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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C10J
管理番号 1285092
審判番号 不服2013-19966  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-15 
確定日 2014-03-11 
事件の表示 特願2010-227389「バイオマス炭化・ガス化システムおよび炭化・ガス化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月 7日出願公開、特開2011- 68893、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年6月17日に出願した特願2004-180122号の一部を平成22年10月7日に新たな特許出願としたものであって、平成22年11月5日付けおよび平成25年2月12日付けで手続補正がされ、平成25年2月19日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月18日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成25年7月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年10月15日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成25年2月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。)。

「【請求項1】
バイオマス燃料を熱分解して炭化しさらにガス化するバイオマス炭化・ガス化システムにおいて、木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスおよびこれらの混合バイオマス等のバイオマス燃料を間接的に加熱して炭化物を生成する炭化装置と、この炭化物をガス化する高温ガス化部および炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスの改質を行うガス改質部からなる2段式のガス化炉と、前記炭化物を前記ガス化炉の高温ガス化部に供給する炭化物供給手段と、前記炭化装置で生成された前記可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込むための熱分解ガス流路と、通常時は前記高温ガス化部に酸素を含んだガス化剤を供給するとともに前記高温ガス化部から前記ガス改質部へ流れる高温ガスの流量に対して前記ガス改質部に供給される前記可燃性熱分解ガスの流量が増加して前記ガス化炉の出口温度が1100℃未満になる場合またはそのおそれがある場合には前記ガス改質部に酸素を含んだガス化剤を供給するガス化剤供給手段と、前記ガス化炉から供給された生成ガスを利用して発電するとともに作動時に排熱を伴う発電装置とを備え、前記発電装置から排出される前記排熱が前記炭化装置の熱源として供給されるようにして、前記炭化装置において前記バイオマス燃料中の水分を十分に蒸発させ、前記水分が除去された状態の前記炭化物が前記高温ガス化部に供給されるようにしたことを特徴とするバイオマス炭化・ガス化システム。
【請求項2】
前記ガス化剤供給手段は分岐管を備え、前記高温ガス化部と前記ガス改質部の前記ガス化剤を供給可能な装置からなることを特徴とする請求項1記載のバイオマス炭化・ガス化システム。
【請求項3】
バイオマス燃料を熱分解して炭化しさらにガス化するバイオマス炭化・ガス化方法において、木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスおよびこれらの混合バイオマス等のバイオマス燃料を間接的に加熱して炭化物を生成し、該炭化物を2段式のガス化炉の高温ガス化部に供給してガス化する一方、炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込んで改質し、さらに、通常時は前記高温ガス化部に酸素を含んだガス化剤を供給することに加え前記高温ガス化部から前記ガス改質部へ流れる高温ガスの流量に対して前記ガス改質部に供給される前記可燃性熱分解ガスの流量が増加して前記ガス化炉の出口温度が1100℃未満になる場合またはそのおそれがある場合には前記ガス改質部に酸素を含んだガス化剤を供給し、前記ガス化炉から供給された生成ガスを利用して発電するとともに作動時に排熱を伴う発電装置から排出される前記排熱を前記炭化装置の熱源として供給するようにして、前記炭化装置において前記バイオマス燃料中の水分を十分に蒸発させ、前記水分が除去された状態の前記炭化物を前記高温ガス化部に供給するようにしたことを特徴とするバイオマス炭化・ガス化方法。」

第3 原査定の理由の概要
平成25年7月9日付けで拒絶査定は、「この出願については、平成25年2月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、平成25年2月19日付け拒絶理由通知書によると次の理由によるものである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-3
・引用文献等 1-4
・備考

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2001-98282号公報
2.特開2003-65511号公報
3.特開2004-41848号公報
4.特開平11-294726号公報」

なお、平成25年7月9日付け拒絶査定は、周知例として次の引用文献を引用している。

周知例
5.特開2003-243019号公報
6.特開2003-253274号公報

第4 当審の判断
1.引用文献に記載された事項
平成25年7月9日付け拒絶査定において引用された引用文献1?6には次の事項が記載されている。

[引用文献1(特開2001-98282号公報)]
1a「【特許請求の範囲】
【請求項1】廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を粉砕したうえ、前段に溶融ガス化部、後段にガス改質部を備えたガス変換溶融炉の前段に投入して灰分を溶融スラグ化するとともに、可燃ガス化した有機分は後段に導入し、また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスは熱分解オイルと分離することなくガス変換溶融炉の後段に投入して前記可燃ガス化した有機分とともにクラッキングを行い、水素及び一酸化炭素を主成分とする可燃ガスを得ることを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】溶融ガス化部とガス改質部とを備えた一体構造のガス変換溶融炉を用いる請求項1記載の廃棄物処理方法。」

