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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1285845
審判番号 不服2013-2268  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-06 
確定日 2014-03-12 
事件の表示 特願2007-548344「プラズマ処理システムにおける副生成物堆積減少方法並びに構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日国際公開、WO2006/081004、平成20年 7月17日国内公表、特表2008-526026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、2005年12月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2004年12月22日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年3月17日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成24年6月6日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、同年9月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月2日付けで平成24年9月11日付けの手続補正書による補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで誤訳訂正書が提出され、同年5月10日付けで前置報告書に基づく当審による審尋がなされ、同年7月29日付けで回答書が提出されたものである。

[2]平成25年2月6日付け手続補正の補正却下の決定について
<結論>
平成25年2月6日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
<理由>
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、下記のとおりに補正する補正を含むものである。
(補正前)
「【請求項1】
プラズマ処理システムで使用するプラズマ処理チャンバのプラズマチャンバ表面での副生成物堆積を減少させる方法であって、本方法は、
前記プラズマ処理チャンバに堆積バリアを提供するステップを含んでおり、前記堆積バリアは前記プラズマ処理チャンバのプラズマ発生領域に設置するように設計されており、プラズマが前記プラズマ処理チャンバ内で照射されたときに生成される副生成物の少なくとも一部を前記堆積バリアに付着させ、前記プラズマ処理チャンバ表面上での副生成物堆積を減少させる方法であって、
前記堆積バリアは、チャックを保護するために、前記プラズマチャンバの清浄処理中に前記チャックの上に降下され、
且つ前記堆積バリアは、前記チャックを保護するために、基板処理サイクルの間のチャンバアイドリング時に前記チャック上に降下されることを特徴とする方法。」

(補正後)
「【請求項1】
プラズマ処理システムで使用するプラズマ処理チャンバのプラズマチャンバ表面での副生成物堆積を減少させる方法であって、本方法は、
前記プラズマ処理チャンバに堆積バリアを提供するステップを含んでおり、前記堆積バリアは前記プラズマ処理チャンバのプラズマ発生領域に設置するように設計されており、プラズマが前記プラズマ処理チャンバ内で照射されたときに生成される副生成物の少なくとも一部を前記堆積バリアに付着させ、前記プラズマ処理チャンバ表面上での副生成物堆積を減少させる方法であって、
前記堆積バリアは、チャックを保護するために、前記プラズマチャンバの清浄処理中に前記チャックの上に降下され、
且つ前記堆積バリアは、前記チャックを保護するために、基板処理サイクルの間のチャンバアイドリング時に前記チャック上に降下され、
前記堆積バリアは、Y_(2)O_(3)、イットリウム、BN、BCのうち少なくとも1種を含んでおり、
前記堆積バリアは発生したRFに対して透過性であることを特徴とする方法。」(下線部が、補正箇所である。)

(2)補正の目的
上記補正は、堆積バリアについて、「Y_(2)O_(3)、イットリウム、BN、BCのうち少なくとも1種を含んで」いること、及び「発生したRFに対して透過性である」ことを限定するものであり、該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
上記補正後の本願請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けられるものかどうかを検討する。
(3-1)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された特開昭61-172335号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「2.特許請求の範囲
(1)半導体基板をCVDないしはエッチングするプラズマ装置において、上部電極を兼ねた処理室と、処理室とは電気的に絶縁された下部電極と、処理室内壁をカバーするように設けられた反応生成物を付着させるための防着板とを備えたことを特徴とするプラズマ装置。」(第1頁左下欄第4-10行)

(1b)「そしてプラズマCVDを行なう場合は、反応生成物を付着させるための防着板5,12が付属して設けられている。またドライエッチングの場合にも、デポジション物質の発生するエッチングを行なう場合があり、その場合にはプラズマCVDと同様の防着板が付属して設けられている。
ここでデポジションの発生するエッチングとは、例えばCF_(4)+H_(2)またはCHF_(3)+O_(2)(又はCO_(2))またはC_(2)F_(6)+CHF_(3)系によるSiO_(2)エッチングやフレオン114,115等によるポリSiエッチングなどである。」(第1頁右下欄第15行-第2頁左上欄第5行)

(1c)「第1図はドライエッチング装置における本発明の一実施例を示し、図において、1は上部電極を兼ねたエッチング室、2は該エッチング室1の排気を行う真空引き口、3はエッチングガスをエッチング室1に導入するエッチングガス導入口、4はエッチング室1とは電気的に絶縁された下部電極、5,6はそれぞれ反応生成物を付着させるための防着板で、これらはエッチング室1の内壁をカバーするように設けられている。また7はエッチングすべき基板、8は電源である。
次に動作について説明する。
……。次いで電源8から下部電極4と上部電極を兼ねるエッチング室1との間に電圧を印加してプラズマを発生させ、下部電極4上に置かれた基板7をドライエッチングする。エッチング工程中に付着したデポジション物質は防着板5,6に付着させる。
……この電源8はエッチング室1側に接続し、下部電極4を接地してもよい。またガス導入口3はエッチング室1の上面に設けたが、エッチング室1の側面や下部電極4の中央に設ければ、防着板6の開口部をなくすことができ、デポジション物質の除去という点においてより効果的である。
なお、以上はドライエッチングを例にして説明したが、本発明はプラズマCVDにおいても同様に実施でき、同様の効果を奏する。」(第2頁右上欄第13行-右下欄第5行)

