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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1284920
審判番号 不服2012-25414  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-21 
確定日 2014-02-20 
事件の表示 特願2007- 21130「撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月14日出願公開、特開2008-187615〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年1月31日の出願であって、平成23年11月16日付(起案日)で拒絶の理由が通知され、平成24年1月23日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成24年3月29日付(起案日)で拒絶の理由が通知され、平成24年5月31日付で意見書及び手続補正書が提出されたものの、平成24年9月21日付(起案日)で拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成24年12月21日に請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、当審において、前置報告書の内容について審判請求人の意見を求めるために、平成25年4月12日付(起案日)で審尋がなされ、平成25年6月14日付で回答書が提出され、平成25年9月13日付(起案日)で拒絶の理由が通知され、平成25年11月14日付で意見書・手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成24年1月23日付、平成24年5月31日付、平成24年12月21日付、及び、平成25年11月14日付手続補正書で補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は請求項1に記載された次のとおりである。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】
各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から複数色の画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記複数色の画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子と、
撮影する被写体に対して光を照射する発光手段と、
前記撮像素子から出力される複数色の全色の画素信号を利用して前記被写体からの反射光を測光する測光手段と、
前記測光手段による測光結果に基づいて前記発光手段の発光量を決定し、決定した発光量で前記発光手段が発光するように制御する制御手段と、
を備え、
前記測光手段により前記被写体からの反射光を測光する場合に、前記画素読出手段が前記画素配列に対して水平方向又は垂直方向に規定の周期で画素間引きを行って画素信号を読出すとともに、前記増幅手段が前記画素配列における間引かれない画素行又は画素列に対して規定の周期の行毎又は列毎に設定された少なくとも2つの異なる利得で増幅することを特徴とする撮像装置。」

3.引用刊行物
3.1.引用例1
3.1.1.引用例1の記載事項
当審における平成25年9月13日付の拒絶の理由で刊行物2として引用した特開平11-84489号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

「【請求項1】 撮影時に被写体に向かって補助光を照射し本発光の光量を設定するために複数回の一定光量の予備発光を行う予備発光照射手段と、
前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光を光電変換する撮像素子と、
前記複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する増幅手段と、
前記それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否かを検出するための検出手段と、
当該検出手段による検出の結果、前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあると判別された当該増幅手段の出力信号に基づいて本発光の光量を演算する演算手段と、
を具備したことを特徴とするストロボ装置。」
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ストロボ装置、詳しくは、撮影時に被写体に向かって補助光を照射し本発光の光量を設定するための予備発光を行うストロボ装置に関する。」
「【0002】
【従来の技術】一般に、カメラ等の撮像装置で撮影を行う際に、自然光だけでは光量が不足した場合、不足分を例えば、ストロボ装置で補っている。このストロボ装置においては、撮影の際の発光量を適正にするために先だって予備発光を行い、実際の露光時の本発光の発光量を設定している。このように本発光の発光量を制御する場合には、例えば、特開平3-126383号公報に開示されるようなストロボ装置内に発光量を制御するための専用の受光素子を含む制御回路を設けている。」
「【0003】また、特公平5-44654号公報には、専用の受光素子や制御回路を設けずに、撮像素子を利用し、積分された出力に基づいて本発光の発光量を設定する電子カメラシステムが開示されている。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特公平5-44654号公報等において提案された予備発光は、1回の予備発光で得られた情報に基づいて本発光の発光量を決めているので、遠距離の被写体に対して十分な光量が得られない虞がある一方、近距離の被写体に対しては露光量オーバになる虞もあり、適正な発光量を得ることが困難であった。」
「【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、本発光において最適な光量が得られる予備発光を行うストロボ装置を提供することを目的とする。」
「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。」
「【0010】図1は、本発明の第1の実施形態であるストロボ装置の構成を示したブロック図である。」
「【0011】この実施形態のストロボ装置は、被写体像を入光する撮影レンズ1と、この撮影レンズ1の後方に配設され、絞りを兼用するシャッタ2と、上記撮影レンズ1に入光する被写体像を撮像するCCD等の固体撮像素子3と、この撮像素子3で撮影された画像信号を増幅する増幅回路4と、この増幅回路4で増幅された画像信号をサンプリングホールドする信号処理回路5と、この信号処理回路5からの信号をアナログ/デジタル変換するA/D回路6と、A/D回路6からの出力信号を記憶するメモリ7と、前記A/D回路3若しくはメモリ7からの出力信号に基づきストロボ発光管13の発光量を算出するとともに当該ストロボ装置の各構成部位の駆動制御を行う中央処理装置(CPU)8と、前記CCD3の駆動を行うためのタイミング信号を生成するタイミングジェネレータ(TG)9と、CPU8の制御下において上記シャッタ2の制御を行うシャッタ制御回路10と、例えばXe管からなるストロボ発光管13と、上記CPU8の制御下に上記ストロボ発光管13の発光量を制御する発光量制御回路11と、同ストロボ発光管13のトリガ電極12と、上記CPU8に接続されたストロボ発光モードスイッチ(SW1)14と、同CPU8に接続されたレリーズスイッチ(撮影動作開始スイッチSW2)15と、で主要部が構成される。」
「【0012】上記増幅回路4は、CPU8からの制御信号に基づいた所定の増幅率でCCD3の出力信号を増幅する。」
「【0013】また、上記信号処理回路5は、増幅回路4で増幅された画像信号に対し、ガンマ補正や色補正等の所定の信号処理を行なう。」
「【0014】また、上記ストロボ発光モードスイッチ14は、オンすることでCPU8はストロボ発光をおこない、また、レリーズスイッチ15は、オンすることでCPU8の制御下に撮影動作が開始される。」
「【0015】このような構成をなす本第1の実施形態のストロボ装置における、予備発光による本発光の発光量演算動作および撮影動作を図2に示すフローチャートを参照して説明する。」
「【0016】本実施形態のストロボ装置は、1回の予備発光毎に増幅回路4の増幅率が適正であるか否かを判断することを特徴とする。」
「【0017】図2に示すように、上記レリーズスイッチ15がオンされると(ステップS1)、まず、自然光のみによる画像データが入力され、CPU8において自然光による画像データの平均値V0が求められる(ステップS2)。なお、このとき、入力される画像データは、増幅回路4の増幅率を1として直接測定される。」
「【0018】次に、この画像データの平均値V0により、増幅率mを設定し(ステップS3)、この増幅率mでCPU8の制御下に予備発光を実施する(ステップS4)。」
「【0019】この後、A/D回路6でA/D変換され(ステップS5)、この画像データがメモリ7に記憶される(ステップS6)。」
「【0020】次に、予備発光による画像データの平均値V1を求める(ステップS7)。このとき、増幅回路4の増幅率は1とする。」
「【0021】この後、上記予備発光による画像データの平均値V1が所定値αとβとの間にあるかいなかを判定し(ステップS8)、α<V1<βになると、CPU8は、本発光の発光量を演算する(ステップS9)。なお、この演算方法は後に詳述する。」
「【0022】この後、CPU8はシャッタ2の開閉制御をするとともにストロボ発光管13より本発光せしめ(ステップS10、S11、S12)、CCD3からの画像データを取り込む(ステップS13)。」
「【0023】次に、本第1の実施形態における本発光の発光量の演算方法について説明する。」
「【0024】まず、上述したように、自然光による画像データの平均値V0を求め、増幅率を設定した後、予備発光による画像データの平均値V1を求める。そして、増幅後の画像データの平均値V2を求めた後、本発光による画像データの適正レベルV3を求める。なお、本発光は増幅率1で行なうものとする。」
「【0025】このように、各値が求まると、本発光時の本発光のみによる画像データの平均出力は、V3-V0であるので、本発光は予備発光に対してK倍、すなわち、K=(V3-V0)/V1倍で、発光させる。ただし、V1=(V2/m)-V0
実際は、CPU8は、上記Kと発光時間(t)との関係を記憶しているLUT(Look Up Table)を参照して本発光の発光する間を決定する。」
「【0026】なお、自然光のみおよび予備発光における測光時おいては、全画面を64の領域に分割し、各領域ごとにハード的に各画素データが平均化されたデータを撮像素子より求めるようにしても良い。これにより、より高速処理が実現できる。」
「【0027】このように本第1の実施形態のストロボ装置によると、本発光において最適に増幅された画像データが得られる。」
「【0028】次に、本発明の第2の実施形態について説明する。」
「【0029】この第2の実施形態のストロボ装置は、その構成は上記第1の実施形態と同様であり、予備発光に基づく本発光の発光量演算動作のみを異にしている。したがってここでは差異のみの言及にとどめ、同様部分の詳しい説明は省略する。」
「【0030】本第2の実施形態のストロボ装置における、予備発光による本発光の発光量演算動作および撮影動作を図3に示すフローチャートを参照して説明する。」
「【0031】図3に示すように、上記レリーズスイッチ15がオンされると(ステップS1)、まず、自然光のみによる画像データが入力され、CPU8において自然光による画像データの平均値V0が求められる(ステップS2)。以下、ステップS6までは、上記第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。」
「【0032】次に、予備発光がN回なされたか否かを判定し(ステップS21)、N回予備発光がなされると、それぞれの予備発光毎の画像データの平均値Vmを求め(ステップS22)、各予備発光による画像データの平均値Vmが所定値αとβとの間にあるかいなかを判定し(ステップS23)、α<Vm<βであると、CPU8は、本発光の発光量を演算する(ステップS9)。なお、この演算方法は、上記第1の実施形態と同様である。」
「【0033】この後、CPU8はシャッタ2の開閉制御をするとともにストロボ発光管13より本発光せしめ(ステップS10、S11、S12)、CCD3からの画像データを取り込む(ステップS13)。」
「【0034】この第2の実施形態によると、本発光においてより最適に増幅された画像データを得ることができる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】



