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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07C
管理番号 1284953
審判番号 不服2011-2883  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-08 
確定日 2014-02-18 
事件の表示 特願2007-518467「プロピレンの不均一触媒部分気相酸化によるアクリル酸の製造」拒絶査定不服審判事件〔2006年1月12日国際公開、WO2006/002703、平成20年2月14日国内公表、特表2008-504309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2005年4月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年7月1日、米国(US)、ドイツ(DE)、2005年3月1日、米国(US)、ドイツ(DE)、2005年3月2日、米国(US)、ドイツ(DE))を国際出願日とする出願であって、平成19年2月28日に手続補正書が提出され、平成22年3月5日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月8日に審判請求がなされ、平成25年4月16日付けの当審による拒絶理由通知に対して、同年8月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成25年4月16日付け拒絶理由通知について
当審は、平成25年4月16日付けで拒絶理由を通知したが、その拒絶理由通知の内容の概略は以下のとおりのものである。

「…
第3 拒絶理由2
この出願の請求項1・・に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特表2000-502719号公報(当審において新たに引用した文献)
刊行物2:国際公開第2004/31106号(原審で「刊行物1」として引用した文献)
刊行物3:国際公開第2004/31107号(原審で「刊行物2」として引用した文献)
刊行物4:国際公開第03/11804号(原審で「刊行物3」として引用した文献)


1 本願発明の認定
上記第2 1で示したとおり、請求項1における「プロピレンの変換C^(P)」及び「アクロレインの変換C^(A)」を、それぞれ「プロピレンの変換率C^(P)」及び「アクロレインの変換率C^(A)」と読み替え…るものとする。
すなわち、この出願の発明は、平成22年9月9日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1…に記載された事項を上記のとおり読み替えて特定される…とおりのものであると認める(以下、請求項1…に係る発明をそれぞれ「本願発明1」…という。)。

3 刊行物1に記載された発明

してみると、刊行物1には、
「(i)プロパン及び酸素を含む供給原料流れと、プロパン、プロピレン、酸素、及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの少なくとも一方を含む再循環ガスとをプロピレン反応帯域に送り、ここで供給原料流れを反応器に収容された不均質酸化脱水素触媒と接触させてプロパン酸化脱水素反応させ、プロピレン、未反応プロパン及び水を含む第一流出流れを形成し、
(ii)プロピレンの含量が7?15容量%の範囲内、酸素対プロピレンのモル比が1.5?2.0の範囲内で第一流出流れをアクロレイン反応帯域に送り、ここで第一流出流れを固定触媒床反応器に収容されたMo、Fe及びBiを含有する酸化物触媒である不均質触媒と接触させてアクロレイン、プロピレン、プロパン及びアクリル酸を含む第二流出流れを形成し、
(iii)第二流出流れをアクリル酸反応帯域に送り、ここで第二流出流れを固定触媒床反応器に収容されたモリブデン及びバナジウムを含有する酸化物触媒である不均質触媒と接触させてプロピレン、プロパン、アクリル酸及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの一方を含む第三流出流れを形成し、
(iv)第三流出流れを、分離装置において、アクリル酸を含む液体生成物流れとプロパン、プロピレン、酸素、並びに一酸化炭素、二酸化炭素、そして種々の非反応性ガスよりなる未反応ガス流れとに分離し、そして
(v)未反応ガス流れは、その大半をプロピレン反応帯域に再循環させて供給原料流れの一部分を形成し、その少量のしかし望ましくない反応副生物の徐徐の蓄積を防止する程度をパージする、
ことからなる分子状酸素を使用するプロピレンの気相接触酸化によってアクリル酸を製造する方法において、
(ii)段階におけるプロピレン転化率は80モル%以上であり、そして、
(iii)段階におけるアクロレインの転化率は約95?99%又はそれ以上である方法」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

3 本願発明1について
(1)対比
ア b)、d)段階(任意特定事項)のいずれも含まない態様について

してみると、本願発明1と引用発明1は…以下の点で一応相違する。

相違点1
e)段階の「出発反応ガス混合物3」について、本願発明1では、「O_(2):C_(3)H_(4)Oモル比≧0.5」とするのに対して、引用発明1では、そのような特定がされていない点

相違点2
f)段階の「未変換のプロパン及びプロピレンを、第1段階にリサイクルすること」について、本願発明1では、生成物ガス混合物3中に存在するそれぞれの量、すなわち、「未変換のプロパン及びプロピレンの量に基づいて各々の場合少なくとも80モル%」までリサイクルするのに対して、引用発明1では、そのような特定がされていない点

