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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1286943
審判番号 不服2013-5029  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-15 
確定日 2014-04-17 
事件の表示 特願2008-542205号「接着テープ及びそれを用いてなる半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 8日国際公開、WO2008/054012〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2007年10月30日(優先権主張 2006年10月31日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年9月18日付けで通知された拒絶理由に対して、同年11月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年3月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2.平成25年3月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年3月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1及び2を、以下のように補正するものである。

(a)本件補正前の請求項1及び2
「【請求項1】
チップオンチップ型の半導体装置において、半導体チップと半導体チップとを電気的に接続するための接着テープであって、
(A)フィルム形成性樹脂10?50重量%と、
(B)硬化性樹脂30?80重量%と、
(C)フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物1?20重量%と、
を含有する接着テープ。
【請求項2】
第1の半導体チップと第2の半導体チップとを備え、前記第1の半導体チップの回路面と前記第2の半導体チップの回路面とが対向して配設されてなるチップオンチップ型の半導体装置において、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとを電気的に接続するための接着テープであって、
(A)フィルム形成性樹脂10?50重量%と、
(B)硬化性樹脂30?80重量%と、
(C)フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物1?20重量%と、
を含有する接着テープ。」

(b)本件補正後の請求項1及び2
「【請求項1】
第1の半導体チップと第2の半導体チップとを備え、前記第1の半導体チップの回路面と前記第2の半導体チップの回路面とが対向して配設されてなるチップオンチップ型の半導体装置であって、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの離隔距離が25μm以下である半導体装置を製造する際に、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとを電気的に接続するための接着テープであって、
(A)フィルム形成性樹脂10?50重量%と、
(B)硬化性樹脂30?80重量%と、
(C)フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物1?20重量%と、
を含有する、15?150μmの厚さを有する接着テープ。
【請求項2】
前記(C)フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物の含有量が、10重量以上20重量%以下である請求項1に記載の接着テープ。」

そして、本件補正は以下の補正事項からなるものである。
・補正事項1
補正前の請求項1に係る発明における「チップオンチップ型の半導体装置において、半導体チップと半導体チップとを電気的に接続するための接着テープ」を、「第1の半導体チップと第2の半導体チップとを備え、前記第1の半導体チップの回路面と前記第2の半導体チップの回路面とが対向して配設されてなるチップオンチップ型の半導体装置であって、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの離隔距離が25μm以下である半導体装置を製造する際に、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとを電気的に接続するための接着テープ」とし補正後の請求項1とする。
・補正事項2
補正前の請求項1に係る発明における接着テープに、「15?150μmの厚さを有する」との限定を付加して補正後の請求項1とする。
・補正事項3
補正前の独立形式で記載された請求項2に係る発明を、その発明特定事項をすべて含む補正後の請求項1を引用する形式とし、補正後の請求項2とする。
また、補正後の請求項1を引用したことに伴い、補正後の請求項1に記載された「前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの離隔距離が25μm以下である」との限定が請求項2に付加された。
・補正事項4
補正前の請求項2に係る発明における「フラックス活性を有する化合物」の含有量について、「10重量以上20重量%以下」と限定し、補正後の請求項2とする。

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無について
請求項1の補正に関して、補正事項1は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である接着テープを用いる「チップオンチップ型の半導体装置」について限定を付加する補正であり、また、補正事項2は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である接着テープに厚さの限定を付加する補正であり、いずれも発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
請求項2の補正に関して、補正事項3は、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「チップオンチップ型の半導体装置」について限定を付加する補正であり、また、補正事項4は補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「フラックス活性を有する化合物」の含有量を限定する補正であり、いずれも発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そして、上記各補正事項は、補正前の請求項2、及び、当初明細書の段落【0006】、段落【0007】の【表1】の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、同条第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか)について以下に検討する。

