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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1285031
審判番号 不服2012-15472  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-09 
確定日 2014-02-19 
事件の表示 特願2001-165443「脈拍検出装置および磁気共鳴撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月17日出願公開,特開2002-360533〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成13年5月31日を出願日とする出願であって,平成23年2月4日付けで拒絶理由が通知され,同年4月28日付けで意見書が提出されるとともに同日付で手続補正がなされ,さらに,同年6月30日付けで最後の拒絶理由が通知されたのに対し,同年10月3日付けで意見書のみが提出され,平成24年4月9日付で拒絶査定がなされた。これに対し,同年8月9日に拒絶査定不服の審判請求がされるとともに同日付で手続補正がなされ,平成25年4月17日付けで前置報告書の審尋がなされ,同年7月18日に回答書が請求人より提出されたものである。

第2 本願発明について
審判の請求とともになされた平成24年8月9日付け手続補正書の補正は,以下の補正を行うものである。
(1)補正前の請求項1の「前記検出信号の電圧が前記第1の参照電圧を超える第1の場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超え且つ前記第1の参照電圧を超えない第2の場合と、前記検出信号の電圧が前記第1の参照電圧を超えない第3の場合とに分けるコンパレータ」(下線は当審において引いた。)における下線の「第1の参照電圧」を「第2の参照電圧」に補正した点については,上記のように第1の場合,第2の場合,第3の場合に分けるには,第3の場合が「前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超えない第3の場合」となることは明らかであるから,当該補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前の特許法」という。)17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(2)補正前の請求項4?6を削除し,補正前の請求項7及び8を順次繰り上げる補正をした点については,補正前の請求項7及び8が補正前の請求項4?6のみを引用する請求項ではなかったことから,単純に補正前の請求項4?6を削除したことになり,平成18年改正前の特許法17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

したがって,本願の請求項に係る発明は,平成24年8月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】被検体の指先から脈拍を検出する脈拍検出センサと、
前記脈拍検出センサにより検出された検出信号の電圧を第1の参照電圧と前記第1の参照電圧よりも低い第2の参照電圧と比較し、前記検出信号の電圧が前記第1の参照電圧を超える第1の場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超え且つ前記第1の参照電圧を超えない第2の場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超えない第3の場合とに分けるコンパレータと、
前記コンパレータにより分けられた前記第1の場合には第1の色の発光ダイオードを点灯させ、前記コンパレータにより分けられた前記第2の場合には前記第1の色とは異なる第2の色の発光ダイオードを点灯させる簡易表示手段とを備えたことを特徴とする脈拍検出装置。」


第3 引用刊行物及びその記載事項
(1)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平7-204169号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記事項においては,下記の引用発明の認定で使用した箇所に下線を付与した。
(1-ア)「【0028】GSR情報検出電極から検出されたGSR情報は、結合コンデンサC2、C3を介して高入力インピーダンス平衡差動増幅器10に入力され、周波数0.1?1Hzを濾過するBPF5を経由して、バッファ増幅器6及びアナログスイッチ13を経てGSR情報検出出力とする。一方、脈波検出手段は、赤外線発光ダイオード駆動回路14から赤外線発光ダイオード25で発光させ、赤外線受光のホトトランジスタ26で指先の反射波を受光して、その受光信号はBPF16と増幅器17を経由して、一方はその受光した脈波信号を表示する脈波表示器21へ、他方でその脈波信号を全波整流する全波整流回路18に供給する。この全波整流信号は比較器19の一方の入力端子に入力され、他方の入力端子に所定の電圧源ER が接続されている。この比較器19の出力信号は波形整形回路20で波形整形され、アナログスイッチ13の制御端子に接続され、制御信号として出力される。」

(1-イ)「【0017】このAGC回路を含む増幅器17では、この増幅部17の出力をフィルターを介して全波整流し、清流出力をコントロール電圧として設定して、このコントロール電圧で増幅器の利得を制御する。増幅器17の出力は、全波整流器18で全波整流される(図4(2))。その整流信号は比較器19に供給され、所定の基準電圧ER と比較され、基準電圧ER より大きい電圧であればこの比較出力にロー信号が出力し、波形整形回路20を経由して(図4(3))、アナログスイッチ13をオフする。アナログスイッチ13をオフのとき、GSR信号は出力されない。」

(1-ウ)「【0021】また、増幅器17の出力に脈波表示器21を接続して、脈波信号を被検者に、例えばLED表示でその検出レベルと頻度を、ブザー音でその検出レベルと頻度を検出でき、その時の緊張度合いを脈波からある程度予測できる指標にもできる。」

