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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 B23K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23K
管理番号 1285275
審判番号 不服2013-25740  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-27 
確定日 2014-03-25 
事件の表示 特願2008-152174「レーザ加工機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月24日出願公開、特開2009-297726、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成20年6月10日の特許出願であって、平成24年9月11日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年11月19日付けで意見書及び手続補正書が提出された。さらに、平成25年4月12日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年5月10日付けで意見書が提出されたが、平成25年9月20日付けで拒絶の査定がされた。これに対し、平成25年12月27日付けで上記査定を不服とする本件審判が請求された。

第2 平成24年11月19日付け手続補正書による補正の適否
上記拒絶の査定の理由は、上記平成25年4月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由によるものであって、上記平成24年11月19日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、それぞれ「当初明細書」、「当初特許請求の範囲」、「当初図面」という。また、これらを総称して、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定された要件を満たしていない、というものである。
そこで、この点について以下に検討する。

1. 本件補正
本件補正は、当初明細書及び当初特許請求の範囲についてするものであって、その内容は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1) 補正事項1
当初特許請求の範囲を以下のとおり補正する。

ア. 補正前
「【請求項1】
レーザビームを被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機であって、
レーザビームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射するレーザ照射装置と、
レーザビームの照射を受けてその照射位置を検出するビーム検出センサと、
前記ビーム検出センサを前記設置面に沿って移動させビームの目標照射位置近傍に位置づけるセンサ駆動装置とを具備し、
レーザ照射装置に指令したレーザビームの目標照射位置とビーム検出センサで検出した実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機。
【請求項2】
前記ビーム検出センサは、被加工物を設置する設置台に埋設されており、
前記センサ駆動装置は、前記設置台を移動させるものである請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記レーザ照射装置に対しレーザビームを目標照射位置に照射させるための指令を行う照射位置指令部と、
前記センサ駆動装置に対し前記ビーム検出センサを目標照射位置近傍に移動させるための指令を行うセンサ位置指令部と、
前記ビーム検出センサを介して目標照射位置と実際の照射位置との誤差を取得する誤差取得部と、
前記誤差取得部で取得した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部とを有する制御装置をさらに具備する請求項1または2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
レーザビームを被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機であって、
レーザビームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射するレーザ照射装置と、
レーザビームの照射を受けてその照射位置を検出するビーム検出センサとを具備し、
レーザ照射装置に指令したレーザビームの目標照射位置とビーム検出センサで検出した実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機。
【請求項5】
前記レーザ照射装置はレーザ発振器から発振されるレーザビームを走査するガルバノスキャナとそのレーザビームを集光する集光レンズとを有する請求項1、2、3または4記載のレーザ加工機。」

イ. 補正後
「【請求項1】
レーザビームを被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機であって、
レーザビームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射するレーザ照射装置と、
レーザビームの照射を受けてその照射位置を検出するビーム検出センサと、
前記ビーム検出センサを前記設置面に沿って移動させビームの目標照射位置近傍に位置づけるセンサ駆動装置とを具備し、
前記ビーム検出センサは、被加工物を設置する設置台に埋設されており、
前記センサ駆動装置は、前記設置台を移動させるものであり、
前記レーザ照射装置から出射するレーザビームの照射位置の較正を実施する際、レーザ照射装置から複数の照射位置を順次目標としてレーザビームを照射するとともに、各目標照射位置に向けてレーザビームを照射する都度、前記センサ駆動装置により前記ビーム検出センサを移動させて当該ビーム検出センサの所定の基準点を当該目標照射位置に位置づけることとし、
レーザ照射装置に指令したレーザビームの目標照射位置とビーム検出センサで検出した実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機。
【請求項2】
前記レーザ照射装置に対しレーザビームを各目標照射位置に照射させるための指令を行う照射位置指令部と、
前記センサ駆動装置に対し前記ビーム検出センサの所定の基準点を目標照射位置に移動させるための指令を行うセンサ位置指令部と、
前記ビーム検出センサを介して目標照射位置と実際の照射位置との誤差を取得する誤差取得部と、
前記誤差取得部で取得した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部とを有する制御装置を具備する請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記レーザ照射装置はレーザ発振器から発振されるレーザビームを走査するガルバノスキャナとそのレーザビームを集光する集光レンズとを有する請求項1または2記載のレーザ加工機。」

