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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1286298 |
審判番号 | 不服2013-3139 |
総通号数 | 173 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-18 |
確定日 | 2014-03-26 |
事件の表示 | 特願2010-524066「バイアスギャップインダクタとその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日国際公開、WO2009/032377、平成22年12月 9日国内公表、特表2010-538494〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2008年6月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年9月7日、2008年6月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年8月6日付けで手続補正されたが、同年10月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月18日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、平成25年5月21日付けで審尋がなされたが、回答書が提出されず期間経過となったものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年2月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は本件補正前の平成24年8月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された 「バイアスギャップインダクタにおいて、 第1強磁性体プレート、 第2強磁性体プレート、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間に挟まれたコンダクタ、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間の接着剤 を備え、 前記接着剤は、磁性粉を含むことで第1の磁気ギャップ及び第2の磁気ギャップを形成しており、前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され、500μm未満の厚みを有し、 前記磁性粉が定常磁束を印加し、前記第1の磁気ギャップは前記第2の磁気ギャップと反対方向に極性化されるように前記接着剤が磁化されることを特徴とするバイアスギャップインダクタ。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「バイアスギャップインダクタにおいて、 第1強磁性体プレート、 第2強磁性体プレート、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間に挟まれたコンダクタ、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間の接着剤 を備え、 前記接着剤は、磁性粉を含むことで第1の磁気ギャップ、第2の磁気ギャップ及び第3の磁気ギャップを形成しており、前記第2の磁気ギャップは前記第1の磁気ギャップと前記第3の磁気ギャップとの間に位置し、前記接着剤は前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され、500μm未満の厚みを有し、 前記磁性粉が定常磁束を印加し、前記第1の磁気ギャップ、前記第2の磁気ギャップ及び前記第3の磁気ギャップが、隣り合うギャップが相互に逆方向に極性化されるように前記接着剤が磁化されることを特徴とするバイアスギャップインダクタ。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「第1の磁気ギャップ及び第2の磁気ギャップを形成しており」に関し、「第1の磁気ギャップ、第2の磁気ギャップ及び第3の磁気ギャップを形成しており、前記第2の磁気ギャップは前記第1の磁気ギャップと前記第3の磁気ギャップとの間に位置し」と限定し、また、「前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され」に関し、「前記接着剤は前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され」と補正し、主語「前記接着剤は」を付加したが補正の前後において実質的な差異はなく、また、「前記第1の磁気ギャップは前記第2の磁気ギャップと反対方向に極性化される」に関し、「前記第1の磁気ギャップ、前記第2の磁気ギャップ及び前記第3の磁気ギャップが、隣り合うギャップが相互に逆方向に極性化される」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同改正前の特許法第17条の2第5項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。 (2)引用発明 A 原審の拒絶理由に引用された特開2002-359125号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、磁性コアのギャップに磁石を挿入してなるインダクタ部品に関し、特に、各種電子機器やスイッチング電源等に使用されるインダクタ部品に関するものである。」(2頁2欄) ロ.「【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施の形態に係るインダクタ部品について図1及び図5を参照して詳細に説明する。図1は、本発発明の第1の実施の形態に係わるインダクタ部品の構成を示した図であり、(a)は組立完成斜視図で、(b)は(a)の断面図であり、導体に流れる電流による磁界と永久磁石による磁界によって生じる磁束線の向きを示した図である。 【0010】図示のインダクタ部品は、Uの字コア11とI型コア12とからなる磁性コア、導体13、および永久磁石14で構成される。図1(b)に示されるように、導体13に流れる電流による磁界によって生じる磁束は実線矢印(符号15)の向きに流れ、永久磁石14による磁界によって生じる磁束は破線矢印(符号16)の向きに流れる。 【0011】ここで用いたUの字コア11およびI型コア12はMn-Znフェライトからなり、磁路長が2.0cm、実効断面積が0.5cm^(2)のものである。組み合わせたコアの寸法は20mm×10mm×5mmである。また永久磁石14は、厚みが50μm、断面積が0.5cm^(2)で定まる形状のものを2枚使用し、原料粉末にはSmCoを用いている。その具体的な内容については後でに詳細に述べる。 【0012】導体13は銅板を所定の形状に打ち抜き半田メッキを施している。直流抵抗は0.35mΩである。永久磁石14はUの字コア11とI型コア12が接する2ヶ所に配置する。永久磁石14の向きは導体13が作る磁界とは逆向きの磁界を発生するように定める。テープや接着によりコアは組立接合される。直流重畳の測定をした結果を図5に示す。 【0013】図5において、実線51が永久磁石14を挿入した場合、実線52が永久磁石14を挿入していない場合である。この結果から明らかなように、永久磁石14によりおよそ35%の直流重畳の向上が見られた。」(3頁3?4欄) 上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0010】における「図示のインダクタ部品は、Uの字コア11とI型コア12とからなる磁性コア、導体13、および永久磁石14で構成される。」との記載、及び図1(a)(b)によれば、インダクタ部品は、Uの字コア(11)と、I型コア(12)と、導体(13)と、永久磁石(14)とを備えている。ここで、図1(a)(b)によれば、前述の導体(13)は、Uの字コア(11)とI型コア(12)の間に挟まれていることが見て取れる。そして、前述の永久磁石(14)は、Uの字コア(11)とI型コア(12)の間にあることが見て取れる。 また、上記ロ.の【0011】における「ここで用いたUの字コア11およびI型コア12はMn-Znフェライトからなり、」との記載によれば、前述のUの字コア(11)及びI型コア(12)は、Mn-Znフェライトからなっている。 また、上記ロ.の【0011】における「永久磁石14は、厚みが50μm、断面積が0.5cm^(2)で定まる形状のものを2枚使用し、原料粉末にはSmCoを用いている。」との記載、及び図1(a)(b)によれば、前述の永久磁石(14)は、SmCo粉末を含むことで2つの磁気ギャップを形成しているということができ、50μmの厚みを有することが読み取れる。 また、上記ロ.の【0010】における「図1(b)に示されるように、導体13に流れる電流による磁界によって生じる磁束は実線矢印(符号15)の向きに流れ、永久磁石14による磁界によって生じる磁束は破線矢印(符号16)の向きに流れる。」との記載、及び図1(b)によれば、前述の永久磁石(14)は、2つの永久磁石(14)の磁化方向は互いに逆方向であり、2つの永久磁石(14)による磁界は一定であることは明らかであるから、前述の永久磁石(14)は、定常磁束を印加し、前述の2つの磁気ギャップは、磁気ギャップが相互に逆方向に極性化されるように磁化されていているということができる。ここで、前述の永久磁石(14)の定常磁束は、SmCo粉末から生じていることは自明である。 したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「インダクタ部品において、 Mn-ZnフェライトからなるUの字コア(11)、 Mn-ZnフェライトからなるI型コア(12)、 前記Mn-ZnフェライトからなるUの字コア(11)と前記Mn-ZnフェライトからなるI型コア(12)の間に挟まれた導体(13)、 前記Mn-ZnフェライトからなるUの字コア(11)と前記Mn-ZnフェライトからなるI型コア(12)の間の永久磁石(14) を備え、 前記永久磁石(14)は、SmCo粉末を含むことで2つの磁気ギャップを形成しており、50μmの厚みを有し、 前記SmCo粉末が定常磁束を印加し、前記2つの磁気ギャップが、磁気ギャップが相互に逆方向に極性化されるように磁化されているインダクタ部品。」 B 原審の拒絶理由に引用された国際公開第2004/027795号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ハ.