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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C08L
管理番号 1286238
審判番号 不服2013-6248  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-05 
確定日 2014-04-14 
事件の表示 特願2005-276986「吸湿もしくは吸放湿性付与剤」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日出願公開、特開2007- 84731、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年9月26日を出願日とする特許出願であって、平成24年2月23日付けで拒絶理由が通知され、同年4月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年4月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年6月17日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月25日付けで前置報告がなされ、当審において、同年11月21日付けで審尋がなされ、平成26年1月27日に回答書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は、平成25年8月23日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「下記(A)と(B)の混合物からなることを特徴とする吸湿もしくは吸放湿性付与剤。
(A):スルホン酸(塩)基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a1)、(a1)以外のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a2)、およびジオール(a3)からなり、(a1)/(a2)のモル比が1/5?1/1であり、(a3)が、数平均分子量1,000?30,000のポリオキシエチレンであるポリエステル(但し、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに5-ナトリウムスルホイソフタル酸を10モル%以上50モル%未満共重合した共重合ポリエステルを除く)
(B):エチレングリコールのエチレンオキシド90?455モル付加物」

第3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由とされた平成24年2月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由3の概要は、この出願は平成24年4月25日提出の手続補正書により補正された請求項1を含む特許請求の範囲の記載が特許法36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)を満たしていない、というものである。

第4.原査定の拒絶の理由についての当審の判断
(1)本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書には、以下の記載がある。

(摘示ア)
「しかしながら、従来用いられているこれらの処理剤は帯電防止性の性能発現の点において十分満足できるものではなく、また吸湿性には帯電防止性と密接な関係を有するいわゆる吸湿性と、繊維における着心地性と密接な関係を有する吸放湿性があり、好ましい処理剤は吸湿性および吸放湿性をともに向上させるものであるところ、上記処理剤は帯電防止性の付与のみが目的であって、吸放湿性を改善する点においては十分とはいえなかった。
また、親水性の第3成分を共重合させる方法でも、吸湿もしくは吸放湿性は十分なものではなく、性能を向上させるために添加量を増すと得られる樹脂の機械物性は実用性の乏しいものとなり、本来の合成樹脂の持つ優れた特性を犠牲にしなければならないという問題があった。」(段落【0004】)

(摘示イ)
「本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記(A)と(B)の混合物からなることを特徴とする吸湿もしくは吸放湿性付与剤。
(A):スルホン酸(塩)基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a1)、ポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a2)、およびジオール(a3)からなるポリエステル
(B):ポリオキシアルキレン鎖含有化合物
;該付与剤を熱可塑性樹脂(C)に含有させてなる吸湿もしくは吸放湿性樹脂組成物;該組成物を成形してなる成形品;並びに該付与剤を樹脂成形品の表面に塗布してなる成形物品に関するものである。」(段落【0005】)

(摘示ウ)
「本発明の吸湿もしくは吸放湿性付与剤は、これを含有させてなる樹脂組成物を成形してなる成形品、もしくは該付与剤が表面塗布された成形物品が、樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するという効果を奏する。」(段落【0006】)

(摘示エ)
「ジオール(a3)には、脂肪族、脂環含有および芳香脂肪族ジオールおよびそれらのアルキレンオキシド(以下AOと略記)(C2?4、以下同じ)1?700(好ましくは40?500)モル付加物、ビスフェノールのAO1?700(好ましくは40?500)モル付加物およびポリオキシアルキレンからなる群から選ばれる1種以上が含まれる。・・・
ポリオキシアルキレン(アルキレンはC2?4)には、数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]1,000?30,000の、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン等が含まれる。
これらの(a3)のうち親水性付与の観点から好ましいのは、EG、ポリオキシエチレンおよびこれらの混合物である。上記(a3)は2種以上を併用してもよい。」(段落【0009】?【0010】)

(摘示オ)
「(a1)/(a2)のモル比は、吸湿もしくは吸放湿性および後述する成形品の機械物性の観点から好ましくは1/5?1/1、さらに好ましくは1/4?1/2である。」(段落【0012】)

(摘示カ)
「本発明におけるポリオキシアルキレン鎖含有化合物(B)としては、前記ジオール(a3)のAO付加物(付加モル数14?700)、および2価フェノール化合物[単環(C6?16、例えばハイドロキノン、レゾルシン)、多環(C10?20、例えばジヒドロキシナフタレン)、ビスフェノール(C13?20、例えばビスフェノールA、-Fおよび-S)等]のAO付加物(付加モル数14?700)、およびポリオキシアルキレン(前記に同じ。)等が挙げられる。
上記(B)のうち、吸湿もしくは吸放湿性の観点から好ましいのは、脂肪族ジオ-ルのAO付加物(付加モル数14?700)、さらに好ましいのはEGのEO90?455モル付加物である。」(段落【0015】)

