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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1286258
審判番号 不服2012-24325  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-07 
確定日 2014-03-24 
事件の表示 特願2010-515007「コンテナ交換に基づく統計の収集」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日国際公開、WO2009/006055、平成22年10月14日国内公表、特表2010-532892〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2008年6月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年6月29日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年7月29日付けの拒絶理由通知に対して平成23年11月1日付けで手続補正がなされ,平成24年1月18日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成24年4月17日付けで手続補正がなされたが,平成24年8月6日付けで補正却下の決定がなされるとともに同日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成24年12月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,さらに平成25年5月24日付けの審尋に対して平成25年8月22日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成24年12月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年12月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容について
平成24年12月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,平成23年11月1日付けの手続補正による補正前の請求項1?13は,補正後の請求項1?13のとおりに補正された。
このうち,補正前の請求項1は,補正後の請求項1に対応するものと認められるところ,補正前の請求項1及び補正後の請求項1はそれぞれ以下のとおりである。
(なお,下線は,補正の個所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)

<補正前>
「 【請求項1】
データのコンテナに関する統計を追跡するコンピュータにより実施される方法であって,
前記コンテナの複製を取得するための要求を受け取るステップと,
前記要求の受け取りに応答して,前記コンテナの複製を転送するステップと,
前記コンテナの複製の転送に応答して,前記コンテナに関する統計を更新するステップと,
前記更新した統計を前記コンテナに格納するステップと,
を備えている,方法。」

<補正後>
「 【請求項1】
データのコンテナに関する統計を追跡するコンピュータにより実施される方法であって,
前記コンテナの複製を取得するための要求を受け取るステップと,
前記要求の受け取りに応答して,前記コンテナの複製をネットワークを介して転送するステップと,
前記コンテナの複製の転送に応答して,前記コンテナの前記ネットワークを通じたダウンロードに関する統計を更新するステップと,
前記更新した統計を前記コンテナに格納するステップと,
を備えている,方法。」

2.補正の目的について
補正後の請求項1は,補正前の請求項1に対して,「コンテナの複製を転送する」ことを,「コンテナの複製をネットワークを介して転送する」ことに限定し,「コンテナに関する統計」を,「コンテナの前記ネットワークを通じたダウンロードに関する統計」に限定するものであるから,請求項1に係る本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-15662号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,希望者に,自身の音楽的才能を発表する場を提供するための発表環境提供システム,発表環境提供方法に関する。」

(イ)「【0017】図1に,本発明の一実施形態に係る発表環境提供システムの機能ブロック図を,示す。
【0018】図示したように,発表環境提供システムは,インターネットに接続されて使用されるシステムであり,発表依頼受付部11,アーティスト個人ページ作成部12,一般機器用Webサーバ部13,携帯電話用Webサーバ部14,システム管理部15を,備える。なお,この発表環境提供システムは,1台の装置や,1箇所或いは複数箇所に設置される複数台の装置によって構成されるものである。
【0019】まず,一般機器用Webサーバ部13が有している機能の説明,並びに,システム管理部15が有している機能の一部の説明を,行なう。
【0020】一般機器用Webサーバ部13は,さまざまなWebページと,さまざまな楽曲データ(試聴用データ及び配信用データ)とを保持し,保持しているWebページや楽曲データを,要求元に供給するユニットである。
【0021】一般機器用Webサーバ部13が保持し,要求元に供給する各Webページは,一般的なコンピュータ(表示できるWebページに特に制限がない機器)での閲覧に適したものである。また,一般機器用Webサーバ部13によって公開されるWebページは,音楽業界関係者用のWebページと,一般者用のWebページとに分類でき,後者に分類されるWebページとしては,登録用Webページ群,案内用Webページ群,複数種類のアーティスト個人ページ等が,ある。」

(ウ)「【0023】アーティスト個人ページは,図3に模式的に示したように,アーティスト名,プロフィール,楽曲自己推奨文,自己紹介イメージ等が掲載されているとともに,閲覧者が,楽曲の一部を試聴(無料)したい場合に操作すべきアイテム,楽曲全部の配信(ダウンロード;有料)を受けたい場合に操作すべきアイテム等を備えたWebページである。さらに,アーティスト個人ページは,自ページがアクセスされた総回数が示されるアクセス数カウンタ,試聴,配信が要求された総回数が示される試聴数カウンタ,配信数カウンタを,備えている。なお,本実施形態では,アーティスト個人ページの操作により閲覧者が行なえる楽曲の一部の試聴が,請求項における“楽曲の一部についての聴取”に相当しており,アーティスト個人ページの操作により閲覧者が行なえる楽曲全部の配信が,請求項における“楽曲の全てについての聴取”に相当している。」

