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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1286152
審判番号 不服2012-26139  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-28 
確定日 2014-04-21 
事件の表示 特願2009-547768「液体廃棄物を処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月14日国際公開、WO2008/096166、平成22年 5月27日国内公表、特表2010-517745、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年1月14日(パリ条約による優先権主張:2007年2月5日 英国)を国際出願日とする出願であって、平成23年12月15日付けで拒絶理由が通知され、平成24年6月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年8月22日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がされ、平成25年4月22日付けで前置報告書を利用した審尋がされ、同年7月24日付けで回答書が提出され、同年9月11日付けで平成24年12月28日付けの手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月21日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願発明は、平成26年2月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、これらの請求項に係る発明を項番号に対応して、「本願発明1」などといい、これらをまとめて「本願発明」という。)。
「【請求項1】
金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物を処理する方法であって、
該硫酸含有液体廃棄物を筐体中の触媒に曝して過酸化水素を酸素(O_(2))及び水(H_(2)O)に転化することにより該硫酸含有液体廃棄物から除去する工程、
該触媒を含む筐体をパージガスでパージすることにより、前記過酸化水素を除去する際に生成されるガス状副生成物を除去する工程、
該硫酸含有液体廃棄物を逆浸透又はナノ濾過膜に運んで該金属イオンの豊富な未透過物及び該金属イオンに乏しい透過物を得る工程、及び
該未透過物を該膜から上流にある該硫酸含有液体廃棄物に戻す工程、
を含み、
前記触媒が白金担持アルミナであり、
前記硫酸含有廃棄物が酸性であり、且つ
前記透過物が硫酸リッチである、前記方法。
【請求項2】
前記パージガスが窒素である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記硫酸含有液体廃棄物がツールから排出され、前記触媒が該ツールに搭載されている筐体又は該ツールの隣に位置する筐体に配置されている、請求項1又は2に記載の方法。」

第3 拒絶理由の概要
1.原査定の拒絶理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特表2002-503553号公報
刊行物2:特開昭61-283393号公報
刊行物3:特開平08-005779号公報
刊行物4:特開2002-320841号公報

拒絶理由通知の備考欄では、「本願請求項1-4、8、19に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。」(2頁22?23行)と記載され、拒絶査定の備考欄において、刊行物1?3に関して、「技術分野や課題が共通しないとする出願人の主張は採用できない。」(1頁下から7行?下から6行)という記載がある。

2.当審の拒絶理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物A:特開昭61-283393号公報(原査定で引用する刊行物2)
刊行物B:特開2002-320824号公報
刊行物C:特表2006-527067号公報
刊行物D:特開平11-335888号公報
刊行物E:特開2000-263043号公報


第4 当審の判断
1.原査定の拒絶理由について
(1)刊行物1の記載事項
刊行物1には、「過酸化水素支持酸化と膜分離法とを組み合わせることによる廃水浄化方法」(発明の名称)について、次の記載がある(当審注:下線は当審により付与。以下、同じ。)。
ア 「【0001】
本発明は、有機化合物を含有する水が、過酸化水素と溶存鉄イオンまたはチタンイオンとを含む試薬と混合される水の酸化処理方法に関する。」

イ 「【0007】
したがって、本発明は水含有有機化合物の酸化的処理方法に関し、本方法では、水を過酸化水素および溶存鉄イオンまたはチタンイオンを含む試薬と混合させ、この混合物を膜分離工程に通し、混合物から処理済み廃水として浸透液を除去することを含む。」

ウ 「【0010】
混合物を容器から膜分離工程に供給するとき、膜を保護するために、過酸化水素が膜分離工程に達する前に分解するように滞留時間を選択できる。Fenton酸化の反応溶液からの過酸化水素がプラスチック製膜を損傷させるのを防止するために、過酸化水素を容器の下流で触媒により分解させることができる。適切な触媒は、特に、担体上に担持されている酸化金属合金および貴金属である。耐薬品性膜を使用するとき、H_(2)O_(2)の触媒分解を免除できる。」

