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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63B
管理番号 1287262
審判番号 不服2013-21908  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-08 
確定日 2014-05-28 
事件の表示 特願2011-554063「封入されチューニングされた構造を有するゴルフクラブフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月16日国際公開、WO2010/104652、平成24年 9月 6日国内公表、特表2012-520122、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、2010年2月17日(パリ条約による優先権主張2009年3月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年6月4日付けで手続補正書が提出され、同年7月5日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年11月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、当審において、同年12月19日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、平成26年3月24日付けで意見書が提出され、さらに同年4月24日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年5月1日付けで手続補正書、及び誤訳訂正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1?15に係る発明は、上記の平成26年5月1日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書、及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下、本願の請求項1?15に係る発明をそれぞれ「本願発明1」?「本願発明15」という。)。
「【請求項1】
フェース部分およびボディ部分を含み、該フェース部分が、支持フレーム、該支持フレームの内面に取り付けられた複数の伸張されたワイヤであって、該支持フレームの内面が該複数のワイヤにおける各張りを維持するに適した複数のワイヤを含む、マトリックス構造、および該複数のワイヤを封入し、該マトリックス構造を包囲するフェース材料を含み、該ワイヤが、ドローまたはフェードバイアスを生じさせるように、少なくとも1つのより高密度の領域を該マトリックス構造中に創製することによって該マトリックス構造中に不均一に伸張されている、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
フェース材料が、金属、ポリマー、セラミックスおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
フェース材料が半透明である、請求項2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
支持フレームがボディ部分と一体化している、請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
マトリックス構造が支持フレームと一体化している、請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
フェース材料がボディ部分のそれより低い密度を有する、請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
シャフトおよび請求項1記載のゴルフクラブヘッドを含む、ゴルフクラブ。
【請求項8】
フェース部分とボディ部分を有するゴルフクラブヘッドのフェース部分を製造する方法であって、
支持フレームを提供する工程、
複数のワイヤを含むマトリックス構造を該支持フレームの内面に取り付ける工程であって、該複数のワイヤが、ドローまたはフェードバイアスを生成するように、少なくとも1つのより高密度の領域を該マトリックス構造中に創製することによって該マトリックス構造中に不均一に伸張されている、工程、
フェース材料で複数のワイヤを該マトリックス構造全面に封入する工程、および
マトリックス構造を包囲するように該フェース材料を固化させる工程
を含む、方法。
【請求項9】
フェース材料が、金属、ポリマー、セラミックスおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
フェース材料が金属射出成形によって支持マトリックス全面に封入される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
フェース材料が、被覆、浸漬および射出成形の少なくとも一つによって支持マトリックス全面に封入される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
フェース材料が半透明である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
フェース材料が、ボディ部分のそれより低い密度を有する、請求項8記載の方法。
【請求項14】
フェース部分をボディ部分に取り付けてゴルフクラブヘッドを形成する工程をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項15】
ゴルフクラブヘッドをシャフトに取り付けてゴルフクラブを形成する工程をさらに含む、請求項14記載の方法。」

