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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1287237
審判番号 不服2012-19870  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-10 
確定日 2014-04-28 
事件の表示 特願2011-110802号「遊技機のヒンジ機構」拒絶査定不服審判事件〔平成23年9月15日出願公開、特開2011-177560号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成18年1月12日に出願した特許2006-4617号(以下「原出願」という。)の一部を平成23年5月17日に新たな特許出願としたものであって、平成24年7月30日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月3日)、これに対し、同年10月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年10月10日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年10月10日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「ベース部材と、左右いずれか一方の側部に設けられた上下一対の第1ヒンジ機構により前記ベース部材に揺動開閉自在にヒンジ接続された第1開閉部材と、前記第1ヒンジ機構と同一側の側部に設けられた上下一対の第2ヒンジ機構により前記第1開閉部材の前面に位置して揺動開閉自在にヒンジ接続された第2開閉部材とを備えてなる遊技機のヒンジ機構であって、
前記上下一対の第1ヒンジ機構のうちの上方に位置する第1ヒンジ機構は、前記第1開閉部材の側部に固定されて前後に延びる開閉側板状部に上下方向に延びて固着された軸部を有して構成される開閉側ヒンジ部材と、前記ベース部材の側部に固定されて前後に延びるベース側板状部に設けられ前記軸部と係合する軸受部を有して構成されるベース側ヒンジ部材とからなり、
前記軸部が前記軸受部と係合して前記軸部の中心を通る上下に延びる回転中心軸を中心として前記軸部および前記軸受部が互いに回転可能に係合することにより、前記ベース部材に対して前記第1開閉部材が前記回転中心軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記上下一対の第2ヒンジ機構のうちの上方に位置する第2ヒンジ機構は、前記第2開閉部材の側部における上部側に上下にスライド変位可能に軸支されたピン部材と、前記ピン部材を上方に付勢する付勢部材と、前記開閉側ヒンジ部材に前記軸部内に延びて前記回転中心軸と同軸に形成されるとともに前記ピン部材を受容して前記ピン部材を回転可能に係合可能なピン受容穴とからなり、
前記ピン部材を前記ピン受容穴に受容して前記ピン部材と前記ピン受容穴が係合することにより、前記第1開閉部材に対して前記第2開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記ピン部材の先端部もしくは前記ピン受容穴の開口縁部に円錐状の案内部を有し、
前記ピン部材を前記ピン受容穴に受容して前記ピン部材と前記ピン受容穴が係合した状態で、前記ピン部材の上部が前記軸部材内に位置して前記軸部材の上方に突出することが無いように構成されたことを特徴とする遊技機のヒンジ機構。」とあったものを
「ベース部材と、左右いずれか一方の側部に設けられた上下一対の第1ヒンジ機構により前記ベース部材に揺動開閉自在にヒンジ接続された第1開閉部材と、前記第1ヒンジ機構と同一側の側部に設けられた上下一対の第2ヒンジ機構により前記第1開閉部材の前面に位置して揺動開閉自在にヒンジ接続された第2開閉部材とを備えてなる遊技機のヒンジ機構であって、
前記上下一対の第1ヒンジ機構のうちの上方に位置する第1ヒンジ機構は、前記第1開閉部材の側部に固定されて前後に延びる開閉側板状部に上下方向に延びて固着された軸部を有して構成される開閉側ヒンジ部材と、前記ベース部材の側部に固定されて前後に延びるベース側板状部に設けられ前記軸部と係合する軸受部を有して構成されるベース側ヒンジ部材とからなり、
