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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65H
管理番号 1287201
審判番号 不服2013-16861  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-02 
確定日 2014-05-20 
事件の表示 特願2009-126241「用紙処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日出願公開、特開2010-275027、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年5月26日の出願であって、平成25年4月1日付けで手続補正書が提出された後、同年5月31日付けで拒絶査定がされ(拒絶査定の謄本送達(発送)日 同年6月4日)、これに対して、同年9月2日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。

第2 平成25年9月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1.補正の内容
特許請求の範囲に係る本件補正は、請求項1に関して、
本件補正前の
「【請求項1】
用紙に対して、1カ所綴じと2カ所綴じの複数のステープルモードでステープル処理を行うことができるステープラと、設定された各ステープルモードにおいて一度のステープルで処理する用紙の最大枚数を決定する制御部とを有し、該制御部は、前記1カ所綴じのステープルモードにおける前記最大枚数として、前記2カ所綴じのステープルモードにおける前記最大枚数よりも少ない枚数を決定することを特徴とする用紙処理装置。」を、
本件補正後において
「【請求項1】
用紙に対して、1カ所綴じと2カ所綴じの複数のステープルモードでステープル処理を行うことができるステープラと、
前記1カ所綴じのステープルモードが設定された場合に、一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数であり当該一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙が当該最大枚数を超えているときユーザーに再設定を促すための第1の最大枚数を決定し、前記2カ所綴じのステープルモードが設定された場合に、一度の2カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数であり当該一度の2カ所綴じステープルで処理する用紙が当該最大枚数を超えているときユーザーに再設定を促すための第2の最大枚数を決定する制御部とを有し、
該制御部は、前記1カ所綴じのステープルモードにおける前記第1の最大枚数として、前記2カ所綴じのステープルモードにおける前記第2の最大枚数よりも少ない枚数を決定することを特徴とする用紙処理装置。」
とする補正(以下「補正事項1」という。)を含んでいる。(下線は、補正個所を明示するために、当審で加入した。)
2.補正の適否
本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「制御部」の制御の態様(最大枚数の決定)について、「前記1カ所綴じのステープルモードが設定された場合に、一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数であり当該一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙が当該最大枚数を超えているときユーザーに再設定を促すための第1の最大枚数を決定し、前記2カ所綴じのステープルモードが設定された場合に、一度の2カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数であり当該一度の2カ所綴じステープルで処理する用紙が当該最大枚数を超えているときユーザーに再設定を促すための第2の(最大枚数を決定する)」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正において、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
(1)引用刊行物の記載事項
(1-1)原査定及び前置報告の拒絶の理由に引用された特開2003-154769号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】従来、シート処理装置は、例えば、画像形成装置の本体に装備され、画像形成装置の本体で片面または両面に画像が形成されて順次取り込まれたシートを束状にし、ステイプラユニットによってシート束の略中央付近の複数箇所(通常2箇所)を綴じ、その後、これを折り曲げ装置によって2つ折りにするようになっている中綴じ製本処理が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のシート処理装置では、中綴じ製本処理を行う場合、シート束の略中央付近の複数箇所(通常2箇所)を綴じていたが、例えば綴じる枚数が少ない場合や、綴じ針を節約したい場合など、ユーザが綴じる位置が一個所でも十分と判断でき、綴じる個数を減らしたい場合、中綴じ個所の数を選択することが出来なかった。