(1e)第1図には、ドライエッチング装置において、上部電極を兼ねるエッチング室側面および上面をカバーするように、それぞれ、防着板5、6が設けられるとともに、基板7を保持する下部電極にRF電源8が接続される様子が示されている。

同様に、原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された特開2002-313732号公報(以下、「引用刊行物2」という。)、特開平10-284475号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

・引用刊行物2(特開2002-313732号公報)
(2a)「【0009】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第1実施形態に係るプラズマ装置の要部であり、プラズマCVD装置の反応チャンバ内の要部構成について示す概観図である。……
【0011】この実施形態では、プラズマ耐性を有するシャッター部材15と、このシャッター部材15の移動制御機構16が装備されている。これらの装備は、載置台11に被処理ウェハが載置されない反応チャンバ10内のプラズマクリーニング時において利用される。すなわち、移動制御機構16によりシャッター部材15を載置台11上に移動、接触させ、プラズマクリーニングの際に載置台11の電極部表面を保護する。」(第2頁第2欄第25行-第3頁第3欄第2行)

(2b)「【0015】図3は、本発明の第2実施形態に係るプラズマ装置の要部であり、……
【0017】この実施形態も上述した第1実施形態と同様に、プラズマ耐性を有するシャッター部材35と、このシャッター部材35の移動制御機構36が装備されている。……すなわち、移動制御機構36によりシャッター部材35を載置台31上に移動、接触させ、プラズマクリーニングの際に載置台31の電極部表面を保護する。」(第3頁第3欄第27行-第4欄第7行)

・引用刊行物3(特開平10-284475号公報)
(3a)「【0027】このようにしてSiOF膜の成膜処理を行うと、図4(b)に示すように、成膜室26の内部の、載置台3上のウエハWの周辺や載置台3の外周囲部分、成膜室26の内壁等の成膜ガスが到達する場所にもSiOF膜Sが付着してしまう。そこで例えば10枚のウエハWに対してSiOF膜の成膜処理を行なった後、付着したSiOF膜Sを除去するためにクリ-ニング工程を実施する(図4(c),(d))。
【0028】このクリ-ニング工程では、既述のウエハWと同様にして前記保護板5を載置台3上におけるウエハWの載置領域に受け渡して静電吸着させる。……
【0029】……。そしてこのプラズマガスによりクリ-ニングガスをプラズマ化させて、活性種を形成する。この活性種は載置台3に付着しているSiOF膜Sと反応し、この反応によりSiOF膜Sは例えばSiF_(4)に分解されて飛散し、こうしてSiOF膜Sは排気管29を介して真空容器2の外部へ除去される(図4(d))。
……
【0031】続いてプリコ-ト工程を実施する。プリコ-ト工程はウエハWの成膜処理の前工程に相当する成膜処理であり、クリ-ニング工程に引き続いて載置台3上に保護板5を載置したまま、クリ-ニングガスの代わりにプリコ-トガスを導入することにより行われる。
【0032】このプリコ-ト工程は、真空容器2の内壁にプリコ-ト膜を形成して、真空容器2の内部に存在するクリ-ニングガス中のフッ素をプリコ-ト膜により容器内壁に封じ込め、飛ばない状態とすることを目的とするものなので、ウエハWの成膜処理と同様の処理を行えばよい……。
【0033】……。このプラズマガスにより前記プリコ-トガスをプラズマ化して活性種を形成し、この活性種により真空容器2の内壁にSiOF膜よりなるプリコ-ト膜が成膜される(図4(d))。
【0034】本実施の形態では、保護板5を載置台3上に載置した状態でクリ-ニング工程を実施しているので、この工程の際プラズマから載置台の載置面である静電チャックの表面を保護することができる。……
【0035】……。またプリコ-ト工程も載置台3上に保護板5を載置した状態で行われているので、プリコ-ト膜が載置台3のウエハ載置領域に形成されることを防止できる。」(第4頁第6欄第48行-第5頁第8欄第31行)

