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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1287213
審判番号 不服2013-10734  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-07 
確定日 2014-05-01 
事件の表示 特願2008- 87765「画像読取装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月22日出願公開、特開2009-246462〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成20年3月28日の出願であって、平成24年2月23日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年4月18日付けで意見書・手続補正書が提出され、平成24年8月8日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年10月10日付けで意見書・手続補正書が提出され、平成25年3月8日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成25年6月7日に請求された拒絶査定不服審判であって、その審判請求と同時に手続補正が提出され、当審において、前置報告書の内容について審判請求人の意見を求めるために、平成25年8月6日付けで審尋がなされ、平成25年10月8日付けで回答書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定

平成25年6月7日付けの手続補正について次のとおり決定する。

[補正却下の決定の結論]

平成25年6月7日付けの手続補正を却下する。

[補正却下の決定の理由]

1.補正の内容

平成25年6月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、請求項1についてする次の補正を含むものである。

[補正前](平成24年10月10日付けで補正された請求項1)

「原稿に光を照射する照明手段と、
前記原稿からの光束を反射させて光路を形成するミラーと、
前記ミラーにより反射された光束を結像させる結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に配置され、前記結像レンズによる結像に基づいて前記原稿の画像を読み取る読取手段と、を備え、
前記照明手段は、
主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部と、
前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板と、
前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体と、を有しており、
前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板であり、
前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定されており、
前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置されており、
前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板に導く画像読取装置。」

[補正後](平成25年6月7日付けで補正された請求項1)
「原稿に光を照射する照明手段と、
前記原稿からの光束を反射させて光路を形成するミラーと、
前記ミラーにより反射された光束を結像させる結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に配置され、前記結像レンズによる結像に基づいて前記原稿の画像を読み取る読取手段と、を備え、
前記照明手段は、
主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部と、
前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板と、
前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体と、を有しており、
前記拡散板は、前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板であり、
前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定されており、
前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置されており、
前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板に導く画像読取装置。」

この請求項1についてする補正は、「前記拡散板」について「前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに」とさらに限定するものである。

2.補正の適法性

上記のとおり、請求項1についてする補正は、「前記拡散板」について「前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに」とさらに限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であると認められる。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、以下のとおりである。

「原稿に光を照射する照明手段と、
前記原稿からの光束を反射させて光路を形成するミラーと、
前記ミラーにより反射された光束を結像させる結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に配置され、前記結像レンズによる結像に基づいて前記原稿の画像を読み取る読取手段と、を備え、
前記照明手段は、
主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部と、
前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板と、
前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体と、を有しており、
前記拡散板は、前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板であり、
前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定されており、
前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置されており、
前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板に導く画像読取装置。」

