• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1286162
審判番号 不服2012-16339  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-22 
確定日 2014-03-27 
事件の表示 特願2007- 65962「バックアップシステム、バックアップ方法、バックアッププログラムおよびプログラム記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月25日出願公開、特開2008-226063〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成19年3月15日の出願であって、平成22年3月2日付けで審査請求がなされ、平成24年3月9日付けで拒絶理由通知(同年3月13日発送)がなされ、同年5月11日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年5月25日付けで拒絶査定(同年5月29日謄本送達)がなされたものである。

これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成24年8月22日付けで本件審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

そして、平成24年10月29日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成25年4月15日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年4月16日発送)がなされたが、請求人からの応答がなかったものである。


第2 平成24年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年8月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成24年8月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成24年5月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9の記載

「 【請求項1】
それぞれで個別の処理を行う1ないし複数台の個別処理装置からなるシステムをバックアップするバックアップシステムにおいて、
1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
1ないし複数台の前記個別処理装置のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理装置それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理装置の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理装置それぞれに対して送信し、前記個別処理装置それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理装置それぞれの異常を検出する
ことを特徴とするバックアップシステム。
【請求項2】
1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれは、個別処理の実行により最新の状態が更新される都度、更新された最新の状態を前記共有データ蓄積装置に対して転送することを特徴とする請求項1に記載のバックアップシステム。
【請求項3】
前記共有データ蓄積装置は、前記個別処理装置のいずれかの異常を検出した際に、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理装置の前記起動パラメータ情報と最新の状態のうち、異常を検出した前記個別処理装置の前記起動パラメータ情報と最新の状態とを、前記予備装置に転送して起動することを特徴とする請求項1に記載のバックアップシステム。
【請求項4】
前記共有データ蓄積装置は、1台または2台備えられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバックアップシステム。
【請求項5】
前記共有データ蓄積装置が2台備えられている場合、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とを、2台の前記共有データ蓄積装置の両者の間で互いに同期化させた状態で蓄積することを特徴とする請求項4に記載のバックアップシステム。
【請求項6】
前記予備装置は、1ないし複数台備えられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のバックアップシステム。
【請求項7】
それぞれで個別の処理を行う1ないし複数台の個別処理装置からなるシステムをバックアップするバックアップ方法において、
1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
1ないし複数台の前記個別処理装置のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理装置それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理装置の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理装置それぞれに対して送信し、前記個別処理装置それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理装置それぞれの異常を検出する
ことを特徴とするバックアップ方法。
【請求項8】
請求項7に記載のバックアップ方法を、コンピュータにより実行可能なプログラムとして実施することを特徴とするバックアッププログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のバップアッププログラムを、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録していることを特徴とするプログラム記録媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
それぞれで個別の処理を行う1ないし複数の個別処理部からなるシステムをバックアップするバックアップシステムにおいて、
1ないし複数の前記個別処理部それぞれの起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
1ないし複数の前記個別処理部のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理部それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数台の前記個別処理部それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理部それぞれに対して送信し、前記個別処理部それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理部それぞれの異常を検出する
ことを特徴とするバックアップシステム。
【請求項2】
1ないし複数の前記個別処理部それぞれは、個別処理の実行により最新の状態が更新される都度、更新された最新の状態を前記共有データ蓄積装置に対して転送することを特徴とする請求項1に記載のバックアップシステム。
【請求項3】
前記共有データ蓄積装置は、前記個別処理部のいずれかの異常を検出した際に、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態のうち、異常を検出した前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態とを、前記予備装置に転送して起動することを特徴とする請求項1に記載のバックアップシステム。
【請求項4】
前記共有データ蓄積装置は、1台または2台備えられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバックアップシステム。
【請求項5】
前記共有データ蓄積装置が2台備えられている場合、1ないし複数の前記個別処理部それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とを、2台の前記共有データ蓄積装置の両者の間で互いに同期化させた状態で蓄積することを特徴とする請求項4に記載のバックアップシステム。
【請求項6】
前記予備装置は、1ないし複数台備えられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のバックアップシステム。
【請求項7】
それぞれで個別の処理を行う1ないし複数の個別処理部からなるシステムをバックアップするバックアップ方法において、
1ないし複数の前記個別処理部それぞれの起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、1ないし複数台の前記個別処理部それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
1ないし複数の前記個別処理部のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理部それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数の前記個別処理部それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理部それぞれに対して送信し、前記個別処理部それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理部それぞれの異常を検出する
ことを特徴とするバックアップ方法。
【請求項8】
請求項7に記載のバックアップ方法を、コンピュータにより実行可能なプログラムとして実施することを特徴とするバックアッププログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のバップアッププログラムを、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録していることを特徴とするプログラム記録媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