エ 「【0012】
本発明の方法の場合、とりわけ、Fe(II)およびFe(III)が溶液中に保持でき、濃縮物として直接再循環できる。加えて、Fe(II)/Fe(III)を廃水から連続的に回収し再循環できる。本発明の方法は、好ましくは、膜分離前に混合物をFe(III)のFe(II)への沈殿または還元に付すことなく行うことができる。
【0013】
本発明の方法の利点は、本質的には、鉄を回収することにより廃水特定量の金属塩およびしたがって、処理されるべき金属スラッジの金属塩を減少させ、未反応廃水成分を再循環させることにより化学反応器の空間-時間収率を上げ、そして生分解性成分に化学変換させることにより、問題のある廃水成分を確実に低下させることがある。」

オ 「【0015】
本発明の実施態様を図1または2を参照して詳細に下記に示す。それにより本発明を限定する意図はない。
本発明の方法では(図1)、廃水C_(AOX)、過酸化水素C_(H2O2)およびFe(II)溶液C_(Fe)(鉄塩)を反応器1中で混合し、ポンプ2により触媒3を介して鉄イオンの保持のための下流膜分離4に供給する。廃水の追加の浄化を可能にする膜分離4後、鉄イオンおよび充分に酸化されていない有機化合物(廃水成分)中で富む保持物5はさらに酸化させるために反応器1に再循環させる。プロセス回路のどの位置でも酸化の困難なイオンまたは化合物の蓄積を防止するために、必要なら、部分流を排出させることができる。浸透液6は処理済み廃水として膜分離4を去る。」

カ 図1「



(2)刊行物1に記載された発明の認定
上記ア、イより、刊行物1には、有機化合物を含有する水を酸化処理する方法において、有機化合物を含有する水と、過酸化水素と溶存鉄イオンを含む試薬とを混合する工程を備え、該混合する工程で得られた混合物から、膜分離工程によって浸透液を処理済み廃水として除去することが記載されている。

上記ウから、該方法では、該混合物を膜分離工程に供給するときに、膜を保護するために、担体上に担持されている酸化金属合金及び貴金属の触媒を用いて、過酸化水素を分解することが記載されている。

上記エによると、該方法は、Fe(II)およびFe(III)が溶液中に保持でき、濃縮物として直接再循環できることがわかる。

上記オには、上記ア、イの水の酸化(的)処理方法を具体化した実施態様として、廃水C_(AOX)、過酸化水素C_(H2O2)およびFe(II)溶液C_(Fe)(鉄塩)を反応器1中で混合し、ポンプ2により触媒3を介して膜分離4に供給し、膜分離4後、鉄イオン及び充分に酸化されていない有機化合物を含む保持物5はさらに酸化させるために反応器1に再循環させ、膜分離4の浸透液6は処理済み廃水とすることが記載されている。

上記カから、膜分離4は、「ナノフィルトレーション」であることがわかる。

そうすると、刊行物1には、
「有機化合物を含有する水を酸化処理する方法において、
有機化合物を含有する水に、過酸化水素と溶存鉄イオンを含む試薬とを、反応器中で混合する工程、
混合物から、担体上に担持されている酸化金属合金及び貴金属の触媒を用いて、過酸化水素を分解して除去する工程、
過酸化水素が分解された混合物をナノフィルトレーションの膜分離に供給する工程、
鉄イオン(Fe(II)、Fe(III))の濃縮物及び充分に酸化されていない有機化合物を含む保持物は反応器に再循環させる工程、
膜分離の浸透液は、処理済み廃水とする工程、を備えた
有機化合物を含有する水を酸化処理する方法」(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

(3)対比
(本願発明1について)
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「過酸化水素を分解する、担体上に担持されている酸化金属合金及び貴金属の触媒」は、「反応器」中の過酸化水素を分解するものであり、過酸化水素は、触媒によって、酸素と水とに分解されることは技術常識であるから、引用発明の「反応器」及び「過酸化水素を分解する、担体上に担持されている酸化金属合金及び貴金属の触媒」は、本願発明1の「筐体」及び「筐体中の触媒」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「ナノフィルトレーション」とは、「ナノ濾過膜」とも表記されることは明らかであるから、引用発明の「ナノフィルトレーションの膜分離」は、本願発明1の「ナノ濾過膜」に相当する。
そして、引用発明の「鉄イオン」は、本願発明1の「金属イオン」に相当し、引用発明の「透過液」は、鉄イオンが乏しいことは明らかであるから、本願発明1の「金属イオンに乏しい透過物」に相当する。
また、引用発明の「保持物」は、鉄イオンが豊富であって、膜分離を透過しないものであることは明らかであるから、本願発明1の「金属イオンの豊富な未透過物」に相当し、引用発明の、「保持物」は、有機化合物を含有する水と過酸化水素と溶存鉄イオンを含む試薬とが混合される「反応器」に再循環されることから、引用発明の「反応器に再循環させる工程」は、本願発明1の「該未透過物を該膜から上流」に「戻す工程」に相当する。

