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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1285827
審判番号 不服2012-6663  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-12 
確定日 2014-03-12 
事件の表示 特願2009-226717「低減された電力消費状態においてコンピュータタスクを行う方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月27日出願公開、特開2010-118044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年9月30日(パリ条約による優先権主張2008年9月30日、米国)の出願であって、平成23年6月29日付けで拒絶理由通知がなされ、平成23年10月5日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成23年12月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年4月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、当審において、平成24年10月22日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、平成25年1月18日付けで、それに対する回答書が提出されたものである。

2.平成24年4月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の目的の適否について
平成24年4月12日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の目的が、特許法第17条の2第5項の規定に適合するか否かを検討する。

本件手続補正により、特許請求の範囲の記載は、平成23年10月5日付けの手続補正書に記載された、
「【請求項1】
動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化する段階と、
前記動作環境を抜けて、前記サービス環境に入る段階と、
前記動作環境を抜けると、前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第1のセットを、アクティブ状態から低電力消費状態へ切り替える段階と、
プロセッサと、プロセッサ以外の前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第2のセットとを、前記サービス環境でアクティブ状態に維持する段階と、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階と、
前記サービス環境タスクが完了すると前記サービス環境を抜ける段階と
を備え、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階は、
少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記プロセッサと、プロセッサ以外の少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第2のセットとを利用する段階を有する方法。
【請求項2】
前記第2のセットは、前記少なくとも1つの物理リソースとしてネットワークインタフェースデバイスおよび記憶デバイスを含み、
前記方法は、
前記ネットワークインタフェースデバイスを介して受信した命令に呼応して、前記サービス環境タスクの前記低電力消費状態での実行をスケジューリングする段階をさらに備え、
前記サービス環境タスクを実行する段階は、
前記スケジューリングに呼応して、前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、
前記サービス環境で前記サービス環境タスクとして、前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送を前記低電力消費状態で実行する段階を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動作環境からの要求に呼応して、前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う段階をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サービスタスクが進行中である場合、および、サービスタスクがスケジューリングされている場合の少なくとも一方の場合に、前記コンピュータシステムを低電力消費状態にする旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う段階をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てる段階と、
前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う前に、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てる段階と
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てる段階と、
前記サービス環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第2の物理リソースを前記サービス環境に割り当てる段階と、
前記第1の物理リソースへのアクセス要求を前記動作環境で処理する段階と、
前記第2の物理リソースへのアクセス要求を前記サービス環境で処理する段階と、
前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う前に、前記第1の物理リソースを前記サービス環境へ再度割り当てる段階と
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送は、
前記記憶デバイスからネットワークへの情報のアップロードおよび前記ネットワークから前記記憶デバイスへの情報のダウンロードの少なくとも一方を含む請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第1のセットを低電力消費状態にする段階は、
1以上のプロセッサを前記低電力消費状態にする段階を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のセットは、前記物理リソースとして、ディスプレイまたはモニタ、プリンタデバイス、オーディオスピーカ、および取り外し可能なデバイスを含む請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
プロセッサと、
複数の物理リソースと、
前記プロセッサおよび前記複数の物理リソースとの間に連結された通信インフラストラクチャと、
コンピュータプログラムロジックと
を備え、
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記プロセッサに、動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化させる仮想マシン管理ロジックと、
前記プロセッサに、1以上の前記物理リソースから形成される第1のセットを低電力消費状態にさせる電力管理ロジックと、
前記電力管理ロジックを呼び出す場合に、前記プロセッサに、プロセッサ以外の1以上の前記物理リソースから形成される第2のセットに関して前記サービス環境でサービスタスクを行わせるサービスタスクロジックと
を含むシステム。
【請求項11】
前記第2のセットは、前記物理リソースとしてネットワークインタフェースデバイスおよび記憶デバイスを含み、
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記プロセッサに、前記ネットワークインタフェースデバイスを介して命令を受信させ、前記プロセッサに、前記命令に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す時間をスケジューリングさせるロジックを含み、
前記サービスタスクロジックは、
前記スケジューリングに呼応して、前記プロセッサに、前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記サービス環境で前記サービスタスクとして、前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送を前記低電力消費状態で実行させるロジックを含む
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記サービスタスクを低電力消費状態で行わせる旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記プロセッサに、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出させるロジックをさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記コンピュータプログラムロジックは、
サービスタスクが進行中である場合、および、サービスタスクがスケジューリングされている場合の少なくとも一方の場合に、前記コンピュータシステムを低電力消費状態にする旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータプログラムロジックは、
スケジュールに呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記動作環境が初期化されると、前記プロセッサに、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場合に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
をさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記仮想マシン管理ロジックは、
前記プロセッサに、前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせ、前記サービス環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第2の物理リソースを前記サービス環境に割り当てさせるロジックと、
前記プロセッサに、前記動作環境および前記サービス環境の間を切り替えさせ、前記動作環境で前記第1の物理リソースへのアクセス要求を処理させ、前記サービス環境で前記第2の物理リソースへのアクセス要求を処理させるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場合に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
を含む請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記サービスタスクロジックは、
前記プロセッサに、前記記憶デバイスからネットワークへのアップロードおよび前記ネットワークから前記記憶デバイスへのダウンロードの少なくとも一方を行わせるロジックをさらに含む請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記電力管理ロジックは、
1以上の他のプロセッサを低電力消費状態に入らせるロジックを含む請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のセットは、前記物理リソースとして、ディスプレイまたはモニタ、プリンタデバイス、オーディオスピーカ、および取り外し可能なデバイスを含む請求項10から請求項18のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項20】
プロセッサに、動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化させる仮想マシン管理ロジックと、
前記プロセッサに、1以上の前記物理リソースから形成される第1のセットを低電力消費状態にさせる電力管理ロジックと、
前記電力管理ロジックを呼び出す場台に、前記プロセッサに、プロセッサ以外の1以上の前記物理リソースから形成される第2のセットに関して前記サービス環境でサービスタスクを行わせるサービスタスクロジックと
を含むコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記第2のセットは、前記物理リソースとしてネットワークインタフェースデバイスおよび記憶デバイスを含み、
前記コンピュータプログラムは、
前記プロセッサに、前記ネットワークインタフェースデバイスを介して命令を受信させ、前記プロセッサに、前記命令に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す時間をスケジューリングさせるロジックを含み、
前記サービスタスクロジックは、
前記スケジューリングに呼応して、前記プロセッサに、前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記サービス環境で前記サービスタスクとして、前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送を前記低電力消費状態で実行させるロジックを含む
請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
前記サービスタスクを低電力消費状態で行わせる旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記プロセッサに、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出させるロジックをさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】
サービスタスクが進行中である場合、および、サービスタスクがスケジューリングされている場合の少なくとも一方の場合に、前記コンピュータシステムを低電力消費状態にする旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
スケジュールに呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
前記動作環境が初期化されると、前記プロセッサに、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場台に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
をさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記仮想マシン管理ロジックは、
前記プロセッサに、前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせ、前記サービス環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第2の物理リソースを前記サービス環境に割り当てさせるロジックと、
前記プロセッサに、前記動作環境および前記サービス環境の間を切り替えさせ、前記動作環境で前記第1の物理リソースへのアクセス要求を処理させ、前記サービス環境で前記第2の物理リソースへのアクセス要求を処理させるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場台に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
を含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
前記サービスタスクロジックは、
前記プロセッサに、前記記憶デバイスからネットワークへのアップロードおよび前記ネットワークから前記記憶デバイスへのダウンロードの少なくとも一方を行わせるロジック
