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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1285281
審判番号 不服2013-12508  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-01 
確定日 2014-03-31 
事件の表示 特願2008-522963号「病院の手術室の再設計」拒絶査定不服審判事件〔平成19年1月25日国際公開、WO2007/012040、平成21年 1月29日国内公表、特表2009-502238号、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年7月20日(パリ条約による優先権主張2005年7月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年2月26日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年7月1日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされたものである。
そして、当審において、平成25年7月29日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成25年8月5日付けで審尋を行ったものである。

第2 平成25年7月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
A 補正の内容
本件補正は、平成24年1月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲を、
「【請求項1】
天井と、壁と、床下地および支持支柱によって支持され、床下地から持ち上げられて配置された仕上げ床を有する床と、手術室の壁内に配置された少なくとも1つの保管キャビネットとを有する手術室であって、
前記保管キャビネットは、消耗品を保管するための少なくとも1つの棚を有するコンパートメントを含み、且つ、手術室の外からアクセス可能な外側ドアと手術室の中からアクセス可能な内側ドアとを有し、前記外側ドアと内側ドアの両方が前記コンパートメントへのアクセスを可能にし、無菌を維持するために、前記外側ドアは、前記内側ドアを閉じたままで、手術室の外から消耗品をストックするために開かれ、前記内側ドアは、前記外側ドアを閉じたままで、手術室の中から消耗品を取り出すために開かれ、
前記手術室は、設備接続を有する少なくとも1つのポッドを含み、前記ポッドは、前記床下地と前記仕上げ床との間に配置され、前記ポッドの上面が前記仕上げ床と面一である下げられた位置と、前記ポッドの上面が前記仕上げ床の上に持ち上げられた上位置との間で移動可能であり、前記ポッドは、前記床下地に固定されている、
ことを特徴とする手術室。
【請求項2】
設備にアクセスするための入口を有する手術台であって、前記設備は、前記手術台の中から電力を供給されるようになっている、手術台を更に含む、請求項1に記載の手術室。
【請求項3】
少なくとも1つの壁内に配置された、ゴミを受け入れるための少なくとも1つの容器であって、前記容器は前記ゴミを受け入れるために、使い捨てできるカートリッジを用いるようになっている、容器を更に含む、請求項1に記載の手術室。
【請求項4】
移動可能な焦点探知器によって標的領域に焦点を合わせる無影灯を更に含む、請求項1に記載の手術室。
【請求項5】
周囲光照明システムであって、前記周囲光照明システムは、半透明のシートを有し、前記半透明のシートは、その表面に光が当たったときに周囲光を発し、且つ、前記半透明のシートは、前記手術室の壁のうちの1つの壁上に配置されるか、または前記手術室の壁のうちの1つの壁の少なくとも一部分を構成するようになっている、周囲光照明システムを更に含む、請求項1に記載の手術室。
【請求項6】
前記手術室の少なくとも1つのドアの気密密封あるいは密封のいずれかと、オゾン、紫外線、あるいはこれらの組み合わせを利用する室内無菌装置との両方を更に含む、請求項1に記載の手術室。
【請求項7】
流し台トラップ無菌器を更に含む、請求項1に記載の手術室。
【請求項8】
前記設備は、ガス、バキューム、電気、水、およびデータ回線を供給する、請求項2に記載の手術室。
【請求項9】
前記設備は、単一のアダプタータイプによってアクセスされる、請求項2に記載の手術室。
【請求項10】
前記手術台は、前記床下地に取付けられている、請求項2に記載の手術室。
【請求項11】
前記保管キャビネットの内側ドアおよび外側ドアの少なくとも1つは、透明または半透明の少なくとも一方である、請求項1に記載の手術室。
【請求項12】
前記ゴミ容器は、前記ゴミを受け入れるための使い捨てできるカートリッジを利用する、請求項3に記載の手術室。
【請求項13】
前記ゴミ容器は、ゴミのタイプにより色分けされている、請求項12に記載の手術室。
【請求項14】
前記無影灯は、手術台の周りに配列される光源を有する、請求項4に記載の手術室。
【請求項15】
前記手術室の壁および床の交差部が丸いコーナーである、請求項1に記載の手術室。
【請求項16】
前記周囲光照明システムの半透明のシートは、低誘電率且つ低空隙率の材料で作られている、請求項5に記載の手術室。
【請求項17】
前記周囲光照明システムの半透明のシートは、病院の手術室の壁のうちの大部分の壁上に配置されるか、または、病院の手術室の壁のうちの大部分の壁の一部分を形成する、請求項5に記載の手術室。
【請求項18】
前記流し台トラップ無菌器は、殺菌のために紫外線を利用する、請求項7に記載の手術室。
【請求項19】
前記手術室は、複数の前記ポッドを含む、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の手術室。」
と補正するものである(なお、下線は補正箇所を示すものである。)。