(2)刊行物の記載事項

(2-1)刊行物1

これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2005-156600号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0002】
従来、スキャナなどの画像読取装置では、コンタクトガラス上に位置して読取対象物となる原稿の原稿面に向けて光を出射する光源を有し、原稿面で反射された後に読取光軸に沿って進行する読取光をレンズを介してCCD等の画像読取部に結像し、原稿画像を読取っている。」
「【0004】
光源として点光源を使用する場合には、複数の点光源を主走査方向(読取ライン方向)に直線状に配列する構成をとるため、各点光源から出射された光を原稿面などの読取面に直接照射すると、主走査方向において照度リップル(照度分布のムラ)が生じ、読み取った画像データに応じて画像形成した場合に照度リップが原因となる画像濃度ムラが発生する。」
「【0008】
本発明の目的は、複数の点光源を直線状に配列した光源により照明対象物を照明した場合において、照明位置での照度ニップルの発生を防止して均一な照度を得ることである。」
「【0063】
画像読取装置13は、コンタクトガラス12と平行に2:1の速度で走行可能な第1・第2走行体14,15、レンズ16、画像読取部であるCCD17等により構成されている。第1走行体14には、コンタクトガラス12上に載置された原稿、又は、ADF11で搬送される原稿の原稿面を照明するための照明装置18と、原稿面で反射されて読取光軸に沿って進行する読取光を反射させる第1ミラー19とが搭載されている。第2走行体15には、第1ミラー19で反射された光をさらに反射させる第2ミラー20と第3ミラー21とが搭載されている。第1?第3ミラー19,20,21で順次反射された読取光の進行方向前方には、レンズ16とCCD17とが配置されている。」
「【0069】
図2は、第1走行体14に搭載されている照明装置18と第1ミラー19とを示す正面図である。図3は、照明装置18を分解して示す斜視図である。照明装置18は、複数の点光源であるLED32、集光体33、光拡散部34、反射板35、遮光部材36等により構成されている。
【0070】
LED32は、長尺状の基板37上に等間隔で直線状に配置され、複数のLED32が画像読取時における主走査方向に沿って配列される向きに基板37が位置付けられている。
【0071】
集光体33は、レンズ38と導光体39と集光レンズ40とが一体成型され、基板37とほぼ同じ長さを有する長尺状に形成されている。集光体33は、長尺状の向きを画像読取時の主走査方向に合わせて位置付けられ、複数のLED32から出射された光は、集光体33を透過し、及び、LED32の配列方向と直交する方向(画像読取時における副走査方向)に集光される。
【0072】
光拡散部34は、LED32から出射した光が集光体33を透過する際に集光体33から出射する出射面(集光体33におけるコンタクトガラス12に対向する面)33aの全面に、光拡散部34が形成されている。即ち、光拡散部34は、LED32から出射された光が照明対象物である原稿の原稿面に至る光路上に配置されている。この光拡散部34は、集光体33を透過して出射面33aから出射される光をランダムに拡散する作用を有する。」
「【0085】
本発明の第3の実施の形態を図7ないし図9に基づいて説明する。本実施の形態の基本的構造は第1の実施の形態と同じである。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態では、光拡散部34を集光体33の出射面33aに形成したのに対し、本実施の形態では集光体33と別体に光拡散部材41が設けられ、この光拡散部材41に光拡散部34が形成されている点である。即ち、本実施の形態においても、光拡散部34は、LED32から出射された光が照明対象物である原稿の原稿面に至る光路上に配置されている。また、光拡散部34は、光拡散部材41における集光体33の出射面33aに対向する全面に形成されている。
【0086】
本実施の形態の光拡散部34も第1の実施の形態の光拡散部34と同様に、表面粗し処理、つや消しコーティング処理、シボ処理等により形成されている。
【0087】
このような構成において、本実施の形態においても、LED32から出射された光が原稿の原稿面に至る光路上に光拡散部34が設けられているため、LED32から出射された光が光拡散部34でランダムな方向に拡散された後に原稿の原稿面に照射されるので、原稿面における照明位置では、LED32が点光源であることが原因となる照度ニップルの発生が防止され、原稿面における画像読取の主走査方向に沿った全域において、均一な照度となる。
【0088】
このため、原稿面上での照度ムラの発生が防止され、原稿面を照明する光の照度ムラが原因となる画像データの濃度ムラの発生が防止され、形成される画像の濃度ムラの発生が防止される。これにより、記録媒体S上に形成される画像には、照度ニップルが原因となる縞模様状の濃淡が発生せず、高品質の画像が得られる。
【0089】
また、本実施の形態では、光拡散部34を集光体33とは別体に設けた光拡散部材41に形成しているため、光拡散部材41の材質の選択の自由度が高くなり、光拡散部34を形成するために最適な材質を選択して光拡散部材41を形成することができ、光の拡散度、光の透過率の点で性能の高い光拡散部34を形成することが可能となる。」
(なお、「照度ニップル」は、「照度リップル」の誤記であると認められる。)

ここで、上記記載について検討する。

段落【0002】の「スキャナなどの画像読取装置では、・・・読取対象物となる原稿の原稿面に向けて光を出射する光源を有し、原稿面で反射された後に読取光軸に沿って進行する読取光をレンズを介してCCD等の画像読取部に結像し、原稿画像を読取っている。」、段落【0063】の「画像読取装置13は、・・・画像読取部であるCCD17・・・コンタクトガラス12上に載置された原稿、又は、ADF11で搬送される原稿の原稿面を照明するための照明装置18と、原稿面で反射されて読取光軸に沿って進行する読取光を反射させる第1ミラー19とが搭載されている。・・・第1?第3ミラー19,20,21で順次反射された読取光の進行方向前方には、レンズ16とCCD17とが配置されている。」の記載からみて、刊行物1には、「画像読取装置」が記載され、刊行物1記載の画像読取装置は、「原稿の原稿面を照明するための照明装置と、原稿面で反射されて読取光軸に沿って進行する読取光を反射させる第1ミラーと、第1?第3ミラーで順次反射された読取光の進行方向前方のレンズ16と、読取光がレンズ16を介して結像される画像読取部であるCCD」とを備えている。