をさらに含む請求項21に記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
前記電力管理ロジックは、
1以上の他のプロセッサを低電力消費状態に入らせるロジックを含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項29】
前記第1のセットは、前記物理リソースとして、ディスプレイまたはモニタ、プリンタデバイス、オーディオスピーカ、および取り外し可能なデバイスを含む請求項20から請求項28のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。」(以下、これらの請求項を「補正前」の請求項という。)
から、
「【請求項1】
動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化する段階と、
前記動作環境を抜けて、前記サービス環境に入る段階と、
前記動作環境を抜けると、前記物理リソースの少なくとも1つから形成され、前記動作環境に割り当てられている第1のセットを、アクティブ状態から低電力消費状態へ切り替える段階と、
プロセッサと、前記動作環境から前記サービス環境に再度割り当てられ、プロセッサ以外の前記物理リソースで、かつ前記第1のセット以外の第1物理デバイスおよび前記サービス環境に割り当てられておりプロセッサ以外の前記物理リソースである第2物理デバイスを含む第2のセットとを、前記サービス環境でアクティブ状態に維持する段階と、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階と、
前記サービス環境タスクが完了すると前記サービス環境を抜ける段階と
を備え、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階は、
少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記プロセッサと、前記第2のセットとを利用する段階を有する方法。
【請求項2】
前記第2のセットは、前記第2物理デバイスとしてネットワークインタフェースデバイスおよび前記第1物理デバイスとして記憶デバイスを含み、
前記方法は、
前記ネットワークインタフェースデバイスを介して受信した命令に呼応して、前記サービス環境タスクの前記低電力消費状態での実行をスケジューリングする段階をさらに備え、
前記サービス環境タスクを実行する段階は、
前記スケジューリングに呼応して、前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、
前記サービス環境で前記サービス環境タスクとして、前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送を前記低電力消費状態で実行する段階を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動作環境からの要求に呼応して、前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う段階をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サービスタスクが進行中である場合、および、サービスタスクがスケジューリングされている場合の少なくとも一方の場合に、前記コンピュータシステムを低電力消費状態にする旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う段階をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てる段階と、
前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う前に、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てる段階と
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てる段階と、
前記サービス環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第2の物理リソースを前記サービス環境に割り当てる段階と、
前記第1の物理リソースへのアクセス要求を前記動作環境で処理する段階と、
前記第2の物理リソースへのアクセス要求を前記サービス環境で処理する段階と、
前記サービス環境タスクを前記低電力消費状態で行う前に、前記第1の物理リソースを前記サービス環境へ再度割り当てる段階と
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送は、
前記記憶デバイスからネットワークへの情報のアップロードおよび前記ネットワークから前記記憶デバイスへの情報のダウンロードの少なくとも一方を含む請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第1のセットを低電力消費状態にする段階は、
1以上のプロセッサを前記低電力消費状態にする段階を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のセットは、前記物理リソースとして、ディスプレイまたはモニタ、プリンタデバイス、オーディオスピーカ、および取り外し可能なデバイスを含む請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
プロセッサと、
複数の物理リソースと、
前記プロセッサおよび前記複数の物理リソースとの間に連結された通信インフラストラクチャと、
コンピュータプログラムロジックと
を備え、
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記プロセッサに、動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化させる仮想マシン管理ロジックと、
前記プロセッサに、1以上の前記物理リソースから形成され、前記動作環境に割り当てられている第1のセットを低電力消費状態にさせる電力管理ロジックと、
前記電力管理ロジックを呼び出す場合に、前記プロセッサに、前記動作環境から前記サービス環境に再度割り当てられ、プロセッサ以外の前記物理リソースで、かつ前記第1のセット以外の第1物理デバイスおよび前記サービス環境に割り当てられておりプロセッサ以外の前記物理リソースである第2物理デバイスを含む第2のセットに関して前記サービス環境でサービスタスクを行わせるサービスタスクロジックと
を含むシステム。
【請求項11】
前記第2のセットは、前記第2物理デバイスとしてネットワークインタフェースデバイスおよび前記第1物理デバイスとして記憶デバイスを含み、
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記プロセッサに、前記ネットワークインタフェースデバイスを介して命令を受信させ、前記プロセッサに、前記命令に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す時間をスケジューリングさせるロジックを含み、
前記サービスタスクロジックは、
前記スケジューリングに呼応して、前記プロセッサに、前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記サービス環境で前記サービスタスクとして、前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送を前記低電力消費状態で実行させるロジックを含む
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記サービスタスクを低電力消費状態で行わせる旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記プロセッサに、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出させるロジックをさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記コンピュータプログラムロジックは、
サービスタスクが進行中である場合、および、サービスタスクがスケジューリングされている場合の少なくとも一方の場合に、前記コンピュータシステムを低電力消費状態にする旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータプログラムロジックは、
スケジュールに呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記コンピュータプログラムロジックは、
前記動作環境が初期化されると、前記プロセッサに、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場合に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
をさらに含む請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記仮想マシン管理ロジックは、
前記プロセッサに、前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせ、前記サービス環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第2の物理リソースを前記サービス環境に割り当てさせるロジックと、
前記プロセッサに、前記動作環境および前記サービス環境の間を切り替えさせ、前記動作環境で前記第1の物理リソースへのアクセス要求を処理させ、前記サービス環境で前記第2の物理リソースへのアクセス要求を処理させるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場合に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
を含む請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記サービスタスクロジックは、
前記プロセッサに、前記記憶デバイスからネットワークへのアップロードおよび前記ネットワークから前記記憶デバイスへのダウンロードの少なくとも一方を行わせるロジックをさらに含む請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記電力管理ロジックは、
1以上の他のプロセッサを低電力消費状態に入らせるロジックを含む請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のセットは、前記物理リソースとして、ディスプレイまたはモニタ、プリンタデバイス、オーディオスピーカ、および取り外し可能なデバイスを含む請求項10から請求項18のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項20】
プロセッサに、動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化させる仮想マシン管理ロジックと、
前記プロセッサに、1以上の前記物理リソースから形成され、前記動作環境に割り当てられている第1のセットを低電力消費状態にさせる電力管理ロジックと、
前記電力管理ロジックを呼び出す場台に、前記プロセッサに、前記動作環境から前記サービス環境に再度割り当てられ、プロセッサ以外の前記物理リソースで、かつ前記第1のセット以外の第1物理デバイスおよび前記サービス環境に割り当てられておりプロセッサ以外の前記物理リソースである第2物理デバイスを含む第2のセットに関して前記サービス環境でサービスタスクを行わせるサービスタスクロジックと
を含むコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記第2のセットは、前記第2物理デバイスとしてネットワークインタフェースデバイスおよび前記第1物理デバイスとして記憶デバイスを含み、
前記コンピュータプログラムは、
前記プロセッサに、前記ネットワークインタフェースデバイスを介して命令を受信させ、前記プロセッサに、前記命令に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す時間をスケジューリングさせるロジックを含み、
前記サービスタスクロジックは、
前記スケジューリングに呼応して、前記プロセッサに、前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記サービス環境で前記サービスタスクとして、前記ネットワークインタフェースデバイスと前記記憶デバイスとの間での情報の転送を前記低電力消費状態で実行させるロジックを含む
請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
前記サービスタスクを低電力消費状態で行わせる旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記プロセッサに、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出させるロジックをさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】
サービスタスクが進行中である場合、および、サービスタスクがスケジューリングされている場合の少なくとも一方の場合に、前記コンピュータシステムを低電力消費状態にする旨の前記動作環境からの要求に呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
スケジュールに呼応して、前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを前記プロセッサに呼び出させるロジックをさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
前記動作環境が初期化されると、前記プロセッサに、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場台に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
をさらに含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記仮想マシン管理ロジックは、
前記プロセッサに、前記動作環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第1の物理リソースを前記動作環境に割り当てさせ、前記サービス環境が初期化されると、前記物理リソースのうち第2の物理リソースを前記サービス環境に割り当てさせるロジックと、
前記プロセッサに、前記動作環境および前記サービス環境の間を切り替えさせ、前記動作環境で前記第1の物理リソースへのアクセス要求を処理させ、前記サービス環境で前記第2の物理リソースへのアクセス要求を処理させるロジックと、
前記電力管理ロジックおよび前記サービスタスクロジックを呼び出す場台に、前記プロセッサに、前記第1の物理リソースを前記サービス環境に再度割り当てさせるロジックと
を含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
前記サービスタスクロジックは、
前記プロセッサに、前記記憶デバイスからネットワークへのアップロードおよび前記ネットワークから前記記憶デバイスへのダウンロードの少なくとも一方を行わせるロジックをさらに含む請求項21に記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
前記電力管理ロジックは、
1以上の他のプロセッサを低電力消費状態に入らせるロジックを含む請求項20に記載のコンピュータプログラム。
【請求項29】
前記第1のセットは、前記物理リソースとして、ディスプレイまたはモニタ、プリンタデバイス、オーディオスピーカ、および取り外し可能なデバイスを含む請求項20から請求項28のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。」(以下、これらの請求項を「補正後」の請求項という。)
に補正された。

