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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1286821 |
審判番号 | 不服2013-6172 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-04 |
確定日 | 2014-04-10 |
事件の表示 | 特願2005-292507「現像ローラ及び現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日出願公開、特開2007-101946〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年10月5日の出願であって、平成23年7月26日に手続補正がなされ、平成25年1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、同年8月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月7日に手続補正がなされ、当審において、同年10月18日付けで再び拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知されたものである。 なお、請求人は、当審拒絶理由に対する意見書を平成25年12月20日に提出している。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年7月26日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1ないし4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりの次のものと認める。 「 【請求項1】 導電性軸体と、該導電性軸体の外側に位置する弾性半導電体層と、該弾性半導電体層の外周部に設けたトナー担持層上に薄膜状態で担持された摩擦帯電トナーを層形成部材によって所定のトナー層厚に層形成した後、潜像担持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置に用いられる現像ローラであって、 前記トナー担持層を形成する樹脂のゲル分率が60%以上であり、 前記トナー担持層の表面に平均粒度30μmの研磨紙を0.1kgfの押力で押し付けた状態で前記現像ローラを100rpmで回転させた際に前記トナー担持層がなくなるまでの時間が1分以上を要し、 前記トナー担持層表面のJIS(B0601)十点平均粗さ(Rz)は2?15μmであり、 前記導電性軸体と前記トナー担持層の表面との間の電気抵抗値が、1×10^(4)?10^(9)Ωであることを特徴とする現像ローラ。 【請求項2】 前記トナー担持層を形成する樹脂の成分はポリウレタン、ポリウレア、フッ素樹脂のいずれか、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。 【請求項3】 前記トナー担持層の膜厚は3μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像ローラ。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一つに記載の現像ローラのトナー担持層の表面に摩擦帯電トナーを担持して該摩擦帯電トナーの薄膜を形成した後、前記トナー担持層が静電潜像を表面に保持した潜像担持体に接触して、前記摩擦帯電トナーの薄膜から前記摩擦帯電トナーを前記潜像担持体の表面に付着させ、該静電潜像を可視化することを特徴とする現像装置。」 第3 当審拒絶理由 当審において平成25年10月18日付けで通知した拒絶の理由の要点は、平成25年10月7日にした手続補正(以下「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものであり、その詳細は次のとおりである。 「1 本件補正の内容 本件補正は、次の補正を含んでいる。 (1)本件補正前の段落【0050】ないし【0054】に、 『[試験方法] 実施例及び比較例についてのゲル分率、耐摩耗性、表面粗さRz及び電気抵抗の値は以下の測定方法によって取得し、さらに、耐久性の評価のために以下の試験を行った。 (1)ゲル分率 まず、弾性半導電体層3の表面にプライマーを塗布せずに、実施例1と同様の方法によって導電性ウレタン樹脂層を塗布し、160℃、1時間架橋硬化し、十分冷却した後、導電性ウレタン樹脂層を弾性半導電体層3の表面から取り外す。この取り外された導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量を測定する。次に、約100倍の質量のトルエン液に導電性ウレタン樹脂層(試料)を浸漬し(室温23℃、4時間)、その後トルエン液から導電性ウレタン樹脂層(試料)を取り出して150℃、1時間の条件で乾燥し、十分冷却した後、導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量を測定する。 トルエン液に浸漬する前の導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量と、トルエン液に浸漬して乾燥した後の導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量とから、次の計算式でゲル分率を算出する。 (数1) ゲル分率(%)=(試料の浸浸乾燥後の質量/試料の浸浸前の質量)×100』とあったものを、 『[試験方法] 実施例及び比較例についてのゲル分率、耐摩耗性、表面粗さRz及び電気抵抗の値は以下の測定方法によって取得し、さらに、耐久性の評価のために以下の試験を行った。 (1)ゲル分率 まず、弾性半導電体層3の表面にプライマーを塗布せずに、実施例1?4、比較例1?5と同様の方法によって導電性ウレタン樹脂層を塗布し、所定の温度及び時間(実施例1では150℃、90分、実施例2では150℃、45分、実施例3では150℃、30分、実施例4では150℃、30分、比較例1では150℃、20分、比較例2?5では150℃、90分)架橋硬化し、十分冷却した後、導電性ウレタン樹脂層を弾性半導電体層3の表面から取り外す。この取り外された導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量を測定する。次に、約100倍の質量のトルエン液に導電性ウレタン樹脂層(試料)を浸漬し(室温23℃、4時間)、その後トルエン液から導電性ウレタン樹脂層(試料)を取り出して150℃、1時間の条件で乾燥し、十分冷却した後、導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量を測定する。 トルエン液に浸漬する前の導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量と、トルエン液に浸漬して乾燥した後の導電性ウレタン樹脂層(試料)の質量とから、次の計算式でゲル分率を算出する。 (数1) ゲル分率(%)=(試料の浸漬乾燥後の質量/試料の浸漬前の質量)×100』とする補正。 (2)本件補正前の段落【0054】、【0055】及び図2に、 『(2)耐摩耗性 図2に示したように、試験前の現像ローラ1の表面のトナー担持層4に、直径8mmのポンチを用いて、表面厚さ以上の丸形の傷5をつける。次に、図3に示したように、加圧ローラ7を用いて、トナー担持層4の表面に平均粒度30μmの研磨紙8を0.1kgfの押力で押し付け、その状態で現像ローラ1を100rpmで回転させる。具体的には、現像ローラ1に対向させて加圧ローラ7を配置し、トナー担持層4と研磨紙8とが直接接触しない領域をも部分的に形成するため、現像ローラ1と加圧ローラ7との間に、幅10mmの市販品のコピー用紙6を挟み込んで、現像ローラ1を100rpmの回転速度で回転させる。このとき、加圧ローラ7の表面には平均粒度30μmの研磨紙8を捲回し、コピー用紙6は、現像ローラ1の回転に伴って下方へ流れ落ちないように、垂直上方に0.1kgfで引き抜く力を与えることとする。そして、トナー担持層4と研磨紙8とが直接接触する領域において、現像ローラ1の表面のトナー担持層4がなくなる時間を耐摩耗性を表す特性値として計測する。』 及び とあったものを、 『(2)耐摩耗性 図2に示したように、試験前の現像ローラ1を用意する。次に、図3に示したように、加圧ローラ7を用いて、トナー担持層4の表面に平均粒度30μmの研磨紙8を0.1kgfの押力で押し付け、その状態で現像ローラ1を100rpmで回転させる。具体的には、現像ローラ1に対向させて加圧ローラ7を配置し、トナー担持層4と研磨紙8とが直接接触しない領域をも部分的に形成するため、現像ローラ1と加圧ローラ7との間に、幅10mmの市販品のコピー用紙6を挟み込んで、現像ローラ1を100rpmの回転速度で回転させる。このとき、加圧ローラ7の表面には平均粒度30μmの研磨紙8を捲回し、コピー用紙6は、現像ローラ1の回転に伴って下方へ流れ落ちないように、垂直上方に0.1kgfで引き抜く力を与えることとする。そして、トナー担持層4と研磨紙8とが直接接触する領域において、現像ローラ1の表面のトナー担持層4がなくなる時間を耐摩耗性を表す特性値として計測する。』 及び とする補正。 2 当審の判断 (1)上記1(1)の補正について ア 上記1(1)の補正は、次の(ア)ないし(ウ)の補正事項からなる。 (ア)実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法におけるプライマーを塗布せずに弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法を、『実施例1と同様の方法』から『実施例1?4、比較例1?5と同様の方法』に変更する。 (イ)実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法における、塗布した導電性ウレタン樹脂層の架橋硬化の温度及び時間を、『160℃、1時間』から『所定の温度及び時間(実施例1では150℃、90分、実施例2では150℃、45分、実施例3では150℃、30分、実施例4では150℃、30分、比較例1では150℃、20分、比較例2?5では150℃、90分)』に変更する。 (ウ)(数1)における『浸浸』との誤記を『浸漬』に訂正する。 イ 本願の発明の詳細な説明の段落【0037】ないし【0050】の記載によれば、実施例2ないし4及び比較例1における『弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法』は実施例1と同じであるが、比較例2ないし5における『弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法』は、実施例1における方法と比較して、塗布厚さ、塗布する導電性ウレタン樹脂層に添加する煙霧質シリカ系充填材の充填量及び塗布回数のいずれかが異なっている。 