参照手段と、
前記配信方法がノンリアルタイム配信であるコンテンツの前記ファイルサイズと前記コンテンツ配信サーバからの転送レートとに基づいて前記コンテンツのノンリアルタイム配信所要時間を推定する所要時間推定手段と、
前記コンテンツの再生開始時刻と現在の時刻と前記ノンリアルタイム配信所要時間とに基づいて、前記ノンリアルタイム受信手段によるコンテンツ受信をスケジューリングし、ノンリアルタイム配信を受けるべき他のコンテンツとの間でノンリアルタイム配信を受ける優先度を調整することによりコンテンツ受信を再スケジューリングするスケジューリング手段と、
前記ノンリアルタイム受信手段により受信したコンテンツを保存するコンテンツ保存手段と、
を有し、前記ノンリアルタイム配信されるコンテンツの再生開始時刻が当該コンテンツを提供するコンテンツ提供者により予め決められていることを特徴とするコンテンツ受信装置。

【請求項2】
前記スケジューリング手段は、前記ノンリアルタイム配信されるコンテンツの前記再生開始時刻前に当該コンテンツの受信を開始するスケジューリングを行うことを特徴とする請求項1記載のコンテンツ受信装置。

【請求項3】
請求項1または2に記載のコンテンツ受信装置を含む電子機器システムであって、
前記番組情報から所望のコンテンツを選択するユーザ操作を可能にする情報入出力手段と、
前記コンテンツ受信装置をネットワークに接続するためのデータ転送インタフェースと、
再生するコンテンツを出力する出力手段と、
をさらに備えたことを特徴とする電子機器システム。

【請求項4】
コンテンツ配信サーバからコンテンツを受信するコンテンツ受信装置におけるコンテンツ受信方法であって、
番組情報参照手段が少なくとも1つのコンテンツの再生開始時刻とそのコンテンツの配信方法およびファイルサイズとを含む番組情報を参照し、
スケジューリング手段が、前記配信方法がノンリアルタイム配信であるコンテンツの前記ファイルサイズと前記コンテンツ配信サーバからの転送レートとに基づいて前記コンテンツのノンリアルタイム配信所要時間を推定し、前記コンテンツの再生開始時刻と現在の時刻と前記ノンリアルタイム配信所要時間とに基づいてノンリアルタイム配信によるコンテンツ受信をスケジューリングし、ノンリアルタイム配信を受けるべき他のコンテンツとの間でノンリアルタイム配信を受ける優先度を調整することによりコンテンツ受信を再スケジューリングし、
ノンリアルタイム配信により受信したコンテンツをコンテンツ保存手段に保存し、
前記ノンリアルタイム配信されるコンテンツの再生開始時刻が当該コンテンツを提供するコンテンツ提供者により予め決められていることを特徴とするコンテンツ受信方法。

【請求項5】
前記スケジューリング手段が、前記ノンリアルタイム配信されるコンテンツの前記再生開始時刻前に当該コンテンツの受信を開始するようにスケジューリングすることを特徴とする請求項4に記載のコンテンツ受信方法。

【請求項6】
コンテンツ配信サーバからコンテンツを受信するコンテンツ受信装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
コンテンツをノンリアルタイムで受けるノンリアルタイム受信機能と、
少なくとも1つのコンテンツの再生開始時刻とそのコンテンツの配信方法およびファイルサイズとを含む番組情報を参照する番組情報参照機能と、
前記配信方法がノンリアルタイム配信であるコンテンツの前記ファイルサイズと前記コンテンツ配信サーバからの転送レートとに基づいて前記コンテンツのノンリアルタイム配信所要時間を推定し、前記コンテンツのコンテンツ提供者により予め決められている再生開始時刻と現在の時刻と前記ノンリアルタイム配信所要時間とに基づいて、前記ノンリアルタイム受信機能によるコンテンツ受信をスケジューリングし、ノンリアルタイム配信を受けるべき他のコンテンツとの間でノンリアルタイム配信を受ける優先度を調整することによりコンテンツ受信を再スケジューリングするスケジューリング機能と、
前記ノンリアルタイム受信機能により受信したコンテンツを保存するコンテンツ保存機能と、
をコンピュータで実現することを特徴とするプログラム。