(2) 補正事項2
当初明細書段落【0007】を以下のとおり補正する。

ア. 補正前
「【0007】
本発明では、レーザビームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射するレーザ照射装置と、レーザビームの照射を受けてその照射位置を検出するビーム検出センサと、前記ビーム検出センサを前記設置面に沿って移動させビームの目標照射位置近傍に位置づけるセンサ駆動装置とを具備し、レーザ照射装置に指令したレーザビームの目標照射位置とビーム検出センサで検出した実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機を構成した。」

イ. 補正後
「【0007】
本発明では、レーザビームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射するレーザ照射装置と、レーザビームの照射を受けてその照射位置を検出するビーム検出センサと、前記ビーム検出センサを前記設置面に沿って移動させビームの目標照射位置近傍に位置づけるセンサ駆動装置とを具備し、前記ビーム検出センサは、被加工物を設置する設置台に埋設されており、前記センサ駆動装置は、前記設置台を移動させるものであり、前記レーザ照射装置から出射するレーザビームの照射位置の較正を実施する際、レーザ照射装置から複数の照射位置を順次目標としてレーザビームを照射するとともに、各目標照射位置に向けてレーザビームを照射する都度、前記センサ駆動装置により前記ビーム検出センサを移動させて当該ビーム検出センサの所定の基準点を当該目標照射位置に位置づけることとし、レーザ照射装置に指令したレーザビームの目標照射位置とビーム検出センサで検出した実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機を構成した。」

(3) 補正事項3
当初明細書段落【0010】を以下のとおり補正する。

ア. 補正前
「【0010】
前記レーザ照射装置に対しレーザビームを目標照射位置に照射させるための指令を行う照射位置指令部と、前記センサ駆動装置に対し前記ビーム検出センサを目標照射位置近傍に移動させるための指令を行うセンサ位置指令部と、前記ビーム検出センサを介して目標照射位置と実際の照射位置との誤差を取得する誤差取得部と、前記誤差取得部で取得した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部とを有する制御装置をさらに具備するものとすれば、較正を人力を介さず自動で行うことができる。」

イ. 補正後
「【0010】
前記レーザ照射装置に対しレーザビームを各目標照射位置に照射させるための指令を行う照射位置指令部と、前記センサ駆動装置に対し前記ビーム検出センサの所定の基準点を目標照射位置に移動させるための指令を行うセンサ位置指令部と、前記ビーム検出センサを介して目標照射位置と実際の照射位置との誤差を取得する誤差取得部と、前記誤差取得部で取得した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部とを有する制御装置をさらに具備するものとすれば、較正を人力を介さず自動で行うことができる。」

(4) 補正事項4
以下の当初明細書段落【0011】を削除する。
「【0011】
なお、前記ビーム検出センサが広範囲に亘ってレーザビームを検出できるものである場合、またはビーム検出センサが広範囲に亘って点在している場合には、これを移動させる必要がない。よって、センサ駆動装置は必須でない。」

(5) 補正事項5
当初明細書段落【0036】を以下のとおり補正する。

ア. 補正前
「【0036】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。ビーム検出センサ2が広範囲に亘ってレーザビームLを検出できるものである場合、またはビーム検出センサ2が広範囲に亘って点在している場合には、これを移動させずとも目標照射位置周辺に照射されたレーザビームLを検出することができる。であるから、センサ駆動装置3たるXYステージ3は不要となる。」

イ. 補正後
「【0036】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。」

(6) 補正事項6
以下の当初明細書段落【0037】を削除する。
「【0037】
XYステージ3が存在しなければ、制御装置5においてビーム検出センサ2及び設置台4を移動させるための指令を行うセンサ位置指令部52の機能も不要である。」

2. 当初明細書及び図面の記載
当初明細書及び図面には以下の点、記載されている。

(ア) 段落【0001】
「【0001】
本発明は、レーザビームを被加工物の任意の箇所に照射して加工を行うレーザ加工機に関する。」

(イ) 段落【0003】
「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザビームの光軸を変化させる走査は、ガルバノスキャナ等の回転位置決め誤差及び集光レンズによる光学的な歪みによって平面座標系に対する誤差が発生する。レーザ加工に際しては、その誤差を予め取り除いておく必要がある。」

(ウ) 段落【0006】
「【0006】
上記の問題に鑑みてなされた本発明は、レーザビームの照射位置の誤差を簡便に較正できるレーザ加工機を提供することを所期の目的とする。」

(エ) 段落【0007】
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、レーザビームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射するレーザ照射装置と、レーザビームの照射を受けてその照射位置を検出するビーム検出センサと、前記ビーム検出センサを前記設置面に沿って移動させビームの目標照射位置近傍に位置づけるセンサ駆動装置とを具備し、レーザ照射装置に指令したレーザビームの目標照射位置とビーム検出センサで検出した実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定することができるレーザ加工機を構成した。」

