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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1285754
審判番号 不服2013-14039  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-22 
確定日 2014-04-01 
事件の表示 特願2011-236517「入力装置および入力装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 1日出願公開、特開2012- 43462、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年2月3日に出願された特願2009-22445号の一部を平成23年4月7日に新たな特許出願(特願2011-85225号)とし、該新たな特許出願の一部を平成23年10月27日に新たな特許出願としたものであって、平成24年11月5日付けで拒絶理由が通知され、平成25年1月15日付けで手続補正がなされ、平成25年4月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年7月22日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は、平成25年1月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
押圧に応じて、表示されている階層の移動を行う入力装置であって、
入力部と、
前記入力部に対する、第2の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧に基づき現在の階層より上位の次の階層へ移動し、前記第2の荷重基準を満たしていない状態において前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧に基づき、前記次の階層より上位の次の階層へ移動するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
押圧に応じて、表示されている階層の移動を行う入力装置の制御方法であって、
第2の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧に基づき現在の階層より上位の次の階層へ移動し、前記第2の荷重基準を満たしていない状態において前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧に基づき、前記次の階層より上位の次の階層へ移動するように制御することを特徴とする入力装置の制御方法。」

第3 原査定の理由の概要
本願の請求項1?2に係る発明は、その出願(遡及日:平成21年2月3日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開平9-269883号公報

第4 当審の判断
1.刊行物の記載事項
刊行物1には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
(ア)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子手帳などの情報処理装置および情報処理方法に係り、とくに、メニューが複数の階層にわたって構成されている階層メニュー構造に好適な情報処理装置および情報処理方法に関する。」(第2頁第2欄第46行?第3頁第3欄第2行)

(イ)「【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1乃至8記載の発明では、ユーザがデータを入力可能な表示画面を有する表示部と、階層構造のメニューのデータを記憶しているメモリとを備え、前記階層構造のメニューの中からユーザの所望する階層のメニューを前記表示画面に表示させるようにした情報処理装置において、前記表示画面の所望位置が押圧されたときの圧力を検知する圧力検知手段と、この圧力検知手段により検知された圧力の大きさが前記階層構造のどの階層に相当するかを判定する階層判定手段と、この階層判定手段により判定された階層のメニューのデータを前記メモリから読み出して前記表示画面に表示するメニュー表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】例えば、前記表示部は、ユーザがデータを入力するためタブレット面を有するタブレット装置を備え、前記タブレット面を前記表示画面に重ねて配置した構造を有する。好適には、前記タブレット面の所望位置をタッチするペンを備え、前記圧力検知手段はこのペンの押圧による筆圧を検知するようになっている。例えば、前記タブレット面は抵抗膜方式で形成されている。
【0016】また例えば、前記階層判定手段は前記圧力の大きさを複数の圧力幅の閾値毎に弁別する手段である。前記複数の圧力幅の閾値はその圧力の大きさが「弱」、「中」、「強」の3段階の圧力幅である。好適には、前記複数の圧力幅の閾値それぞれの間には、圧力の非検出帯を設けてある。」(第3頁第4欄第46行?第4頁第5欄第22行)

(ウ)「【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1?図17を参照して説明する。
【0024】図1は、階層メニュー構造を有する情報処理装置としての電子手帳の外観を示す。同図に示すように、この電子手帳はペン入力型であり、手帳本体11と、ペン12とを有する。手帳本体11には、その上面に表示面を露出させた表示部13がタブレット装置14と一体に組み込まれている。
【0025】表示部13は液晶表示器を内蔵し、その上側にはタブレット装置14の透明のタブレット面14aが重合されている。タブレット装置14はここでは抵抗膜方式が採用されている。」(第4頁第6欄第22?34行)

(エ)「【0026】この電子手帳の手帳本体11の機能的なブロック図を図2に示す。手帳本体11は、その内部に、CPU31、RAM32、ROM33のほか、表示部13、タブレット装置14、通信制御部35を備え、これらのユニットが互いにバス36を介して接続されている。バス36にはまた、スイッチ部37(図1参照)が接続されている。
【0027】CPU31は、手帳全体の制御および入力データ、表示データの処理などを担うとともに、文字認識などの応用処理を実行する。RAM32はCPU31の処理に伴うデータの一時記憶などに使用される。ROM33は、CPU31による処理に必要なオペーレティングシステムプログラム40、メニュー選択プログラム41、メニューデータ42、文字認識プログラム43、文字認識辞書44などの固定データを予め記憶している。
【0028】タブレット装置14のデータ処理部は図2に示すように、平面位置検出部51、筆圧検出部52と、データ制御53とを機能的に備える。ペン12で指示されたタブレット面14a上の2次元位置は平面位置検出部51で検出され、デジタル量の平面座標データに変換される。これとともに、筆圧検出部52によりペン12のデジタル量の筆圧(押圧力)デ-タが平面座標データ以外の第3の情報として検出される。これら平面座標データおよび筆圧データは、CPU31の制御の元、データ制御53を介してRAM32に転送させ、記憶される。」(第4頁第6欄第35行?第5頁第7欄第11行)