第3.当審の判断
1.刊行物に記載される発明
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1である特表2005-505999号公報には、図面とともに、次に掲げる事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、データネットワークを介して電子情報コンテンツを供給する方法に係る。本発明は更に、この方法と共に用いる消費者電子(CE)機器と、この方法と共に用いるユーザインタフェースに係る。」
「【0012】
変動する帯域幅利用可能性及び予測可能性の問題と、上述した傾向が与えられるに、発明者は、インターネットを介して高品質のビデオ材料をユーザに低費用で提供することを提案する。発明者は更に、特定の物理的な場所におけるネットワーク帯域幅のより良好な活用のためのサービスモデルを提案する。発明者は、オーディオ/ビデオ材料の進歩した予約システムとして実施されるデジタルケータリングサービスを提案する。このシステムは、消費者が、好適には、適切なEPGインタフェースを介して、デジタルオーディオ/ビデオ材料を選択、注文、及び、再生することを可能にする。インタフェース及びセレクションは、ユーザ用にカスタマイズされることが好適である。このシステムは、ダウンロードしたコンテンツを格納するために、例えば、STB、TiVo、PC等のローカルの記憶可能性を用いることが好適である。ヘッドエンドコンテンツサーバ及び/又はルータは、需要を予測し、ネットワーク負荷を平均し、コンテンツ分配ネットワークの効率を最大限にするために、ダウンロードスケジュール情報をうまく利用する。エッジネットワークサーバ及びピア・ツー・ピアネットワーキング可能性は、追加のキャッシング及びルーティング可能性を与えるようピーク及び/又はオフピーク時にも用いられることが好適である。サービスは更に、デジタルオーディオ及び/又はビデオコンテンツを有するカスタマイズされる「特別イベント」のパッケージの予定配信を提供することが好適である。サービスは更に、更なるコンテンツ圧縮/解凍、及び、例えば、ワイヤレスクライアント間といったローカルネットワーク内でのコンテンツの分配を可能にするソフトウェアパッケージを提供し得る。顧客は、航空会社及び他の事前予約制度と似たような方法で、最先の都合の良いときにコンテンツを注文するようインセンティブが与えられることが可能である。
【0013】
より具体的には、本発明は、データネットワークを介してコンテンツをケータリングする方法に係る。本発明の方法は、特定の時間までに、再生のための特定のコンテンツピースをネットワークを介して配信することを要求可能にする段階と、ネットワークの少なくとも1つのセグメント上のデータトラヒックの帯域幅プロファイルの制御下で、特定の時間までに配信を完了する段階とを有する。この要求は、コンテンツの消費者、又は、例えば、コミュニティ内のブロードキャスト又はマルチキャストの代わりに要求を指定するネットワーク又はネットワークセグメント上のコンテンツブローカといった別のユーザによってなされる。消費者は、指定した時間までに特定のコンテンツが配信されるべきアドレスも指定し得る。このコンテキストにおいて、ユージン・シュテインのために1999年4月1日に出願された「TIME AND LOCATION DRIVEN PERSONALIZED TV」なる名称の米国特許出願番号09/283,545(代理人整理番号PHA23,633)を参照されたい。
【0014】
異なる時間における配信の完了のために選択可能な異なるコンテンツピースが提供されることが好適である。配信のために選択可能な各コンテンツピースが示されるメニュが与えられることが好適である。例えば、メニュは、EPGに似たGUIを有するディスプレイモニタの画面上に表示される。配信のためのピースを選択するためには、ユーザは、当該のピースの指示又は表示により占められる画面の当該部分に、ハイライト又はカーソルを
位置付けるか、又は、タッチスクリーンに触る。ドロップダウンメニュ又は他のGUI素子は、ユーザが、意図する再生日時を選択する、若しくは、指定することを可能にする。この情報、即ち、選択されたコンテンツピースと意図する再生日時を示すデータは、例えば、IPアドレスであるこの消費者の識別子と共に、サービスプロバイダに送信される。」
「【0021】
図1は、本発明におけるシステム100のブロック図である。システム100は、配信準備システム102と、運搬ネットワーク104と、消費者機器106を有する。システム102は、例えば、デジタル形式の映画のインベントリといったビデオコンテンツ情報を有するビデオデータベース108を有する。システム102は更に、例えば、デジタル形式の音楽ファイルといったオーディオコンテンツを有するオーディオデータベース110を有する。システム102は更に、アグレゲータ112及び配信制御器114を有する。アグレゲータは、例えば、ネットワーク104を介して消費者106に供給するために、(例えば、EPGに似た)メニュを編集する。メニュは、近い将来、消費者の106において再生するのに利用可能である、消費者106によって選択可能なコンテンツピースを示す。消費者106が、EPGから特定のコンテンツピースを選択し、ネットワーク104を介して、このコンテンツピースが特定の時間に再生のために利用可能であるよう予約をしたと仮定する。システム102は、要求を受信すると、指定された最終期限までに要求されたコンテンツが消費者に利用可能となるよう要求されたコンテンツの準備を始める要求ハンドラ116を有する。制御器114は、ネットワークモニタ118とユーザプロファイルデータベース120と相談する。ネットワークモニタ118は、消費者機器106へのコンテンツの配信に関連のあるネットワーク104の1つ以上の特定のセグメント上のトラヒック状態を監視する。ここから、解析によって、一般的な時間間隔におけるセグメントの一般的な負荷のプロファイルを作成することができる。ユーザプロファイルデータベース120は、消費者106のネットワークアドレスを有する。これから、関連のエッジサーバ122は、消費者126に関連があると知られる。消費者126によって再生のための時間として指定される時間に基づいて、且つ、モニタ118によって決定されるネットワーク状態に基づいて、配信制御器114は、関連のコンテンツが配信ルータ128を介して時間に遅れずに到達するよう、エッジサーバ122を介してユーザ126に関連のコンテンツを供給する。
【0022】
ユーザ126が、十分に大きい記憶装置をローカルに有さない場合、エッジサーバ122は、ユーザに代わってメモリ124にコンテンツをキャッシュし、ユーザ126が希望するときにストリーミングし得る。エッジサーバがこのようにユーザ126用のコンテンツを受信する場合、別のユーザ130に、この別のユーザ130に適応されるメニュにおいて同じコンテンツが提供されることが可能である。」
「【0030】
コンテンツサーバは、デジタルコンテンツを格納し、ネットワークに対しデータインタフェースを与える。帯域幅/配信制御手段は、通常のネットワーク利用パターン、前から存在する配信注文、ルーティング及びキャッシングオプションに基づいて、配信時間を計算し、且つ、最適化することが可能にされる。この制御手段は更に、慣習上ユーザ制限内であるアドホック(背景、注文されていない)コンテンツのダウンロードに、帯域幅制限を課すことが可能にされる。制御手段は、コンテンツパケットに優先順位を割当てることができ、それにより、ルータは、注文されたコンテンツを時間に間に合うように配信することを確実にするようそのようなパケットを高速に処理することができる。ルータは、特に、ピークネットワークトラヒック時に、優先順位に基づいてデータパケットを処理することが可能にされる。データキャッシュを、遅延された低い優先順位を有するパケットの不必要な損失を回避するためにルータと共に用いることができる。エッジネットワークストレージサーバは、コンテンツ配信を更に最適化するために用いることができる。特定の場所からの同じコンテンツに対する要求はまとめられ、コンテンツは、コンテンツからその場所に最も近いエッジネットワークノードに転送されることが可能である。次に、コンテンツは、所定の予定時間に、その場所にある個々のクライアントに配信される。」