(摘示キ)
「[吸湿もしくは吸放湿性付与剤の合成]
実施例1
Mn8,300のポリエチレングリコール[PEG-6000S、三洋化成工業(株)製]830部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩ジエチレングリコールエステルのEG溶液[SIPE-40L、三洋化成工業(株)製]108部、アジピン酸29部、イソフタル酸10部およびテトラブチルチタネート0.2部を反応容器に仕込み、5mmHgの減圧下で190℃まで昇温し、水およびEGを留去しながら12時間エステル交換反応させて、ポリエステルを得た。これにMn20,000のポリエチレングリコール[PEG20000、三洋化成工業(株)製、以下同じ。]226部を加え、100℃で2時間溶融混合して、吸湿もしくは吸放湿性付与剤(K1)を得た。
実施例2
実施例1において、Mn8,300のポリエチレングリコール830部に代えて、Mn2,000のポリエチレングリコール[PEG-2000、三洋化成工業(株)製]200部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、ポリエステルを得た。これにMn4,000のポリエチレングリコール[PEG-4000S、三洋化成工業(株)製、以下同じ。]226部を加え、100℃で2時間溶融混合して、吸湿もしくは吸放湿性付与剤(K2)を得た。
比較例1
実施例1において、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩ジエチレングリコールエステルのEG溶液108部、イソフタル酸10部に代えて、エチレングリコール10部、イソフタル酸37部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、ポリエステルを得た。これにMn20,000のポリエチレングリコール226部を加え、100℃で2時間溶融混合して、吸湿もしくは吸放湿性付与剤(比K1)を得た。
比較例2
実施例1において、Mn20,000のポリエチレングリコールを100℃で溶融混合しないこと以外は実施例1と同様に行い、吸湿もしくは吸放湿性付与剤(比K3)を得た。
[吸湿もしくは吸放湿性シートの成形]
実施例3
(K1)16部およびポリエチレンテレフタレート[MA-2103、ユニチカ(株)製、以下同じ。]64部をラボプラストミル[MODEL30R150、(株)東洋精機製作所製、以下同じ。]で280℃、30rpmで5分間混練後、小型プレス成形機[SA-302、テスター産業(株)製、以下同じ。]を用いて280℃、5kg/cm^(2)で圧縮し、吸湿もしくは吸放湿性シート(S1)(厚み0.5mm)を得た。
実施例4
(K2)16部および6-ナイロン[A1030BRL、ユニチカ(株)製]64部をラボプラストミルで240℃、30rpmで5分間混練後、小型プレス成形機を用いて240℃、5kg/cm^(2)で圧縮し、吸湿もしくは吸放湿性シート(S2)(厚み0.5mm)を得た。
実施例5
ポリエチレンテレフタレートのみを小型プレス成形機を用いて、280℃、5kg/cm^(2)で圧縮成形して得た樹脂シート(厚み0.5mm)の表面に、(K1)10部をN,N-ジメチルホルムアミド90部に溶解させた溶液を固形分として1g/m^(2)塗布し、吸湿もしくは吸放湿性シート(S3)を得た。
実施例6
6-ナイロンのみを小型プレス成形機を用いて、240℃、5kg/cm^(2)で圧縮成形して得た樹脂シート(厚み0.5mm)の表面に、(K2)10部をN,N-ジメチルホルムアミド90部に溶解させた溶液を固形分として1g/m^(2)塗布し、吸湿もしくは吸放湿性シート(S4)を得た。
比較例3
実施例3において、(K1)16部に代えて、(比K1)16部を用いたこと以外は実施例3と同様にして吸湿もしくは吸放湿性シート(比S1)を得た。
比較例4
実施例3において、(K1)16部に代えて、(比K2)16部を用いたこと以外は実施例3と同様にして吸湿もしくは吸放湿性シート(比S2)を得た。
比較例5
実施例5において、(K1)10部に代えて、(比K1)10部を用いたこと以外は実施例5と同様にして吸湿もしくは吸放湿性シート(比S3)を得た。
比較例6
実施例5において、(K1)10部に代えて、(比K2)10部を用いたこと以外は実施例5と同様にして吸湿もしくは吸放湿性シート(比S4)を得た。
比較例7
ポリエチレンテレフタレートのみを小型プレス成形機を用いて、280℃、5kg/cm^(2)で圧縮成形して樹脂シート(厚み0.5mm)(比S5)を得た。
比較例8
6-ナイロンのみを小型プレス成形機を用いて、280℃、5kg/cm^(2)で圧縮成形して樹脂シート(厚み0.5mm)(比S6)を得た。
得られたシートの吸湿率、吸放湿率、表面固有抵抗および引張強度測定結果を表1に示す。表1の結果から、実施例の成形シートは樹脂本来の機械物性を損なうことなく、比較例の成形シートに比べて優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有することがわかる。
【表1】