この補正後の請求項1は、補正前の請求項1の「第1のセット」及び「第2のセット」を各々「前記動作環境に割り当てられている第1のセット」及び「前記動作環境から前記サービス環境に再度割り当てられ、プロセッサ以外の前記物理リソースで、かつ前記第1のセット以外の第1物理デバイスおよび前記サービス環境に割り当てられておりプロセッサ以外の前記物理リソースである第2物理デバイスを含む第2のセット」に限定するものであり、限定的減縮を目的とするものである。請求項10及び20についても同様である。
また、この補正後の請求項2は、上記請求項1に対する限定に伴ったものであると認められる。請求項11及び21についても同様である。
そこで、補正後の請求項1が独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(2)独立特許要件について
(2-1)本願補正発明
本願の請求項1に係る発明は、平成24年4月12日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。(以下、「本願補正発明」という。)

「 動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化する段階と、
前記動作環境を抜けて、前記サービス環境に入る段階と、
前記動作環境を抜けると、前記物理リソースの少なくとも1つから形成され、前記動作環境に割り当てられている第1のセットを、アクティブ状態から低電力消費状態へ切り替える段階と、
プロセッサと、前記動作環境から前記サービス環境に再度割り当てられ、プロセッサ以外の前記物理リソースで、かつ前記第1のセット以外の第1物理デバイスおよび前記サービス環境に割り当てられておりプロセッサ以外の前記物理リソースである第2物理デバイスを含む第2のセットとを、前記サービス環境でアクティブ状態に維持する段階と、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階と、
前記サービス環境タスクが完了すると前記サービス環境を抜ける段階と
を備え、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階は、
少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記プロセッサと、前記第2のセットとを利用する段階を有する方法。」


(2-2)引用文献等
(引用文献1)
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2007-328782号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与したものである。以下、同様。)

