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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1287326
審判番号 不服2013-12636  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-02 
確定日 2014-05-08 
事件の表示 特願2009-160771「固体撮像素子の駆動方法並びに固体撮像装置およびカメラシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月 1日出願公開、特開2009-225478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年4月24日に出願した特願2003-119407号の一部を平成21年7月7日に新たな特許出願としたものであって、平成23年8月22日付けで拒絶理由が通知され、平成23年10月24日付けで手続補正がなされ、さらに、平成24年6月12日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月13日付けで手続補正がなされたが、平成25年3月21日に、平成24年8月13日付けの手続補正は決定をもって却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされたものである。これを不服として、平成24年7月2日に本件審判請求がなされると同時に同日付けで手続補正がなされた。

第2.平成25年7月2日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年7月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
この手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「フィールド読出モード」、及び、「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分の並びで形成される、前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う」を、それぞれ、「複数フィールドで1フレームの信号電荷を読み出すフィールド読出モード」、及び、「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分と、連続してオフした2個の転送チャネル部分とが交互に形成され、前記連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分から形成される前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で1個の転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で1個の転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う」と限定したものである。

2.補正の適否
(1)限定的減縮
請求項1に係る補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。

(2)独立特許要件
ア.本願補正発明
上記補正後の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す信号電荷のライン数を、複数フィールドで1フレームの信号電荷を読み出すフィールド読出モードとライン間引モードの2つの動作モードで異なるものとし、
前記転送チャネルのオンとオフをそれぞれが部分的に制御する複数の垂直転送電極に対して、P(Pは5以上の正の整数)相の垂直転送ドライブパルスを印加して行う垂直転送駆動タイミングの制御自体は、前記2つの動作モードで同じとして、
垂直転送駆動を実行し、
当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分と、連続してオフした2個の転送チャネル部分とが交互に形成され、前記連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分から形成される前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で1個の転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で1個の転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う
固体撮像素子の駆動方法。」

イ.刊行物
(ア)刊行物1
a.刊行物1の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-52049号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被写体像を撮像する撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】特開2000-201355に、インターライン型固体撮像素子を用いて、3回の部分読み出しで、全ての画素の電荷を読み出すことのできる方法、つまり、1フレームを3フィールドで構成した読み出し方法が開示されている。
【0003】さらに、3フィールドで全ての画素の電荷を読み出す全画素モードと3フィールドのうちの1フィールドを繰り返すモニタリングモードを切り換える切り換え手段を持つことが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来例においては、モニタリングモードにおいて、出力されるフィールド以外の画素の電荷を有効活用していないという問題点がある。さらに、現在、電子スチルカメラに用いられている固体撮像素子の高画素化が進み、間引き率が1/3では足りないという問題点もある。」