【0004】本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、中綴じ製本処理を行う場合の綴じ個所数を選択できるシート処理装置を提供することを目的としている。」
イ 「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態のシート処理装置と、このシート処理装置を備えた画像形成装置の一例である複写機とを図面に基づいて説明する。
【0011】図1は、本発明の実施の形態のシート処理装置103とプリンタ104を装備した複写機102の概略正面断面図である。・・・
【0015】操作部15は、複写機102のプリンタ104やシート処理装置103の動作設定や設定内容を確認できるようになっている。また操作部15は、図3に示すように、設定内容を確認するための表示部306(例として図4?図9のような表示)は、表示部上に重ねて配置され、画像形成動作の詳細設定やシート分類装置の動作設定等を行うためのタッチパネルキーを備えている。」
ウ 「【0016】シート処理装置103は、複写機102のプリンタ104から搬送されてきたシートSを入り口ローラ対1で受け入れるようになっている。・・・
【0017】図1において、搬送途上に配置された比較的大径のバッファローラ(シート搬送手段)5は、バッファモータ59によって回転し、その外側周囲に配された各押し付けころ12,13,14によってシートをロール面に押圧されて搬送するようになっている。
【0018】第1の切り替えフラッパ11は、ノンソートパス4とソートパス8とを選択的に切り替えるようになっている。第2の切り替えフラッパ10は、シートSまたはインサートシートIを一時的に貯えるためのバッファパス23とソートパス8とを切り替えるようになっている。・・・
【0023】第3の切り替えフラッパ89は、サドルパス91とソートパス8とを選択的に切り替えるようになっている。シートSまたはインサートシートIは、搬送ローラ対90,96によって搬送されて、ストッパ92に当接させられる。ストッパ92に突き当てられて積載されたシートまたはインサートシートIは、整合部材97によって幅方向を整合される。そして、シートSまたはインサートシートIは、シート幅方向中央を基準にして左右対称の位置に2個配設されている(図1では重なっている)中綴じステイプルユニット93によってシート長さ方向(シート搬送方向)の中央位置において2ケ所針止めまたは1箇所針止めすることによって綴じられる。」
エ 「【0035】操作部15で2つ折製本動作が選択されている場合、コントローラ回路部200はシート処理装置制御部205によって、第1、第3の切り替えフラッパ89を作動させて搬送経路を切り替える。さらにコントローラ回路部200はシート搬送前にシート処理装置制御部205によって、不図示のストッパ移動モータを駆動させて製本するシート長さに応じた位置へ、ストッパ92を移動させる。
【0036】コントローラ回路部200は、搬送ローラ対6、90,96によって、シートをストッパ92まで搬送した後、シート処理装置制御部205によって、整合部材97を作動させ・・・シートSまたはインサートシートIの整合ならびに積載が完了したとき、コントローラ回路部200はシート処理装置制御部205によって、ステイプルユニット93を作動させる。
【0037】ステイプルユニット93は、シートSまたはインサートシートIの中央位置において針止めする。操作部15において、針位置箇所の詳細が設定されている場合、その設定に応じて、上1箇所、下1箇所、2箇所の設定に応じて針止めする。操作部15において、針位置箇所の詳細が設定されていない場合、予め設定されている、1箇所綴じの最大枚数と、ストッパ92に突き当てられて積載された束の枚数を比較して、所定枚数以下の場合、予め設定されている上1箇所、下1箇所、設定に応じて針止めする。」
オ 「【0042】図10は、中綴じ処理の綴じ位置箇所を判断するためのユーザモード設定入力手順を示すフローチャートである。この処理プログラムは、メモリ1001内のROM1004に格納されて、CPU1002によって実行されるようになっている。
【0043】ステップS-1(以下、ステップの文字を省略)において、CPU1002は操作部15のコピースタートキー302が・・・ユーザに押下されたと判断した場合、CPU1002はS-2を実行する。・・・
【0044】CPU1002は、操作部15のユーザモードキー307がユーザに押下されたかどうか判断する(S-3)。S-3において、ユーザモードキー307がユーザに押下されたと判断した場合、CPU1002は、操作部制御部201を動作させ、図6に示すユーザモード選択画面を操作部15に表示する(S-4)。・・・
【0045】CPU1002は、操作部15のユーザモード選択画面において中綴じ針箇所設定キー601をユーザが選択したかどうか判断する(S-5)。S-5において、中綴じ針箇所設定キー601がユーザに押下されたと判断した場合、CPU1002は、操作部制御部201を動作させ、図9に示す中綴じ針箇所設定画面を操作部15に表示し(S-10)、S-11を実行する。