A.「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例による、カーネル間でカーネル・サービスを共用するための例示的な方法、装置、およびコンピュータ・プログラムを、添付図面を参照して説明する。本発明によるカーネル間でのカーネル・サービスの共用は、自動コンピューティング・マシン、即ち、1つまたは複数のコンピュータ上で実施される。図1は、本発明の実施例による、カーネル間でカーネル・サービスを共用する場合に有用な例示的コンピュータ152を含む自動コンピューティング・マシンのブロック図を示す。図1のコンピュータ152は、幾つかの物理プロセッサ156およびランダム・アクセス・メモリ(RAM)168を含む。RAM168は、システム・バス160を介して物理プロセッサ156およびこのコンピュータの他のコンポーネントに接続される。
【0011】
RAM168には、アプリケーション・プログラム108、オペレーティング・システム110、および論理プロセッサ106を含む論理パーティション114、並びに、2つまたはそれ以上のカーネル102、104、仮想プロセッサ122、およびカーネル共用インターフェース124を含むパーティション・マネージャ112が記憶される。論理パーティション(LPAR)114は、単一のコンピュータにおけるコンピュータ資源の分散が、あたかもそのコンピュータが2つまたはそれ以上の独立したコンピュータであるかのようにコンピュータ機能を整えることを可能にするデータ構造およびサービスのセットである。各論理パーティションは、それがプロセッサ時間、メモリ、オペレーティング・システム等を含む独立したコンピュータであるかのように動作するために必要なすべての資源を割り当てられる。論理パーティションおよび論理パーティションを通してアプリケーションにとって使用可能にされる資源は、一括して「仮想マシン」と呼ばれることもある。説明の便宜上、図1のシステムは、1つの論理パーティションしか含まないが、本発明の実施例による、カーネル間でのカーネル・サービスを共用するシステムは任意の数の論理パーティションを支援することができる。
【0012】
アプリケーション・プログラム108はユーザ・レベルのコンピュータ・プログラム・コードのモジュールである。アプリケーション・プログラムは、オペレーティング・システムのカーネルを介するコールによりコンピュータ資源へのアクセスを得なければならない非特権コードである。
【0013】
オペレーティング・システム110は、スレッドをスケジュールするシステム・ソフトウェア層であり、メモリ・アクセス、入出力資源へのアクセス等を含む、システム資源をスレッドにとって使用可能にするための機能を提供する。オペレーティング・システムは、コンピュータ資源にアクセスするための割り振りおよび承認も制御する。オペレーティング・システムは、キーボードからの入力を認識すること、出力をディスプレイ・スクリーンに送ること、ディスク・ドライブ上のファイルおよびディレクトリを追跡すること、並びにディスク・ドライブおよびプリンタのような周辺装置を制御することのような低レベルの基本的タスクを実行する。オペレーティング・システムは、セキュリティの責任も負い、未承認のユーザがシステムをアクセスしないことおよびスレッドがアクセスを承認されている資源だけをアクセスすることを保証する。多くのオペレーティング・システムの機能は、カーネルによって、この例では、一次カーネル102または共用カーネル104によって具現化される。本発明の実施例による、カーネル間でカーネル・サービスを共用するために有用なオペレーティング・システムはマルチスレッディング・オペレーティング・システムであり、その例は、UNIX(登録商標)、Linux(商標)、Windows (登録商標)XP、AIX(商標)、IBM社のi5/OS(商標)、および当業者が思いつくようなその他のものを含む。
【0014】
論理プロセッサ106は、論理パーティションにおける実行のためにスレッドをスケジュールするためのオペレーティング・システムの構造体である。即ち、オペレーティング・システム110は、物理プロセッサまたは仮想プロセッサにおける実行のためにスレッドをスケジュールするのではなく、論理プロセッサ106における実行のためにスレッドをスケジュールする。論理プロセッサにおいてスレッドをスケジュールすることは使いやすい構造体および処理を提供し、その場合、スレッドは、スレッドの観点から、論理パーティション全体の資源すべてを自由に有しているように見える。仮想プロセッサは、物理プロセッサの一部分を割り振られる。しかし、論理プロセッサは、マシンにおける他のすべての実行のように、それが細かいタイム・スライスで物理的に稼動しているという事実にもかかわらず、論理的には1つの完全なプロセッサである。従って、LPARにおける論理プロセッサ上で実行中のスレッドは、そのスレッドから見ると、1つの完全に独立したコンピュータのすべての資源を有しているように見える。即ち、論理プロセッサは、1つのパーティションにおいて稼動しているオペレーティング・システムにおけるディスパッチャがスレッドをディスパッチする対象であり、仮想プロセッサはパーティション・マネージャによってディスパッチされるものである。STモードで動作しているLPARでは、論理プロセッサと仮想プロセッサとの間の対応関係は1対1であり、各仮想プロセッサに対して1つの論理プロセッサが対応する。SMTモードで動作しているLPARでは、論理プロセッサと仮想プロセッサとの間の対応関係はN対1であり、ここでNは1つの仮想プロセッサにおいて支援される論理プロセッサの数である。即ち、各仮想プロセッサに対してN個の論理プロセッサが対応する。
・・・(中略)・・・
【0017】
論理パーティションにおけるオペレーティング・システムは、特定のアプリケーションまたはアプリケーションのセットを実行するためにしばしば使用されるので、パーティション・マネージャは、全体的なハードウェア・コストを減らすために単一のコンピュータにおいて複数のオペレーティング・システムおよびそれらのアプリケーションを実行することを可能にする。製造および試験システムは同じハードウェアにおいて同時に稼動することが可能である。更に、パーティション・マネージャが複数の論理パーティションを支援することによって、Windows (登録商標)およびLinux(商標)のような種々のオペレーティング・システムが同じ基本コンピュータ・ハードウェアを共用することも可能である。パーティション・マネージャは、「ハイパーバイザ」、「仮想化マネージャ」、または「仮想マシン・モニタ」とも呼ばれることがある一種のソフトウェアである。
【0018】
図1の例では、パーティション・マネージャ112はカーネル102、104を含む。カーネルはオペレーティング・システムのコアである。カーネルは、「システム・エグゼクティブ」または「システム・モニタ」とも呼ばれる特権モジュールである。カーネルは、アプリケーションおよび他のオペレーティング・システム・コンポーネントにおける実行スレッドのためにコンピュータ・システム・ハードウェアへの安全なアクセス(メモリ、入出力資源等へのアクセスを含む)を行う責任を負ったソフトウェアである。カーネルは、アプリケーション・プログラムおよびオペレーティング・システムのプロセスを形成する実行スレッドもスケジュールする。カーネルは、一般に、メモリ・ロック、信号、およびセマフォのようなプロセス間通信および同期化のためのサービスも提供する。カーネルは、一般に、潜在的な複雑さをアプリケーションからおよびオペレーティング・システムの他のコンポーネントから隠蔽するためにハードウェアの抽象化(或るタイプのすべての装置にとって普遍的な命令のセット)も提供する。ハードウェア抽象化コンポーネントは、ハードウェア装置の製造仕様に特有の機能を提供するためのソフトウェア・ドライバに依存する。要するに、カーネルは、下記のようなカーネル・サービスを提供する。
・ システム・ハードウェアへのアクセスの制御および調停。
・ プロセス、スレッド、ファイル、デバイス等のような基本抽象化の実装および支援。
・ メモリ、プロセッサ、ディスク、ファイル記述、プロセス記述、スレッド記述等のようなシステム資源の割り振り、およびスケジューリング。
・ システム資源のセキュリティおよび保護の強化。
・ システム・コールを介したサービスを求めるユーザ要求およびアプリケーション要求への応答。」


(ア)上記A1.の段落【0016】及び【0017】の記載より、引用文献1には、複数の論理パーティションを含む環境に関して単一のコンピュータにおけるコンピュータ資源を、あたかもそのコンピュータが2つまたはそれ以上の独立したコンピュータであるかのようにコンピュータ機能を整えることが記載されているといえる。

(イ)上記A1.の段落【0010】の記載より、引用文献1には実質的に、物理プロセッサ及びコンピュータの他のコンポーネントが動作することが記載されているといえる。

上記(ア)?(イ)より、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献1記載の発明」)が記載されているといえる。

「 複数の論理パーティションを含む環境に関して単一のコンピュータにおけるコンピュータ資源を、あたかもそのコンピュータが2つまたはそれ以上の独立したコンピュータであるかのようにコンピュータ機能を整える段階
を有する方法において、
物理プロセッサ及びコンピュータの他のコンポーネントが動作する方法。」


(引用文献2)
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2005-209198号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与したものである。以下、同様。)

B1.「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、改善されたデータ処理システムに関し、詳細には、データを処理する方法およびシステムに関する。より詳細には、本発明は、論理区画化データ処理システムでの電力消費を削減する方法、装置およびコンピュータ命令を提供する。」