段落【0069】?【0072】の「照明装置18は、複数の点光源であるLED32、集光体33、光拡散部34・・・により構成されている。
LED32は、長尺状の基板37上に等間隔で直線状に配置され、複数のLED32が画像読取時における主走査方向に沿って配列される向きに基板37が位置付けられている。
集光体33は、レンズ38と導光体39と集光レンズ40とが一体成型され、基板37とほぼ同じ長さを有する長尺状に形成されている。集光体33は、長尺状の向きを画像読取時の主走査方向に合わせて位置付けられ、複数のLED32から出射された光は、集光体33を透過し、及び、LED32の配列方向と直交する方向(画像読取時における副走査方向)に集光される。
光拡散部34は、LED32から出射した光が集光体33を透過する際に集光体33から出射する出射面(集光体33におけるコンタクトガラス12に対向する面)33aの全面に、光拡散部34が形成されている。即ち、光拡散部34は、LED32から出射された光が照明対象物である原稿の原稿面に至る光路上に配置されている。この光拡散部34は、集光体33を透過して出射面33aから出射される光をランダムに拡散する作用を有する。」、段落【0085】の「本実施の形態では集光体33と別体に光拡散部材41が設けられ、この光拡散部材41に光拡散部34が形成されている点である。」、段落【0087】の「このような構成において、本実施の形態においても、LED32から出射された光が原稿の原稿面に至る光路上に光拡散部34が設けられている」の記載からみて、刊行物1記載の画像読取装置の「照明装置」は、「画像読取時における主走査方向に沿って配列される向きに位置付けられている長尺状の基板上に等間隔で直線状に配置される複数の点光源(LED)と、LEDから出射された光が原稿の原稿面に至る光路上であり、LEDから出射した光が集光体から出射する出射面に、集光体と別体に光をランダムに拡散する作用を有する光拡散部が形成された光拡散部材と、レンズ38と導光体と集光レンズとが一体成型された副走査方向に集光される集光体」とを有している。

段落【0072】の「この光拡散部34は、集光体33を透過して出射面33aから出射される光をランダムに拡散する作用を有する。」の記載からみて、刊行物1記載の画像読取装置の「光拡散部が形成された光拡散部材」の光拡散部は、「光をランダムに拡散する光拡散部」である。

したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「原稿の原稿面を照明するための照明装置と、
前記原稿面で反射されて読取光軸に沿って進行する読取光を反射させる第1ミラーと、
第1?第3ミラーで順次反射された読取光の進行方向前方のレンズ16と、
読取光がレンズ16を介して結像される画像読取部であるCCDと、を備え、
前記照明装置は、
画像読取時における主走査方向に沿って配列される向きに位置付けられている長尺状の基板上に等間隔で直線状に配置される複数の点光源(LED)と、
LEDから出射された光が原稿の原稿面に至る光路上であり、LEDから出射した光が集光体から出射する出射面に、集光体と別体に光をランダムに拡散する作用を有する光拡散部が形成された光拡散部材と、
レンズ38と導光体と集光レンズとが一体成型された副走査方向に集光される集光体と、を有しており、
光拡散部が形成された光拡散部材の光拡散部は、光をランダムに拡散する光拡散部である画像読取装置」

(2-2)刊行物2

原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である実願昭62-169951号(実開平1-74660号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「第4図は従来のライン光源装置を示し、光源列1には例えばLED(・・・)等のような微小光源2が直線状に配列され、これら光源2から発した光束はシリンドリカルレンズ3により収束され、線状領域aを照明する。」(第1頁第17行?第2頁第2行)
「上述のライン光源装置においては、第6図の側方から見た光路図、第7図の上方から見た光路図に示すように、シリンドリカルレンズ3の断面方向yへの光束の収束性はあるが、母線方向xへの収束性は無い。従って、光源2からの光束は発散し、x方向の光量分布Iを測定すると、第8図に示すように平均強度Iav.を中心に光量の不均一が生ずる。」(第2頁第13行?第20行)、「第1図は第1の実施例を示し、光源列11には例えばLEDから成る微小光源12が直線状に配置されている。光源列11の前方にはシリンドリカルレンズ13が設けられ、その母線方向は微小光源12の配列方向と一致している。更に、シリンドリカルレンズ13の前方には回折格子14が設けられ、その格子線15の方向は微小光源12の配列方向と垂直であり、微小光源12の配置方向にのみ光を回折させる作用を持っている。
上述の構成において、第2図に示すように微小光源12から発せられた光線lは、シリンドリカルレンズ13によるその母線方向xへの影響は無いが、・・・回折格子14を透過後の光線はあたかも多数の点から発せられたように見え、1つの微小光源12が多数個存在するかのような作用を示し、シリンドリカルレンズ13の母線方向の光量分布をより均一化できる。」(第3頁第20行?第4頁第19行)
「以上の説明においては、第1、第2の実施例共に一次元方向にのみ光を拡散させる手段として回折格子線を用いたが、一次元方向にのみ光を拡散させる手段はこれに限定されるものではなく、」(第5頁第9行?第12行)

すなわち、刊行物2には、LEDから成る微小光源12が直線状に配置されている光源列の前方に線状領域を照明するために光束を収束させるシリンドリカルレンズを設け、更に、シリンドリカルレンズの前方に、微小光源の配置方向にのみ光を拡散させる手段を設けた構成が示されている。