上記引用例1の記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「脈波検出手段は,赤外線発光ダイオード駆動回路14から赤外線発光ダイオード25で発光させ,赤外線受光のホトトランジスタ26で指先の反射波を受光して,その受光信号はBPF16と増幅器17を経由して,一方はその受光した脈波信号を表示する脈波表示器21へ,他方でその脈波信号を全波整流する全波整流回路18に供給するもので,
該全波整流器18で全波整流された整流信号は比較器19に供給され,所定の基準電圧ER と比較され,基準電圧ER より大きい電圧であればこの比較出力にロー信号が出力され,
また,増幅器17の出力に脈波表示器21を接続して,脈波信号を被検者に,例えばLED表示でその検出レベルと頻度を,ブザー音でその検出レベルと頻度を検出でき,その時の緊張度合いを脈波からある程度予測できる指標にもできるもの。」(以下,「引用発明」という。)

(2)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平5-130977号公報(以下,「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
(2-ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は生体情報処理装置に関し、例えば、被検者よりの収集生体情報が所定の予め定めた一定範囲外となつたか否かを離れた位置からでも容易に確認可能な生体情報処理装置に関するものである。」

(2-イ)「【0019】また、本実施例では、アラーム表示部111の4つの表示部のそれぞれには赤色のLEDと黄色のLEDが内蔵されており、CPU1の制御でアラームの発生状況に従い発光色を変えている。例えば、比較的余裕のあるアラームの場合には黄色表示、余裕のないアラームの場合には赤色の表示、緊急性のあるアラームの場合には黄色と赤色の表示を同時にする等の区別を付けることにより、より容易にアラーム発生状態を離れた箇所から認識することができる。または、各アラーム発生した箇所(血圧か、心電図か、呼吸気のアラームか等)により表示色を変えて制御しても良い。」


第4 対比・判断

1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「脈波検出手段」とは,本願発明の「脈拍検出装置」に相当するものであり,引用発明の「赤外線発光ダイオード駆動回路14から赤外線発光ダイオード25で発光させ,赤外線受光のホトトランジスタ26で指先の反射波を受光」するものは,本願発明の「被検体の指先から脈拍を検出する脈拍検出センサ」に相当している。

(2)引用発明の「その受光信号はBPF16と増幅器17を経由して」「他方でその脈波信号を全波整流する全波整流回路18に供給するもの」は,引用発明で「該全波整流器18で全波整流された整流信号は比較器19に供給され,所定の基準電圧ER と比較され,基準電圧ER より大きい電圧であれば」と特定されているとおり,電圧として基準電圧ERと比較されるものであるから,本願発明の「前記脈拍検出センサにより検出された検出信号の電圧」に相当している。
そして,引用発明の「比較器19」は,本願発明の「コンパレータ」に相当するものであり,その「比較器19」により,「基準電圧ER」より大きい電圧の場合と小さい電圧の場合,すなわち「基準電圧ER」を超える場合と超えない場合に分けており,また,引用発明の「基準電圧ER」は,本願発明と同様に「前記脈拍検出センサにより検出された検出信号の電圧」と比較する対照とされるものであるから,本願発明の「第2の参照電圧」に相当するものでもある。

(3)引用発明の「LED表示」は,引用発明に特定されているとおり,増幅器17の出力に脈波表示器21を接続して、脈波信号を被検者に,その検出レベルと頻度を検出でき、その時の緊張度合いを脈波からある程度予測できる指標にもできるものであるから,本願発明の「発光ダイオードを点灯させる簡易表示手段」に相当するものである。

してみれば,本願発明と引用発明とは,
(一致点)
「被検体の指先から脈拍を検出する脈拍検出センサと、
前記脈拍検出センサにより検出された検出信号の電圧を第2の参照電圧と比較し、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超える場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超えない場合とに分けるコンパレータと、
発光ダイオードを点灯させる簡易表示手段とを備えた脈拍検出装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明では,検出信号の電圧と比較する参照電圧として,第2参照電圧よりも高い「第1の参照電圧」を設け,「前記検出信号の電圧が前記第1の参照電圧を超える第1の場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超え且つ前記第1の参照電圧を超えない第2の場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超えない第3の場合とに分け」,そして,簡易表示手段にて「前記コンパレータにより分けられた前記第1の場合には第1の色の発光ダイオードを点灯させ、前記コンパレータにより分けられた前記第2の場合には前記第1の色とは異なる第2の色の発光ダイオードを点灯させる」のに対し,
引用発明では,「第1の参照電圧」に相当するものがないことから,本願発明のように3つの場合に分けることはなく,そして,発光ダイオードを点灯させるものの,それが本願発明のように場合に分けて異なる色で点灯するのか不明である点。