B2.「【0010】
ますます大規模な対称型多重プロセッサ・データ処理システム、例えば、インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション(International Business Machines Corporation)から市販されているIBM eServer P690、ヒューレットパッカード・カンパニー(Hewlett-PackardCompany)から市販されているDHP9000スーパードーム・エンタープライズ・サーバ(DHP9000 Superdome EnterpriseServer)、サン・マクロシステムズ・インク(Sun Microsystems, Inc.)から市販されているSunfire 15Kサーバなどが、しばしば、区画に分割され、論理区画化(LPAR)データ処理システムとして使用されるようになっている。データ処理システム内の論理区画化機能は、単一のオペレーティング・システムの複数のコピーまたは複数の異種混合のオペレーティング・システムを、単一のデータ処理システム・プラットフォーム上で同時に走らせることを可能にする。本発明は、この種のLPARデータ処理システムで実装され、特定のインターフェイスがオペレーティング・システムから見えるようにすることを必要とせずに電力使用を削減することができる。
【0011】
オペレーティング・システム・イメージがそこで実行される区画には、プラットフォーム・リソースの非オーバーラップ部分が割り当てられる。プラットフォームの割り振り可能なリソースには、それぞれの割り込み管理区域、システム・メモリの領域、および入出力(I/O)アダプタ・バス・スロットと共に、1つまたは複数のアーキテクチャ上互いに異なるプロセッサが含まれる。区画のリソースは、プラットフォームのファームウェアによってオペレーティング・システム・イメージに対して表される。
【0012】
プラットフォーム内で実行されるそれぞれ別個のオペレーティング・システムまたはオ
ペレーティング・システムのイメージは、1つの論理区画でのソフトウェア・エラーがその他の区画のいずれの正しい動作にも影響を及ぼさないように相互に保護される。この保護は、各オペレーティング・システム・イメージによって直接管理される互いに独立のプラットフォーム・リソースのセットを割り振り、様々なイメージが、そのイメージに割り振られていないどんなリソースも制御できないことを保証するための機構を提供することにより実現される。さらに、あるオペレーティング・システムに割り振られたリソースの制御でのソフトウェア・エラーが、他のどんなイメージのリソースにも影響を及ぼさないようにする。したがって、オペレーティング・システムのそれぞれのイメージ、またはそれぞれの異なるオペレーティング・システムが、プラットフォーム内の割り振り可能なリソースの別個のセットを直接に制御する。論理区画化データ処理システム中のハード・リソースに関しては、これらのリソースは様々な区画間で相互に独立に共用される。これらのリソースには、例えば、入出力(I/O)アダプタ、メモリDIMM、不揮発性ランダム・アクセス・メモリ(NVRAM)、およびハード・ディスク・ドライブなどが含まれ得る。LPARデータ処理システム内の各区画は、そのデータ処理システム全体の電源オンオフを必要とせずに何度も繰り返し起動され、停止され得る。
【0013】
本発明は、LPARデータ処理システムなど、複数の区画を管理するソフトウェアを含む多重プロセッサ・システムでの電力消費を管理する方法、装置、およびコンピュータ命令を提供する。LPARデータ処理システム内の選択されたプロセッサの電力使用を削減するために、各区画を管理するのに使用されるソフトウェア内に呼出しが実装され得る。説明のための例では、複数の区画を管理するソフトウェアが、プロセッサがある期間シードされ(ceded)、あるいは不要とされるという指示を受け取ると、プロセッサの電力使用が削減される。この指示は、オペレーティング・システムから受け取られた呼出しまたはメッセージにより識別され得る。
【0014】
次に図を参照し、具体的には図1を参照すると、本発明が実装され得るデータ処理システムの構成図が示されている。データ処理システム100は、システム・バス106に接続された複数のプロセッサ101、102、103、104を含む対称型多重プロセッサ(SMP)システムとすることができる。例えば、データ処理システム100は、ネットワーク内でサーバとして実装された、ニューヨーク州アーモンク(Armonk, New York)にあるインターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの製品であるIBM eServerとすることができる。あるいは、単一プロセッサ・システムを用いることもできる。システム・バス106には、メモリ制御装置/キャッシュ108も接続され、複数のローカル・メモリ160?163へのインターフェイスを提供する。入出力バス・ブリッジ110はシステム・バス106に接続され、入出力バス112へのインターフェイスを提供する。メモリ制御装置/キャッシュ108および入出力バス・ブリッジ110は、図示のように統合され得る。
【0015】
データ処理システム100は、論理区画化(LPAR)データ処理システムである。したがって、データ処理システム100は、同時に実行される複数の異種混合オペレーティング・システム(または単一のオペレーティング・システムの複数のインスタンス)を含み得る。これら複数のオペレーティング・システムのそれぞれは、その内部で実行される任意の数のソフトウェア・プログラムを含み得る。データ処理システム100は、異なるPCI入出力アダプタ120?121、128?129、136、グラフィックス・アダプタ148、およびハード・ディスク・アダプタ149が異なる論理区画に割り当てられ得るように、論理的に分割される。この場合、グラフィックス・アダプタ148は表示装置(図示せず)のための接続を提供し、ハード・ディスク・アダプタ149はハード・ディスク150を制御するための接続を提供する。
【0016】
そこで、例えば、データ処理システム100が3つの論理区画P1、P2、P3に分けられると想定する。PCI入出力アダプタ120?121、128?129、136のそれぞれ、グラフィックス・アダプタ148、ハード・ディスク・アダプタ149、ホスト・プロセッサ101?104のそれぞれ、およびローカル・メモリ160?163からなるメモリが、それら3つの区画のそれぞれに割り当てられる。これらの例では、メモリ160?163はデュアル・インライン・メモリ・モジュール(DIMM)の形をとり得る。DIMMは、通常、各区画にDIMMベースごとには割り当てられない。そうではなく、1区画はプラットフォームから見たメモリ全体の一部分を取得する。例えば、プロセッサ101、ローカル・メモリ160?163からなるメモリの一部分、および入出力アダプタ120、128、129が論理区画P1に割り当てられ、プロセッサ102?103、ローカル・メモリ160?163からなるメモリの一部分、およびPCI入出力アダプタ121、136が区画P2に割り当てられ、プロセッサ104、ローカル・メモリ160?163からのメモリの一部分、グラフィックス・アダプタ148およびハード・ディスク・アダプタ149が論理区画P3に割り当てられる。」

B3.「【0032】
これらの説明のための例では、単一の区画だけを使用する。本発明の機構は、オペレーティング・システム202から区画管理ファームウェア210に対して行われた呼出しに応答してプロセッサの電力消費を管理する。オペレーティング・システム202は、論理プロセッサがある期間不要とされるときに、区画管理ファームウェア210にメッセージまたは呼出しを送る。これらの呼出しは、通常、論理プロセッサの使用を要求またはシード(cede)するための論理区画化プラットフォームでサブプロセッサ区画化と共に使用されるものである。サブプロセッサ区画化を用いると、区画管理ファームウェア210は、異なる区画のために個々のプロセッサの割り振りまたは使用を制御することができる。この種の区画化を用いると、1つのプロセッサを複数の区画に割り振ることができる。換言すると、この種の構成は、システム中の物理プロセッサより多数の区画の実装を可能にする。
【0033】
本発明の機構は、この呼出しまたはメッセージング・システムを使用して、区画203で実行中のプログラムに対して透過的な方式で電力消費および熱発生を低減させる。プロセッサが不要とされる期間そのプロセッサを別の区画に使用させるのではなく、そのプロセッサが省電力モードに設定される。本発明の機構は、いかなる特定の種類の省電力モードを必要とはせず、どんな種類の省電力機構でも使用することができる。
【0034】
具体的には、オペレーティング・システム202が区画管理ファームウェア210へのアイドル呼出しを生成することができる。この呼出しは、論理プロセッサに関連付けられた物理プロセッサの使用権が譲渡され、または不要とされる時間量を含むメッセージである。区画管理ファームウェア210は、オペレーティング・システム202からアイドル呼出しを受け取ったことに応答して物理プロセッサを省電力モードに設定し得る。この省電力モードには、例えば、クロック速度周波数を低減することや、プロセッサをスリープ・モードに設定することなどが含まれ得る。プロセッサがスリープ・モードにあるときには、そのプロセッサの状態だけが急速回復のために動的ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)の状態に記憶され、そのプロセッサ全体が完全に停止される。このモードでは、外部プロセッサ・バス・クロックが停止される。
【0035】
このようにして、本発明の機構は、プロセッサがある期間不要とされたときにそれらのプロセッサを省電力モードに設定することにより、多重プロセッサ・データ処理システムでの電力使用の削減を可能にする。本発明の機構は、区画化をサポートするどんなオペレーティング・システムを用いても実装され得る。というのは、この機構が電力使用を削減するためのどんなオペレーティング・システム・サポートからも独立だからである。さらに、本発明の機構は、性能に最小限の影響しか与えない。というのは、プロセッサは、アイドル時間が存在するときにだけ省電力モードに設定されるからである。」