(3)刊行物1発明との対比

本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

(3-1)本願補正発明の「原稿に光を照射する照明手段」について

刊行物1発明の「原稿の原稿面を照明するための照明装置」は、本願補正発明の「原稿に光を照射する照明手段」に一致する。

(3-2)本願補正発明の「前記原稿からの光束を反射させて光路を形成するミラー」について

刊行物1発明は、「前記原稿面で反射されて読取光軸に沿って進行する読取光を反射させる第1ミラー」を備えており、第1ミラーは、原稿面からの光を反射させて各ミラーを介してレンズ16、CCDに光を導くものであるから、刊行物1発明の第1ミラーは、本願補正発明の「前記原稿からの光束を反射させて光路を形成するミラー」に一致する。

(3-3)本願補正発明の「前記ミラーにより反射された光束を結像させる結像レンズ」について

刊行物1発明は、「第1?第3ミラーで順次反射された読取光の進行方向前方のレンズ16」を備えており、「読取光がレンズ16を介して結像される画像読取部であるCCD」との構成から、レンズ16は、読取光をCCDに結像するためのものであるし、第1?第3ミラーで順次反射された読取光ということは、刊行物1発明のレンズ16は、第1ミラーで反射された光束を結像させるものであるから、刊行物1発明のレンズ16は、本願補正発明の「前記ミラーにより反射された光束を結像させる結像レンズ」に一致する。

(3-4)本願補正発明の「前記結像レンズの結像位置に配置され、前記結像レンズによる結像に基づいて前記原稿の画像を読み取る読取手段」について

刊行物1発明は、「読取光がレンズ16を介して結像される画像読取部であるCCD」を備えており、画像読取部であるCCDは、レンズ16の結像位置に配置されるものであるし、画像読取部であるCCDが何を読み取るのかというと、原稿の画像であるから、刊行物1発明の画像読取部であるCCDは、本願補正発明の「前記結像レンズの結像位置に配置され、前記結像レンズによる結像に基づいて前記原稿の画像を読み取る読取手段」に一致する。

(3-5)本願補正発明の「前記照明手段は、
主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部と、
前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板と、
前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体と、を有し」について

刊行物1発明の「前記照明装置」は、
「画像読取時における主走査方向に沿って配列される向きに位置付けられている長尺状の基板上に等間隔で直線状に配置される複数の点光源(LED)と、
LEDから出射された光が原稿の原稿面に至る光路上であり、LEDから出射した光が集光体から出射する出射面に、集光体と別体に光をランダムに拡散する作用を有する光拡散部が形成された光拡散部材と、
レンズ38と導光体と集光レンズとが一体成型された副走査方向に集光される集光体と、を有し」ている。

(3-5-1)本願補正発明の「主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部」について

刊行物1発明の複数の点光源(LED)は、画像読取時における主走査方向に沿って配列される向きに位置付けられている長尺状の基板上に等間隔で直線状に配置される複数の点光源(LED)であるから、主走査方向に沿って等間隔で配置される複数の点光源のことである。点光源は、発光部であるから、刊行物1発明の複数の点光源(LED)は、本願補正発明の「主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部」に一致する。

(3-5-2)本願補正発明の「前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板」について

刊行物1発明の光拡散部材は、LEDから出射された光が原稿の原稿面に至る光路上であり、LEDから出射した光が集光体から出射する出射面に、集光体と別体に光をランダムに拡散する作用を有する光拡散部が形成されたものであり、LEDから出射された光が原稿の原稿面に至る光路上であるから、原稿とLEDの間に配置されるものであるし、光をランダムに拡散する作用を有する光拡散部が形成されたものであり、この光は、LEDから出射された光であるから、LED(複数の点光源)により発光された光を拡散させるものである。したがって、刊行物1発明の光拡散部材は、本願補正発明の「前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板」に一致する。

(3-5-3)本願補正発明の「前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体」について

刊行物1発明の集光体は、レンズ38と導光体と集光レンズとが一体成型された副走査方向に集光される集光体であるから、導光体を含むものである。そして、LEDから出射した光が集光体から出射する出射面に、集光体と別体に光をランダムに拡散する作用を有する光拡散部が形成されていることから、LEDと光拡散部との間に導光体を含む集光体が配置されている。
そうすると、刊行物1発明の導光体は、LEDと光拡散部との間に配置されるものである。したがって、刊行物1発明の導光体は、本願補正発明の「前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体」に一致する。

したがって、刊行物1発明の「前記照明装置」は、本願補正発明の「前記照明手段は、
主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部と、
前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板と、
前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体と、を有し」に一致する。

(3-6)本願補正発明の「前記拡散板は、前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板であり」について

刊行物1発明の光拡散部は、光をランダムに拡散する光拡散部であるから、(3-5-2)で検討したように、「光をランダムに拡散させる」ものではあるが、本願補正発明のように、「前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板」ではない点で相違する。