前記軸部が前記軸受部と係合して前記軸部の中心を通る上下に延びる回転中心軸を中心として前記軸部および前記軸受部が互いに回転可能に係合することにより、前記ベース部材に対して前記第1開閉部材が前記回転中心軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記上下一対の第2ヒンジ機構のうちの上方に位置する第2ヒンジ機構は、前記第2開閉部材の側部における上部側に上下にスライド変位可能に軸支されたピン部材と、前記ピン部材を上方に付勢する付勢部材と、前記開閉側ヒンジ部材に前記軸部内に延びて前記回転中心軸と同軸に形成されるとともに前記付勢部材により上方に付勢された前記ピン部材を下面側から受容して前記ピン部材を回転可能に係合可能なピン受容穴とからなり、前記ピン部材を前記ピン受容穴に下面側から受容させるために、前記ピン部材の側方から操作して前記ピン部材を前記付勢部材による付勢力に抗して下方に移動させることが可能な構成であり、
前記ピン部材を下方に移動させる操作を用いて前記ピン受容穴に下面側から受容させて前記ピン部材を前記ピン受容穴に係合させることにより、前記第1開閉部材に対して前記第2開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記ピン部材の先端部もしくは前記ピン受容穴の開口縁部に前記ピン部材を下方に移動させる操作を用いて前記ピン受容穴に下面側から受容させるときの案内を行うための円錐状の案内部を有し、
前記ピン部材を前記ピン受容穴に受容して前記ピン部材と前記ピン受容穴が係合した状態で、前記ピン部材の上部が前記軸部材内に位置して前記軸部材の上方に突出することが無いように構成されたことを特徴とする遊技機のヒンジ機構。」(下線は補正箇所を示す。)と補正するものである。

上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、ピン受容穴につて、「前記ピン部材を受容して前記ピン部材を回転可能に係合可能」であるとあったものを「前記付勢部材により上方に付勢された前記ピン部材を下面側から受容して前記ピン部材を回転可能に係合可能」であると限定し、ピン部材について「前記ピン部材を前記ピン受容穴に下面側から受容させるために、前記ピン部材の側方から操作して前記ピン部材を前記付勢部材による付勢力に抗して下方に移動させることが可能な構成であ」ることを限定し、第2開閉部材の第1開閉部材に対するヒンジ接続について、「前記ピン部材を前記ピン受容穴に受容して前記ピン部材と前記ピン受容穴が係合する」とあったものを「前記ピン部材を下方に移動させる操作を用いて前記ピン受容穴に下面側から受容させて前記ピン部材を前記ピン受容穴に係合させる」と限定し、ピン部材の先端部もしくはピン受容穴の開口縁部が有する円錐状の案内部について、「前記ピン部材を下方に移動させる操作を用いて前記ピン受容穴に下面側から受容させるときの案内を行うための」ものであることを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 先願発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2005-44377号(特開2006-223752号公報参照。以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、「遊技機における蝶番構造」に関して次の事項が図面とともに記載されている。
ア 「【請求項1】
本体枠部の一側に上下位置の蝶番を介して扉枠部が回動自在に軸着される遊技機における蝶番構造であって、
少なくとも前記一方の蝶番は、前記扉枠部に設けられ支持ピンを有する第一蝶番部材と、前記本体枠部に設けられ前記支持ピンが嵌入する嵌入凹部を凹設した軸受部材を有する第二蝶番部材とを備え、前記支持ピンの先端部外周にその先端に向けて漸次外径が小さくなる外テーパ面部を周設し、一方、前記嵌入凹部の奥部にその奥端に向けて漸次内径が小さくなる内テーパ面部を成形し、前記外テーパ面部と内テーパ面部とが互いに円環状に接するようにして前記扉枠部が回動動作することを特徴とする遊技機における蝶番構造。」(【特許請求の範囲】)
イ 「本発明は、本体枠部の一側に上下位置の蝶番を介して扉枠部が回動自在に軸着される遊技機における蝶番構造に関するものである。
【背景技術】