【0046】S-5において、中綴じ針箇所設定キー601がユーザに押下されていないと判断した場合、CPU1002はS-6を実行する。・・・
【0047】S-6において、その他のキーがユーザに押下されていないと判断した場合、CPU1002はS-7を実行する。・・・S-7において、リセットキー304がユーザに押下されていないと判断した場合、CPU1002はS-4を実行する。
【0048】S-11において、OKキー903がユーザに押下されたと判断した場合、CPU1002は、1箇所綴じ細大枚数入力部902に数値が入力されているかどうか判断する(S-12)。S-12において、1箇所綴じ細大枚数入力部902に数値が入力されていると判断した時、CPU1002はS-13を実行する。・・・S-11において、CPU1002は1箇所綴じ方向(上または下)と、1箇所綴じ細大枚数入力部902に入力された数値を1箇所綴じ細大枚数としてメモリに格納する(S-13)。そして、CPU1002はS-15を実行する。」
カ 「【0071】図12は、中綴じ処理の綴じ動作設定手順を示すフローチャートである。この処理プログラムは、メモリ1001内のROM1004に格納されて、CPU1002によって実行されるようになっている。
【0072】CPU1002は、操作部15のコピースタートキー302がユーザに押下されたかどうか判断する(ステップ(以下、「S」という。)3-1)。S3-1において、コピースタートキー302がユーザに押下されたと判断した場合、CPU1002はS3-2を実行する。
【0073】S3-2において、CPU1002は、動作モードが中綴じするに設定されているかどうか判断する(S3-2)。・・・
【0074】S3-2において、中綴じモードが設定されていると判断した場合、CPU1002は、中綴じ動作モードが上1箇所中綴じ動作モード、下1箇所中綴じ動作モード、2箇所中綴じ動作モードのいずれか1つが設定されているかどうか判断する(S3-3)。
【0075】S3-3において、中綴じ動作モードが上1箇所中綴じ動作モード、下1箇所中綴じ動作モード、2箇所中綴じ動作モードのいずれか1つが設定されていると判断した場合、CPU1002は、設定されている中綴じモードで処理をおこない、S3-9を実行する。
【0076】S3-3において、中綴じ動作モードが上1箇所中綴じ動作モード、下1箇所中綴じ動作モード、2箇所中綴じ動作モードのどれもが設定されていないと判断した場合、CPU1002は、S3-4を実行する。
【0077】S3-4において、処理するJOBの中綴じ枚数と、ユーザモードで予め設定されている中綴じ1箇所細大枚数を比較する(S3-4)。そして、処理するJOBの中綴じ枚数が中綴じ1箇所細大枚数より多い場合、CPU1002は、中綴じ動作モードを2箇所綴じに設定し、メモリに格納する(S3-6)。そして、CPU1002はS3-9を実行する。
【0078】S3-4において、処理するJOBの中綴じ枚数が中綴じ1箇所細大枚数以下場合、CPU1002は、S3-5を実行する。
【0079】S3-5において、ユーザモードで予め設定されている中綴じ1箇所の方向が上か下か判断し、上であると判断した場合、CPU1002は、中綴じ動作モードを1箇所綴じ上方向に設定し、メモリに格納する(S3-7)。そして、CPU1002はS3-9を実行する。また、下であると判断した場合、CPU1002は、中綴じ動作モードを1箇所綴じ下方向に設定し、メモリに格納する(S3-8)。そして、CPU1002はS3-9を実行する。」

上記記載中の「細大枚数」は、「最大枚数」の誤記と認められるところ、上記の記載を総合すると、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「中綴じ製本処理を行う場合の綴じ個所数を選択できるシート処理装置103であって、
シート処理装置103は、複写機102のプリンタ104から搬送されてきたシートSを入り口ローラ対1で受け入れ、シートSは、搬送ローラ対90,96によって搬送されて、シート幅方向中央を基準にして左右対称の位置に2個配設されている中綴じステイプルユニット93によってシート長さ方向(シート搬送方向)の中央位置において2ケ所針止めまたは1箇所針止めすることによって綴じられるようになっており、
中綴じ処理の綴じ位置箇所を判断するためのユーザモード設定入力手順に係る処理プログラムは、メモリ1001内のROM1004に格納されて、CPU1002によって実行されるようになっており、CPU1002は、操作部制御部201を動作させて、操作部15の表示部306に、最大枚数入力部902を含む中綴じ針箇所設定画面を表示した後、1箇所綴じ最大枚数入力部902に数値が入力されると、1箇所綴じ方向(上または下)と、1箇所綴じ最大枚数入力部902に入力された数値を1箇所綴じ最大枚数としてメモリに格納し、