「技術分野 本発明は、各種の電器製品および小型精密機器、自動車等に使用されるアクチュエータ、センサー、電子部品等のデバイスに幅広く使用されるのに好適なボンド磁石に関し、特にその製造方法及びそれを利用した磁気デバイスの製造方法に関する。」(1頁3?7行) ニ.「本発明のボンド磁石は、磁石合金粉末(着磁されていない状態を指す。)として、ネオジウム(Nd)-鉄(Fe)-ホウ素(B)系やサマリウム(Sm)-コバルト系(Co)の希土類磁石粉末、あるいはフェライト系などの磁石粉末を使用する。まず、予め用意した磁石合金粉末を、樹脂等の非磁性の円筒容器に充填し着磁用コイルの中に置き、例えば希土類磁石粉末の場合5Tから10Tの範囲の磁場を印加し、着磁させる。 次に、着磁された合金磁石粉末(着磁された状態を指し、上記磁石合金粉末と区別される。)を、樹脂と混練し、ペースト化する。 このとき用いる樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を単独または溶媒で希釈し使用するか、あるいはポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニルサルファイト樹脂、芳香族系ナイロン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂を単独で加熱して混練するかまたは溶媒で希釈したものを使用する。 前述の着磁された合金磁石粉末と前述の樹脂との混合物を混練して作製した粘性体の粘度は、10ポイズ(=1[Pa・s])以上に調整することが好ましく、10ポイズ以下の粘度では、合金磁石粉末が樹脂と分離、沈降しやすく、該粘性体を均一に充填または塗布することが必要な際は撹拌する等の注意を要する。 次に、ディスペンサー(またはシリンダー)などを用いて、上述の粘性体を磁気デバイスの所望の位置に塗布または金型に充填する。磁気デバイスを製造する場合は、このときコアにコイルを組み付けるなどの磁気デバイス組み立て工程を行う。このとき、粘性体は、接着剤として利用することも可能である。 その後、磁気デバイスの所望位置に塗布等された粘性体をそのままの状態で、30?500mT程度の弱磁界中におき、粘性体中の合金磁石粉末を磁気的に配向させる。また、このとき同時に、粘性体中の樹脂が熱硬化性樹脂であれば加熱硬化させ、熱可塑性樹脂であれば冷却して硬化させる。あるいは、粘性体中の樹脂が溶媒で希釈された樹脂である場合は、加熱により溶媒の乾燥を行いつつ樹脂の硬化を行う。なお、金型等を使用する場合は、シリコーングリス等の離型剤を予め金型の内部に塗っておくことが望ましい。 この際、配向のために印加する磁界(以下、配向磁場という。)は、30?500mTの弱磁界であるので永久磁石にて印加が可能であるが、必要に応じ電磁石にて印加することも可能である。永久磁石により配向磁場を印加する場合、その永久磁石は、熱硬化性樹脂の硬化温度または熱可塑性樹脂の軟化温度等である120℃以上の環境下に置かれることになるため、キュリー温度Tcの高いSmCo系磁石等であることが望ましい。 また、上記の方法で作製した粘性体を、アクチュエータ、センサー等の永久磁石を用いた磁気デバイスの磁気回路中に配置しまたは接着剤として用い、磁束量を増加させる、またはギャップによる磁気的なロスを軽減させることも可能であるが、この場合は粘性体を硬化させる際の外部からの配向磁界の印加は不要である。即ち、この場合は、磁気回路を構成する永久磁石により配向磁界が与えられるので、粘性体の樹脂が硬化する温度に保持するのみで異方性のボンド磁石を形成することが可能である。 また、磁気コア、ヨーク、別の永久磁石及びコイルのうちの少なくともいずれか1つを備えた磁気デバイスの所定個所に上記粘性体を接触配置する場合も、同様である。例えば、磁気コアと少なくとも1ヶ以上のコイルにより構成されるデバイスの磁気回路中の少なくとも1ヶ所以上に、永久磁石を具備したことを特徴とするデバイスとして、磁気バイアス方式のインダクタ等の電子部品がある。この種のデバイスでは、粘性体を磁気コアの所定位置に塗布するなどして接触配置した後、該コイルに通電すれば磁気回路に磁束(即ち配向磁界)が発生するため、この状態で粘性体の樹脂が硬化する温度に保持するのみで、粘性体中の合金磁石粉末を磁路方向に磁気的に配向させつつ硬化させることができ、それによって異方性のボンド磁石を具備したデバイスを得ることができる。」(9頁7行?11頁1行) ホ.「(実施例2) 図1(a)?(f)は、本発明のボンド磁石(及び磁気デバイス)の製造方法の説明図である。ここでは、磁気デバイスとしてE型コアとI型コアからなるNi-Znフェライトコアを含む、インダクタンス素子の製造方法について説明する。図2は、図1の製造方法により製造される本発明の実施例によるインダクタンス素子の説明図である。 まず、実施例1と同様に、平均粒子径20μmのSmCo磁石合金粉末を10Tのパルス磁界にて着磁してSmCo合金磁石粉末を得る(図1(a))。 次に、得られたSmCo合金磁石粉末と2液性のエポキシ樹脂とを重量比で、70:30?97:3の間の所定の値、例えば、70:30となるように配合し、混練してペースト化し、粘性体を得る(図1(b))。 次に、図1(c)に示すように、得られた粘性体4をディスペンサ(またはシリンダ)101等に充填する。 次に、図1(d)に示すように、ディスペンサ101を用いてE型コア2の中央磁脚の上面に、粘性体4を塗布する。