2.新規事項の有無

本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か、即ち、本件補正が願書に最初に添付された明細書、請求の範囲及び図面(以下、これを「当初明細書等」という。)に記載の範囲内でなされたものであるかについて、以下に検討する。

補正後の請求項1は、その記載からして、次の発明特定事項(a)及び(b1)を含んでいる。

(a)「1ないし複数の前記個別処理部のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理部それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され」る態様

(b1)「前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数台の前記個別処理部それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理部それぞれに対して送信し、前記個別処理部それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理部それぞれの異常を検出する」態様

また、補正後の請求項7は、その記載からして、次の発明特定事項(a)、(b2)、及び(c)を含んでいる。

(a)「1ないし複数の前記個別処理部のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理部それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され」る態様

(b2)「前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数の前記個別処理部それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理部それぞれに対して送信し、前記個別処理部それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理部それぞれの異常を検出する」態様

(c)「1ないし複数台の前記個別処理部それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置」

(1)発明特定事項(a)について

予備装置を代替起動させるために転送する情報に関して、出願当初の明細書を参照すると、(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0033】
図5に示す共有データ蓄積装置10による各個別処理装置の診断動作によって、共有データ蓄積装置10にて、例えば、個別処理装置(2)2の異常を検出した場合、共有データ蓄積装置10は、予備装置11を個別処理装置(2)2として代替起動させるために、必要な転送情報320を、共有データ蓄積装置10(図3の個別処理装置(2)用データ蓄積部212)から予備装置11に転送する。」、
「【0034】
予備装置11は、共有データ蓄積装置10からの転送情報320に基づいて、共有データ蓄積装置10の図3の個別処理装置(2)用データ蓄積部212の起動パラメータ蓄積部221の情報を予備装置11の図2の起動パラメータ蓄積部110に設定し、共有データ蓄積装置10の図3の個別処理装置(2)用データ蓄積部212の個別処理装置状態蓄積部222の情報を予備装置11の図2の個別処理装置状態蓄積部111に設定することによって、個別処理装置(2)2として直ちに代替起動する。なお、図3の個別処理装置(2)用データ蓄積情報212は、図4において説明したオンラインデータ更新動作により、個別処理装置状態蓄積部222に蓄積される装置稼動情報は、逐次、最新の状態に更新されている。」、

と記載されているように、当初明細書等においては、“代替起動させるために必要な転送情報(異常を検出した個別処理装置の起動パラメータ蓄積部の情報と個別処理装置状態蓄積部の情報)を転送する”態様が記載されているにすぎず、補正後の請求項1及び請求項7が含む前記(a)の含む態様(“異常になった個別処理部の起動パラメータ情報と最新の情報を転送する”態様)、即ち、個別処理装置の一部である個別処理部の起動パラメータ情報と最新の情報を転送することで予備装置を代替起動させることができる態様までは、当初明細書等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。

(2)発明特定事項(b1)及び(b2)について

ポーリングに関して、出願当初の明細書を参照すると、(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0031】
図5に示すように、共有データ蓄積装置10は、生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータ310をあらかじめ定めた一定周期ごとに送信して、現用系の個別処理装置(1)1、個別処理装置(2)2、…、個別処理装置(N)3それぞれからの応答を返送させることにより、現用系の個別処理装置(1)1、個別処理装置(2)2、…、個別処理装置(N)3それぞれの生存確認を行い、各個別処理装置の異常診断を実施する。共有データ蓄積装置10からの定期的なポーリングデータ310による異常診断により、個別処理装置(1)1、個別処理装置(2)2、…、個別処理装置(N)3の異常つまり生存の有無の早期発見が可能となる。」