これらの記載から、刊行物1には下記の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。

記(引用発明1)
配信準備システム(コンテンツサーバ、サービスプロバイダ)からネットワークを介してコンテンツが配信される消費者機器であって、
コンテンツの配信はダウンロード形式によるものであり、ダウンロードしたコンテンツを格納するためのローカル記憶手段と、
近い将来、消費者機器106によって再生利用可能である選択可能なコンテンツピースを示すEPGに似たメニュが提供されて、ユーザが配信を要求するコンテンツピースと配信の最終期限を選択しサービスプロバイダに送信する手段と、
を有し、コンテンツサーバは、注文されたコンテンツを時間に間に合うよう配信を完了させるために、ネットワークのトラヒック状態を監視して配信時間を計算し、コンテンツパケットの優先順位に基づいてダウンロードスケジュールを最適化して配信する、
消費者機器。

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2である国際公開第2004/53842号には、図面とともに、次に掲げる事項が記載されている。なお、括弧内に当審で作成した日本語訳を添付する。

“Disclosed herein are embodiments of a digital video recorder (DVR) and an accompanying DSL video distribution service. The DSL service provides video content to the DVR in either a real-time transmission mode or a non-real-time transmission mode.”(8頁[0010])
(デジタルビデオレコーダ(DVR)および付随するDSL映像配信サービスの実施例が本明細書に開示される。DSLサービスは、リアルタイム伝送モード又は非リアルタイム伝送モードのいずれかでDVRにビデオコンテンツを提供する。)

“As indicated by block 24 in FIG. 2, a method of providing the service comprises presenting a list of video programs 26 that can be downloaded. The list of video programs 26 is communicated from the video server 10 to the digital video recorder 14 via the DSL 16, and displayed by the display device 22.”(9頁[0016])
(図2のブロック24で示すように、サービスを提供する方法は、ダウンロード可能なビデオプログラムのリスト26を提示することを含む。ビデオプログラムのリスト26は、ビデオサーバ10からDSL16を介してデジタルビデオレコーダ14に配信され、表示装置22に表示される。)

“As indicated by block 32, the method comprises receiving a selection 34 of one or more individual programs that the user wants to download. The selection 34 is made using the user input interface 20 based on the list 26, and received by the digital video recorder 14.”(10頁[0017])
(ブロック32に示されるように、この方法は、ユーザがダウンロードしたい一つ以上の個々のプログラムの選択34を受信することを含む。選択34はリスト26に基づいてユーザ入力インタフェース20を用いて行われ、デジタルビデオレコーダ14によって受信される。)