具体的には、コア外径18mm、磁気回路長15mm、有効断面積0.3cm^(2)のE型コア2に、粘性体4を10mg塗布する。 次に、図1(e)に示すように、E型コア2にコイル3とI型コア1とを組み付ける。これにより、E型コアの中央磁脚の上面に塗布された粘性体4は、I型コアにより押しつぶされて変形し、E型コア2とI型コアの磁気ギャップを形成する一対の面(互いに対向する面)の双方に密着する。 この後、図1(f)に示すように、SmCo系の永久磁石5を、前記Ni-Znフェライトコア1,2の下部に配置し、そのままの状態で150℃の雰囲気中に1時間置き粘性体4に含まれる樹脂を硬化させた。この間、粘性体4には、前記永久磁石5によって、それが硬化するまで常に磁場が印加されている。 ここで、図2は、図1(f)の状態から、SmCo系の永久磁石5を除去したもの、即ち、図1の工程により製造されたインダクタンス素子である。図1の粘性体4は、図2においては硬化してボンド磁石4aとなっている。なお、ボンド磁石4aは、E型コア2とI型コア1の磁気ギャップを形成する対向面に密着形成されており、従来のシート状磁石を用いた場合のような接着層はない。また、ボンド磁石4aの側面の形状は、粘性体の粘度、表面張力の影響を受けるために、明らかに従来の打ち抜き法等で作製されたシート状磁石またはプレス磁石等の形状とは異なっている。つまり、本発明によるボンド磁石4aは、磁気コアに対しては隙間なく密着して形成されており、さらに、前述のボンド磁石の磁気コアに面していない側面は粘性体の自由表面がそのまま硬化した滑らかな凹凸形状であり、複数の曲率面により構成されている。 また、比較のために、前述と同様なNi-Znフェライトコアに、圧縮成形法にて作製したシート状の磁石を接着し、インダクタンス素子を作製し、従来例とした。図3は、シート状の磁石を搭載する前のインダクタンス素子の説明図であり、図4は、従来例によるインダクタンス素子の説明図である。図3及び図4から理解されるように、従来例のインダクタンス素子は、Ni-Znフェライトコアの磁気ギャップ6にシート状磁石7を挿入接着したものである。 図5は、本発明のインダクタンス素子と、従来のインダクタンス素子との直流重畳特性を比較するための特性図である。図5に示すとおり、異方性ボンド磁石が形成されたことにより、本発明のインダクタンス素子は、直流重畳特性において、従来のインダクタンス素子より飽和電流値が高くなっている。」(12頁11行?14頁12行) 上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ホ.における「本発明のボンド磁石(及び磁気デバイス)の製造方法の説明図である。ここでは、磁気デバイスとしてE型コアとI型コアからなるNi-Znフェライトコアを含む、インダクタンス素子の製造方法について説明する。」との記載、同ホ.における「SmCo合金磁石粉末と2液性のエポキシ樹脂とを重量比で、70:30?97:3の間の所定の値、例えば、70:30となるように配合し、混練してペースト化し、粘性体を得る(図1(b))。」との記載、同ホ.における「図1(f)に示すように、SmCo系の永久磁石5を、前記Ni-Znフェライトコア1,2の下部に配置し、そのままの状態で150℃の雰囲気中に1時間置き粘性体4に含まれる樹脂を硬化させた。この間、粘性体4には、前記永久磁石5によって、それが硬化するまで常に磁場が印加されている。」との記載、及び図1によれば、インダクタンス素子は、E型コア(2)とI型コア(1)の間にSmCo合金磁石粉末とエポキシ樹脂を配合した粘性体を用い極性化するように前記粘性体を磁化していることが読み取れる。 したがって、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「インダクタンス素子において、E型コア(2)とI型コア(1)の間にSmCo合金磁石粉末とエポキシ樹脂を配合した粘性体を用い極性化するように前記粘性体を磁化する技術。」 C 原審の拒絶理由に引用された特開2005-19716号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ヘ.「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、主として、情報機器、あるいは携帯端末機器の電源装置に使用されるのに好適な磁芯及びその製造方法及びチョークコイルに関する。」(2頁) ト.「【0020】 【発明の実施の形態】 本発明の実施の形態による磁芯及びその製造方法及びチョークコイルについて、以下に説明する。 【0021】 (実施の形態1) 図1は、本発明の実施の形態1による磁芯の説明図であり、E型コアとI型コアで形成された場合の例を示す。図1(a)は正面図であり、図1(b)は側面図である。 【0022】 本発明の磁芯は、E型コア2とI型コア1との間にエポキシ系接着剤と磁石粉末と樹脂フィラーとを混合した磁石形成用ペースト5a,5b,5cを用いて、高精度の厚みの磁石を形成した磁芯である。この磁芯と巻線とにより、安定したインダクタンス及び重畳特性を有するチョークコイルを作製できる。 【0023】 ここで用いる樹脂フィラーは、粒径1μm以上から1mm以下の範囲であって、圧力を加えることで変形する性質を持っている。例えば、圧力をかける前は、ほぼ球形であって、圧力を加えると楕円形となる。