従来、遊技機の一種であるパチンコ遊技機は、本体枠部としての外枠の前面一側に遊技盤を配置固定した扉部材としての遊技盤取付枠が軸着されている。更に詳しく説明すると、該パチンコ遊技機は、外枠の前面一側の上下位置にそれぞれ保持孔を開設した保持金具と支持軸を突設した支持金具が固着される。一方、遊技盤取付枠の同じ側にも上下位置にそれぞれ支持軸を突設した支持金具と保持孔を開設した保持金具が固着されている。そして、下部の保持孔に下部の支持軸を抜き差し式に挿通すると共に上部の保持孔に上部の支持軸を同じく抜き差し式に挿通することにより、外枠に遊技盤取付枠を回動自在に軸着するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001-310047号公報(第2頁、図1、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1のパチンコ遊技機のように上下位置の各保持孔に同じく上下位置の各支持軸を抜き差し式に挿通して遊技盤取付枠を軸着する構成にあっては、保持孔に支持軸を挿入し易くして作業が容易に行なえるようにするべく、各支持軸の外径寸法よりも各保持孔の内径寸法が比較的大きく設定されている。このため、遊技盤取付枠を軸着した際に、上下の各支持軸と各保持孔との間に比較的大きな隙間ができ、この隙間が有るが故に遊技盤取付枠にガタツキが発生し、該遊技盤取付枠のスムーズな開閉動作が行い難くなるという課題があった。また、外枠と遊技盤取付枠との間にも無用な隙間が生ずることになるが、これは不正防止という観点から好ましいことではない。
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、扉枠部の回動動作がガタツクことなくスムーズに行なえると共に、本体枠部と扉枠部との間にも前記ガタツキによる無用な隙間が生じないようにして不正防止上も優れた遊技機における蝶番構造を提供することを目的とするものである。」(段落【0001】?【0004】)
ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る遊技機における蝶番構造の実施の形態を図面に基き説明する。本発明は、パチンコ遊技機、アレンジボール機、雀球機、スロットマシン等の遊技機に適用されるが、本発明ではこの内、パチンコ遊技機について説明する。図1は本発明が適用されるパチンコ遊技機の斜視図、図2は前面枠を開いた状態のパチンコ遊技機の斜視図である。
パチンコ遊技機Pは、縦長方形枠状に成形される外枠1と、該外枠1の前面に配置され一側の上下位置に設けられた抜き差し式の上蝶番2aと下蝶番2bとによって開閉自在に取着される本体枠部としての遊技盤取付枠3と、同じく前記上・下蝶番2a,2bによって同軸上に軸着される扉枠部としての前面枠4とを備えている。遊技盤取付枠3に遊技盤5が配設される。遊技盤5の前面にガイドレール6により囲まれる遊技部5aが成形され、該遊技部5aには例えば可変表示装置7、始動入賞口8、入賞装置9といった盤面部品が装着されている。」(段落【0008】?【0009】)
エ 「次に、図3、図4に基づき前記上・下蝶番2a,2bについて説明する。まず、外枠1の一側上下部に、上保持金具18aと下保持金具18bが固着されている。これら上・下保持金具18a,18bはそれぞれ前方へ突出するほぼ水平な上支持片19aと下支持片19bを有し、これら上・下支持片19a,19bに同一の鉛直線上に位置して所定内径の上保持孔20aと下保持孔20bが開設されている。この内、上保持孔20aには、その前側に該上保持孔20aと連通しかつ該上保持孔20aの直径寸法よりも狭い溝幅の開先割溝21が設けられている。
遊技盤取付枠3の同側の上下部に、上取付金具22aと第二蝶番部材としての下取付金具22bが固着される。上取付金具22aの上水平板部23aの下面に前記上保持孔20aに嵌入する軸杆24が突設される。該軸杆24の外周面には両側に対向位置して段差部25,25が設けられ、該段差部25,25の下方に両側が平坦面26a,26aとなる平坦板部26が成形されている。平坦板部26の厚み寸法は前記開先割溝21の溝幅よりやや狭い寸法を有している。また、軸杆24の下端面に係止孔27が開設されている。