(3-7)本願補正発明の「前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定され」について

本願補正発明は、「前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定され」ているのに対し、刊行物1発明では導光体の長さについては、特定されていない点で相違する。

(3-8)本願補正発明の「前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置され」について

本願補正発明は、「前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置され」ているのに対し、刊行物1発明では拡散板の位置については、特定されていない点で相違する。

(3-9)本願補正発明の「前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板に導く」について

そもそも導光体とは、片側から入射した光を、あらゆる方向へ拡散することなく、他方へ効率よく導くためのものであることを考えると、刊行物1発明のレンズ38と導光体と集光レンズとが一体成型された副走査方向に集光される集光体の内の導光体自体についても、LEDからの光を拡散させずに、光拡散部の方向に導くために設けられているものと認める。ここで、光を拡散させずに、光拡散部の方向に導くということは、拡散を抑制して光拡散部の方向に導くものである。
そうすると、刊行物1発明と本願補正発明の導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板の方向に導くという点で共通する。
しかし、刊行物1発明の導光体は、レンズ38を介した光を、集光レンズを介して光拡散部に導くのに対し、本願補正発明の導光体は、光を、前記拡散板に導くものであり、レンズ38や集光レンズに相当する構成について特定されておらず、図3、図4、図8A、図9Aをみても、導光体に直接導かれた光を、直接拡散板に導いており、レンズ38や集光レンズに相当する構成についての記載がない。

したがって、本願補正発明の「前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板に導く」について、本願補正発明と刊行物1発明は、「前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板の方向に導く」という点で一致する。
しかし、本願補正発明の導光体は、導光体に光が直接導かれるのに対し、刊行物1発明の導光体は、レンズ38を介して導光体に光を導くという点で相違する。
また、本願補正発明の導光体は、光を直接前記拡散板に導くのに対し、刊行物1発明の導光体は、導光体に導かれた光を集光レンズを介して光拡散部に導くという点で相違する。

(3-10) (3-6)および(3-9)についての整理

前記(3-6)における、刊行物1発明の光拡散部は、光をランダムに拡散する光拡散部であるから、前記(3-5-2)で検討したように、「光をランダムに拡散させる」ものではあるが、本願補正発明のように、「前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板」ではない点で相違すること、前記(3-9)における、2つの相違点のうちの後者の相違点である、本願補正発明の導光体は、光を直接前記拡散板に導くのに対し、刊行物1発明の導光体は、導光体に導かれた光を集光レンズを介して光拡散部に導くという点で相違することについてさらに検討する。

刊行物1発明は、レンズ38と導光体と集光レンズとが一体成型された副走査方向に集光される集光体により、画像読み取り時における副走査方向に集光するので、副走査方向の照射幅は狭くなるものである。
集光レンズとは、光を集光させるためのレンズであるが、レンズ38と導光体と集光レンズとが一体成型された集光体が、副走査方向に集光するために設けられていることを踏まえると、集光レンズが副走査方向とは別の方向に集光するように設計することは考えにくく、集光レンズについても副走査方向に集光させるために設けられていると考えるのが自然であるし、刊行物1の【図7】においても、集光レンズにより原稿面の副走査方向に集光している記載が見受けられる。
したがって、刊行物1発明では、導光体にて導かれた光は、集光レンズにより、さらに副走査方向に集光され、照射されている箇所の光量は多くなる。
また、刊行物1発明は、「光源として点光源を使用する場合には、複数の点光源を主走査方向(読取ライン方向)に直線状に配列する構成をとるため、各点光源から出射された光を原稿面などの読取面に直接照射すると、主走査方向において照度リップル(照度分布のムラ)が生じ、読み取った画像データに応じて画像形成した場合に照度リップが原因となる画像濃度ムラが発生する。」(刊行物1の段落【0004】)、「本発明の目的は、複数の点光源を直線状に配列した光源により照明対象物を照明した場合において、照明位置での照度リップルの発生を防止して均一な照度を得ることである。」(刊行物1の段落【0008】)と記載されているように、照明位置(原稿面)で主走査方向において照度リップルが発生するので、集光レンズにより副走査方向に集光された光を、光拡散部が拡散することにより、均一な照度を得るものである。
導光体にて導かれた光を副走査方向に集光レンズで集光してから光拡散部で拡散する構成は、副走査方向に集光レンズで集光せずに光拡散部で拡散する構成と比べて、拡散板の入射光は、副走査方向に幅が狭くなった光となるので、拡散板による拡散光の副走査方向の幅についても狭くなる。
刊行物1発明の拡散板は、光をランダムに拡散するものであるから、主走査方向、副走査方向に同程度に拡散する性質を有するが、入射時点で、集光レンズにより副走査方向の幅を狭くしているので、出射光は、集光レンズを介さない構成と比べると、副走査方向の拡散は少なくなる。言い換えると、導光体に導かれた光を、集光レンズにより副走査方向に集光させ、集光した光をランダムに拡散する光拡散部により拡散させることにより、複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させるようにしているものである。

