• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1286817
審判番号 不服2013-2502  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-08 
確定日 2014-04-09 
事件の表示 特願2006-271121「透明樹脂成形体並びに光学レンズ及び光学フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月17日出願公開、特開2008- 88303〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,平成18年10月2日を出願日とする特許出願であって,平成24年7月18日付けで拒絶理由が通知され,同年9月14日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲及び明細書が補正され,同年11月7日付けで拒絶査定がされたところ,これに対して,平成25年2月8日に拒絶査定不服審判が請求される(なお,同年3月22日に,請求書の請求の理由の欄を変更する補正がされている。)と同時に特許請求の範囲が補正されたので,特許法162条所定の審査がされた結果,同年4月26日付けで同法164条3項の規定による報告がされ,同年6月3日付けで同法134条4項の規定による審尋がされ,同年7月26日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定

[結論]
平成25年2月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成25年2月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は特許請求の範囲の全文を変更する補正事項からなるものであるところ,本件補正の前後における特許請求の範囲の記載は,それぞれ以下のとおりである。
・ 本件補正前(平成24年9月14日付け手続補正書)
「【請求項1】
透明ポリアミド及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂,及び前記熱可塑性樹脂の質量に対して2質量%以上の架橋助剤を含有する成形材料を成形するとともに,前記熱可塑性樹脂を架橋して得られる樹脂成形体であって,
前記熱可塑性樹脂は,その厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が,60%以上となる樹脂より選ばれ,かつ
前記樹脂成形体を,200℃で10分間加熱し,厚さ2mmとしたときの600?1000nmの範囲での平均透過率が60%以上であり,270℃での貯蔵弾性率が,0.1MPa以上であることを特徴とする透明樹脂成形体。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が,主分極率0.6×10^(-23)以下の化学結合のみからなるモノマーにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂成形体。
【請求項3】
さらにフィラーを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明樹脂成形体。
【請求項4】
請求項1,請求項2又は請求項3に記載の透明樹脂成形体よりなることを特徴とする光学レンズ。
【請求項5】
請求項1,請求項2又は請求項3に記載の透明樹脂成形体よりなることを特徴とする光学フィルム。」
・ 本件補正後
「【請求項1】
透明ポリアミド及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂,及び前記熱可塑性樹脂の質量に対して2質量%以上の架橋助剤を含有する成形材料を成形するとともに,前記熱可塑性樹脂を架橋して得られる樹脂成形体であって,
前記架橋助剤は,アクリレート又はメタクリレート類の化合物,及びアリル化合物類からなる群より選ばれ,
前記熱可塑性樹脂は,その厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が,60%以上となる樹脂より選ばれ,かつ
前記樹脂成形体を,200℃で10分間加熱し厚さ2mmとしたときの600?1000nmの範囲での平均透過率が,60%以上であり,
270℃での貯蔵弾性率が,1MPa以上であることを特徴とする透明樹脂成形体。
【請求項2】
前記架橋助剤が,ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート,トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリアリルイソシアヌレートからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂成形体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が,主分極率0.6×10^(-23)以下の化学結合のみからなるモノマーにより構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明樹脂成形体。
【請求項4】
さらにフィラーを含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の透明樹脂成形体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の透明樹脂成形体よりなることを特徴とする光学レンズ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の透明樹脂成形体よりなることを特徴とする光学フィルム。」

2 本件補正の目的など
本件補正は,補正後の特許請求の範囲の請求項の項数が実質的に増加(補正前5から補正後6)したことにより,補正後の特許請求の範囲に記載された請求項に係る発明が,補正前のものに比較して拡張したものとなり,特許請求の範囲の拡張に該当するから,平成18年法律55号改正前の特許法17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」(いわゆる限定的減縮)を目的とする補正に該当しない。また,同項各号掲記の他の事項を目的とするものであるということもできない。
よって,本件補正は,特許法17条の2第4項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件違反の有無について
なお,上記2のとおり,本件補正は却下すべきものであると判断されるが,仮に,本願の独立請求項である請求項1にのみとりあえず着目し,請求項1についての補正が限定的減縮を目的とするものであるとしたときには,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,要するに,本件補正が特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に適合するものであるか(いわゆる独立特許要件違反の有無)についての検討がなされるべきところ,以下述べるように,本件補正は当該要件にも違反するといえる。
すなわち,本願補正発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」という。)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
・ 引用文献1: 特開平3-223328号公報