B4.「【0036】
次に図3を見ると、本発明の好ましい実施形態による論理区画化データ処理システムでプロセッサを管理するプロセスの流れ図が示されている。図3に示すプロセスは、図2の区画管理ファームウェアなどの制御プロセスに実装され得る。これらの説明のための例では、このプロセスが、図2の論理区画化プラットフォーム200など、単一の区画だけを有する論理区画化データ処理システムに比較されている。もちろん、この機構は、複数の区画を有するシステムにも適用され得る。
【0037】
プロセスは、論理プロセッサをシード(cede)するよう求める呼出しを受け取ることから開始する(ステップ300)。この呼出しはオペレーティング・システムから受け取られ、通常、オペレーティング・システムが論理プロセッサを必要としないときに生成される。この呼出しは、アイドル呼出しとも呼ばれ、シードされるプロセッサの識別、ならびにそのプロセッサがシードされる時間量を含む。これらの例では、プロセッサのマッピングは、1論理プロセッサ対1物理プロセッサである。その結果、オペレーティング・システムから呼出しが受け取られたとき、論理プロセッサに関連付けられた物理プロセッサが省電力モードに設定され得ることが明らかである。
【0038】
次に、プロセッサが不要とされる待機時間が閾値より小さいかどうかが判断される(ステップ302)。この閾値は、プロセッサを省電力モードに設定し、またはプロセッサを通常動作モードに復帰させるあるいはその両方に必要とされる時間に基づくものとし得る。待機時間が閾値以上である場合には、その論理プロセッサにマップされた物理プロセッサが省電力モードに設定される(ステップ304)。この省電力モードは様々な形をとることができ、例えば、プロセッサをスリープ・モードに設定したり、クロック速度を低減したり、あるいは他の任意の電力削減方法または機構を用いることもできる。省電力モードにある間にそのプロセッサがアクセスされないように他のタスクを実行することもできる。例えば、そのプロセッサでの割り込みを無効にすることができる。
【0039】
その後、プロセッサはイベントの発生を待つ(ステップ306)。このイベントは、プロセッサがオペレーティング・システムによって不要とされ、またはその使用権が譲渡される期間の満了とすることができる。また、このイベントは、例えば、オペレーティング・システムによる論理プロセッサを求める指示または要求とすることもできる。イベントを受け取った後で、後処理が実行され(ステップ308)、次いで、制御が呼出し元に戻る。後処理には、物理プロセッサを以前の動作モードに戻すこと、ならびにプロセッサに作業またはタスクを実行させるのに必要とされる任意のタスクを実行することが含まれる。ステップ302に戻ると、待機閾値条件が満たされなかった場合には、プロセスは、プロセッサを省電力モードに設定せずに、やはり制御を呼出し元に戻す。」


(参考文献)
特開2006-113767号公報(以下、「参考文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与したものである。以下、同様。)

C1.「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、LPAR機能を備えた仮想計算機システムは、大型の汎用計算機にのみ利用されてきたので、消費電力量の削減について考慮されることはなく、物理計算機上で複数のオペレーティングシステムを実行するマルチOS環境では、そのうちのいずれかのOSがアイドル状態であっても、サスペンドやレジュームを行うことはできなかった。
【0007】
しかしながら、LPAR機能を備えた仮想計算機システムを、一般ユーザが利用可能な、例えば、パーソナルコンピュータなど、一般ユーザに広く利用される小型の情報処理装置や、ホームネットワークにより接続されている小規模の計算機システムにおいて利用しようとした場合、消費電力量の削減を考慮する必要が生じる。
【0008】
仮想計算機システムにおいては、いずれかのオペレーティングシステムが使用されない場合でも、他のオペレーティングシステムが動作を継続している場合があり、非仮想計算機システム(1つのOSのみが実行可能な計算機システム)と同様の消費電力削減方法は適用できない。例えば、ユーザが第1のOSをユーザが長時間操作しない状態であっても、ネットワークサービスを実行する第2のOSはサービスを提供し続けなくてはならないような場合、ネットワークサービスに関する部分の動作停止や電源切断は不可能であるため、システムの動作を停止することはできない。したがって、従来の非仮想計算機システムと同様に、あるOSがアイドル状態であっても、従来における場合と同様にして、装置の電源供給を切断して消費電力量を削減することはできない。このため、第1のOSがユーザから長時間操作されていないにもかかわらず、不要な電力が消費されてしまう。
【0009】
VMware(商標)やVirtualPC(商標)など近年広まりつつあるx86プロセッサ上で動作する仮想計算機システムでは、確かに、サスペンドやハイバネーション機能が提供されているが、これらはシステム全体の停止あるいは電源断を行うものであって、ユーザにより使用されていない部分が消費する電力を選択的に削減することができるようにするものではない。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、論理分割機能を備えた計算機システムにおいて、消費電力を削減することができるようにするものである。」