“As indicated by block 36, the user may select and/or modify parameters 40 which affect the download of the selected programs. The selection and/or modification of the parameters 40 is made by the user using the user input interface 20, and received by the digital video recorder 14. Examples of the parameters include, but are not limited to, a start time, a completion time, bandwidth, quality, and real/non-real time.”(10頁[0018])
(ブロック36に示されるように、ユーザは選択したプログラムのダウンロードに影響を与えるパラメータ40を選択および/または変更することができる。パラメータ40の選択および/または変更は、ユーザ入力インタフェース20を用いてユーザによって行われ、デジタルビデオレコーダ14によって受信される。パラメータの例としては、開始時刻、終了時刻、帯域幅、品質、および非リアルタイム/リアルタイムを含み、これらに限定されない。)

“The start time specifies either when the download process is to begin or when the customer may begin to view a program. Examples of a download-related start time parameter include start downloading now, start downloading tonight, start downloading tomorrow, start downloading next week, start downloading when the video becomes available, and start downloading in a specified amount of time (e.g. start downloading in 2 hours) . Examples of a customer- viewing start time parameter include make viewable at a particular time (e.g. 8:00 this evening), make viewable tonight, make viewable tomorrow, make viewable next week, and make viewable in a specified amount of time (e.g. make viewable in 2 hours) . Based on the customer-viewing start time parameter, a download-related start time is determined. Here, the download-related start time may be calculated in software to ensure that the customer may begin viewing the program at the customer-viewing start time. For example, if the customer wishes to begin viewing a video at 8:00 this evening, the software would calculate when to begin the downloading the video so that enough is received/buffered by 8:00.”(10頁[0019])
(開始時刻は、ダウンロードプロセスが開始される時、又は顧客が番組を視聴し始めることができる時のいずれかに指定される。ダウンロードに関連する開始時刻のパラメータの例は、今すぐダウンロード、今夜にダウンロードを開始、明日にダウンロードを開始、来週にダウンロードを開始、ビデオが使用可能になったときにダウンロードを開始、指定された時間にダウンロードを開始(例えば2時間後にダウンロードを開始)が含まれる。顧客の視聴開始時刻のパラメータの例としては、特定の時刻(例えば今夜8時)に視聴可能とする、今夜視聴可能とする、明日視聴可能とする、来週視聴可能とする、指定された時間に視聴可能とする(例えば2時間後に視聴可能とする)が含まれる。顧客の視聴開始時刻パラメータに基づいて、ダウンロードに関連する開始時刻を決定する。ここで、ダウンロードに関連する開始時刻は、顧客が視聴開始時刻に番組を視聴し始めることができることを保証するために、ソフトウェアで計算することができる。例えば、顧客が今夜8時にビデオの視聴を開始したい場合、ソフトウェアは、8時までにビデオの受信/バッファが十分間に合うようなダウンロード開始時間を計算する。)

“The bandwidth parameter specifies an amount of bandwidth to dedicate to the download process. Examples of the bandwidth parameter include use all bandwidth, use a specified fraction of available bandwidth, use a specified absolute amount of bandwidth, save a specified amount of bandwidth (e.g. 64 kbps) for other purposes, and use a qualitative amount of bandwidth (e.g. low, medium or high).”(11頁[0021])
(帯域幅パラメータは、ダウンロードプロセスの専用帯域幅を指定します。帯域幅パラメータの例としては、すべての帯域幅、使用可能な帯域幅の指定した割合、帯域幅の指定した絶対量、他の目的のための帯域幅の指定された量(例えば64kbps)を確保した残りの帯域幅、帯域幅の品質(例えば低、中、高)を含む。)

“As indicated by block 42, the method comprises creating a download schedule 44 based on which programs were selected 34 and the download parameters 40. The download schedule 44 lists the various selected programs, their download parameters such as start time or completion time, and indicates progress of any in-progress downloads. The download schedule 44 is displayed by the display device 22 to allow the user to edit the download schedule 44, change download parameters 40, discontinue one or more downloads, or perform other download schedule modification acts using the user input interface 20.”(12頁[0024])
(ブロック42に示されるように、この方法は、選択されたプログラム34とダウンロードパラメータ40に基づいて、ダウンロードスケジュール44を作成することを含む。ダウンロードスケジュール44は、様々な選択されたプログラムや、そのプログラムの開始時刻、終了時刻、および進行中のダウンロードの進行状況などのダウンロードパラメータを表示します。ダウンロードスケジュール44は、ユーザがダウンロードスケジュール44を編集できるように表示装置22により表示され、ユーザ入力インタフェース20を使用して、ダウンロードパラメータ40の変更、一つ以上のダウンロードの中止、他のダウンロードスケジュールの変更を行う。)