と記載されているように、当初明細書等においては、共有データ蓄積装置がポーリングデータを送信して、個別処理装置それぞれからの応答を返送させることにより、各個別処理装置の異常診断を実施する態様が記載されているにすぎず、補正後の請求項1が含む前記(b1)の含む態様、及び請求項7が含む前記(b2)の含む態様、即ち、共有データ蓄積装置がポーリングデータを送信して、各個別処理部それぞれからの応答を確認することにより、各個別処理部それぞれの異常を検出する態様までは、当初明細書等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。

(3)発明特定事項(c)について

予備装置に関して、出願当初の明細書を参照すると、(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

「【0014】
(本発明の特徴)
本発明の実施例の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要を説明する。本発明は、共有データ蓄積装置を備え、独立に処理を行う個別処理装置の状態を監視し、個別処理装置の異常を検出した場合には、直ちに、その個別処理装置の代替となる予備装置を起動することを可能とする点にその特徴がある。つまり、それぞれが独立した個別処理装置の動作を監視し、最新の状態を逐次蓄積して一括管理する共有データ蓄積装置を備えるとともに、独立に動作する個別処理装置すべての代替として起動可能な予備装置を備え、共有データ蓄積装置が個別処理装置の異常を検出した際に、異常を検出した該個別処理装置の起動パラメータと最新の状態とを予備装置に引き継ぐことを可能としている。」

と記載されているように、当初明細書等においては、独立に動作する個別処理装置すべての代替として起動可能な予備装置が記載されているにすぎず、補正後の請求項7が含む前記(c)、即ち、1ないし複数台の個別処理部それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置までは、当初明細書等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもない。

(3)小括

以上のように、補正後の請求項1に記載された(a)及び(b1)の事項、補正後の請求項7に記載された(a)、(b2)、及び(c)の事項は、当初明細書等に記載されておらず、かつ、その記載から自明なものでもないから、本件補正は、当初明細書等に記載の範囲内においてするものではない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件

以上のように、補正前の請求項1及び請求項7についてする補正は、「2.新規事項の有無」で指摘したとおり、当初明細書等に記載の範囲内でしたものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が、当初明細書等に記載の範囲内でしたものであると仮定した場合に、本件補正後の請求項7に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」において、補正後の請求項7として引用した、次の記載のとおりのものである。

「それぞれで個別の処理を行う1ないし複数の個別処理部からなるシステムをバックアップするバックアップ方法において、
1ないし複数の前記個別処理部それぞれの起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、1ないし複数台の前記個別処理部それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
1ないし複数の前記個別処理部のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理部それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数の前記個別処理部それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理部それぞれに対して送信し、前記個別処理部それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理部それぞれの異常を検出する
ことを特徴とするバックアップ方法。」

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

(2-1)引用文献1

原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年3月9日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2001-147910号公報(平成13年5月29日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【請求項4】 正常時にバッチジョブ処理を実行する現用コンピュータと,正常時にはバッチジョブ処理機能を構築していない代替コンピュータと,前記現用コンピュータおよび前記代替コンピュータに接続された共有ディスク装置とを備える分散バッチジョブ処理システムにおいて、前記現用コンピュータはジョブを取込んで実行しその処理終了をジョブ実行結果として前記共有ディスク装置に通知するジョブ処理部を備え、前記共有ディスク装置は前記ジョブ処理部が通知してきた前記現用コンピュータのジョブ実行結果を格納するジョブ実行結果ファイルと、バッチジョブ処理機能を有するジョブ処理部を格納する実行ファイルと、前記現用コンピュータに障害が発生したときそれを検知し,前記実行ファイルから前記ジョブ処理部を前記代替コンピュータに組込み,前記ジョブ実行結果ファイルを参照して前記現用コンピュータで未処理のジョブを見出し,それを前記代替コンピュータに通知する障害処理部とを備え、前記代替コンピュータは前記共有ディスク装置によって組込まれたバッチジョブ処理機能を使用して前記現用コンピュータで未処理のジョブを実行するジョブ処理部を備えることを特徴とする分散バッチジョブ処理継続方式。」

B 「【0020】共有ディスク装置3は、障害処理部31を有し、それは障害検出手段311と機能組込手段312とジョブ実行結果読出手段313とジョブ再投入手段314とを含む。また、記憶装置としてジョブ実行結果ファイル32と実行ファイル33とを含む。
【0021】障害検出手段311は、現用コンピュータおよび代替コンピュータの状態を監視し、現用コンピュータに障害を検出した際に、代替コンピュータを決定する。」