C2.「【0031】
請求項1に記載の情報処理システムは、複数の演算手段(例えば、図1のCPU11)を有する情報処理システム(例えば、図1の計算機システム1)であって、オペレーティングシステム(例えば、図5のゲストOS52)を実行するオペレーティングシステム実行手段(例えば、図1のCPU11-1乃至CPU11-3)と、オペレーティングシステムの動作を管理する管理アプリケーション(例えば、図5の管理OS51)を実行する管理アプリケーション実行手段(例えば、図2のCPU11-4)とを備え、オペレーティングシステム実行手段、および、管理アプリケーション実行手段は、複数の演算手段のうちのいずれかに対応し、オペレーティングシステム実行手段は、複数のオペレーティングシステムを実行可能であり、オペレーティングシステム実行手段により実行されている複数のオペレーティングシステムのうちの少なくとも1つは、管理アプリケーションに対して、状態遷移要求(例えば、動作状態を遷移させるための状態遷移要求)を通知する機能(例えば、図5のACPI制御部83により実行される機能)を備え、管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、複数のオペレーティングシステムがオペレーティングシステム実行手段により実行されている状態で、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求の通知を受けた場合、第1のオペレーティングシステムによって利用されている物理資源(例えば、図1のCPU11、メモリモジュール14、入出力モジュール18などのリソース)の動作状態を制御することを特徴とする。
【0032】
オペレーティングシステム実行手段および管理アプリケーション実行手段は、少なくともその一部が、同一の物理資源(例えば、図4のCPU11-4)に対応するものとすることができる。
【0033】
管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、第1のオペレーティングシステムによって利用されている物理資源への電源供給を制御する機能(例えば、図5の電源制御部66により実行される機能)を有するものとすることができる。
【0034】
管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションにおいて排他的に利用され、所定の情報を記録する記録手段(例えば、図1のメモリモジュール14のうち、管理OS51に割り当てられた領域)を更に備えるものとすることができ、管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、第1のオペレーティングシステムによって利用されている物理資源の実行状態、または、実行中の処理に関する情報を記録手段に記録させた後、物理資源への電源供給を制御する機能を有するものとすることができる。
【0035】
所定の情報を記録し、かつ、物理資源として第1のオペレーティングシステムに占有的に利用されていない記録手段(例えば、図1のメモリモジュール14のうち、状態遷移されるゲストOS52以外に割り当てられた領域を含むもの)を更に備えるものとすることができ、管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、物理資源の実行状態、または、実行中の処理に関する情報を記録手段に記録させた後、第1のオペレーティングシステムによって利用されている物理資源への電源供給を制御する機能を有するものとすることができる。
【0036】
管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、第1のオペレーティングシステムによって利用されている物理資源へ供給されるクロック周波数を制御する機能(例えば、図5のクロック供給制御部67により実行される機能)を有するものとすることができる。
【0037】
管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、複数のオペレーティングシステムがオペレーティングシステム実行手段により実行されている状態で、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、第1のオペレーティングシステムによって利用され、かつ、状態遷移要求を通知した第1のオペレーティングシステム以外のオペレーティングシステムにより利用されていない物理資源(例えば、図10を用いて説明した停止候補リストに登録されるリソース)の動作状態を制御することができる。
【0038】
管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、複数のオペレーティングシステムがオペレーティングシステム実行手段により実行されている状態で、いずれかのオペレーティングシステムにより占有されている物理資源を一覧するリスト(例えば、図10を用いて説明した停止候補リスト)を生成するリスト生成機能(例えば、図5の停止候補リスト作成部63により実行される機能)を備えることができ、複数のオペレーティングシステムがオペレーティングシステム実行手段により実行されている状態で、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、リスト生成機能により生成されたリストを参照し、第1のオペレーティングシステムによって利用され、かつ、状態遷移要求を通知した第1のオペレーティングシステム以外のオペレーティングシステムにより利用されていない物理資源の動作状態を制御することができる。
【0039】
管理アプリケーション実行手段により実行されている管理アプリケーションは、物理資源を論理的に分割して、異なる処理を実行させる論理分割機能を有することができ、論理分割機能によって分割された論理区間のそれぞれにおいて複数のオペレーティングシステムがオペレーティングシステム実行手段により実行されている状態で、論理区間ごとに利用されている物理資源を一覧するリスト(例えば、図6で説明した論理区画表)を生成するリスト生成機能(例えば、図5の論理区画表管理部62により実行される機能)を備えることができ、複数のオペレーティングシステムがオペレーティングシステム実行手段により実行されている状態で、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、リスト生成機能により生成されたリストを参照し、第1のオペレーティングシステムによって時分割で利用されるように割り当てられた期間のみ、物理資源の動作状態を制御することができる。」


(2-3)対比
本願補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用文献1記載の発明における「複数の論理パーティションを含む環境」と、本願補正発明における「動作環境」とは、「複数のタスクを実行する環境」という点で共通するものである。

(イ)引用文献1記載の発明における「単一のコンピュータにおけるコンピュータ資源を、あたかもそのコンピュータが2つまたはそれ以上の独立したコンピュータであるかのようにコンピュータ機能を整える」ことは、本願補正発明における「コンピュータシステムの物理リソースを仮想化する」ことに相当する。

(ウ)引用文献1記載の発明における「物理プロセッサ」は、本願補正発明における「プロセッサ」に相当する。

(エ)引用文献1記載の発明における「コンピュータの他のコンポーネント」と、本願補正発明における「第2のセット」とは、「プロセッサ以外の物理リソース」という点で共通するものである。また、引用文献1記載の発明における「動作する」は、本願補正発明における「アクティブ状態に維持する」ことに相当する。

上記(ア)?(エ)より、本願補正発明と引用文献1記載の発明とは、

「複数のタスクを実行する環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化する段階
を有する方法において、
プロセッサ及びコンピュータの他のコンポーネントをアクティブ状態に維持する方法。」

という点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)本願補正発明が、「サービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化する段階」及び「前記動作環境を抜けて、前記サービス環境に入る段階」を有しており、「前記動作環境を抜けると、前記物理リソースの少なくとも1つから形成され、前記動作環境に割り当てられている第1のセットを、アクティブ状態から低電力消費状態へ切り替える段階と、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階と、
前記サービス環境タスクが完了すると前記サービス環境を抜ける段階と
を備え」るのに対して、引用文献1記載の発明ではこれについて特に限定されていない点。

(相違点2)本願補正発明が、「プロセッサと、前記動作環境から前記サービス環境に再度割り当てられ、プロセッサ以外の前記物理リソースで、かつ前記第1のセット以外の第1物理デバイスおよび前記サービス環境に割り当てられておりプロセッサ以外の前記物理リソースである第2物理デバイスを含む第2のセットとを、前記サービス環境でアクティブ状態に維持」するのに対し、引用文献1記載の発明ではこれについて特に限定されていない点。

(相違点3)本願補正発明が、「前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階は、
少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記プロセッサと、前記第2のセットとを利用する」のに対して、引用文献1記載の発明ではこれについて特に限定されていない点。



(2-4)判断
上記各相違点について検討する。

相違点1、3について:
引用文献2には、論理区画化データ処理システムにおいて、ある区画(引用文献1記載の発明における、「論理パーティション」に相当する。)のオペレーティング・システムからアイドル呼出しを受け取ったことに応答して、この区画に割り振られた物理プロセッサ及び外部プロセッサ・バスを省電力モードに設定することが記載されている(上記B1、B2)。この場合、この区画が省電力モードに設定されることは、他の区画の動作モードに影響しないことから、上記ある区画が省電力モードに設定された状態で、他の区画のオペレーティング・システムが実行されることも実質的に記載されているといえる。さらに、引用文献2には、物理プロセッサを以前の動作モード(通常動作モード)に戻すことも記載されている(上記B3)。
そして、コンピュータにおいて電力消費を削減することは一般的な課題であることから、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の技術を適用して、ある論理パーティションの動作モードを、通常動作モードから省電力モードへと遷移させる段階、前記ある論理パーティションの動作モードが省電力モード 及び、物理プロセッサを通常動作モードに戻す段階を有するよう構成することは当業者が容易に想到し得ることである。その際、前記他の区画のオペレーティング・システムの実行がすべて終了した場合、すべてのプロセッサが不要となる、すなわち、システム全体がアイドルとなることから、そのような状態を設けるよう構成することは当業者が適宜になし得ることである。
また、引用文献2において、省電力モードで利用する区画のリソースは、通常動作モードの一部であることから、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の技術を適用する際に、省電力モードのための論理区画化を行うことは、当業者が当然考慮すべき事項である。
よって、相違点1、3は格別のものではない。