(1) 刊行物記載の発明及び事項
(1-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-244486号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)
「【請求項1】
半導体素子または半導体パッケージを実装する際に用いる接着フィルムであって、
軟化点が100℃以下であるフェノールノボラック樹脂(A)と、
造膜用樹脂(B)と、
前記造膜用樹脂よりも重量平均分子量が低いエポキシ樹脂(C)とを必須成分として含むことを特徴とする接着フィルム。
【請求項2】
更にフラックス助剤を含むものである請求項1に記載の接着フィルム。」(【特許請求の範囲】)
(イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着フィルム、それを用いた半導体パッケージまたは半導体装置に関する。」(段落【0001】)
(ウ)
「【0015】
本発明の接着フィルムは、軟化点が100℃以下であるフェノールノボラック樹脂を含む。これにより、半田及び金属表面の酸化物などの汚れを除去し、半田接合用フラックスとして作用することができる。その理由は、前記フェノール性水酸基が還元作用を有するため、半田表面や対面する電極の金属表面に付着する酸化物等を除去できるからである。
更に、フラックスとして作用したフェノールノボラック樹脂は、残存フラックスの除去を不要とすることができる。その理由は、フェノールノボラック樹脂が半田接合後の加熱過程でエポキシ樹脂(C)と硬化反応するので揮発分等が発生しないからである。残存フラックスの除去を不要とすることができると、半田接合後の洗浄工程を不要にでき、高温、多湿雰囲気でも電気絶縁性を保持し、接合強度、信頼性の高い半田接合が可能となる。」(段落【0015】)
(エ)
「【0019】
前記成分フェノールノボラック樹脂の含有量は、特に限定されないが、接着フィルムを構成する樹脂全体の10?50重量%が好ましく、特に18?36重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとフラックスとしての作用を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると接着・封止強度および信頼性を向上する効果が低下する場合がある。」(段落【0019】)
(オ)
「【0020】
本発明の接着フィルムでは、造膜用樹脂(B)を含む。これにより、フィルムへの成形性を向上することができる。
前記造膜用樹脂(B)とは、フィルムへの製膜性の向上に寄与する樹脂であり、例えばノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノール型シアネート樹脂等のシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂(特に長鎖型のビスフェノール型エポキシ樹脂)が好ましい。これにより、半導体素子とインターポーザ等との接着・封止性をより向上することができる。この様な造膜用樹脂を含むことにより、フィルム状態に容易にすることができる。」(段落【0020】)
(カ)
「【0022】
前記造膜用樹脂(B)の含有量は、特に限定されないが、接着フィルムを構成する樹脂全体の10?60重量%が好ましく、特に25?45重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとボイドの発生等により製膜性が低下する場合があり、前記上限値を超えると半田接合時における樹脂の流動性が低下し、半田接合接続の信頼性を向上する効果が低下する場合がある。」(段落【0022】)
(キ)
「【0023】
本発明の接着フィルムでは、前記造膜用樹脂よりも重量平均分子量が低いエポキシ樹脂(C)を含む。エポキシ樹脂(C)は、造膜用樹脂(B)よりも重量平均分子量が低いことにより、本発明の接着フィルムに接着性を付与することができる。更に、接着フィルムにアンダーフィルとしての作用を付与することができる。
エポキシ樹脂(C)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂のほか、脂環式型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、フラックス性を特に向上することができる。」(段落【0023】)
(ク)
「【0026】
前記エポキシ樹脂(C)の含有量は、特に限定されないが、接着フィルムを構成する樹脂全体の10?60重量%であることが好ましく、特に20?45重量%であることが好ましい。含有量が前記下限値未満であると接着性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると回路の凹凸埋め込み性を向上する効果が低下する場合がある。」(段落【0026】)
(ケ)
「【0027】
本発明の接着フィルムでは、特に限定されないが、更にフラックス助剤を含むことが好ましい。これにより、接着フィルムのフラックス機能をより向上させることができる。
前記フラックス助剤としては、例えばフェノール、アルキルフェノール、ビフェノール、ナフトール、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコール、メチリデンジフェノール、エチリデンジフェノール、イソプロピリデンジフェノール、ヒドロキシベンゾイックアシッド、ジヒドロキシベンゾイックアシッド、フェノールフタリン等が挙げられる。」(段落【0027】)
(コ)
「【0031】
前記接着フィルムの厚さは、搭載する半導体素子や半導体パッケージのバンプ高さに応じて調整される。
そのため、前記接着フィルムの厚さは、特に限定されないが、3?80μmが好ましく、特に5?75μmが好ましい。これにより、従来のアンダーフィル等の方法では接着・封止が困難であった厚さの範囲内においても接着・封止を可能とすることができる。」(段落【0031】)