すなわち、導光体により導かれた光を拡散板を介して原稿に照射する際に、複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させるようにするために、本願補正発明は、「導光体に導かれた光を直接拡散板に導き、拡散板は、前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板」を用いるのに対し、刊行物1発明は、導光体に導かれた光を、集光レンズにより副走査方向に集光させ、集光した光をランダムに拡散する光拡散部により拡散させるという点で相違するものである。

(4)一致点、相違点

そうすると、本願補正発明と刊行物1発明の一致点および相違点は次のとおりである。

[一致点]

「原稿に光を照射する照明手段と、
前記原稿からの光束を反射させて光路を形成するミラーと、
前記ミラーにより反射された光束を結像させる結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に配置され、前記結像レンズによる結像に基づいて前記原稿の画像を読み取る読取手段と、を備え、
前記照明手段は、
主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部と、
前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板と、
前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体と、を有しており、
前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板の方向に導く画像読取装置。」

[相違点]

(a)導光体により導かれた光を拡散板を介して原稿に照射する際に、複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させるようにするために、本願補正発明は、導光体に導かれた光を直接拡散板に導き、拡散板は、前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板を用いるのに対し、刊行物1発明は、導光体に導かれた光を、集光レンズにより副走査方向に集光させ、集光した光をランダムに拡散する光拡散部により拡散させるという点。

(b)本願補正発明の導光体は、導光体に光が直接導かれるのに対し、刊行物1発明の導光体は、レンズ38を介して導光体に光を導くという点。

(c)導光体の長さに関して、本願補正発明は、「前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定」されているのに対し、刊行物1発明は、導光体の長さに関して特定がされていない点。

(d)拡散板の配置に関して、本願補正発明は、「前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置」されているのに対し、刊行物1発明は、拡散板の配置に関して特定がされていない点。

(5)判断

相違点(a)について

本願補正発明の楕円拡散板に関して、本願明細書には、「楕円拡散板507は、所定方向における光の拡散率と、所定方向に直交する他の方向における光の拡散率とが異なるように構成された拡散板である。」(段落【0072】)、「楕円拡散板507は、LED501からの光を所定方向Pと該所定方向に直交する他の方向Qとにおける光の拡散率が異なるように構成された拡散板である。具体的には、楕円拡散板507は、LED501からの光を所定方向Pにおいては低い拡散率で拡散させ、他の方向Qにおいては高い拡散率で拡散させる。楕円拡散板507は、LED501からの光を所定方向Pにおいては実質的に拡散させず、他の方向Qにおいては高い拡散率で拡散させる。この場合、図6Aに示す拡散板507Aを用いた場合に比べて、原稿Gに照射される光が強く(光量が多く)なる。」(段落【0074】)と記載されている。したがって、楕円拡散板とは、複数の発光部からの光を所定方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を所定方向への拡散よりも高い拡散率で所定方向に直交する他の方向に拡散させる拡散板のことである。

刊行物2には、LEDから成る微小光源12が直線状に配置されている光源列の前方に線状領域を照明するために光束を収束させるシリンドリカルレンズを設け、更に、シリンドリカルレンズの前方に、微小光源の配置方向にのみ光を拡散させる手段を設けた構成が示されている。
ここで、微小光源の配置方向にのみ光を拡散させるということは、主走査方向にのみ光を拡散させることであり、これは、複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させることとなるから、刊行物2の微小光源の配置方向(主走査方向)にのみ光を拡散させる手段は、本願補正発明の「前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板」に一致する。
そして、刊行物2の「光源2からの光束は発散し、x方向の光量分布Iを測定すると、第8図に示すように平均強度Iav.を中心に光量の不均一が生ずる。」(第2頁第17行?第20行)の記載から、刊行物2記載の構成は、x方向すなわち主走査方向の光量の不均一を解消するために、微小光源の配置方向すなわち主走査方向にのみ光を拡散させる手段を設けたものである。
すなわち、刊行物2記載の構成においても、刊行物1発明と同様に、主走査方向の照度リップルの発生(光量の不均一)を防止して均一な照度とするための構成である。