1b「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、都市ごみ等の廃棄物を熱処理して灰分を溶融スラグ化するとともに、有機分を可燃ガスとして回収することができる廃棄物処理方法に関するものである。」

1c「【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好ましい実施形態を示す。図1は本発明のフローを示す図であり、10はガス変換溶融炉である。このガス変換溶融炉10は前段の溶融ガス化部11と、後段のガス改質部12とからなるものであり、必ずしも一体化されている必要はないが、この実施形態では中間の溶融スラグ排出部13を介して接続された一体構造の炉が用いられている。前段の溶融ガス化部11は1200?1600℃、後段のガス改質部12は800?1200℃程度の温度であるが、炉圧は大気圧程度である。溶融ガス化部11とガス改質部12の一方あるいは両方を旋回流式とし、残査の滞留時間を延ばし、ガス混合を促進することが好ましい。
【0012】廃棄物は従来と同様にロータリーキルンのような間接加熱型の熱分解炉14で熱分解される。その炉圧は例えば50mmAq程度である。そして熱分解残査は粉砕器15で粉砕したうえ、ガス変換溶融炉10の前段の溶融ガス化部11に供給される。この部分には酸素が吹き込まれて部分燃焼が行われ、熱分解残査中の灰分は溶融スラグ化される。溶融スラグは中間の溶融スラグ排出部13から炉外に排出される。また熱分解残査中の有機分は部分燃焼により可燃ガス化し、後段のガス改質部12に入る。この可燃ガスは1200?1600℃の顕熱を持つため、800?1200℃である後段のガス改質部12の補助熱として有効利用できる。
【0013】一方、熱分解炉14で発生した熱分解ガスと熱分解オイルとは、相互に入り混じったまま分離されることなくガス変換溶融炉10の後段のガス改質部12に投入される。このように熱分解ガスと熱分解オイルとを分離する必要がないのは、本発明で用いられるガス変換溶融炉10の炉圧が熱分解炉14よりも低く、従来のように熱分解ガスを圧縮して押し込む必要がないためである。ガス改質部12には酸素または空気が吹き込まれ、この熱分解ガスと熱分解オイルとは、前段の溶融ガス化部11から供給された可燃ガスとともにクラッキングされ、水素及び一酸化炭素を主成分とする可燃ガスとなる。」

1d「



[引用文献2(特開2003-65511号公報)]
2a「【特許請求の範囲】
【請求項1】廃棄物の熱分解物のうち、灰分を含む熱分解残査を投入する溶融ガス化部と、灰分を含まない熱分解ガス及び熱分解オイルを投入するガス改質部とを組み合わせた廃棄物のガス化処理装置であって、溶融ガス化部の反応時間を2秒未満とし、ガス改質部の反応時間を2?4秒としたことを特徴とする廃棄物のガス化処理装置。
【請求項2】溶融ガス化部の反応温度を1200?1600℃とし、ガス改質部の反応温度を800?1200℃とした請求項1記載の廃棄物のガス化処理装置。」

2b「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、都市ごみ等の廃棄物を熱処理して灰分を溶融スラグ化するとともに、有機分を可燃ガスとして回収する廃棄物のガス化処理装置に関するものである。」

2c「【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1において10は本発明の実施形態のガス化処理装置であって、溶融ガス化部11とガス改質部12とからなり、それらの下部を連結部13により連結した構造を有するものである。従来と同様に廃棄物は熱分解炉1で灰分を含む熱分解残査と、灰分を含まない熱分解ガス及び熱分解オイルとに熱分解され、熱分解残査は粉砕器2で粉砕されたうえで、溶融ガス化部11に投入される。一方、熱分解ガス及び熱分解オイルはガス改質部12に投入される。
【0012】溶融ガス化部11の反応温度は1200?1600℃とされ、ガス改質部12の反応温度はこれより低温の800?1200℃とされる。溶融ガス化部11の熱源は熱分解残査中の有機分と酸素との燃焼反応…であり、ガス改質部12の熱源は熱分解ガスと酸素との燃焼反応…及び溶融ガス化部11からのガス顕熱である。