3.1.2.引用例1記載の発明
上記摘記した引用例1の記載、特に、【請求項1】、段落【0028】?【0034】、および、【図3】の記載からみて、引用例1には以下の発明が記載されている。

「撮影時に被写体に向かって補助光を照射し本発光の光量を設定するために複数回の一定光量の予備発光を行う予備発光照射手段と、
前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光を光電変換する撮像素子と、
前記複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する増幅手段と、
前記それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否かを検出するための検出手段と、
当該検出手段による検出の結果、前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあると判別された当該増幅手段の出力信号に基づいて本発光の光量を演算する演算手段と、
前記演算手段で演算された本発光の光量に基づいて本発光を行うとともに、撮像素子から最適な画像データを得ることを特徴とするストロボ装置。」

3.2.引用例2
3.2.1.引用例2の記載事項
当審における平成25年9月13日付の拒絶の理由で刊行物3として引用した特開2001-238126号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

「【請求項1】 被写体を撮像して前記被写体に関する画像データを生成する撮像装置であって、
複数の画素が2次元的に配列されて構成された撮像面を有し、当該撮像面に対して高感度領域と低感度領域とが交互に設定された一の撮像素子と、
前記高感度領域に含まれる画素群から高感度画像を生成するとともに、前記低感度領域に含まれる画素群から低感度画像を生成し、前記高感度画像と前記低感度画像との合成処理を行って、前記被写体に関する画像の画像データを生成する画像処理手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。」
「【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記撮像面に分布する画素ごとのデータをライン単位で読み出しを行うように構成され、前記高感度領域と前記低感度領域とが所定ラインごとに交互に繰り返して設定された素子であり、
前記画像処理手段は、前記撮像素子からライン単位で複数の画素のデータを取得する際に、前記高感度領域として設定されたラインに含まれる画素に対しては高ゲインを設定し、前記低感度領域として設定されたラインに含まれる画素に対しては低ゲインを設定することによって、前記高感度画像と前記低感度画像とを前記所定ラインごとに順次に生成していくことを特徴とする撮像装置。」
「【請求項5】 請求項4に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、前記撮像面に分布する前記複数の画素がベイヤー配列で各色成分に対応づけられた素子であり、
前記画像処理手段は、前記撮像素子からライン単位で複数の画素のデータを取得する際に、2ラインごとに前記高ゲインと前記低ゲインとの設定切り替えを行うことで、前記高感度画像と前記低感度画像とを生成することを特徴とする撮像装置。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、一の撮像素子を用いて被写体を撮像して当該被写体に関する画像データを生成するデジタルカメラ等の撮像装置、及び、その画像データを生成するための画像処理方法に関する。」
「【0002】
【従来の技術】従来、デジタルカメラ等の撮像装置においては、2次元の画素配列を有するCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子を用いて被写体を撮影すると、被写体像の明るい部分が白くなりすぎる(いわゆる白とび)という現象が生じる一方、被写体像の暗い部分が黒くなりすぎる(いわゆる黒つぶれ)という現象が生じることがある。この現象は、一般的な撮像素子のダイナミックレンジが狭いことに起因するものであり、画質低下の要因とっている。」
「【0003】このような現象を解消するために、2個以上の撮像素子を用いて同一被写体を同時に撮影し、1個の撮像素子のダイナミックレンジが狭いことによる影響を他の撮像素子で補うように構成することが考えられる。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般に撮像素子は他の部品に比べて高価であるため、撮像装置に2個以上の撮像素子を設けると、撮像装置のコスト上昇を招くという問題がある。また、2個以上の撮像素子を設けるために、撮像装置自体が大型化するという問題もある。」
「【0005】そこで、この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、コスト上昇や撮像装置の大型化を招くことなく、ダイナミックレンジの拡大された撮像画像を生成することの可能な撮像装置および画像処理方法を提供することを目的とする。」
「【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。」
「【0017】図1は、この発明の実施の形態における撮像装置1の概略構成を示すブロック図である。なお、図1において、斜線の施された矢印は画像データの流れを示しており、細線矢印は制御用データの流れを示している。」
「【0018】この撮像装置1は、被写体から光をCCD10に導くためのレンズ7と、撮像素子となるCCD10と、CCD10で得られたデータから被写体に関するカラー画像データを生成する画像処理部20と、撮影タイミングを指示するためのシャッタボタン30とを備えている。」
「【0019】CCD10の撮像面11には、複数の画素が2次元配列されている。そして、撮像面11には被写体からの光が導かれ、各画素ごとに被写体の対応する部分からの光を検出し、その光量に応じた電気信号(輝度信号)を生成する。」
「【0020】図2は、CCD10の撮像面11を模式的に表した図である。図2に示すようにCCD10の撮像面11に分布する各画素は、カラーコーディングによってベイヤー配列をしたR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)の各色成分に対応づけられている。すなわち、最上段の水平方向に沿った1ライン目は、R,G,R,G,…というようにR成分に対応づけられた画素とG成分に対応づけられた画素とが繰り返すようにG-Rラインが形成されており、最上段から2段目の2ライン目は、G,B,G,B,…というようにG成分に対応づけられた画素とB成分に対応づけられた画素とが繰り返すようにB-Gラインが形成されている。そして、3ライン目以降は上記と同様の配列が繰り返されている。」
「【0021】したがって、このようなベイヤー配列のCCD10を使用して各画素ごとにR,G,Bの3成分を有するカラー画像を生成する場合、少なくとも2ライン分の情報がなければ、適切にカラー画像を生成することができなくなる。」
「【0022】また、CCD10の撮像面11には、高感度撮影用領域と低感度撮影用領域とが設定される。図3は、撮像面11における高感度撮影用領域と低感度撮影用領域との設定例を示す図である。この実施形態では、撮像面11における各色成分がベイヤー配列されていることから、図3に示すように、高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとがそれぞれ水平方向Hに沿った2ラインごとに交互に設定されている。」
「【0023】次に、画像処理部20は、データ読出部21、高/低感度画像並び替え部22、画素補間処理部23、垂直2ライン画素補間処理部24、ダイナミックレンジ拡大処理部25、メモリ26、出力部27、タイミングジェネレータ28、およびCPU(Central Processing Unit)29を備えて構成される。」
「【0024】データ読出部21は、CCD10から各画素の輝度信号をタイミングジェネレータ28からの指示タイミングに基づいて順次に読み出す。このときの読み出し順序は、図3の撮像面11において上段側1ライン目から水平方向Hに沿った1ラインごとに順次に行われる。」
「【0025】また、データ読出部21にはオートゲインコントロール部(以下、AGCと呼ぶ)211が設けられており、AGC211は、1ラインごとに順次に各画素の輝度信号を読み出していく際に、現在読み出し対象となっているラインが高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとのいずれであるかを判断し、高感度撮影用領域RHである場合には比較的大きな値である所定のゲインGHが設定されるのに対し、低感度撮影用領域RLである場合には比較的小さな値である所定のゲインGLが設定される。つまり、ゲインGHとGLとの関係はGH>GLとなっている。この結果、高感度撮影用領域RHに含まれる画素群から得られる画像は輝度変化を高感度に表した高感度画像となる一方、低感度撮影用領域RLに含まれる画素群から得られる画像は輝度変化に対する感度の低い低感度画像となる。」