そして、本願発明1の「金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物を処理する方法」と、引用発明の「有機化合物を含有する水を酸化処理する方法」とは、処理方法である点で共通し、本願発明1の「金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物」と、引用発明の「有機化合物を含有する水」とは、被処理液体である点で共通する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「被処理液体を処理する方法であって、
該被処理液体を筐体中の触媒に曝して過酸化水素を酸素(O_(2))及び水(H_(2)O)に転化することにより該被処理液体から除去する工程、
該被処理液体を逆浸透又はナノ濾過膜に運んで該金属イオンの豊富な未透過物及び該金属イオンに乏しい透過物を得る工程、及び
該未透過物を該膜から上流にある該被処理液体に戻す工程、
を含む、
前記方法。」である点で一致し、次の相違点1?3で相違する。

(相違点1)
本願発明1では、
a:処理方法が、「金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物を処理する方法」であり、
b:被処理液体が、「酸性の」「金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物」であり、
c:ナノ濾過膜の透過物が、「硫酸リッチ」であるのに対し、
引用発明では、
a’:処理方法は、「有機化合物を含有する水を酸化処理する方法」であって、被処理液体に対し、有機化合物を酸化処理するために、過酸化水素と溶存鉄イオンを含む試薬とを、混合する工程を備えるものであり、
b’:被処理液体は、「有機化合物を含有する水」であって、金属イオン、過酸化水素及び硫酸を含有しておらず、
c’:ナノフィルトレーションの膜分離の浸透液は、「処理済み廃水」であって、硫酸リッチではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「触媒を含む筐体をパージガスでパージすることにより、前記過酸化水素を除去する際に生成されるガス状副生成物を除去する工程」を備えているのに対し、引用発明では、このような工程は備えていない点。

(相違点3)
過酸化水素を分解する触媒が、本願発明1では、「白金担持アルミナ」であるのに対し、引用発明では、「担体上に担持されている酸化金属合金及び貴金属」であって、「白金担持アルミナ」かどうかは不明な点。

(4)相違点についての判断
相違点1について検討する。
引用発明は、被処理液体である「有機化合物を含有する水」に「過酸化水素と溶存鉄イオンを含む試薬」を加えて、有機物を酸化処理することを目的とするものである。
これに対して、本願発明1は、「金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物」であって、除去すべき「過酸化水素」を含む被処理液体から「金属イオンに乏しい」「硫酸リッチである」透過物を得るものであるから、引用発明と解決しようとする課題が全く異なる。
そうすると、引用発明において、被処理液体を、「金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物」に変更する動機付けは存在しないというべきである。
したがって、引用発明に基いて、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

なお、原審の拒絶理由において引用された刊行物2?4の記載について、念のため、検討しておく。
刊行物2には、「酸化剤分解法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「2.特許請求の範囲
酸化剤を含有する重金属排水の処理において、前記酸化剤を分解する為に、亜硫酸水素ナトリウムを用いた事を特徴とする酸化剤分解法。
3.発明の詳細な説明
[産業上の利用分野]
本発明は、重金属排水処理における完全処理に関するものであり、更に詳しくは、重金属排水中に含まれる酸化物および各メッキ・エッチング工程における前処理、後処理等に使用される酸化剤で、酸化処理工程の排水を完全に分解する方法に関するものである。
[従来の技術]
従来、重金属排水、例えばメッキ・エッチング作業に伴う排水等の処理方法として、次のプロセスを行なうのが通常である。
まず、重金属排水中の酸化剤(例えば過酸化水素、酸性フッ化アンモニウム、過硫酸アンモニウム等)を処理し、その次に重金属(例えば、塩化第二銅、無クロム酸、その他メッキ重金属類等)を処理する。」(1頁左下欄4?右下欄5行)
「[発明が解決しようとする問題点]
前記重金属排水処理工程の重要な前処理としての酸化剤処理を行うための方法として、前に述べたアルカリ曝気法、アルカリ法、活性炭法、亜硫酸法について以下の欠点がある。
1)アルカリ性曝気法
・・・反応時間が非常に長くかかるという欠点がある。・・・
(2)アルカリ性処理法
・・・クロム排水処理後の排水として完全処理できなくなる欠点がある。・・・
3)アルカリ性活性炭分解法
・・・処理コストの問題がある。・・・
4)亜硫酸ソーダ法
・・・高価であり、処理コストの問題がある。」(2頁左上欄10行?左下欄18行)
「本発明は、酸化剤を含有する重金属排水の処理において、前記酸化剤を分解する為に、亜硫酸水素ナトリウムを用いた事を特徴とする酸化剤分解法である。」(2頁右下欄3?6行)