「【0007】
【発明の実施の形態】本実施の形態においては、固体撮像素子の電荷転送素子は、CCDを用いて説明する。
【0008】図1は、本実施例におけるインターライン型固体撮像素子の概略図を示す。
【0009】1が画素、2が垂直CCD、3が水平CCD、4が出力部、5が信号出力端子となっている。画素1で光電変換された信号電荷は、読み出しパルスにより垂直CCD2に送られ、6相駆動パルスφV1、φV2AおよびφV2B、φV3、φV4AおよびφV4B、φV5、および、φV6により水平CCD3の方向へ順に転送される。
【0010】水平CCD3は、垂直CCD2から転送されて来た水平一列分の信号電荷を二相駆動パルスφH1およびφH2により出力回路4に転送し、出力回路4で、電圧に変換され、画像信号出力端子5より出力される。
【0011】図2に図1の固体撮像素子の画素の色フィルタ配置と電極配置を垂直12画素分だけ示す。水平方向、垂直方向は、この繰り返しとなる。21は色フィルタをのせた画素で、赤(R)と緑(G)を繰り返す水平画素列と、緑(G)と青(B)を繰り返す水平画素列が、垂直方向に交互に配列されている。22は、垂直CCDの転送電極を示していて、垂直CCDの2転送電極毎に1画素が対応している。
【0012】同じ数字で表している転送電極V1、V2AおよびV2B、V3、V4AおよびV4B、V5、および、V6のそれぞれに、6相駆動パルスφV1、φV2AおよびφV2B、φV3、φV4AおよびφV4B、φV5、および、φV6を加えることで、6相で転送させることができる。6相駆動パルスのうち、φV2AおよびφV2B、φV4AおよびφV4Bは、垂直CCDの電荷転送に関わるパルスは、同じものを用いるものとする。
【0013】また、第1フィールドの読み出しパルスは、読み出し電極を兼ねた転送電極V2AおよびV2Bに加えられ、第1水平画素列、第4水平画素列、第7水平画素列および第10水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出すことができる。第2フィールドの読み出しパルスは、読み出し電極を兼ねた転送電極V4AおよびV4Bに加えられ、第2水平画素列、第5水平画素列、第8水平画素列および第11水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出すことができる。第3フィールドの読み出しパルスは、読み出し電極を兼ねた転送電極V6に加えられ、第3水平画素列、第6水平画素列、第9水平画素列および第12水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出すことができるように構成されている。
【0014】さらに、転送電極V2Aは、第1水平画素列および第10水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出し、転送電極V2Bは、第4水平画素列および第7水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出し、転送電極V4Aは、第5水平画素列および第8水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出し、転送電極V4Bは、第2水平画素列および第11水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出すことができるように構成されている。
【0015】図3に撮像装置のブロック図を示す。6がレンズ・シャッタ・絞りからなる光学系、7が固体撮像素子、8が光学系および固体撮像素子を駆動する駆動回路、9が固体撮像素子からの信号に対して、色処理等の処理を行う信号処理回路、10が固体撮像素子が出力した信号を記憶できる画像メモリ、11が画像表示装置(電子ビューファンダ)、12が固体撮像素子の出力レベルを検出するレベル検出回路、13が異なる撮影モードを切り換えることのできる撮影モード設定回路、14が撮像装置全体を制御する同期制御回路となっている。
【0016】ここで、上記の駆動回路8より固体撮像素子へφV1、φV2A、φV2B、φV3、φV4A、φV4B、φV5、及び、φV6の6相パルスを加える。
【0017】図4のタイミングチャートおよび図5の画素配置を用いて、第1の撮影モードを説明する。第1の撮影モードは、全ての画素の電荷を3フィールドで読み出すモードとなっていて、垂直画素数を1440画素と仮定する。
【0018】VDは、垂直同期信号、メカシャッタは、開閉することで露光を制御し、電子シャッタは、固体撮像素子の基板電位にパルスを加え、画素の電荷を基板方向に抜き取ることで、露光を制御する。
【0019】電子シャッタパルスが終了した時間t11からメカシャッタが閉じた時間t12までが露光時間となる。駆動パルスφV2AR、φV2BR、φV4AR、φV4BRおよびφV6Rは、それぞれ、φV2A、φV2B、φV4A、φV4BおよびφV6に加えられる読み出しパルスのみを示している。また、CCD出力は、固体撮像素子の出力を示している。
【0020】t13の時点で、φV2ARおよびφV2BRに読み出しパルスが加わるので、第1水平画素列、第4水平画素列、第7水平画素列および第10水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出す。これを図示したのが、図5(a)となり、この電荷を出力したのが、CCD出力の第1フィールドとなる。信号は、垂直画素数の1/3の480ライン分が出力される。