一方、前記下取付金具22bに取付孔28が開設され、該取付孔28に軸受部材29が嵌入固定される。該軸受部材29は、下水平板部23bの上面に当接するフランジ部30を有し、その下方に前記取付孔28から下方へ突出する軸部31が一体に設けられ、また、フランジ部30の上方に短柱部32が一体に設けられる。短柱部32の上面には、後記する支持ピン41が嵌入する嵌入凹部33が凹設されている。そして、該嵌入凹部33の奥部にその奥端に向けて漸次内径が小さくなる内テーパ面部34が成形されている。この嵌入凹部33の中心軸線Gと前記軸杆24の係止孔27の中心軸線Gは同一鉛直線上にある。よって、遊技盤取付枠3および前面枠4は同一軸心でもって開閉動作が可能となる。
前面枠4の同側の上部に係止部材35が内装される。該係止部材35は上下に摺動可能な可動体36を備え、該可動体36は下方の圧縮スプリング37により常に上方へ付勢されている。また、可動体36はその上面に係止ピン38が突設され、外周面の所定位置に鍔43が周設される。この鍔43は遊技盤取付枠3の上面に開設された通孔39よりも大きい外径を有する。そして、圧縮スプリング37の付勢によって該鍔43が通孔39の外周縁にその下面から当接したとき、前記可動体36上面の係止ピン38が前記通孔39から上方へ突出するようになっている。一方、前面枠4の同側の下部にほぼ水平な第一蝶番部材としての突片40が前方ヘ突設され、該突片40の下面に支持ピン41が垂設されている。支持ピン41の先端部外周にその先端に向けて漸次外径が小さくなる外テーパ面部42が周設される。」(段落【0012】?【0015】)
オ 「そして、外枠1の前面に遊技盤取付枠3を配置すると共に下部の軸部31を下保持金具18bの下保持孔20bにその上側から嵌入する。また、遊技盤取付枠3の回動位置を調整して、上部の軸杆24の平坦板部26を開先割溝21内に介入しつつ軸杆24を上保持孔20a内に嵌合させる。この際、両段差部25,25が開先割溝21の両側縁に載って誘導されるので、軸杆24が嵌合し易い。更に、遊技盤取付枠3の前面に前面枠4を配置し、下部の支持ピン41を軸受部材29の嵌入凹部33に上側から嵌入する。続いて、可動体36を圧縮スプリング37の付勢に抗して下げ、係止ピン38を前面枠4の上面から下方へ没入させておき、この状態で係止ピン38を軸杆24の下方に位置させる。続き、係止ピン38と係止孔27とを合致させて可動体36を離す。これにより、圧縮スプリング37の付勢によって係止ピン38が係止孔27に嵌入して係止する。
ここで、前記上保持金具18aと上取付金具22aと係止部材35とにより上蝶番2aが構成され、下保持金具18bと下取付金具22bと突片40の支持ピン41とにより下蝶番2bが構成される。このように上下位置の上・下蝶番2a,2bを介して外枠1に遊技盤取付枠3が回動自在に軸着され、また、遊技盤取付枠3に前面枠4が同じく回動自在に軸着されることになる。
本発明に係るパチンコ遊技機Pは上記構成からなり、シリンダー錠16の鍵穴部17に鍵を挿入して一方向へ回動させることにより前面枠4が開錠され、該前面枠4が前記上・下蝶番2a,2bを中心として自在に回動する。また、鍵を他方向へ回動させることにより遊技盤取付枠3が開錠され、同様に該遊技盤取付枠3が自在に回動することになる。」(段落【0017】?【0019】)
カ 上記記載事項エ?オ、【図3】、【図4】の図示内容によると、係止ピン38には、先端部に円錐状の傾斜面が形成されたことが記載されている。
キ 上記記載事項エ?オ、及び、上・下蝶番部位の組立状態の断面図を示す【図4】の図示内容によると、係止ピン38を係止孔27に嵌入させて、係止させた状態で、係止ピン38の上部は、軸杆24内に位置して、軸杆24の上方に突出していないことが示されている。
ク 上記記載事項ウ?オ、及び、【図3】、【図4】の図示内容からみて、上蝶番2aは、上保持金具18a及び上取付金具22aを含む第1上蝶番2a’と、係止部材35及び係止孔27を含む第2上蝶番2a’’とから構成され、下蝶番2bは、下保持金具18b及び下取付金具22bを含む第1下蝶番2b’と、突片40の支持ピン41及び嵌入凹部33を含む第2下蝶番2b’’とから構成されているとすることができる。

上記記載事項ア?オ、上記認定事項カ?ク、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認める。
「縦長方形枠状に成形される外枠1と、
前面一側の上下位置に設けられた、上保持金具18a及び上取付金具22aを含む第1上蝶番2a’と、下保持金具18b及び下取付金具22bを含む第1下蝶番2b’とによって外枠1に回動自在に軸着された遊技盤取付枠3と、