(エ)「【0026】また,本発表環境提供システムは,有料のサービス(配信用データの送信,CDのオンライン購入)を受けられる者を,所定の手続きを行なうことによってメンバIDとパスワードとが付与されている者(以下,メンバと表記する)に限った,各メンバのメンバID及びパスワードをシステム管理部15が管理するシステムとして構成されている。すなわち,一般機器用Webサーバ部13は,有料のサービス提供が要求された場合(楽曲の配信或いはCD購入が要求された場合),所定のWebページを提供することにより,その要求者から,メンバID及びパスワードを取得する。次いで,一般機器用Webサーバ部13は,取得したメンバID及びパスワードの正当性の確認をシステム管理部15に依頼する。そして,一般機器用Webサーバ部13は,システム管理部15によってメンバID及びパスワードの正当性が確認された場合だけに,楽曲の配信要求或いはCDの購入要求を受理して,要求に応答するための実際の処理,すなわち,配信用データを送信する処理,或いは,CDが購入されたこと(CDを購入者に配送すべきこと)をシステム管理部15に通知する処理を,実行する。」

(オ)「【0043】すなわち,アーティスト個人ページ作成部12は,依頼内容情報に含まれる楽曲データから,楽曲の一部をストリーミング再生させるための試聴用データと楽曲の全てを再生させるための配信用データとを,作成する(ステップS101)。なお,楽曲データが所定形式のデータであった場合,このステップでは,その楽曲データがそのまま配信用データとされる。
【0044】次いで,アーティスト個人ページ作成部12は,依頼内容情報に含まれるアーティスト名,プロフィールデータ,楽曲自己推奨文データ,自己紹介用のイメージデータを,一般機器用アーティスト個人ページの雛型に組み込むことにより,閲覧者が,楽曲の一部の無料での試聴を要求するためのアイテム,楽曲全部の有料での配信を要求するためのアイテム等を備えた一般機器用アーティスト個人ページを作成する(ステップS102)。
【0045】そして,アーティスト個人ページ作成部12は,ステップS102にて作成したアーティスト個人ページ,並びに,ステップS101にて作成された試聴用データ及び配信用データを,一般機器用Webサーバ部13に供給する(ステップS103)。また,アーティスト個人ページ作成部12は,一般機器用Webサーバ部13が保持している案内用Webページ群,一般機器用Webサーバ部13に付与されている検索機能が検索対象とするデータベースに,作成したアーティスト個人ページに関する情報を追加する処理を行なう(ステップS104)。すなわち,アーティスト個人ページ作成部12は,新たに作成されたアーティスト個人ページを,メンバ或いは非メンバが,案内用Webページ群に対する操作により訪れることが出来るようにするための処理を行なう。」

(カ)「【0050】システム管理部15は,メンバデータベース,音楽業界メンバデータベース,利用状況管理データベースを,備えている。
【0051】メンバデータベースは,メンバ毎に,本人認証を行なうための情報(メンバID,パスワード)と,メンバへの課金に必要な情報(銀行口座番号,クレジットカード番号等)と,メンバの属性を示す情報(性別,年令等)とが,記憶されたデータベースであり,音楽業界メンバデータベースは,同様の情報が,音楽業界メンバ毎に記憶されたデータベースである。システム管理部15は,これらのデータベースを参照することにより,一般機器用Webサーバ部13からのメンバID及びパスワードの正当性の確認依頼を,処理する。
【0052】利用状況データベースは,アーティスト情報に対応づけて,各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を示す情報(試聴履歴,配信履歴,BBSの利用履歴,CD購入履歴)を,記憶するためのデータベースである。
【0053】システム管理部15は,アーティスト個人ページ作成部12から,発表者の名前,住所等が供給された際(図6:ステップS108参照)には,それらの情報を含むレコードを利用状況データベースへ追加することにより,新たにアーティスト個人ページが作成されたアーティストを,管理対象に加える。
【0054】また,システム管理部15は,一般機器用Webサーバ部13,携帯電話用Webサーバ部14と情報交換を行なうことにより,管理対象となっている各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を把握して,利用状況を示す情報を,利用状況データベースに記憶する。
【0055】さらに,システム管理部15は,利用状況データベース内に,楽曲の試聴及び配信の回数が所定基準を上回ったアーティスト(本実施形態では,試聴1回:1ポイント,配信1回:5ポイントとして,500ポイントを得たアーティスト)を見出した際には,そのアーティストに関するBBS用のWebページを作成し,そのWebページを一般機器用Webサーバ部13に公開させる。また,システム管理部15は,利用状況データベース内に記憶されているメンバIDをキーに,メンバデータベースを検索することにより,楽曲の配信を受けた各メンバの性別,年令,住所等を把握し,楽曲の配信を受けたメンバの数を,各種の基準(年令層別,性別,地区別等)で表示させることが出来るアーティスト評価用ページ(図5参照)を,作成する。そして,システム管理部15は,作成したアーティスト評価用ページを,一般機器用Webサーバ部13に公開させる。」