(オ) 段落【0010】及び【0011】
「【0010】
前記レーザ照射装置に対しレーザビームを目標照射位置に照射させるための指令を行う照射位置指令部と、前記センサ駆動装置に対し前記ビーム検出センサを目標照射位置近傍に移動させるための指令を行うセンサ位置指令部と、前記ビーム検出センサを介して目標照射位置と実際の照射位置との誤差を取得する誤差取得部と、前記誤差取得部で取得した誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する補正量記憶部とを有する制御装置をさらに具備するものとすれば、較正を人力を介さず自動で行うことができる。
【0011】
なお、前記ビーム検出センサが広範囲に亘ってレーザビームを検出できるものである場合、またはビーム検出センサが広範囲に亘って点在している場合には、これを移動させる必要がない。よって、センサ駆動装置は必須でない。」

(カ) 段落【0014】ないし【0030】
「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本実施形態のレーザ加工機0は、図1に示すように、被加工物を設置する設置台4と、被加工物に向けてレーザビームLを照射するレーザ照射装置1とを備え、被加工物の任意の箇所にレーザ加工を施すことのできるものである。
【0015】
設置台4には、ビーム検出センサ2を設けている。このビーム検出センサ2は、被加工物を載置する設置面近傍におけるレーザビームLの照射位置を検出するために存在し、レーザ照射装置1から出射したレーザビームLを直接受ける。ビーム検出センサ2は、設置台4に埋設されていて、設置面よりも上方には突き出さない。被加工物を載置する際に、このビーム検出センサ2を取り除く必要はない。ビーム検出センサ2は、例えばCCDセンサ2またはCMOSセンサである。
・・・
【0017】
レーザ照射装置1は、レーザ発振器(図示しない)と、レーザ発振器から発振されるレーザビームLを走査するガルバノスキャナ11、12、12と、そのレーザビームLを集光する集光レンズ13とを有する。
【0018】
ガルバノスキャナ11、12は、レーザビームLを反射するミラー112、122をサーボモータ、ステッピングモータ等111、121で回動させるものであり、ビームLの光軸を変化させることができる。本実施形態では、ビームLの光軸をX軸方向に変化させるX軸ガルバノスキャナ11と、ビームLの光軸をY軸方向に変化させるY軸ガルバノスキャナ12とを両備し、設置面上におけるビームLの照射位置をXY二次元方向に制御できる。
・・・
【0020】
設置面に照射されるレーザビームLの照射位置は、ガルバノスキャナ11、12の回転位置決め誤差の影響を受ける。また、集光レンズ13による光学的な歪みも発生する。レーザビームLの照射位置の誤差は、ガルバノスキャナ11、12の走査範囲の中央から距離が離れるに従って大きくなる傾向にある。図4中符号Aに、その様子を模式的に示している。
【0021】
XYステージ3及びガルバノスキャナ11、12を制御する制御装置5は、図3に示すように、プロセッサ5a、メインメモリ5b、補助記憶デバイス5c、I/Oインタフェース5d等を有し、これらがコントローラ5e(システムコントローラやI/Oコントローラ等)によって制御されて連携動作するものである。補助記憶デバイス5cは、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、その他である。I/Oインタフェース5dは、サーボドライバ(サーボコントローラ)を含むことがある。
【0022】
制御装置5が実行するべきプログラムは、補助記憶デバイス5cに記憶されており、プログラム実行の際に、メインメモリ5bに読み込まれ、プロセッサ5aによって解読される。そして、制御装置5はプログラムに従い、図2に示す、照射位置指令部51、センサ位置指令部52、較正用位置データ記憶部53、誤差取得部54、補正量記憶部55、加工用位置データ記憶部56、及び加工時制御部57としての機能を発揮する。
【0023】