(サ)
「【0032】
次に本発明の接着フィルムを用いて、半導体素子とインターポーザとを接着する場合について説明する。
以下に半導体素子と、インターポーザとが接着している状態を図1に示す好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1は、半導体パッケージを概略的に示す断面図である。
半導体素子1には、半田バンプ2が接合されている。
接着フィルム3は、半導体素子1とインターポーザ4との間に設置される。なお、接着フィルム3は、あらかじめ半導体素子1またはインターポーザ4に設置されていても構わない。接着フィルム3をあらかじめ半導体素子1に設置する場合、例えば半導体素子1と接着フィルム3とを位置合わせし、ボンダーで接合することができる。また、接着フィルム3をあらかじめインターポーザ4に設置する場合、ラミネートロールを用いて接合することができる。
【0033】
そして、半導体素子1、接着フィルム3およびインターポーザ4は、好ましくは加熱下で圧着され、半導体パッケージの形状となる。なお、ここで接着フィルム3は、軟化して半導体素子1とインターポーザ4との間を封止する。
次に、前記半導体パッケージ形状のものを半田リフローし、半田バンプ2をインターポーザ4のビア孔5に半田接続して最終的に図2に示す様な半導体パッケージ11を得ることができる。
また、前記半導体パッケージ11を更に150?180℃、1?2時間加熱処理することが好ましい。これにより、接着フィルムを完全に硬化することができる。」(段落【0032】?【0033】)
(シ)
「【0039】
接着フィルムの製造例
(実施例1)
成分(A)の樹脂としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR-HF-3、軟化点85℃、重量平均分子量850)を20重量%、成分(B)の樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、EP-4007P、重量平均分子量約5,000)を30重量%、成分(C)の樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製、EPICLON-830S、重量平均分子量約400、溶融粘度3.5Pa・s)を40重量%、フラックス助剤としてフェノールフタリンを9.9重量%、硬化触媒として2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成社製、2PHZ)を0.1重量%用いた。
上述の各樹脂および添加剤をメチルエチルケトンにレジンコンテント約60%になるように溶解して樹脂ワニスを得た。樹脂ワニスをコンマコーターでPETフィルム上に最高温度120℃で塗布して、厚さ60μm(半導体パッケージ用接着フィルム)、150μm(半導体装置用接着フィルム)の接着フィルムを得た。
【0040】
(実施例2)
成分(A)の樹脂としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR-53194、軟化点92℃、重量平均分子量1,400)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0041】
(実施例3)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
成分(A)の樹脂としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR-HF-3、軟化点85℃)を40重量%、成分(B)の樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、EP-4007P、重量平均分子量約5,000)を25重量%、成分(C)の樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製、EPICLON-830S、重量平均分子量約400、溶融粘度3.5Pa・s)を25重量%、フラックス助剤としてフェノールフタリンを9.9重量%、硬化触媒として2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成社製、2PHZ)を0.1重量%用いた。
【0042】
(実施例4)
樹脂ワニスの配合を以下のようにした以外は、実施例1と同様にした。
成分(A)の樹脂としてフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR-HF-3、軟化点85℃)を15重量%、成分(B)の樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、EP-4007P、重量平均分子量約5,000)を32重量%、成分(C)の樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製、EPICLON-830S、重量平均分子量約400、溶融粘度3.5Pa・s)を43重量%、フラックス助剤としてフェノールフタリンを9.9重量%、硬化触媒として2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成社製、2PHZ)を0.1重量%用いた。
【0043】
(実施例5)
成分(B)の樹脂としてフェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、YL-6746、重量平均分子量約30,000)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0044】
(実施例6)
成分(B)の樹脂としてビスフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、EP-4004P、重量平均分子量約1,500)を用いた以外は、実施例1と同様にした。」(段落【0039】?【0044】)