これらの記載から、刊行物2には、メッキ・エッチング工程などから排出される、酸化剤が含まれた重金属排水中の過酸化水素、酸性フッ化アンモニウム、過硫酸アンモニウム等の酸化剤を、アルカリ曝気法、アルカリ法、活性炭法、亜硫酸法等で分解したり、亜硫酸水素ナトリウムを用いて分解することが記載されていると認められる。

そして、刊行物3には、「復水浄化系のイオン交換樹脂劣化防止装置」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、沸騰水型原子炉(以下BWRと記す)原子力発電所において一次系冷却水を浄化するためのイオン交換樹脂の劣化防止および長寿命化を図るように構成した復水浄化系のイオン交換樹脂劣化防止装置に関する。」

また、刊行物4には、「固体触媒を利用した気液接触反応及び気体発生反応の勾配磁場による制御方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体触媒を利用する気液接触反応の制御方法および固体触媒を利用する気体発生反応の制御方法に関する。」

しかしながら、刊行物2?4のいずれの刊行物にも、引用発明のような、過酸化水素を含まない「有機化合物を含有する水を対象とした酸化処理」を、本願発明のような、過酸化水素を含む「金属イオンを含有する、メッキ方法からの硫酸含有液体廃棄物を処理する方法」に用いようとする、動機付けや示唆を見いだすことはできない。

そして、本願発明は、【0005】に記載されるような、液体廃棄物に添加する化学物質の減少、設備サイズの低減及び操作費用の減少に関する費用削減が図られるという、刊行物1?4に記載されたものからは予測し得ない、顕著な作用効果を奏するものであるから、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明及び刊行物2?4の記載に基いて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

したがって、相違点2?4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び刊行物2?4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(本願発明2、3について)
本願発明2及び3は、本願発明1を引用し、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1同様な理由から、引用発明及び刊行物2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.当審拒絶理由について
平成25年9月11日付けの拒絶理由通知に記載されているように、刊行物A(原審の拒絶理由通知における「刊行物2」)には、「重金属及び過酸化水素を含むメッキ作業に伴う重金属排水を分解する処理方法として、まず、重金属排水中の過酸化水素を、活性炭に過酸化水素を接触させることで酸素と水に分解(アルカリ性活性炭分解法)し、次に、過酸化水素が分解された重金属排水を逆浸透処理法(RO法)によって、重金属イオンを濾過する膜によって、重金属イオンを多く含む成分と重金属イオンを含まない成分とを得て、重金属排水から重金属イオンを除去する重金属排水の処理方法」(以下、「刊行物A発明」という。)が記載されているということができるものの、刊行物A発明は、過酸化水素を酸素と水とに分解する際に、被処理水をpH10以上にして、活性炭を用いる「アルカリ性活性炭分解法」を利用するものであるから、被処理水をpH10以上にすることで、「硫酸」成分は存在しなくなることから、膜を透過した重金属イオンを含まない成分が、「硫酸リッチ」となることはあり得ない。
そうすると、刊行物A発明の活性炭に代えて、本願発明のような、触媒として「白金担持アルミナ」を採用し、透過物を「硫酸リッチ」することには、阻害要因があるというべきであり、本願発明は、刊行物A発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-04-07 
出願番号 特願2009-547768(P2009-547768)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大島 忠宏近野 光知  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 吉水 純子
中澤 登
発明の名称 液体廃棄物を処理する方法  
代理人 辻居 幸一  
代理人 箱田 篤  
代理人 市川 さつき  
代理人 山崎 一夫  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 佐々木 康匡  
代理人 浅井 賢治  

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