(オ)「【0044】本実施形態の電子手帳は、表示部13に表示するメニューとして階層構造のメニューを採用しており、その一例を図4の状態遷移図に示す。最上層のトップ層には、「ようこそ」のメッセージGとともに、3種類のワーク「メモ帳」M1、「電卓」C2、「スケジュール」)S1の名称からなるメインメニューが在る。第2層目には、ワークM,C,Sの種類毎にその下位の作業メニューM2,C2,S2が在る。さらに、第3層目にはペンによるドラッグポイント(選択機能表示、機能実行)のメニューM3,S3が「メモ帳」および「スケジュール」に用意されている。この第3層目を介して最下層のメニューが在り、この最下層には表示終了のメニューMBT,CBT,SBTがワーク毎に用意されている。
【0045】なお、この図4において、実線矢印はメニュー間(異なる階層の上位、下位のメニュー間で、または、同一階層内のメニュー間で)移動できることを示している。とくに、第2層目メニューでは、後述するように同一階層内のメニュー間を容易に移動できるようになっている。
【0046】この図4の階層構造のメニューと筆圧の閾値との対応関係を図5に示す。ここでは筆圧に応じたメニュー選択・表示を行うようになっており、そのための筆圧の閾値が決められている。最上層のトップ層には筆圧値0?40が、第2層目には筆圧値60?120が、さらに最下層には筆圧値190?255が割り当てられている。筆圧値はここでは例えば8ビットデータとし、最小0(筆圧=0)から検出可能な最大筆圧である最大255までの256分割のデータとして得られる。このため、最上層に対する筆圧閾値は、ユーザがタブレット面をペンタッチしていないか、または、軽くペンタッチした場合である。また第2層目に対する筆圧閾値は通常(中程度)のペンタッチである。最下層に対する筆圧閾値は強いペンタッチに相当する。
【0047】つまり、最上層から最下層に向けて筆圧閾値が順に、「弱」、「中」、「強」と強められている。ユーザが最上層のメニューを開けたいときは、弱くペンタッチすればよい。第2層目や最下層のメニューを開けたいときはそれぞれ、「中」、「強」のペンタッチを行えばよいことになる。このように、およその筆圧を与えればよいので、人間のペンタッチの操作感覚に非常に良くマッチする。さらに、各階層の筆圧閾値の間に圧力の非検出帯を設置しているので、「弱」、「中」、「強」の分離を良くすることができ、確実なメニュー選択に繋がる。」(第6頁第9欄第43行?同頁第10欄第37行)

(カ)「【0057】ロックフラグFおよびロックカウンタCNTはともに表示部13の液晶表示画面のメニューロックの状態を表す。メニューロックの状態とは、「ペンをタブレット面から離した場合でも、その離す直前のメニューが継続して表示される状態」を言う。このメニューロック機能の有無およびメニューロックの状態を得るまでにペンをタブレット面に接触させていなければならないロック待機時間の設定(メニューロック機能有りの場合)は、後述するオプション機能により設定される。
【0058】次いで、CPU31はその処理をステップ112に移行させ、タブレット装置14の平面位置検出部51が検出したペン位置座標データ(x,y)および圧力検出部52が検出した筆圧データaをサンプリング(入力)する。これらのデータはデジタル量としてタブレット装置14のデータ制御部53からバスライン36を介して供給される。ペン位置座標データ(x,y)はタブレット装置14のタブレット面上のペン指示(押圧)位置を表す2次元データである。筆圧データaは、タブレット面上のペン指示位置における、その面に交差する方向に掛かるペンによる圧力を表し、検出可能な最大圧の実際値を最大ビットとする相対圧データとして供給される。
【0059】次いでステップ113に移行し、CPU31は、入力したペン位置座標(x,y)が所望のメニュー位置か(メニュー位置を触っているか)どうかを判断する。これはROM33に予め格納してあるメニューデータ42の中の位置データを参照することで行われる。所望のメニューとしては、前述したように、ここでは「メモ帳」、「電卓」、「スケジュール」が用意されている。
【0060】このステップ113の判断でYESと判断されたときは、所望のメニューが指示された場合であるので、続いてステップ114に係る、ロックフラグFが既にセットされているか(F=1)否かの判断が実行される。この判断でNO(F=0)の場合、ステップ115のサブルーチンに入る。このサブルーチンでは、筆圧の大きさに応じた階層構造のメニューの選択・表示などが実施される(詳細は後述する)。」(第7頁第11欄第47行?同頁第12欄第34行)