「【0026】さらに、データ読出部21には図示しないA/D変換器が設けられており、上記のようなゲイン制御が行われた画素ごとの輝度信号は、例えば8ビットのデジタルデータに変換され、0?255の階調値を有する画像データとなる。」
「【0027】図4は、データ読出部21において高感度撮影用領域RHおよび低感度撮影用領域RLにおける画像データを生成する際の変換特性を示す図である。」
「【0028】データ読出部21が高感度撮影用領域RHに含まれる画素の輝度信号を読み出すと、図4に示す高感度特性41に応じたデータ変換を行うこととなり、低輝度域においては輝度変化が敏感に画像データに反映されることになる。しかしながら、高輝度域においては設定されるゲインGHが大きな値であることから画像データが飽和状態となって、いわゆる白とびした画像となる。」
「【0029】一方、データ読出部21が低感度撮影用領域RLに含まれる画素の輝度信号を読み出すと、図4に示す低感度特性42に応じたデータ変換を行うこととなり、輝度変化に鈍感な画像データとなる。このため、低輝度域ではいわゆる黒つぶれした画像となる。しかしながら、高輝度域においては低感度ながら輝度信号の変化に対応した画像データを出力することが可能となっている。」
「【0030】そして、データ読出部21は読み出し順序に従って、画素ごとに輝度信号から画像データを生成し、その画像データを順次に高/低感度画像並び替え部22に送出する。」
「【0031】高/低感度画像並び替え部22は、高感度画像および低感度画像を生成する。データ読出部21で得られる画像データはCCD10における画素の配列に応じてラインごとに順次に読み出されるため、画像としては、図3に示すように2ラインごとに高感度部分と低感度部分とが垂直方向Vに沿って混在した画像となっている。そこで、高/低感度画像並び替え部22は、その混在した画像から高感度部分のみからなる高感度画像と低感度部分のみからなる低感度画像との2つの画像に分割する。具体的には、図3に示すような高感度部分と低感度部分とが混在した画像から、2ラインごとの画像データの抽出を行い、高感度画像と低感度画像との2画像を生成するのである。」
「【0032】図5は、高/低感度画像並び替え部22で生成される2画像を示す図である。高/低感度画像並び替え部22は上記のような処理を行うことによって、図5(a)に示すような高感度撮影用領域RHに含まれる画素群から抽出された画像データで形成される高感度画像と、図5(b)に示すような低感度撮影用領域RLに含まれる画素群から抽出された画像データで形成される低感度画像とを生成する。このように高感度画像と低感度画像との2画像に分離することによって、後述する補間処理を画像ごとに容易に行うことが可能になる。そして、このようして生成された高感度画像と低感度画像との2画像は、画素補間処理部23に送出される。」
「【0039】次に、ダイナミックレンジ拡大処理部25による処理が行われる。ダイナミックレンジ拡大処理部25は、CCD10によって得られた画像データのダイナミックレンジを拡大するための処理を行う。つまり、このダイナミックレンジ拡大処理部25において、高輝度部分での白とびや低輝度部分での黒つぶれといった現象を解消するような処理が行われるのである。」
「【0040】ダイナミックレンジ拡大処理部25には、図1に示すように混合比決定部251と合成処理部252とが設けられており、まず、混合比決定部251が高感度画像と低感度画像との混合比α,(1-α)を決定する。ただし、αは、0≦α≦1を満たす数である。」
「【0041】図7は、混合比決定部251において決定される混合比α,(1-α)の画像データとの関係を示す図である。混合比決定部251は、高感度画像の画像データを取得し、その高感度画像の各画素における画像データの状況に応じて高感度画像の混合比(1-α)と低感度画像の混合比αとを画素ごとに決定する。この実施形態では、図7に示すように、低輝度部分に対応する画像データの小さい部分では、高感度画像についての混合比(1-α)が大きく、かつ、低感度画像についての混合比αが小さくなるように混合比特性51が設定されている。一方、高輝度部分に対応する画像データの大きい部分では、高感度画像についての混合比(1-α)が小さく、かつ、低感度画像についての混合比αが大きくなるように混合比特性51が設定されている。そして、混合比決定部251は、高感度画像の画素ごとの画像データを取得すると、図7に示す混合比特性51に基づいて混合比α,(1-α)を求め、決定された混合比α,(1-α)を合成処理部252に与える。なお、混合比の決定は、画素ごとに行われるものでなく、一定の画像部分ごとに行われる形態であってもよい。」
「【0042】合成処理部252では、混合比α,(1-α)に基づいて高感度画像と低感度画像とを画素ごとに合成し、一つの合成画像を生成する。高感度画像と低感度画像とは、同一画素数を有するフルサイズ化された画像となっている。したがって、高感度画像において1個の画素が特定されると、低感度画像においてもそれに対応する位置の1個の画素が特定される。そして、合成処理部252は、高感度画像と低感度画像との対応する画素の画像データを上記混合比に基づいて合成するのである。」
「【0043】例えば、高感度画像における画素の画像データがD1であるとし、その画素に対応する低感度画像の画像データがD2であるとすると、合成処理によって生成される合成画像の画像データDは、D=(1-α)・D1+α・D2となる。合成画像の画像データDは、図7に示す混合比特性51によって、高輝度部分では低感度の画像データをその成分として多く含むこととなるため、高輝度部分において画像データが飽和状態となることを防止することができ、いわゆる白とびという現象が低減された画像データとなる。一方、低輝度部分では高感度の画像データをその成分として多く含むこととなるため、低輝度部分において画像がいわゆる黒つぶれとなってしまう現象が低減された画像データとなる。」
「【0044】したがって、高輝度部分における白とびや低輝度部分における黒つぶれが解消されるということに鑑みれば、この合成処理は、CCD10におけるダイナミックレンジの拡大処理を行ったことに相当するのである。この実施形態においては、CCD10自体のダイナミックレンジを拡大するというものではなく、画像処理においてCCD10のダイナミックレンジを拡大するように処理するものであるため、CCD10を高価なものに置き換えることなく、白とびや黒つぶれを解消することが可能になっている。このため、撮像装置1におけるコスト上昇を招くことなく、白とびや黒つぶれを解消することが可能になっている。」
「【0045】そして、ダイナミックレンジ拡大処理部25における上記のような処理をRGBやYCrCbの各色成分について画素ごとに行うことにより、カラー画像全体についてダイナミックレンジの拡大された画像を得ることが可能になる。」
「【0064】さらに、上記実施の形態では、CCD10の撮像面11がベイヤー配列された構成である場合について説明したが、これに限定されるものではなく補色タイプのCCDにも適用可能である。
「【0065】また、上記実施の形態では、撮像面11が所定ラインごと(具体的には2ラインごと)に高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとが設定されている例について説明したが、これに限定されるものではない。
「【0066】例えば、ベイヤー配列の場合、2×2の4画素ごとに交互に高感度撮影用領域および低感度撮影用領域を設定してもよい。ただし、この場合は画像拡大を行うための画素補間処理を水平方向Hと垂直方向Vとの双方について行っていくことが必要であるため、処理形態が複雑化することになる。」
「【0067】これに対し、所定ラインごとに高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとを設定する場合には、画像拡大の行うための画素補間処理を上記と同様に垂直方向Vのみについて行えばよいので、効率的に行うことが可能である。そして、ベイヤー配列の場合には、2ラインごとに高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとを設定することで、高感度画像と低感度画像とのカラー化を良好に行うことができるという特有の作用効果を奏することになる。」
「【0068】さらに、撮像素子としてCCD10を用いる場合には、水平方向Hに沿ったラインに沿って画素ごとの輝度信号が順次に読み出されていくため、ラインごとに高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとを設定すれば、読み出しの際のゲイン制御をラインごとに行えばよいことになるので、比較的容易に高感度画像と低感度画像とを生成することが可能になる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】