樹脂フィラーを用いてギャップを形成した場合、圧力を加えることで最大粒径の樹脂フィラーが変形し粒径が平均化され、ギャップ長が保たれる。この後、加熱により硬化処理を行うことにより、所定の厚みの磁石が形成される。前記の厚みは、40μmから100μmの範囲が実現される。」(4頁) チ.「【0025】 【実施例】 (実施例1) 図3および図4は、本発明の実施例1によるチョークコイルの説明図である。 (1)実施例1のチョークコイルは、Ni-Zn系フェライトをプレス法により成型し、(2)2.0×1.2×1.2サイズのダンベル型コア[図3(a)]を作製し、銀ペーストを端の部分に焼き付け、端子部とし[図3(b)]、 (3)ついで、巻線7を半田付けすることでコア部を形成し、 (4)コアと板状ヨーク20a,20bを接着する。この時、コアと磁性体ヨーク20a,20b間に磁石形成用ペースト8a,8b,8c,8dを接着、硬化する。 【0026】 ここで、磁石形成用ペースト8a,8b,8c,8dは、エポキシ系接着剤と磁石粉末と樹脂フィラーとの混合で形成されている。磁石粉末は、60wt%以上から80wt%以下の範囲で含まれている。 【0027】 図7は、本発明の実施例1のチョークコイルの直流重畳特性図である。上記方法でチョークコイルを作製し、ヨークをつけないもの、接着剤のみでヨークを接着したもの、接着剤と樹脂フィラーを用いたペーストでヨークを接着したもの、前記ペーストと磁石粉末を用いて接着したものの4種類で直流重畳インダクタンス特性を比較した。接着剤に樹脂フィラーを入れることでインダクタンスの重畳が伸び、前記磁石形成用ペーストによる効果を得た。」(4?5頁) 上記引用例3の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ト.の【0022】における「本発明の磁芯は、E型コア2とI型コア1との間にエポキシ系接着剤と磁石粉末と樹脂フィラーとを混合した磁石形成用ペースト5a,5b,5cを用いて、高精度の厚みの磁石を形成した磁芯である。この磁芯と巻線とにより、安定したインダクタンス及び重畳特性を有するチョークコイルを作製できる。」との記載、及び図1(a)(b)によれば、チョークコイルは、E型コア(2)とI型コア(1)の間にエポキシ系接着剤と磁石粉末と樹脂フィラーとを混合した磁石形成用ペーストを用いていることが読み取れる。 したがって、上記引用例3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「チョークコイルにおいて、E型コア(2)とI型コア(1)の間にエポキシ系接着剤と磁石粉末と樹脂フィラーとを混合した磁石形成用ペーストを用いる技術。」 D 原審の拒絶理由に引用された特開2000-68129号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 リ.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、コイル装置に関し、更に詳しくは、高周波大電流を通すのに適したコイル装置に係る。」(2頁2欄) ヌ.「【0022】 【発明の実施の形態】図1は本発明に係るコイル装置の分解斜視図、図2は図1に示したコイル装置の外観斜視図、図3は図1に示したコイル装置を、図2とは逆方向から見た斜視図、図4は図2の4ー4線に沿った断面図である。図示するように、本発明に係るコイル装置は、第1のコア部材1と、第2のコア部材2と、コイル導体3とを含む。第1のコア部材1及び第2のコア部材2は、一面が互いに対向して重ね合わされている。第1のコア部材1及び第2のコア部材2は、重ね合わせ面において、接着剤等によって接合されていてもよいし、弾性を有するバンドまたはテープ等によって互いに結合してあってもよい。第1のコア部材1及び第2のコア部材2は、例えば、MnZn系フェライト、NiZn系フェライト磁性材料等によって構成することができる。第1のコア部材1及び第2のコア部材2は、磁気特性がほぼ同一であってもよいし、異なっていてもよい。 【0023】第1のコア部材1及び第2のコア部材2の少なくとも一方は、重ね合わせ面に少なくとも1つの溝41、42を有する。第1のコア部材1及び第2のコア部材2を重ね合わせたときに生じる溝41、42の数は2本である。2つの溝41、42を用意するに当たり、溝41、42の一方を、第1のコア部材1に備え、溝41、42の他方を第2のコア部材2に備える構造でもよいし、2つの溝41、42を、第1のコア部材1または第2のコア部材2の何れか一方に備える構造でもよい。 【0024】実施例では、2本の溝41、42は、第1のコア部材1の重ね合わせ面に備えられている。これらの溝41、42は重ね合わせ面に長さ方向X及び幅方向Yを仮想したとき、幅方向Yに互いに間隔を隔てて、長さ方向Xにほぼ平行に延び、長さ方向Xの両端で開口している。第2のコア部材2は、重ね合わせ面が、平面である。 【0025】コイル導体3は、金属導体板で構成され、第1の導体辺31、第2の導体辺32及び第3の導体辺33を含んでいる。コイル導体3は、例えば、0.5mm以上の厚みを有する銅板を打ち抜いて製造することができる。第1の導体辺31及び第2の導体辺32は、間隔を隔てて互いに対向し、それぞれの一端が端子部311、321となっていて、他端が第3の導体辺33によって互いに連続している。第1の導体辺31及び第2の導体辺32は、溝41、42内に電気絶縁して挿入されている。