2 当審の判断
上記相違点について検討する。
本願明細書には,「第1の参照電圧」及び「第2の参照電圧」との記載自体はないものの,本願明細書には以下の記載がある。
「【0037】
光センサ26を指先に装着した後で増幅器202から出力される電気信号は、図3で示した様に、大小様々な電圧を有しているため、コンパレータ207の参照電圧により選別を行なう。ここで、低い方の参照電圧は、同期可能電圧とし、さらに高い方の参照電圧は、同期可能電圧に減衰器203の減衰率の1段階あるいは複数段階分の電圧を加えた同期確実電圧とする。そのとき、コンパレータ207に入力した電気信号の電圧が、同期確実電圧を越えている場合には、簡易表示器24の緑色の発光ダイオードが点灯し、また、コンパレータ207に入力した電気信号の電圧が、同期可能電圧を越え、同期確実電圧迄の間にある場合には、黄色の発光ダイオードが点灯する。増幅器202から出力される電気信号311が、同期可能電圧を越えない場合には、簡易表示器24の発光ダイオードは、全く点灯しない。
【0038】
簡易表示器24の発光ダイオードが全く点灯しない場合には、増幅器202から出力される電気信号311が、同期可能電圧を越えていないので、オペレータが再び被検体5の指先に光センサ26を装着し直す。そして、簡易表示器24の発光ダイオードが点灯するまで、この装着しなおす作業を繰り返す。
【0039】
簡易表示器24の発光ダイオードが緑色あるいは黄色に点灯した場合には、増幅器202から出力される電気信号301が、同期可能電圧を越えているので、減衰器203により、スキャンコントローラ13への同期信号を生成することができ、光センサ26を装着し直す作業を終了する。」(下線は当審で引いた。)
当該記載から,本願発明の「第1の参照電圧」及び「第2の参照電圧」は「同期確実電圧」及び「同期可能電圧」に該当し,「同期可能電圧」とは,指先に装着した光センサから同期信号を出力することが可能な参照電圧のことであり,「同期確実電圧」とは,指先に装着した光センサから同期信号を出力することが確実な参照電圧のことである。すなわち,本願発明では,指先に装着した光センサから同期信号を出力することが確実な場合,指先に装着した光センサから同期信号を出力することが可能な場合,指先に装着した光センサから同期信号を出力することができない場合の3つの場合に分けて,その場合に応じて異なる色で発光ダイオードを点灯させているものである。
一方,引用例2の摘記(2-ア)及び(2-イ)から,引用例2には,被検者の生体情報を容易に認識できるようにするために,比較的余裕のある場合,余裕のない場合,緊急性のある場合の3つの場合に分けて,それぞれの場合に応じて,LEDの色を異ならせて点灯させることが記載されており,これら3つの場合を上記本願明細書の記載に対応させるならば,「比較的余裕のある場合」は「確実な場合」,「余裕のない場合」は「可能な場合」,「緊急性のある場合」は「できない場合」に対応し得ることである。すなわち,引用例2には,被検者の生体状態に係わる情報を三段階に分け,それぞれの場合に応じてLEDの色を異ならせて点灯させることにより,被検者の生体状態をより細かに容易に認識できるようにする技術的事項が記載されているといえる。
引用発明においても,被検者の生体情報である脈拍について,その状態を細かに,すなわち,2段階より3段階の場合に応じて容易に認識できる方が好ましいことは明らかであるから,引用発明で「基準電圧ER より大きい電圧であれば」との状態において,そのより確実な状態を表示するために,第2の参照電圧より高い「第1の参照電圧」を設け,そして,それにより生じた3つの場合,すなわち「前記検出信号の電圧が前記第1の参照電圧を超える第1の場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超え且つ前記第1の参照電圧を超えない第2の場合と、前記検出信号の電圧が前記第2の参照電圧を超えない第3の場合」に応じて,LEDの色を異ならせて点灯させること,すなわち「前記コンパレータにより分けられた前記第1の場合には第1の色の発光ダイオードを点灯させ、前記コンパレータにより分けられた前記第2の場合には前記第1の色とは異なる第2の色の発光ダイオードを点灯させる」ことは,引用例2記載の技術的事項を鑑みれば,当業者が容易になし得たことである。

そして,「第1の参照電圧」すなわち「同期確実電圧」を設けたことによる効果も,本願明細書に「同期確実電圧を越えている場合には、簡易表示器24の緑色の発光ダイオードが点灯し,」「簡易表示器24の発光ダイオードが緑色あるいは黄色に点灯した場合には、増幅器202から出力される電気信号301が、同期可能電圧を越えているので、減衰器203により、スキャンコントローラ13への同期信号を生成することができ、光センサ26を装着し直す作業を終了する。」と記載されるのみで,「第2の参照電圧」すなわち「同期可能電圧」を設ける効果と何ら格別差異のあるものとは記載されておらず,本願発明の特定事項に基づいてもたらされる効果は,引用例1又は引用例2に記載されている事項から当業者が予期しうることで格別顕著なこととは認められない。

3 まとめ
したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,他の請求項について言及するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2013-09-17 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-10 
出願番号 特願2001-165443(P2001-165443)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 保  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 森林 克郎
三崎 仁
発明の名称 脈拍検出装置および磁気共鳴撮像装置  
代理人 酒井 宏明  

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