(キ)「【0059】以上,説明したように,本発表環境提供システムでは,発表が依頼された楽曲が,その楽曲の無料での試聴,有料での配信(ダウンロード)を閲覧者が要求することが出来るとともに,楽曲の試聴回数や配信回数が表示されるアーティスト個人ページにて,公開される。従って,本発表環境提供システムによれば,発表依頼(参加申込み)を行なった者は,自身の楽曲が一般に公開されていることをインターネット上で確認でき,試聴数カウンタ等の値から,その評判を知ることができることになる。また,音楽業界メンバは,アーティスト評価用ページを閲覧することにより,マーケットのニーズに合致している楽曲(或いは楽曲の歌い手)を,探し出すことが出来る。何故ならば,アーティスト評価用ページには,属性別に配信回数を表示させることが出来るものとなっており,配信回数は,楽曲(或いは,楽曲の歌い手)が良いもの(料金を支払う価値のあるもの)であると考えている者の数を示す情報となっているからである。」

(a)上記摘記事項(エ),(オ)及び(カ)には,「発表環境提供システムが備える,アーティスト個人ページ作成部12,一般機器用Webサーバ部13及びシステム管理部15が実行する動作内容が記載されていることから,引用例1には,「発表環境提供システムにおいて実行される方法」が記載されていることは明らかである。

(b)上記摘記事項(カ)の「利用状況データベースは,アーティスト情報に対応づけて,各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を示す情報(試聴履歴,配信履歴,BBSの利用履歴,CD購入履歴)を,記憶するためのデータベースである」との記載,「システム管理部15は,一般機器用Webサーバ部13,携帯電話用Webサーバ部14と情報交換を行なうことにより,管理対象となっている各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を把握して,利用状況を示す情報を,利用状況データベースに記憶する」との記載,及び「システム管理部15は,利用状況データベース内に,楽曲の試聴及び配信の回数が所定基準を上回ったアーティスト(本実施形態では,試聴1回:1ポイント,配信1回:5ポイントとして,500ポイントを得たアーティスト)を見出した際には,そのアーティストに関するBBS用のWebページを作成し,そのWebページを一般機器用Webサーバ部13に公開させる」との記載からみて,引用例1の「利用状況データベース」内には,「アーティスト個人ページの利用状況を示す情報」として,「楽曲の配信回数」が記憶されていることは明らかである。

上記(a)(b)の点をふまえ,上記摘記事項(ア)?(キ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「希望者に,自身の音楽的才能を発表する場を提供するための発表環境提供システムにおいて実行される方法であって,
発表環境提供システムは,インターネットに接続されて使用されるシステムであり,アーティスト個人ページ作成部12,一般機器用Webサーバ部13及びシステム管理部15を備えており,
アーティスト個人ページ作成部12は,依頼内容情報に含まれる楽曲データから,楽曲を再生させるための配信用データを作成するとともに,閲覧者が,楽曲の配信を要求するためのアイテム等を備えた一般機器用アーティスト個人ページを作成し,
ここで,アーティスト個人ページは,アーティスト名,プロフィール,楽曲自己推奨文,自己紹介イメージ等が掲載されているとともに,閲覧者が,楽曲の配信(ダウンロード)を受けたい場合に操作すべきアイテム,配信が要求された総回数が示される配信数カウンタ等を備えたWebページであり,
アーティスト個人ページ作成部12は,作成したアーティスト個人ページ及び配信用データを一般機器用Webサーバ部13に供給し,
一般機器用Webサーバ部13は,さまざまなWebページと,さまざまな楽曲データ(配信用データ)とを保持し,保持しているWebページや楽曲データを,要求元に供給するユニットであり,
一般機器用Webサーバ部13は,楽曲の配信が要求された場合,配信用データを送信する処理を実行し,
システム管理部15は,アーティスト情報に対応づけて,各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を示す情報として楽曲の配信回数を記憶する利用状況データベースを備えており,
システム管理部15は,一般機器用Webサーバ部13と情報交換を行なうことにより,管理対象となっている各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を把握して,利用状況を示す情報として楽曲の配信回数を利用状況データベースに記憶する
方法。」