上記記載事項(1a)-(1e)によれば、プラズマCVDないしはプラズマエッチングにおいて、デポジションを伴うプラズマ反応の場合に、電極や処理室内壁にデポジション物質が堆積するのを防止すべく、電極を兼ねるプラズマ処理室の上面及び側面をカバーするように防着板を設けることが記載されている。
そして、プラズマCVDないしはプラズマエッチングにおいて生じるデポジション物質として、プラズマ照射により生成される副生成物も含まれることは技術常識であり(例えば、特開昭62-1888号公報:「このように非晶質シリコン膜をプラズマCVD法によって形成すると、副生成物として微細な粉体状のポリシランが生じ、反応室1の内面である高周波電極4等の表面に付着している。」(第3頁右上欄第1-4行))、通常、プラズマは電極及びプラズマ室側面に囲まれた領域で主に発生することから、前記防着板は前記プラズマ処理室のプラズマ発生領域に設置するように設計され、副生成物の少なくとも一部を前記防着板に付着させ、前記プラズマ処理室の内壁上面及び内壁側面での付着を減少させていることは明らかである。

したがって、上記記載事項(1a)-(1e)によれば、引用刊行物1には、「プラズマCVDないしはプラズマエッチングで使用するプラズマ処理室の内壁上面及び内壁側面での副生成物の付着を減少させる方法であって、本方法は、
前記プラズマ処理室に防着板を提供するステップを含んでおり、前記防着板は前記プラズマ処理室のプラズマ発生領域に設置するように設計されており、
プラズマが前記プラズマ処理室内で照射されたときに生成される副生成物の少なくとも一部を前記防着板に付着させ、前記プラズマ処理室の内壁上面及び内壁側面上での副生成堆積を減少させる方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3-2)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「プラズマCVDないしはプラズマエッチング」、「プラズマ処理室」、「内壁上面及び内壁側面」、「防着板」は、それぞれ、本願補正発明の「プラズマ処理システム」、「プラズマ処理チャンバ」及び「プラズマチャンバ」、「表面」、「堆積バリア」に相当する。

よって、両者は、
「プラズマ処理システムで使用するプラズマ処理チャンバのプラズマチャンバ表面での副生成物堆積を減少させる方法であって、本方法は、
前記プラズマ処理チャンバに堆積バリアを提供するステップを含んでおり、前記堆積バリアは前記プラズマ処理チャンバのプラズマ発生領域に設置するように設計されており、
プラズマが前記プラズマ処理チャンバ内で照射されたときに生成される副生成物の少なくとも一部を前記堆積バリアに付着させ、前記プラズマ処理チャンバ表面上での副生成堆積を減少させる方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・(相違点1)
本願補正発明では、「前記堆積バリアは、チャックを保護するために、前記プラズマチャンバの清浄処理中に前記チャックの上に降下され、且つ前記堆積バリアは、前記チャックを保護するために、基板処理サイクルの間のチャンバアイドリング時に前記チャック上に降下され」るのに対して、引用発明では、それが明らかでない点。

(相違点2)
「前記堆積バリアは、Y_(2)O_(3)、イットリウム、BN、BCのうち少なくとも1種を含んでおり、前記堆積バリアは発生したRFに対して透過性である」のに対して、引用発明では、それが明らかではない点。

上記各相違点について検討する。
・(相違点1)について
上記引用刊行物2、3には、プラズマCVDないしはプラズマエッチングなどのプラズマ処理後の反応チャンバ内のプラズマクリーニング(「清浄処理」に相当)を行う際に、ウエハ載置台(「チャック」に相当)の表面に、シャッター部材あるいは保護板を移動させて載置台表面を保護することが記載され、また、同3には、前記プラズマクリ-ニングを行った後、続いてプラズマ化ガスによるプリコート(「基板処理サイクルの間のチャンバアイドリング」に相当)時にも、保護板を載置した状態で行うことも記載されている。
とすれば、引用発明におけるプラズマ処理室内のデポジション物質等による汚染をより低減すべく、上記引用刊行物2、3に記載された、チャックを保護するためにシャッター部材を載置台の上に移動させてプラズマクリーニングを行い、また、載置台を保護するために保護板を載置台の上に移動させてプリコートを行うことを適用すること、つまり、チャックを汚染から保護することは当業者が容易に想到することであり、その際、シャッター部材あるいは保護板として、同じくプラズマ領域に配置されて使用される、前記防着板をチャックの上に降下させて用いることは、装置簡略化の観点から適宜なしえた設計的事項にすぎない。

・(相違点2)について
プラズマCVDないしはプラズマエッチングにおいて、プラズマチャンバ内で使用される防着板等の部材は、プラズマに曝されるため、その材質として耐プラズマ性が求められることは技術常識(例えば、下記文献1参照)であって、引用発明における防着板においても、同様に耐プラズマ性を要することは明らかである。
そして、耐プラズマ性を有する材質として、酸化イットリウムは周知のものであり、該酸化イットリウムはRF透過性も有するものである(下記周知例1、2参照)。
よって、引用発明に前記周知技術を適用し、当該相違点に係る構成とすることは当業者が適宜なし得たことである。