」(段落【0036】?【0038】、【0040】?【0045】、【0047】?【0048】、【0050】?【0053】)

(2)本願発明の課題
上記摘示した本願明細書の記載によれば、本願発明は、「従来用いられているこれらの処理剤は帯電防止性の性能発現の点において十分満足できるものではなく、・・・上記処理剤は帯電防止性の付与のみが目的であって、吸放湿性を改善する点においては十分とはいえなかった。また、親水性の第3成分を共重合させる方法でも、吸湿もしくは吸放湿性は十分なものではなく、性能を向上させるために添加量を増すと得られる樹脂の機械物性は実用性の乏しいものとなり、本来の合成樹脂の持つ優れた特性を犠牲にしなければならないという問題があった。」(摘示ア)ところ、「吸湿もしくは吸放湿性付与剤・・・を含有させてなる樹脂組成物を成形してなる成形品、もしくは該付与剤が表面塗布された成形物品が、樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するという効果を奏する」(摘示ウ)吸湿もしくは吸放湿性付与剤を提供することを課題とするものであると認められる。

(3)発明の詳細な説明に記載された事項と特許請求の範囲に記載された発明との対比
特許請求の範囲の記載が明細書のいわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、発明の詳細な説明の記載が、本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載との関係で、上記明細書のサポート要件に適合するか否かについてみる。
本願明細書の発明の詳細な説明には、摘示イ、エ?カからみて、
「(A):スルホン酸(塩)基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a1)、(a1)以外のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a2)、およびジオール(a3)からなり、(a1)/(a2)のモル比が1/5?1/1であり、(a3)が、数平均分子量1,000?30,000のポリオキシエチレンであるポリエステル

(B):エチレングリコールのエチレンオキシド90?455モル付加物
の混合物からなることを特徴とする吸湿もしくは吸放湿性付与剤」を用いること、具体的には、上記(A)と(B)の混合物からなる吸湿もしくは吸放湿性付与剤を含有させてなる樹脂組成物を成形してなる成形品、もしくは該付与剤が表面塗布された成形物品が、樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するものが製造可能となるといった課題解決を図るものであることを、当業者であれば容易に理解することができるといえる。
例えば、摘示キからみて、実施例1、2で得られた上記(A)と(B)の要件をすべて満たした吸湿もしくは吸放湿性付与剤を用いた樹脂シートと、比較例1で得られた上記(A)と(B)の要件のうち(a1)成分を含有していない(あわせて(a1)/(a2)のモル比の要件も満たしていない)吸湿もしくは吸放湿性付与剤を用いた樹脂シートとの対比から、あるいは、比較例2(補正前の比較例3)で得られた上記(A)と(B)の要件のうち(B)成分を含有していない吸湿もしくは吸放湿性付与剤を用いた樹脂シートとの対比から、上記(A)と(B)の要件のうち特に(a1)と(B)に関する要件を満たすことにより、引張強度が低下せず、吸湿率及び吸放湿率が高く、表面固有抵抗が低いものが得られることが理解できる。
したがって、上記(A)と(B)の要件をすべて満たした吸湿もしくは吸放湿性付与剤を使用することで、樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するものが製造可能となるといった課題の解決を図ることができることを当業者は認識できるといえる。
そして、本願発明の発明特定事項は、上記(A)と(B)のすべての要件と合致しているものと認められる。
したがって、本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は、当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえるから、サポート要件を満たすものである。

(4)請求項2?7について
請求項2?7は、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載するものである。そして、請求項1の記載がサポート要件を満たしていないということはできないとした上記の検討と同様の理由により、請求項2?7の記載についてもサポート要件を満たしていないということはできない。

(5)小括
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第5.前置審査における拒絶の理由の概要
前置審査における平成25年6月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2の概要はそれぞれ、本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(理由1)、あるいは、この出願は特許請求の範囲(請求項1?7)の記載が特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(理由2)、というものである。