中綴じ処理の綴じ動作設定手順に係る処理プログラムは、メモリ1001内のROM1004に格納されて、CPU1002によって実行されるようになっており、中綴じ動作モードが上1箇所中綴じ動作モード、下1箇所中綴じ動作モード、2箇所中綴じ動作モードのいずれか1つが設定されていると判断した場合、CPU1002は、設定されている中綴じモードで処理をおこない、中綴じ動作モードが上1箇所中綴じ動作モード、下1箇所中綴じ動作モード、2箇所中綴じ動作モードのどれもが設定されていないと判断した場合、処理するJOBの中綴じ枚数と、ユーザモードで予め設定されている中綴じ1箇所最大枚数を比較し、処理するJOBの中綴じ枚数が中綴じ1箇所最大枚数より多い場合、中綴じ動作モードを2箇所綴じに設定し、処理するJOBの中綴じ枚数が中綴じ1箇所最大枚数以下の場合、中綴じ動作モードを上1箇または下1箇所の1箇所綴じに設定して、中綴じ製本処理をおこなう、
シート処理装置103。」

(1-2) 原査定及び前置報告の拒絶の理由に引用されるとともに、本願明細書(【0005】【0006】)でも先行技術文献とされた特開2007-17507号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。
キ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
・・・同じ厚さを持つ複数の紙種の中で最もステイプルしにくい、すなわち実質的なステイプル可能枚数が少ない紙種を基準にして、最大ステイプル可能枚数を設定する必要があった。このため紙種によっては、実際にはステイプル可能な枚数であってもステイプルできないという問題があった。
【0008】
例えば、ボンド紙と光沢紙(コート紙)では密度が違うため、同じ厚さであってもステイプル可能な枚数に違いがある。このような場合、より不利な条件で最大ステイプル枚数を設定する必要があるため、ステイプルしやすいボンド紙ならば本来可能なステイプル枚数であっても、ステイプルすることができない場合があった。
【0009】
本発明は以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、後処理装置の最大処理可能枚数を最適に自動設定することで、ユーザビリティを損なうことなく、後処理装置の性能を十分に発揮せしめることが可能な画像形成装置及び画像形成装置の後処理装置を提供することである。」
ク 「【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明においては、下記の(1)項ないし(13)項のいずれかに示す画像形成装置を提供することにより、前記目的を達成しようとするものである。
・・・
【0017】
(7)画像が形成された後の記録媒体に対して後処理を行う後処理装置と、前記後処理装置の制御を行う制御部と、前記記録媒体の種類を検出するメディアセンサと、不揮発性の記憶手段と、前記記憶手段に記憶された数値テーブルと、を有し、前記メディアセンサの検出値と前記数値テーブルとから、前記後処理装置が一度に処理する記録媒体の最大枚数を決定することを特徴とする画像形成装置。
【0018】
(8)前記数値テーブルは、記録媒体の特性あるいは種類ごとにあらかじめ設定された最大処理可能枚数を要素とする数値テーブルである・・・画像形成装置。
・・・
【0020】
(10)前記後処理装置が行う後処理は、ステイプル・穿孔・製本等である・・・画像形成装置。
【0021】
(11)前記後処理装置における記録媒体の枚数が前記最大枚数を超えた場合には、前記後処理を行わない・・・画像形成装置。
【0022】
(12)使用者に装置のステータスを通知する表示手段を有し、前記後処理装置における記録媒体の枚数が前記最大枚数を超えた場合には、その旨を使用者に通知する・・・画像形成装置。
【0023】
(13)記録媒体の厚さを検出する厚さ検出手段を有し、前記後処理装置が一度に処理する記録媒体の最大枚数の決定においては、前記厚さ検出手段の検出値も利用する・・・画像形成装置。」
(1-3) 前置報告の拒絶の理由に引用された特開2008-221477号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。
ケ 「【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置の中には、画像形成された用紙を綴じる機能を備えたものがある。この種の画像形成装置では、画像形成条件で指定された枚数の用紙を重ねて用紙束とし、この用紙束に綴じ針を打ち込むことで用紙の綴じ処理を行なっている。
【0003】
一般に、用紙の綴じ動作は、ステープラと呼ばれるクリンチ機構に所定数の綴じ針を装填しておき、そのステープラで用紙の端部を挟み込むようにクリンチ動作することにより実行される。このため、1回の綴じ動作(クリンチ動作)で綴じることのできる用紙の最大枚数(以下、「最大綴じ枚数」とも記す)は、綴じ針の長さやステープラの大きさなどによって制限される。
【0004】
従来技術の一つとして、例えば、下記特許文献1には、ステープラの挿入部に用紙束の厚みを検知する厚み検知センサを設け、この厚み検知センサの検知結果によって、ステープラの綴じ動作を停止させる技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5-8580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された技術では、・・・厚み検知結果に応じてステープラの綴じ動作を停止させた場合に、それまでに画像形成を行なった用紙や画像形成に消費した画像形成材料(トナー、インクなど)が無駄になる。