4.対比
本件補正発明と引用例1発明とを対比する。

(a)
(a-1)引用例1発明の配信用データは,楽曲データから作成されて配信される「データ」であり,一方,本件補正発明の「データのコンテナ」は,ネットワークを通じたダウンロード,即ち「配信」が行われる「データ」であるから,引用例1発明の「配信用データ」と本件補正発明の「データのコンテナ」とは,共に「データ」である点で共通している。
また,引用例1発明において,楽曲は,配信用データによって配信されるものであるから,引用例1発明の「楽曲の配信回数」は,当該楽曲を含む「配信用データ」の「配信回数」と同等のものであり,この「配信回数」が,本件補正発明の「統計」に相当する。
してみれば,引用例1発明の「楽曲の配信回数」と本件補正発明の「データのコンテナに関する統計」とは,後記する点で相違するものの,「データに関する統計」の点で共通している。
(a-2)引用例1発明では,システム管理部15が,一般機器用Webサーバ部13と情報交換を行なうことにより,管理対象となっている各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を把握して,利用状況を示す情報として楽曲の配信回数を利用状況データベースに記憶している。
ここで,引用例1発明における「利用状況を把握する処理」や「配信回数を記憶する処理」は,「配信回数(統計)」を「管理」する処理であるということができるから,引用例1発明と本件補正発明とは,「統計を管理する」「方法」である点で共通している。
(a-3)引用例1発明の「発表環境提供システム」が「コンピュータ」で構成されたものであることは明らかであるから,引用例1発明と本件補正発明とは,「コンピュータにより実施される方法」である点で共通している。
(a-4)以上の(a-1)?(a-3)のことから,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「データに関する統計を管理するコンピュータにより実施される方法」である点で共通している。

(b)引用例1発明における「配信用データ」は,一般機器用Webサーバ部13に保持されており,同じ楽曲の要求に対して,何度でも同じ「配信用データ」が送信されるものと認められるから,「閲覧者が,楽曲の配信を要求」するたびに,一般機器用Webサーバ部13に保持されている「配信用データ」が「複製」されて送信され,これを閲覧者が「取得する」ことは明らかである。
してみれば,引用例1発明の「楽曲の配信の要求」と本件補正発明の「コンテナの複製を取得するための要求」とは,「データの複製を取得するための要求」である点で共通している。
また,引用例1発明において,「発表環境提供システム」が,閲覧者から「楽曲の配信の要求」を「受け取る」ことは自明のことである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「データの複製を取得するための要求を受け取るステップ」を備えている点で共通している。

(c)引用例1発明において,一般機器用Webサーバ部13は,「楽曲の配信が要求された場合,配信用データを送信する処理を実行し」ている。
ここで,上記(b)で記載したように,引用例1発明において,「発表環境提供システム」は,「楽曲の配信の要求」を「受け取る」ことから,この「配信の要求」の「受け取りに応答して」,配信用データの「複製」の送信処理を実行していることは明らかである。
また,引用例1の図1の記載を参照すれば,引用例1発明において,配信用データの「複製」が,インターネットを「介して」送信されることは明らかである。
そして,引用例1発明の「インターネット」「送信」がそれぞれ本件補正発明の「ネットワーク」「転送」に相当する。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「要求の受け取りに応答して,データの複製をネットワークを介して転送するステップ」を備えている点で共通している。

(d)引用例1発明において,システム管理部15は,・・・アーティスト個人ページの利用状況を把握して,利用状況を示す情報として楽曲の配信回数を利用状況データベースに記憶している。
ここで,引用例1発明の「楽曲の配信回数」は,上記(a)でも記載したように,「配信用データの配信回数」と同等のものであり,引用例1発明の「楽曲の配信回数」は,「配信用データ」の「インターネット(ネットワーク)」を「通じた」「配信(ダウンロード)」に「関する」「統計」であると言えるから,引用例1発明の「楽曲の配信回数」と本件補正発明の「コンテナのネットワークを通じたダウンロードに関する統計」とは,「データのネットワークを通じたダウンロードに関する統計」である点で共通している。
また,引用例1発明の「配信回数」が,「配信データ」の「複製」の「送信(転送)」に「応答」して,「更新」されることは自明のことである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「データの複製の転送に応答して,データのネットワークを通じたダウンロードに関する統計を更新するステップ」を備えている点で共通している。