照射位置指令部51は、レーザ照射装置1に対し、レーザビームLを目標照射位置に照射させるための指令を行う。具体的には、設置面上における目標XY座標にレーザビームLを照射するべく、ガルバノスキャナ11、12に目標XY座標に対応した制御信号を入力してミラー112、122の角度を操作する。
【0024】
センサ位置指令部52は、センサ駆動装置3に対し、ビーム検出センサ2を目標照射位置近傍に移動させるための指令を行う。具体的には、設置面上における目標XY座標にビーム検出センサ2の所定の基準点を位置づけるべく、XYステージ3に目標XY座標に対応した制御信号を入力して設置台4の位置を操作する。
【0025】
較正用位置データ記憶部53は、較正用の位置データを記憶する。本実施形態では、設置面上におけるXY平面座標系の複数点にレーザビームLを照射して、各点での照射位置の誤差を検出、各点毎の補正量を決定する。通常、100点ないし200点の誤差の検出及び補正量の決定を行うので、その100点ないし200点のXY座標を較正用位置データとして記憶する。
【0026】
誤差取得部54は、レーザビームLの目標照射位置と実際の照射位置との誤差を取得する。即ち、上記の較正用位置データのXY座標と、そのXY座標を目標にレーザビームLを照射したときの実際の照射位置のXY座標との誤差を取得する。具体的には、ビーム検出センサ2がレーザビームLを感知した位置座標と、ビーム検出センサ2の基準点の位置座標とのX軸、Y軸方向それぞれの差を計測する。
【0027】
補正量記憶部55は、レーザビームLの目標照射位置と実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置1に与えるべき指令の補正量を決定して記憶する。具体的には、目標XY座標及びX軸方向誤差、Y軸方向誤差を所定の関数式に代入してガルバノスキャナ11、12に与える制御信号のX軸方向補正量、Y軸方向補正量を演算し、その補正量を先の目標XY座標に関連づけてメインメモリ5bまたは補助記憶デバイス5cに記憶させる。
【0028】
加工用位置データ記憶部56は、加工用の位置データを記憶する。加工用位置データ記憶部56は、被加工物のどの箇所にレーザビームLを照射するかを規定するCADデータ等、または加工時にレーザビームLを照射する複数点のXY座標を、加工用位置データとして記憶する。
【0029】
加工時制御部57は、上記の加工用位置データで規定される照射位置にレーザビームLを照射するべく、レーザ照射装置1を制御する。具体的には、加工用位置データを読み出してレーザビームLの目標照射位置のXY座標を知得し、かつその目標XY座標に関連づけられた補正量を読み出す。目標XY座標に直結した補正量が補正量記憶部55に記憶されていない場合には、目標XY座標に近い複数の座標に関連づけられた複数の補正量を読み出して、それらの補間により適当な補正量を算定する。そして、照射位置指令部51を介して、目標XY座標に補正量を加味した座標に対応する制御信号を、ガルバノスキャナ11、12に入力する。結果、本来の目標XY座標に正しくレーザビームLが照射される。
【0030】
本実施形態のレーザ加工機0を使用するにあたっては、レーザ加工作業前にレーザビームLの照射位置の較正を実施する。較正時に制御装置5が実行する処理の手順を、図5のフローチャートに示す。制御装置5は、記憶している較正用位置データに含まれるXY座標を読み出し(ステップS1)、読み出した目標XY座標にビーム検出センサ2の基準点を置づけるべく、XYステージ3を操作する(ステップS2)。並びに、ステップS2と相前後して、読み出した目標XY座標にレーザビームLを照射するべく、ガルバノスキャナ11、12を操作する(ステップS3)。続いて、レーザビームLを照射し(ステップS4)、ビーム検出センサ2を介して実際にレーザビームLを感知したXY座標と目標XY座標との誤差を取得する(ステップS5)。そして、取得した誤差に基づいて補正量の決定を行い(ステップS6)、決定した補正量と目標XY座標との組を記憶する(ステップS7)。制御装置5は、上述のステップS1ないしS7を、較正用位置データに含まれる全てのXY座標について補正量を決定するまで反復する(ステップS8)。」