引用文献4:特開2003-335929号公報

第6.前置審査における拒絶の理由についての当審の判断
1.理由1について
(1)引用文献の記載事項
引用文献4には、以下の記載が認められる。

(摘示1)
「【請求項1】 テトラメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、下記式(I)で示される有機スルホン酸金属塩(A)と下記式(II)で示されるポリアルキレンエーテルグリコール(B)とが共重合されたエラストマー中に、ポリアルキレンエーテルグリコール(C)が分散混合された、エラストマー組成物。
【化1】


【化2】


【請求項2】 有機スルホン酸金属塩の共重合量が、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として0.1?20モル%である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】 エラストマー組成物中のポリアルキレンエーテルグリコール成分の存在量が、該組成物を基準として5?90重量%である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】 請求項1?3のいずれか記載の組成物を溶融紡糸して得られる、吸水率が30?500%、35℃95%RH環境下24時間保持後の吸湿率が12?50%の範囲にある、繊維。」(特許請求の範囲。なお、上記式(I)及び式(II)については、以下、審決の便宜のため、構造式及びその注記を含め、それぞれ式(I)及び式(II)とのみ記す。)

(摘示2)
「本発明において、後述するように、成分(A)及び成分(B)を共重合したエラストマーは、テトラメチレンテレフタレート単位をそのハードセグメントの主たる繰り返し単位とする。ここで言う「主たる」とはテトラメチレンテレフタレート成分以外の繰り返し単位を、該ハードセグメントを構成する全繰り返し単位に対して、20モル%以下、好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下含有してもよいことを意味する。
共重合し得るジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルキシエタンジカルボン酸、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、P-オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂肪族のジカルボン酸成分を挙げることができる。」(段落【0012】?【0013】)

(摘示3)
「本発明のエラストマーに使用される成分(A)を示す前記式(I)中、R^(1)は芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基、X^(1)はエステル形成性の官能基、X^(2)はエステル形成性官能基又は水素原子であって、該エステル形成性の官能基としては、反応してエステルを形成しうる基であり、一般にはヒドロキシル基、カルボキシル基又はそれらのエステルである。Mは、Na、K、Liなどのアルカリ金属又はMg、Caなどのアルカリ土類金属であり、なかでもNa、Kが好ましい。このような有機スルホン酸金属塩は、1種でも2種以上の混合物としても使用でき、好ましい具体例としては、5-ナトリムスルホイソフタル酸ジメチル、5-カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-リチウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(p-ヒドロキシエチル)エステル、5-カリウムスルホイソフタル酸ビス(p-ヒドロキシエチル)エステル、5-リチウムスルホイソフタル酸ビス(p-ヒドロキシエチル)エステル等を挙げることができる。
有機スルホン酸金属塩の共重合量は、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として0.1?20モル%であり、特に0.2?15モル%が好ましい。該成分(A)は、エラストマー製造時、エステル交換反応を開始する前の任意の段階で、反応系系内へ添加することが好ましい。
本発明のエラストマーに使用される、前掲式(II)で示される成分(B)としてのポリアルキレンエーテルグリコールは、エラストマーに弾性性能と吸水性能とを付与する目的で共重合させるものである。該ポリアルキレンエーテルグリコール成分の存在量は、後述するエラストマー中に分散混合するポリアルキレンエーテルグリコールとあわせて、エラストマー組成物を基準として5?90重量%であることが好ましく、特に10?80重量%であることが好ましい。該成分は、エラストマーの合成が完了する以前の任意の段階で反応系系内へ添加すればよいが、エステル交換反応開始前に反応系系内へ添加することが好ましい。
ここで、エラストマー組成物中におけるポリアルキレンエーテルグリコールの存在状態としては、エラストマー中に共重合しているものと、共重合せずに組成物中に分散混合しているものとが混在しており、その両者の割合は、上述の組成物中におけるポリアルキレンエーテルグリコール成分の存在量によって決定される。
式(II)で示されるポリアルキレンエーテルグリコールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体などを例示することができる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量としては、400?6000が好ましく、中でも600?4000が特に好ましい。
また、エラストマー中に分散混合されるポリアルキレンエーテルグリコール(C)としては、上記のポリアルキレンエーテルグリコール(B)と同じであっても異なっていてもよく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体などを例示することができる。なかでも、ポリアルキレンエーテルグリコール(C)の方が(B)よりも大きい方が好ましい。」(段落【0017】?【0022】)