C 「【0025】ジョブ実行結果ファイル32はジョブの実行結果を保存する記憶媒体、実行ファイル33はジョブ処理部21のセットアップモジュールを保存する記憶媒体である。」

そして、上記Aの記載からすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「正常時にバッチジョブ処理を実行する現用コンピュータと、正常時にはバッチジョブ処理機能を構築していない代替コンピュータと、前記現用コンピュータおよび前記代替コンピュータに接続された共有ディスク装置とを備え、
前記現用コンピュータは、ジョブを取込んで実行し、その処理終了をジョブ実行結果として前記共有ディスク装置に通知し、
前記共有ディスク装置は、通知してきた前記現用コンピュータのジョブ実行結果を格納するジョブ実行結果ファイルと、バッチジョブ処理機能を有するジョブ処理部を格納する実行ファイルとを備え、前記現用コンピュータに障害が発生したときそれを検知し、前記実行ファイルから前記ジョブ処理部を前記代替コンピュータに組込み、前記ジョブ実行結果ファイルを参照して前記現用コンピュータで未処理のジョブを見出し、それを前記代替コンピュータに通知し、
前記代替コンピュータは、前記共有ディスク装置によって組込まれたバッチジョブ処理機能を使用して前記現用コンピュータで未処理のジョブを実行する
ことを特徴とする分散バッチジョブ処理継続方法。」

(2-2)引用文献2

原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年3月9日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平4-369735号公報(平成4年12月22日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

D 「【要約】
【目的】 いずれかの稼働系計算機の故障発生を自動検出して待機系計算機を自動で立ち上げる。
【構成】 各稼働系計算機1A,1B,1Cのバックアップ用データ領域が確保された共有記憶装置6を備えるとともに、前記稼働系計算機1A,1B,1Cは、稼働中に自身の補助記憶装置4A,4B,4Cのデータを逐次書き替え、かつ前記共有記憶装置6内の自身のバックアップ用データを逐次書き替える一方、待機系計算機3は各稼働系計算機1A,1B,1Cの故障発生を監視し、いずれかの稼働系計算機の故障発生を検知した場合には、前記共有記憶装置6の該当するバックアップ用データを呼び出して自身の補助記憶装置5に複写した後、当該故障発生計算機のバックアップ処理を開始する。」

E 「【請求項1】 複数の稼働系計算機とこれら稼働系計算機のバックアップを行う待機系計算機とをオンライン接続し、かつ各稼働系計算機および待機系計算機のそれぞれに補助記憶装置を備えた計算機システムにおいて、前記各稼働系計算機毎のバックアップ用データ領域が確保された共有記憶装置を備えるとともに、前記稼働系計算機は、稼働中に自身の補助記憶装置のデータを逐次書き替え、かつ前記共有記憶装置内の自身のバックアップ用データを逐次書き替える一方、前記待機系計算機は各稼働系計算機の故障発生を監視し、いずれかの稼働系計算機の故障発生を検知した場合には、前記共有記憶装置の該当するバックアップ用データを呼び出して自身の補助記憶装置に複写した後、当該故障発生計算機のバックアップ処理を開始することを特徴とする計算機システムのバックアップ方式。」

(2-3)引用文献3

原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年3月9日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開2004/079573号(2004年9月16日国際公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

F 「次に運用時及びプロセッサカード故障時の動作について図1?図4を用いて説明する。
・・・(中略)・・・
主制御部103は、各プロセッサカード100?101、予備プロセッサカード102及び共有メモリ105のカード状態を状態監視バス104を使用して監視するための監視ポーリング処理を実行する。」(17頁7?14行)