【0014】溶融ガス化部11は灰分を溶融スラグ化するために1200?1600℃の高温が必要となる。このためその炉壁は水冷による強制冷却構造とし、耐火物の損傷を防止する。しかし灰分を含まない熱分解ガス及び熱分解オイルのみを処理するガス改質部12は800?1200℃とすればよいため、その炉壁は耐火材と断熱材の2層構造として壁面からの熱損失を防止することができる。このように本発明では小型の溶融ガス化部11のみを強制冷却構造とするだけでよいので、炉全体を強制冷却構造としていた従来の装置に比較して、炉壁からの熱損失を削減することができる。」

2d「



[引用文献3(特開2004-41848号公報)]
3a「【特許請求の範囲】
【請求項1】炭素質資源を熱分解し、熱分解ガス及び熱分解タールを生成させ、炭素質資源を酸素、又は酸素及び水蒸気で部分酸化しガス化ガスを発生させ、該熱分解ガス、該熱分解タール、及び該ガス化ガス中に、酸素、水蒸気のいずれか又は双方を導入して該熱分解ガス及び熱分解タールを改質することを特徴とする炭素質資源のガス化方法。
【請求項2】炭素質資源を熱分解して生成した熱分解残渣から金属を分離した炭素質残渣を、炭素質資源と共に酸素、又は酸素及び水蒸気で部分酸化することを特徴とする請求項1に記載の炭素質資源のガス化方法。

【請求項4】炭素質資源を熱分解して生成した熱分解残渣から金属を分離した炭素質残渣を、炭素質資源と共に部分酸化する際に、反応部温度を1200℃?1600℃とし、さらに熱分解ガス及び熱分解タールを改質する際に、反応部温度を900℃?1200℃とすることを特徴とする請求項2又は3記載の炭素質資源のガス化方法。」

3b「【0016】
改質炉10では、ガス化炉2からのガス化ガス6の温度により改質温度を確保し、ガス化ガス6中の水蒸気と、追加して添加する酸素4、水蒸気5のいずれか一つ以上によって熱分解ガス・熱分解タール8を改質する。改質炉10の温度は900℃?1200℃が適しており、900℃未満では、分解しきれないタールが後段のガス精製設備14で付着トラブルをおこしたり、発生が懸念されるダイオキシンが分解せずに後段工程まで残存する。一方、1200℃を越えると改質炉からの飛灰の後段の精製設備14への融着・付着が顕著になるため好ましくない。改質炉10での温度調整は酸素4の量と水蒸気5の量で調整する。…」

3c「【0019】
本発明の方法及び装置を用いて発生した精製ガス15の主要用途の一つは発電である。…」

3d「【0021】
【実施例】
本発明で示した設備において、ガス化炉に建設廃木材破砕品(平均粒度数mm)及び硬質プラスチック破砕品(硬質PE、硬質PP、ABS樹脂混合;平均粒度数mm)を、熱分解炉に軟質プラスチック及びシュレッダーダスト成型品(PEフィルム・シート、PPシート、カーシュレッダーダスト混合品:粒度100mm以下)品を使用した試験を実施した。各炉温は、熱分解炉下部ゾーン温度600℃、上部ゾーン温度300℃、ガス化炉温度1300℃、改質炉温度1000℃及び1100℃の温度条件、0.8MPaの圧力条件で操業した。」

3e「



[引用文献4(特開平11-294726号公報)]
4a「【特許請求の範囲】
【請求項1】可燃物及び不燃物から成る廃棄物の処理方法において、廃棄物を加熱する熱分解炉にて廃棄物を熱分解チャーと熱分解ガスに熱分解した後、熱分解チャーを溶融炉にて酸素または酸素富化空気でガス化すると共にチャー中灰分を溶融させ、溶融炉でガス化したガスと前記熱分解ガスを溶融炉の上部に設けた溶融炉と一体型の改質炉で混合して熱分解ガス中に含まれるタール分を分解し、可燃性ガスを生成することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】前記改質炉へ酸素または酸素富化空気を吹き込み、前記の混合したガスを部分燃焼して改質炉温度を調整することを特徴とする請求項1記載の廃棄物の処理方法。」

4b「【0016】…溶融炉3の上部にはガス出口スロートがあり、スロートの上部には溶融炉と一体型の改質炉4を設ける。改質炉4は、下部側方に熱分解ガスと酸素を吹き込むノズル24を、上部にはガス出口25を設ける。」