B 補正の適否
本件補正は、(1)補正前の請求項1に関し、その請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である「仕上げ床」について「支持支柱によって支持され、床下地から持ち上げられて配置された仕上げ床」との限定を付加するとともに、「ポッド」について「前記床下地と前記仕上げ床との間に配置され」及び「前記床下地に固定されている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、(2)補正前の請求項2に関し、その発明特定事項である「a)設備にアクセスするための入口を有する手術台であって、前記設備は、前記手術台の中から電力を供給されるようになっている、手術台と、
b)少なくとも1つの壁内に配置された、ゴミを受け入れるための少なくとも1つの容器であって、前記容器は前記ゴミを受け入れるために、使い捨てできるカートリッジを用いるようになっている、容器と、
c)移動可能な焦点探知器によって標的領域に焦点を合わせる無影灯と、
d)周囲光照明システムであって、前記周囲光照明システムは、半透明のシートを有し、前記半透明のシートは、その表面に光が当たったときに周囲光を発し、且つ、前記半透明のシートは、前記手術室の壁のうちの1つの壁上に配置されるか、または前記手術室の壁のうちの1つの壁の少なくとも一部分を構成するようになっている、周囲光照明システムと、
e)前記手術室の少なくとも1つのドアの気密密封あるいは密封のいずれかと、オゾン、紫外線、あるいはこれらの組み合わせを利用する室内無菌装置との両方と、
f)流し台トラップ無菌器と、
からなる群のうちa)?f)の少なくとも1つを更に含む」について、補正後の請求項2において「設備にアクセスするための入口を有する手術台であって、前記設備は、前記手術台の中から電力を供給されるようになっている、手術台を更に含む」、同じく請求項3において「少なくとも1つの壁内に配置された、ゴミを受け入れるための少なくとも1つの容器であって、前記容器は前記ゴミを受け入れるために、使い捨てできるカートリッジを用いるようになっている、容器を更に含む」、同じく請求項4において「移動可能な焦点探知器によって標的領域に焦点を合わせる無影灯を更に含む」、同じく請求項5において「周囲光照明システムであって、前記周囲光照明システムは、半透明のシートを有し、前記半透明のシートは、その表面に光が当たったときに周囲光を発し、且つ、前記半透明のシートは、前記手術室の壁のうちの1つの壁上に配置されるか、または前記手術室の壁のうちの1つの壁の少なくとも一部分を構成するようになっている、周囲光照明システムを更に含む」、同じく請求項6において「前記手術室の少なくとも1つのドアの気密密封あるいは密封のいずれかと、オゾン、紫外線、あるいはこれらの組み合わせを利用する室内無菌装置との両方を更に含む」、同じく請求項7において「流し台トラップ無菌器を更に含む」とすることにより、明瞭にするものであるから、改正前特許法第17条の2第4項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、(3)補正前の請求項3?14に関し、それらの発明特定事項を、上記(2)に係る補正に伴って整理し、補正後の請求項8?19のものとし明瞭にするものであるから、改正前特許法第17条の2第4項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当し、(4)補正前の請求項15?16に関し、請求項を削除するものであるから、改正前特許法第17条の2第5項第1号の同法第36条第5項に規定する請求の削除を目的とするものに該当する。
また、改正前特許法第17条の2第3項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