(3)参考文献に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-298510号公報(平成11年10月29日出願公開。以下、「参考文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0002】
【従来の技術】近年の通信計算機技術に発達に伴い、LAN等のネットワークシステムが広く普及している。かかるネットワークシステムにおいては、その構成機器(ネットワーク機器)がいかなる状態にあるかを常時監視することが重要である。ネットワーク上にはハードディスク装置等の共有資源や、ハブ、ルータ等のネットワーク上の通信を保持する装置等が配置されているからである。また、ある部分的な処理(ジョブやオブジェクト)をネットワーク上の他の計算機に実行させたり、分散処理環境を構築する場合もあるので、各計算機の状態を管理することも必要である。
【0003】一般的には、ネットワーク上に管理ステーションが設けられて、ネットワーク管理システムが構築されている。この場合、管理ステーション(マネージャ)から定期的に各ネットワーク機器(エージェント)への「問いかけ」(ポーリング)が行われ、ネットワーク機器が正常に動作しているか否かの判断が行われる。具体的には、管理ステーションからの「問いかけ」に対して各ネットワーク機器が応答を返さない場合、そのネットワーク機器に異常が生じたという判断が下されるようになっている。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「代替コンピュータ」及び「共有ディスク装置」は、それぞれ、本願補正発明の「予備装置」及び「共有データ蓄積装置」に対応する。そして、引用発明の「現用コンピュータ」は、当初明細書等に記載されている「個別処理装置」に対応づけられるものであるところ、本願補正発明の「個別処理部」に関して、上記「2.新規事項の有無 」で指摘した事項が当初明細書等に記載の範囲内でしたものであると仮定した場合に、本願補正発明に記載の「個別処理部」が当初明細書等に記載の「個別処理装置」に相当するものであると解釈できるから、引用発明の「現用コンピュータ」は、本願補正発明の「個別処理部」に対応しているといえる。

(4-2)引用発明の「バッチジョブ処理継続方法」は、共有ディスク装置が現用コンピュータの障害を検知すると、共有ディスク装置に格納されているファイルを用いて現用コンピュータの処理を代替コンピュータに引き継ぐものであることから、本願補正発明の「バックアップ方法」に対応しているといえる。

(4-3)上記(4-1)及び(4-2)の検討内容から、引用発明と本願補正発明とは、“個別処理部をバックアップするバックアップ方法”である点で共通する。

(4-4)引用発明の「現用コンピュータは、ジョブを取込んで実行し、その処理終了をジョブ実行結果として前記共有ディスク装置に通知・・・共有ディスク装置は・・・通知してきた前記現用コンピュータのジョブ実行結果を格納」との記載からすると、引用発明の「ジョブ実行結果」は、現用コンピュータにおける最新の処理結果といえるものであることから、本願補正発明の「(個別処理部の)最新の状態」に相当するといえる。

(4-5)引用発明の「共有ディスク装置は・・・バッチジョブ処理機能を有するジョブ処理部を格納する実行ファイル」における「実行ファイル」は、共有ディスク装置に格納されているものであるが、上記Cの「実行ファイル33はジョブ処理部21のセットアップモジュールを保存する」との記載からすると、セットアップに必要な情報を有するものであることから、本願補正発明の「起動パラメータ情報」に対応するものといえる。

(4-6)上記(4-1)、(4-4)、及び(4-5)の検討内容から、引用発明と本願補正発明とは、“個別処理部の起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、個別処理部の代替動作を行うことが可能な予備装置”を備える点で共通する。

(4-7)引用発明の「前記共有ディスク装置は・・・前記現用コンピュータに障害が発生したときそれを検知し、前記実行ファイルから前記ジョブ処理部を前記代替コンピュータに組込み、前記ジョブ実行結果ファイルを参照して前記現用コンピュータで未処理のジョブを見出し、それを前記代替コンピュータに通知する」、「前記代替コンピュータは前記共有ディスク装置によって組込まれたバッチジョブ処理機能を使用して前記現用コンピュータで未処理のジョブを実行する」とは、現用コンピュータに障害が発生したときに、共有ディスク装置に格納されている実行ファイルとジョブ実行結果ファイルを代替コンピュータに通知し、代替コンピュータを(現用コンピュータとして)起動していることに他ならない。
してみると、引用発明と本願補正発明とは、“個別処理部が異常になった場合、共有データ蓄積装置に蓄積されている個別処理部の起動パラメータ情報と最新の状態とが、予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動”される点で共通する。

(4-8)上記Bの「共有ディスク装置3は・・・障害検出手段311・・・を含む・・・障害検出手段311は、現用コンピュータおよび代替コンピュータの状態を監視し、現用コンピュータに障害を検出した際に、代替コンピュータを決定する」との記載を参酌すると、引用発明の「前記共有ディスク装置は・・・前記現用コンピュータに障害が発生したときそれを検知」とは、共有ディスク装置は、現用コンピュータの状態を監視し、障害を検出していることに他ならない。
してみると、引用発明と本願補正発明とは、“共有データ蓄積装置は、個別処理部を監視し、前記個別処理部の異常を検出する”態様を備える点で共通する。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