したがって、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法におけるプライマーを塗布せずに弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法を、『実施例1と同様の方法』から『実施例1?4、比較例1?5と同様の方法』に変更する上記ア(ア)の補正事項は、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法におけるプライマーを塗布せずに弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法における塗布厚さ、塗布する導電性ウレタン樹脂層に添加する煙霧質シリカ系充填材の充填量及び塗布回数のいずれかを変更する補正であり、当初明細書には、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法におけるプライマーを塗布せずに弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法としては、『実施例1と同様の方法』しか記載されておらず、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法におけるプライマーを塗布せずに弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法として、実施例1の方法における塗布厚さ、塗布する導電性ウレタン樹脂層に添加する煙霧質シリカ系充填材の充填量及び塗布回数のいずれかを変更した方法は記載されていないから、上記ア(ア)の補正事項に係る本件補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 ウ 上記ア(イ)の補正事項は、『160℃、1時間』と一律に定めてあった、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法における『塗布した導電性ウレタン樹脂層の架橋硬化の温度及び時間』を、各実施例及び比較例毎に、実施例1では150℃、90分、実施例2では150℃、45分、実施例3では150℃、30分、実施例4では150℃、30分、比較例1では150℃、20分、比較例2?5では150℃、90分とし、ゲル分率の測定においても、現像ローラの製造工程と同じ温度及び時間で資料を架橋硬化することに変更するものであるところ、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法における「塗布した導電性ウレタン樹脂層の架橋硬化の温度及び時間」を各実施例及び比較例毎の現像ローラの製造工程と同じ温度及び時間とすることは、当初明細書に開示されておらず、当初明細書の記載では、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法における『塗布した導電性ウレタン樹脂層の架橋硬化の温度及び時間』は一律に『160℃、1時間』と定めてあり、当初明細書にはそれ以外の温度及び時間にする旨の記載はなかった。 したがって、上記ア(イ)の補正事項に係る本件補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 (2)上記1(2)の補正について 上記1(2)の補正は、実施例及び比較例についての耐摩耗性の測定方法における『試験前の現像ローラ1』に『表面のトナー担持層4に、直径8mmのポンチを用いて、表面厚さ以上の丸形の傷5をつける』という前処理を行うことをしないとするものである。 しかしながら、図3に示したように、加圧ローラ7を用いて、トナー担持層4の表面に平均粒度30μmの研磨紙8を0.1kgfの押力で押し付け、その状態で現像ローラ1を100rpmで回転させて、トナー担持層4と研磨紙8とが直接接触する領域において、現像ローラ1の表面のトナー担持層4がなくなる時間を耐摩耗性を表す特性値として計測するという実施例及び比較例についての耐摩耗性の測定の対象とする『試験前の現像ローラ1』として当初明細書に記載されていたものは、『表面のトナー担持層4に、直径8mmのポンチを用いて、表面厚さ以上の丸形の傷5をつけた、現像ローラ1』であって、そのような前処理を行わずに、実施例及び比較例についての耐摩耗性の測定を行う旨の開示は当初明細書にはない。 したがって、上記1(2)の補正事項に係る本件補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 (3)上記(1)及び(2)からして、上記1(1)の補正のうちの上記(1)ア(ア)及び(イ)の補正事項及び上記1(2)の補正事項は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではないから、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 したがって、上記(1)ア(ア)及び(イ)の補正事項及び上記1(2)の補正事項を含む本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。 」 第4 当審の拒絶理由に対する請求人の主張 請求人は、当審拒絶理由通知に対して、平成25年12月20日に提出した意見書において、以下のように主張している。 「1.経緯 本願発明は、平成23年7月26日付け提出の手続補正書によって補正をした特許請求の範囲に記載したとおりの現像ローラ及び現像装置です。 これに対し、今般の拒絶理由通知書(起案日:平成25年10月18日、発送日:平成25年10月22日)により、最後の拒絶理由通知として、次の3つの拒絶理由(理由1?3)が指摘されました。 (理由1) 本願明細書の段落〔0052〕において、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法におけるプライマーを塗布せずに弾性半導電体層3の表面に導電性ウレタン樹脂層を塗布する方法を、『実施例1と同様の方法』から『実施例1?4、比較例1?5と同様の方法』に変更する補正事項は、新規事項の追加に該当する。 (理由2) 本願明細書の段落〔0052〕において、実施例及び比較例についてのゲル分率の測定方法における、塗布した導電性ウレタン樹脂層の架橋硬化の温度及び時間を、『160℃、1時間』から『所定の温度及び時間(実施例1では150℃、90分、実施例2では150℃、45分、実施例3では150℃、30分、実施例4では150℃、30分、比較例1では150℃、20分、比較例2?5では150℃、90分)」に』更する補正事項は、新規事項の追加に該当する。 (理由3) 本願明細書の段落〔0055〕および図2において、実施例及び比較例についての耐摩耗性の測定方法における『試験前の現像ローラ1』に『表面のトナー担持層4に、直径8mmのポンチを用いて、表面厚さ以上の丸形の傷5をつける』という前処理を行うことをしないとする補正事項は、新規事項の追加に該当する。 2.本願発明が特許されるべき理由 (1)理由1、2に対する反論 まず、理由1は、本願明細書の表現をあまりにも字句どおりに解釈していることに起因する誤判断と言わざるを得ません。すなわち、本願明細書を精読すれば、その段落〔0051〕に『実施例及び比較例についてのゲル分率…(略)…は以下の測定方法によって取得し』とあり、そのゲル分率の測定方法が本願明細書の段落〔0052〕?〔0054〕に記載されています。そのため、この段落〔0052〕中に『実施例1と同様の方法によって』とあるのは、実際は『実施例1?4、比較例1?5と同様の方法によって』であるものを便法として『実施例1』で『実施例1?4、比較例1?5』を代表させて記載したと考えるのが自然であります。 また、理由2に係る補正事項、つまり『160℃、1時間』を『所定の温度及び時間(実施例1では150℃、90分、実施例2では150℃、45分、実施例3では150℃、30分、実施例4では150℃、30分、比較例1では150℃、20分、比較例2?5では150℃、90分)』に訂正する補正事項は、前回の拒絶理由通知書に対する意見書(平成25年10月7日付け提出)で述べたとおり、出願当初の明細書の段落〔0042〕?〔0050〕の記載に基づくものであり、補正の根拠が明白であります。 すなわち、この補正事項のうち、『実施例1では150℃、90分』は、出願当初の明細書の段落〔0042〕の記載『150℃、90分加熱硬化した。』に基づき、『実施例2では150℃、45分』は、出願当初の明細書の段落〔0043〕の記載『実施例2は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、150℃、45分間とした』に基づき、『実施例3では150℃、30分』は、出願当初の明細書の段落〔0044〕の記載『実施例3は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、150℃、30分間とした』に基づき、『実施例4では150℃、30分』は、出願当初の明細書の段落〔0045〕の記載『実施例4は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、150℃、30分間とした』に基づき、『比較例1では150℃、20分』は、出願当初の明細書の段落〔0046〕の記載『比較例1は、実施例1のトナー担持層硬化条件の150℃、90分間を、150℃、20分間とした』に基づき、『比較例2?5では150℃、90分』は、出願当初の明細書の段落〔0047〕の記載『比較例2は、実施例1のトナー担持層4の厚みを2.6μmにした他は、すべて実施例1と同じ方法で製作した現像ローラ1である。』、段落〔0048〕の記載『比較例3は、実施例1のウレタン系塗料に添加する煙霧質シリカ系充填材の充填量を40質量部とした以外は、同様な製作方法で現像ローラを製作した。』、段落〔0049〕の記載『比較例4は、実施例1のウレタン系塗料に煙霧質シリカ系充填材を添加しなかった以外は、同様な製作 方法で製作した。』および段落〔0050〕の記載『比較例5は、実施例1のウレタン系塗料の塗装方法を3回にした以外は、同様な製作方法で製作した。』に基づきます。 これらのことから、本願明細書の段落〔0052〕に係る補正事項は、いずれも、当業者において、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することによって導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項を導入するものではありません。そのため、知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号審決取消請求事件(ソルダーレジスト事件、平成20年5月30日判決)の判旨に照らして適法であり、決して新規事項の追加に該当するものではありません。 (2)理由3に対する反論 理由3に係る補正事項は、前回の拒絶理由通知書(起案日:平成25年8月5日、発送日:平成25年8月6日)により、耐摩耗性を測定するときにトナー担持層に傷をつける理由が不明である旨の指摘を受けたことを踏まえ、この拒絶理由通知書に対して手続補正書を提出して、本願明細書において、段落〔0055〕の記載『図2に示したように、試験前の現像ローラ1の表面のトナー担持層4に、直径8mmのポンチを用いて、表面厚さ以上の丸形の傷5をつける。』