3.2.2.引用例2記載の発明
引用例2の記載について検討する。

第一に、上記段落【0001】【0005】の記載からみて、引用例2記載の発明は「ダイナミックレンジの拡大された撮像画像を生成することの可能な撮像装置」である。
第二に、上記段落【0018】の記載からみて、引用例2記載の発明は「撮像素子となるCCD10」「CCD10で得られたデータから被写体に関するカラー画像データを生成する画像処理部20」を有している。
第三に、上記段落【0019】?【0022】の記載からみて、引用例2記載の発明の「CCD10の撮像面11には、複数の画素が2次元配列されるとともに、撮像面11における各色成分がベイヤー配列され、適切なカラー画像を生成するために、高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとがそれぞれ水平方向Hに沿った2ラインごとに交互に設定され」ているものである。
第四に、上記段落【0023】の記載からみて、引用例2記載の発明の「画像処理部20」は「データ読出部21、高/低感度画像並び替え部22、タイミングジェネレータ28、およびCPU(Central Processing Unit)29を備えて構成され」たものである。
第五に、上記段落【0024】【0025】の記載からみて、引用例2記載の発明の「データ読出部21」は「CCD10から各画素の輝度信号をタイミングジェネレータ28からの指示タイミングに基づいて順次に読み出すものであって、現在読み出し対象となっているラインが高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとのいずれであるかを判断し、高感度撮影用領域RHである場合には比較的大きな値である所定のゲインGHが設定し、低感度撮影用領域RLである場合には比較的小さな値である所定のゲインGLが設定され」るものである。
第六に、上記段落【0031】【0032】の記載からみて、引用例2記載の発明の「高/低感度画像並び替え部22」は「2ラインごとに高感度部分と低感度部分とが垂直方向Vに沿って混在した画像となっているデータ読出部21で得られる画像データから、2ラインごとの画像データの抽出を行い、高感度画像と低感度画像との2画像を生成する」ものである。

したがって、引用例2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「ダイナミックレンジの拡大された撮像画像を生成することの可能な撮像装置であって、
撮像素子となるCCD10、
CCD10で得られたデータから被写体に関するカラー画像データを生成する画像処理部20を有し、
CCD10の撮像面11には、複数の画素が2次元配列されるとともに、撮像面11における各色成分がベイヤー配列され、適切なカラー画像を生成するために、高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとがそれぞれ水平方向Hに沿った2ラインごとに交互に設定され、
画像処理部20は、データ読出部21、高/低感度画像並び替え部22、タイミングジェネレータ28、およびCPU29を備えて構成され、
データ読出部21は、CCD10から各画素の輝度信号をタイミングジェネレータ28からの指示タイミングに基づいて順次に読み出すものであって、現在読み出し対象となっているラインが高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとのいずれであるかを判断し、高感度撮影用領域RHである場合には比較的大きな値である所定のゲインGHが設定し、低感度撮影用領域RLである場合には比較的小さな値である所定のゲインGLが設定され、
高/低感度画像並び替え部22は、2ラインごとに高感度部分と低感度部分とが垂直方向Vに沿って混在した画像となっているデータ読出部21で得られる画像データから、2ラインごとの画像データの抽出を行い、高感度画像と低感度画像との2画像を生成する、
ダイナミックレンジの拡大された撮像画像を生成することの可能な撮像装置。」

