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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1286384
審判番号 不服2013-2853  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-13 
確定日 2014-03-31 
事件の表示 特願2007-553489「アルミニウム合金ろう付け材料」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日国際公開、WO2006/081923、平成20年 7月31日国内公表、特表2008-528297〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年1月10日(優先日、2005年2月4日、欧州特許庁、2005年7月22日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成19年8月7日付けで手続補正がされ、平成24年1月4日付けで拒絶理由が通知され、同年4月9日付けで手続補正がされ、同年10月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年2月13日に拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正がされ、同年6月17日付けで前置報告がされ、これに基づく審尋が同年7月4日付けで発せられたところ、同年10月3日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年2月13日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金の基材と、前記基材上の、前記基材よりも融点が低いクラッド層とを有し、前記クラッド層が、リチウムおよびカルシウムを含まず、質量%で、
Si 5.0?14.0、
Fe 0.1?0.7、
Mn 0.2?1.5、
Mg 最大0.4、
各々につき最大0.05、合計量で最大0.20の不可避不純物、
残部Al
の組成からなるアルミニウム合金ろう付け材料からなり、前記アルミニウム合金ろう付け材料のMn/Fe質量%比が、少なくとも2/1である、ろう付け部材。」
(以下、本願の請求項1に係る発明(原査定の際、本願の請求項3に係る発明)を「本願発明」という。)。

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由とされた平成24年1月4日付けの拒絶理由通知書に記載した理由は、次のとおりである。

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

刊行物 特開平1-218795号公報

第4 当審の判断
1.刊行物の記載事項
(以下、審決中の「・・・」は、記載事項の省略を意味する。)
1-1
「〔実施例〕
つぎに、この発明のAl合金を実施例により具体的に説明する。
通常の溶解法により、それぞれ第1表に示される成分組成をもったAl合金溶湯を調製し、鋳塊とした後、面削し、通常の条件で均質化熱処理を施し、ついで熱間圧延を施して板厚:8mmの熱延板とし、さらにこの熱延板に適宜中間焼鈍をはさみながら冷間圧延を施すことによって、板厚:lmmの冷延板からなる本発明Al合金ろう材1?12・・・をそれぞれ製造した。
なお、上記の各種Al合金ろう材は、いずれも不可避不純物として、Fe:0.35%以下、Mn、Mg、Zn、Cu、Cr、およびZr:いずれも0.01%以下をそれぞれ含有するものであった。
ついで、これらの各種Al合金ろう材を・・・Al合金芯材の片面に重ね合わせ・・・クラッド材とし」(第3頁左上欄第5行?同頁左下欄第7行)

1-2
「本発明Al合金ろう材」として、「種別1 Si 6.81 Mn 0.81 Al+不純物 残」(第1表)
(下線注:第1表の「Cu+不純物」が「Al+不純物」の誤記であることは明らかである。)

2.刊行物に記載された発明について
刊行物には、「Si 6.81% Mn 0.81% Al+不純物 残」(1-2)及び当該「不純物」として、「Fe:0.35%以下、・・・Mg、Mg、Zn、Cu、Cr、およびZr:いずれも0.01%以下をそれぞれ含有する」「Al合金ろう材」(1-1)が記載されている。
そして、上記「Al合金ろう材」は、「Al合金芯材の片面に重ね合わ」されて「クラッド材」とされること(1-1)が記載されている。
そうすると、刊行物には、「Al合金芯材と、Al合金ろう材を有し、前記Al合金ろう材がSi 6.81% Mn 0.81% 残部Al及び不可避不純物(Fe:0.35%以下、Zn、Cu、Cr、およびZr:いずれも0.01%以下)の組成からなるクラッド材」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比
引用発明と本願発明を対比すると、引用発明の「Al合金芯材」、「Al合金ろう材」、「クラッド材」は、本願発明の「アルミニウム合金の基材」、「アルミニウム合金ろう付け材料」、「ろう付け部材」に相当する。
また、引用発明は、「クラッド材」であるから、クラッド層を有すること、当該クラッド層が「Al合金芯材」より融点が低いことは明らかである。
そうすると、引用発明と本願発明は、
「アルミニウム合金の基材と、前記基材上の、前記基材よりも融点が低いクラッド層とを有し、前記クラッド層が、リチウムおよびカルシウムを含まず、質量%で、
Si 6.81、
Fe 0.35以下、
Mn 0.81、
Mg 0.01以下、
各々につき最大0.01、合計量で最大0.04の不可避不純物、
残部Al
の組成からなるアルミニウム合金ろう付け材料からなる、ろう付け部材。」の点で一致している。
他方、本願発明の「アルミニウム合金ろう付け材料のMn/Fe質量%比が、少なくとも2/1である」のに対して、引用発明のAl合金ろう材のMn/Fe質量%比が不明である点(相違点1)、本願発明のFeの下限が「0.1%」であるのに対して、引用発明のFeの下限が不明である点(相違点2)で一応相違する。

4.判断
そこで、上記相違点について検討する。
上記相違点1について
引用発明のAl合金ろう材のMn/Fe質量%比は、Feが最大、すなわち0.35%になった場合に最小になるから、当該比は、少なくとも0.81/0.35=約2.3/1である。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点ではないというべきである。
上記相違点2について
Al合金ろう材に不純物として不可避的含まれるFeは、原料の地金に由来するものであって、通常約0.3%であり(特開平11-90677号公報(原査定時に摘示された刊行物【0021】)、特開2001-303161号公報【0018】【0024】、特開平10-230385号公報【0018】、特開平10-296484号公報【0017】)、しかも、引用発明のAl合金ろう材は、「通常の溶解法」により調製されたものであるから(1-1)、引用発明にもFeが約0.3%不可避的に含まれると解するのが相当であり、引用発明のFeの下限は、少なくとも0.1%を下るものではないと解される。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点ではないというべきである。

5.結論
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は原査定の理由により拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-06 
結審通知日 2013-11-08 
審決日 2013-11-19 
出願番号 特願2007-553489(P2007-553489)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 裕健  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 山田 靖
大橋 賢一
発明の名称 アルミニウム合金ろう付け材料  
代理人 横田 修孝  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 箱田 満  
代理人 中村 行孝  

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