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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1286907 |
審判番号 | 不服2011-25079 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-04 |
確定日 | 2014-04-09 |
事件の表示 | 特願2008-149853「日本語かな表記法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-277200〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は,平成20年5月13日の出願であって,平成23年8月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成23年11月4日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,当審において,平成24年11月22日付けで,拒絶の理由が通知され,平成25年1月28日に意見書並びに手続補正書が提出されたものである。 そして,特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成25年1月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「印刷物又はディスプレー表示装置に、文字と同様のものとして、又は言葉の構成部分として、国際音声記号表記で[pa]、[pi]、[p▼w▲]、[pe]、[po]の半濁音発音を、表記する表記方法であって、 前記半濁音発音の表記のかたちは、 国際音声記号表記で子音部の「k」及び「g」が共に「軟口蓋音」であって発声時の口の形状が同じである「か行」に対する濁音「が行」、 国際音声記号表記で子音部の「s」及び「z」が共に「歯茎音」であり発声時の口の形状が同じである「さ行」に対する濁音「ざ行」、 及び国際音声記号表記で子音部の「t」及び「d」が共に「歯音」であり発声時の口の形状が同じである「た行」に対する濁音「だ行」の関係があることから、 濁音や半濁音の50音の各行の発音時の子音部の口の形状は、濁点及び半濁点が付される行の発音時の口の形状と同じであるべきではないかとの技術的な見地からの思想により、前記国際音声記号表記で[pa]、[pi]、[p▼w▲]、[pe]、[po]の発音は子音部「p」が「両唇音」であることからその表記は、子音部が「両唇音」であって発音時の口の形状が同じである「ま行」の半濁音発音表記であった方がより合理的であろうとの思想から、50音の「ま行」のカタカナのそれぞれ順に半濁点を付したかたちである「マ゜」「ミ゜」「ム゜」「メ゜」「モ゜」を当該発音に対する発音の表記のかたちとし、 当該発音の表記のかたちはそれぞれを[マ゜=pa]、[ミ゜=pi]、[ム゜=p▼w▲]、[メ゜=pe]、[モ゜=po]と発音し、 当該発音の表記のかたちの印刷又はディスプレー表示は、コンピュータ、通信端末、携帯型コミュニケータ、ワープロ、ワープロソフト及びゲーム機の印刷装置又はディスプレー表示装置が行い、それらに内蔵又は付属する電子文書作成部又は装置には、あらかじめ前記発音の表記のかたちを文字コードセット又は外字として前記50音の「ま行」のカタカナのそれぞれに半濁点を付したものをそれぞれ1文字としてコード登録し、又はさらに当該コードに対応して所属するフォントの書体に従う1文字とした字形データを登録しておき、当該発音の表記のかたちの印刷又は表示は、印刷又は表示データ中の当該コード及び字形データに基づき前記発音の表記のかたちを1文字とした当該字形データを出力し、その出力に基づいて当該印刷装置で印刷し又は当該ディスプレー装置で表示する、 前記国際音声記号表記で[pa]、[pi]、[p▼w▲]、[pe]、[po]の発音の前記印刷物又はディスプレー表示装置への表記方法。」 なお、国際音声記記号である は、特許庁の起案では使用できないので、「▼w▲」と表記した。(以下同様。) 2.引用発明等 (1).引用発明 これに対して,当審の拒絶理由で引用した引用文献1(岡田有花、「あ゛」「え゛」も表示--12万字のフォント無償公開、ITmediaニュース、[online]、2005.12.15、インターネット<URL:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0512/15/news084.html> )には、以下の事項が示されている。 