(キ)「【0065】上述したステップ115のサブルーチンで実施される、階層構造のメニューの選択・表示動作を図10にしたがって以下に詳述する。
【0066】CPU31はまず、図10のステップ115-1にて、既に入力していた筆圧aが「0≦a≦40」か否かを判定される。この判断により、筆圧が0または弱(ペンが軽く触っている)の状態かどうかが認識される。
【0067】この判断でYESとなるときは、ペン12がタブレット面に触っていない状態か、または、ペンで軽く触った状態であるので、ステップ115-2の処理が実施される。このステップ115-2では、CPU31は階層構造の内の最上層のメニューであるトップメニューを表示させる(図13参照)。既に、すでにトップメニューが表示されている場合は、その表示状態が維持される。つまり、電源オンでトップメニューが表示されている状態からペンで触らない限り、トップメニューの表示が継続される。また、トップメニューの状態で軽く触った場合も、その表示状態は維持される。
【0068】次いでステップ115-3に移行し、ロックカウンタCNTをインクリメントする。このカウントアップにより、前述したメニューロックのための時間計測がなされる。
【0069】さらにステップ115-4で、サブメニューSB(図13参照)をオン(表示)させるかどうかが判断される。このサブメニューSBの表示の有無は、オプション機能で予め指定されている。このステップでYESと判断されるときは、次いでステップ115-5にてサブメニューSBが表示部13の液晶表示画面の上側に、メインメニューMN(G,M1,C1,S1)から分割した位置に表示されるか(図13参照)、またはその表示状態が維持される。なお、ステップ115-4でNOと判断されるときは、図示しないフラグ判断などの手法によりステップ115-5の処理がスキップされる。
【0070】前述したステップ115-1の判断でNOと判断されたときは、ステップ115-6に移行して、今度は筆圧aが「60≦a≦120」の状態か否かが判断される。この閾値処理により、筆圧が中(普通)程度であるかどうかが認識される。このため、この判断がYESなるときは、ユーザがペン12を通常の圧力でタッチしているので、続いてステップ115-7の処理が行われる。つまり、階層構造のメニューの内、第2層目のメニューデータの所望ワークのデータがROM33から呼び出され、表示される(図14参照)。この後、前述したステップ115-3?5の処理が行われる。
【0071】さらに、前述したステップ115-6でNOと判断されたときはさらに、筆圧aが「190≦a≦255」か否かの判断が下される(ステップ115-8)。これにより、ユーザがペン12を強くタッチさせたことを認識できる。このため、この処理でNOの判断のときは、それ移行のサブルーチン処理を全てスキップした図9の処理に戻る。
【0072】ステップ115-8でYESの判断が下されたときは、次いでステップ115-9で「階層構造のメニューの最終メニューであることを通知(終了通知)」を行うかどうかを判断する。この終了通知の表示の有無はオプション機能を通じて予め設定されている。終了通知を行う場合(ステップ115-9でYESの判断)、ステップ115-10で最下層のメニューデータがROM33のメニューデータ42から読み出され、表示部13に表示される。終了通知を行わない場合(ステップ115-9でNOの判断)、ステップ115-10の処理はスキップされる。この終了通知の表示処理後は、前述したステップ115-3?5が順次実施される。」(第8頁第13欄第19行?同頁第14欄第34行)

(ク)「【0089】このように本実施形態によれば、筆圧を検知し、その筆圧の弱、中、大に応じて階層構造のメニューを選択できる。このため、人の感覚にマッチした確実かつ迅速なメニュー選択ができるようになる。また、筆圧データを用いることで、同一種類のワークのメニューは画面上の同一位置に表示させることができ、画面サイズ、すなわち手帳全体を小形化できる。」(第10頁第17欄第14?20行)

(ケ)「【0096】さらに、前述した実施形態ではペン入力型の電子手帳であるとしたが、指でタッチする方式にも採用できる。」(第10頁第18欄第23?25行)