[引用文献5(特開2003-243019号公報)]
5a「【特許請求の範囲】
【請求項1】廃棄物を加熱して熱分解ガスを発生する熱分解炉と、
熱分解ガス中のタールやすす、硫黄分や塩素分等を除去し、水素豊富なガスを精製する改質設備と、
精製ガスを供給して発電する燃料電池とを備え、
更に、前記燃料電池から生じる排熱を前記熱分解炉の熱源に使用するための排熱回収設備を備えることを特徴とする廃棄物発電システム。」

[引用文献6(特開2003-253274号公報)]
6a「【特許請求の範囲】
【請求項1】バイオマスを熱分解して熱分解ガスおよびチャーを生成する炭火ドラムと、該炭火ドラムの後段に配置され、前記熱分解ガスに含まれるタール分に蒸気を賦活して水性ガス化する改質ドラムとからなり、該改質ドラムで生成した改質ガスを燃料としてガスタービンもしくはガスエンジンに供給することを特徴とするバイオマスガス化装置。
【請求項2】前記改質ドラムに供給される蒸気は、前記ガスタービンもしくはガスエンジンの廃熱を利用して生成されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスガス化装置。

【請求項8】バイオマスを予め乾燥する乾燥装置と、該乾燥装置で乾燥させたバイオマスを加熱熱分解して熱分解ガスおよびチャーを生成する炭火ドラムと、該炭化ドラムで生成した熱分解ガスとチャーとを分離する分離装置と、該分離装置で分離した熱分解ガス中のタール分を蒸気によって水性ガス化して改質ガスを生成する改質ドラムと、該改質ドラムおよび前記炭火ドラムを加熱するための熱風炉と、前記改質ドラムで生成した改質ガスを洗浄する洗浄装置と、該洗浄装置で洗浄した改質ガスを燃料とするガスタービンもしくはガスエンジンと、前記ガスタービンもしくはガスエンジンの廃熱によって生成させた蒸気を前記改質ドラムに供給する蒸気配管と、前記ガスタービンもしくはガスエンジンからの排ガスを前記熱風炉ヘ供給する排ガス配管と、前記熱風炉からの排気ガスを前記乾燥装置に供給する排気ガス配管とを備えたことを特徴とするバイオマスガス化発電システム。」

2.引用文献1、2に記載された発明
引用文献1には、廃棄物処理方法の実施のためのシステムである【図1】(摘示1d)が開示され、当該システムによる廃棄物処理方法において、
・廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を粉砕したうえ、前段に溶融ガス化部、後段にガス改質部を備えた一体構造のガス変換溶融炉の前段に投入して灰分を溶融スラグ化するとともに、可燃ガス化した有機分は後段に導入し、また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスは熱分解オイルと分離することなくガス変換溶融炉の後段に投入して前記可燃ガス化した有機分とともにクラッキングを行い、水素及び一酸化炭素を主成分とする可燃ガスを得て廃棄物を処理すること(摘示1a、1d)
・ガス変換溶融炉の溶融ガス化部に酸素、ガス改質部に酸素または空気が吹き込まれること(摘示1c、1d)
が開示されている。
そして、【図1】(摘示1d)および摘示1a?1cの事項からみて、引用文献1には次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明1-1」、「引用発明1-2」という。)。

引用発明1-1:
「廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を、
前段に溶融ガス化部、後段にガス改質部を備えた一体構造のガス変換溶融炉の前段に投入し、前記前段で熱分解残査の有機分を可燃ガス化し、可燃ガス化した有機分を前記後段に導入し、
また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスを熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入し、
前記前段には酸素、前記後段には酸素または空気が吹き込まれ、
前記可燃ガス化した有機分と熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入された熱分解ガスを、ともにクラッキングを行い水素及び一酸化炭素を主成分とする可燃ガスを得て、
廃棄物を処理するシステム。」

引用発明1-2:
「廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を、
前段に溶融ガス化部、後段にガス改質部を備えた一体構造のガス変換溶融炉の前段に投入し、
前記前段で、熱分解残査の有機分を可燃ガス化し、
可燃ガス化した有機分を前記後段に導入し、
また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスを熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入し、
前記前段には酸素、前記後段には酸素または空気が吹き込まれ、
前記可燃ガス化した有機分と熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入された熱分解ガスを、ともにクラッキングを行い水素及び一酸化炭素を主成分とする可燃ガスを得て、
廃棄物を処理する方法。」