第3.原査定の理由の概要
1.本願発明1?5、7?12、14、及び15は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された頒布された実願平3-58545号(実開平5-5161号)のCD-ROM(以下「引用例1」という。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.本願発明1?5、7?12、14、及び15は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1、特表2000-510009号公報(以下「引用例2」という。)、及び特表2007-534438号公報(以下「引用例3」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4.当審の判断
1.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用例1には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
・「内部が中空に形成され、フェース部側に開口を有するヘッド本体と、該開口を覆い、かつヘッド本体に固着されたフェースプレートとを有するゴルフクラブヘッドにおいて、前記フェースプレートが、圧縮強度よりも引張強度の小なる材料により構成されたプレート母材と、該母材に一体に埋設された線材とを具備し、該線材が、その軸線方向に張力を付与されて弾性復元力を保有した状態で、前記プレート母材に一体に固着されていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」(【請求項1】)
・「図1の例では、線材7をトウ部8からヒール部9の側へ延ばし、プレート母材6に対してこの方向に圧縮応力を与えたが、図6に示すようにトップ部16からソール部17に向けて線材107を延ばしてもよい。又は図7に示すように、トウ部8からヒール部9へと延びる線材7と、トップ部16からソール部17へ延びる線材107を共にプレート母材7に埋設してもよい。或いは斜め方向に延びる線材を設けることもできる。このように線材の延設方向は任意に設定できるが、図1に示したように線材7をトウ部8からヒール部9へと延在させると、次に示すような副次的な効果が得られる。」(段落【0020】)
また、図1から、以下の事項が看取できる。
・「線材7と線材107とによりマトリックス構造を構成している。」
これらの記載事項、及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「内部が中空に形成され、フェース部側に開口を有するヘッド本体と、該開口を覆い、かつヘッド本体に固着されたフェースプレートとを有するゴルフクラブヘッドにおいて、前記フェースプレートが、圧縮強度よりも引張強度の小なる材料により構成されたプレート母材と、該母材に一体に埋設された線材とを具備し、該線材が、その軸線方向に張力を付与されて弾性復元力を保有した状態で、前記プレート母材に一体に固着され、
トウ部からヒール部へと延びる線材と、トップ部からソール部へ延びる線材とによりマトリックス構造を構成しているゴルフクラブヘッド。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用例2には、次の事項が記載されている。
・「第3図に示すように、六角形状のワイヤ12はきつく、フレーム14の中に収納され、エポキシ重合体(あるいは珪素金属粉、またははんだ、または他の粘着性マトリックス)のマトリックスで結合されている。フレームは、ドライバー、アイアン、パターなどのゴルフクラブのフェース面のインサート16として望ましいサイズに作ることができる。」(9頁3?7行)
また、上記の記載、及びFIG.1、3から、以下の事項が示されているといえる。
・「ゴルフクラブヘッドのフェース面にインサート16が備えられている。」
これらの記載事項、及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「六角形状のワイヤはきつく、フレームの中に収納され、エポキシ重合体のマトリックスで結合され、フレームは、ドライバー、アイアン、パターなどのゴルフクラブのフェース面のインサートとして望ましいサイズに作ることができるものであって、フェース面にインサートが備えられているゴルフクラブヘッド。」

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用例3には、次の事項が記載されている。
・「クラウンと、ソールと、前面壁を有するボディであって、内部空洞を持ち、300立法センチメータから500立方センチメータの範囲の体積を持ち、前記ボディはチタン合金からなり、前記前面壁は、0.040インチから0.250インチの範囲の深さを持つ凹所を有するボディと; 前記前面壁に配置されたマトリックス層であって、互いに連結された六角形のセルであって、各セルは0.0625インチから0.100インチの範囲のセルサイズを持つセルからなる集積された強化構造を持つポリマー材料を有し、0.040インチから0.250インチの範囲の厚さを有するマトリックス層、を有するゴルフクラブヘッド。」(【請求項10】)
これらの記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「クラウンと、ソールと、前面壁を有するボディであって、前記前面壁は、0.040インチから0.250インチの範囲の深さを持つ凹所を有するボディと;
前記前面壁に配置されたマトリックス層であって、互いに連結された六角形のセルであって、各セルは0.0625インチから0.100インチの範囲のセルサイズを持つセルからなる集積された強化構造を持つポリマー材料を有し、0.040インチから0.250インチの範囲の厚さを有するマトリックス層、
を有するゴルフクラブヘッド。」