(摘示4)
「本発明においては、上記反応中に共存させておいたポリアルキレンエーテルグリコールの一部を、未反応の状態でエラストマー中に分散させた状態のエラストマー組成物として得ることができるが、別途ポリアルキレンエーテルグリコールをエラストマー中に添加混合してもよい。」(段落【0031】)

(摘示5)
「本発明のエラストマー組成物は、幅広い成形条件下で安定して成形することができ、通常の溶融紡糸方法を適用することができる。・・・
このようにして得られた本発明の繊維の糸条形態は、フィラメント、ステープルのいずれでもよく、総糸繊度、単糸繊度、撚数、交絡数などは繊維の使用目的に応じて適宜設定することができる。
更に、本発明の繊維を布帛となすにあたっては、本発明の繊維100%使いとしてもよく、他の繊維と併せて使用してもよい。ここで、他繊維と併用するにあたって、複合糸として使う場合には、混繊糸、複合仮撚糸とすればよく、このような併用できる繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、パラ型又はメタ型アラミド、およびこれらの改質及び/又は複合繊維、さらには天然繊維、再生繊維、半合成繊維などから自由に選択して用いることができる。
また、フィルムやシートに成形する際においても、製膜後一方向のみに張力をかけて異方性を持たせる方法、同時に又は任意の順序で二方向に延伸する方法、二段以上の多段延伸する方法などに所望の条件を何等支障なく採用することができる。」(段落【0033】?【0037】)

(摘示6)
「[実施例1]テレフタル酸ジメチル100重量部、テトラメチレングリコ-ル64重量部、エチレングリコール10重量部、成分(A)としての5-ナトリウムスルホイソフタル酸10重量部及び成分(B)及び(C)としてのポリエチレングリコール(数平均分子量4000)200重量部を仕込み、エステル交換反応触媒として酢酸ナトリウム3水和塩を更に添加して、副生するメタノールを系外に留去しつつ、エステル交換反応を実施した。メタノールの留去がほぼ終了した段階で、安定剤として正リン酸を添加して、エステル交換反応を終了した。
続いて、重合触媒としてテトラブチルチタネートを添加した後に、250℃まで加熱昇温して、反応生成物を高温高真空下で重縮合反応させて、固有粘度0.82、Col-b値17.3のエステル系エラストマー組成物を得た。
得られたエステル系エラストマー組成物をカッティング装置にて、粒径2.4mmのチップにカッティング後、乾燥機にて160℃で5時間乾燥させた。チップの吸水率は103%、吸湿率は10.3%であった。
[実施例2]実施例1において、5-ナトリウムスルホイソフタル酸の添加量を10重量部から代えて5重量部に変更したこと以外は同様の操作を行ったところ、固有粘度0.76、Col-b値16.8のエステル系エラストマー組成物を得た。実施例1と同様に、カッティングと乾燥を行ったところ、チップの吸水率は91%、吸湿率は9.5%であった。
[比較例1]実施例1において、成分(A)としての5-ナトリウムスルホイソフタル酸を添加しなかったこと以外は同様の操作を行ったところ、固有粘度0.67、Col-b値16.7のエステル系エラストマー組成物を得た。チップの吸水率は68%、吸湿率は7.4%であり、必ずしも十分なレベルではなかった。
[比較例2]実施例2において、成分(B)としてのポリエチレングリコールを添加しなかったこと以外は、同様の操作を行ったところ、固有粘度0.63、Col-b値9.8のポリエステルを得た。チップの吸水率は0.2%、吸湿率は0.1%であり、必ずしも十分なレベルではなかった。
[実施例3]テレフタル酸ジメチル90重量部、テトラメチレングリコ-ル68重量部、エチレングリコール20重量部、成分(A)としての5-ナトリウムスルホイソフタル酸16重量部及び成分(B)及び(C)としてのポリエチレングリコール(数平均分子量4000)120重量部を仕込み、エステル交換反応触媒として酢酸ナトリウム3水和塩を更に添加して、副生するメタノールを系外に留去しつつ、エステル交換反応を実施した。メタノールの留去がほぼ終了した段階で、安定剤として正リン酸を添加して、エステル交換反応を終了した。
続いて、重合触媒としてテトラブチルチタネートを添加した後に、250℃まで加熱昇温して、反応生成物を高温高真空下で重縮合反応させて、固有粘度0.82のエステル系エラストマー組成物を得た。
得られたエステル系エラストマー組成物を溶融紡糸機で、紡糸温度230℃、紡糸速度3000m/分の条件で円形断面口金を使用して溶融吐出した後、冷却固化、油剤付与した後、引取りローラを介して引き取って、135dtex/36フィラメントの繊維を得た。得られた繊維より、常法に従って筒編みを作り、この編地について吸水率、吸湿率をそれぞれ測定したところ、吸水率68%、吸湿率14%と良好なものであった。
[実施例4]実施例3において、5-ナトリムスルホイソフタル酸の量を16重量部から代えて7重量部としたこと以外は同様の操作を行ったところ、固有粘度0.76のエラストマー組成物を得た。また、編地の吸水率は59%、吸湿率は12%であり、吸水性、吸湿性ともに良好なものであった。」(段落【0039】?【0048】)