1 刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭55-128730号(実開昭57-051515号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、次のとおり記載されている。
a「2 実用新案登録請求の範囲
(1)治療室の床中に、酸素ガス、笑気ガス等の治療用ガスを供給すべきガス供給管を埋設し、当該ガス供給管の供給端口を、上記床に埋設開口したアウトレツトボツクスの取出端栓口に連結すると共に、このアウトレツトボツクスには開閉自在な閉蓋を設けてなる治療ユニツト装置。」(1頁3?10行)
b「本考案は酸素ガス、笑気ガスなどの取出口となるアウトレツトボツクス等が設備されている手術室などの治療ユニツト装置に関する。」(2頁7?9行)
c「従来この種の装置は、第1図のようにアウトレツトボツクスaを手術室等の治療室bにあつて、その側壁cに装備するようにしていたため、・・・。
また既応装置として第2図の如くアウトレツトボツクスaを、治療室bの天井壁fに設置したものも用いられているが、・・・。」(2頁10行?3頁4行)
d「本考案は・・・第3図以下の実施例によつて詳記すれば、治療室(1)の床(2)中には、酸素ガス、笑気ガス等の治療用ガスを供給すべきガス供給管(3)(3)・・・・・を埋設し、同供給管(3)(3)・・・・・の供給端口(3)'(3)'・・・・を、これまた床(2) に開口するよう所望数埋設したアウトレツトボツクス(4)(4)・・・・・の取出端栓口(5)(5)・・・・・に連結するのであり、さらにこの開口したアウトレツトボツクス(4)(4)・・・・・には開閉自在な閉蓋(6) を施してある。」(3頁12行?4頁2行)
e「そして第3図の実施例では二個のアウトレツトボツクス(4)(4)が設置されており、これらは夫々治療室(1) の適所に配置して用いられる治療用ベツド(7) に対応して、その頭載部と足載部との直下位置に配されている。」(4頁3?7行)
f「そこで上記装置により手術等を行なう場合には、治療用ベツド(7) を所望位置に配し、当該ベツド(7) に横臥する患者の頭部位置に応じて、所望アウトレツトボツクス(4) の閉蓋(6) を開成した後、同ボツクス(4) の取出端栓口(5) と、麻酔器などの治療機器(8) とをリードチユーブ(9) によつて連結すればよい。」(4頁18行?5頁4行)
g「本考案は上記実施例によつて具現される通り治療室(1) の床(2) 中に、治療用ガスを供給すべきガス供給管(3) を埋設し、当該ガス供給管(3) の供給端口(3)'を、上記床(2) に埋設開口したアウトレツトボツクス(4) の取出端栓口(5) に連結すると共に、このアウトレツトボツクス(4) には開閉自在な閉蓋(6) を設けるようにしたので、床(2) に開口しているアウトレツトボツクス(4) と治療機器(8) とを連結するリードチユーブ(9) が、極めて短いもので事足り、この結果治療室(1) のデツドスペースが減殺されるので手術スタツフの行動に対する障害が殆どなくなると共に、リードチユーブ(9) が短いと共に縦装状態となるのでダクトの付着も少なくなり、環境衛生上も望ましい結果が得られ、同室(1) 内の空気流を乱すことも大巾に低減される。」(5頁5?20行)

記載事項b?dの記載を併せてみて、治療室(1)は、天井壁と、側壁と、床(2)とを有するといえる。
記載事項e及びfの記載を併せてみて、治療室(1)は、治療機器(8)に連結されたリードチューブ(9)と接続する手段を有するアウトレットボックス(4)を含むといえる。
記載事項dの「治療室(1)の床(2)中には、・・・ガス供給管(3)(3)・・・・・を埋設し、同供給管(3)(3)・・・・・の供給端口(3)'(3)'・・・・を、これまた床(2) に開口するよう所望数埋設したアウトレツトボツクス(4)(4)・・・・・の取出端栓口(5)(5)・・・・・に連結する」との記載から、アウトレットボックス(4)は、床中に埋設されているといえる。

以上から、刊行物1には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
「天井壁と、側壁と、床(2)とを有する治療室(1)であって、
治療室(1)は、治療機器(8)に連結されたリードチューブ(9)と接続する手段を有するアウトレットボックス(4)を含み、アウトレットボックス(4)は、床(2)中に埋設されている、治療室(1)。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭56-188781号(実開昭58-92822号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、次のとおり記載されている。
「床面に埋設されたアウトレットボックスの開口に取付けられ中央にコンセント本体突出孔を有するとともにこのコンセント本体突出孔の上面周縁に全周にわたる切欠凹部が形成されたフロアプレートと、前記アウトレットボックス内に前記コンセント本体突出孔から前記フロアプレートの上面に突出可能に設けられ上縁外周にパッキン押え用カバーフランジを有するコンセント本体と、環状に形成されて前記フロアプレートの前記切欠凹部に取付けられ内周に先端が前記コンセント本体の外周面に接する薄肉フランジを有するパッキンとを備えたフロアコンセント。」(1頁5?16行)