相違点3
第2反応段階におけるプロピレン変換率CPが、本願発明1では、それの単回通過に基づいて「90?97.5モル%」であるのに対して、引用発明1では、「80モル%以上」である点

相違点4
第3反応段階におけるアクロレイン変換率CAが、本願発明1では、それの単回通過に基づいて「99.5?99.99モル%」であるのに対して、引用発明1では、「約95?99%又はそれ以上」である点

(2)相違点についての検討
ア 相違点1について
刊行物2?4において…記載されているように、アクリル酸反応帯域において、当該反応を好適に実施するために「O_(2):C_(3)H_(4)Oモル比≧0.5」とすることは、この出願の優先日前における当該技術分野における技術常識であって、引用発明1においても当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2について
刊行物1における…記載からみて、引用発明1において「未反応ガス流れは、その大半をプロピレン反応帯域に再循環させて供給原料流れの一部分を形成し、その少量のしかし望ましくない反応副生物の徐徐の蓄積を防止する程度をパージする」目的が、プロパンからプロピレンへの反応を低転化率高選択率操作でも高効率的に行うためであることは当業者に明らかである。
そうすると、引用発明1において、望ましくない反応副生成物の蓄積防止が可能なパージ量が確保できる範囲内で、未変換プロパン及びプロピレンを含む未反応ガス流れの再循環量を最大化することは当業者が容易に想到できたことであり、その際、その具体的な再循環量を「未変換のプロパン及びプロピレンの量に基づいて各々の場合少なくとも80モル%」程度とすることにも格段の困難性はない。

ウ 相違点3について
刊行物1における…記載からみて、プロピレンからアクロレインへの反応条件はアクロレインへの選択率の向上をもたらす比較的低い温度に調節され、その際、転化率が比較的低いものとなることが示唆されているといえる。
また、刊行物1において、プロピレンの転化率として具体的に実施されてのは…「ほぼ90%」及び「90.6%」のみである。
そうすると、引用発明1の(ii)段階におけるプロピレン転化率は、実質的に、高転化率には到らない…「90?97.5モル%」程度の範囲内のものであると解するのが相当であり、そうであれば、相違点3は実質的な相違点ではない。

エ 相違点4について
刊行物1には、アクロレインの転化率として具体的に実施されているものは示されていないものの、刊行物1における…記載からみて、より高い転化率が好適であることが示唆されているといえるから、引用発明1の(iii)段階におけるアクロレイン転化率を…「99.5?99.99モル%」程度の範囲内のものとすることは、当業者に容易に想到できたことである。

(3)効果について
本願明細書…には、実施例として、「78.9モル%のアクリル酸収率」…で、「>98モル%のリサイクル率がプロパン及びプロピレンの両方に対して達成された」…ことが示されているものの、「第1反応段階のプロペン変換(当審注:プロピレン変換率)は98.0モル%」…であって、本願発明1における「プロピレン変換率C^(P)・・90?97.5モル%」の範囲内のものではないから、この実施例の記載から、本願発明1の効果を認定することはできない。
また、本願明細書の記載全体を参酌しても…本願発明の課題を解決できるという点を除き、本願発明1の効果を認定することはできない。

してみると、上記(2)イで示したとおり、引用発明1において、望ましくない反応副生成物の蓄積防止が可能なパージ量が確保できる範囲内で、未変換プロパン及びプロピレンを含む未反応ガス流れの再循環量を最大化することにより得られる方法が、本願発明1の効果を奏することは、当業者が予測できた範囲内のことである。

(4)小括
したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明(引用発明1)、刊行物2ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
…」

第3 本願発明の認定
この出願の発明は、平成25年8月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1?17に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。

