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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1285994
審判番号 不服2013-1020  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-21 
確定日 2014-03-20 
事件の表示 特願2007-255596「固体原燃料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 8日出願公開、特開2008-106270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
この出願は、平成19年9月28日の出願(優先権主張 平成18年9月29日)であって、平成24年10月12日付けで拒絶理由が通知され、同年10月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月7日付けで拒絶査定され、平成25年1月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成25年8月30日付けで審尋がされ、同年10月28日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年1月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年1月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年1月21日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である
「【請求項1】
廃プラスチックから燃焼に用いられる固体原燃料を加熱炉を用いて製造する固体原燃料の製造方法において、
前記加熱炉の炉壁への廃プラスチックの融着および廃プラスチックの塊状化を防止する融着防止材を当該加熱炉内に廃プラスチックとともに混合して投入し、当該廃プラスチックの加熱・熱分解を行い、該廃プラスチックから固体原燃料を生成する固体原燃料生成工程を備え、
前記固体原燃料生成工程にて用いられる前記融着防止材は、有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダストであって、
前記固体原燃料は、平均粒子径が5?15mmであること
を特徴とする固体原燃料の製造方法。」

「【請求項1】
廃プラスチックから燃焼に用いられる固体原燃料を加熱炉を用いて製造する固体原燃料の製造方法において、
前記加熱炉の炉壁への廃プラスチックの融着および廃プラスチックの塊状化を防止する融着防止材を当該加熱炉内に廃プラスチックとともに混合して投入し、当該廃プラスチックの加熱・熱分解を行い、該廃プラスチックから固体原燃料を生成する固体原燃料生成工程を備え、
前記固体原燃料生成工程にて用いられる前記融着防止材は、有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダストであって、
前記加熱炉はロータリーキルンであって、
前記固体原燃料は、前記加熱炉内で造粒され、平均粒子径が5?15mmであること を特徴とする固体原燃料の製造方法。」
とする補正を含むものである。

そして、当該請求項1についての補正は、
「前記加熱炉はロータリーキルンであって」
との記載を追加する補正(以下、「補正1」という。)、
及び、
「固体原燃料は、平均粒子径が5?15mmである」
との記載を、
「固体原燃料は、前記加熱炉内で造粒され、平均粒子径が5?15mmである」
とする補正(以下、「補正2」という。)、
を含むものである。

2.補正の目的
上記補正1は、「前記加熱炉はロータリーキルンであって」との記載を追加して、補正前の請求項1の「加熱炉」を、「ロータリーキルン」に限定するものである。
また、上記補正2は、「固体原燃料」について、「前記加熱炉内で造粒され」るものに限定するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件の検討
そこで、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討すると、以下の理由により本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、前記請求項1についての補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。

理由:本件補正発明は、本願優先日前に頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)刊行物及び刊行物の記載事項
ア.刊行物
刊行物1:特開2006-188396号公報(拒絶理由通知における
「引用文献1」。)
刊行物2:特開2000-153523号公報(拒絶理由通知における
「引用文献3」。)
刊行物3:実公平3-1103号公報
刊行物4:特開2003-14220号公報(拒絶査定時に引用された文
献。)