3.3.引用例3
3.2.1.引用例3の記載事項
当審における平成25年9月13日付の拒絶の理由で刊行物7として引用した特開2003-259201号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撮像における露出制御を行う技術に関する。」
「【0002】
【従来の技術】従来より、CCD等の撮像素子を用いて画像データを取得するデジタルカメラにおいては、撮影待機状態において取得される画像データ中の明るさに基づいてシャッタースピードや絞り値などの露出制御値を求め露出制御を行うようになっている。」
「【0032】CCD201は、受光部、垂直転送部、水平転送部および出力部等から構成される撮像素子である。CCD201は、撮影レンズ3により結像された被写体の光像を受光部によって信号電荷に光電変換し、この信号電荷を垂直転送部および水平転送部を介して転送を行って順次出力部から出力する。CCD201の受光部は、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが貼り付けられた横2560×縦1920の画素からなり、CCD201から出力される信号電荷はRGBの色成分を有する画像信号となる。」
「【0033】CCD201は、画像信号の出力モードとして、全画素の画像データを出力するフレームモードと、縦の画素を1/8に間引いて横2560×縦240の画素を有する簡易画像データを出力するドラフトモードとを有している。撮影待機状態においては高速化のためドラフトモードに、撮影指示後において記録用の画像データを出力する際にはフレームモードにそれぞれ設定される。」
「【0048】図6は、主測光演算回路222が演算対象とする画像データ中の領域を説明するための図である。前述したように、CCD201では横2560×縦1920の画素を有する画像データ71aが取得されるが、ドラフトモードに設定されたCCD201からは、縦の画素を1/8に間引いた横2560×縦240の画素を有する簡易画像データ71bが出力される。この簡易画像データ71bは、演算領域抽出回路208によりさらに横の画素も1/8に間引かれ、主測光演算回路222が演算対象とする横320×縦240の画素を有する画像データ71cが生成される。この画像データ71cは全画素の画像データ71aの縦横双方を1/8に均一に間引いたものであるため、主測光演算回路222が演算対象とする領域は、画像データ71aの全体の領域に相当する。」
「【0049】主測光演算回路222は、この画像データ71cを例えば縦5×横5のブロックに分割し、分割された各ブロックに対し加重係数(本実施の形態ではK1,K2,K3:K1>K2>K3)を設定する。具体的には、図6に示すように、主被写体像が存在する可能性の高い画像データ71cの中央ブロックBLを露出注目領域とし、この露出注目領域BLに最大の加重係数K1を設定する。さらに、露出注目領域BLの周辺ブロックに加重係数K2を設定し、その他のブロックに最小の加重係数K3を設定する。」
「【0050】そして、同一の加重係数が設定されたブロックを同一のグループとして、グループごとに画素の輝度値の平均値を算出し、算出した輝度値の平均値と、設定した加重係数とを用いて加重平均を行い、その演算結果を主測光値BV1とする。例えば、露出注目領域BLの輝度値の平均値がD1、露出注目領域BLの周辺ブロックの輝度値の平均値がD2、その他のブロックの輝度値の平均値がD3であったとすると、主測光値BV1は、
BV1=(K1・D1+K2・D2+K3・D3)/(K1+K2+K3)
で求められる。」
「【0072】<1-3.撮影モード動作>次に、デジタルカメラ1の動作について説明する。図8は、このデジタルカメラ1の動作の流れを示す図である。なお、この説明においては、フォーカスモードはAFに設定され、フォーカスモードの切り替えは行われないものとする。」
「【0073】デジタルカメラ1は撮影モードに設定されると撮影待機状態となり、所定時間ごとにCCD201で簡易画像データを取得し、ライブビュー画像を生成して表示部220に表示させるライブビュー動作を行う。」
「【0074】まず、CCD201が簡易画像データを出力するドラフトモードに設定される(ステップST1)。そして、ライブビュー用の簡易画像データを取得するための露出制御がLV露出制御値に基づいて行われる。すなわち、実際の絞り値およびシャッタスピードがLV用露出制御値になるように、露出信号送信部313からレンズ駆動部211およびタイミングジェネレータ210に対して信号が送信される(ステップST2)。なお、デジタルカメラ1の起動時においては、LV用露出制御値は導出されていないため、露出制御値としては適当な初期値が用いられる。」
「【0075】続いて、CCD201において簡易画像データが取得され(ステップST3)、取得された簡易画像データが信号処理回路202?解像度変換部207にて所定の処理が行われてライブビュー画像とされた後、表示部220に表示される(ステップST5)。」
「【0076】その一方で、簡易画像データは、演算領域抽出回路208にて所定の領域が抽出された後、主測光演算回路222およびAF用測光演算回路223にも入力される。そして、主測光演算回路222において主測光値BV1が演算され、AF用測光演算回路223においてAF用測光値BV2が演算される。」
「【0077】さらに、演算された主測光値BV1とAF用測光値BV2とは全体制御部30の主露出演算部311とAF用露出演算部312とにそれぞれ入力される。主露出演算部311は、入力された主測光値BV1に基づいて所定のプログラム線図を参照し、LV用露出制御値および記録用露出制御値を導出する。一方、AF用露出演算部312は、入力されたAF用測光値BV2に基づいて所定のプログラム線図を参照し、AF用露出制御値を導出する(ステップST4)。」
「【0078】このようにして導出されたLV用露出制御値、記録用露出制御値およびAF用露出制御値はそれぞれRAM32に格納され、常時選択的に取り出すことが可能とされる。」
「【0079】以上のステップST2?ST5の動作(ライブビュー動作)は、シャッターボタン11が半押しされるまで(ステップST6にてNoの間)繰り返される。このため、LV用露出制御値、記録用露出制御値およびAF用露出制御値は、被写体に応じて適切な値に更新されつつRAM32に保持される。このうちLV用露出制御値は、ライブビュー用の簡易画像データを取得する際における露出制御に即時的に反映される。」
「【図6】


「【図8】



3.3.2.引用例3記載の発明
引用例3の記載について検討する。

第一に、上記段落【0002】の記載からみて、引用例3記載の発明は「撮影待機状態において取得される画像データ中の明るさに基づいてシャッタースピードや絞り値などの露出制御値を求め露出制御を行う、CCDを用いて画像データを取得するデジタルカメラ」である。
第二に、上記段落【0032】の記載からみて、引用例3記載の発明の「CCD201は、画像信号の出力モードとして、全画素の画像データを出力するフレームモードと、縦の画素を1/8に間引いて横2560×縦240の画素を有する簡易画像データを出力するドラフトモードとを有し、撮影待機状態においては高速化のためドラフトモードに、撮影指示後において記録用の画像データを出力する際にはフレームモードにそれぞれ設定され」るものである。
第三に、上記段落【0048】【0049】【0076】の記載からみて「CCD201からは、縦の画素を1/8に間引いた横2560×縦240の画素を有する簡易画像データ71bが出力され、演算領域抽出回路208によりさらに横の画素も1/8に間引かれ、主測光演算回路222が演算対象とする横320×縦240の画素を有する画像データ71cが生成され、主測光演算回路222において主測光値BV1が演算され」るものである。

したがって、引用例3には以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

「撮影待機状態において取得される画像データ中の明るさに基づいてシャッタースピードや絞り値などの露出制御値を求め露出制御を行う、CCDを用いて画像データを取得するデジタルカメラであって、
CCD201は、画像信号の出力モードとして、全画素の画像データを出力するフレームモードと、縦の画素を1/8に間引いて横2560×縦240の画素を有する簡易画像データを出力するドラフトモードとを有し、撮影待機状態においては高速化のためドラフトモードに、撮影指示後において記録用の画像データを出力する際にはフレームモードにそれぞれ設定され、
CCD201からは、縦の画素を1/8に間引いた横2560×縦240の画素を有する簡易画像データ71bが出力され、演算領域抽出回路208によりさらに横の画素も1/8に間引かれ、主測光演算回路222が演算対象とする横320×縦240の画素を有する画像データ71cが生成され、主測光演算回路222において主測光値BV1が演算される、
デジタルカメラ。」