「プロピレンの不均一触媒部分気相酸化によりアクリル酸を製造するための方法であって:
a)第1反応段階において、酸素の存在下及び/又は排除下で、プロパンを均一及び/又は不均一触媒脱水素及び/又はオキシ脱水素に供して、プロパン及びプロピレンを含む生成物ガス混合物1を得ること、及び、
b)場合により、第1反応段階において形成された生成物ガス混合物1から、その中に存在するプロパン及びプロピレン以外の成分の一部を分離及び/又は他の化合物に変換して、生成物ガス混合物1から生成物ガス混合物1’を得ること、及び、
c)生成物ガス混合物1及び/又は生成物ガス混合物1’を、O_(2):C_(3)H_(6)モル比≧1で分子状酸素及びプロピレンを含む出発反応ガス混合物2の成分として、活性組成物として元素Mo、Fe及びBiを含む少なくとも1つの多金属酸化物を触媒が有する固定触媒床2を充填した第2反応段階において、生成物ガス混合物1及び/又は生成物ガス混合物1’中に存在するプロピレンの不均一触媒部分気相酸化に供して、アクロレインとし、生成物ガス混合物2を得ること、及び、
d)間接的及び/又は直接的な冷却により第2反応段階を出る生成物ガス混合物2の温度を場合により低下させ、そして分子状酸素及び/又は不活性ガスを生成物ガス混合物2に場合により添加すること、及び、
e)次に、アクロレイン、分子状酸素及び少なくとも1つの不活性ガスを含み、O_(2):C_(3)H_(4)Oモル比≧0.5で分子状酸素及びアクロレインを含む出発反応ガス混合物3として、活性組成物として元素Mo及びVを含む少なくとも1つの多金属酸化物を触媒が有する固定触媒床3を充填した第3反応段階において、出発反応ガス混合物3中に存在するアクロレインの不均一触媒部分気相酸化に供して、アクリル酸とし、生成物ガス混合物3を得ること、及び、
f)生成物ガス混合物3から分離ゾーンAにおいてアクリル酸を分離し、そして少なくとも、生成物ガス混合物3中に存在する少なくとも未変換のプロパン及びプロピレンを、生成物ガス混合物3中に存在するそれぞれの量に基づいて各々の場合少なくとも80モル%まで3つの反応段階の少なくとも第1段階にリサイクルすること、
により製造する方法において、
-第2反応段階におけるプロピレンの変換率C^(P)が、それの単回通過に基づいて、90?98.0モル%であり、そして、
-第3反応段階におけるアクロレインの変換率C^(A)が、それの単回通過に基づいて、99.5?99.99モル%であり、そして、方法がプロパン及びプロペン以外の成分について少なくとも1回の排出を有することを特徴とする方法。」

第4 当審の判断
当審の上記拒絶理由通知に対して、指定期間内に意見書及び手続補正書が提出されたので、その補正された後のこの出願の発明につき上記「第3 拒絶の理由2」と同様の理由が成立するか否か再度検討を行う。

1 刊行物に記載された事項
(1)上記拒絶理由通知で引用した本願優先日前に頒布された上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