前面一側の上下位置に設けられた、係止部材35及び係止孔27を含む第2上蝶番2a’’と、突片40の支持ピン41及び嵌入凹部33を含む第2下蝶番2b’’とによって遊技盤取付枠3に回動自在に軸着された前面枠4と
を備えているパチンコ遊技機Pの蝶番構造であって、
上下位置に設けられた第1上蝶番2a’と第1下蝶番2b’のうち、上に位置する第1上蝶番2a’は、遊技盤取付枠3の上部に固着され、前方へ突出する上水平板部23aの下面に軸杆24が突設された上取付金具22aと、外枠1の前面一側の上位置に固着された、前方へ突出するほぼ水平な上支持片19a内に軸杆24が嵌合される上保持孔20aが開設された上保持金具18aとからなり、
係止ピン38を係止孔27へ係止することにより、外枠1に回動自在に軸着される遊技盤取付枠3の回動中心と、遊技盤取付枠3に回動自在に軸着される前面枠4の回動中心とが同軸上に位置するように、遊技盤取付枠3が外枠1に取着され、
上下位置に設けられた第2上蝶番2a’’と第2下蝶番2b’’のうち、上に位置する第2上蝶番2a’’は、遊技盤取付枠3の前面一側の上下位置に設けられた、上下に摺動可能な可動体36の上面に突設された係止ピン38と、可動体36を付勢により上方に突出させる圧縮スプリング37とからなる係止部材35、及び、上取付金具22aに突設される軸杆24の下端面に開設され、係止ピン38を圧縮スプリング37の付勢によって嵌入させて係止させることにより遊技盤取付枠3に前面枠4が回動自在に同軸上に軸着させ、
係止ピン38の係止孔27への係止は、係止ピン38を係止孔27に軸杆24の下方の位置から嵌入させて係止させるために、可動体36を圧縮スプリング37の付勢に抗して下げることが可能であり、可動体36を圧縮スプリング37の付勢に抗して下げることにより係止孔27に軸杆24の下方から嵌入させて係止ピン38を係止孔27に係止させることにより行い、
係止ピン38には、先端部に円錐状の傾斜面が形成され、
係止ピン38を係止孔27に嵌入させて、係止させた状態で、係止ピン38の上部は、軸杆24内に位置して、軸杆24の上方に突出していない
パチンコ遊技機Pの蝶番構造。」

3 対比
先願発明と本件補正発明とを比較すると、先願発明の「縦長方形枠状に成形される外枠1」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「ベース部材」に相当し、以下同様に、
先願発明の「前面一側の上下位置に設けられた、上保持金具18a及び上取付金具22aを含む第1上蝶番2a’と、下保持金具18b及び下取付金具22bを含む第1下蝶番2b’とによって外枠1に回動自在に軸着された遊技盤取付枠3」は、本件補正発明の「左右いずれか一方の側部に設けられた上下一対の第1ヒンジ機構によりベース部材に揺動開閉自在にヒンジ接続された第1開閉部材」に相当し、
先願発明の「前面一側の上下位置に設けられた、係止部材35及び係止孔27を含む第2上蝶番2a’’と、突片40の支持ピン41及び嵌入凹部33を含む第2下蝶番2b’’とによって遊技盤取付枠3に回動自在に軸着された前面枠4」は、第1上蝶番2a’、第2上蝶番2a’’、第1下蝶番2b’、及び、第2下蝶番2b’’とが、パチンコ遊技機Pにおける左右方向の同じ側(同一側)に設けられるものであることから、本件補正発明の「第1ヒンジ機構と同一側の側部に設けられた上下一対の第2ヒンジ機構により第1開閉部材の前面に位置して揺動開閉自在にヒンジ接続された第2開閉部材」に相当し、
先願発明の「パチンコ遊技機Pの蝶番構造」は、本件補正発明の「遊技機のヒンジ機構」に相当し、
先願発明の「上下位置に設けられた第1上蝶番2a’と第1下蝶番2b’のうち、上に位置する第1上蝶番2a’」は、本件補正発明の「上下一対の第1ヒンジ機構のうちの上方に位置する第1ヒンジ機構」に相当し、
先願発明の「遊技盤取付枠3の上部に固着され、前方へ突出する上水平板部23aの下面に軸杆24が突設された上取付金具22a」は、本件補正発明の「第1開閉部材の側部に固定されて前後に延びる開閉側板状部に上下方向に延びて固着された軸部を有して構成される開閉側ヒンジ部材」に相当し、
先願発明の「外枠1の前面一側の上位置に固着された、前方へ突出するほぼ水平な上支持片19a内に軸杆24が嵌合される上保持孔20aが開設された上保持金具18a」は、本件補正発明の「ベース部材の側部に固定されて前後に延びるベース側板状部に設けられ軸部と係合する軸受部を有して構成されるベース側ヒンジ部材」に相当し、