を『図2に示したように、試験前の現像ローラ1を用意する。』に訂正するとともに、図面の図2において、傷5を削除することにより、トナー担持層に傷をつけることなく耐摩耗性を測定する内容に変更したものであります。 しかし、耐摩耗性の測定方法において、現像ローラの表面のトナー担持層に直径8mmの小さな丸形の傷をつけるという前処理を行うか否かが耐摩耗性の測定結果にほとんど影響を与えないことは、当業者にとって技術的に明らかであります。そうである以上、この補正事項は、決して新規事項の追加に該当するものではなく、したがって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしています。」 第5 当審の判断 当審拒絶理由でいう「1(2)の補正事項」(上記「第3」参照。)(平成25年12月20日に提出された意見書でいう「理由3」における補正事項(上記「第4」参照。))について検討する。 (1)本件補正前の明細書の段落【0055】(平成25年4月4日に提出された手続補正書による補正後のもの)には、「図2に示したように、試験前の現像ローラ1の表面のトナー担持層4に、直径8mmのポンチを用いて、表面厚さ以上の丸形の傷5をつける。」と記載されているところ、現像ローラ1の表面とは、例えば、厚さが2.6μm(比較例2)、12μm(実施例1ないし4、比較例1、比較例3、比較例4)又は26μm(比較例5)のトナー担持層4であるのだから、直径8mmのポンチを用いて表面厚さ以上の傷5をつければ、その傷5の部分(直径8mmの丸形部分)においては、トナー担持層4が除去され、その下の弾性半電導体層3が露出した状態になっているものと解される。 現像ローラ1の直径は、本願の実施例では、16mm程度である(段落【0038】?【0042】参照。)から、請求人のいう「前処理」とは、「例えば、直径16mm程度の現像ローラ1の表面のトナー担持層4に、直径8mmの丸型に該トナー担持層4が除去された部分(傷5)を形成する処理」ということになる。 また、図3に示されたようなスキームで行われる耐摩耗性試験は、具体的には、トナー担持層4がなくなる時間を計測するものである(段落【0055】参照。)。 以上のことに鑑みれば、平成25年12月20日に提出された意見書における、上記「前処理」を行うか否かが耐摩耗性試験の計測結果にほとんど影響を与えないとする請求人の主張は、試験前の直径16mm程度の現像ローラ1の表面のトナー担持層4に直径8mmの丸型に該トナー担持層4が除去された部分があるかないかが、図3に示されたようなスキームで行われる耐摩耗性試験におけるトナー担持層4がなくなる時間の計測結果にほとんど影響を与えないと主張しているに等しく、技術常識に照らして、受け入れ難いものであるといわざるを得ない。 (2)仮に、請求人が主張するとおり、「前処理」を行うか否かが耐摩耗性試験の計測結果にほとんど影響を与えないとしても、図3に示されたような、加圧ローラ7を用いて、トナー担持層4の表面に平均粒度30μmの研磨紙8を0.1kgfの押力で押し付け、その状態で現像ローラ1を100rpmで回転させて、トナー担持層4と研磨紙8とが直接接触する領域において、現像ローラ1の表面のトナー担持層4がなくなる時間を耐摩耗性を表す特性値として計測するという実施例及び比較例についての耐摩耗性試験の対象とする「試験前の現像ローラ1」として当初明細書等に記載されていたものは、「表面のトナー担持層4に、直径8mmのポンチを用いて、表面厚さ以上の丸形の傷5をつけた、現像ローラ1」のみであって、そのような「前処理」を行わずに、実施例及び比較例についての耐摩耗性試験の計測を行う旨の記載や、上記「前処理」を行わずに、実施例及び比較例についての耐摩耗性試験の計測を行うことを示唆していると認められる記載は当初明細書等にはない。 すなわち、ポンチによる傷5がつけられていない試験前の現像ローラ1や「前処理」を行わない耐摩耗性試験は、当初明細書等に明示的に記載された事項ではなく、また、当初明細書等の記載に接した当業者が、技術常識に照らして、その意味であることが明らかであって、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解する事項でもないから、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。 (3)まとめ したがって、当審拒絶理由の「1(2)の補正事項」に係る本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 第6 むすび 以上のとおり、平成25年10月7日に提出された手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-02-07 |
結審通知日 | 2014-02-12 |
審決日 | 2014-02-25 |
出願番号 | 特願2005-292507(P2005-292507) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WZ
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 紀史、谷山 稔男 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
西村 仁志 清水 康司 |
発明の名称 | 現像ローラ及び現像装置 |
代理人 | 佐野 弘 |