(キ) 段落【0036】及び【0037】
「【0036】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。ビーム検出センサ2が広範囲に亘ってレーザビームLを検出できるものである場合、またはビーム検出センサ2が広範囲に亘って点在している場合には、これを移動させずとも目標照射位置周辺に照射されたレーザビームLを検出することができる。であるから、センサ駆動装置3たるXYステージ3は不要となる。
【0037】
XYステージ3が存在しなければ、制御装置5においてビーム検出センサ2及び設置台4を移動させるための指令を行うセンサ位置指令部52の機能も不要である。」

(ク) 【図1】


(ケ) 【図4】



(コ) 【図5】



上記摘記事項(ア)ないし(コ)より、当初明細書及び図面には次の技術的事項(以下、「技術的事項ア」という。)が記載されていると認める。
「レーザービームLを被加工物の任意の箇所に照射して加工を行うレーザ加工機0において、ガルバノスキャナ11、12の走査範囲の中央から距離が離れるに従って大きくなる傾向にあるレーザービームLの照射位置の誤差を較正するために、設置面上における目標XY座標にビーム検出センサ2の所定の基準点を位置付けるべく、XYステージ3に目標XY座標に対応した制御信号を入力して設置台4の位置を操作し、設置面上におけるXY平面座標系の通常100点ないし200点の複数点にレーザビームLを照射して、各点毎の補正量を決定するために、各点毎に、目標XY座標を読み出しXYステージを操作して、目標XY座標にビーム検出センサ2の所定の基準点を位置付け、レーザビームLを照射して、誤差を取得し、各点毎の補正量を決定する。」
また、特に上記摘記事項(キ)から、次の技術的事項(以下、「技術的事項イ」という。)が、記載されていると認められる。
「設置面上における座標系の通常100点ないし200点の複数点における各点毎の補正量を決定するために、ビーム検出センサ2をXYステージ3により移動させるものに代えて、ビーム検出センサ2が広範囲に亘ってレーザビームLを検出できるもの、またはビーム検出センサ2が広範囲に亘って点在したものを採用し、ビーム検出センサ2を移動させずに目標照射位置に周辺に照射されたレーザービームLを検出することを可能とした。」

3. 判断

(1) 補正事項1について

ア. 請求項1について
補正事項1のうち、請求項1についてするものは、補正前の請求項1の特定事項に対して、以下の二つの事項を付加するものである。
「前記ビーム検出センサは、被加工物を設置する設置台に埋設されており、
前記センサ駆動装置は、前記設置台を移動させるものであり、」
及び、「前記レーザ照射装置から出射するレーザビームの照射位置の較正を実施する際、レーザ照射装置から複数の照射位置を順次目標としてレーザビームを照射するとともに、各目標照射位置に向けてレーザビームを照射する都度、前記センサ駆動装置により前記ビーム検出センサを移動させて当該ビーム検出センサの所定の基準点を当該目標照射位置に位置づけることとし」
このうち、前者は、本件補正前の請求項2の特定事項である。
次に後者について検討する。上記技術的事項アにおいては、「較正」する際に、「各点毎に、目標XY座標を読み出しXYステージ3を操作して、目標XY座標にビーム検出センサ2の所定の基準点を位置付け、レーザビームLを照射して、誤差を取得し、補正量を決定する」から、当初明細書等に記載された「レーザ加工機」は、補正量を決定するための「レーザービームL」を照射する都度(下線は、当審にて付した。)、センサ駆動装置たる「XYステージ3」により「ビーム検出センサ2」を移動させるものであるといえる。
したがって、補正事項1のうち請求項1についてする上記二つの事項は、いずれも新たな技術的事項を導入するものではないから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

イ. 請求項2について
上記摘記事項(オ)の段落【0010】には、補正後の請求項2で特定されている事項が記載されているから、補正事項1の請求項2に係る事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

ウ. 請求項3について
補正後の請求項3に係る特定事項は、補正前の請求項5に係る特定事項であるから、補正事項1の請求項3に係る事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

以上のア.ないしウ.から、補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

(2) 補正事項2について
補正事項2は、上記補正事項1のうち、請求項1に係る事項に整合するように、当初明細書の記載を補正するものであるから、上記(1)ア.に記載したとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

(3) 補正事項3ないし6について
当初明細書等には、上記技術的事項ア及びイより、「較正」時に「設置面上における座標系の通常100点ないし200点の複数点における各点毎の補正量を決定するために」、「ビーム検出センサ2をXYステージ3により移動させるもの」のほかに、「ビーム検出センサ2が広範囲に亘ってレーザビームLを検出できるもの、またはビーム検出センサ2が広範囲に亘って点在したものを採用し、ビーム検出センサ2を移動させずに目標照射位置に周辺に照射されたレーザービームLを検出することを可能とした」ものが記載されている。補正事項3ないし6は、いずれも、後者を削除するために、段落の全部あるいは一部を削除等するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

4. 小結
上記3.から本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるといえるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、ということはできない。

第3 本願発明
本願特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)を、平成24年11月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3にそれぞれ記載したとおりのものであると認めるところ、本願発明1は、上記第2、1.(1)イの【請求項1】に記載されたとおりのものであると認める。

第4 引用文献
本願発明1は、上記第2、3.(1)ア.から、当初特許請求の範囲の請求項2に係る発明をさらに技術的に限定したものである。当初特許請求の範囲の請求項2に係る発明に対する、上記平成24年9月11日付け拒絶の理由は、当該当初特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、以下の引用文献1及び2から当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項により特許を受けることができない、というものである。
そこで、以下に検討する。