【0007】
本発明は、用紙の綴じ処理を行なう場合に、用紙の無駄や画像形成材料の無駄を減らすことができる画像形成装置を提供することを目的とする。」
コ 「【0039】
図4はコントローラ101によって制御される画像形成装置100の処理手順を示すフローチャートである。まず、ネットワーク300上のクライアント装置200又は操作パネル102を操作する使用者から画像形成条件を受け付けた場合は、この画像形成条件にしたがって実行すべき処理内容として綴じ処理が指定されているかどうかを確認する(ステップS1)。そして、画像形成条件で綴じ処理の実行が指定されている場合はステップS2に進み、指定されていない場合は後述するステップS5に移行する。
【0040】
ステップS2においては、画像形成条件で指定された用紙に関する情報を取得する。ここで記述する「用紙に関する情報」とは、画像形成条件に基づく画像形成処理を行なうにあたって、画像形成の対象となる用紙を一意に指定する用紙指定情報や、画像形成の対象となる用紙を収容している用紙収容部を一意に指定する用紙収容部指定情報、あるいは画像形成の対象となる用紙の紙厚検知情報などをいう。
【0041】
次に、ステップS2で取得した用紙に関する情報に基づいて、画像形成の対象となる用紙の種類を特定するとともに、当該特定した用紙の種類に対応する最大綴じ枚数をデータテーブルから抽出する(ステップS3)。用紙の種類に関しては、例えば、ステップS2で取得した用紙に関する情報が用紙指定情報である場合は、この用紙指定情報に基づいて用紙の種類を特定し、用紙に関する情報が用紙収容部指定情報である場合は、当該用紙収容部指定情報で指定された用紙収容部の設定情報に基づいて用紙の種類を特定する。
【0042】
最大綴じ枚数は、後処理部104で用紙の綴じ処理を行なう場合に1回の綴じ動作で許容される用紙の最大枚数である。最大綴じ枚数は、コントローラ101が備えるデータベース(ハードディスク等)に格納されたデータテーブルに、用紙の種類ごとに対応付けて登録されている。」
サ 「【0047】
その後、ステップS4においては、上記ステップS3で抽出した最大綴じ枚数と画像形成条件で指定された用紙の綴じ枚数とを比較する。そして、指定の綴じ枚数が最大綴じ枚数以下であれば、その段階で画像形成条件に基づく画像形成処理を開始する(ステップS5)。ここで記述する画像形成処理には、画像形成部103で行なわれる用紙の搬送処理(給紙動作を含む))や画像形成ユニット17,18,19,20によるトナー画像の形成処理も含まれる。
【0048】
また、指定の綴じ枚数が最大綴じ枚数を超えていた場合は、画像形成条件に基づく画像形成処理を開始する前に、当該画像形成処理を中止するとともに、当該画像形成条件を指定したクライアント装置200又は使用者に対して、エラーが発生した旨のエラー通知を行なう(ステップS6)。
【0049】
クライアント装置200へのエラー通知は、例えば、クライアント装置200の表示装置にエラーメッセージを表示することにより行なう。また、使用者へのエラー通知は、例えば、操作パネル102にエラーメッセージを表示することにより行なう。また、必要に応じて、エラーメッセージの表示と合わせてアラーム音を発生させてもよい。エラーメッセージとしては、例えば、「処理エラー:許容枚数を超える条件で綴じ枚数が指定されました。」、「綴じ枚数を○○枚以下に変更するか、用紙の種類を○○に変更して、はじめから処理をやり直してください。」といった内容で表示すればよい。」

(2)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「シート」は、補正発明の「用紙」に相当し、また、引用発明の「上1箇所中綴じ動作モード、下1箇所中綴じ動作モード、2箇所中綴じ動作モード」は、補正発明の「1カ所綴じと2カ所綴じの複数のステープルモード」の一態様をなすものとみることができるから、引用発明で、シートを「2ケ所針止めまたは1箇所針止めすることによって綴じ」るとされている「中綴じステイプルユニット93」は、補正発明の「用紙に対して、1カ所綴じと2カ所綴じの複数のステープルモードでステープル処理を行うことができるステープラ」に相当するものといえる。
更に、引用発明の「1箇所綴じ最大枚数」は、補正発明の「一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数」と同じものを意味するから、引用発明の「処理するJOBの中綴じ枚数が中綴じ1箇所最大枚数より多い場合」は、補正発明の「一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙が当該最大枚数を超えているとき」に相当し、引用発明の「CPU1002」は、補正発明の「制御部」に対応するものといえる。

よって、補正発明と引用発明とは、
「用紙に対して、1カ所綴じと2カ所綴じの複数のステープルモードでステープル処理を行うことができるステープラと、