先願発明の「係止ピン38を係止孔27へ係止することにより、外枠1に回動自在に軸着される遊技盤取付枠3の回動中心と、遊技盤取付枠3に回動自在に軸着される前面枠4の回動中心とが同軸上に位置するように、遊技盤取付枠3が外枠1に回動自在に取着され(ること)」は、蝶番を構成する係止ピン38と係止孔27とが、係止することにより接続されるものであるから、本件補正発明の「軸部が軸受部と係合して軸部の中心を通る上下に延びる回転中心軸を中心として軸部および軸受部が互いに回転可能に係合することにより、ベース部材に対して第1開閉部材が回転中心軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されて」いることに相当し、
先願発明の「上下位置に設けられた第2上蝶番2a’’と第2下蝶番2b’’のうち、上に位置する第2上蝶番2a’’は、遊技盤取付枠3の前面一側の上下位置に設けられた、上下に摺動可能な可動体36の上面に突設された係止ピン38と、可動体36を付勢により上方に突出させる圧縮スプリング37とからなる係止部材35、及び、上取付金具22aに突設される軸杆24の下端面に開設され、係止ピン38を圧縮スプリング37の付勢によって嵌入させて係止させることにより遊技盤取付枠3に前面枠4が回動自在に軸着させ(た)」ことは、本件補正発明の「上下一対の第2ヒンジ機構のうちの上方に位置する第2ヒンジ機構は、第2開閉部材の側部における上部側に上下にスライド変位可能に軸支されたピン部材と、ピン部材を上方に付勢する付勢部材と、開閉側ヒンジ部材に軸部内に延びて回転中心軸と同軸に形成されるとともに付勢部材により上方に付勢されたピン部材を下面側から受容してピン部材を回転可能に係合可能なピン受容穴とからな(る)」ことに相当する。

そして、先願発明の「係止ピン38の係止孔27への係止は、係止ピン38を係止孔27に軸杆24の下方の位置から嵌入させて係止させるために、可動体36を圧縮スプリング37の付勢に抗して下げることが可能であり、可動体36を圧縮スプリング37の付勢に抗して下げることにより係止孔27に軸杆24の下方から嵌入させて係止ピン38を係止孔27に係止させることにより行(う)」ことと、本件補正発明の「ピン部材をピン受容穴に下面側から受容させるために、ピン部材の側方から操作してピン部材を付勢部材による付勢力に抗して下方に移動させることが可能な構成であり、ピン部材を下方に移動させる操作を用いてピン受容穴に下面側から受容させてピン部材をピン受容穴に係合させることにより、第1開閉部材に対して第2開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されて(いる)」こととを対比する。
前者において、係止ピン38を圧縮スプリング37の付勢に抗して下げるために、何らかの操作が行われることは、当業者にとって自明である。また、前者において、遊技盤取付枠3と前面枠4とは、係止ピン38の係止孔27への係止により回動自在に軸着されるものである。
そうすると、両者は、「ピン部材をピン受容穴に下面側から受容させるために、操作によりピン部材を付勢部材による付勢力に抗して下方に移動させることが可能な構成であり、ピン部材を下方に移動させる操作を用いてピン受容穴に下面側から受容させてピン部材をピン受容穴に係合させることにより、第1開閉部材に対して第2開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されて(いる)」ことで共通する。

また、先願発明の「係止ピン38には、先端部に円錐状の傾斜面が形成され(た)」ことは、係止ピン38の先端部に形成された円錐状の傾斜面が、係止ピン38を係止孔27に下面から嵌入して係止させる際の案内面として作用することは当業者にとって明らかであるから、本件補正発明の「ピン部材の先端部」「にピン部材を下方に移動させる操作を用いてピン受容穴に下面側から受容させるときの案内を行うための円錐状の案内部を有(する)」ことに相当し、同様に、
先願発明の「係止ピン38を係止孔27に嵌入させて、係止させた状態で、係止ピン38の上部は、軸杆24内に位置して、軸杆24の上方に突出していない」ことは、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「ピン部材をピン受容穴に受容してピン部材とピン受容穴が係合した状態で、ピン部材の上部が軸部材内に位置して軸部材の上方に突出することが無いように構成されたこと」に相当する。