また、引用文献2には、廃棄物のガス化処理の実施のためのシステムである【図1】(摘示2d)が開示され、当該システムによる廃棄物のガス化処理において、
・廃棄物の熱分解物のうち、灰分を含む熱分解残査を投入する溶融ガス化部と、灰分を含まない熱分解ガス及び熱分解オイルを投入するガス改質部とを組み合わせた廃棄物のガス化処理装置において、溶融ガス化部の反応時間を2秒未満とし、ガス改質部の反応時間を2?4秒として廃棄物のガス化処理を行うこと(摘示2a、2d)
・溶融ガス化部とガス改質部に酸素が導入されること(摘示2c、2d)
が開示されている。
そして、【図1】(摘示2d)および摘示2a?2cの事項からみて、引用文献2には次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明2-1」、「引用発明2-2」という。)。

引用発明2-1:
「廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を、
溶融ガス化部、ガス改質部を組み合わせたガス変換溶融炉の溶融ガス化部に投入し、
前記溶融ガス化部で処理した後の熱分解残査を、前記ガス改質部に導入し、
また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスを熱分解オイルと分離することなく前記ガス改質部に投入し、
前記溶融ガス化部、ガス改質部には酸素が吹き込まれ、
前記溶融ガス化部で処理した後の熱分解残査と、熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入された熱分解ガスから可燃ガスを得て、
廃棄物を処理するシステム。」

引用発明2-2:
「廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を、
溶融ガス化部、ガス改質部を組み合わせたガス変換溶融炉の溶融ガス化部に投入し、
前記溶融ガス化部で処理した後の熱分解残査を、前記ガス改質部に導入し、
また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスを熱分解オイルと分離することなく前記ガス改質部に投入し、
前記溶融ガス化部、ガス改質部には酸素が吹き込まれ、
前記溶融ガス化部で処理した後の熱分解残査と、熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入された熱分解ガスから可燃ガスを得て、
廃棄物を処理する方法。」

3.本願発明1についての検討
(1)引用発明1-1を主引用発明とした場合について
ア.対比
引用発明の1-1の「廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を」は、本願発明1の「…燃料を…加熱して炭化物を生成する炭化装置と、この炭化物を…」に相当する。

引用発明の1-1の「前段に溶融ガス化部、後段にガス改質部を備えた一体構造のガス変換溶融炉の前段に投入し、前記前段で熱分解残査の有機分を可燃ガス化し、可燃ガス化した有機分を前記後段に導入し…前記可燃ガス化した有機分と熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入された熱分解ガスを、ともにクラッキングを行い水素及び一酸化炭素を主成分とする可燃ガスを得て」は、本願発明1の「ガス化する高温ガス化部および炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスの改質を行うガス改質部からなる2段式のガス化炉と、前記炭化物を前記ガス化炉の高温ガス化部に供給する炭化物供給手段と、…を備え、…前記炭化装置において前記…燃料中の水分を十分に蒸発させ、前記水分が除去された状態の前記炭化物が前記高温ガス化部に供給されるようにした」に実質的に相当する。

引用発明の1-1の「また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスを熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入し」は、本願発明1の「前記炭化装置で生成された前記可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込むための熱分解ガス流路…(を備え)」に相当する。

引用発明の1-1の「前記前段には酸素、前記後段には酸素または空気が吹き込まれ」は、本願発明1の「ガス化剤供給手段…(を備え)」に相当する。

引用発明の1-1の「廃棄物を処理するシステム。」は、本願発明1の「…炭化・ガス化システムにおいて…炭化・ガス化システム。」に相当する。

以上を総合すると、両者は、
「…燃料を熱分解して炭化しさらにガス化する…炭化・ガス化システムにおいて、…燃料を…加熱して炭化物を生成する炭化装置と、この炭化物をガス化する高温ガス化部および炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスの改質を行うガス改質部からなる2段式のガス化炉と、前記炭化物を前記ガス化炉の高温ガス化部に供給する炭化物供給手段と、前記炭化装置で生成された前記可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込むための熱分解ガス流路と、…ガス化剤供給手段と、…を備え、…前記炭化装置において前記…燃料中の水分を十分に蒸発させ、前記水分が除去された状態の前記炭化物が前記高温ガス化部に供給されるようにしたことを特徴とする…炭化・ガス化システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1-1:当該システムにおいて処理する燃料が、本願発明1は「木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスおよびこれらの混合バイオマス等のバイオマス燃料」であるのに対して、引用発明1-1は「廃棄物」である点。