上記記載事項(サ)の段落【0033】の記載によれば、接着フィルムは半導体素子1の半田バンプ2とインターポーザ4のビア孔5とが最終的に半田接続され電気的な導通を得るために用いられるものであると認められる。
上記記載事項(シ)の記載から、接着フィルムは、造膜用樹脂を25?32重量%、エポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂とを合わせて58?65重量%、フェノールフタリンからなるフラックス助剤を9.9重量%含有させ、厚さ60μmとして形成されると認められる。
してみると、上記の各記載事項及び【図1】及び【図2】の記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〔引用発明〕
「半導体素子1とインターポーザ4とを備え、前記半導体素子1の半田バンプ2と前記インターポーザ4のビア孔5とが対向して配設されてなる半導体パッケージ11であって、半導体パッケージ11を製造する際に、前記半導体素子1と前記インターポーザ4とを電気的に接続するための接着フィルム3であって、
造膜用樹脂(B)25?32重量%と、
エポキシ樹脂(C)とフェノールノボラック樹脂(A)と合わせて58?65重量%と、
フラックス機能をより向上させることができるフェノールフタリンからなるフラックス助剤9.9重量%と、
を含有する、60μmの厚さを有する接着フィルム。」

(1-2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-264205号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ス)
「【0090】図5(c)に示す工程においては、半導体チップ1の上にフィルムタイプの第2接着剤14を、50?150℃で数秒間保持して熱圧着する。その上に、第2半導体チップ11を下向き(フェイスダウン方式)に搭載して、100?200℃で数秒間保持して熱圧着する。このとき、第2半導体チップ11にはあらかじめバンプ8が形成されており、このバンプ8と半導体チップ1との位置が整合するように第2半導体チップ11の搭載位置をアライメントする。そして、熱圧着を行なうときには、バンプ8が第2接着剤14を貫通して半導体チップ1と完全なコンタクトが取れる程度の圧力を第2半導体チップ11に加えて第2接着剤14を仮硬化させる。」(段落【0090】)