前記1カ所綴じのステープルモードが設定された場合に、一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数であり当該一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙が当該最大枚数を超えているときに対処する制御を行うとともに、前記2カ所綴じのステープルモードが設定された場合の所要の制御を行う制御部とを有する、
用紙処理装置。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

補正発明に係る制御部が行う制御の態様は、1カ所綴じのステープルモードが設定された場合、一度の1カ所綴じステープルで処理する用紙が最大枚数を超えているときに、「ユーザーに再設定を促すための第1の最大枚数を決定し」、2カ所綴じのステープルモードが設定された場合に、「一度の2カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数であり当該一度の2カ所綴じステープルで処理する用紙が当該最大枚数を超えているときユーザーに再設定を促すための第2の最大枚数を決定する」とともに、「前記1カ所綴じのステープルモードにおける前記第1の最大枚数として、前記2カ所綴じのステープルモードにおける前記第2の最大枚数よりも少ない枚数を決定する」というものであるのに対し、
引用発明に係る制御部が行う制御の態様は、最大枚数の「決定」を行うものではなく、中綴じ動作モード(ステープルモード)が設定されていないときに、処理するJOBの中綴じ枚数と、ユーザモードで予め設定されている中綴じ1箇所最大枚数(ユーザによって決定され、入力された第1の最大枚数)とを比較して、「処理するJOBの中綴じ枚数が中綴じ1箇所最大枚数より多い場合、中綴じ動作モードを2箇所綴じに設定」するというものであって、引用発明では、2カ所綴じに係る「第2の最大枚数」を決定することについては言及されておらず、したがって、「第1の最大枚数」と「第2の最大枚数」との大小関係についても当然言及がない点(以下「相違点」という。)。

(3)判断
上記相違点につき検討する。

上記の引用刊行物2には、制御部が「(ステイプル処理に係る)最大処理可能枚数を最適に自動設定」し、処理装置における記録媒体(用紙)の枚数が最大処理可能枚数を超えた場合には、そのことを使用者に通知する旨の記載がある(上記(1)(1-2)キ【0009】、ク【0022】)。
また、引用刊行物3には、コントローラ101によって、用紙の紙厚検知情報などに基づいて、1回の綴じ動作で許容される用紙の最大枚数である最大綴じ枚数を決定(データテーブルからの抽出)し、指定の綴じ枚数が最大綴じ枚数を超えていた場合は、画像形成条件に基づく画像形成処理を開始する前に、当該画像形成処理を中止するとともに、「綴じ枚数を○○枚以下に変更するか、用紙の種類を○○に変更して、はじめから処理をやり直してください。」といった内容のエラー通知を行なう旨の記載がある(上記(1)(1-3)コ【0039】?【0041】)。
しかしながら、上記引用刊行物2及び3にも、上記相違点に係る補正発明の「(一度の2カ所綴じステープルで処理する用紙の最大枚数である)第2の最大枚数」を決定することについての記載がなく、また、これを示唆する記載もない。
したがって、引用発明をはじめ、上記引用刊行物1ないし3に記載されている発明をどのように組み合わせても、上記相違点に係る補正発明の制御の態様を導き出し得るとはいえない。
よって、補正発明は、引用発明及び引用刊行物1ないし3に記載されているその他の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいうことはできないから、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

更に、本件補正に係る請求項2以下の発明は、いずれも上記補正発明に、これを更に限定する事項を加えた発明であるので、補正発明と同様に、引用発明及び引用刊行物1ないし3に記載されているその他の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。
第3 本願の発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
そして、上述したとおり、本願の各請求項に係る発明については、原査定及び前置報告の拒絶理由によって拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-05-08 
出願番号 特願2009-126241(P2009-126241)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松原 陽介西堀 宏之  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 江成 克己
藤本 義仁
発明の名称 用紙処理装置  
代理人 鷲田 公一  
代理人 木曽 孝  

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