第1の導体辺31、第2の導体辺32及び第3の導体辺33の幅は、前述した厚みを前提として、流れる電流を考慮して定められる。一例であるが、スイッチング電源用としては、0.5mmの厚みで、2?3mm程度の幅に選定される。 【0026】上記構成によれば、第1のコア部材1と、第2のコア部材2との重ね合わせ面において、2本の溝41、42の内部に、約1ターンのコイル導体3を配置したコイル装置が得られる。コイル導体3は金属導体板によって構成されているので、断面積が大きくなり、大きな電流容量が確保される。このようなコイル装置は、例えば、チョッパ方式のスイッチング電源の出力回路等のように、高周波大電流回路に適する。 【0027】第1のコア部材1と第2のコア部材2とは、一面が互いに対向して重ね合わされており、その重ね合わせ面に形成された溝41、42の内部に、コイル導体3の第1の導体辺31及び第2の導体辺32を、電気絶縁して挿入する構造であるので、コイル導体3に流れる電流によって生じる磁束に対して、第1のコア部材1及び第2のコア部材2による閉磁路が形成される。」(3頁4欄?4頁6欄) 上記引用例4の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ヌ.の【0022】における「本発明に係るコイル装置は、第1のコア部材1と、第2のコア部材2と、コイル導体3とを含む。第1のコア部材1及び第2のコア部材2は、一面が互いに対向して重ね合わされている。」との記載、及び図1によれば、コイル装置は、第1のコア部材(1)と、第2のコア部材(2)と、コイル導体(3)とを備えている。また、同ヌ.の【0022】における「第1のコア部材1及び第2のコア部材2は、重ね合わせ面において、接着剤等によって接合されていてもよい」との記載によれば、コイル装置は、第1のコア部材(1)及び第2のコア部材(2)を重ね合わせ面において接着剤によって接合されている。ここで、図1乃至図3によれば、前述の接着剤は、第1のギャップ、第2のギャップ及び第3のギャップを形成しているということができる。 したがって、上記引用例4には、以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。 「コイル装置において、 第1のコア部材(1)、 第2のコア部材(2)、 前記第1のコア部材(1)と前記第2のコア部材(2)の間に挟まれたコイル導体(3)、 前記第1のコア部材(1)と前記第2のコア部材(2)の間の接着剤 を備え、 前記接着剤が第1のギャップ、第2のギャップ及び第3のギャップを形成する技術。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明1とを対比する。 a.引用発明1の「Mn-Znフェライト」は、強磁性体であり、「Uの字コア(11)」は、上記引用例1の図1(a)によれば、全体の形状が板(英語ではplate)状であるから、引用発明1の「Mn-ZnフェライトからなるUの字コア(11)」は、補正後の発明の「第1の強磁性体プレート」ということができる。 b.引用発明1の「Mn-Znフェライト」は、強磁性体であり、「I型コア(12)」は、上記引用例1の図1(a)によれば、全体の形状が板(英語ではplate)状であるから、引用発明1の「Mn-ZnフェライトからなるI型コア(12)」は、補正後の発明の「第2の強磁性体プレート」ということができる。 c.引用発明1の「導体(13)」は、補正後の発明の「コンダクタ」に相当する。 d.引用発明1の「永久磁石(14)」と、補正後の発明の「接着剤」とは、いずれも、「磁束を印加する特定の部材」という点で一致する。 e.引用発明1の「SmCo粉末」は、「磁性粉」ということができる。 f.引用発明1の「50μm」と、補正後の発明の「100μm未満」とは、いずれも「特定の数値」という点で一致する。 g.引用発明1の「磁気ギャップが相互に逆方向に極性化されるように磁化されている」と、補正後の発明の「ギャップが相互に逆方向に極性化されるように前記接着剤が磁化される」とは、いずれも、「ギャップが相互に逆方向に極性化されるように磁化されている」という点で一致する。 h.引用発明1の「インダクタ部品」は、永久磁石(14)が、SmCo粉末を含むことで2つの磁気ギャップを形成し、SmCo粉末が定常磁束を印加して、磁気特性にバイアスを付加しているから、「バイアスギャップインダクタ」ということができる。 したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「バイアスギャップインダクタにおいて、 第1強磁性体プレート、 第2強磁性体プレート、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間に挟まれたコンダクタ、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間の磁束を印加する特定の部材 を備え、 前記磁束を印加する特定の部材は、磁性粉を含むことで第1の磁気ギャップ、及び第2の磁気ギャップを形成しており、特定の数値の厚みを有し、 前記磁性粉が定常磁束を印加し、前記第1の磁気ギャップ及び前記第2の磁気ギャップが、ギャップが相互に逆方向に極性化されるように磁化されているバイアスギャップインダクタ。」 (相違点1) 「磁束を印加する特定の部材」に関し、 補正後の発明は、「接着剤」であるのに対し、引用発明1は、「永久磁石(14)」である点。 (相違点2) 「磁束を印加する特定の部材」における「前記第1の磁気ギャップ及び前記第2の磁気ギャップ」に関し、 補正後の発明は、「第1の磁気ギャップ、第2の磁気ギャップ及び第3の磁気ギャップ」であるのに対し、引用発明1は、「2つの磁気ギャップ」である点。 (相違点3) 「磁束を印加する特定の部材」における「磁気ギャップ」の態様に関し、 補正後の発明は、「前記第2の磁気ギャップは前記第1の磁気ギャップと前記第3の磁気ギャップとの間に位置し」ているのに対し、引用発明1は、その様な構成でない点。 (相違点4) 「磁束を印加する特定の部材」の態様に関し、 補正後の発明は、「前記接着剤は前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され」ているのに対し、引用発明1は、その様な構成でない点。 (相違点5) 「特定の数値」に関し、 補正後の発明は、「100μm未満」であるのに対し、引用発明1は、「50μm」である点。 (相違点6) 「ギャップが相互に逆方向に極性化されるように磁化されている」に関し、 補正後の発明は、「隣り合う」ギャップが相互に逆方向に極性化されるように「前記接着剤が磁化される」のに対し、引用発明1は、その様な特定がない点。 そこで、まず、上記相違点1及び4について検討する。 引用発明1と引用発明3とは、インダクタにおいて、磁石により定常磁束を印加するという技術分野・課題において共通し、引用発明1に引用発明3を採用することに特段の阻害要因は見あたらない。そして、引用発明3の「エポキシ系接着剤と磁石粉末と樹脂フィラーとを混合した磁石形成用ペースト」は、「接着剤」といえるから、引用発明1の「永久磁石(14)」に換えて、補正後の発明のように「接着剤」とすること(相違点1)に格別な困難性はない。その際、補正後の発明のように「前記接着剤は前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され」ること(相違点4)は当然である。 次に、上記相違点2及び3について検討する。 引用発明1と引用発明4とは、インダクタという技術分野で共通し、引用発明1に引用発明4を採用することに特段の阻害要因は見あたらない。そして、引用発明1は、「2つの磁気ギャップ」であるところ、上記引用発明4に接した当業者ならば、補正後の発明のように「第1の磁気ギャップ、第2の磁気ギャップ及び第3の磁気ギャップ」とすること(相違点2)、また、「前記第2の磁気ギャップは前記第1の磁気ギャップと前記第3の磁気ギャップとの間に位置し」ていること(相違点3)に格別な困難性はない。 次に、上記相違点5について検討する。 引用発明1は、「50μm」であるところ、補正後の発明の「100μm未満」と重なるものである。そして、本願明細書の記載を参酌しても数値範囲の上限を「100μm」とすることに臨界的意義は見いだせないから、補正後の発明のように「100μm未満」とすることは格別のことではない。 次に、上記相違点6について検討する。 引用発明1と引用発明2とは、インダクタにおいて、磁石により定常磁束を印加するという技術分野・課題において共通し、引用発明1に引用発明2を採用することに特段の阻害要因は見あたらない。そして、引用発明1は、逆方向に極性化されるように磁化されているところ、上記引用発明2に接した当業者ならば、補正後の発明のように、「隣り合う」ギャップが相互に逆方向に極性化されるように「前記接着剤が磁化される」ことに格別な困難性はない。 そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明1?4から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明1?4に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について (1)本願発明 平成25年2月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成24年8月6日付けの特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「バイアスギャップインダクタにおいて、 第1強磁性体プレート、 第2強磁性体プレート、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間に挟まれたコンダクタ、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間の接着剤 を備え、 前記接着剤は、磁性粉を含むことで第1の磁気ギャップ及び第2の磁気ギャップを形成しており、前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され、500μm未満の厚みを有し、 前記磁性粉が定常磁束を印加し、前記第1の磁気ギャップは前記第2の磁気ギャップと反対方向に極性化されるように前記接着剤が磁化されることを特徴とするバイアスギャップインダクタ。」 (2)引用発明 原審の拒絶理由に引用された上記引用例1及び2には、上記「第2 補正却下の決定 [理由] 3.独立特許要件について (2)引用発明」の項で摘記したとおり、図面とともに上記イ.?ホ.の事項が記載されている。 したがって、上記引用例1及び2には、上記引用発明1及び2がそれぞれ記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、 i.