(1-ア)「1.(i)プロパン及び酸素を含む供給原料流れと、プロパン、プロピレン、酸素、及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの少なくとも一方を含む再循環ガスとをプロピレン反応帯域に送り、ここで供給原料流れをプロパン反応触媒とプロパンの酸化を促進するのに有効な条件で接触させてプロピレン、未反応プロパン及び水を含む第一流出流れを形成し、
(ii)第一流出流れをアクロレイン反応帯域に送り、ここで第一流出流れをアクロレイン反応触媒と、プロピレンのアクロレインへの転化を促進するのに有効な条件で接触させてアクロレイン、プロピレン、プロパン及びアクリル酸を含む第二流出流れを形成し、
(iii)第二流出流れをアクリル酸反応帯域に送り、ここで第二流出流れをアクリル酸反応触媒と、アクロレインのアクリル酸への転化を促進するのに有効な条件で接触させてプロピレン、プロパン、アクリル酸及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの一方を含む第三流出流れを形成し、
(iv)第三流出流れを、アクリル酸を含む液体生成物流れと、該再循環ガスを含む再循環ガス流れとに分離し、そして
(v)再循環ガス流れの少なくとも一部分をプロピレン反応帯域に再循環させて供給原料流れの一部分を形成し、
ここで再循環ガス流れは、アクロレイン反応帯域におけるアクロレインの生成効率を向上させるのに有効な量のプロパンを含む、
ことからなるアクリル酸の製造法。」(特許請求の範囲、請求項1)
(1-イ)「4.プロピレン反応帯域及びアクロレイン反応帯域が単一の反応器において結合されている請求項1記載の方法」(特許請求の範囲、請求項4)
(1-ウ)「分子状酸素を使用するプロピレンの気相接触酸化によってアクリル酸を製造する方法」(第5頁第8?9行)
(1-エ)「本発明に従って低いプロパン対プロピレン転化率で操作することによって、プロピレンに対する選択率は、予想外に高く例えば80?100モル%にすることができ…プロパンの存在はプロピレンからアクロレインへの反応の効率を向上させることが見い出されたので、低いプロパン転化率は、このプロセスに対して害にならない。実際に、たとえアクロレイン反応器への供給原料がプロピレンを低濃度で例えば5?20モル%で含有する場合でさえも、低転化率高選択率の操作態様は、未反応プロパンをプロパン酸化反応器に再循環させるならば高効率的にすることができる。」(第6頁第15?22行)
(1-オ)「プロパンからプロピレンへの反応…特にプロパン酸化脱水素反応」(第9頁第19行)
(1-カ)「プロピレンからアクロレインへの反応に好適な触媒の例は、Mo、Fe及びBiを含有する酸化物触媒」(第11頁第2?3行)
(1-キ)「アクロレイン反応ガス組成物に関し…プロピレンの含量は…好ましくは7?15容量%の範囲内であり…プロパン…の含量は…好ましくは10?60容量%の範囲内であり…酸素対プロピレンのモル比は…好ましくは1.5?2.0の範囲内…である。」(第11頁第23行?第12頁第7行)
(1-ク)「触媒は、70モル%以上そして好ましくは80モル%上のプロピレン転化率をもたらすことができるのが好ましい。」(第12頁第7?8行)
(1-ケ)「アクロレインからアクリル酸への反応に使用するための触媒は・・好ましくは、アクロレイン触媒は、モリブデン及びバナジウムを含有する酸化物触媒」(第13頁第19?22行)
(1-コ)「アクリル酸へのアクロレインの転化率は、より好ましくは約95?99%又はそれ以上である。」(第14頁第13?15行)
(1-サ)「不均質酸化脱水水素触媒…を収容する反応器99」(第14頁第26?27行)
(1-シ)「反応器100は、プロピレンの酸化のための不均質触媒…アルデヒド反応触媒を収容する…固定又は流動触媒床を含めて種々の設計を有すること」(第15頁第17?21行)
(1-ス)「含有されるプロピレンの転化率はほぼ90%である」(第15頁第22?23行)
(1-セ)「アクロレイン製造のたのプロパン供給原料の追加的な利益は、アクロレイン反応器の温度苛酷度が低下することで…プロパンの熱容量が高くなる程、ホットスポット温度は低下し、且つアクロレイン反応器全体の温度変動を調節することができ…低い温度程、アクリル酸及び炭素酸化物への転化率の低下、並びにアクロレインへの選択率の向上をもたらす。」(第15頁第28行?第16頁第4行)
(1-ソ)「反応器201は、アクリル酸へのアクロレイン転化用の不均質触媒…を収容する」(第16頁第28?29行)
(1-タ)「回収されたアクリル酸は分離装置から流れ26で取り出され、そして未反応ガス…プロパン、プロピレン、酸素、並びに一酸化炭素、二酸化炭素、そして空気ベースプロセスでは窒素のような種々の非反応性ガスよりなる…流れ27は、その流れの大半を含有する再循環流れ29と、少量のパージ流れ28とに分割される。パージ流れ28の大きさは、少量のしかし望ましくない反応副生物の除除の蓄積を防止するように選択される。」(第17頁第10?18行)
(1-チ)「供給原料プロピレンの90.5%が反応によって消費された。」(第18頁第16?17行)
(1-ツ)「第一段階では、供給原料プロピレンの90.6%が反応によって消費された。」(第18頁第29行)

(2)上記拒絶理由通知で引用した本願優先日前に頒布された上記刊行物2には、当審による日本語訳にして、以下の事項が記載されている。

(2-ア)「アクロレインからアクリル酸への部分酸化のための第2酸化帯域中でのアクロレイン:酸素分子のモル比(1:0.5?1.5が好ましい)」(第68頁第41?44行)

(3)上記拒絶理由通知で引用した本願優先日前に頒布された上記刊行物3には、当審による日本語訳にして、以下の事項が記載されている。

(3-ア)「アクロレインからアクリル酸への部分酸化のための第2酸化帯域中でのアクロレイン:酸素分子のモル比(1:0.5?1.5が好ましい)」(第68頁第41?44行)

(4)上記拒絶理由通知で引用した本願優先日前に頒布された上記刊行物4には、当審による日本語訳にして、以下の事項が記載されている。

(4-ア)「第2酸化帯域中でのアクロレイン:酸素分子のモル比(1:0.5?1.5が有利である)」(第35頁第14?16行)