4.対比
本願発明と引用発明1を比較する。

4.1.「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から複数色の画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記複数色の画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子」
引用発明1は「前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光を光電変換する撮像素子」「前記複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する増幅手段」を有するものである。そして、上記摘記した引用例1段落【0011】の「上記撮影レンズ1に入光する被写体像を撮像するCCD等の固体撮像素子3」との記載からみて、引用発明1の「撮像素子」は「CCD等の固体撮像素子」ということができ、CCDの通常の構成を前提とすると、引用発明1の「撮像素子」は各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成されているものと認めることができる。また、引用発明1の「増幅手段」が「撮像素子」から「撮像素子の出力信号」を読み出していると認められ、更に、引用発明1の「増幅手段」は「増幅手段」自体に対して「複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する」という利得設定を行っているということができる。

ここで、本願発明の「撮像素子」は「画素配列」「画素読出手段」「増幅手段」「利得設定手段」を備えたものであるから、本願発明の「撮像素子」と引用発明の「撮像素子」「増幅手段」をまとめたものを以下対比する。

第一に、本願発明の「撮像素子」が備える「画素配列」は「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される」ものであるのに対し、引用発明1の「撮像素子」は「前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光を光電変換する」ものであって、上記したように、各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成されているものと認められるから、引用発明1の「撮像素子」と本願発明の「撮像素子」が備える「画素配列」は、いずれも「前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光を光電変換する」もので有る点で一致している。
第二に、本願発明の「撮像素子」が備える「画素読出手段」は「前記画素配列から複数色の画素信号を読出す」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」は上記したように「撮像素子」から「撮像素子の出力信号」を読み出していると認められるから、引用発明の「撮像素子」と本願発明の「撮像素子」が備える「画素読出手段」は「前記画素配列から画素信号を読出す」点で一致しているが、本願発明の「撮像素子」が備える「画素読出手段」が読み出す「画素信号」は「複数色の」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」が読み出す「撮像素子の出力信号」はそのようなものではない点で相違している。
第三に、本願発明の「撮像素子」が備える「増幅手段」は「少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記複数色の画素信号を増幅して出力する」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」は「前記複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する」ものであるから、引用発明1の「増幅手段」と本願発明の「撮像素子」が備える「増幅手段」は「少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記画素信号を増幅して出力する」点で一致し、本願発明の「撮像素子」が備える「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」の増幅の対象となる「撮像素子の出力信号」はそのようなものではない点で相違している。
第四に、本願発明の「撮像素子」が備える「利得設定手段」は「前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に前記増幅手段に対して異なる利得を設定する」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」は上記したように「増幅手段」自体に対して「複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する」という利得設定を行っているということができるから、引用発明1の「増幅手段」は、自ら利得設定を行っているという観点で、本願発明の「利得設定手段」と同様の手段を内在しているということができる。そうであるから、引用発明1の「増幅手段」と本願発明の「撮像素子」が備える「利得設定手段」は「前記増幅手段により前記画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段」である点で一致し、(a)本願発明の「撮像素子」が備える「利得設定手段」の利得設定の対象となる「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の全色の」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」の増幅の対象となる「撮像素子の出力信号」はそのようなものではない点、(b)本願発明の「撮像素子」が備える「利得設定手段」の設定する利得は「前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に」異なる利得であるのに対し、引用発明1の「増幅手段」が自ら行う利得設定による利得は「それぞれの予備発光に対して異なった増幅率」である点で異なっている。

これら「第一に」?「第四に」で述べたことをまとめると、引用発明1と本願発明は「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子」を有している点で一致し、(a)本願発明の「撮像素子」が備える「画素読出手段」が読み出す「画素信号」は「複数色の」ものであり、「撮像素子」が備える「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の」ものであり、「撮像素子」が備える「利得設定手段」の利得設定の対象となる「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の全色の」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」が読み出し、且つ、増幅の対象とする「撮像素子の出力信号」はそのようなものではない点、および、(b)本願発明の「撮像素子」が備える「利得設定手段」の設定する利得は「前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に」異なる利得であるのに対し、引用発明1の「増幅手段」が自ら行う利得設定による利得は「それぞれの予備発光に対して異なった増幅率」である点で相違する。

4.2.「撮影する被写体に対して光を照射する発光手段」
引用発明1は「撮影時に被写体に向かって補助光を照射し本発光の光量を設定するために複数回の一定光量の予備発光を行う予備発光照射手段」を有しており、この「予備発光照射手段」と本願発明の「撮影する被写体に対して光を照射する発光手段」が一致するから、引用発明1と本願発明は、いずれも「撮影する被写体に対して光を照射する発光手段」を有する点で一致している。

4.3.「前記撮像素子から出力される複数色の全色の画素信号を利用して前記被写体からの反射光を測光する測光手段」
引用発明1は「前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光を光電変換する撮像素子と、前記複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する増幅手段と、前記それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否かを検出するための検出手段と、当該検出手段による検出の結果、前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあると判別された当該増幅手段の出力信号に基づいて本発光の光量を演算する演算手段」を有しており、引用発明1の「演算手段」が「増幅手段の出力信号に基づいて本発光の光量を演算する」ために「被写体により反射された光」の光量を測光していると認められるから、引用発明1と本願発明は「前記撮像素子から出力される画素信号を利用して前記被写体からの反射光を測光する測光手段」を有する点で一致している。
しかしながら、上記『4.1.「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から複数色の画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記複数色の画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子」』で述べたように、本願発明の「撮像素子」が備える「画素読出手段」が読み出す「画素信号」は「複数色の」ものであり、「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の」ものであり、「利得設定手段」の利得設定の対象となる「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の全色の」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」が読み出し、且つ、増幅の対象とする「撮像素子の出力信号」はそのようなものではない点で異なっているから、引用発明1の「演算手段」が「本発光の光量を演算する」ために用いている「増幅手段の出力信号」が「複数色の全色の」ものであるということはできない。すなわち、本願発明の「測光手段」が利用する「前記撮像素子から出力される画素信号」は「複数色の全色の」ものであるのに対し、引用発明1の「演算手段」が「本発光の光量を演算する」ために用いている「増幅手段の出力信号」が「複数色の全色の」ものであるということはできない点で相違する。
これらをまとめると、引用発明1と本願発明は「前記撮像素子から出力される画素信号を利用して前記被写体からの反射光を測光する測光手段」を有する点で一致し、本願発明の「測光手段」が利用する「前記撮像素子から出力される画素信号」は「複数色の全色の」ものであるのに対し、引用発明1の「演算手段」が「本発光の光量を演算する」ために用いている「増幅手段の出力信号」が「複数色の全色の」ものであるということはできない点で相違する。