イ.刊行物に記載された事項
(ア)刊行物1について
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

1a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を利用してハロゲン含有物からハロゲンを分離することにより当該ハロゲンを含む可燃性ガスと残留物とを生成させるハロゲン分離手段と、
このハロゲン分離手段へセメント製造設備から取り出した熱媒体を供給する熱媒体供給ラインと、
上記ハロゲン分離手段から排出された上記可燃性ガスから上記ハロゲンを回収するハロゲン回収手段と、
このハロゲン回収手段によって上記ハロゲンが回収された後の上記可燃性ガスを上記セメント製造設備の燃料として供給するガス供給手段と、
を備えてなることを特徴とするセメント製造設備におけるハロゲン含有物燃料化システム。
【請求項2】
上記残留物を上記セメント製造設備の燃料として供給する残留物供給手段を有することを特徴とする請求項1に記載のセメント製造設備におけるハロゲン含有物燃料化システム。
・・・
【請求項10】
上記ハロゲン分離手段に、上記ハロゲン含有物が当該ハロゲン分離手段に付着することを防止する付着防止材を供給することを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載のハロゲン含有物燃料化システムを用いたセメントの製造方法。」
1b:「【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るセメント製造設備におけるハロゲン含有物燃料化システムを、ハロゲン含有物が塩素を含む可燃性廃棄物である場合に適用したセメント製造設備における廃棄物燃料化システムの第1実施形態を示すもので、図中符号1がセメント原料を焼成するためのセメントキルンである。
【0034】
このセメントキルン1は、軸芯回りに回転自在に設けられたロータリーキルンであり、その図中左方の窯尻1a側に、セメント原料を予熱するためのプレヒータ2が設けられるとともに、図中右方の窯前1bには、内部を加熱するための主バーナ(図示を略す。)が設けられている。また、この窯前1bには、セメントキルン1によって得られたクリンカを冷却するクリンカクーラ3が設けられている。
【0035】
そして、これらセメントキルン1、プレヒータ2およびクリンカクーラ3を有するセメント製造設備には、塩素を含む可燃性プラスチック廃棄物を前処理してセメントキルン1に導入するための廃棄物燃料化システムが設けられている。
図中符号4は、この廃棄物燃料化システムの最上流側に設けられた選別装置である。この選別装置4は、処理すべき可燃性プラスチック廃棄物を、比重選別あるいは赤外線選別等によって、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素含有量の多い廃棄物(以下、塩素含有プラスチックと略す。)と、ポリエチレンやポリプロピレン等の塩素含有量が少ない廃棄物(以下、低塩素濃度プラスチックと略す。)とに分離するものである。
【0036】
ここで、選別装置4における選別基準としては、塩素含有量が1000ppm、好ましくは500ppm以上のものと、それ以下のものとに選別するものであることが好適である。そして、この選別装置4によって分離された低塩素濃度プラスチックは、廃棄物燃料供給ライン5を介して、直接セメントキルン1の窯前1b側から内部に投入されるようになっている。他方、選別装置4によって分離された塩素含有プラスチックは、熱分解ライン6から後段の熱分解炉(ハロゲン分離手段、熱分解手段)7に導入されるようになっている。
【0037】
この熱分解炉7は、熱媒体が導入される外筒7aと、軸線回りに回転自在に設けられて内部に塩素含有プラスチックが供給される内筒7bとを有するロータリーキルン型の外熱式熱分解炉であり、内筒7bの一端側に上記熱分解ライン6が接続されている。また、この接続部分には、内部に付着防止材を供給するための投入口8が接続されている。
【0038】
ここで、上記付着防止材としては、粘土等の土質材、紙材、木材、プラスチックフィルム等が適用可能である。この際に、下水汚泥、建築廃木材あるいは廃プラスチックフィルム等の廃棄物を代替使用すれば、これらの廃棄物の処理も同時に行うことが可能になる。また、他の付着防止材として、セメント原料やオイルコークス灰等も使用することができる。この際に、粗粉状であれば、上記廃棄物への担持体として機能させることができ、微細粉であれば、上記廃棄物へのもち粉状の被覆体として機能させることができる。
【0039】
そして、熱分解炉7の内筒7bの他端側には、この熱分解炉7において生成した熱分解残渣をセメントキルン1内に燃料として供給する搬送ライン(残留物供給手段)9が設けられている。さらに、この内筒7bの上部には、この熱分解炉7において生成した熱分解ガスを、後段のガス洗浄装置(ハロゲン回収手段)10へと送る分解ガス抜き出しライン11が接続されている。
【0040】
このガス洗浄装置10は、熱分解炉7から排出された上記熱分解ガスに、供給管10aから添加される水酸化カルシウム等のアルカリ成分を接触させて、当該熱分解ガス中に含まれる塩素分を、塩化カルシウム等の塩として熱分解ガスから除去するためのもので、湿式あるいは乾式の各種ガス洗浄装置が適用可能である。・・・
【0041】
そして、このガス洗浄装置10の排出側には、このガス洗浄装置10によって洗浄された可燃性ガスを、セメントキルン1の窯前側に設けられた補助バーナ1cから内部に供給するためのガス供給ライン(ガス供給手段)12が接続されている。なお、この可燃性ガスは、セメントキルン1の図示されない主バーナにおいて、燃料と混合して内部に供給してもよい。」
1c:「【図1】