(2)対比、判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
後者の「半導体素子1」は前者の「第1の半導体チップ」に相当する。
後者の「造膜用樹脂(B)」は、その機能からみて、前者の「フィルム形成性樹脂」に相当し、後者の「造膜用樹脂(B)25?32重量%」は前者の「フィルム形成性樹脂10?50重量%」に一致する。
前者の「硬化性樹脂」は、明細書の段落【0007】の【表1】及び【表2】の記載を参酌すると、エポキシ樹脂とフェノールノボラックとを合わせたものと認められるので、後者の「エポキシ樹脂(C)とフェノールノボラック樹脂(A)」とを合わせたものは前者の「硬化性樹脂」に相当し、後者の「エポキシ樹脂(C)とフェノールノボラック樹脂(A)と合わせて58?65重量%」は前者の「硬化性樹脂30?80重量%」に一致する。
前者の「フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物」としては、明細書の段落【0006】及び段落【0007】の【表1】の記載を参酌すると、ゲンチジン酸、フェノールフタリンが示されているので、後者の「フラックス機能をより向上させることができるフェノールフタリンからなるフラックス助剤」は前者の「フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物」に相当し、後者の「フラックス助剤9.9重量%」は前者の「化合物1?20重量%」に一致する。
後者の「接着フィルム」は前者の「接着テープ」に相当し、後者の「60μmの厚さを有する」ことは前者の「15?150μmの厚さを有する」ことに一致する。
後者の「インターポーザ4」と前者の「第2の半導体チップ」とは、「回路基板」である限りにおいて一致する。
半田バンプは対向する基板の回路どうしを接続するものであり、両基板の対向している面は回路面といえるので、後者の「半導体素子1とインターポーザ4とを備え、前記半導体素子1の半田バンプ2と前記インターポーザ4のビア孔5とが対向して配設されてなる半導体パッケージ11」と前者の「第1の半導体チップと第2の半導体チップとを備え、前記第1の半導体チップの回路面と前記第2の半導体チップの回路面とが対向して配設されてなるチップオンチップ型の半導体装置」とは、「第1の半導体チップと回路基板とを備え、第1の半導体チップの回路面と回路基板の回路面とが対向して配設されてなる半導体装置」である限りにおいて一致する。
後者の接着フィルム3が「半導体パッケージ11を製造する際に、半導体素子1とインターポーザ4とを電気的に接続する」ことと、前者の接着テープが「前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの離隔距離が25μm以下である半導体装置を製造する際に、第1の半導体チップと第2の半導体チップとを電気的に接続する」こととは、「半導体装置を製造する際に、第1の半導体チップと回路基板とを電気的に接続する」限りにおいて一致する。
してみると、両者は、
「第1の半導体チップと回路基板とを備え、前記第1の半導体チップの回路面と前記回路基板の回路面とが対向して配設されてなる半導体装置であって、半導体装置を製造する際に、前記第1の半導体チップと前記回路基板とを電気的に接続するための接着テープであって、
フィルム形成性樹脂10?50重量%と、
硬化性樹脂30?80重量%と、
フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物1?20重量%と、
を含有する、15?150μmの厚さを有する接着テープ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点1〕
本願補正発明は、「第1の半導体チップと第2の半導体チップとを備え」た「チップオンチップ型の半導体装置であって、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの離隔距離が25μm以下である半導体装置を製造する際に、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとを電気的に接続するための接着テープ」であるのに対して、引用発明は、半導体素子と「インターポーザ」とを接着フィルムで電気的に接続した半導体装置であり、半導体素子とインターポーザとの離隔距離が不明である点。

上記相違点1について検討する。
刊行物2には、1の半導体チップの上に他の半導体チップを搭載し電気的に接続する際に、フィルムタイプの接着剤を用いることが記載されており(上記(1-2)(ス)を参照)、チップオンチップ型の半導体装置を製造する際に半導体チップ同士の接続にフィルムタイプの接着剤を用いることが記載または示唆されているといえる。引用発明の接着フィルムと刊行物2に記載のもののフィルムタイプの接着剤とは、半導体装置を形成する半導体チップの接着に用いる点で一致しており、してみると、引用発明の接着フィルムを、刊行物2に記載の事項に基づいて、チップオンチップ型の半導体装置の半導体チップ間の接続に用いることに格別の困難性は認められず、当業者が容易に想到し得るといえる。
また、チップオンチップ型の半導体装置において、2つの半導体チップの対向部分に確保されるギャップ寸法として25μmは格別の数値とは認められず(必要であれば、特開2002-359345号公報の段落【0015】、【0036】、特開2005-209833号公報の段落【0018】を参照)、半導体装置の技術分野では小型化は周知の課題であるので、チップオンチップ型の半導体装置における半導体チップ間の距離を25μm以下とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
したがって、引用発明における接着フィルムを、チップオンチップ型の半導体装置に適用し、その半導体装置を構成する半導体チップ間の距離を25μm以下とし、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、刊行物2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たといえる。

そして、本願補正発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び刊行物2に記載の事項並びに周知の事項から予測できる程度のものであって格別のものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載の事項並びに周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成25年3月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成24年11月21日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の1.(a)に記載されたとおりのものである。

2.刊行物に記載された発明及び事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である刊行物1に記載された発明は、前記第2.の3.(1)(1-1)に記載した「引用発明」のとおりである。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である刊行物2に記載された事項は、前記第2.の3.(1)(1-2)に記載したとおりである。