引用発明1の「Mn-Znフェライト」は、強磁性体であり、「Uの字コア(11)」は、上記引用例1の図1(a)によれば、全体の形状が板(英語ではplate)状であるから、引用発明1の「Mn-ZnフェライトからなるUの字コア(11)」は、本願発明の「第1の強磁性体プレート」ということができる。 j.引用発明1の「Mn-Znフェライト」は、強磁性体であり、「I型コア(12)」は、上記引用例1の図1(a)によれば、全体の形状が板(英語ではplate)状であるから、引用発明1の「Mn-ZnフェライトからなるI型コア(12)」は、本願発明の「第2の強磁性体プレート」ということができる。 k.引用発明1の「導体(13)」は、本願発明の「コンダクタ」に相当する。 l.引用発明1の「永久磁石(14)」と、本願発明の「接着剤」とは、いずれも、「磁束を印加する特定の部材」という点で一致する。 m.引用発明1の「SmCo粉末」は、「磁性粉」ということができる。 n.引用発明1の「50μm」と、本願発明の「100μm未満」とは、いずれも「特定の数値」という点で一致する。 o.引用発明1の「前記2つの磁気ギャップが、隣り合う磁気ギャップが相互に逆方向に極性化されるように磁化されている」と、本願発明の「前記第1の磁気ギャップは前記第2の磁気ギャップと反対方向に極性化されるように前記接着剤が磁化される」とは、いずれも、「前記第1の磁気ギャップは前記第2の磁気ギャップと反対方向に極性化されるように磁化されている」という点で一致する。 p.引用発明1の「インダクタ部品」は、永久磁石(14)が、SmCo粉末を含むことで2つの磁気ギャップを形成し、SmCo粉末が定常磁束を印加して、磁気特性にバイアスを付加しているから、「バイアスギャップインダクタ」ということができる。 したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。 <一致点> 「バイアスギャップインダクタにおいて、 第1強磁性体プレート、 第2強磁性体プレート、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間に挟まれたコンダクタ、 前記第1強磁性体プレートと前記第2強磁性体プレートの間の磁束を印加する特定の部材 を備え、 前記磁束を印加する特定の部材は、磁性粉を含むことで第1の磁気ギャップ及び第2の磁気ギャップを形成しており、特定の数値の厚みを有し、 前記磁性粉が定常磁束を印加し、前記第1の磁気ギャップは前記第2の磁気ギャップと反対方向に極性化されるように磁化されているバイアスギャップインダクタ。」 <相違点1> 「磁束を印加する特定の部材」に関し、 本願発明は、「接着剤」であるのに対し、引用発明1は、「永久磁石(14)」である点。 <相違点2> 「磁束を印加する特定の部材」の態様に関し、 本願発明は、「前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され」ているのに対し、引用発明1は、その様な構成でない点。 <相違点3> 「特定の数値」に関し、 本願発明は、「500μm未満」であるのに対し、引用発明1は、「50μm」である点。 <相違点4> 「前記第1の磁気ギャップは前記第2の磁気ギャップと反対方向に極性化されるように磁化されている」に関し、 本願発明は、極性化されるように「前記接着剤が磁化される」のに対し、引用発明1は、その様な特定がない点。 そこで、まず、上記相違点1、2及び4について検討する。 引用発明1と引用発明2とは、インダクタにおいて、磁石により定常磁束を印加するという技術分野・課題において共通し、引用発明1に引用発明2を採用することに特段の阻害要因は見あたらない。そして、引用発明2の「SmCo合金磁石粉末とエポキシ樹脂を配合した粘性体」は、「接着剤」といえるから、引用発明1の「永久磁石(14)」に換えて、本願発明のように「接着剤」とすること(相違点1)に格別な困難性はない。その際、本願発明のように「前記第1と第2の強磁性体プレートを一体的に結合するように構成され」ること(相違点2)、また、本願発明のように、極性化されるように「前記接着剤が磁化される」こと(相違点4)は当然である。 次に、上記相違点3について検討する。 上記「第2 補正却下の決定 [理由] 3.独立特許要件について (3)対比・判断」の項で相違点5として検討したとおりである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び2から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-10-18 |
結審通知日 | 2013-10-22 |
審決日 | 2013-11-11 |
出願番号 | 特願2010-524066(P2010-524066) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01F)
P 1 8・ 121- Z (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右田 勝則 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 関谷 隆一 |
発明の名称 | バイアスギャップインダクタとその製造方法 |
代理人 | 木内 光春 |