a 「東京大学大学院情報学環坂村研究室はこのほど、12万字から成る世界最大の漢字フォントセット「T書体フォント」を発表した。日中の古い書体を収録したほか、「あ゛」「え゛」など、漫画などで用いられる特殊な文字も収録。明治時代ごろまで人名にも用いられていた変体仮名も収録した。」 b 「T書体フォントは、明朝体、ゴシック体、楷書体のTrueTypeフォントそれぞれ12万文字分、計36万文字を収録した。BTRON3仕様のOS「超漢字4」のほか、Windowsでも利用できる形式で、来春から同研究室のWebサイトで無料公開する予定だ。」 c 記事中の「濁点文字」に関する写真には、「濁点文字」のコード表として、8040、8050の行に 「ま行」のひらがなに濁点、半濁点を付した書体 「ま゛」、「ま゜」、「み゛」、「み゜」、「む゛」、「む゜」、「め゛」、「め゜」、「も゛」、「も゜」が、示されている。 また、8020行には、あ行のひらがなに濁点、半濁点を付した書体「ぁ゛」、「ぁ゜」、「あ゛」、「あ゜」「ぃ゛」、「ぃ゜」、「い゛」、「い゜」・・(以下略)・・が示され、さらに、 8070行、8120行には、あ行のカタカナに濁点、半濁点を付した書体「ァ゛」、「ァ゜」、「ア゛」、「ア゜」、「ィ゛」、「ィ゜」、「イ゛」、「イ゜」・・(以下略)・・が示されている。 上記の記載から、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(以下、「引用発明」という。)は、以下のとおりである。 <引用発明> 「漢字フォントセットであって、漫画などで用いられる特殊な文字も収録したもので、「ま行」のひらがなに濁点、半濁点を付した書体 「ま゛」、「ま゜」、「み゛」、「み゜」、「む゛」、「む゜」、「め゛」、「め゜」、「も゛」、「も゜」も収録し、 Windowsでも利用できる形式である漢字フォントセット。」 (2)また、当審の拒絶理由で引用した引用文献2(有馬大造、バビブベボ、本当は、マ”ミ”ム”メ”モ”、ヤフー ブログ、[online]、2006.01.22、インターネット<URL:http://blogs.yahoo.co.jp/mnbvcxz_181007/24078009.html> )には、以下の記載がある。 d 「「ば、び、ぶ、べ、ぼ、」は、【は行】の濁音と言われているが 本当は、【ま行】の濁音ではないかと言うのである。 ちょっと、【は行】と【ば行】を発音してみて欲しい。 「は、ひ、ふ、へ、ほ、」を発音する時は、上唇と下唇はくっつかないが 「ば、び、ぶ、べ、ぼ、」を発音する時は、まず唇を閉じた状態から発音する。 これは、発音的には【は行】の濁音が【ば行】であると言うのはちょっと変である。 では【ば行】と同じように、唇を閉じた状態から発音するのは【何行】だろうか? ちょっと【あ行】から発音して言ってみて欲しい。 そうすると、「ば」に一番近い口の形は「ま」であることに気が付くと思う。 そう【ば行】は、【ま行】の発音と同じなのでる。 「ば、び、ぶ、べ、ぼ」と、「ま、み、む、め、も」うーん、口(唇)の形は同じだ。 従って父は常日頃から、「ば、び、ぶ、べ、ぼ、」と発音しても文字にする時は 「ま゛、み゛、む゛、め゛、も゛、」と書くのが正しいのではないかと言っていた。 それを聞いて僕は「なるほど一理あるなあ」と思った。 なかなか鋭い所に気が付くなあとね。 みなさんは、そう思いませんか? ついでに言っておくと、【は行】の半濁音 「ぱ、ぴ、ぷ、ぺ、ぽ、」の発音も文字にした場合は、 「ま゜、み゜、む゜、め゜、も゜、」が正しいのかな?」 (3)また、当審の拒絶理由で引用した引用文献3(ま行かは行か、Livedoor Blog、[online]、2008.01.16、インターネット<URL:http://blog.livedoor.jp/se_888/archives/cat_50009746.html?P=25>)には、以下の記載がある。 e 「高校の国語教師が言ってた事で今も覚えてる事がある。 ばびぶべぼ ぱぴぷぺぽ こいつらは、は行の濁音半濁音じゃなく、むしろま行のそれなんじゃね? という。 確かに口の形がそうなってる。か行やさ行全て口の形は一緒だからこれは多分正しい。 なのでいままでのば行ぱ行は ま゛み゛む゛め゛も゛ ま゜み゜む゜め゜も゜ と表記することにした。」 (4)また、当審の拒絶理由で引用した引用文献4(QNo.1260709 濁点の表記に関する質問です。