【0021】次に、t14の時点で、φV4ARおよびφV4BRに読み出しパルスが加わるので、第2水平画素列、第5水平画素列、第8水平画素列および第11水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出す。これを図示したのが、図5(b)となり、この電荷を出力したのが、CCD出力の第2フィールドとなる。信号は、垂直画素数の1/3の480ライン分が出力される。
【0022】さらに、t15の時点で、φV6Rに読み出しパルスが加わるので、第3水平画素列、第6水平画素列、第9水平画素列および第12水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出す。これを図示したのが、図5(c)となり、この電荷を出力したのが、CCD出力の第3フィールドとなる。
【0023】信号は、垂直画素数の1/3の480ライン分が出力される。出力された3フィールドの信号は、いったん画像メモリまで送られ、画素の配列と同じように並べられた後、信号処理回路で画像処理され、再び、画像メモリに保存される。
【0024】図6のタイミングチャートおよび図5(a)の画素配置を用いて、第2の撮影モードを説明する。第2の撮影モードは、3フィールドのうちの1フィールドを繰り返すモードとなっていて、垂直480ラインの動画撮影を行うことができる。第2の撮影モードでは、メカシャッタは、常に開放で、電子シャッタにより露光を制御する。
【0025】各垂直同期期間において、電子シャッタパルスが終了した時間t16から読み出しパルスの加わる時間t17までが露光時間となる。本実施例では、読み出しパルスφV2ARおよびφV2BRのみを加えているので、常に第1フィールドが出力される。図5(a)に示すように第1フィールドは、固体撮像素子の色フィルタ配列と同じ色フィルタ配列の信号を出力するので、出力された第1フィールドの信号は、信号処理回路で画像処理され、画像メモリに保存される。
【0026】図7のタイミングチャートおよび図8の画素配置を用いて、第3の撮影モードを説明する。第3の撮影モードは、3フィールドのうちの第1フィールドと第3フィールドを読み出し、それを垂直CCDにおいて加算して出力することを繰り返すモードとなっていて、垂直480ラインの動画撮影を行うことができる。
【0027】第2の撮影モードで撮影中に、被写体の光量が落ち、画面が暗くなった場合に、固体撮像素子の出力レベルが下がったことをレベル検出回路が検出し、同期制御回路が、この第3の撮影モードに切り換える。
【0028】第3の撮影モードでは、メカシャッタは、常に開放で、電子シャッタにより露光を制御する。各垂直同期期間において、電子シャッタパルスが終了した時間t18から読み出しパルスの加わる時間t19までが露光時間となる。本実施の形態では、読み出しパルスφV2AR、φV2BRおよびV6Rを加えているので、第1フィールドと第3フィールドが出力される。
【0029】図8に示すように、第1フィールドと第3フィールドは、固体撮像素子の色フィルタ配列と同じ色フィルタ配列の信号を出力するので、垂直CCDで加算された信号も固体撮像素子の色フィルタ配列と同じになる。出力された加算フィールドの信号は、信号処理回路で画像処理され、画像メモリに保存される。これにより、暗時における感度の改善が図られる。
【0030】図9のタイミングチャートおよび図10の画素配置を用いて、第4の撮影モードを説明する。第4の撮影モードは、垂直方向12画素のうち、特定の2画素を常に読み出す間引きフィールドを繰り返すモードとなっていて、信号は、垂直画素数の1/6の240ライン分が出力される。この垂直240ラインの信号は、動画撮影に用いることができるとともに、LCD等の画像表示装置の表示ライン数にも最適となっている。
【0031】第4の撮影モードでは、メカシャッタは、常に開放で、電子シャッタにより露光を制御する。各垂直同期期間において、電子シャッタパルスが終了した時間t20から読み出しパルスの加わる時間t21までが露光時間となる。本実施例では、読み出しパルスφV2ARのみを加えているので、第1水平画素列および第10水平画素列の電荷を垂直CCDに読み出す。
【0032】図10に示すように、間引きフィールドは、固体撮像素子の色フィルタ配列と同じ色フィルタ配列の信号を出力するので、出力された間引きフィールドの信号は、信号処理回路で画像処理され、画像表示装置に出力されて表示に用いられることもできるし、画像メモリに保存することもできる。
【0033】また、図10によると、垂直方向12画素のうちの第1水平画素列および第10水平画素列の電荷を読み出しているので、第1フィールドと比較すると第4水平画素列および第7水平画素列に相当する電荷は読み出されない。そこで、6相で駆動される垂直CCDを1回分転送させただけでは、次の水平画素が読み出せない場合が発生する。そのため、電荷のある水平画素列と電荷のない水平画素列を組にして転送するように、垂直CCDは、常に2回分転送させる必要がある。
【0034】図11のタイミングチャートおよび図12の画素配置を用いて、第5の撮影モードを説明する。第5の撮影モードは、垂直方向12画素のうち、特定の4画素を常に読み出し、水平CCDにおいて、垂直方向に隣り合う電荷を加算して出力する間引き加算フィールドを繰り返すモードとなっていて、信号は、垂直画素数の1/6の240ライン分が出力される。この垂直240ラインの信号は、動画撮影に用いることができるとともに、LCD等の画像表示装置の表示ライン数にも最適となっている。」