(イ)刊行物2について
上記刊行物2には、以下の事項が記載されている。(下線部は当審が付した。)

2a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】 間接加熱方式のロータリーキルンからなる塩素含有樹脂類の処理装置において、被処理材の通路となるロータリーキルンの内壁に、ロータリーキルンの回転によって被処理材を掻き上げるための掻き上げ羽根を、ロータリーキルン長手方向の全長に沿って断続的に設けたこと特徴とする塩素含有樹脂類の処理装置。」
2b:「【0036】
【実施例】以下、本発明の処理方法の実施例について説明する。本発明の処理装置及び比較例の処理装置を用い、塩素含有樹脂の脱塩素処理を行った。処理した塩素含有樹脂は硬質塩化ビニルを粒径15mm以下に破砕したもので、塩素含有率:51重量%、灰分:2.6重量%である。固体熱媒体としては粒径3?10mmの粉コークスを使用した。
【0037】本実施例で使用したロータリーキルンの仕様は以下の通りである。
・・・」
2c:「【0066】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、被処理樹脂材の高い撹拌性が得られ、このため被処理樹脂材の塊状化や樹脂熱分解残渣のキルン内壁への付着を適切に防止して高い処理効率を得ることができ、しかも、キルン内における樹脂熱分解残渣の粉化が抑制され、ダストの発生量を低く抑えることができる。」
2d:「【図2】



(ウ)刊行物3について
上記刊行物3には、以下の事項が記載されている。(下線部は当審が付した。)

3a:「【実用新案登録請求の範囲】
破砕、分別された廃プラスチツクフイルム類の減容固化処理装置において、横向きに設置され内部に案内板と仕切板とを設置したロータリーキルンと、同キルンの一側面において出口が同キルン内に開口するよう設置された供給フイーダを備え、廃プラスチツクフイルム類と造粒助材を前記供給フイーダよりロータリーキルン内に供給し、加熱ガスを同供給フイーダの周囲より同方向にロータリーキルン内に供給することにより、廃プラスチツクフイルム類は溶融、軟化し、球状に造粒されてロータリーキルン出口より排出されることを特徴とする廃プラスチツクフイルムの減容固化処理装置。」

(エ)刊行物4について
上記刊行物4には、以下の事項が記載されている。(下線部は当審が付した。)

4a:「【0005】このような状況下にあって、合成樹脂類を高炉等の燃料などに用いる方法が、特表平8-507105号、特開平2000-104910号の各公報に記載されている。すなわち、特表平8-507105号公報では、細かく砕かれ、粒径がほぼ1?10mmの領域にあり、または更に嵩密度が0.35より大きい状態にある合成樹脂類を羽口から高炉内へ吹き込む方法が示されている。」

(2)刊行物1に記載された発明
刊行物1の請求項1に係る発明は、
「熱を利用してハロゲン含有物からハロゲンを分離することにより当該ハロゲンを含む可燃性ガスと残留物とを生成させるハロゲン分離手段と、
このハロゲン分離手段へセメント製造設備から取り出した熱媒体を供給する熱媒体供給ラインと、
上記ハロゲン分離手段から排出された上記可燃性ガスから上記ハロゲンを回収するハロゲン回収手段と、
このハロゲン回収手段によって上記ハロゲンが回収された後の上記可燃性ガスを上記セメント製造設備の燃料として供給するガス供給手段と、
を備えてなることを特徴とするセメント製造設備におけるハロゲン含有物燃料化システム。」(摘示1a)
というものである。
そして、刊行物1の「第1の実施形態」(摘示1b、1c)には、上記「セメント製造設備におけるハロゲン含有物燃料化システム」によって燃料を製造する具体的な手段として、以下の記載がある。(下線は当審が付した。)
「【0035】
そして、これらセメントキルン1、プレヒータ2およびクリンカクーラ3を有するセメント製造設備には、塩素を含む可燃性プラスチック廃棄物を前処理してセメントキルン1に導入するための廃棄物燃料化システムが設けられている。
図中符号4は、この廃棄物燃料化システムの最上流側に設けられた選別装置である。この選別装置4は、・・塩素含有量の多い廃棄物(以下、塩素含有プラスチックと略す。)と、・・・塩素含有量が少ない廃棄物(以下、低塩素濃度プラスチックと略す。)とに分離するものである。
【0036】
・・・他方、選別装置4によって分離された塩素含有プラスチックは、熱分解ライン6から後段の熱分解炉(ハロゲン分離手段、熱分解手段)7に導入されるようになっている。
【0037】
この熱分解炉7は、・・・内部に塩素含有プラスチックが供給される内筒7bとを有するロータリーキルン型の外熱式熱分解炉であり、内筒7bの一端側に上記熱分解ライン6が接続されている。また、この接続部分には、内部に付着防止材を供給するための投入口8が接続されている。
・・・
【0039】
そして、熱分解炉7の内筒7bの他端側には、この熱分解炉7において生成した熱分解残渣をセメントキルン1内に燃料として供給する搬送ライン(残留物供給手段)9が設けられている。さらに、この内筒7bの上部には、この熱分解炉7において生成した熱分解ガスを、後段のガス洗浄装置(ハロゲン回収手段)10へと送る分解ガス抜き出しライン11が接続されている。
・・・
【0041】
そして、このガス洗浄装置10の排出側には、このガス洗浄装置10によって洗浄された可燃性ガスを、セメントキルン1の窯前側に設けられた補助バーナ1cから内部に供給するためのガス供給ライン(ガス供給手段)12が接続されている。なお、この可燃性ガスは、セメントキルン1の図示されない主バーナにおいて、燃料と混合して内部に供給してもよい。」