刊行物1記載の情報処理装置において、オプション機能を通じて、「メニューロック機能」を「無」とし、「終了通知の表示」を「有」と予め設定した場合、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザがデータを入力可能な表示画面を有する表示部と、複数の階層にわたって構成されている階層構造のメニューのデータを記憶しているメモリと、CPUとを備え、前記階層構造のメニューの中からユーザの所望する階層のメニューを前記表示画面に表示させるようにした情報処理装置において、
前記表示画面の所望位置が押圧されたときの圧力を検知する圧力検知手段と、この圧力検知手段により検知された圧力の大きさが前記階層構造のどの階層に相当するかを判定する階層判定手段と、この階層判定手段により判定された階層のメニューのデータを前記メモリから読み出して前記表示画面に表示するメニュー表示手段とを備え、
前記表示部は液晶表示器を内蔵し、その上側には、ユーザがデータを入力するためタブレット面を有するタブレット装置の透明のタブレット面が重合されており、前記タブレット面の所望位置をタッチするペンを備え、前記圧力検知手段はこのペンの押圧による筆圧(押圧力)を検知するようになっており、
階層構造のメニューは、最上層のトップ層、第2層目、及び最下層のメニューを含み、異なる階層の上位、下位のメニュー間で移動でき、
筆圧に応じたメニュー選択・表示を行うようになっており、そのための筆圧の閾値が決められ、最上層から最下層に向けて筆圧閾値が順に、「弱」、「中」、「強」と強められており、ユーザが最上層のメニューを開けたいときは、弱くペンタッチすればよく、第2層目や最下層のメニューを開けたいときはそれぞれ、「中」、「強」のペンタッチを行えばよく、
階層構造のメニューの選択・表示動作では、
(1)既に入力していた筆圧aが「0≦a≦40」(最上層に割り当てられた筆圧閾値)か否かを判定され(ステップ115-1)、筆圧が0または弱(ペンが軽く触っている)の状態かどうかが認識され、この判断でYESとなるときは、CPU31は階層構造の内の最上層のメニューであるトップメニューを表示させ、
(2)前述したステップ115-1の判断でNOと判断されたときは、今度は筆圧aが「60≦a≦120」(第2層目に割り当てられた筆圧閾値)の状態か否かが判断され(ステップ115-6)、この閾値処理により、筆圧が中(普通)程度であるかどうかが認識され、この判断がYESなるときは、階層構造のメニューの内、第2層目のメニューデータが表示され、
(3)前述したステップ115-6でNOと判断されたときはさらに、筆圧aが「190≦a≦255」(最下層に割り当てられた筆圧閾値)か否かの判断が下され(ステップ115-8)、これにより、ユーザがペン12を強くタッチさせたことを認識でき、ステップ115-8でYESの判断が下されたときは、最下層のメニューデータが、表示部13に表示される、
指でタッチする方式も採用できる、
情報処理装置。」

2.対比
(請求項1に係る発明について)
本願の請求項1に係る発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「情報処理装置」は、「ユーザがデータを入力可能な表示画面を有する表示部」を有し、「ペンの押圧」に応じて「異なる階層の上位、下位のメニュー間で移動でき」るから、本願の請求項1に係る発明の「押圧に応じて、表示されている階層の移動を行う入力装置」に相当する。
次に、引用発明における「表示部」は、「液晶表示器を内蔵し、その上側には、ユーザがデータを入力するためタブレット面を有するタブレット装置の透明のタブレット面が重合されており、前記タブレット面の所望位置をタッチするペンを備え、前記圧力検知手段はこのペンの押圧による筆圧(押圧力)を検知するようになって」いるから、引用発明における該「表示部」が、本願の請求項1に係る発明の、「押圧」される「入力部」に相当する。
次に、引用発明の「既に入力していた」「筆圧aが「190≦a≦255」(最下層に割り当てられた筆圧閾値)か否かの判断」で「YESの判断が下されたとき」が、本願の請求項1に係る発明の、「押圧」が「第2の荷重基準を満たす状態」に相当し、「否」の判断が下されたときが、本願の請求項1に係る発明の、「押圧」が「第2の荷重基準を」「満たさない状態」に相当する。
そして、引用発明の上記判断において、「YESの判断が下されたとき」に表示部13に表示される「最下層のメニューデータ」が、本願の請求項1に係る発明の「現在の階層」に相当する。
次に、引用発明の「既に入力していた」「筆圧aが「60≦a≦120」(第2層目に割り当てられた筆圧閾値)の状態か否か」の「判断」で、「この判断がYESなるとき」が、本願の請求項1に係る発明の、「押圧」が「前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を満たす状態」に相当し、「NOと判断されたとき」が、本願の請求項1に係る発明の、「押圧」が「前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を」「満たさない状態」に相当する。
そして、引用発明の上記判断において、「この判断がYESなるとき」に表示される「第2層目のメニューデータ」が、本願発明の「現在の階層より上位の次の階層」に相当する。
次に、引用発明において、「既に入力していた筆圧aが「0≦a≦40」(最上層に割り当てられた筆圧閾値)か否かを判定され」、「この判断でYESとなるとき」に表示される「階層構造の内の最上層のメニューであるトップメニュー」が、本願の請求項1に係る発明の「前記次の階層より上位の次の階層」に相当する。
次に、引用発明の「CPU」は、次の相違点を除いて、本願の請求項1に係る発明の「制御部」に相当する。