1. 引用文献1
上記平成24年9月11日付け拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-23577号公報(以下、「引用文献1」という。)には、【図1】とともに以下の事項が記載されている。

a. 段落【0001】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、X-Yテーブル上に被加工物を載置して加工するレーザ加工機における集光光学系の集光位置検出装置に関するものである。」

b. 段落【0008】ないし【0011】
「【0008】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図1ないし図3に基づいて説明する。同図において、1はレーザ加工装置のベース。2はXテーブルで、ベース1にX方向に移動可能に支持されている。3はモータで、ベース1に支持され、ねじ送り機構4を介してXテーブル2を移動させる。5はYテーブルで、Xテーブル2にY方向に移動可能に支持されている。6はモータで、Xテーブル2に支持され、ねじ送り機構7を介してYテーブル5を移動させる。8はレンガなどで形成された収光プレートで、ブラケット9を介してベース1に取付けられている。
【0009】10はレーザ発振機で、レーザ加工装置のコラム(図示せず)に支持されている。11はレーザ光で、レーザ発振機11から発振される。12は光導管で、一端がレーザ発振機10に接続され、他端はレーザ加工装置の構造部材13に支持されている。14は反射鏡で、光導管12内に配置されている。15は集光光学系で、前記コラムにZ方向に移動可能に支持されている。16は対物レンズで、集光光学系15内に配置されている。17はモータで、前記コラムに支持され、ねじ送り機構18を介して集光光学系15を移動させる。
【0010】20はビームスプリッタで、集光光学系15に着脱可能に配置される。21は複数の受光素子をマトリックス状に配置した位置センサ。この位置センサ21は、その中央にある受光素子が前記Xテーブル2とYテーブル5の原点位置と一致し、かつ位置センサの座標軸がXテーブル2とYテーブル5の座標軸と一致するようにYテーブル5に着脱可能に配置される。22は焦点位置判別装置で、位置センサ21に接続されている。23は制御装置で、焦点位置判別装置22から印加される判別結果に基づいて、焦点位置のずれ量を求める演算部と、この演算結果に基づいて、Xテーブル2とYテーブル5の移動量を補正する制御部を備えている。上記の構成で、集光光学系15にビームスプリッタ20を取り付け、位置センサ21をYテーブル5に取り付けた後、制御装置23の指令に基づいて、Xテーブル2とYテーブル5を移動させ、その原点位置を、レーザ加工装置の設計上の集光光学系15の集光位置へ移動させる。この状態で、レーザ発振機10を作動させ、レーザ光11を発振させる。すると、レーザ光11は、光導管12内を通り、反射鏡13で反射されて集光光学系15に入射され、対物レンズ16により絞られて、位置センサ21上に照射される。このとき、レーザ光11の一部は、ビームスプリッタ20によって反射され、収光プレート8に照射吸収される。
【0011】焦点位置判別装置22は、位置センサ21を構成する受光素子の出力を、受光素子の配列順にしたがって走査確認し、レーザ光11を受光している受光素子の位置を判別する。そして、この位置を制御装置23の演算部に印加する。制御装置23の演算部は、印加された受光素子の位置から、位置センサ21の原点位置との差を求め、その差を補正量として、制御部に登録する。」

上記摘記事項aないしbから、引用文献1記載の事項を技術常識を考慮しつつ本願発明1に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献1記載発明」という。)が記載されているものと認める。

「レーザ光11を被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機であって、
被加工物被加工物が載置されるX-Yテーブル上の所望の位置に光を照射する反射鏡14が内部に配置された光導管12と対物レンズ16が内部に配置されたモータ17とねじ送り機構18により移動される集光光学系15と、
レーザ光11の照射を受けてその照射位置を検出する位置センサ21と、
前記位置センサ21を前記X-Yテーブルに沿って移動させ光の照射位置近傍に位置付けるモータ3及び6とを具備し、
前記位置センサ21は、被加工物を載置するX-Yテーブルに配置されており、
前記モータ3及び6は、前記X-Yテーブルを移動させるものであり、
前記反射鏡14が内部に配置された光導管12と対物レンズ16が内部に配置されたモータ17とねじ送り機構18により移動される集光光学系15から出射するレーザ光11の照射位置の補正量を求め制御部に登録する際、前記反射鏡14が内部に配置された光導管12と対物レンズ16が内部に配置されたモータ17とねじ送り機構18により移動される集光光学系15からレーザ光11を照射するとともに、前記モータ3及び6により前記位置センサ21を移動させて位置センサ21の原点位置を集光光学系15の集光位置に位置付けることとした、
レーザ加工機。」