(2)引用文献4に記載された発明
引用文献4には、摘示1の記載からみて、「テトラメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、式(I)で示される有機スルホン酸金属塩(A)と式(II)で示されるポリアルキレンエーテルグリコール(B)とが共重合されたエラストマー中に、ポリアルキレンエーテルグリコール(C)が分散混合された、エラストマー組成物」が記載されている。
そして、(A)と(B)とが共重合されたエラストマーについて、摘示2から、「共重合し得るジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルキシエタンジカルボン酸、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、P-オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂肪族のジカルボン酸成分」ことが記載されており、実施例において有機スルホン金属酸塩である「5-ナトリウムスルホイソフタル酸」とは別に「テレフタル酸ジメチル」(摘示6)が用いられている。
したがって、引用文献4には、
「テトラメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、式(I)で示される有機スルホン酸金属塩(A)と式(II)で示されるポリアルキレンエーテルグリコール(B)、及び前記(A)以外の芳香族、脂肪族のジカルボン酸成分とが共重合されたエラストマー中に、ポリアルキレンエーテルグリコール(C)が分散混合された、エラストマー組成物」
なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「式(I)で示される有機スルホン酸金属塩(A)」については、摘示3から、「好ましい具体例としては、5-ナトリムスルホイソフタル酸ジメチル、5-カリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-リチウムスルホイソフタル酸ジメチル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(p-ヒドロキシエチル)エステル、5-カリウムスルホイソフタル酸ビス(p-ヒドロキシエチル)エステル、5-リチウムスルホイソフタル酸ビス(p-ヒドロキシエチル)エステル等」が記載されており、本願発明における「スルホン酸(塩)基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a1)」に相当する。
また、引用発明における「(A)以外の芳香族、脂肪族のジカルボン酸成分」は、本願発明における「(a1)以外のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a2)」に相当する。
そして、引用発明における「式(II)で示されるポリアルキレンエーテルグリコール(B)」は、摘示3から、「式(II)で示されるポリアルキレンエーテルグリコールとして、ポリエチレングリコール・・・を例示することができる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量としては、400?6000が好ましく、中でも600?4000が特に好ましい」ことが記載されており、本願発明における「ジオール(a3)・・・が、・・・ポリオキシエチレン」に相当し、その数平均分子量の範囲である「1,000?30,000」についても重複一致している。
さらに、引用発明における「(A)と・・・(B)、及び前記(A)以外の芳香族、脂肪族のジカルボン酸成分とが共重合されたエラストマー」は、本願発明における「(a1)、・・・(a2)、および・・・(a3)からなり・・・ポリエステル」に相当する。
また、引用発明は、本願発明における「但し、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに5-ナトリウムスルホイソフタル酸を10モル%以上50モル%未満共重合した共重合ポリエステルを除く」の要件を満たすものである。

したがって、両発明は、
「(A):スルホン酸(塩)基を有する芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a1)、(a1)以外のポリカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体(a2)、およびジオール(a3)からなり、(a3)が、数平均分子量1,000?30,000のポリオキシエチレンであるポリエステル(但し、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに5-ナトリウムスルホイソフタル酸を10モル%以上50モル%未満共重合した共重合ポリエステルを除く)、
を含有する組成物」
の点で一致し、以下の相違点で相違するものと認められる。

相違点(1)
「(A)と(B)の混合物」について、本願発明においては、「(A)と(B):エチレングリコールのエチレンオキシド90?455モル付加物の混合物」であるのに対し、引用発明においては、「エラストマー中に、ポリアルキレンエーテルグリコール(C)が分散混合された、エラストマー組成物」である点

相違点(2)
(a1)/(a2)のモル比について、本願発明においては、「(a1)/(a2)のモル比が1/5?1/1」であるのに対し、引用発明においては、この点について格別特定していない点