“As indicated by block 46, the method comprises downloading the selected video programs on either a realtime or a non-real-time basis to the user's digital video recorder 14. The selected video programs are downloaded from the video server 10 via the DSL 16. The digital video recorder 14 stores the downloaded video programs as digital data in a memory 50.”(12頁[0025])
(ブロック46に示されるように、この方法は、ユーザのデジタルビデオレコーダ14にリアルタイム又は非リアルタイムのいずれかで、選択されたビデオプログラムをダウンロードすることを含む。選択されたビデオプログラムは、DSL16を介してビデオサーバ10からダウンロードされる。デジタルビデオレコーダ14は、ダウンロードしたビデオプログラムをメモリ50内にデジタルデータとして格納する。)

これらの記載から、刊行物2には下記の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。

記(引用発明2)
ビデオサーバ10からDSL16を介してリアルタイム又は非リアルタイムのいずれかで、ビデオプログラムをダウンロードするデジタルビデオレコーダ14であって、
ダウンロード可能なビデオプログラムのリスト26がビデオサーバ10から配信され、ユーザがダウンロードしたい一つ以上の個々のプログラムの選択し、
選択したプログラムのダウンロードに関する視聴開始時刻、視聴終了時刻、帯域幅、品質、および非リアルタイム/リアルタイムなどのパラメータをユーザが選択し、
デジタルビデオレコーダ14のソフトウェアが、視聴開始時刻、帯域幅などのダウンロードパラメータに基づいて、ダウンロードに関連する開始時刻を決定するとともに、ダウンロードスケジュール44を作成し、
ダウンロードスケジュール44はユーザにより編集し変更が行われる、
デジタルビデオレコーダ14。

(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3である特開2004-348260号公報には、図面とともに、次に掲げる事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数拠点にそれぞれ配置され、同一サービスを提供する複数端末間のサービス提供実行の同期を実現する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の汎用コンピュータの低廉化に伴い、多くの拠点にコンピュータ装置による端末を設置し、映像再生などのサービスを提供する事例が多くなっている。このようなサービスの典型的な要求条件として、例えば、あるチェーン店舗の支店の店先で映像を表示する場合に、各店舗に配信する映像は同期していることが望まれる。」

「【0050】
(第一実施形態)
図1にシステム全体の構成を示す。スケジュールファイル(F)を送信するスケジュールファイル配信サーバ(Sf)、サービス提供に必要なデータ(D)の配信サーバ(Sd)、および本発明によるクライアント装置(C)で構成される。」

「【0053】
クライアント装置(C)の構成を図2に示す。クライアント装置(C)はスケジュール配信サーバ(Sf)からスケジュールファイル(F)をダウンロードするスケジュールファイル取得手段1、スケジュールファイルに基づいてサービス提供手段を選択するサービス実行手段2、実際にサービスを提供するサービス提供手段3で構成される(請求項1、14)。」

「【0054】
スケジュールファイルの例を図3に示す。当実施形態におけるスケジュールファイルは、時間帯、第一から第三優先にそれぞれ設定されたサービス提供手段およびコンテンツ名またはURL、サービスがサービス時間帯内で終了した場合に参照される第一の動作ポリシ(請求項2、15)、サービスがサービス時間帯内で終了しなかった場合に参照される第二の動作ポリシで構成される(請求項3、16)。
【0055】
(第一実施例)
当スケジュールファイルを受け取った時の処理の時間経過について図4を用いて説明する。以下の説明では当スケジュールファイルを受け取った時間を2003年2月14日午前3:00(日本標準時:JST)であるとする。
1.2003年2月14日午前3:00(JST)にスケジュールファイル取得手段が当ファイルを取得する。
2.2003年2月14日午前5:00(JST)にhttp://dl.ntt.jp/1.mpg,http://dl.ntt.jp/2.mpgにアクセスし、2003年2月14日午前8:00(JST)までに映像ファイル1.mpgおよび2.mpgをダウンロードしておく。
3.2003年2月14日午前10:00(JST)に事前ダウンロードによって取得した映像ファイル1.mpgを映像再生プレイヤを用いて自動的に再生する。
4.映像ファイル1.mpgの長さが35分であったとすると、2003年2月14日午前10:35(JST)に映像ファイル再生が終了する。1.mpgの再生サービス提供時間帯は2003年2月14日11:00(JST)までであるため、残りの時間帯の動作についてスケジュールファイルに記載の第一の動作ポリシを参照し、「繰り返し再生」が指定されているため、再度1.mpgの再生を開始する(請求項7、20)。
5.2003年2月14日午前11:00(JST)において、2回目の1.mpgの再生途中であるが、1.mpgの再生サービス提供時間帯が終了するため、スケジュールファイルに記載の第二の動作ポリシを参照し、「当サービスを終了」が指定されているため、1.mpgの再生を終了する(請求項9、22)。
6.1.mpgが再生終了後、rtsp://li.ntt.jp/live.mpgにアクセスし、ライブ配信された映像ストリームを再生する。
7.2003年2月14日午前11:55(JST)において、ライブ配信が終了する。Live.mpgの再生サービス提供時間帯は2003年2月14日正午(JST)までであるため、残りの時間帯の動作についてスケジュールファイルに記載の第一の動作ポリシを選択し、http://pict.ntt.jp/wait.jpgをプレイヤで表示する。
8.2003年2月14日正午(JST)に事前ダウンロードによって取得した映像ファイル2.mpgを映像再生プレイヤを用いて自動的に再生する。
9.映像ファイル2.mpgの長さが40分であったとすると、2003年2月14日午後12:40(JST)に映像ファイル再生が終了する。2.mpgの再生サービス提供時間帯は2003年2月14日13:00(JST)までであるため、残りの時間帯の動作についてスケジュールファイルに記載の第一の動作ポリシを参照し、「ローカルポリシに従う」が指定されていることからクライアント装置毎に動作が異なる。例えば、クライアント装置(C1)では繰り返し再生が指定され、クライアント装置(C2)では処理終了が指定されているものとする。従って、クライアント装置(C1)では2.mpgを繰り返し再生し、クライアント装置(C2)では2.mpgの再生終了後プレイヤは停止する。
【0056】
このようにクライアント装置の動作をスケジュールファイルに基づいて制御することで、指定された時間に指定されたサービスを提供することが可能となる。」