2. 引用文献2
上記平成24年9月11日付け拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭63-60808号(実開平1-165185号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、第1図及び第2図とともに以下の事項が記載されている。

c. 明細書2ページ18行ないし3ページ19行
「(課題を解決するための手段)
本考案によるレーザトリミング装置は、加工面におけるレーザパワーを直接測定することが可能なパワーメータを組み込んだ載物台を有して成るものである。
(実施例)
次に、本考案を実施例について図面を参照して説明する。
第1図は本考案の1実施例に係るレーザトリミング装置の概略的な斜視図である。加工用レーザ光は、全反射鏡5からビームエキスパンダ4に入り、さらにガルバノメータ1、集光レンズ2、ダイクロイックミラー3を経て載物台6上に出射される。載物台6にはパワーメータ7が予め組み込まれており、また第2図に示すように開閉駆動されるレーザ遮蔽板8によってパワーメータ7が蓋閉されるようになっている。このパワーメータ7は、加工面でのレーザパワーを、載物台6上でレーザ光を受光することによって直接測定可能となっている。パワー測定を行う場合、まず載物台6上のパワーメータ7の位置へレーザ光を移動させ、レーザ遮蔽板8を開いてレーザパワーを測定する。」

引用文献2の明細書及び図面の記載から、以下のd.ないしf.の事項が認定できる。

d. 第2図
第2図から、「パワーメータ7」が、「載物台6」の上面から下面に向けて形成された穴の底部に設けられた点、看取できるから、「パワーメータ7」は、「載物台6」に埋設されているということができる。

e. 「載物台6」について
上記摘記事項c.の、「このパワーメータ7は加工面でのレーザパワーを、載物台6上でレーザ光を受光することによって直接測定可能となっている。」との記載から、「載物台6」の表面が加工面となっていて、被加工物が設置されるものであることは、当業者にとって自明な事項である。

f. レーザー光の光軸について
引用文献2記載の「レーザトリミング装置」は、「ガルバノメータ1」を備え、「載物台6上のパワーメータ7の位置へレーザ光を移動させ」(明細書3ページ17及び18行)るものであるから、引用文献2記載の「レーザトリミング装置」は、「レーザ光」の光軸を変化させるものであることは、当業者にとって技術常識である。

上記摘記事項c.及び認定事項d.ないしf.から、引用文献2記載の事項を技術常識を考慮しつつ本願発明1に照らして整理すると、引用文献2には以下の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されているものと認める。

「レーザ光を被加工物に照射してトリミングを行うレーザトリミング装置であって、
レーザ光の光軸を変化させて載物台6上の位置に光を照射する全反射鏡5、ビームエキスパンダ4、ガルバノメータ1、集光レンズ2及びダイクロイックミラー3からなる装置と、
レーザ光の照射を受けてレーザパワーを検出するパワーメータ7と、
前記パワーメータ7は、被加工物を設置する載物台6に埋設されているレーザトリミング装置」

第5 対比・判断
本願発明1と引用文献1記載発明とを対比すると、引用文献1記載発明の「レーザ光11」、「被加工物が載置されるX-Yテーブル」、「光」、「位置センサ21」、「モータ3及び6」、「原点位置」は、本願発明1の「レーザビーム」、「設置面」、「ビーム」、「ビーム検出センサ」、「センサ駆動装置」、「基準点」にそれぞれ相当する。
引用文献1記載発明の「反射鏡14が内部に配置された光導管12と対物レンズ16が内部に配置されたモータ17とねじ送り機構18により移動される集光光学系15」からなる構成は、被加工物が設置される設置面上にレーザビームを照射する限りにおいて、本願発明1の「レーザ照射装置」と共通する。
引用文献1記載発明の「レーザ光の集光位置の補正量を求め制御部に登録する」は、「レーザ加工機」が有する「ずれ量を算出し」、加工時に当該「ずれ量」を解消しつつ制御するための「補正量」を把握すためのものであるから、本願発明の「較正」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、かつ相違する。

1. 一致点
「レーザビームを被加工物に照射して加工を行うレーザ加工機であって、
被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射するレーザ照射装置と、
レーザビームの照射を受けてその照射位置を検出するビーム検出センサと、
前記ビーム検出センサを前記設置面に沿って移動させビームの目標照射位置近傍に位置づけるセンサ駆動装置とを具備し、
前記センサ駆動装置は、前記設置台を移動させるものであり、
前記レーザ照射装置から出射するレーザビームの照射位置の較正を実施する際、レーザ照射装置からレーザビームを照射するとともに、前記センサ駆動装置により前記ビーム検出センサを移動させて当該ビーム検出センサの所定の基準点を当該目標照射位置に位置づけることとした、
レーザ加工機。」