したがって、本件補正発明と先願発明の次の一致点で一致し、下記相違点で一応相違する。
[一致点]
「ベース部材と、左右いずれか一方の側部に設けられた上下一対の第1ヒンジ機構により前記ベース部材に揺動開閉自在にヒンジ接続された第1開閉部材と、前記第1ヒンジ機構と同一側の側部に設けられた上下一対の第2ヒンジ機構により前記第1開閉部材の前面に位置して揺動開閉自在にヒンジ接続された第2開閉部材とを備えてなる遊技機のヒンジ機構であって、
前記上下一対の第1ヒンジ機構のうちの上方に位置する第1ヒンジ機構は、前記第1開閉部材の側部に固定されて前後に延びる開閉側板状部に上下方向に延びて固着された軸部を有して構成される開閉側ヒンジ部材と、前記ベース部材の側部に固定されて前後に延びるベース側板状部に設けられ前記軸部と係合する軸受部を有して構成されるベース側ヒンジ部材とからなり、
前記軸部が前記軸受部と係合して前記軸部の中心を通る上下に延びる回転中心軸を中心として前記軸部および前記軸受部が互いに回転可能に係合することにより、前記ベース部材に対して前記第1開閉部材が前記回転中心軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記上下一対の第2ヒンジ機構のうちの上方に位置する第2ヒンジ機構は、前記第2開閉部材の側部における上部側に上下にスライド変位可能に軸支されたピン部材と、前記ピン部材を上方に付勢する付勢部材と、前記開閉側ヒンジ部材に前記軸部内に延びて前記回転中心軸と同軸に形成されるとともに前記付勢部材により上方に付勢された前記ピン部材を下面側から受容して前記ピン部材を回転可能に係合可能なピン受容穴とからなり、前記ピン部材を前記ピン受容穴に下面側から受容させるために、前記ピン部材を操作して前記ピン部材を前記付勢部材による付勢力に抗して下方に移動させることが可能な構成であり、
前記ピン部材を下方に移動させる操作を用いて前記ピン受容穴に下面側から受容させて前記ピン部材を前記ピン受容穴に係合させることにより、前記第1開閉部材に対して前記第2開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記ピン部材の先端部もしくは前記ピン受容穴の開口縁部に前記ピン部材を下方に移動させる操作を用いて前記ピン受容穴に下面側から受容させるときの案内を行うための円錐状の案内部を有し、
前記ピン部材を前記ピン受容穴に受容して前記ピン部材と前記ピン受容穴が係合した状態で、前記ピン部材の上部が前記軸部材内に位置して前記軸部材の上方に突出することが無いように構成されたことを特徴とする遊技機のヒンジ機構。」

[相違点]
ピン部材の操作が、本件補正発明では、ピン部材の側方からの操作であるのに対して、先願発明では、どのような操作であるか不明である点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
本件補正発明の「前記ピン部材を前記ピン受容穴に下面側から受容させるために、前記ピン部材の側方から操作して前記ピン部材を前記付勢部材による付勢力に抗して下方に移動させることが可能な構成であり」という発明特定事項について検討する。
先願明細書等には、どのような操作により可動体36を下げるのかについて明示されていない。
しかしながら、遊技機のヒンジ機構の技術分野において、ヒンジ機構を構成するピン部材を、ピン部材を側方からの操作により下方に移動させることは、原出願の出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2003-210789号公報の段落【0029】、【図1】、【図3】に示された係止軸50や、特開平7-80144号公報の段落【0020】、【0024】、【図7】、【図9】に示された係止杆43を参照のこと。)。
そして、先願発明において、ピン部材の操作をピン部材の側方からの操作により行うことで新たな効果を奏するものとはいえない。
してみると、上記相違点に係る事項は、先願発明における「扉枠部の回動動作がガタツクことなくスムーズに行なえると共に、本体枠部と扉枠部との間にも前記ガタツキによる無用な隙間が生じないようにして不正防止上も優れた遊技機における蝶番構造を提供することを目的とするものである。」(上記記載事項イを参照。)という課題を解決するための具体化手段における微差であって、実質的な相違点ではない。