4 本願補正発明
本願補正発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲並びに明細書及び図面(図面を併せ,以下「本願明細書」という場合がある。)の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「透明ポリアミド及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂,及び前記熱可塑性樹脂の質量に対して2質量%以上の架橋助剤を含有する成形材料を成形するとともに,前記熱可塑性樹脂を架橋して得られる樹脂成形体であって,
前記架橋助剤は,アクリレート又はメタクリレート類の化合物,及びアリル化合物類からなる群より選ばれ,
前記熱可塑性樹脂は,その厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が,60%以上となる樹脂より選ばれ,かつ
前記樹脂成形体を,200℃で10分間加熱し厚さ2mmとしたときの600?1000nmの範囲での平均透過率が,60%以上であり,
270℃での貯蔵弾性率が,1MPa以上であることを特徴とする透明樹脂成形体。」

5 本願補正発明が特許を受けることができない理由
(1) 引用発明
ア 引用文献1には,次の記載がある。(なお,下線は当合議体による。以下同じ。)
・ 1頁の特許請求の範囲欄
「2.特許請求の範囲
(1) 熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーであって,高速液体クロマトグラフィーにより測定した数平均分子量(Mn)が50,000?500,000,重量平均分子量(Mw)が100,000?2,000,000,分子量分布(Mw/Mn)が2.2以上であり,かつ,該ポリマー中に含まれる揮発成分が0.3重量%以下であることを特徴とする成形用材料。…
(7) 請求項1ないし4のいずれか1項記載の成形用材料で成形した光学用材料。…」
・ 2頁左上欄1?12行
「〔産業上の利用分野〕
本発明は,熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーからなる耐熱性,耐水性等に優れた成形用材料に関し,さらに詳しくは,特に,押出成形をした場合に,強度に優れ,発泡等による欠陥のない成形品を与える成形用材料に関する。…
さらに,本発明は,該成形用材料からなる透明性に優れた光学用材料と,該成形用材料を用いた導電性複合材料および光記録媒体に関する。」
・ 2頁左下欄5?11行
「これらの熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは,一種のポリオレフィン系ポリマーであり,他のポリオレフィン同様優れた耐水性,耐薬品性,耐溶剤性を示し,かつ,ガラス転移温度100℃以上の高い耐熱性を持つポリマーが合成可能で,さらに90%以上の全光透過率を持った透明性に優れた材料である。」
・ 2頁左下欄下から3行?右下欄13行
「しかしながら,これらの熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは,ポリエチレンやポリプロピレン,PMMAに比べると脆く,シートやフィルム,棒状に押出成形すると,割れるか折れ易く十分な強度のものが得られていない。また,しばしば,押出成形品の中に泡状の欠陥が生じ,表面に目に見えるほど大きな条痕となってあらわれたり,さらに強度を低下させるという問題点があった。
また,目に見えるような大きな条痕が無くとも,光学顕微鏡等を用いて詳細に観察してみると,目では見えない微細なボイドやクラック状の欠陥(以下,「ミクロボイド」という)が内部に発生することが多く,これまで,熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーの押出成形では,ミクロボイドの全く無い成形物は得られていなかった。」
・ 3頁左上欄下から5行?左下欄1行
「〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は,耐熱性,耐水性等に優れた成形用材料を提供することにある。
また,本発明の目的は,特に,押出成形をした場合に,強度に優れ,発泡や条痕等による欠陥やミクロボイドのない成形品を与える熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーからなる成形用材料および該成形用材料からなる成形品を提供することにある。
本発明の他の目的は,該成形用材料からなる透明性に優れた光学用材料と,該成形用材料を用いた導電性複合材料および光記録媒体を提供することにある。
そこで,本発明者らは,上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果,適当な範囲の分子量および分子量分布を持った熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーが,成形した場合に,十分な強度を持つことを見出した。
従来の熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーには,未反応モノマー,溶剤などの低揮発成分が混入しており,これが発泡による強度の低下や表面の条痕の原因であることが判明した。そこで,これらのポリマー中に含まれる揮発成分を0.3重量%以下とすることにより,押出成形した場合にも,発泡や目に見える大きな条痕の発生を抑制することができる。」
・ 4頁右上欄8行?右下欄3行
「(熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー)
本発明が対象とする成形用材料は,熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーであって,具体例として下記に一般式〔I〕および/または〔II〕で表される構造単位を有するポリマーを挙げることができる。…
一般式〔I〕で表される構造単位を有するポリマーは,単量体として,例えば,ノルボルネン,およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体,例えば,5-メチル-2-ノルボルネン,5,6-ジメチル-2-ノルボルネン,5-エチル-2-ノルボルネン,…」
・ 9頁左上欄7行?左下欄7行
「(成形方法)
本発明における熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーは,特に押出成形に適しているが,これに限定するものではない。…
さらに,強度を増すために,加熱または紫外線や電子線等の放射線照射による架橋もできる。この場合,適当な架橋剤を用いることが効果的である。架橋剤は,公知のものが使用でき,例えば,ジビニルベンゼン等のビニル基を複数有するモノマー類;ジアリルフタレート,エチレングリコールジメタクリレート,トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能アクリレート類;トリアリルイソシアヌレート等のイソシアヌレート類;液状ポリブタジエン等の不飽和結合を複数有するポリマー類が挙げられる。」
イ 上記アのとおり,引用文献1には,特に特許請求の範囲及び成形方法に係る記載(9頁)などを総合すると,次のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ジビニルベンゼン等のビニル基を複数有するモノマー類;ジアリルフタレート,エチレングリコールジメタクリレート,トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能アクリレート類;トリアリルイソシアヌレート等のイソシアヌレート類;液状ポリブタジエン等の不飽和結合を複数有するポリマー類から選ばれる架橋剤を含有する熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーであって,高速液体クロマトグラフィーにより測定した数平均分子量(Mn)が50,000?500,000,重量平均分子量(Mw)が100,000?2,000,000,分子量分布(Mw/Mn)が2.2以上であり,かつ,該ポリマー中に含まれる揮発成分が0.3重量%以下である成形用材料を,成形するとともに架橋して得られる透明性に優れた光学用材料。」