個別処理部をバックアップするバックアップ方法において、
前記個別処理部の起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、前記個別処理部の代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
前記個別処理部が異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理部の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、前記個別処理部を監視し、前記個別処理部の異常を検出する
ことを特徴とするバックアップ方法。

(相違点1A)

個別処理部に関して、本願補正発明が、「それぞれで個別の処理を行う1ないし複数の個別処理部」であるのに対して、引用発明は、現用コンピュータが複数あるか不明である点。

(相違点2A)

個別処理部の監視に関して、本願補正発明が、「1ないし複数台の前記個別処理部それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理部それぞれに対して送信し、前記個別処理部それぞれからの応答を確認することにより」行うものであるのに対して、引用発明は、どのようにして現用コンピュータの生存の有無を監視するのか明記されていない点。

(5)当審の判断

上記相違点1A及び相違点2Aについて検討する。

(5-1)相違点1Aについて

本願補正発明は、個別処理部が1つである構成を含むものであり、その場合には、上記相違点1Aは、実質的な相違点とはならない。

なお、複数の稼働系計算機が、これら稼働系計算機のバックアップを行う待機系計算機を共有することについても、上記引用文献2(特に、上記D及び上記E参照)に記載されるように、周知技術であり、引用発明においても、複数の現用コンピュータを備え、これら複数の現用コンピュータが代替コンピュータを共有する構成とすることについても、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1Aは格別なものではない。

(5-2)相違点2Aについて

当該技術分野において、ネットワークで接続された機器の生存の有無をポーリングを用いて監視する技術は、従来から当業者が普通に採用している周知慣用技術に他ならない(必要があれば、上記引用文献3(特に、上記F)、上記参考文献(特に、上記G)等参照)。
そうすると、引用発明の共有ディスク装置が現用コンピュータの生存を監視するために、ポーリングを用いて行うように構成すること、すなわち、上記相違点2Aに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2Aは格別なものではない。

(5-3)小括

上記で検討したごとく、相違点1A及び相違点2Aは格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび

以上のとおり、本件補正は、上記「2.新規事項の有無」で指摘したとおり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

また、仮に、本件補正が、当初明細書等に記載の範囲内でしたものであると仮定した場合であっても、本件補正は、上記「3.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項7に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成24年8月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年5月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「それぞれで個別の処理を行う1ないし複数台の個別処理装置からなるシステムをバックアップするバックアップ方法において、
1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
1ないし複数台の前記個別処理装置のいずれかが異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理装置それぞれの前記起動パラメータ情報と最新の状態とのうち、異常になった前記個別処理装置の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理装置それぞれに対して送信し、前記個別処理装置それぞれからの応答を確認することにより、前記個別処理装置それぞれの異常を検出する
ことを特徴とするバックアップ方法。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成24年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比

本願発明は、前記「第2 平成24年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」で検討した本願補正発明における「(1ないし複数の(前記))個別処理部」を「(1ないし複数台の(前記))個別処理装置」にしたものである。

そうすると、

(1)引用発明の「現用コンピュータ」、「代替コンピュータ」、及び「共有ディスク装置」は、それぞれ、本願発明の「個別処理装置」、「予備装置」、及び「共有データ蓄積装置」に対応する。

(2)引用発明の「バッチジョブ処理継続方法」は、共有ディスク装置が現用コンピュータの障害を検知すると、共有ディスク装置に格納されているファイルを用いて現用コンピュータの処理を代替コンピュータに引き継ぐものであることから、本願発明の「バックアップ方法」に対応しているといえる。

(3)上記(1)及び(2)の検討内容から、引用発明と本願発明とは、“個別処理装置をバックアップするバックアップ方法”である点で共通する。

(4)引用発明の「現用コンピュータは、ジョブを取込んで実行し、その処理終了をジョブ実行結果として前記共有ディスク装置に通知・・・共有ディスク装置は・・・通知してきた前記現用コンピュータのジョブ実行結果を格納」との記載からすると、引用発明の「ジョブ実行結果」は、現用コンピュータにおける最新の処理結果といえるものであることから、本願発明の「(個別処理装置の)最新の状態」に相当するといえる。