相違点1-2:炭化装置における加熱が、本願発明1は「間接的」であるのに対して、引用発明1-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点1-3:ガス改質部への「ガス化剤供給手段」が、本願発明1は「通常時は前記高温ガス化部に酸素を含んだガス化剤を供給するとともに前記高温ガス化部から前記ガス改質部へ流れる高温ガスの流量に対して前記ガス改質部に供給される前記可燃性熱分解ガスの流量が増加して前記ガス化炉の出口温度が1100℃未満になる場合またはそのおそれがある場合には前記ガス改質部に酸素を含んだガス化剤を供給する」ものであるのに対して、引用発明1-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点1-4:本願発明1は「前記ガス化炉から供給された生成ガスを利用して発電するとともに作動時に排熱を伴う発電装置」を備えるものであるのに対して、引用発明1-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点1-5:本願発明1は「前記発電装置から排出される前記排熱が前記炭化装置の熱源として供給される」ものであるのに対して、引用発明1-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

イ.判断
(ア)相違点1-1
引用文献1には、廃棄物の例示として「都市ごみ等の廃棄物」を使用すること(摘示1b)が記載されており、本願発明1の「木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスおよびこれらの混合バイオマス等のバイオマス燃料」と「都市ゴミ等の廃棄物系バイオマス」の点で重複するから、相違点1-1は、相違点とは認められないものである。

(イ)相違点1-2
加熱手段として「間接的」に加熱を行う手段は周知のものであり、炭化装置の加熱を斯かる周知の加熱手段によって行うことは当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、本願発明1において炭化装置の加熱を間接的に行うことによって当業者が予測し得ない程の顕著な効果が奏されるものとは認められない。
よって、相違点1-2に係る本願発明1の構成の点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(ウ)相違点1-3
本願発明1におけるガス化剤供給手段は、「高温ガス化部からガス改質部へ流れる高温ガスの流量」と「ガス改質部に供給される可燃性熱分解ガスの流量」との関係によってガス化炉の出口温度が所定温度条件(1100℃未満)になる場合等に酸素を含んだガス化剤を供給するものであり、燃料の種類に応じたガス化剤供給を行うものであるところ、引用文献3には、「炭素質資源のガス化方法」において「熱分解ガス及び熱分解タールを改質する際に、反応部温度を900℃?1200℃」とすることおよびその実施例は記載されている(摘示3a?d)ものの、摘示3eの【図1】における「ガス化ガス6」と「熱分解ガス・熱分解タール8」の流量に応じてガス化剤の供給を行うことを開示するものではないから、「高温ガス化部からガス改質部へ流れる高温ガスの流量」と「ガス改質部に供給される可燃性熱分解ガスの流量」との関係によってガス化炉の出口温度が所定温度条件(1100℃未満)になる場合等に酸素を含んだガス化剤を供給する手段を設けることは、引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たこととは認められない。
また、引用文献4?6(摘示4a、b、5a、6a)も、高温ガス化部からガス改質部へ流れる高温ガス流の流量と、ガス改質部に供給される可燃性熱分解ガス流の流量との関係によって、ガス改質部へのガス化剤の供給を調節する供給手段を設けることを開示するものではないから、「高温ガス化部からガス改質部へ流れる高温ガスの流量」と「ガス改質部に供給される可燃性熱分解ガスの流量」との関係によってガス化炉の出口温度が所定温度条件(1100℃未満)になる場合等に酸素を含んだガス化剤を供給する手段を設けることは、引用文献4?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たこととも認められない。
そうすると、相違点1-3に係る本願発明1の構成の点は、引用文献3?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

(エ)相違点1-4、1-5
ガス生成装置によって生成したガスを発電装置に供して利用することは周知の技術であり(例えば、摘示3c、5a、6a参照。)、発電装置の作動時に排熱を伴うことは周知の技術的事項と認められるから、相違点1-4に係る本願発明1の構成の点は、引用文献3、5、6に例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

また、発電装置の作動時に生じた廃熱を種々の加熱を要する装置の熱源として用いることは周知の技術であり、炭化装置の熱源として斯かる周知技術を適用することは当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、本願発明1において発電装置の作動時の排熱を炭化装置の熱源として用いることによって当業者が予測し得ない程の顕著な効果が奏されるものとは認められない。
よって、相違点1-5に係る本願発明1の構成の点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(オ)まとめ
よって、上記相違点1-1?1-5のうち、相違点1-3に係る本願発明1の構成の点は、引用文献3?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
そして、本願発明1は、斯かる構成を備えることによって、2段式投入方式の特長を損なうことなくガス化炉出口でタールが発生するのを効果的に抑制することができ、高いガス化効率を達成することができる(本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】等参照。)という顕著な効果を奏するものと認められる。
そうすると、本願発明1は、引用文献1、3?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとは認められない。