相違点(3)
組成物について、本願発明においては、「吸湿もしくは吸放湿性付与剤」であるのに対し、引用発明においては、この点について格別特定していない点

(4)相違点についての検討
相違点(1)について
本願発明における(B)成分に関して、本願明細書には、「(B)のうち、吸湿もしくは吸放湿性の観点から好ましいのは、・・・EGのEO90?455モル付加物である。(B)のMnは、樹脂物性および成形品中での耐移行性、並びに吸湿もしくは吸放湿性の観点から好ましくは1,000?30,000」(段落【0015】?【0016】)であることが記載されている。ここで、(B)成分であるエチレングリコールのエチレンオキシド90?455モル付加物は、数平均分子量Mnが1,000?3,000のポリエチレングリコールと同等のものであるといえる。してみれば、本願発明は、(B)成分として、「エチレングリコールのエチレンオキシドのエチレンオキシド90?455モル付加物」を採用することにより、「樹脂物性および成形品中での耐移行性、並びに吸湿もしくは吸放湿性」の観点で好ましいことから、「樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するという効果を奏する」(摘示ウ)吸湿もしくは吸放湿性付与剤を提供するという本願発明の課題を解決するものであるといえる。
そして、(B)成分として「エチレングリコールのエチレンオキシドのエチレンオキシド90?455モル付加物」を採用することによって得られる効果として、本願明細書の実施例において、本願発明における(A)と(B)の要件をすべて満たした吸湿もしくは吸放湿性付与剤を用いた樹脂シートと、比較例2(補正前の比較例3)で得られた当該(A)と(B)の要件のうち(B)成分を含有していない吸湿もしくは吸放湿性付与剤を用いた樹脂シートと比較して、引張強度が低下せず、吸湿率及び吸放湿率が高く、表面固有抵抗が低いものが得られたことが記載されている。
これに対して、引用文献4には、摘示3からみて、本願発明における(B)成分に対応する成分(C)であるポリアルキレンエーテルグリコールについて、「ポリアルキレンエーテルグリコール(B)と同じであっても異なっていてもよく」とされ、当該「ポリアルキレンエーテルグリコール(B)」について例示されたものの一つとして「ポリオキシエチレン」が記載されており、また、「ポリアルキレンエーテルグリコール(C)の方が(B)よりも大きい方が好ましい」と記載されている。しかしながら、本願発明の課題である、樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するという効果を奏する吸湿もしくは吸放湿性付与剤を提供することと、成分(C)として成分(B)と同じポリオキシアルキレングリコールとし、さらにポリオキシアルキレングリコールとして例示された重合体の中から「エチレングリコールのエチレンオキシドのエチレンオキシド90?455モル付加物」を選択することとの関係について引用文献4には記載も示唆もなく、本願の出願時における当業者の技術常識であるということもできない。
してみれば、引用発明における「ポリアルキレングリコール(C)として「エチレングリコールのエチレンオキシドのエチレンオキシド90?455モル付加物」を採用することは想到容易であるということはできない。
なお、引用文献4には、摘示6からみて、「・・・成分(B)及び成分(C)としてのポリエチレングリコール(数平均分子量4000)・・・を仕込み・・・エステル交換反応を実施した・・・続いて、重合触媒としてテトラブチルチタネートを添加した後に、250℃まで加熱し昇温して、反応生成物を高温高真空下で重縮合反応させて、・・・エステル系エラストマー組成物を得た」実施例が記載されているが、当該実施例では、成分(C)としてのポリエチレングリコールを添加した後に成分(A)、成分(B)と共重合させていることから、当該実施例で用いられた成分(C)は、本願発明におけるポリエステルを構成する共重合成分の一つである。よって、当該実施例における成分(C)としてのポリエチレングリコールは、ポリエステルとは別の成分として樹脂組成物に分散混合させたものではないと解するのが自然であり、引用発明における共重合されたエラストマー中に分散混合された「ポリエチレングリコール(C)」に該当するとはいえない。この点について、摘示4には、「反応中に共存させておいたポリアルキレンエーテルグリコールの一部を、未反応状態でエラストマー中に分散させた状態のエラストマー組成物として得ることができる」ことが記載されているが、当該実施例において、成分(C)が未反応状態でエラストマー中に分散させた状態であることを示す記載はない。してみれば、当該実施例の記載を参酌しても、引用発明における「ポリアルキレングリコール(C)として「「エチレングリコールのエチレンオキシドのエチレンオキシド90?455モル付加物」を採用することは想到容易であるということはできない。