(e)引用例1発明では,システム管理部15が,アーティスト個人ページの利用状況を把握して,利用状況を示す情報として楽曲の配信回数を利用状況データベースに記憶している。
ここで,利用状況データベースに記憶する「配信回数」が,上記(d)における「更新」がなされた後の,「更新した統計」であることは明らかである。
また,引用例1発明の「記憶する」が本件補正発明の「格納する」に相当する。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「更新した統計を格納するステップ」を備えている点で共通している。

そうすると,本件補正発明と引用例1発明とは,

「データに関する統計を管理するコンピュータにより実施される方法であって,
前記データの複製を取得するための要求を受け取るステップと,
前記要求の受け取りに応答して,前記データの複製をネットワークを介して転送するステップと,
前記データの複製の転送に応答して,前記データの前記ネットワークを通じたダウンロードに関する統計を更新するステップと,
前記更新した統計を格納するステップと,
を備えている,方法。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
「データ」が,本件補正発明では,「データのコンテナ」であるのに対して,引用例1発明では,「配信用データ」であり,この「配信用データ」が「コンテナ」の形態であるかどうか不明な点。

[相違点2]
統計を格納する格納先が,本件補正発明では,「コンテナ」であるのに対して,引用例1発明では,「利用状況データベース」である点。

[相違点3]
本件補正発明が,「統計を追跡する方法」であるのに対して,引用例1発明は,「統計を管理する方法」である点。

5.当審の判断
上記各相違点について検討する。

[相違点1],[相違点2]について
音楽,映画,画像等のデジタルコンテンツを配信する際に,当該コンテンツを含む「コンテナ」の形態で配信することは,例えば特開2002-109105号公報(特に第1図,【要約】の【課題】の記載,【0002】,【0008】段落の記載参照),特開2001-256413号公報(特に第12図,【0001】,【0120】,【0134】?【0135】段落の記載参照)等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術1」という。)である。
また,ネットワークを介して提供されるコンテンツに,当該コンテンツを管理するための管理情報を付加して当該コンテンツを管理するように構成することは,例えば特開2001-67408号公報(特に第4図,【0032】段落の「データ付加情報」の記載参照),特開2003-337585号公報(特に第3図,【0043】段落の「ヘッダ部」の記載参照)等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術2」という。)である。
してみれば,引用例1発明に上記周知技術1を適用して,楽曲を配信する際に,当該楽曲を含む「コンテナ」の形態で配信するように構成することには何ら困難性がなく,また,その際,上記周知技術2を採用して,当該コンテナの配信に関する管理情報(ダウンロードに関する統計)を当該「コンテナ」に付加して当該「コンテナ」を管理するように構成すること,すなわち,「コンテナ」に,当該「コンテナ」のダウンロードに関する統計を格納するように構成することは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
引用例1発明の「管理対象となっている各アーティストに関するアーティスト個人ページの利用状況を把握して,利用状況を示す情報として楽曲の配信回数を利用状況データベースに記憶する」との処理において,記憶される「配信回数」が最新の「配信回数」であることは明らかなことであるから,引用例1発明において,最新の「配信回数(統計)」を記憶するために,最新の「配信回数(統計)」を「追跡」するように構成すること,すなわち,「統計を追跡する方法」の発明とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本件補正発明の作用効果も,引用例1発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって,本件補正発明は,引用例1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年12月7日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成23年11月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
データのコンテナに関する統計を追跡するコンピュータにより実施される方法であって,
前記コンテナの複製を取得するための要求を受け取るステップと,
前記要求の受け取りに応答して,前記コンテナの複製を転送するステップと,
前記コンテナの複製の転送に応答して,前記コンテナに関する統計を更新するステップと,
前記更新した統計を前記コンテナに格納するステップと,
を備えている,方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には,上記「第2 [理由]3.」に記載したとおりの事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から,上記「第2 [理由]2.」に記載した限定事項を省いたものである。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2 [理由]5.」に記載したとおり,引用例1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-28 
結審通知日 2013-10-29 
審決日 2013-11-11 
出願番号 特願2010-515007(P2010-515007)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄中内 大介  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
清田 健一
発明の名称 コンテナ交換に基づく統計の収集  
代理人 星野 修  
代理人 小林 泰  
代理人 上田 忠  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  

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