4.4.「前記測光手段による測光結果に基づいて前記発光手段の発光量を決定し、決定した発光量で前記発光手段が発光するように制御する制御手段」
引用発明1は「・・・当該検出手段による検出の結果、前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあると判別された当該増幅手段の出力信号に基づいて本発光の光量を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された本発光の光量に基づいて本発光を行うとともに、撮像素子から最適な画像データを得ることを特徴とするストロボ装置。」であるから、引用発明1と本願発明は「前記測光手段による測光結果に基づいて前記発光手段の発光量を決定し、決定した発光量で前記発光手段が発光するように制御する制御手段」を有する点で一致している。

4.5.「前記測光手段により前記被写体からの反射光を測光する場合に、前記画素読出手段が前記画素配列に対して水平方向又は垂直方向に規定の周期で画素間引きを行って画素信号を読出すとともに、前記増幅手段が前記画素配列における間引かれない画素行又は画素列に対して規定の周期の行毎又は列毎に設定された少なくとも2つの異なる利得で増幅することを特徴とする」
上記『4.1.「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から複数色の画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記複数色の画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子」』で述べたように、引用発明1の「増幅手段」が「撮像素子」から「撮像素子の出力信号」を読み出していると認められるものの、引用例1には、引用発明1の「増幅手段」による「撮像素子の出力信号」の読み出しが「画素配列に対して水平方向又は垂直方向に規定の周期で画素間引きを行って画素信号を読出す」ものであることの記載は無いから、本願発明は「前記画素読出手段が前記画素配列に対して水平方向又は垂直方向に規定の周期で画素間引きを行って画素信号を読出す」ものであるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点で相違する。
更に、上記『4.1.「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から複数色の画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記複数色の画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子」』で述べたように、本願発明の「利得設定手段」は「前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に」前記増幅手段に対して異なる利得を設定するのに対し、引用発明1の「増幅手段」は「複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して」異なった増幅率で増幅するものである点で相違し、引用発明1は「前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に」前記増幅手段に対して異なる利得を設定するものではないから、本願発明は「前記増幅手段が前記画素配列における間引かれない画素行又は画素列に対して規定の周期の行毎又は列毎に設定された少なくとも2つの異なる利得で増幅する」ものであるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点でも相違する
これらをまとめると、本願発明は「前記測光手段により前記被写体からの反射光を測光する場合に、前記画素読出手段が前記画素配列に対して水平方向又は垂直方向に規定の周期で画素間引きを行って画素信号を読出すとともに、前記増幅手段が前記画素配列における間引かれない画素行又は画素列に対して規定の周期の行毎又は列毎に設定された少なくとも2つの異なる利得で増幅することを特徴とする」ものであるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点で相違する。

4.6.「撮像装置」
引用発明1は「ストロボ装置」ではあるものの「撮像素子から最適な画像データを得ることを特徴とする」ものであって、「撮像装置」であるととらえることができるから、引用発明1と本願発明は「撮像装置」である点で一致している。

5.一致点・相違点
上記『4.1.「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から複数色の画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記複数色の画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記複数色の全色の画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子」』から『4.6.「撮像装置」』で述べたことをまとめると、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致し、相違する。

[一致点]
「各々が光電変換素子を含み、水平方向及び垂直方向に配置された複数の画素から構成される画素配列と、前記画素配列から画素信号を読出す画素読出手段と、少なくとも2つの異なる利得の設定が可能で、前記画素読出手段により前記画素配列から読出された前記画素信号を増幅して出力する増幅手段と、前記増幅手段により前記画素信号がそれぞれ少なくとも2つの異なる利得で増幅されるように、前記増幅手段に対して異なる利得を設定する利得設定手段とを備えた撮像素子と、
撮影する被写体に対して光を照射する発光手段と、
前記撮像素子から出力される画素信号を利用して前記被写体からの反射光を測光する測光手段と、
前記測光手段による測光結果に基づいて前記発光手段の発光量を決定し、決定した発光量で前記発光手段が発光するように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。」

[相違点]
(1) 本願発明の「撮像素子」が備える「利得設定手段」の設定する利得は「前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に」異なる利得であるのに対し、引用発明1の「増幅手段」が自ら行う利得設定による利得は「それぞれの予備発光に対して異なった増幅率」である点。
(2) 本願発明の「撮像素子」が備える「画素読出手段」が読み出す「画素信号」は「複数色の」ものであり、「撮像素子」が備える「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の」ものであり、「撮像素子」が備える「利得設定手段」の利得設定の対象となる「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の全色の」ものであり、「測光手段」が利用する「前記撮像素子から出力される画素信号」は「複数色の全色の」ものであるのに対し、引用発明1の「増幅手段」が読み出し、且つ、増幅の対象とする「撮像素子の出力信号」はそのようなものではなく、「演算手段」が「本発光の光量を演算する」ために用いている「増幅手段の出力信号」が「複数色の全色の」ものであるということはできない点。
(3) 本願発明は「前記測光手段により前記被写体からの反射光を測光する場合に、前記画素読出手段が前記画素配列に対して水平方向又は垂直方向に規定の周期で画素間引きを行って画素信号を読出すとともに、前記増幅手段が前記画素配列における間引かれない画素行又は画素列に対して規定の周期の行毎又は列毎に設定された少なくとも2つの異なる利得で増幅することを特徴とする」ものであるのに対し、引用発明1はそのようなものではない点。