2 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「分子状酸素を使用するプロピレンの気相接触酸化によってアクリル酸を製造する方法」(摘示(1-ウ))であって、「(i)プロパン及び酸素を含む供給原料流れと、プロパン、プロピレン、酸素、及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの少なくとも一方を含む再循環ガスとをプロピレン反応帯域に送り、ここで供給原料流れをプロパン反応触媒とプロパンの酸化を促進するのに有効な条件で接触させてプロピレン、未反応プロパン及び水を含む第一流出流れを形成し、(ii)第一流出流れをアクロレイン反応帯域に送り、ここで第一流出流れをアクロレイン反応触媒と、プロピレンのアクロレインへの転化を促進するのに有効な条件で接触させてアクロレイン、プロピレン、プロパン及びアクリル酸を含む第二流出流れを形成し、(iii)第二流出流れをアクリル酸反応帯域に送り、ここで第二流出流れをアクリル酸反応触媒と、アクロレインのアクリル酸への転化を促進するのに有効な条件で接触させてプロピレン、プロパン、アクリル酸及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの一方を含む第三流出流れを形成し、(iv)第三流出流れを、アクリル酸を含む液体生成物流れと、該再循環ガスを含む再循環ガス流れとに分離し、そして(v)再循環ガス流れの少なくとも一部分をプロピレン反応帯域に再循環させて供給原料流れの一部分を形成し、ここで再循環ガス流れは、アクロレイン反応帯域におけるアクロレインの生成効率を向上させるのに有効な量のプロパンを含む、ことからなるアクリル酸の製造法」(摘示(1-ア))が記載されている。
また、(i)段階について、「プロパンからプロピレンへの反応…特にプロパン酸化脱水素反応」(摘示(1-オ))であること、反応器は「不均質酸化脱水水素触媒…を収容する」(摘示(1-サ))こと、
(ii)段階について、「アクロレイン反応触媒」(摘示(1-ア))、すなわち、「プロピレンからアクロレインへの反応に好適な触媒…は、Mo、Fe及びBiを含有する酸化物触媒」(摘示(1-カ))であること、「アクロレイン反応ガス組成物に関し…プロピレンの含量は…好ましくは7?15容量%の範囲内であり…酸素対プロピレンのモル比は…1.5?2.0の範囲内…である」(摘示(1-キ))こと、「反応器…は、プロピレンの酸化のための不均質触媒…アルデヒド反応触媒を収容する…固定又は流動触媒床を含めて種々の設計を有すること」(摘示(1-シ))、
(iii)段階について、「アクリル酸反応触媒」(摘示(1-ア))、すなわち、「アクロレインからアクリル酸への反応に使用するための触媒は…モリブデン及びバナジウムを含有する酸化物触媒」(摘示(1-ケ))であること、「反応器…は、アクリル酸へのアクロレイン転化用の不均質触媒…を収容する」(摘示(1-ソ))こと、
(iv)段階及び(v)段階について、「回収されたアクリル酸は分離装置から…取り出され、そして未反応ガス…プロパン、プロピレン、酸素、並びに一酸化炭素、二酸化炭素、そして空気ベースプロセスでは窒素のような種々の非反応性ガスよりなる…流れ27は、その…大半を含有する再循環流れ…と、少量のパージ流れ…とに分割され…パージ流れ…の大きさは、少量のしかし望ましくない反応副生物の除除の蓄積を防止するように選択される」(摘示(1-タ))ことが記載されている。
さらに、(ii)段階において、「70モル%以上そして好ましくは80モル%上のプロピレン転化率をもたらすことができる」(摘示(1-ク))こと、
(iii)段階において、「アクロレインの転化率は…約95?99%又はそれ以上である」(摘示(1-コ))ことが記載されている。

してみると、刊行物1には、
「(i)プロパン及び酸素を含む供給原料流れと、プロパン、プロピレン、酸素、及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの少なくとも一方を含む再循環ガスとをプロピレン反応帯域に送り、ここで供給原料流れを反応器に収容された不均質酸化脱水素触媒と接触させてプロパン酸化脱水素反応させ、プロピレン、未反応プロパン及び水を含む第一流出流れを形成し、
(ii)プロピレンの含量が7?15容量%の範囲内、酸素対プロピレンのモル比が1.5?2.0の範囲内で第一流出流れをアクロレイン反応帯域に送り、ここで第一流出流れを固定触媒床反応器に収容されたMo、Fe及びBiを含有する酸化物触媒である不均質触媒と接触させてアクロレイン、プロピレン、プロパン及びアクリル酸を含む第二流出流れを形成し、
(iii)第二流出流れをアクリル酸反応帯域に送り、ここで第二流出流れを固定触媒床反応器に収容されたモリブデン及びバナジウムを含有する酸化物触媒である不均質触媒と接触させてプロピレン、プロパン、アクリル酸及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの一方を含む第三流出流れを形成し、
(iv)第三流出流れを、分離装置において、アクリル酸を含む液体生成物流れとプロパン、プロピレン、酸素、並びに一酸化炭素、二酸化炭素、そして種々の非反応性ガスよりなる未反応ガス流れとに分離し、そして
(v)未反応ガス流れは、その大半をプロピレン反応帯域に再循環させて供給原料流れの一部分を形成し、その少量のしかし望ましくない反応副生物の徐徐の蓄積を防止する程度をパージする、
ことからなる分子状酸素を使用するプロピレンの気相接触酸化によってアクリル酸を製造する方法において、
(ii)段階におけるプロピレン転化率は80モル%以上であり、そして、
(iii)段階におけるアクロレインの転化率は約95?99%又はそれ以上である方法」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比判断
以下、本願発明について、b)、d)段階(任意特定事項)のいずれも含まない態様について検討する。