よって、刊行物1には、「廃棄物燃料化システム」(これは、上記請求項1における「セメント製造設備におけるハロゲン含有物燃料化システム」のことであると認められる。)において、「塩素含有プラスチック」を、「ロータリーキルン型の外熱式分解炉」に導入し、「熱分解ガス」と「熱分解残渣」とを生成させること、及び、上記「ロータリーキルン型の外熱式分解炉」に「付着防止剤を供給する」ことが記載されているといえる。
また、上記「熱分解ガス」と「熱分解残渣」は、いずれも「セメントキルン」に「燃料として供給」される旨の記載があるから、「燃料」であることは明らかである。
よって、刊行物1には、
「塩素含有プラスチックを、ロータリーキルン型の外熱式分解炉に導入し、熱分解ガスと熱分解残渣とを生成させ、
上記外熱式分解炉に付着防止剤を供給する、
セメント製造設備におけるハロゲン含有燃料化システムによって燃料を製造する方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されているといえる。

(3)対比・判断
ア.対比
引用発明における「塩素含有プラスチック」、及び「ロータリーキルン型の外熱式分解炉」は、本件補正発明の「廃プラスチック」、及び「加熱炉」(「ロータリーキルン」)に相当することは明らかである。
また、引用発明における「熱分解残渣」は、上記(2)で述べたとおり、セメントキルンの「燃料」であるといえるから本件補正発明の「燃焼に用いられる固体原燃料」に相当する。
さらに、引用発明の「付着防止剤」は、「ハロゲン含有物が当該ハロゲン分離手段に付着することを防止する」(摘示1a【請求項10】)もの、言い換えると、「ハロゲン含有物である塩素含有プラスチックがハロゲン分離手段である外熱式分解炉に付着することを防止するもの」であるといえるから、この点で、本件補正発明の、「前記加熱炉の炉壁への廃プラスチックの融着」を防止する「融着防止材」に相当する。
そして、摘示1c(【図1】)及び摘示1b(特に段落【0037】)の記載から見て、引用発明において、「付着防止剤」は「外熱式熱分解炉」に上記「塩素含有プラスチック」とともに投入されると認められるので、その投入の際には「塩素含有プラスチック」に混合されるものと認められる。また、投入された「塩素含有プラスチック」が、「外熱式熱分解炉」において、加熱及び熱分解されることも明らかである。
よって、引用発明において「塩素含有プラスチックを、ロータリーキルン型の外熱式分解炉に導入し・・・熱分解残渣を生成させ」、「上記外熱式分解炉に付着防止剤を供給する」ことは、本件補正発明の「融着防止材を当該加熱炉内に廃プラスチックとともに混合して投入し、当該廃プラスチックの加熱・熱分解を行い、該廃プラスチックから固体原燃料を生成する固体原燃料生成工程」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、
「廃プラスチックから燃焼に用いられる固体原燃料を加熱炉を用いて製造する固体原燃料の製造方法において、
前記加熱炉の炉壁への廃プラスチックの融着を防止する融着防止材を当該加熱炉内に廃プラスチックとともに混合して投入し、当該廃プラスチックの加熱・熱分解を行い、該廃プラスチックから固体原燃料を生成する固体原燃料生成工程を備え、
前記加熱炉はロータリーキルンである
固体原燃料の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:融着防止材が、本件補正発明においては「廃プラスチックの塊状化を防止する」ものでもあり、また、「有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダスト」であるのに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