(2)引用発明2-1を主引用発明とした場合について
ア.対比
引用発明の2-1の「廃棄物を熱分解炉で処理した際に発生する熱分解残査を」は、本願発明1の「…燃料を…加熱して炭化物を生成する炭化装置と、この炭化物を…」に相当する。

引用発明の2-1の「溶融ガス化部、ガス改質部を組み合わせたガス変換溶融炉の溶融ガス化部に投入し…前記溶融ガス化部で処理した後の熱分解残査と、熱分解オイルと分離することなく前記後段に投入された熱分解ガスから可燃ガスを得て」は、本願発明1の「ガス化する高温ガス化部および炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスの改質を行うガス改質部からなる2段式のガス化炉と、前記炭化物を前記ガス化炉の高温ガス化部に供給する炭化物供給手段と、…を備え、…前記炭化装置において前記…燃料中の水分を十分に蒸発させ、前記水分が除去された状態の前記炭化物が前記高温ガス化部に供給されるようにした」に実質的に相当する。

引用発明の2-1の「また前記熱分解炉で発生した熱分解ガスを熱分解オイルと分離することなく前記ガス改質部に投入し」は、本願発明1の「前記炭化装置で生成された前記可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込むための熱分解ガス流路…(を備え)」に相当する。

引用発明の2-1の「前記溶融ガス化部、ガス改質部には酸素が吹き込まれ」は、本願発明1の「ガス化剤供給手段…(を備え)」に相当する。

引用発明の2-1の「廃棄物を処理するシステム。」は、本願発明1の「…炭化・ガス化システムにおいて…炭化・ガス化システム。」に相当する。

以上を総合すると、両者は、
「…燃料を熱分解して炭化しさらにガス化する…炭化・ガス化システムにおいて、…燃料を…加熱して炭化物を生成する炭化装置と、この炭化物をガス化する高温ガス化部および炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスの改質を行うガス改質部からなる2段式のガス化炉と、前記炭化物を前記ガス化炉の高温ガス化部に供給する炭化物供給手段と、前記炭化装置で生成された前記可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込むための熱分解ガス流路と、…ガス化剤供給手段と、…を備え、…前記炭化装置において前記…燃料中の水分を十分に蒸発させ、前記水分が除去された状態の前記炭化物が前記高温ガス化部に供給されるようにしたことを特徴とする…炭化・ガス化システム。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点2-1:当該システムにおいて処理する燃料が、本願発明1は「木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスおよびこれらの混合バイオマス等のバイオマス燃料」であるのに対して、引用発明2-1は「廃棄物」である点。

相違点2-2:炭化装置における加熱が、本願発明1は「間接的」であるのに対して、引用発明2-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点2-3:ガス改質部への「ガス化剤供給手段」が、本願発明1は「通常時は前記高温ガス化部に酸素を含んだガス化剤を供給するとともに前記高温ガス化部から前記ガス改質部へ流れる高温ガスの流量に対して前記ガス改質部に供給される前記可燃性熱分解ガスの流量が増加して前記ガス化炉の出口温度が1100℃未満になる場合またはそのおそれがある場合には前記ガス改質部に酸素を含んだガス化剤を供給する」ものであるのに対して、引用発明2-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点2-4:本願発明1は「前記ガス化炉から供給された生成ガスを利用して発電するとともに作動時に排熱を伴う発電装置」を備えるものであるのに対して、引用発明2-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点2-5:本願発明1は「前記発電装置から排出される前記排熱が前記炭化装置の熱源として供給される」ものであるのに対して、引用発明2-1は斯かる事項を発明特定事項としない点。

イ.判断
相違点2-1?2-5は、前記「(1)ア.」に、本願発明1と引用発明1-1との相違点として記載した相違点1-1?1-5と同様の相違点であり、相違点2-1?2-5のうち、相違点2-3に係る本願発明1の構成の点は、前記「(1)イ.」に相違点1-3について記載した理由と同様の理由によって、引用文献3?6に記載された発明、周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものといえない。
よって、本願発明1は、引用文献2?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものと認められない。

(3)まとめ
以上のとおりであって、本願発明1は、引用文献1、3?6に記載された発明および引用文献2?6に記載された発明のいずれに基づいても、当業者が容易になし得たものではなく、本願発明1は、引用文献1?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとは認められない。