「【0045】以上のように本実施の形態によれば、撮像装置において、高画素撮影モード以外に、動画撮影モードおよび画像表示モードという2種類の間引きモードを実現するとともに、暗時撮影時の感度の改善を図ることができる。」

b.刊行物1発明
(a)「電子スチルカメラに用いられている固体撮像素子の駆動方法であって、
画素で光電変換された信号電荷が、読み出しパルスにより垂直CCDに送られ、6相駆動パルスにより水平CCDの方向へ順に転送され」

刊行物1には、「電子スチルカメラに用いられている固体撮像素子」(【0004】)について記載されており、実施の形態の固体撮像素子では、「画素1で光電変換された信号電荷は、読み出しパルスにより垂直CCD2に送られ、6相駆動パルスφV1、・・・、により水平CCD3の方向へ順に転送される」(【0009】)ものであり、この動作は、「固体撮像素子の駆動方法」として捉えることができる。
したがって、刊行物1には、「電子スチルカメラに用いられている固体撮像素子の駆動方法であって、
画素で光電変換された信号電荷が、読み出しパルスにより垂直CCDに送られ、6相駆動パルスにより水平CCDの方向へ順に転送され」る方法が記載されている。

(b)「該垂直CCDは、複数の転送電極それぞれに6相駆動パルスを加えることで6相で信号電荷を転送させるものであり」

刊行物1には、垂直CCDについて次のように記載されている。
「22は、垂直CCDの転送電極を示していて、垂直CCDの2転送電極毎に1画素が対応している。
同じ数字で表している転送電極V1、V2AおよびV2B、V3、V4AおよびV4B、V5、および、V6のそれぞれに、6相駆動パルスφV1、φV2AおよびφV2B、φV3、φV4AおよびφV4B、φV5、および、φV6を加えることで、6相で転送させることができる。(【0011】、【0012】)
したがって、刊行物1記載の方法は、「該垂直CCDは、複数の転送電極それぞれに6相駆動パルスを加えることで6相で信号電荷を転送させるもの」である。

(c)「撮影モードとして、全ての画素の電荷を3フィールドで読み出す第1の撮影モード、3フィールドのうちの1フィールドを繰り返す第2の撮影モード、3フィールドのうちの第1フィールドと第3フィールドを読み出し、それを垂直CCDにおいて加算して出力することを繰り返す第3の撮影モード、垂直方向12画素のうち、特定の2画素を常に読み出す間引きフィールドを繰り返す第4の撮影モード、垂直方向12画素のうち、特定の4画素を常に読み出し、水平CCDにおいて、垂直方向に隣り合う電荷を加算して出力する間引き加算フィールドを繰り返す第5の撮影モードがある」

刊行物1記載の上記方法に用いるカメラの撮像モードとして、刊行物1には、第1?第5の撮影モードが記載されており、それぞれのモードは、「全ての画素の電荷を3フィールドで読み出すモード」(【0017】)、「3フィールドのうちの1フィールドを繰り返すモード」(【0024】)、「3フィールドのうちの第1フィールドと第3フィールドを読み出し、それを垂直CCDにおいて加算して出力することを繰り返すモード」(【0026】)、「垂直方向12画素のうち、特定の2画素を常に読み出す間引きフィールドを繰り返すモード」(【0030】)、「垂直方向12画素のうち、特定の4画素を常に読み出し、水平CCDにおいて、垂直方向に隣り合う電荷を加算して出力する間引き加算フィールドを繰り返すモード」(【0034】)である。
したがって、刊行物1の方法は、「撮影モードとして、全ての画素の電荷を3フィールドで読み出す第1の撮影モード、3フィールドのうちの1フィールドを繰り返す第2の撮影モード、3フィールドのうちの第1フィールドと第3フィールドを読み出し、それを垂直CCDにおいて加算して出力することを繰り返す第3の撮影モード、垂直方向12画素のうち、特定の2画素を常に読み出す間引きフィールドを繰り返す第4の撮影モード、垂直方向12画素のうち、特定の4画素を常に読み出し、水平CCDにおいて、垂直方向に隣り合う電荷を加算して出力する間引き加算フィールドを繰り返す第5の撮影モードがある」方法である。