(1)対比
ア 引用発明における「分子状酸素を使用するプロピレンの気相接触酸化によってアクリル酸を製造する方法」は、触媒として「不均質触媒」、すなわち、不均一触媒を用いており、プロピレンからアクリル酸への気相酸化が部分気相酸化であることも当業者に明らかであるから、本願発明における「プロピレンの不均一触媒部分気相酸化によりアクリル酸を製造するための方法」に相当する。
イ 引用発明における「(i)」段階の「プロパン及び酸素を含む供給原料流れを反応器に収容された不均質酸化脱水素触媒と接触させてプロパン酸化脱水素反応させ」、それによって「プロピレン、未反応プロパン及び水を含む第一流出流れを形成」することは、本願発明における「a)」段階の「酸素の存在下で、プロパンを不均一触媒オキシ脱水素に供し」、それによって「プロパン及びプロピレンを含む生成物ガス混合物1を得」ることに相当する。
ウ 引用発明における「(ii)」段階の「第一流出流れ」を「酸素対プロピレンのモル比が1.5?2.0の範囲内」とし、「固定触媒床反応器に収容されたMo、Fe及びBiを含有する酸化物触媒である不均質触媒と接触させ」、それによって「アクロレイン、プロピレン、プロパン及びアクリル酸を含む第二流出流れを形成」することは、本願発明における「c)」段階の「生成物ガス混合物1」を「O_(2):C_(3)H_(6)モル比≧1で分子状酸素及びプロピレンを含む出発反応ガス混合物2の成分とし」、「活性組成物として元素Mo、Fe及びBiを含む多金属酸化物を触媒が有する固定触媒床2を充填した第2反応段階において、生成ガス混合物1中に存在するプロピレンの不均一触媒部分気相酸化に供し」、それによって「アクロレインとし、生成物ガス混合物2を得」ることに相当する。
エ 引用発明における「(iii)」段階の「第二流出流れ」を「固定触媒床反応器に収容されたモリブデン及びバナジウムを含有する酸化物触媒である不均質触媒と接触させ」、それによって「プロピレン、プロパン、アクリル酸及び一酸化炭素又は二酸化炭素のうちの一方を含む第三流出流れを形成」することは、本願発明における「e)」段階の「アクロレイン、分子状酸素及び少なくとも1つの不活性ガスを含む出発反応ガス3」を「活性組成物として元素Mo及びVを含む少なくとも1つの多金属酸化物を触媒が有する固定触媒床3を充填した第3反応段落において、出発ガス混合物3中に存在するアクロレインの不均一触媒部分気相酸化に供し」、それによって「アクリル酸とし、生成物ガス混合物3を得」ることに相当する。
オ 引用発明における「(iv)」段階の「第三流出流れを分離装置においてアクリル酸を含む液体生成物流れとプロパン、プロピレン、酸素、並びに一酸化炭素、二酸化炭素、そして種々の非反応性ガスよりなる未反応ガス流れとに分離」することは、本願発明における「生成物ガス混合物3から分離ゾーンAにおいてアクリル酸を分離」することに相当する。
カ 引用発明における「(v)」段階の「プロパン、プロピレン・・よりなる未反応ガス流れ」を「プロピレン反応帯域に再循環させて供給原料流れの一部分を形成」することは、本願発明における「f)」段階の「生成物ガス混合物3中に存在する少なくとも未変換のプロパン及びプロピレン」を「第1段階にリサイクル」することに相当する。
キ 引用発明における「(v)」段階の「・・酸素、並びに一酸化炭素、二酸化炭素、そして種々の非反応性ガスよりなる未反応ガス流れ」を「パージ」することは、本願発明における「プロパン及びプロペン以外の成分」について「少なくとも1回の排出」をすることに相当する。