3.対比、判断
本願発明と引用発明とを対比する。
後者の「造膜用樹脂(B)」は、その機能からみて、前者の「フィルム形成性樹脂」に相当し、後者の「造膜用樹脂(B)25?32重量%」は前者の「フィルム形成性樹脂10?50重量%」に一致する。
前者の「硬化性樹脂」は、明細書の段落【0007】の【表1】及び【表2】の記載を参酌すると、エポキシ樹脂とフェノールノボラックとを合わせたものと認められるので、後者の「エポキシ樹脂(C)とフェノールノボラック樹脂(A)」とを合わせたものは前者の「硬化性樹脂」に相当し、後者の「エポキシ樹脂(C)とフェノールノボラック樹脂(A)と合わせて58?65重量%」は前者の「硬化性樹脂30?80重量%」に一致する。
前者の「フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物」としては、明細書の段落【0006】及び段落【0007】の【表1】の記載を参酌すると、ゲンチジン酸、フェノールフタリンが示されているので、後者の「フラックス機能をより向上させることができるフェノールフタリンからなるフラックス助剤」は前者の「フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物」に相当し、後者の「フラックス助剤9.9重量%」は前者の「化合物1?20重量%」に一致する。
後者の「接着フィルム」は前者の「接着テープ」に相当する。
後者の「半導体素子1とインターポーザ4とを備え、前記半導体素子1の半田バンプ2と前記インターポーザ4のビア孔5とが対向して配設されてなる半導体パッケージ11」と前者の「チップオンチップ型の半導体装置」とは、「半導体装置」である限りにおいて一致する。
後者の「インターポーザ4」と前者の一方の「半導体チップ」とは、「回路基板」である限りにおいて一致するといえるので、後者の接着フィルム3が「半導体パッケージ11を製造する際に、半導体素子1とインターポーザ4とを電気的に接続する」ことと、前者の接着テープが「半導体チップと半導体チップとを電気的に接続する」こととは、「半導体チップと回路基板とを電気的に接続する」限りにおいて一致する。

してみると、両者は、
「半導体装置において、半導体チップと回路基板とを電気的に接続するための接着テープであって、
フィルム形成性樹脂10?50重量%と、
硬化性樹脂30?80重量%と、
フラックス活性を有する硬化剤としてのカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物1?20重量%と、
を含有する接着テープ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点2〕
本願発明は、「チップオンチップ型の半導体装置において、半導体チップと半導体チップとを電気的に接続するための接着テープ」であるのに対して、引用発明は、半導体素子と「インターポーザ」とを接着フィルムで電気的に接続した半導体装置である点。

上記相違点2について検討する。
刊行物2には、1の半導体チップの上に他の半導体チップを搭載し電気的に接続する際に、フィルムタイプの接着剤を用いることが記載されており(上記(1-2)(ス)を参照)、チップオンチップ型の半導体装置を製造する際に半導体チップ同士の接続にフィルムタイプの接着剤を用いることが記載または示唆されているといえる。引用発明の接着フィルムと刊行物2に記載のもののフィルムタイプの接着剤とは、半導体装置を形成する半導体チップの接着に用いる点で一致しており、してみると、引用発明の接着フィルムを、刊行物2に記載の事項に基づいて、チップオンチップ型の半導体装置の半導体チップ間の接続に用い、相違点2に係る本願発明の構成とすることに格別の困難性は認められず、当業者が容易に想到し得るといえる。

そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び刊行物2に記載の事項から予測できる程度のものであって格別のものとは認められない。

したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-12 
結審通知日 2014-02-18 
審決日 2014-03-03 
出願番号 特願2008-542205(P2008-542205)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 英夫  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 小関 峰夫
平田 信勝
発明の名称 接着テープ及びそれを用いてなる半導体装置  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 小林 浩  
代理人 田村 恭子  

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