(d)刊行物1発明
以上をまとめると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると認められる。

[刊行物1発明]
電子スチルカメラに用いられている固体撮像素子の駆動方法であって、
画素で光電変換された信号電荷が、読み出しパルスにより垂直CCDに送られ、6相駆動パルスにより水平CCDの方向へ順に転送され、
該垂直CCDは、複数の転送電極それぞれに6相駆動パルスを加えることで6相で信号電荷を転送させるものであり、
撮影モードとして、全ての画素の電荷を3フィールドで読み出す第1の撮影モード、3フィールドのうちの1フィールドを繰り返す第2の撮影モード、3フィールドのうちの第1フィールドと第3フィールドを読み出し、それを垂直CCDにおいて加算して出力することを繰り返す第3の撮影モード、垂直方向12画素のうち、特定の2画素を常に読み出す間引きフィールドを繰り返す第4の撮影モード、垂直方向12画素のうち、特定の4画素を常に読み出し、水平CCDにおいて、垂直方向に隣り合う電荷を加算して出力する間引き加算フィールドを繰り返す第5の撮影モードがある、
固体撮像素子の駆動方法。

(イ)刊行物2
a.刊行物2の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-275464号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば一体型ビデオカメラに固体撮像素子(イメージセンサ)として用いられている電荷転送装置の駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一体型ビデオカメラ等に広く用いられている埋め込み型電荷転送装置(以下、BCCDと略記する)の断面構造を図1に示す。図1において、1はP型基板であり、2は埋め込み型電荷転送部としてのn-埋め込み層であり、3はn+拡散層である。ISは電荷注入電位を設定する入力ソース電極であり、IGは電荷注入量を制御する入力ゲート電極である。G1?G4は4相クロックにより電荷転送を実行する転送電極であり、OGは出力ゲート電極である。OSは信号電荷Qを電圧Vに変換して出力する信号出力電極であり、n+拡散層3に接続されている。ODは出力ドレイン電極であり、RGはリセットゲート電極である。
【0003】出力ゲート電極OGには約2ボルトの直流電圧が印加される。出力ドレイン電極OD及び入力ソース電極ISにはチャンネルが空乏化する電圧(例えば10ボルト)より大きい直流電圧が印加される。4つのゲート電極G1?G4のうちのG1及びG2に10ボルトが印加され、G3及びG4に0ボルトが印加される場合のチャンネル空乏化電位の分布(以下、ポテンシャル分布という)の例を図2に示す。
【0004】従来の第1の駆動方法では、図3に示すような駆動パルスが各電極G1?G4、IG、及びRGに印加される。図3において、例えば、H(高)レベルは5V、L(低)レベルは0Vである。φG1?φG4は転送電極G1?G4に印加される信号、φIGは入力電極IGに印加される信号、φRGはリセットゲート電極RGに印加される信号をそれぞれ示している。
【0005】図4?6は、図3の時刻t=t1?t18におけるポテンシャル分布を示している。まず、時刻t=t1において、パルスφG1、φG2及びφIGがHレベル、その他のパルスがLレベルであり、電荷が注入される。時刻t=t2ではφIGがLレベルになっているので、電荷がゲート電極G1及びG2の下にためられる。時刻t=t3ではパルスφG1及びφG2に加えてφG3もHレベルになっており、電荷は3つのゲートG1、G2及びG3にわたって拡散している(この期間を便宜上拡散期間と呼ぶ)。