(2) 対比
ア 本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「架橋剤」は本願補正発明の「架橋助剤」に,「光学用材料」は「透明樹脂成形体」にそれぞれ相当する。
また,引用発明の「熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー」について,引用文献1には,その具体例として,5-メチル-2-ノルボルネンや5-エチル-2-ノルボルネンなどが挙げられているところ(4頁),これら例示のものは,本願補正発明の「環状ポリオレフィン」の具体例として本願明細書の【0029】に例示されているものと一致するから,引用発明の「熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー」は本願補正発明の「(透明ポリアミド及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の)熱可塑性樹脂」に相当する。
さらに,本願明細書の記載を総合すると,上記例示のもの(5-メチル-2-ノルボルネン,5-エチル-2-ノルボルネン,など)は,その厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が60%以上となる樹脂の例としても挙げられている。そうすると,引用発明の「熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー」についても,その厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が60%以上となる樹脂であるということができる。
イ したがって,本願補正発明と引用発明との一致点,相違点は,それぞれ次のとおりのものと認めることができる。
・ 一致点
透明ポリアミド及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂及び架橋助剤を含有する成形材料を成形するとともに,前記熱可塑性樹脂を架橋して得られる樹脂成形体であって,前記架橋助剤はアクリレート又はメタクリレート類の化合物及びアリル化合物類からなる群より選ばれ,前記熱可塑性樹脂はその厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が60%以上となる樹脂より選ばれる透明樹脂成形体
・ 相違点1
成形材料(成形用材料)に含有されてなる架橋助剤(架橋剤)の含有割合について,本願補正発明は「熱可塑性樹脂の質量に対して2質量%以上」であると特定するものであるのに対し,引用発明はそのような特定事項を有しない点
・ 相違点2
樹脂成形体の持つ物性について,本願補正発明は「200℃で10分間加熱し厚さ2mmとしたときの600?1000nmの範囲での平均透過率が,60%以上であり,270℃での貯蔵弾性率が,1MPa以上である」と特定するものであるのに対し,引用発明はそのような特定事項を有しない点