、教えて Watch、[online]、2005.03.10、インターネット<URL:http://oshiete1.watch.impress.co.jp/qa1260709.html)には、以下の記載がある。 f 「答え(私の考えです)は「ば」です。 理由は、他の3つは濁点のある・なしに係わらず、口の形は開いたまま発音できますが、「は」と「ば」は発音の形態が違いますよね。 つまり、「ba」という発音の表記法は、「ま゛」の方が理にかなっている気がしています。 なぜ「ba」は「ま゛」ではなく「ば」になったのかという疑問です。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明の「漢字フォントセット」は、「Windowsでも利用できる形式」であり、印刷物や、ディスプレー装置に、印刷又は表示するために、コンピュータ、通信端末、携帯型コミュニケータ、ワープロ、ワープロソフト及びゲーム機等の内部に文字コードセットとして登録されて、印刷又は表示に利用されるものであることは、明らかである。 イ.引用発明の「「ま行」のひらがなに半濁点を付した書体 「ま゜」、「み゜」、「む゜」、「め゜」、「も゜」は、本願発明の「マ゜」「ミ゜」「ム゜」「メ゜」「モ゜」と、「ま行」に半濁点を付したもので、半濁音発音を表記するものである点で共通している。 ウ.引用発明の「「ま行」のひらがなに半濁点を付した書体 「ま゜」、「み゜」、、「む゜」、「め゜」、「も゜」は、文字コードセット又は外字として、それぞれ1文字としてコード登録されていることは、「濁点文字」のコード表からみて明らかである。(例えば、「ま゜」は、「804f」と規定されている。) したがって,両者は,以下の一致点と相違点とを有する。 〈一致点〉 印刷物又はディスプレー表示装置に、文字と同様のものとして、又は言葉の構成部分として、半濁音発音を、表記する表記方法であって、 前記半濁音発音の表記のかたちは、 50音の「ま行」のそれぞれ順に半濁点を付したかたちであるものを当該発音に対する発音の表記のかたちとし、 当該発音の表記のかたちの印刷又はディスプレー表示は、コンピュータ、通信端末、携帯型コミュニケータ、ワープロ、ワープロソフト及びゲーム機の印刷装置又はディスプレー表示装置が行い、それらに内蔵又は付属する電子文書作成部又は装置には、あらかじめ前記発音の表記のかたちを文字コードセット又は外字として前記50音の「ま行」のそれぞれに半濁点を付したものをそれぞれ1文字としてコード登録し、又はさらに当該コードに対応して所属するフォントの書体に従う1文字とした字形データを登録しておき、当該発音の表記のかたちの印刷又は表示は、印刷又は表示データ中の当該コード及び字形データに基づき前記発音の表記のかたちを1文字とした当該字形データを出力し、その出力に基づいて当該印刷装置で印刷し又は当該ディスプレー装置で表示する、 前記印刷物又はディスプレー表示装置への表記方法。 〈相違点1〉 本願発明は、「ま行」のカタカナのそれぞれ順に半濁点を付した形である「マ゜」「ミ゜」「ム゜」「メ゜」「モ゜」を表記するものであるのに対し、引用発明では、「ま行」のひらがなのそれぞれ順に半濁点を付した形である「ま゛」、「ま゜」、「み゛」、「み゜」、「む゛」、「む゜」、「め゛」、「め゜」、「も゛」、「も゜」を表記するもので、「ま行」のカタカナに半濁点を付したものについての記載はない点。 〈相違点2〉 本願発明は、「ま行」のそれぞれに順に半濁点を付した形である表記と発音との関係について、『国際音声記号表記で[pa]、[pi]、[p▼w▲]、[pe]、[po]の半濁音発音」を表記するものであり、そして、「前記半濁音発音の表記のかたちは、 国際音声記号表記で子音部の「k」及び「g」が共に「軟口蓋音」であって発声時の口の形状が同じである「か行」に対する濁音「が行」、 国際音声記号表記で子音部の「s」及び「z」が共に「歯茎音」であり発声時の口の形状が同じである「さ行」に対する濁音「ざ行」、 及び国際音声記号表記で子音部の「t」及び「d」が共に「歯音」であり発声時の口の形状が同じである「た行」に対する濁音「だ行」の関係があることから、 濁音や半濁音の50音の各行の発音時の子音部の口の形状は、濁点及び半濁点が付される行の発音時の口の形状と同じであるべきではないかとの技術的な見地からの思想により、前記国際音声記号表記で[pa]、[pi]、[p▼w▲]、[pe]、[po]の発音は子音部「p」が「両唇音」であることからその表記は、子音部が「両唇音」であって発音時の口の形状が同じである「ま行」の半濁音発音表記であった方がより合理的であろうとの思想から、50音の「ま行」のカタカナのそれぞれ順に半濁点を付したかたちである「マ゜」「ミ゜」「ム゜」「メ゜」「モ゜」を当該発音に対する発音の表記のかたちとし、 当該発音の表記のかたちはそれぞれを[マ゜=pa]、[ミ゜=pi]、[ム゜=p▼w▲]、[メ゜=pe]、[モ゜=po]と発音し』と規定しているのに対し、引用発明では、「ま行」に半濁点を付した形の表記と発音との関係については、記載されていない点。 