6.当審の判断
以下、上記相違点(1)(2)(3)について検討する。

6.1.相違点(1)
上記「3.2.2.引用例2記載の発明」で述べたように、引用発明2は「ダイナミックレンジの拡大された撮像画像を生成することの可能な撮像装置であって、撮像素子となるCCD10、CCD10で得られたデータから被写体に関するカラー画像データを生成する画像処理部20を有し、CCD10の撮像面11には、複数の画素が2次元配列されるとともに、撮像面11における各色成分がベイヤー配列され、適切なカラー画像を生成するために、高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとがそれぞれ水平方向Hに沿った2ラインごとに交互に設定され、画像処理部20は、データ読出部21、高/低感度画像並び替え部22、タイミングジェネレータ28、およびCPU29を備えて構成され、データ読出部21は、CCD10から各画素の輝度信号をタイミングジェネレータ28からの指示タイミングに基づいて順次に読み出すものであって、現在読み出し対象となっているラインが高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとのいずれであるかを判断し、高感度撮影用領域RHである場合には比較的大きな値である所定のゲインGHが設定し、低感度撮影用領域RLである場合には比較的小さな値である所定のゲインGLが設定され、高/低感度画像並び替え部22は、2ラインごとに高感度部分と低感度部分とが垂直方向Vに沿って混在した画像となっているデータ読出部21で得られる画像データから、2ラインごとの画像データの抽出を行い、高感度画像と低感度画像との2画像を生成する、ダイナミックレンジの拡大された撮像画像を生成することの可能な撮像装置。」であって、その目的は「ダイナミックレンジの拡大された撮像画像を生成すること」であり、その目的を達成するために「高感度撮影用領域RHである場合には比較的大きな値である所定のゲインGHが設定し、低感度撮影用領域RLである場合には比較的小さな値である所定のゲインGLが設定」するという構成を有している。
これに対し、引用発明1は「撮影時に被写体に向かって補助光を照射し本発光の光量を設定するために複数回の一定光量の予備発光を行う予備発光照射手段と、前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光を光電変換する撮像素子と、前記複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する増幅手段と、前記それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否かを検出するための検出手段と、当該検出手段による検出の結果、前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあると判別された当該増幅手段の出力信号に基づいて本発光の光量を演算する演算手段と、前記演算手段で演算された本発光の光量に基づいて本発光を行うとともに、撮像素子から最適な画像データを得ることを特徴とするストロボ装置。」である。ここで、引用発明1の「前記それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否かを検出するための検出手段」による「前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否か」との判断は、「出力信号の平均レベル」が「所定範囲」というダイナミックレンジの範囲内にあるか否かの判断であると理解することができるから、引用発明1の「前記それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否かを検出するための検出手段」「当該検出手段による検出の結果、前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあると判別された当該増幅手段の出力信号に基づいて本発光の光量を演算する演算手段」による処理は、「それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが」ダイナミックレンジの範囲内であるか否かを判断し、ダイナミックレンジの範囲内である場合に「本発光の光量を演算する」ことによって、ダイナミックレンジの影響を受けずに正しく「本発光の光量を演算する」ものであるということができる。そして、引用発明1の「増幅手段」は「前記複数回の予備発光において光電変換された前記撮像素子の出力信号を、それぞれの予備発光に対して異なった増幅率で増幅する」ものであって、この「増幅手段」による処理に、「検出手段」「演算手段」による、「それぞれの予備発光に対して得られた前記増幅手段の出力信号の平均レベルが」ダイナミックレンジの範囲内であるか否かを判断し、ダイナミックレンジの範囲内である場合に「本発光の光量を演算する」ことによって、ダイナミックレンジの影響を受けずに正しく「本発光の光量を演算する」処理を併せて、上記「前記増幅手段の出力信号の平均レベルが所定範囲にあるか否か」を「増幅手段」の入力側に換算すると、『入力信号の平均レベルが「所定範囲の下限/最大増幅度」から「所定範囲の上限/最小増幅度」にあるか否か』となるから、これら「増幅手段」「検出手段」「演算手段」による処理は、「本発光の光量を演算する」過程で、「撮像素子」に入射する「前記予備発光照射手段による複数回の一定光量の予備発光を受け被写体により反射された光」のダイナミックレンジの拡大として働いていると理解することができる。
そうすると、引用発明1と引用発明2は、いずれも「ダイナミックレンジの拡大」を行うものであり、そのために、複数の増幅度を利用するものである点で共通しているが、引用発明1は複数回撮影する必要があるのに対し、引用発明2は一回の撮影でそれを実現している点で異なっている。そして、引用発明1は複数回撮影する必要があるため、最初の「予備発光」から「前記演算手段で演算された本発光の光量に基づいて本発光を行うとともに、撮像素子から最適な画像データを得る」迄には時間がかかるものであるが、引用発明1は上記『4.6.「撮像装置」』で述べたように「撮像装置」であるととらえることができるものであることを考えると、より良い画像を取得するために、撮像を行おうとする指令をしてから実際に撮像するまでの遅れをできるだけ短くしようとすることは、良く知られた課題であって、それを実現するために、いずれも「ダイナミックレンジの拡大」を行う点で共通している引用発明1と引用発明2の間で、引用発明1の「撮像素子」「増幅手段」を引用発明2に記載されたものと置き換えることによって、結局、設定する利得を「前記画素配列の規定の周期の行毎又は列毎に」異なる利得としたことは、当業者が容易になしえたことにすぎない。

6.2.相違点(2)
引用発明2は「CCD10の撮像面11には、複数の画素が2次元配列されるとともに、撮像面11における各色成分がベイヤー配列され、適切なカラー画像を生成するために、高感度撮影用領域RHと低感度撮影用領域RLとがそれぞれ水平方向Hに沿った2ラインごとに交互に設定され」ているものであって、この「2ライン」にはベイヤー配列されたR,G,Bの各色成分がすべて含まれているものであるが、上記相違点(1)で述べたように、引用発明1の「撮像素子」「増幅手段」を引用発明2に記載されたものと置き換えること自体は容易であり、また、R,G,Bの出力すべてを用いて輝度信号を求めることも例を挙げるまでもなく良く行われていることであるから、「撮像素子」が備える「画素読出手段」が読み出す「画素信号」は「複数色の」ものであり、「撮像素子」が備える「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の」ものであり、「撮像素子」が備える「利得設定手段」の利得設定の対象となる「増幅手段」の増幅の対象となる「画素信号」は「複数色の全色の」ものであり、「測光手段」が利用する「前記撮像素子から出力される画素信号」は「複数色の全色の」ものとすることは、当業者が容易になしえたことにすぎない。

6.3.相違点(3)
上記「3.3.2.引用例3記載の発明」で述べたとおり、引用発明3は「撮影待機状態において取得される画像データ中の明るさに基づいてシャッタースピードや絞り値などの露出制御値を求め露出制御を行う、CCDを用いて画像データを取得するデジタルカメラであって、CCD201は、画像信号の出力モードとして、全画素の画像データを出力するフレームモードと、縦の画素を1/8に間引いて横2560×縦240の画素を有する簡易画像データを出力するドラフトモードとを有し、撮影待機状態においては高速化のためドラフトモードに、撮影指示後において記録用の画像データを出力する際にはフレームモードにそれぞれ設定され、CCD201からは、縦の画素を1/8に間引いた横2560×縦240の画素を有する簡易画像データ71bが出力され、演算領域抽出回路208によりさらに横の画素も1/8に間引かれ、主測光演算回路222が演算対象とする横320×縦240の画素を有する画像データ71cが生成され、主測光演算回路222において主測光値BV1が演算される、デジタルカメラ。」であって、解像度を下げた簡易画像データを用いて測光を行うものである。
ここで、引用例1段落【0026】に「なお、自然光のみおよび予備発光における測光時おいては、全画面を64の領域に分割し、各領域ごとにハード的に各画素データが平均化されたデータを撮像素子より求めるようにしても良い。これにより、より高速処理が実現できる。」との記載があるように、引用発明1において撮像素子を用いて測光するときには、その撮像素子を用いて画像データを得るときに比べ、その解像度が低くても良いものであるから、引用発明1と引用発明2の組み合わせを維持しつつ、引用発明1に引用発明3を組み合わせ、「前記測光手段により前記被写体からの反射光を測光する場合に、前記画素読出手段が前記画素配列に対して水平方向又は垂直方向に規定の周期で画素間引きを行って画素信号を読出すとともに、前記増幅手段が前記画素配列における間引かれない画素行又は画素列に対して規定の周期の行毎又は列毎に設定された少なくとも2つの異なる利得で増幅することを特徴とする」ように構成したことは、当業者が容易になしえたことにすぎない。

また、本願発明は、格別の作用効果を奏するものとも認められない。

したがって、本願発明は、引用発明1?3に基づき当業者が容易に発明できたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、残る請求項2?6に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-20 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-01-08 
出願番号 特願2007-21130(P2007-21130)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 肇  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 奥村 元宏
千葉 輝久
発明の名称 撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラム  
代理人 別役 重尚  

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