ゆえに、本件補正発明と先願発明とは、実質的に同一であり、しかも、本件補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一の者であるとも、また、本願の出願の時にその出願人が上記先願の出願人と同一の者であるとも認められないので、本件補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年7月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ベース部材と、左右いずれか一方の側部に設けられた上下一対の第1ヒンジ機構により前記ベース部材に揺動開閉自在にヒンジ接続された第1開閉部材と、前記第1ヒンジ機構と同一側の側部に設けられた上下一対の第2ヒンジ機構により前記第1開閉部材の前面に位置して揺動開閉自在にヒンジ接続された第2開閉部材とを備えてなる遊技機のヒンジ機構であって、
前記上下一対の第1ヒンジ機構のうちの上方に位置する第1ヒンジ機構は、前記第1開閉部材の側部に固定されて前後に延びる開閉側板状部に上下方向に延びて固着された軸部を有して構成される開閉側ヒンジ部材と、前記ベース部材の側部に固定されて前後に延びるベース側板状部に設けられ前記軸部と係合する軸受部を有して構成されるベース側ヒンジ部材とからなり、
前記軸部が前記軸受部と係合して前記軸部の中心を通る上下に延びる回転中心軸を中心として前記軸部および前記軸受部が互いに回転可能に係合することにより、前記ベース部材に対して前記第1開閉部材が前記回転中心軸を中心として揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記上下一対の第2ヒンジ機構のうちの上方に位置する第2ヒンジ機構は、前記第2開閉部材の側部における上部側に上下にスライド変位可能に軸支されたピン部材と、前記ピン部材を上方に付勢する付勢部材と、前記開閉側ヒンジ部材に前記軸部内に延びて前記回転中心軸と同軸に形成されるとともに前記ピン部材を受容して前記ピン部材を回転可能に係合可能なピン受容穴とからなり、
前記ピン部材を前記ピン受容穴に受容して前記ピン部材と前記ピン受容穴が係合することにより、前記第1開閉部材に対して前記第2開閉部材が揺動開閉自在にヒンジ接続されるように構成されており、
前記ピン部材の先端部もしくは前記ピン受容穴の開口縁部に円錐状の案内部を有し、
前記ピン部材を前記ピン受容穴に受容して前記ピン部材と前記ピン受容穴が係合した状態で、前記ピン部材の上部が前記軸部材内に位置して前記軸部材の上方に突出することが無いように構成されたことを特徴とする遊技機のヒンジ機構。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された先願、先願明細書等の記載事項及び先願発明は、前記「第2[理由]2 先願発明」に記載したとおりである。

3 対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]」において検討した本件補正発明における限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3 対比、及び、4 当審の判断」に記載したとおり、先願発明と実質的に同一であることから、本願発明も同様に、先願発明と実質的に同一である。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、先願発明と実質的に同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-04 
結審通知日 2014-03-07 
審決日 2014-03-20 
出願番号 特願2011-110802(P2011-110802)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 沙絵  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 瀬津 太朗
長崎 洋一
発明の名称 遊技機のヒンジ機構  
代理人 大西 正悟  

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