主走査方向の照度リップルの発生という課題を解決し、均一な照度とするための構成として、刊行物2記載の構成のように、主走査方向にのみ光を拡散させる手段(複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板)を設ける構成が知られており、刊行物1発明における、複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させるために設けられた、副走査方向に集光される集光レンズと集光した光をランダムに拡散する光拡散部からなる構成を、刊行物2記載の主走査方向にのみ光を拡散させる手段(複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板)に代えることに、格別の困難性はないことから、当業者であれば、刊行物1発明における、導光体に導かれた光を、集光レンズにより副走査方向に集光させ、集光した光をランダムに拡散する光拡散部により拡散させる構成に代えて、刊行物2の構成を採用して、「前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板」を用いることは、容易に想到できるといえる。
したがって、導光体に導かれた光を拡散板を介して原稿に照射する際に、刊行物1発明の導光体に導かれた光を、集光レンズにより副走査方向に集光させ、集光した光をランダムに拡散する光拡散部により拡散させる構成に代えて、導光体に導かれた光を直接拡散板に導き、拡散板は、前記複数の発光部からの光を副走査方向に実質的に拡散させずに前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板を用いる構成とし、相違点(a)に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できることといえる。

相違点(b)について

刊行物1発明においては、レンズ38により、LEDから出射された光をより多く導光体に導いているものである。
画像読み取り装置において、原稿面に光を照射する際には、読み取りに必要な光量で照射されれば良いものであるから、照射されている箇所の光量が十分であれば、レンズ38を用いる必要はなく、光を、レンズ38を介して導光体に導く構成、レンズ38を介さず直接導光体に導く構成のいずれにおいても、画像読み取り装置においては、周知の構成といえ、いずれの構成を採用するかは、LEDの光量がどの程度であるか、原稿面での光量をどの程度にするかに応じて適宜決めれば良いことであるから、刊行物1発明のレンズ38を介して導光体に光を導く構成を、レンズを介さず直接導光体に光を導く構成に代えることは、容易に想到できるといえる。

相違点(c)、(d)について

相違点(c)、(d)に関して、本願明細書では、
「【0076】
楕円拡散板507は、主走査方向Yにおける光量差が少ない位置に配置される。好ましくは、楕円拡散板507は、主走査方向Yにおいて実質的に光量差がない位置に配置される。ここで、主走査方向Yにおいて光量差が少ない位置に配置されることが好ましい理由について説明する。
【0077】
図7Aに示すように、LED501からの光が十分に拡散していない位置(光量差がある位置)に楕円拡散板507が配置された場合、楕円拡散板507により拡散されて原稿Gの照射される光には光量が少ない部分700と光量が多い部分701とができる。つまり、主走査方向Yにおいて、原稿Gに照射される光における光量ムラが生じる。
【0078】
ここで、垂直方向上方(図7Aにおいて上方)に突出するようにカールした光沢がある黒色の原稿Gに光が照射された場合、原稿Gからの正反射光がCCD358に入射される。この場合、原稿Gに照射される光に光量ムラがあるため、読み取られた画像においてLED501と同じ数の点状フレア画像が発生する。
【0079】
図7Bに示すように、LED501から光が十分に拡散した位置(光量差が少ない位置)に楕円拡散板507が配置された場合、楕円拡散板507により拡散されて原稿Gに照射される光は光量差が少なくなるように拡散される。つまり、主走査方向Yにおいて、原稿Gに照射される光は略均一になる。この場合において、上述のカールした光沢がある黒色の原稿Gに光が照射され、正反射光がCCD358に入射されても、読み取られた画像において点状フレア画像は発生しない。
【0080】
上述のことから、楕円拡散板507は、主走査方向Yにおける光量差が少ない位置に配置され、好ましくは、主走査方向Yにおいて実質的に光量差がない位置に配置される。
ここで、上述の導光体505(図4参照)は、楕円拡散板507に入射される光における光量差が少なくなる長さ(光が進む方向への長さ)となるよう設定される。」
「【0098】
また、本実施形態によれば、導光体505のサイズにより、楕円拡散板507を好適な位置に取り付けることができる。つまり、導光体505のサイズ(光が向かう方向の長さ)を複数のLED501からの光が十分に拡散するように設定することで、楕円拡散板507により拡散され原稿Gに照射される光を主走査方向Yにおいて均一にすることができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、楕円拡散板507を導光体505の他端505bに取り付けている。これにより、原稿Gに照射される光が均一になる位置に楕円拡散板507を簡易かつ確実に取り付けることができる。」
と記載されている。

すなわち、本願補正発明の「前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置」とは、LEDからの光が十分に拡散していない位置(光量差がある位置)に楕円拡散板が配置された場合、楕円拡散板により拡散されたとしても、原稿Gに照射される光には光量が少ない部分と光量が多い部分とができ、主走査方向において、原稿に照射される光における光量ムラが生じるが、LEDからの光が十分に拡散した位置(光量差が少ない位置)に楕円拡散板が配置された場合、楕円拡散板により拡散されて原稿に照射される光は光量差が少なくなるように拡散されるため、LEDからの光が十分に拡散した位置(光量差が少ない位置)に楕円拡散板を配置することにより、主走査方向において、原稿に照射される光を略均一にすることである。
また、本願補正発明の「前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定」についても、導光体のサイズ(光が向かう方向の長さ)を複数のLEDからの光が十分に拡散するように設定することにより、楕円拡散板により拡散され原稿に照射される光を主走査方向において均一にすることである。