すると、本願の請求項1に係る発明は、引用発明と、次の点で一致する。
(一致点)
押圧に応じて、表示されている階層の移動を行う入力装置であって、
入力部と、
押圧に基づき、現在の階層、現在の階層より上位の次の階層、及び前記次の階層より上位の次の階層へ移動するように制御する制御部と、
を備え、
前記入力部に対する押圧には、第2の荷重基準を満たす状態、第2の荷重基準を満たさない状態、前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を満たす状態、前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を満たさない状態がある、
入力装置。

また、両者は、次の点で相違する。
<相違点>
本願の請求項1に係る発明では、「制御部」が、「前記入力部に対する、第2の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧に基づき現在の階層より上位の次の階層へ移動し、前記第2の荷重基準を満たしていない状態において前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧に基づき、前記次の階層より上位の次の階層へ移動するように制御」しているのに対し、
引用発明では、「階層構造のメニュー」が「最上層のトップ層、第2層目、及び最下層のメニュー」を含み、「異なる階層の上位、下位のメニュー間で移動でき」るものの、「異なる階層の上位、下位のメニュー間」の「移動」は、
ア.「既に入力していた筆圧aが「0≦a≦40」(最上層に割り当てられた筆圧閾値)」と判断されたときに、「最上層のメニューであるトップメニューを表示させ」、
イ.「既に入力していた」「筆圧aが「60≦a≦120」(第2層目に割り当てられた筆圧閾値)の状態」と判断されたときに、「階層構造のメニューの内、第2層目のメニューデータが表示され」、
ウ.「既に入力していた」「筆圧aが「190≦a≦255」(最下層に割り当てられた筆圧閾値)」との判断が下されたときに、「最下層のメニューデータが、表示部13に表示される」
ことによりなされている点。

3.判断
上記相違点について検討すると、本願の請求項1に係る発明では、「現在の階層より上位の次の階層」への「移動」、及び「前記次の階層より上位の次の階層」への「移動」が、それぞれ「第2の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧」、及び「前記第2の荷重基準を満たしていない状態において前記第2の荷重基準よりも低い第1の荷重基準を満たす状態から満たさない状態へ変化する押圧」に基づいて行われているから、より上位の次の階層への移動は、「荷重基準」に対する押圧状態の「変化」に基づいて行われているといえる。
これに対し、引用発明では、「既に入力していた筆圧」、即ち「押圧力」の「大きさ」と、「最上層のトップ層、第2層目、及び最下層のメニュー」のそれぞれに割り当てられた筆圧閾値(本願発明の「荷重基準」に相当する。)とを順次に比較し、「既に入力していた筆圧」が「階層構造のどの階層に相当するか」(本願の請求項1に係る発明の用語で言い換えれば、どの「荷重基準」を満たしているか)を判定して、該当する「階層」の「メニュー」を選択して表示するものである。
よって、両者は、「階層」間の移動が、「荷重基準」に対する押圧状態の「変化」に基づくものである(本願の請求項1に係る発明)か、「既に入力していた筆圧」、即ち「押圧力」の「大きさ」が「階層構造のどの階層に相当するか」との判定に基づくものである(引用発明)か、という点で、着眼点が本質的に異なるものである。
また、本願の出願前(遡及日:平成21年2月3日)において、「階層」間の移動を、「荷重基準」に対する押圧状態の「変化」に基づくものとすることが、当業者にとって周知技術であったと認めるに足る根拠も見いだせない。

したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(請求項2に係る発明について)
本願の請求項2に係る発明は、本願の請求項1に係る「入力装置」の発明を、「入力装置の制御方法」として表現したものである。
よって、本願の請求項2に係る発明は、上記「(請求項1に係る発明について)」にて述べたのと同様の理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1?2に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-13 
出願番号 特願2011-236517(P2011-236517)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 山田 正文
和田 志郎
発明の名称 入力装置および入力装置の制御方法  
代理人 大倉 昭人  
代理人 杉村 憲司  

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