2. 相違点

(1) 相違点1
本願発明1は、「レーザ照射装置」を「ビームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射する」ものとし、かつ、「較正を実施する際」は、「複数の照射位置を順次目標としてレーザビームを照射するとともに、各目標照射位置に向けてレーザビームを照射する都度、前記センサ駆動装置により前記ビーム検出センサを移動させて当該ビーム検出センサの所定の基準点を当該目標照射位置に位置づけ」、「加工時」は、「レーザ照射装置に指令したレーザビームの目標照射位置とビーム検出センサで検出した実際の照射位置との誤差に基づき、加工時にその目標照射位置に照射するためにレーザ照射装置に与えるべき指令の補正量を決定する」ものである。
それに対し、引用文献1記載発明は、「反射鏡14が内部に配置された光導管12と対物レンズ16が内部に配置されたモータ17とねじ送り機構18により移動される集光光学系15」からなる構成は、「レーザ光11」の光軸を変化させるものではなく、「X-Yテーブル」を「モータ3及び6」で駆動することによって、「X-Yテーブル」の所望の位置に「レーザ光11」を照射するものである。そして、「補正量」を求める際に「複数」の「集光位置」に対して「レーザ光11」を照射する点や、「加工」時に、「レーザ光11」の「集光位置」にも基づいて「補正量」を決定する点は、引用文献1に記載されていない。

(2) 相違点2
本願発明1の「ビーム検出センサ」は、「被加工物を設置する設置台に埋設」されるものであるのに対し、引用文献1記載発明の「位置センサ21」は、「X-Yテーブル」に埋設されるものではない。

3. 相違点についての検討

(1) 相違点2について
まず、相違点2について検討する。引用文献1記載発明の「位置センサ21」と引用文献2記載事項の「パワーメータ7」とは、両者とも、レーザ光を被加工物に照射して加工する機械において、照射されたレーザ光を検知するものである点で、共通する技術分野に属する。そうすると、引用文献1記載発明の「位置センサ21」を、「X-Yテーブル」に埋設することは、引用文献2記載事項の「パワーメータ7」の「載物台6」に対する設置手法を、適用したにすぎず、かつ、作用効果の点で格別のものを生じるとも認められないから、当業者が容易になし得た事項である。

(2) 相違点1について
上記引用文献2記載事項の「レーザトリミング装置」も、「レーザ光」の光軸を変化させるものであるものの、「レーザ光」の照射位置の較正を実施する際に、「パワーメータ7」が埋設された「載物台6」をどのように動かすかについては、引用文献2には記載されていない。そして、引用文献2記載事項の「載物台6」が移動可能であるか否かも不明である。
また、「レーザービームの光軸を変化させて被加工物が設置される設置面上の所望の目標照射位置にビームを照射する」レーザー加工機において、「レーザービームの照射位置を較正する際に」、「複数の照射位置を順次目標としてレーザビームを照射するとともに、各目標照射位置に向けてレーザビームを照射する都度、前記センサ駆動装置により前記ビーム検出センサを移動させて当該ビーム検出センサの所定の基準点を当該目標照射位置に位置づける」構成は、原審の平成24年9月11日付け拒絶の理由に引用された文献を含めてどの文献にも記載されていない。
本願発明1は、当該構成を備えることで、「・・・レーザビームLの照射位置の誤差は、ガルバノスキャナ11、12の走査範囲の中央から距離が離れるに従って大きくなる傾向にある」(当初明細書段落【0020】)誤差を、「小型のビーム検出センサを用いながら、レーザ照射装置の走査範囲の広域に亘って照射位置の較正を行うことができ」(平成24年11月19日付け意見書2ページ、下から11ないし10行)との格別な作用効果を奏するものである。
よって、本願発明1は、原審拒絶の理由に引用された引用文献1記載発明及び引用文献2記載事項から当業者が容易に発明することができたものである、ということはできない。

4. 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1を引用するものであって、本願発明1で特定される事項を全て包含するものである。したがって、本願発明2及び3も、上記3.で説示したのと同様に、引用文献1記載発明及び引用文献2記載事項から当業者が容易に発明することができたものである、ということはできない。

第6 むすび
上記第2及び第5で検討したとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-12 
出願番号 特願2008-152174(P2008-152174)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B23K)
P 1 8・ 55- WY (B23K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青木 正博  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 菅澤 洋二
久保 克彦
発明の名称 レーザ加工機  
代理人 赤澤 一博  

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