してみると、本願発明と引用発明は、
「プロピレンの不均一触媒部分気相酸化によりアクリル酸を製造するための方法であって:
a)第1反応段階において、酸素の存在下で、プロパンを不均一オキシ脱水素に供して、プロパン及びプロピレンを含む生成物ガス混合物1を得ること、及び、
c)生成物ガス混合物1を、O_(2):C_(3)H_(6)モル比≧1で分子状酸素及びプロピレンを含む出発反応ガス混合物2の成分として、活性組成物として元素Mo、Fe及びBiを含む少なくとも1つの多金属酸化物を触媒が有する固定触媒床2を充填した第2反応段階において、生成物ガス混合物1及び/又は生成物ガス混合物1’中に存在するプロピレンの不均一触媒部分気相酸化に供して、アクロレインとし、生成物ガス混合物2を得ること、及び、
e)次に、アクロレイン、分子状酸素及び少なくとも1つの不活性ガスを含む出発反応ガス混合物3として、活性組成物として元素Mo及びVを含む少なくとも1つの多金属酸化物を触媒が有する固定触媒床3を充填した第3反応段階において、出発ガス混合物3中に存在するアクロレインの不均一触媒部分気相酸化に供して、アクリル酸とし、生成物ガス混合物3を得ること、及び、
f)生成物ガス混合物3から分離ゾーンAにおいてアクリル酸を分離し、そして少なくとも、生成物ガス混合物3中に存在する少なくとも未変換のプロパン及びプロピレンを、第1段階にリサイクルすること、
により製造する方法において、
プロパン及びプロペン以外の成分について少なくとも1回の排出を有する方法」
という点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点1
e)段階の「出発反応ガス混合物3」について、本願発明では、「O_(2):C_(3)H_(4)Oモル比≧0.5」とするのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点

相違点2
f)段階の「未変換のプロパン及びプロピレンを、第1段階にリサイクルすること」について、本願発明では、生成物ガス混合物3中に存在するそれぞれの量、すなわち、「未変換のプロパン及びプロピレンの量に基づいて各々の場合少なくとも80モル%」までリサイクルするのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点

相違点3
第2反応段階におけるプロピレンの変換率C^(P)が、本願発明では、それの単回通過に基づいて「90?98.0モル%」であるのに対して、引用発明では、「80モル%以上」である点

相違点4
第3反応段階におけるアクロレインの変換率C^(A)が、本願発明では、それの単回通過に基づいて「99.5?99.99モル%」であるのに対して、引用発明では、「約95?99%又はそれ以上」である点

(2)相違点についての検討
ア 相違点1について
刊行物2?4において、アクロレイン(C_(3)H_(4)O)からアクリル酸への部分酸化のための第二酸化帯域における「アクロレイン:分子酸素モル比・・1:0.5?1.5」(摘示(2-ア)、(3-ア)及び(4-ア))が好適であると記載されているように、アクリル酸反応帯域において、当該反応を好適に実施するために「O_(2):C_(3)H_(4)Oモル比≧0.5」とすることは、この出願の優先日前における当該技術分野における技術常識であって、引用発明においても当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2について
引用発明は、「未反応ガス流れは、その大半をプロピレン反応帯域に再循環させ」るという発明特定事項を含むものであり、一般に、「大半」という語によって示される比率は「十中の八、九」(新村出編,「広辞苑第二版」,第2版第8刷,株式会社岩波書店,1974年9月20日,1346頁,「たいはん」の項参照)、すなわち、80?90%であるから、引用発明において、未反応ガス流れの80?90%をリサイクルすると解するのが相当であるし、未反応ガス流れ中に未変換のプロパン及びプロピレンが分散していることは当業者に明らかであるから、引用発明において「未変換のプロパン及びプロピレン量に基づいて各々の場合少なくとも80モル%」までリサイクルすると解するのが相当である。
また、引用発明は「未反応ガス流れは…その少量のしかし望ましくない反応副生物の徐徐の蓄積を防止する程度をパージする」ものであり、刊行物1における「低転化率高選択率の操作態様は、未反応プロパンをプロパン酸化反応器に再循環させるならば高効率的にすることができる」(摘示(1-エ))という記載からすると、引用発明が、反応を高選択率で反応副生成物が極力少ない条件で行い、その少ない反応生成物の徐徐の蓄積を防止する程度はパージするものの、最大限未反応ガス流れをリサイクルさせるものであることは明らかであって、そのリサイクル率が刊行物1において具体的に記載されていないとしても、「未変換のプロパン及びプロピレン量に基づいて各々の場合少なくとも80モル%」とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