これらの記載から、刊行物3には下記の発明(以下、「引用発明3」という)が記載されていると認められる。

記(引用発明3)
スケジュールファイル配信サーバ(Sf)からスケジュールファイル(F)を受信し、配信サーバ(Sd)からサービス提供に必要なデータ(D)を受信するクライアント装置(C)であって、
スケジュールファイルには、コンテンツのサービス時間帯、サービス提供手段、およびコンテンツ名が含まれ、
事前ダウンロードサービスの場合は、映像ファイル1.mpgおよび2.mpgを再生時間前にダウンロードしておき、指定された時間に自動的に再生し、
リアルタイム配信サービスの場合は、指定された時間にライブ配信された映像ストリーミングを再生することにより、
複数拠点にそれぞれ配置され、同一サービスを提供する複数端末間のサービス提供実行の同期を実現する、
クライアント装置(C)。

2.請求項1に係る発明について
(1)対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という)と引用発明1とを対比すると次のことが認められる。

引用発明1は「配信準備システム(コンテンツサーバ、サービスプロバイダ)からネットワークを介してコンテンツが配信される消費者機器」であり、「配信準備システム(コンテンツサーバ、サービスプロバイダ)」が本願発明1の「コンテンツ配信サーバ」に相当し、「コンテンツが配信される消費者機器」が本願発明1の「コンテンツを受信するコンテンツ受信装置」に相当するものといえる。

引用発明1は「コンテンツの配信はダウンロード形式によるもの」であるので、引用発明1のコンテンツの配信を受ける消費者機器がコンテンツのダウンロード形式によるダウンロード受信手段を備えていることは明白である。そして、ダウンロード形式によるコンテンツの配信はコンテンツのノンリアルタイムの配信のことであるから、引用発明1は、本願発明1の「コンテンツをノンリアルタイムで受けるノンリアルタイム受信手段」を備えているものといえる。
また、引用発明1の「ダウンロードしたコンテンツを格納するためのローカル記憶手段」は、本願発明1の「前記ノンリアルタイム受信手段により受信したコンテンツを保存するコンテンツ保存手段」に相当する。

引用発明1は「近い将来、消費者機器106によって再生利用可能である選択可能なコンテンツピースを示すEPGに似たメニュが提供されて、ユーザが配信を要求するコンテンツピースと配信の最終期限を選択しサービスプロバイダに送信する手段」を備えている。
ここで、本願発明1の「番組情報を参照する番組情報参照手段」という技術事項にについて確認しておくと、本願の明細書の段落[0035]の「番組情報参照部47により番組情報登録・提供システム20から受け取った番組情報」という記載によれば、番組情報を外部から受け取って参照するものであると認められる。
そうすると、引用発明1のEPGに似たメニュの提供を受けることは、本願発明1の「少なくとも1つのコンテンツの番組情報を参照する番組情報参照手段」を備えているものといえる。
ただし、本願発明1のコンテンツの番組情報は、「コンテンツの再生開始時刻とそのコンテンツの配信方法およびファイルサイズとを含む」ものであるのに対し、引用発明1のコンテンツの番組情報はそのような情報を含んでいない点、また、本願発明1は「前記ノンリアルタイム配信されるコンテンツの再生開始時刻が当該コンテンツを提供するコンテンツ提供者により予め決められている」ものであるのに対し、引用発明1はユーザが配信の最終期限を選択するものである点において、両者は相違する。