(5)引用発明の「共有ディスク装置は・・・バッチジョブ処理機能を有するジョブ処理部を格納する実行ファイル」における「実行ファイル」は、共有ディスク装置に格納されているものであるが、上記Cの「実行ファイル33はジョブ処理部21のセットアップモジュールを保存する」との記載からすると、セットアップに必要な情報を有するものであることから、本願発明の「起動パラメータ情報」に対応するものといえる。

(6)上記(1)、(4)、及び(5)の検討内容から、引用発明と本願発明とは、“個別処理装置の起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、個別処理装置の代替動作を行うことが可能な予備装置”を備える点で共通する。

(7)引用発明の「前記共有ディスク装置は・・・前記現用コンピュータに障害が発生したときそれを検知し、前記実行ファイルから前記ジョブ処理部を前記代替コンピュータに組込み、前記ジョブ実行結果ファイルを参照して前記現用コンピュータで未処理のジョブを見出し、それを前記代替コンピュータに通知する」、「前記代替コンピュータは前記共有ディスク装置によって組込まれたバッチジョブ処理機能を使用して前記現用コンピュータで未処理のジョブを実行する」とは、現用コンピュータに障害が発生したときに、共有ディスク装置に格納されている実行ファイルとジョブ実行結果ファイルを代替コンピュータに通知し、代替コンピュータを(現用コンピュータとして)起動していることに他ならない。
してみると、引用発明と本願発明とは、“個別処理装置が異常になった場合、共有データ蓄積装置に蓄積されている個別処理装置の起動パラメータ情報と最新の状態とが、予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動”される点で共通する。

(8)上記Bの「共有ディスク装置3は・・・障害検出手段311・・・を含む・・・障害検出手段311は、現用コンピュータおよび代替コンピュータの状態を監視し、現用コンピュータに障害を検出した際に、代替コンピュータを決定する」との記載を参酌すると、引用発明の「前記共有ディスク装置は・・・前記現用コンピュータに障害が発生したときそれを検知」とは、共有ディスク装置は、現用コンピュータの状態を監視し、障害を検出していることに他ならない。
してみると、引用発明と本願発明とは、“共有データ蓄積装置は、個別処理装置を監視し、前記個別処理装置の異常を検出する”態様を備える点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

個別処理装置をバックアップするバックアップ方法において、
前記個別処理装置の起動用の起動パラメータ情報と最新の状態とを少なくとも蓄積する共有データ蓄積装置と、前記個別処理装置の代替動作を行うことが可能な予備装置と、を備え、
前記個別処理装置が異常になった場合、前記共有データ蓄積装置に蓄積されている前記個別処理装置の前記起動パラメータ情報と最新の状態とが、前記予備装置に転送されることにより、前記予備装置が起動され、
前記共有データ蓄積装置は、前記個別処理装置を監視し、前記個別処理装置の異常を検出する
ことを特徴とするバックアップ方法。

(相違点1B)

個別処理装置に関して、本願発明が、「それぞれで個別の処理を行う1ないし複数台の個別処理装置」であるのに対して、引用発明は、現用コンピュータが複数あるか不明である点。

(相違点2B)

個別処理装置の監視に関して、本願発明が、「1ないし複数台の前記個別処理装置それぞれの生存の有無を示す応答の返送を要求するポーリングデータをあらかじめ定めた周期ごとに定期的に前記個別処理装置それぞれに対して送信し、前記個別処理装置それぞれからの応答を確認することにより」行うものであるのに対して、引用発明は、どのようにして現用コンピュータの監視を行うのか明記されていない点。

4.当審の判断

上記相違点1B及び相違点2Bについて検討する。

上記相違点1B及び相違点2Bは、それぞれ、実質的に、上記相違点1A及び相違点2Aと同じであるから、上記「第2 平成24年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(5)当審の判断」に記載の理由と同様の理由により、上記相違点1B及び相違点2Bも、格別なものでない。

また、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-23 
結審通知日 2014-01-28 
審決日 2014-02-12 
出願番号 特願2007-65962(P2007-65962)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 俊範  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 田中 秀人
仲間 晃
発明の名称 バックアップシステム、バックアップ方法、バックアッププログラムおよびプログラム記録媒体  
代理人 家入 健  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