・文献1:特開2004-244312号公報
「【0019】
図1に半導体製造用チャンバ内部の概略図を示す。1はチャンバ壁を、2はシャワーヘッドを、3はクランプリングを、4は下部電極を、5はウェハを、6は高周波コイルを示す。このほか、平行平板型RIE装置、マイクロ波を利用したECR装置等がある。」(第4頁第27-30行)
「【0022】
本発明の半導体製造用チャンバ構成部材は、図1に示した1?4のような部品をはじめとした、ハロゲン系腐食性ガスあるいはそのプラズマ、イオン衝撃に曝される部材であり、他にフォーカスリング、シールドリング、防着板、……等の部品があげられる。」(同頁第43-47行、なお、アンダーラインは当審において付した。以下、同様)
「【0040】
図1に示すような、ハロゲン系腐食性ガスやそのプラズマ及びイオンスパッタに曝される部分に、本発明より構成される焼結体を適用する事によって、優れた耐食性を示すと共に加熱により部材全体に均一に熱が分布し、析出物堆積防止に効果を有する。」(第6頁第39-42行)

・周知例1:特開2003-48792号公報
「【0002】
【従来の技術】従来、半導体製造装置用耐プラズマ部材としては、……近年では、……酸化イットリウムや……からなるものも知られている。」(第2頁第1欄第40行-第2欄第2行)

・周知例2:特開2001-28502号公報
「【0015】高周波またはマイクロ波透過窓を構成するセラミック焼結体としては、……希土類酸化物……の少なくとも1種を含むものが好ましい。 ……
【0017】希土類酸化物としては酸化イットリウム(イットリア:Y_(2)O_(3))を用いることが好ましい。」(第3頁第3欄第10-21行 )

そして、本願補正発明が、引用刊行物1ないし3の記載事項および周知技術からは予想し得ない格別な効果を奏するものとも認められない。
よって、本願補正発明は、引用刊行物1記載の発明および引用刊行物2ないし3記載の事項および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることが
できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、審判請求人は、平成25年7月29日付け回答書において、請求項1において「本方法が、堆積バリアを個別に加熱するステップをさらに含んでいる」との事項を加える補正案を提示しているが、プラズマ処理システムにおいて、防着板すなわち堆積バリアを個別に加熱し、付着物の剥離が少なくなるようにすることは周知の技術にすぎず(例えば、特開平8-31751号公報:「この対策の一つとして、内壁面保護部材38の外側に加熱ヒータ等を配設し、パワー等の制御により内壁面保護部材38を一定温度にする方法が採られている。……こうしたプラズマ処理装置は、内壁面保護部材38と付着物との間の熱膨張係数差によって生じる熱応力を減少させることにより、付着物の膜にき裂が発生し、これが剥離してパーティクルになるのを防止しようとするものである。」(【0009】-【0010】))、引用発明において、これを適用することは適宜なしえたことである。
よって、上記補正案は採用しえないものである。

[3]本願発明
上記[2]のとおり、平成25年2月6日付け手続補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年9月28日付け手続補正書により補正された上記[2](1)に記載のとおりのものである。

[4]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された特開昭61-172335号公報、特開2002-313732号公報、特開平10-284475号公報には、それぞれ、上記[2](3)(3-1)に記載のとおりの事項が記載されている。

[5]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「プラズマ処理システムで使用するプラズマ処理チャンバのプラズマチャンバ表面での副生成物堆積を減少させる方法であって、本方法は、
前記プラズマ処理チャンバに堆積バリアを提供するステップを含んでおり、前記堆積バリアは前記プラズマ処理チャンバのプラズマ発生領域に設置するように設計されており、
プラズマが前記プラズマ処理チャンバ内で照射されたときに生成される副生成物の少なくとも一部を前記堆積バリアに付着させ、前記プラズマ処理チャンバ表面上での副生成堆積を減少させる方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
・(相違点1’)
本願発明では、「前記堆積バリアは、チャックを保護するために、前記プラズマチャンバの清浄処理中に前記チャックの上に降下され、且つ前記堆積バリアは、前記チャックを保護するために、基板処理サイクルの間のチャンバアイドリング時に前記チャック上に降下され」るのに対して、引用発明では、それが明らかでない点。

当該(相違点1’)は、上記[2](3)(3-2)における(相違点1)に相当するものであり、それについての判断は、上記のとおりである。
よって、本願発明は、引用刊行物1記載の発明および引用刊行物2ないし3記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-09 
結審通知日 2013-10-15 
審決日 2013-10-28 
出願番号 特願2007-548344(P2007-548344)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 良平  
特許庁審判長 鈴木 正紀
特許庁審判官 豊永 茂弘
井上 茂夫
発明の名称 プラズマ処理システムにおける副生成物堆積減少方法並びに構造  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  

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