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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C01G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C01G
管理番号 1286110
審判番号 不服2013-21435  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-01 
確定日 2014-04-14 
事件の表示 特願2008-329535「キャパシタ製造用の亜酸化ニオブ粉末、キャパシタ用の亜酸化ニオブアノード、および固体電解キャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 6月 4日出願公開、特開2009-120478、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年7月15日(優先権主張2003年7月15日 ドイツ)に出願した特願2004-208851号の一部を平成20年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成24年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年9月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年6月24日付けで拒絶査定がされたので、同年11月1日に拒絶査定不服審判が請求され、平成26年3月4日付けで当審の拒絶理由が通知され、同年3月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、平成26年3月14日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の項番にしたがい、「本願発明1」などといい、全体をまとめて「本願発明」という。)。
「【請求項1】
キャパシタ製造用の亜酸化ニオブ粉末であって、
マグネシウムを100?366ppm含有し、かつ、Fe、Cr、Ni、Cu、アルカリ金属およびフッ化物および塩化物のレベルがそれぞれ15ppmより低い、
亜酸化ニオブ粉末。
【請求項2】
Fe、Cr、Ni、Cu、アルカリ金属およびフッ化物および塩化物の量の合計が35ppmより少ない、請求項1記載の亜酸化ニオブ粉末。
【請求項3】
10?500ppmの窒素含量を有する、請求項1又は2記載の亜酸化ニオブ粉末。
【請求項4】
平均組成がNbOx(その際、0.7<x<1.3)である、請求項1から3までのいずれか1項記載の亜酸化ニオブ粉末。
【請求項5】
0.3?1.5μmの直径を有する一次粒子が凝集している凝集物を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の亜酸化ニオブ粉末。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の亜酸化ニオブ粉末を焼結することにより得られた、キャパシタ用の亜酸化ニオブアノード。
【請求項7】
請求項6に記載の亜酸化ニオブアノードと、五酸化ニオブ障壁層とを含む、固体電解キャパシタ。
【請求項8】
キャパシタ製造用の亜酸化ニオブ粉末であって、
当該亜酸化ニオブ粉末が、
マグネシウムを100?600ppm含有し、かつ、Fe、Cr、Ni、Cu、アルカリ金属およびフッ化物および塩化物のレベルがそれぞれ15ppmより低いこと、
ならびに、
製造対象のキャパシタが、前記亜酸化ニオブ粉末を焼結することにより得られた亜酸化ニオブアノードと、五酸化ニオブ障壁層とを含んで構成され、かつ、前記亜酸化ニオブアノードは、0.2nA/μFVを下回る比残留電流値を示し、ここで、該比残留電流値の測定は、25℃で18質量%濃度の硫酸でシュミレートされている対電極を用いて行われ、かつ、チャージ時間3分間の後、電圧21V(化成電圧の70%)、周波数120Hzおよびバイアス電圧10Vで行われる、ことを特徴とする亜酸化ニオブ粉末。」

第3 拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由の概要は、次の1及び2のとおりである。
1 本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された次の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物:国際公開第02/093596号
2 本件出願は、次の理由から特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。
(1)補正前の請求項1は、「キャパシタ製造用」という用途を限定し、
マグネシウム含有量について、(a)マグネシウム含有量の「上限を366ppm」とするか、あるいは、(b)上記数値範囲はそのままとし、「比残留電流が0.2nA/μFV(必要な測定条件を特定する必要がある。)以下であること」のいずれかの事項により特定する必要がある。
(2)補正前の請求項2、9、10は、削除されるべきである。
なお、請求項6の「第1粒子」が「1次粒子」の誤記である場合には、発明の詳細な説明の記載も含めて誤記の訂正をする必要がある。

第4 当審の判断
4-1 拒絶理由1について
1 刊行物に記載された発明
(1)刊行物の記載事項
刊行物には、次の事項が記載されている。
(ア)「「発明の開示
本発明の目的は、単位質量当たりの容量が大きく、等価直列抵抗(ESR)が低く、漏れ電流値が小さいコンデンサ及び耐湿性の高いコンデンサ、この電極材料となり高い容量出現率の得られる焼結体、この焼結体材料として好ましく、成形時の作業上流れ性が良好で、連続成形が容易であり、コンデンサの安定した生産が可能な一酸化ニオブ粉、及びそれらの製造方法を提供することにある。」
」(明細書第4頁20行?第5頁1行)
(イ)「コンデンサー用一酸化ニオブ粉とは、式:NbOx(式中、xは0.8?1.2である。)を主成分とし、コンデンサを製造するための素材となり得るものをいう。」(第16頁15?17行)
(ウ)「一酸化ニオブ粉には、例えば、ニオブと複合酸化物を形成する成分や・・・などのニオブ以外の成分の少なくとも1種が含まれていても良い。このようにニオブ以外の成分を含ませることにより、焼結性を変化させることが可能となり、コンデンサとしての特性を向上させることができる。この様なニオブ以外の元素としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、プラチナ、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン及びテルルが挙げられる。」(第17頁5?21行)
(エ)「また、焼結性や得られたコンデンサの電気的性能の改善から、含まれる他元素の含有量は、50質量ppmから500000質量ppmが好ましく、50?200000質量ppmが特に好ましい。」(第21頁7?9行)
(オ)「賦活剤は、原料混合物から本発明の一酸化ニオブ粉を製造するいずれかの工程中で除去可能な物質である。通常、本発明の一酸化ニオブ粉中で除去された部分は細孔を形成する。」(第22頁3?5行)
(カ)「最も好ましい一酸化ニオブ粉の細孔直径は、平均径として0.5μm?100μmであり、この細孔直径を作り出す最も好ましい賦活剤の平均粒子径は、0.5μm?100μmである。・・・また、賦活剤の粒度分布を調整することにより細孔直径分布を調整できる。」(第22頁23行?第23頁4行)
(キ)「