4.判断 〈相違点1について〉 引用文献1の前記摘記事項cには、「ま行」のひらがなの濁点、半濁点を付した書体も含め、あ行以降のひらがなの濁点、半濁点を付した書体が示されている。そして、さらに、あ行以降のひらがなの対となるカタカナの濁点、半濁点を付した書体が、ひらがなの濁点、半濁点を付した書体の後に続けて記載されている。 そして、「ァ゛」から始まるカタカナの濁点、半濁点を付した書体は、「チ゛」から後の文字については記載はないが、対となるひらがなを考慮すれば、「チ゛」から後の、「ま行」のカタカナの半濁点を付した「マ゜」「ミ゜」「ム゜」「メ゜」「モ゜」が、引用発明の書体フォントに存在することは、明らかである。 そして、ひらがなとカタカナは、表音文字であり、ひらがなとカタカナとで対となる文字は、同じ発音で文字種が異なるだけであり、用語、場面等に応じて適宜使い分けされるものである。 してみると、引用発明において、半濁音発音を表記する、「ま行」のひらがなに半濁点を付した「ま゜」、「み゜」、「む゜」、「め゜」、「も゜」を、「ま行」のカタカナに半濁点を付した表記の「マ゜」「ミ゜」「ム゜」「メ゜」「モ゜」とすることとし、相違点1に係る構成とすることに、格別な点はない。 〈相違点2について〉 引用文献2?4に示されているように、通常「ぱ、ぴ、ぷ、ぺ、ぽ、」で表記される発音(国際発音記号では[pa]、[pi]、[p▼w▲]、[pe]、[po]の半濁音)は、「ま゜、み゜、む゜、め゜、も゜」と表記されることが、正しいとの考えは、周知の事項(以下、「周知の考え」という。)である。 そして、その「周知の考え」の基礎となっているのは、「は行」と、「は行」の濁音、半濁音の発音における口の形状が相違するのに対し、「か行」と「が行」や「さ行」と「ざ行」の発音における口の形状は相似しており、むしろ、「は行」の濁音、半濁音の発音における口の形は「ま行」と発音における口の形状が相似していることに、起因することも、示されている。 また、国際発音記号や「か行」、「が行」、「さ行」、「ざ行」等の発声に関する言語学上の知識もよく知られている事項である(鈴木良次編「言語科学の百科事典」、丸善株式会社、平成19年1月15日、P.596-597、特にP.597の図2参照。)。 そして、引用発明は、言語処理に関するものであり、言語に関する知識を考慮して設計、構成することは、当然のことであり、言語に関する知識を適用できないとする阻害要因も認められない。 してみると、引用発明において、「ま行」に半濁点を付した形の表記に対応した半濁音発音として、上記「周知の考え」を採用し、そして言語学上の周知の知識を適用して相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、本願発明の構成によって得られる作用効果は、引用発明及び周知技術による構成によって得られる作用効果からみて格別のものであるともいえない。 したがって,本願発明は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明できた発明である。 5.結語 以上のとおり,本願発明は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて容易に発明できた発明であるから,特許法第29条2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-03 |
結審通知日 | 2013-06-11 |
審決日 | 2013-06-25 |
出願番号 | 特願2008-149853(P2008-149853) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 成瀬 博之 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
衣川 裕史 稲葉 和生 |
発明の名称 | 日本語かな表記法及び装置 |