そうすると、相違点(c)に係る本願補正発明の構成は、導光体の長さを複数のLEDからの光を十分に拡散させる長さとすることにより、「前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定」されるものであり、相違点(d)に係る本願補正発明の構成は、拡散板の位置をLEDからの光が十分に拡散した位置とすることにより、「前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置」するものである。

拡散板は、入射した光を拡散し、拡散された光が重なり合うことによって、光量ムラを解消するために設けられるものであるが、光の拡散の性質を考えると、拡散板の入射側にて、入射光が当たらない箇所がある場合には、拡散板で光が拡散されても出射側で光が重ならない箇所が生じ、拡散板を使用しても光量ムラが生じる可能性があること、すなわち、拡散板を用いる際にも、拡散板への入射光は一部だけを照射するのではなく、全体的に照射する方が良いことは、技術常識であるし、光は拡散する性質を有しているので、LEDからの距離が長い(導光体の長さが長い)ほど光はより拡散することも、技術常識である。

刊行物1発明において、均一な照度を得るために、拡散板や導光体をどのようにするかを考えた場合、上記技術常識を考えれば、拡散板の位置をLEDからの光が十分に拡散した位置(光量差が少ない位置)にすること、LEDからの光は導光体を通るので、導光体のサイズ(光が向かう方向の長さ)を複数のLEDからの光が十分に拡散するように設定するようにすることは、容易に想到できるといえる。
また、刊行物1の図9では、LED32からの光が、導光体を含む集光体33内で拡散し、光拡散部材41に入射する場所では、LED32からの光は、隣接するLEDからの光と交わるような記載となっており、刊行物1の明細書には、拡散板の位置や導光体の長さに関しての記載がないものの、上記技術常識を踏まえれば、図9の記載は、導光体により、複数のLEDからの光が十分に拡散され、複数のLEDからの光が十分に拡散するような位置に拡散板が配置されているものと考えることが出来る。

したがって、刊行物1発明において、導光体の長さを前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定し、相違点(c)に係る本願補正発明の構成である「前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定」すること、拡散板の位置を前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置し、相違点(d)に係る本願補正発明の構成である「前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置」することは、上記技術常識から当業者が容易に想到できることといえる。

以上のとおり、相違点(a)?(d)に係る本願補正発明の構成は、それぞれ容易に想到できるといえ、これらを総合した構成における本願補正発明の効果も、刊行物1発明から当業者が容易に予測し得るものであり、格別顕著なものがあるとは認められない。

以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2および技術常識に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定
において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり、決定する。

第3.本願発明について

1.本願発明

上記のとおり、平成25年6月7日付けの手続補正は却下した。
したがって、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年10月10日付け手続補正書で補正された明細書、特許請求の範囲および図面の記載からみて、平成24年10月10日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

[本願発明](請求項1に係る発明)
「原稿に光を照射する照明手段と、
前記原稿からの光束を反射させて光路を形成するミラーと、
前記ミラーにより反射された光束を結像させる結像レンズと、
前記結像レンズの結像位置に配置され、前記結像レンズによる結像に基づいて前記原稿の画像を読み取る読取手段と、を備え、
前記照明手段は、
主走査方向に所定間隔で配置される複数の発光部と、
前記原稿と前記複数の発光部との間に配置され、前記複数の発光部により発光された光を拡散させる拡散板と、
前記複数の発光部と前記拡散板との間に配置される導光体と、を有しており、
前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光を副走査方向への拡散よりも高い拡散率で主走査方向に拡散させる楕円拡散板であり、
前記導光体の長さは、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記拡散板に入射される光における主走査方向についての光量差が少なくなる長さに設定されており、
前記拡散板は、前記複数の発光部により発光された光が進む方向において、前記複数の発光部からの光における主走査方向についての光量差が少なくなる位置に配置されており、
前記導光体は、前記複数の発光部からの光を、拡散を抑制しながら前記拡散板に導く画像読取装置。」

2.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2005-156600号公報(刊行物1)、実願昭62-169951(実開平1-74660号)のマイクロフィルム(刊行物2)の記載事項および刊行物1発明は、前記第2.2.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記第2.2.で検討した本願補正発明における「前記拡散板」についての限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2および技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2および技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.まとめ

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2および技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2?6に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-27 
結審通知日 2014-03-04 
審決日 2014-03-17 
出願番号 特願2008-87765(P2008-87765)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 征矢 崇  
特許庁審判長 松尾 淳一
特許庁審判官 渡辺 努
清水 正一
発明の名称 画像読取装置及び画像形成装置  
代理人 正林 真之  

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