相違点2:固体原燃料は、本件補正発明においては「前記加熱炉内で造粒され、平均粒子径が5?15mmである」のに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

イ.相違点の判断
(ア)相違点1について
刊行物1の摘示1b(【0038】)には、付着防止剤として、「オイルコークス灰」を用い得ることが記載されている。そして、これはオイルコークスを燃焼した時に得られる灰であり、燃焼時の排ガスにも含まれるものであるから、本件補正発明の「有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダスト」に相当するものである。
また、同記載箇所には、
「他の付着防止材として、セメント原料やオイルコークス灰等も使用することができる。この際に、粗粉状であれば、上記廃棄物への担持体として機能させることができ、微細粉であれば、上記廃棄物へのもち粉状の被覆体として機能させることができる。」
と、溶融状態にあるプラスチックに対して、「オイルコークス灰」が、担持体として、あるいはもち粉状の被覆体として機能することが記載され、これらの機能を有すれば通常はプラスチックの塊状化の防止も達成されるものと認められる。
また、本件補正発明の詳細な説明の段落【0007】には、
「本発明の一態様に係る固体原燃料の製造方法は、廃プラスチックから燃焼に用いられる固体原燃料を加熱炉を用いて製造する固体原燃料の製造方法において、前記加熱炉の炉壁への廃プラスチックの融着および廃プラスチックの塊状化を防止する融着防止材を当該加熱炉内に廃プラスチックとともに混合して投入し、当該廃プラスチックの加熱・熱分解を行い、該廃プラスチックから固体原燃料を生成する固体原燃料生成工程を備え、前記固体原燃料生成工程にて用いられる前記融着防止材は、有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダストであることを特徴とする。」(下線部は当審が付した。)
と、記載されていることから見て、「有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダスト」であれば、「廃プラスチックの塊状化を防止する」機能も有するものと認められるので、この点からも、上記「オイルコークス灰」も上記機能を有していると認められる。
よって、引用発明における付着防止剤(融着防止剤)として、本件補正発明のような「廃プラスチックの塊状化を防止する機能を有する」、「有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダスト」を採用することは当業者が容易になし得るものである。

(イ)相違点2について
「造粒」とは、一般的には、「粉末粒子を凝集させ,均一な形状と大きさの粒状物にすること」であると認められる(科学大辞典 第2版(丸善株式会社,2005年発行,第860頁,「ぞうりゅう」の項)を参照)ところ、本件補正発明において、固体原燃料の製造を「加熱炉内で造粒」により行うということは、その原料である廃プラスチックとして粒子状のものを用いて、それらの粒子をある程度融着及び凝集させてより大きな粒状物を形成させることであると解される。

ところで、プラスチック廃棄物をハロゲンが分離される程度に加熱すると、通常、プラスチック同士の融着が生じることは当業者にとって技術常識であるから、例えば、プラスチック廃棄物の原料として、破砕や成形等により粒子状とされたものを用い、塊状化が生じない条件でロータリーキルン等で加熱をすれば、プラスチック同士の融着及び凝集が生じて、加熱炉を経た状態において、上記の様な「造粒」された状態のものを製造できることもまた、当業者にとって技術常識である。
また、刊行物2及び3に示されるとおり、プラスチック廃棄物をロータリーキルンに供給して、造粒すること自体、周知である。

( 刊行物2には、「塩素含有樹脂類の処理方法」において(摘示2a、2b)、被処理樹脂材として、塩化ビニル等を粒径15mm以下程度に破砕した粒状物を、ロータリーキルンにて処理して、脱塩素処理を行い(摘示2b)、例えば、【図2】の「被処理材」(摘示2d)に示されるような粒状の樹脂熱分解残渣(これは、「被処理材」を熱分解したものであり、塊状化も粉化も抑制されているので、同様の形状をしていると認められる。)を得ることが記載されている(摘示2c)。
また、刊行物3には、 廃プラスチックフィルム類を造粒助材とともに、ロータリーキルンに供給して、溶融、軟化、球状に造粒することが記載されている(摘示3a)。)