2.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
後者における「フェースプレート」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「フェース部分」に相当し、以下同様に、「ヘッド本体」は「ボディ部分」に、「線材」は「ワイヤ」に、それぞれ相当する。
また、後者は、フェースプレートが、プレート母材と、該母材に一体に埋設された線材とを具備し、該線材が、その軸線方向に張力を付与されて弾性復元力を保有した状態で、前記プレート母材に一体に固着され、トウ部からヒール部へと延びる線材と、トップ部からソール部へ延びる線材とによりマトリックス構造を構成しているから、フェースプレートが、複数の伸張された線材であって、該複数の線材における各張りを維持するに適した複数の線材を含む、マトリックス構造、および該複数の線材を封入し、該マトリックス構造を包囲するプレート母材を含んでいるといえる。
したがって、両者は、
「フェース部分およびボディ部分を含み、該フェース部分が、複数の伸張されたワイヤであって、該複数のワイヤにおける各張りを維持するに適した複数のワイヤを含む、マトリックス構造、および該複数のワイヤを封入し、該マトリックス構造を包囲するフェース材料を含んでいる、ゴルフクラブヘッド。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明1は、フェース部分が、「支持フレーム」を含み、複数の伸張されたワイヤが、「該支持フレームの内面に取り付けられた」のに対し、引用発明1は、フェースプレートが、支持フレームを含むものではなく、線材も支持フレームの内面に取り付けられたものではない点。
[相違点2]
ワイヤが、本願発明1では、「ドローまたはフェードバイアスを生じさせるように、少なくとも1つのより高密度の領域をマトリックス構造中に創製することによって該マトリックス構造中に不均一に伸張されている」のに対し、引用発明では、そのようなものか明らかでない点。

(2)判断
そうすると、引用発明1は、上記相違点1、及び2に係る本願発明1の発明特定事項を具備していない。
したがって、本願発明1が、引用発明であるとすることはできない。

また、上記相違点1、及び2を検討すると、引用発明2、及び3は、ゴルフクラブヘッドのフェース部分に伸張されたワイヤを有するものではなく、上記相違点1、及び2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。
また、上記相違点1、及び2に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項とする根拠もない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「マトリックス構造を均一または不均一に伸張させて、たとえばドローまたはフェードバイアスを生じさせる」(段落【0007】)という作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.本願発明2?15について
本願発明2?15は、上記2.(2)と同様の理由により、引用発明1であるとすることはできないし、引用発明1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第5.当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本願明細書(段落【0007】、段落【0018】)、及び請求項1、8の「マトリックス構造を不均一に伸長させる」旨の記載における「不均一」とは、マトリックス構造を具体的にどのような構造、構成としたものであるのか、当業者は、本願明細書をみても理解できないから、本件出願は、特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。(平成25年12月19日付け当審拒絶理由。)
本願明細書(段落【0007】、段落【0018】)、及び請求項1、8には、「ワイヤマトリックス構造を不均一に伸張することにより、ドローまたはフェードバイアスを生じさせる」旨記載されているが、どのような不均一なワイヤマトリックス構造することにより、ドローまたはフェードバイアスを生じさせるのか、またどのような原理でドローまたはフェードバイアスを生じるのか、当業者は、本願明細書をみても理解できないし、また、本願明細書をみても、当業者は、本願の請求項1?15に係る発明を実施することができないから、本件出願は、特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。(平成25年12月19日付け当審拒絶理由。)
本件出願は、請求項1、8の「ワイヤマトリックス構造中に不均一に伸張されている」との記載の意味が不明瞭であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。(平成26年4月24日付け当審拒絶理由。)

2.当審拒絶理由の判断
平成26年5月1日付けの手続補正書において、上記第2のとおり、請求項1、及び8の記載は補正されたことにより、請求項1に係る発明は明確となった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。

第6.むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-05-15 
出願番号 特願2011-554063(P2011-554063)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A63B)
P 1 8・ 121- WY (A63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
吉野 公夫
発明の名称 封入されチューニングされた構造を有するゴルフクラブフェース  
代理人 清水 初志  
代理人 小林 智彦  
代理人 山口 裕孝  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 刑部 俊  
代理人 井上 隆一  
代理人 渡邉 伸一  
代理人 川本 和弥  
代理人 新見 浩一  
代理人 春名 雅夫  
代理人 佐藤 利光  
代理人 大関 雅人  

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