ウ 相違点3について
刊行物1における「低い温度程、アクリル酸及び炭素酸化物への転化率の低下、並びにアクロレインへの選択率の向上をもたらす」(摘示(1-セ))という記載からみて、プロピレンの転換率は、反応条件を比較的低い温度に調節することにより、従来技術よりも低く抑えることが示唆されているといえる。
そして、刊行物1において、プロピレンの転換率として具体的に実施されているのは、「プロピレンの転化率はほぼ90%であ・・る」(摘示(1-ス))という記載、「供給原料プロピレンの90.5%が反応によって消費された」(摘示(1-チ))という記載、「供給原料プロピレンの90.6%が反応によって消費された」(1-ツ)という記載にみられる「ほぼ90%」及び「90.6%」のみである。
そうすると、引用発明の(ii)段階におけるプロピレン転換率は、実質的に、従来技術に比較して低く抑えられた、90%又はそれより少し高い程度、すなわち、「90?98.0モル%」程度の範囲内のものであると解するのが相当であり、そうであれば、相違点3は実質的な相違点ではない。

エ 相違点4について
刊行物1には、アクロレインの転換率として具体的に実施されているものは示されていないものの、刊行物1における「アクリル酸へのアクロレインの転化率は、より好ましくは約95?99%又はそれ以上である」(摘示(1-コ))という記載からみて、より高い転換率が好適であることが示唆されているといえるから、反応条件を適切に設定して引用発明の(iii)段階におけるアクロレインの転換率を99モル%以上、具体的には「99.5?99.99モル%」程度の範囲内のものとすることは、当業者に容易に想到できたことである。

(3)効果について
本願明細書の段落0009には、「部分酸化において変換されず残留ガス中に残存しているプロピレンは必然的に損失するため、不都合である」という課題が記載されており、本願発明の効果として、当該課題を解決できることが認められる。
さらに、本願明細書の段落【0349】?【0444】には、実施例として、「78.9モル%のアクリル酸収率」(段落【0442】)で、「>98モル%のリサイクル率がプロパン及びプロピレンの両方に対して達成された」(段落【0443】)ことが示されている。
しかしながら、当該実施例は、「第1反応段階のプロペン変換(当審注:プロピレン変換率)は98.0モル%」(【0411】)であることを含め、特定の条件下で実施された場合に得られるアクリル酸収率やリサイクル率を示すものに過ぎず、プロピレン変換率等が変わればアクリル酸収率やリサイクル率にも影響するのが当然であるから、本願発明のより広範囲であるプロピレン変換率90?98.0%の全ての範囲において、同等のアクリル酸収率やリサイクル率を実現できることを裏付けるものとは認められない。
そうすると、当該実施例に示された、アクリル酸収率やリサイクル率の具体的な数値を、本願発明の全体にわたって奏する効果として認定することはできない。
そして、上記(2)イで示したとおり、引用発明において「未変換のプロパン及びプロピレン量に基づいて各々の場合少なくとも80モル%」まで再循環すると解するのが相当であり、少なくとも、そうすることは当業者が容易に想到できたことであって、その場合に、プロピレンの損失という課題が解決できることは当業者に明らかである。
してみると、未変換のプロピレン損失という課題を解決できるという本願発明の効果は、当業者が予測できた範囲内のものである。

(4)小括
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)、刊行物2ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

4 審判請求人の主張について
審判請求人は、平成25年8月22日付け意見書の【意見の内容】3(2)において、「本願実施例に具体的に記載された効果が、本発明の進歩性を判断するにあたって参酌されるべきである」こと(以下「主張1」という。)、「審判請求書に添付したデータより、90?98.0モル%のプロピレンの変換率C^(P)を採用する事により、入り口温度の低下よりもホットスポット温度が大きく低下し…このような効果は…引用文献を考慮しても予測できるものでは」ないこと(以下「主張2」という。)を主張している。
しかしながら、主張1については、上記3(3)で示したとおり、当該実施例に示された、アクリル酸収率やリサイクル率の具体的な数値を、本願発明の全体にわたって奏する効果として認定することはできない。
また、主張2については、上記3(2)ウで示したとおり、相違点3、すなわち、プロピレンの変換率については実質的な相違点ではないから、上記審判請求書に添付したデータから参酌される効果は、引用発明においても当然奏する効果であって、引用発明と比較した有利な効果とはいえない。
してみると、上記審判請求人の主張はいずれも採用できない。

5 当審の判断のまとめ
上記3で示したとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)、刊行物2ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2条の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、その余につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-19 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-08 
出願番号 特願2007-518467(P2007-518467)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 周史  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 村守 宏文
木村 敏康
発明の名称 プロピレンの不均一触媒部分気相酸化によるアクリル酸の製造  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 篠 良一  
代理人 高橋 佳大  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  

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