よって、引用発明における「熱分解残渣」を、その原料である「塩素プラスチック」として適切な大きさに粒子化されたものを用いることにより、ロータリーキルンの加熱により「造粒」されたものとすることは当業者が容易になし得るものである。

また、刊行物4には、
「【0005】このような状況下にあって、合成樹脂類を高炉等の燃料などに用いる方法が、・・・に記載されている。すなわち、・・・では、細かく砕かれ、粒径がほぼ1?10mmの領域にあり」
と、記載されるとおり、合成樹脂類、すなわちプラスチックを燃料に利用する際に、粒径を1?10mm程度とすることは周知である。
そして、引用発明の「熱分解残渣」も、セメントキルンの燃料として用いられるものであるから、上記のとおり「造粒」して製造する際に、その大きさを、上記周知の範囲よりやや大きい5?15mm程度の大きさとすることも当業者が容易に想到し得るものである。
また、それによる効果についても、当業者が予測し得る程度のものである。


ウ.小括
以上のとおり、本件補正発明は、本願優先日前に頒布された刊行物1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成25年1月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年10月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

第4 原審の拒絶の理由
拒絶査定における拒絶の理由(平成24年10月12日付けの拒絶理由通知の「理由」「2.」)の概要は、本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
また、引用文献として、以下の文献が挙げられている。

1.特開2006-188396号公報
2.特開平10-311677号公報
3.特開2000-153523号公報

第5 当審の判断
当審は、本願発明は、上記拒絶理由に記載した理由によって拒絶をすべきものと判断する。
以下、詳述する。

1.引用文献等及び引用文献等の記載事項
(1)引用文献等
引用文献1:特開2006-188396号公報(上記「刊行物1」
周知例1 :特開2000-153523号公報(上記「刊行物2」及び
「引用文献3」に同じ。)
周知例2 :実公平3-1103号公報(上記「刊行物3」に同じ。)
周知例3 :特開2003-14220号公報(上記「刊行物4」に同じ
。)

(2)引用文献等の記載事項
引用文献1及び周知例1?3の記載事項は、上記第2の3.(1)イ.において記載した刊行物の記載事項と同様である。

2.引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された発明は、上記第2の3.(2)において記載した「引用発明」と同じものである。

3.対比・判断
(1)対比
本願発明は、本件補正発明において、「加熱炉」が、「ロータリーキルン」であることが特定されていない点、及び、「固体原燃料」が、「加熱炉内で造粒され」たものであることが特定されていない点においてのみ異なるものである。
よって、本願発明と引用発明とは、上記第2の3.(3)ア.において述べたものと同様の理由により、
「廃プラスチックから燃焼に用いられる固体原燃料を加熱炉を用いて製造する固体原燃料の製造方法において、
前記加熱炉の炉壁への廃プラスチックの融着を防止する融着防止材を当該加熱炉内に廃プラスチックとともに混合して投入し、当該廃プラスチックの加熱・熱分解を行い、該廃プラスチックから固体原燃料を生成する固体原燃料生成工程を備える
固体原燃料の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1’:融着防止材が、本願発明においては「廃プラスチックの塊状化を防止する」ものであり、また、「有機物を燃焼した後の燃焼ガスに同伴するダスト」であるのに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

相違点2’:固体原燃料は、本願発明においては「平均粒子径が5?15mmである」のに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

(2)相違点の判断
相違点1’については、上記第2の3.(3)イ.(ア)において述べたものと同様の理由により、容易になし得るものである。
また、相違点2’についても、同(イ)において述べたものと同様の理由により、引用発明及び周知例1?3に記載の周知技術から当業者が容易になし得るものである。

(3)小括
以上のとおり、本願発明は、本願優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、その余につき検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-27 
結審通知日 2014-01-07 
審決日 2014-01-29 
出願番号 特願2007-255596(P2007-255596)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C10L)
P 1 8・ 121- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 健一  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小石 真弓
日比野 隆治
発明の名称 固体原燃料の製造方法  
代理人 伊丹 勝  

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