(3)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-192744号(実開昭59-96709号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、次のとおり記載されている。
「1.フロアースタンド本体部(5)とコンセント部(19)の間隙面に、側面上部及び側面下部にフランジ(31)(32)を設けたパッキング(33)を嵌入し、フロアースタンド本体部(5)に設けた凸縁(10)が前記パッキング(33)のフランジ(31)(32)間に配されると共にコンセント部(19)に設けた凸体(28)が前記パッキング(33)のフランジ(32)の下方に配される様にしたことを特徴とする床面収納式フロアースタンド防水防塵機構。」(1頁5?14行)

(4)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭55-168979号(実開昭57-90118号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物4」という。)には、次のとおり記載されている。
「病室側、前室側の両面に互いにインターロックする扉をもうけた少なくとも1つのインボックスとアウトボックスからなり、該アウトボックスには病室側の扉を閉鎖した時、所定時間点灯する殺菌燈をもうけ、該殺菌燈の点灯時は、アウトボックスの病室側、前室側のいずれの扉も開放できない電気回路を有する事を特徴とするパスボックス。」(1頁5?12行)

(5)審尋で引用した実願平1-78205号(実開平3-18617号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物5」という。)には、次のとおり記載されている。
「1)床基盤上に適宜間隔を隔てて多数枚の床パネルを敷設してなる二重床において、4枚の床パネルの隅角部の接合部において、平面視略コ字形の床パネル連結部とコンセント取付部とを有する一対の取付金具を対向配置し、該取付金具にて互いに隣接する2枚の床パネルの側端縁同士をそれぞれ連結するとともに、両取付金具のコンセント取付部間にコンセントを固着してなることを特徴とする二重床におけるコンセント取付具。」(1頁5?13行)

(6)審尋で引用した実願平1-78209号(実開平3-18621号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物6」という。)には、次のとおり記載されている。
「1)床基盤上に適宜間隔を設けて多数枚の床パネルを敷設してなる二重床において、
隣接する床パネル間の両側板間の間隔と略一致する幅の表板部の両側に該側板に当接するとともに、該側板の上下中間位置に突設した突条の上面段部に当接し得る脚部を有し、該脚部の外側に突き合い状態で嵌入し得る弾力部を形成してなるコンセントカバーの前記表板部下面の前記間隙に沿った一側に寄り位置にコンセントの固定部を設けるとともに、該表板部の他側縁部にコード挿通用の切欠を設け、更に前記両突条下面に係合する係合片を該表板部下面に突設してなることを特徴とする二重床におけるコンセント装置。」(1頁5?17行)

(7)審尋で引用した実願昭58-13784号(実開昭59-120219号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物7」という。)には、次のとおり記載されている。
「電源用または通信用コンセント、あるいは光通信用ケーブルのコネクタ等の接続手段を固設したことを特徴とする床板。」(1頁5?7行)

(8)審尋で引用した特開昭63-244577号公報(以下、「刊行物8」という。)には、次のとおり記載されている。
「(1)フロアー等の建物躯体内に設置するボックス本体の側板の内側に取付座を設け、該取付座に上下調整ネジを螺合せしめてその高さ位置を調整自在とし、該上下調整ネジにカバープレートを固定するようにしたことを特徴とする接続ボックス。」(1頁左下欄5?9行)

(9)審尋で引用した特開昭63-244576号公報(以下、「刊行物9」という。)には、次のとおり記載されている。
「(1)フロアー等の建物躯体内に設置するボックス本体と該ボックス本体に被着せしめ天板にコンセントを備えたカバープレートから成る接続ボックスに於いて、該接続ボックスの上方にフラットケーブル引出し口を設けたことを特徴とする接続ボックス。」(1頁左下欄5?10行)