」第61頁)

(2)刊行物に記載された発明
記載事項(ア)?(エ)によれば、刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「NbOx(式中、xは0.8?1.2である。)を主成分とし、ニオブと酸素以外の元素を50?200000質量ppm含有するコンデンサー製造用の一酸化ニオブ粉末。」

2 対比と判断
(1)本願発明1について
ア 対比
そこで、本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「一酸化ニオブ粉末」は、NbOx(式中、xは0.8?1.2である。)を主成分とするので、本願発明1における「亜酸化ニオブ粉末」に相当し、その用途である「コンデンサー製造用」は、本願発明1の「キャパシタ製造用」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、「キャパシタ製造用の亜酸化ニオブ粉末」である点で一致し、次の点で相違する(以下、「相違点1」という。)。
・本願発明1における亜酸化ニオブ粉末は、「マグネシウムを100?366ppm含有し、かつ、Fe、Cr、Ni、Cu、アルカリ金属およびフッ化物および塩化物のレベルがそれぞれ15ppmより低い」が、引用発明におけるものは「ニオブ以外の元素を50?200000ppm含有する」としている点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
まず、Fe、Cr等を特定値以下含有することについて、刊行物には記載も示唆もない。
また、マグネシウムに関して記載事項(ウ)(エ)によれば、刊行物には、コンデンサーの電気的性能の改善の観点からニオブ以外の元素を含有させることが記載されているが、マグネシウムはニオブと酸素以外の元素として列挙された58の元素のうちの1つにすぎない。
また、引用発明の具体例としての実施例を参照すると、同(キ)によれば実施例18では、賦活剤として添加量が20質量%という大量のMgOを使用している。しかし、同(オ)(カ)によれば、賦活剤は一酸化ニオブ粉に細孔を形成するために添加され、製造工程中にほぼ除去されるものである。そして、他の実施例を参照しても、賦活剤としてではなく、ニオブ以外の元素としてマグネシウムを添加したとする記載はない。
これらの記載から、刊行物には、キャパシター中での残留電流を減少させるという目的のために、特定量のマグネシウムを含有させることについては記載も示唆もされていないといえる。
本願発明は、上記相違点1の特定事項を採用することにより、低い残留抵抗値をを有するキャパシタを製造することが可能となったものであり、このことは、引用発明からは予測することのできない顕著な効果である。
したがって、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。また、本願発明1の特定事項を全て有する本願発明2?7も、同様な理由から、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本願発明8について
ア 対比
本願発明8と引用発明とを対比する。
引用発明における「一酸化ニオブ粉末」及び「コンデンサー製造用」は、本願発明8における「亜酸化ニオブ粉末」及び「キャパシタ製造用」に相当する。
そうすると、本願発明8と引用発明とは、「キャパシタ製造用の亜酸化ニオブ粉末」である点で一致し、次の点で相違する。
a 本願発明8における亜酸化ニオブ粉末は「マグネシウムを100?600ppm含有し、かつ、Fe、Cr、Ni、Cu、アルカリ金属およびフッ化物および塩化物のレベルがそれぞれ15ppmより低い」が、引用発明におけるものは、「マグネシウム等のニオブ以外の他の元素を50?200000ppm含有する」としている点(以下、「相違点2」という。)。
b 本願発明8における亜酸化ニオブ粉末は、「製造対象のキャパシタが、前記亜酸化ニオブ粉末を焼結することにより得られた亜酸化ニオブアノードと、五酸化ニオブ障壁層とを含んで構成され、かつ、前記亜酸化ニオブアノードは、0.2nA/μFVを下回る比残留電流値を示し、ここで、該比残留電流値の測定は、25℃で18質量%濃度の硫酸でシュミレートされている対電極を用いて行われ、かつ、チャージ時間3分間の後、電圧21V(化成電圧の70%)、周波数120Hzおよびバイアス電圧10Vで行われる」のに対し、引用発明のものの比残留電流が明らかではない点(以下、「相違点3」という。)。

イ 判断
相違点2について検討する。
まず、相違点2を、本願発明1と引用発明との相違点である相違点1と比較すると、相違点2に係る本願発明8の特定事項である「マグネシウム含有量が100?600ppm」は、相違点1に係る本願発明1の特定事項である「マグネシウム含有量が100?366ppm」を含んでいる。
このため、上記「第4、4-1、2(1)イ」において、本願発明1において相違点1の特定事項を採用することが容易想到ではないとしたと同じ理由から、本願発明8において相違点2の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到するものではない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本願発明8は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4-2 拒絶理由2について
特許請求の範囲の記載要件の不備は、平成26年3月14日付けでなされた補正により解消した。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないし、本願の特許請求の範囲の記載はサポート要件を充足するから、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-31 
出願番号 特願2008-329535(P2008-329535)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (C01G)
P 1 8・ 121- WY (C01G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 立木 林  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 川端 修
吉水 純子
発明の名称 キャパシタ製造用の亜酸化ニオブ粉末、キャパシタ用の亜酸化ニオブアノード、および固体電解キャパシタ  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 篠 良一  
復代理人 来間 清志  
代理人 久野 琢也  

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