4.本願発明2についての検討
本願特許請求の範囲の請求項2は、請求項1を引用して記載されたものであって、本願発明1に係る構成をすべて有するものである。
そうすると、本願発明と引用発明1-1ないし引用発明2-1とを対比すると、前記「3.(1)ア.」に記載した相違点1-1?1-5ないし前記「3.(2)ア.」に記載した相違点2-1?2-5と同様の相違点が存在するといえる。
そして、これらの相違点のうち、相違点1-3、相違点2-3に係る本願発明2の構成の点については、前記「3.(1)イ.」、「3.(2)イ.」に相違点1-3、相違点2-3について記載した理由と同様の理由によって、引用文献3?6に記載された発明、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、その余の点について検討するまでもなく、本願発明2は、引用文献1?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとは認められない。

5.本願発明3についての検討
前記「3.(1)ア.」において、本願発明1と引用発明1-1とを対比したのと同様に、本願発明3と引用発明1-2とを対比すると、両者は、
「…燃料を熱分解して炭化しさらにガス化する…炭化・ガス化システムにおいて、…燃料を…加熱して炭化物を生成する炭化装置と、この炭化物をガス化する高温ガス化部および炭化物生成時に揮発したタールを含む可燃性熱分解ガスの改質を行うガス改質部からなる2段式のガス化炉と、前記炭化物を前記ガス化炉の高温ガス化部に供給する炭化物供給手段と、前記炭化装置で生成された前記可燃性熱分解ガスを前記ガス化炉のガス改質部に送り込むための熱分解ガス流路と、…ガス化剤供給手段と、…を備え、…前記炭化装置において前記…燃料中の水分を十分に蒸発させ、前記水分が除去された状態の前記炭化物が前記高温ガス化部に供給されるようにしたことを特徴とする…炭化・ガス化方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点3-1:当該方法において処理する燃料が、本願発明3は「木質系バイオマス、都市ゴミ等の廃棄物系バイオマスおよびこれらの混合バイオマス等のバイオマス燃料」であるのに対して、引用発明1-2は「廃棄物」である点。

相違点3-2:炭化装置における加熱が、本願発明3は「間接的」であるのに対して、引用発明1-2は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点3-3:ガス改質部への「ガス化剤供給手段」が、本願発明3は「通常時は前記高温ガス化部に酸素を含んだガス化剤を供給するとともに前記高温ガス化部から前記ガス改質部へ流れる高温ガスの流量に対して前記ガス改質部に供給される前記可燃性熱分解ガスの流量が増加して前記ガス化炉の出口温度が1100℃未満になる場合またはそのおそれがある場合には前記ガス改質部に酸素を含んだガス化剤を供給」するものであるのに対して、引用発明1-2は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点3-4:本願発明3は「前記ガス化炉から供給された生成ガスを利用して発電するとともに作動時に排熱を伴う発電装置」を備えるものであるのに対して、引用発明1-2は斯かる事項を発明特定事項としない点。

相違点3-5:本願発明3は「前記発電装置から排出される前記排熱が前記炭化装置の熱源として供給」されるものであるのに対して、引用発明1-2は斯かる事項を発明特定事項としない点。

また、前記「3.(1)イ.」において、本願発明1と引用発明2-1とを対比したのと同様に、本願発明3と引用発明2-2とを対比すると、両者は、本願発明3と引用発明1-2とを対比した場合の一致点および相違点と同様の点で一致し、相違する。

そして、相違点3-1?3-5は、前記「3.(1)ア.」に、本願発明1と引用発明1-1との相違点として記載した相違点1-1?1-5、前記「3.(2)ア.」に、本願発明1と引用発明2-1との相違点として記載した相違点2-1?2-5と同様の相違点であり、相違点3-1?3-5のうち、相違点3-3に係る本願発明3の構成の点は、前記「3.(1)イ.」、「3.(2)イ.」に相違点1-3、相違点2-3について記載した理由と同様の理由によって、引用文献3?6に記載された発明、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものといえない。
よって、その余の点について検討するまでもなく、本願発明3は、引用文献1?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものと認められない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願は、原査定の理由によって、拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-02-26 
出願番号 特願2010-227389(P2010-227389)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C10J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大熊 幸治  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 小石 真弓
星野 紹英
発明の名称 バイオマス炭化・ガス化システムおよび炭化・ガス化方法  
代理人 村瀬 一美  

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