2 対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「天井壁」は、その構造または機能からみて、補正発明の「天井」に相当し、以下同様に、「床(2)」は「床」に、「側壁」は「壁」に、「治療室(1)」は「手術室」に、「治療機器(8)に連結されたリードチューブ(9)」は「設備」に、「アウトレットボックス(4)」は「ポッド」に、それぞれ相当する。
引用発明の「治療機器(8)に連結されたリードチューブと接続する手段を有するアウトレットボックス(4)」は、補正発明の「設備接続を有する少なくとも1つのポッド」に相当する。
引用発明の「アウトレットボックス(4)は、床(2)中に埋設され」と補正発明の「前記ポッドは、前記床下地と前記仕上げ床との間に配置され」とは、「前記ポッドは、前記床中に配置され」である限りにおいて一致する。

したがって、両者は「天井と、壁と、床とを有する手術室であって、
前記手術室は、設備接続を有する少なくとも1つのポッドを含み、前記ポッドは、前記床中に配置されている、
手術室。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
補正発明は、床が、床下地および支持支柱によって支持され、床下地から持ち上げられて配置された仕上げ床を有するものであり、ポッドが、前記床下地と前記仕上げ床との間に配置され、前記ポッドの上面が前記仕上げ床と面一である下げられた位置と、前記ポッドの上面が前記仕上げ床の上に持ち上げられた上位置との間で移動可能であり、前記床下地に固定されているものであるのに対し、引用発明は、ポッドが床中に埋設されるものであって、床及びポッドが補正発明の当該発明特定事項を有していない点。

(相違点2)
補正発明は、保管キャビネットを有する手術室であって、その保管キャビネットは、消耗品を保管するための少なくとも1つの棚を有するコンパートメントを含み、且つ、手術室の外からアクセス可能な外側ドアと手術室の中からアクセス可能な内側ドアとを有し、前記外側ドアと内側ドアの両方が前記コンパートメントへのアクセスを可能にし、無菌を維持するために、前記外側ドアは、前記内側ドアを閉じたままで、手術室の外から消耗品をストックするために開かれ、前記内側ドアは、前記外側ドアを閉じたままで、手術室の中から消耗品を取り出すために開かれるものであるのに対し、引用発明は、保管キャビネットを有する手術室であるかどうか不明であり、そのため、補正発明の保管キャビネットについての発明特定事項を有するものであるかどうかも不明である点。

3 判断
(相違点1について)
刊行物1には、ポッドが酸素ガス、笑気ガスなどの取出口であることと、ポッド及び当該ポッドに連結されるガス供給管(3)が床(2)中に埋設されることとが記載されているにすぎない(特に記載事項a,b及びdを参照。)。したがって、刊行物1には、床が床下地及び仕上げ床を有するものであることについても、ポッドが床に対して移動可能であることについての記載はない。
よって、刊行物1には、「ポッドが、前記床下地と前記仕上げ床との間に配置され、前記ポッドの上面が前記仕上げ床と面一である下げられた位置と、前記ポッドの上面が前記仕上げ床の上に持ち上げられた上位置との間で移動可能であり、前記床下地に固定されているものである」ことについて記載も示唆もない。
次に、刊行物2?9についてみてみると、これらの刊行物には上記(2)?(9)に記載した事項が記載されているにすぎないから、いずれにも「ポッドが、前記床下地と前記仕上げ床との間に配置され、前記ポッドの上面が前記仕上げ床と面一である下げられた位置と、前記ポッドの上面が前記仕上げ床の上に持ち上げられた上位置との間で移動可能であり、前記床下地に固定されているものである」ことについて記載も示唆もない。

以上のとおり、いずれの刊行物にも「ポッドが、前記床下地と前記仕上げ床との間に配置され、前記ポッドの上面が前記仕上げ床と面一である下げられた位置と、前記ポッドの上面が前記仕上げ床の上に持ち上げられた上位置との間で移動可能であり、前記床下地に固定されているものである」ことについて記載も示唆もないから、引用発明の床及びポッドを補正発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易になし得る事項といえない。
したがって、補正発明は、相違点2について検討するまでもなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

C むすび
本件補正は、改正前特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、改正前特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1?19に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-17 
出願番号 特願2008-522963(P2008-522963)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 関谷 一夫
高木 彰
発明の名称 病院の手術室の再設計  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 井野 砂里  
代理人 松下 満  
代理人 辻居 幸一  
代理人 弟子丸 健  
代理人 倉澤 伊知郎  

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