本願発明1は、「前記配信方法がノンリアルタイム配信であるコンテンツの前記ファイルサイズと前記コンテンツ配信サーバからの転送レートとに基づいて前記コンテンツのノンリアルタイム配信所要時間を推定する所要時間推定手段」と、「前記コンテンツの再生開始時刻と現在の時刻と前記ノンリアルタイム配信所要時間とに基づいて、前記ノンリアルタイム受信手段によるコンテンツ受信をスケジューリングし、ノンリアルタイム配信を受けるべき他のコンテンツとの間でノンリアルタイム配信を受ける優先度を調整することによりコンテンツ受信を再スケジューリングするスケジューリング手段」を備えており、外部から受け取った番組情報に含まれるコンテンツの再生開始時刻およびファイルサイズを用いたコンテンツのノンリアルタイム配信所要時間の推定、およびコンテンツ受信のスケジューリング/再スケジューリングをコンテンツ受信装置が行うものであるのに対し、引用発明1は、コンテンツサーバが、「注文されたコンテンツを時間に間に合うように配信を完了させるために、ネットワークのトラヒック状態を監視して配信時間を計算し、コンテンツパケットの優先順位に基づいてダウンロードスケジュールを最適化し配信する」ものであり、コンテンツの配信時間の計算、およびコンテンツダウンロードのスケジューリングはコンテンツサーバが行うものであるため、引用発明1は本願発明1のような「所要時間推定手段」、および「スケジューリング手段」を備えていない点で、両者は相違する。

以上をまとめると、本願発明1と引用発明1との一致点および相違点は以下のとおりである。

[一致点]
コンテンツ配信サーバからコンテンツを受信するコンテンツ受信装置であって、
コンテンツをノンリアルタイムで受けるノンリアルタイム受信手段と、
少なくとも1つのコンテンツの番組情報を参照する番組情報参照手段と、
前記ノンリアルタイム受信手段により受信したコンテンツを保存するコンテンツ保存手段と、
を有するコンテンツ受信装置。

[相違点1]
本願発明1のコンテンツの番組情報は、「コンテンツの再生開始時刻とそのコンテンツの配信方法およびファイルサイズとを含む」ものであるのに対し、引用発明1のコンテンツの番組情報はそのような情報を含んでいない点。

[相違点2]
本願発明1は「前記ノンリアルタイム配信されるコンテンツの再生開始時刻が当該コンテンツを提供するコンテンツ提供者により予め決められている」ものであるのに対し、引用発明1はユーザが配信の最終期限を選択するものである点。

[相違点3]
本願発明1は、「前記配信方法がノンリアルタイム配信であるコンテンツの前記ファイルサイズと前記コンテンツ配信サーバからの転送レートとに基づいて前記コンテンツのノンリアルタイム配信所要時間を推定する所要時間推定手段」と、「前記コンテンツの再生開始時刻と現在の時刻と前記ノンリアルタイム配信所要時間とに基づいて、前記ノンリアルタイム受信手段によるコンテンツ受信をスケジューリングし、ノンリアルタイム配信を受けるべき他のコンテンツとの間でノンリアルタイム配信を受ける優先度を調整することによりコンテンツ受信を再スケジューリングするスケジューリング手段」を備えており、外部から受け取った番組情報に含まれるコンテンツの再生開始時刻およびファイルサイズを用いたコンテンツのノンリアルタイム配信所要時間の推定、およびコンテンツ受信のスケジューリング/再スケジューリングをコンテンツ受信装置が行うものであるのに対し、引用発明1は、コンテンツサーバが、「注文されたコンテンツを時間に間に合うように配信を完了させるために、ネットワークのトラヒック状態を監視して配信時間を計算し、コンテンツパケットの優先順位に基づいてダウンロードスケジュールを最適化し配信する」ものであり、コンテンツの配信時間の計算、およびコンテンツダウンロードのスケジューリングはコンテンツサーバが行うものであるため、引用発明1は本願発明1のような「所要時間推定手段」、および「スケジューリング手段」を備えていない点。

(2)相違点の判断
a.相違点1および相違点2について
引用発明3は、予め提供者側で決めたコンテンツのサービス時間帯と、配信が事前ダウンロードサービスかリアルタイム配信サービスであるかのサービス提供手段を含むスケジュールファイルを、コンテンツの提供者側であるサーバ側から受信するものであり、相違点1の一部である「コンテンツの再生開始時刻とそのコンテンツの配信方法とを含む」番組情報、および相違点2に係る「前記ノンリアルタイム配信されるコンテンツの再生開始時刻が当該コンテンツを提供するコンテンツ提供者により予め決められている」に相当する技術事項を有している。
しかしながら、引用発明1は、ユーザが配信を要求するコンテンツピースと配信の最終期限すなわち再生開始時間を選択するサービス形態の発明であり、引用発明1に引用発明3のようなコンテンツの提供者側で予めコンテンツのサービス時間帯を定めたサービス形態の発明を適用しようとする動機付けはなく、上記相違点1および2に係る技術事項は引用発明1に引用発明3を適用することにより当業者が容易になし得るものとはいえない。