(3) 相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア) 引用文献1には,架橋剤を用いることの意義について,成形用材料を架橋させて成形品である光学用材料の強度を増すようにするにあたり,その強度の増加をより効果的に行うためである旨の記載がある(9頁右上欄)。
さすれば,引用発明は,架橋剤を含有する熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー(熱可塑性樹脂)を成形するとともに架橋して得られるものであるところ,架橋剤の含有割合を何ら特定していない引用発明において,架橋剤の含有割合を具体的に特定すること,例えば,その数値範囲を「熱可塑性樹脂の質量に対して2質量%以上」に設定する程度のことは,効果的に強度を増すという目的のもと,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
(イ) しかも,本願補正発明が相違点1に係る構成を有することについて,換言すると,上記数値範囲の下限値である「2質量%」について,本願明細書の記載をみても,何らの技術的意義ないしは臨界的意義を見いだすことができない。
(ウ) また,上記(イ)のとおり,架橋助剤の含有割合の数値限定については,その技術的意義を見いだすことができないものの,本願明細書には,本願補正発明は,架橋助剤を含有してなることで,架橋時において架橋を促進し優れた耐熱性や剛性が得られること(【0043】),貯蔵弾性率が向上すること(実施例6と比較例3との対比),といった作用効果を奏するものであるということができる。
他方,引用文献1には,上記(ア)でも述べたように,成形用材料を架橋させることの意義について,成形品である光学用材料の「強度を増すため」であること,架橋剤を用いることの意義については,強度の増加をより効果的にできることの記載があるにすぎず,上述したような本願補正発明の奏する作用効果についての記載はたしかに見あたらない。
しかし,熱可塑性樹脂について,架橋構造を導入することで高分子鎖同士がより絡み合い,耐熱性や剛性が増すことは,技術常識である。また,貯蔵弾性率とは,粘弾性測定における歪み曲線と同位相の成分から求めた粘弾性体の硬さを意味するといえるところ,架橋剤を用いて架橋を行うことで,高分子鎖同士の絡み合いがより増加し,粘弾性体である熱可塑性樹脂の硬さも増すこと,すなわち貯蔵弾性率が向上することも,当業者であれば容易に予測しうるといえる。
さすれば,引用文献1には明示はないものの,本願補正発明の上記効果は,同文献の記載から予測しうる程度の範囲にすぎない。
イ 相違点2について
本願明細書の記載を総合すると,相違点2に係る本願補正発明の構成(物性)は,透明ポリアミド及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂であって,その厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が60%以上となる熱可塑性樹脂,並びに,前記熱可塑性樹脂の質量に対して2質量%以上のアクリレート又はメタクリレート類の化合物及びアリル化合物類からなる群より選ばれ架橋助剤を含有する成形材料を,成形し,架橋することで得られる透明樹脂成形体の持つ物性であるといえる。
そうすると,引用発明の光学用材料は,架橋剤の含有割合が熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー(熱可塑性樹脂)の質量に対して2質量%以上であるとき,相違点2に係る本願補正発明の構成と同じ物性を必然的に持つということができる。
よって,上記アで検討のとおり,相違点1は引用発明から想到容易であると判断されるのであるから,相違点2については実質的な相違点でないことになる。相違点2は,架橋剤の含有割合が熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマー(熱可塑性樹脂)の質量に対して2質量%以上であるとしたときの引用発明(透明樹脂成形体)が有する平均透過率と貯蔵弾性率の値を,単に特定したにすぎない。
ウ 小活
よって,本願補正発明は,引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないといえる。

6 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり,本件補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年9月14日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「透明ポリアミド及び環状ポリオレフィンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂,及び前記熱可塑性樹脂の質量に対して2質量%以上の架橋助剤を含有する成形材料を成形するとともに,前記熱可塑性樹脂を架橋して得られる樹脂成形体であって,
前記熱可塑性樹脂は,その厚さ2mmの成形体における600?1000nmの範囲での平均透過率が,60%以上となる樹脂より選ばれ,かつ
前記樹脂成形体を,200℃で10分間加熱し,厚さ2mmとしたときの600?1000nmの範囲での平均透過率が60%以上であり,270℃での貯蔵弾性率が,0.1MPa以上であることを特徴とする透明樹脂成形体。」

2 原査定の理由(平成24年11月7日付け拒絶理由)
原査定の理由は,要するに,本願発明は,引用文献1に記載された発明(引用発明)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。

3 引用発明
引用発明は,上記第2_5(1)イにおいて認定のとおりである。

4 対比・判断
本願補正発明は,本願発明との比較において,本願発明の特定事項をすべて含むものである(上記第2_1参照)。すなわち,本願発明は,架橋助剤について,「アクリレート又はメタクリレート類の化合物,及びアリル化合物類からなる群より選ばれ」る旨の特定はないし,270℃での貯蔵弾性率について,本願補正発明の「1MPa以上」の範囲は,本願発明の「0.1MPa以上」に包含される。
そうすると,本願発明の特定事項をすべて含む本願補正発明が,上述のとおり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである以上,本願発明も,同様の理由により,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。

第4 むすび
以上のとおり,原査定の理由は妥当なものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-04 
結審通知日 2014-02-10 
審決日 2014-02-21 
出願番号 特願2006-271121(P2006-271121)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08J)
P 1 8・ 572- Z (C08J)
P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大熊 幸治  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 蔵野 雅昭
塩見 篤史
発明の名称 透明樹脂成形体並びに光学レンズ及び光学フィルム  
代理人 神野 直美  
代理人 上代 哲司  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