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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1285053
審判番号 不服2013-12179  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-26 
確定日 2014-02-19 
事件の表示 特願2007- 26283「フィルム及びフィルム形成性組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月30日出願公開、特開2007-217687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成19年2月6日(パリ条約による優先権主張 2006年2月13日 アメリカ合衆国(US))の出願であって、平成22年2月4日に手続補正書が提出され、平成24年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年7月12日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成25年2月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。



第2 本願発明

本願の請求項1?10に係る発明は、平成24年7月12日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び本願の願書に最初に添付した明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「0.1乾燥重量%?40乾燥重量%の少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化重合体及び60乾燥重量%?99.9乾燥重量%の少なくとも1種の多糖を含み、さらに活性物質を含んでなり、0.25ミル(6.35マイクロメートル)から125ミル(3.175mm)の厚みを有するフィルムであって、湿った組織表面に適用される、フィルム。」



第3 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由の概要は、平成24年7月12日付け手続補正書により補正後の請求項1に係る発明は、引用文献1(特表2005-528328号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものを含むものである。



第4 当審の判断

1.刊行物
特表2005-528328号公報(以下、「引用例」という。平成24年3月6日付け拒絶理由通知書に記載の引用文献1に同じ。)

2.引用例の記載事項
ア 「グルカンおよび水溶性ポリマーを含み、グルカンと水溶性ポリマーの比が約40:1?約0.1:5である、フィルム組成物の形の摂取可能水溶性送達系。」(特許請求の範囲、請求項1)

イ 「前記グルカンが、プルラン、エルシナン、およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の摂取可能水溶性送達系。」(特許請求の範囲、請求項3)

ウ 「前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリラート、ポリ(メタ)コポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される請求項1に記載の摂取可能水溶性送達系。」(特許請求の範囲、請求項7)

エ 「さらに、美容薬、薬剤、生理活性剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される有効成分を含む請求項1に記載の摂取可能水溶性送達系。」(特許請求の範囲、請求項15)

オ 「請求項15に記載の組成物から形成された乾燥フィルム。」(特許請求の範囲、請求項20)

カ 「約5mmまでの厚みを有する請求項1または15に記載の組成物から形成した乾燥フィルム。」(特許請求の範囲、請求項21)

キ 「薄膜の使用
本発明の薄膜は多くの用途に非常に適している。フィルム成分の高度な均一性によってフィルムは特に薬剤の組み込みに大変適している。さらに、フィルムの構築に使用されるポリマーを選択してフィルムの分解時間の範囲を加減することができる。フィルムの分解する時間を変更または延長することによって活性物を放出する速度を制御することができ、持続放出送達系が考慮できるようになる。さらに、特に口腔、肛門、膣、眼などの粘膜、創傷表面、皮膚表面、または手術中などの身体内、ならびに同様の表面を含め、数種の身体表面のどれにでもフィルムを活性物の投与に使用することができる。」(段落0025)

ク 「フィルムの初期の厚みは約500μm?約1,500μm、または約20ミル?約60ミルであり、乾燥すると厚みは約3μm?約250μm、または約0.1ミル?約10ミルである。乾燥フィルムの厚みは約2ミル?約8ミルが望ましく、約3ミル?約6ミルがより望ましい。」(段落0074)

3.引用例に記載された発明
引用例には、摘示ア?カより、「プルラン、エルシナン、およびそれらの組合せからなる群から選択されるグルカン」(以下、単に「グルカン」という。)および「ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリラート、ポリ(メタ)コポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択される水溶性ポリマー」(以下、単に「水溶性ポリマー」という。)を含み、グルカンと水溶性ポリマーの比が、40:1?0.1:5であり、さらに「美容薬、薬剤、生理活性剤、およびそれらの組合せからなる群から選択される有効成分」(以下、単に「有効成分」という。)を含んでなる「フィルム組成物」から形成された、5mmまでの厚さを有する乾燥フィルムが記載されていると認められ、ここで、前記「比」は、重量比を意味すると解される。
また、摘示クより、乾燥フィルムの厚さが、3?250μmであることが記載されている。

そうすると、引用例には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「グルカンと水溶性ポリマーを40:1?0.1:5の重量比で含み、さらに有効成分を含んでなる組成物から形成され、3?250μmの厚さを有する、乾燥フィルム。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「グルカン」は、本願発明における「多糖」に相当する。
引用発明における「水溶性ポリマー」は、「ポリアクリル酸」を包含するものであるから、本願発明における「合成ポリカルボキシル化重合体」に相当する。
引用発明におけるグルカン及び水溶性ポリマーの含有割合は、上記40:1?0.1:5の重量比の値から、水溶性ポリマーが約2.4重量%?約98重量%に対して、グルカンが約97.6重量%?約2重量%であると計算されるから、本願発明における、「合成ポリカルボキシル化重合体」が「0.1乾燥重量%?40乾燥重量%」に対して、「多糖」が「60乾燥重量%?99.9乾燥重量%」との含有割合と重複・一致している。
引用発明における「有効成分」は、本願発明における「活性物質」に相当する。
引用発明における、フィルムの3?250μmである厚さは、本願発明における「0.25ミル(6.35マイクロメートル)から125ミル(3.175mm)の厚み」と重複・一致している。

そうすると、本願発明と引用発明とは、「0.1乾燥重量%?40乾燥重量%の少なくとも1種の合成ポリカルボキシル化重合体及び60乾燥重量%?99.9乾燥重量%の少なくとも1種の多糖を含み、さらに活性物質を含んでなり、0.25ミル(6.35マイクロメートル)から125ミル(3.175mm)の厚みを有するフィルム」である点で一致し、以下の相違点で一応相違している。

<相違点>
フィルムの適用形態について、本願発明では、「湿った組織表面に適用される、フィルム」と規定されているのに対して、引用発明では、かかる点が特に明記されていない点。

5.相違点に対する判断
上記相違点について検討する。
引用例には、薄膜の使用として、「特に口腔、肛門、膣、眼などの粘膜、創傷表面、皮膚表面、または手術中などの身体内、ならびに同様の表面を含め、数種の身体表面のどれにでもフィルムを活性物の投与に使用することができる。」(摘示キ)と記載されている。
そして、「口腔等の粘膜や創傷表面」が、本願発明における「湿った組織表面」に相当することは明らかである。
そうすると、引用発明におけるフィルムは、その態様として、「口腔等の粘膜、創傷表面等の身体表面に適用される」ものを包含することは明らかであるから、本願発明における「湿った組織表面に適用される、フィルム」は、引用発明の態様に包含されるものであるといえる。
してみると、上記相違点は、実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明は、引用発明と同一である。



第5 むすび

以上のとおり、本願発明、すなわち、平成24年7月12日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとする原査定の理由は妥当なものである。
したがって、他の請求項に係る発明について更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-18 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-07 
出願番号 特願2007-26283(P2007-26283)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米村 耕一  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 蔵野 雅昭
塩見 篤史
発明の名称 フィルム及びフィルム形成性組成物  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 大森 規雄  
代理人 小林 浩  

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