相違点(2)について
引用文献4には、摘示6からみて、「5-スルホイソフタル酸」と「テレフタル酸ジメチル」が用いられた実施例が記載されているが、当該実施例における両者のモル比は、「5-スルホイソフタル酸」/「テレフタル酸ジメチル」は最大で0.14(実施例3)であり、本願発明における(a1)/(a2)のモル比の数値範囲である1/5?1/1と重複一致しない。
一方、本願明細書には、「(a1)/(a2)のモル比は、吸湿もしくは吸放湿性および後述する成形品の機械物性の観点から好ましくは1/5?1/1」(段落【0012】)であることが記載されていることから、本願発明は、(a1)/(a2)のモル比を1/5?1/1とすることにより、樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するという効果を奏する吸湿もしくは吸放湿性付与剤を提供するという本願発明の課題を解決するものであるといえる。
これに対し、引用文献4には、摘示1、3から、「有機スルホン酸金属塩の共重合量は、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として0.1?20モル%」とすることが記載されているが、ここで全ジカルボン酸成分には、有機スルホン酸金属塩がジカルボン酸成分である場合(例えば、実施例で用いられている5-スルホイソフタル酸)についてその共重合量を全ジカルボン酸成分に含めないことが規定されておらず、当該「有機スルホン酸金属塩の共重合量は、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として0.1?20モル%」なる記載が有機スルホン金属塩と有機スルホン金属塩以外のジカルボン酸成分のモル比を示すものということはできない。そして、本願発明の課題である、樹脂本来の機械物性を損なうことなく従来のものより優れた吸湿性、吸放湿性および帯電防止性を有するという効果を奏する吸湿もしくは吸放湿性付与剤を提供することと、有機スルホン金属塩と有機スルホン金属塩以外のジカルボン酸成分のモル比を1/5?1/1とすることとの関係について、引用文献4には記載も示唆もなく、本願の出願時における当業者の技術常識であるということはできない。
してみれば、引用発明における有機スルホン金属塩と有機スルホン金属塩以外のジカルボン酸成分について、両者のモル比を1/5?1/1とすることは想到容易であるということはできない。

相違点(3)について
引用文献4には、摘示1からみて、組成物を溶融紡糸して得られる繊維について、「吸水率が30?500%、35℃95%RH環境下24時間保持後の吸湿率が12?50%」である物性を有することが記載されている。しかしながら、引用発明における組成物は、樹脂とともに樹脂組成物に含有させる吸湿もしくは吸放湿性付与剤ではなく、それ自体を成形して成形品となすものである。また、摘示5には、引用発明の組成物単独から成形した繊維以外に、他繊維と併用する態様、フィルムやシートに成形する態様が記載されているものの、引用発明の組成物を吸湿もしくは吸放湿性付与剤として他の樹脂とともに樹脂組成物に含有させることについて記載も示唆もない。さらに、高吸水性と高吸湿率を備えた繊維を成形しうる組成物を、吸湿もしくは吸放湿性付与剤として、他の樹脂とともに樹脂組成物に含有させることが、本願の出願時における当業者の技術常識であるということはできない。
してみれば、引用発明における組成物について、当該組成物を吸湿もしくは吸放湿性付与剤とすることは想到容易であるということはできない。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献4に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるということはできない。

(5)請求項2?7に係る発明について
請求項2?7は、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載するものである。そして、本願発明が引用文献4に記載された発明から想到容易であるといえないのは上述のとおりであるから、請求項2?7に係る発明についても同様に、いわゆる進歩性を否定することはできない。

2.理由2について
理由2は、上記第5.のとおり、この出願は特許請求の範囲(請求項1?7)の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。そこで、発明の詳細な説明の記載が本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載との関係で、いわゆるサポート要件に適合するか否かについて検討するに、上記第4.での検討のとおり、本願発明に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は、当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえるから、サポート要件を満たすものである。
また、請求項2?7は、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載するものである。そして、請求項1の記載がサポート要件を満たしていないということはできないとした上記の検討と同様の理由により、請求項2?7の記載についてもサポート要件を満たしていないということはできない。

3.小括
以上のとおりであるから、本願については、前置審査における平成25年6月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第7.むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由及び前置審査における平成25年6月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由を検討しても、それらの理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-24 
出願番号 特願2005-276986(P2005-276986)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (C08L)
P 1 8・ 121- WY (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 亨  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 大島 祥吾
塩見 篤史
発明の名称 吸湿もしくは吸放湿性付与剤  
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