b.相違点3について
引用発明2は、「デジタルビデオレコーダ14のソフトウェアが、ユーザが選択した視聴開始時刻、帯域幅などのダウンロードパラメータに基づいて、ダウンロードに関連する開始時刻を決定し、ダウンロードスケジュール44を作成し、ダウンロードスケジュール44はユーザにより編集し変更が行われる」ものであり、ダウンロードのスケジューリングは何らかの優先度に基づいて行われるものと認められるので、引用発明2は上記相違点3に係る「前記配信方法がノンリアルタイム配信であるコンテンツの前記ファイルサイズと前記コンテンツ配信サーバからの転送レートとに基づいて前記コンテンツのノンリアルタイム配信所要時間を推定する所要時間推定手段」と、「前記コンテンツの再生開始時刻と現在の時刻と前記ノンリアルタイム配信所要時間とに基づいて、前記ノンリアルタイム受信手段によるコンテンツ受信をスケジューリングし」と同様の技術事項を有しているものである。
しかしながら、引用発明2は、ユーザが選択した視聴開始時刻や帯域幅を用いてダウンロードの所要時間の推定とダウンロードスケジュールを作成するものであり、本願発明1のような外部から受け取った番組情報に含まれるコンテンツの再生開始時刻およびファイルサイズを用いて所要時間の推定とダウンロードスケジュールを作成するものではないため、上記相違点3に係る技術事項は、引用発明2から容易に想到し得るものとはいえない。

以上のように、上記相違点1ないし3は、引用発明1に引用発明2および3を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(3)その他の理由について
引用発明2に引用発明3を適用することによって本願発明1を当業者が容易になし得るものであるかを検討すると、引用発明2も引用発明1と同様、ユーザがコンテンツとその再生開始時間を選択するサービス形態の発明であり、引用発明2に引用発明3のようなコンテンツの提供者側で予めコンテンツのサービス時間帯を定めたサービス形態の発明を適用することは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、引用発明3に引用発明1又は引用発明2を適用することによって本願発明1を当業者が容易になし得るものであるかを検討すると、引用発明3は、番組提供者がコンテンツの提供者側で予めコンテンツのサービス時間帯を定めたサービス形態の発明であり、端末側でダウンロードスケジューリングを行う必要性は想定できず、引用発明2のようなユーザ側装置でダウンロードスケジュールを作成する発明を適用しようとする動機付けは見いだせず、当業者が容易になし得たものとはいえない。

前置審査において提示された刊行物4には、「ネットワークを介してサービスプロバイダからコンテンツのダウンロードを完了させたい時間を指定して、その時間までにダウンロードを完了させるダウンロード予約制御方法であって、端末は、公開されているコンテンツリストに基づきダウンロードリクエストを行い、データ転送速度を測定し、その速度情報とコンテンツのサイズなどからダウンロード開始時間を計算しダウンロードを実行する方法であり、既存の予約ダウンロード実行時間と重なっていると代替案作成を行うダウンロード制御方法」(段落[0001]、[0005]、[0018]?[0020]、[0061]、[0062])という引用発明2と同様の発明が記載されている。
また、同刊行物5ないし8には、サーバがクライアント装置へコンテンツを配信する際の競合調整に関する技術が記載されている。
なお、刊行物9は本願発明と関係の無い「電源電圧制御装置」に関する技術文献であって、特開2002-165115号公報の間違いであると判断されるが、特開2002-165115号公報には、ストリーミング型配信に割り当てる帯域をダウンロード型配信より優先させる技術が記載されている。
これらの刊行物4ないし9記載の発明を参酌しても、上記相違点1ないし3に係る技術事項は当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物1ないし9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

3.本願の請求項2ないし6に係る発明について
請求項4および6に係る発明は、請求項1に係る発明を方法の発明およびプログラムの発明で表現したものであり、請求項1に係る発明と同様の技術事項を有しているものである。
また、請求項2ないし3に係る発明は請求項1に係る発明を引用する発明であり、請求項5に係る発明係る発明は、請求項4に係る発明を引用する発明である。
よって、請求項2ないし6に係る発明は、請求項1に係る発明が刊行物1ないし9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないのと同様に、刊行物1ないし9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができたものとすることはができない。

第4.むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-19 
出願番号 特願2008-190482(P2008-190482)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川崎 優  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 松尾 淳一
千葉 輝久
発明の名称 コンテンツ配信システム、コンテンツ受信方法および装置  
代理人 桂木 雄二  

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