相違点2について:
参考文献には、LPAR機能を備えた仮想計算機システムにおいて、複数のオペレーティングシステムがオペレーティングシステム実行手段により実行されている状態で、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、第1のオペレーティングシステムによって利用され、かつ、状態遷移要求を通知した第1のオペレーティングシステム以外のオペレーティングシステムにより利用されていない物理資源(入出力モジュール18などのリソース)へ供給されるクロック周波数を制御することで動作状態を制御することが記載されており(上記C1、C2)、引用文献1記載の発明に参考文献記載の技術を適用して、第1のオペレーティングシステムから状態遷移要求を受けた場合、第1のオペレーティングシステムによって利用され、かつ、状態遷移要求を通知した第1のオペレーティングシステム以外のオペレーティングシステムにより利用されていない物理資源(入出力モジュール18などのリソース)へ供給されるクロック周波数を制御するよう構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、相違点2は格別のものではない。


(本願補正発明の作用効果について)
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び参考文献記載の技術から当業者が容易に予測できるものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び参考文献記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

(2-5)むすび
上記(1)、(2)で検討したとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成24年4月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし29に係る発明は、平成23年10月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成23年10月5日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「動作環境およびサービス環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化す
る段階と、
前記動作環境を抜けて、前記サービス環境に入る段階と、
前記動作環境を抜けると、前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第1のセットを、アクティブ状態から低電力消費状態へ切り替える段階と、
プロセッサと、プロセッサ以外の前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第2のセットとを、前記サービス環境でアクティブ状態に維持する段階と、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階と、
前記サービス環境タスクが完了すると前記サービス環境を抜ける段階と
を備え、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階は、
少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記プロセッサと、プロセッサ以外の少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第2のセットとを利用する段階を有する方法。」

(2)引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献とその記載事項は、上記2.(2)(2-2)に示したとおりである。

(3)対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用文献1記載の発明における「複数の論理パーティションを含む環境」と、本願発明における「動作環境」とは、「複数のタスクを実行する環境」という点で共通するものである。

(イ)引用文献1記載の発明における「単一のコンピュータにおけるコンピュータ資源を、あたかもそのコンピュータが2つまたはそれ以上の独立したコンピュータであるかのようにコンピュータ機能を整える」ことは、本願発明における「コンピュータシステムの物理リソースを仮想化する」ことに相当する。

(ウ)引用文献1記載の発明における「物理プロセッサ」は、本願発明における「プロセッサ」に相当する。

(エ)引用文献1記載の発明における「コンピュータの他のコンポーネント」と、本願発明における「第2のセット」とは、「プロセッサ以外の物理リソース」という点で共通するものである。また、引用文献1記載の発明における「動作する」は、本願発明における「アクティブ状態に維持する」ことに相当する。

上記(ア)?(エ)より、本願発明と引用文献1記載の発明とは、

「複数のタスクを実行する環境に関してコンピュータシステムの物理リソースを仮想化する段階
を有する方法において、
プロセッサ及びコンピュータの他のコンポーネントをアクティブ状態に維持する方法。」

という点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)本願発明が、「前記動作環境を抜けて、前記サービス環境に入る段階」を有しており、「前記動作環境を抜けると、前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第1のセットを、アクティブ状態から低電力消費状態へ切り替える段階と、
前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階と、
前記サービス環境タスクが完了すると前記サービス環境を抜ける段階と
を備え」るのに対して、引用文献1記載の発明ではこれについて特に限定されていない点。

(相違点2)本願発明が、「プロセッサと、プロセッサ以外の前記物理リソースの少なくとも1つから形成される第2のセットとを、前記サービス環境でアクティブ状態に維持」するのに対し、引用文献1記載の発明ではこれについて特に限定されていない点。

(相違点3)本願発明が、「前記サービス環境でサービス環境タスクを実行する段階は、
少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第1のセットが前記低電力消費状態にある間、前記プロセッサと、プロセッサ以外の少なくとも1つの物理リソースから形成される前記第2のセットとを利用する」のに対して、引用文献1記載の発明ではこれについて特に限定されていない点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。

相違点1、3について:
引用文献2には、論理区画化データ処理システムにおいて、ある区画(引用文献1記載の発明における、「論理パーティション」に相当する。)のオペレーティング・システムからアイドル呼出しを受け取ったことに応答して、この区画に割り振られた物理プロセッサ及び外部プロセッサ・バスを省電力モードに設定することが記載されている(上記B1、B2)。この場合、この区画が省電力モードに設定されることは、他の区画の動作モードに影響しないことから、上記ある区画が省電力モードに設定された状態で、他の区画のオペレーティング・システムが実行される状態があることが実質的に記載されているといえる。さらに、引用文献2には、物理プロセッサを以前の動作モード(通常動作モード)に戻すことも記載されている(上記B3)。
そして、コンピュータにおいて電力消費を削減することは一般的な課題であることから、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の技術を適用して、ある論理パーティションの動作モードを、通常動作モードから省電力モードへと遷移させる段階、前記ある論理パーティションの動作モードが省電力モード 及び、物理プロセッサを通常動作モードに戻す段階を有するよう構成することは当業者が容易に想到し得ることである。その際、前記他の区画のオペレーティング・システムの実行がすべて終了した場合、すべてのプロセッサが不要となる、すなわち、システム全体がアイドルとなることから、そのような状態を設けるよう構成することは当業者が適宜になし得ることである。
よって、相違点1、3は格別のものではない。

相違点2について:
引用文献2には、「プロセッサがスリープ・モードにあるときには、・・・外部プロセッサ・バス・クロックが停止される。」と、ある区画が省電力モードに設定された状態で、プロセッサ以外のリソースも省電力状態になることが記載されている(上記B3)。また、区画には、プラットフォーム・リソース(プロセッサ、システム・メモリの領域、および入出力アダプタ・バス・スロット)の非オーバーラップ部分が割り当てられることを鑑みると(上記B2)、上記相違点1、3について、でおいて検討したような、ある区画が省電力モードに設定された状態で、他の区画のオペレーティング・システムが実行される状態においては、省電力モードに設定されていない区画のリソースは当然動作状態を維持しているものと考えられる。
そして、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の技術を適用して、ある区画が省電力モードに設定された状態で、他の区画のオペレーティング・システムが実行される状態においては、省電力モードに設定されていない区画のプロセッサとプロセッサ以外のリソースとを動作状態を維持するよう構成することは当業者が容易に想到し得ることである。
よって、相違点2は格別のものではない。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術から当業者が容易に予測できるものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。


(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-10 
結審通知日 2013-09-17 
審決日 2013-10-31 
出願番号 特願2009-226717(P2009-226717)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 仲間 晃
原 秀人
発明の名称 低減された電力消費状態においてコンピュータタスクを行う方法およびシステム  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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