【0006】時刻t=t4ではパルスφG1がLレベルに変化しており、転送電極(ゲート電極)G1の電極下にあった電荷は、フリンジ電界により2つの転送電極G2及びG3の電極下に転送されている(この期間を便宜上転送期間と呼ぶ)。時刻t=t5ではパルスφG2及びφG3に加えてパルスφG4もHレベルになっており、電荷は3つのゲートφG2、φG3及びφG4にわたって拡散している。つまり、再び拡散期間になっている。
【0007】以後、同様にして、拡散期間と転送期間を繰り返すことにより図4?6において右方向へ電荷が転送され、最終的にOS端子から電荷が出力される。つぎに、従来の第2の駆動方法では、図7に示すような駆動パルスφG1?φG4、φIG、及びφRGが各電極G1?G4、IG、及びRGに印加される。この駆動方法が適用される電荷転送装置は上記の第1の駆動方法と同じく図1に示すような構造を有するBCCDである。以下、従来の第2の駆動方法を図4、7及び8に基づいて説明する。
【0008】まず、時刻t=t1において、パルスφG1、φG2及びφIGがHレベル、その他のパルスがLレベルであり、電荷が注入される。時刻t=t2ではφIGがLレベルになっているので、電荷がゲート電極G1及びG2の下に貯められる。t=t3において、パルスφG1及びφG3が同時に変化する。つまり、パルスφG1がHレベルからLレベルに立ち下がると同時にパルスφG3がLレベルからHレベルに立ち上がる。この時の時間軸を引き伸ばした詳細タイミングを図8に示す。
【0009】図8からわかるように、パルスφG1がHレベルからLレベルに立ち下がるタイミングとパルスφG3がLレベルからHレベルに立ち上がるタイミングが同時である。パルスφG1がHレベルの50%まで下降したときにパルスφG3がHレベルの50%まで上昇している。
【0010】t=t4ではパルスφG2及びφG3がHレベル、その他のパルスがLレベルになっており、転送電極G1の電極下にあった電荷は、フリンジ電界により2つの転送電極G2及びG3の電極下に転送されている(転送期間)。
【0011】t=t5では、パルスφG2及びφG4が同時に変化する。つまり、パルスφG2がHレベルからLレベルに立ち下がると同時にパルスφG4がLレベルからHレベルに立ち上がる。この時の詳細タイミングは図8に示したパルスφG1及びφG3の変化と同様である。
【0012】t=t6ではパルスφG3及びφG4がHレベル、その他のパルスがLレベルになっており、転送電極G2の電極下にあった電荷は、フリンジ電界により2つの転送電極G3及びG4の電極下に転送されている。
【0013】以後、同様にして、図4?6において右方向へ電荷が転送され、最終的にOS端子から電荷が出力される。この駆動方法方法では、第1の駆動方法における拡散期間、つまり電荷は3つのゲート電極G1、G2及びG3にわたって拡散している期間(図4?6のt=t3,t5,t7,・・・,t17)は実質的に存在しない。2つのゲート電極G1及びG2、又はG2及びG3の電極下に電荷が存在する電荷転送期間が繰り返され、その2つのゲート電極が図4?6において右方向へ移動していく。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の第1の駆動方法は、電荷拡散期間と電荷転送期間が交互に繰り返されることにより電荷移動は確実に行われる反面、転送時間が長くかかる点が不利である。つまり、電荷拡散期間と電荷転送期間がほぼ等しく、4電極CCDの1段当たりの転送に必要な時間は、例えばt=t1?t8の8単位時間となる。
【0015】一方、従来の第2の駆動方法では、上述のように電荷拡散期間が実質的に存在せず、電荷転送期間のみによって電荷転送が行われるので、第1の駆動方法の約半分の時間で電荷を転送することができる。しかし、例えば、パルスφG1の立ち下がりとパルスφG3の立ち上がりがほぼ同時に行われるので、そのタイミング制御がクリティカルでなければならない。仮に、パルスφG1の立ち下がりがパルスφG3の立ち上がりより早くなり、4つのゲートパルスパルスφG1?φG4のうちφG2のみがHレベルである期間が生じたとすると、転送電荷がその電極下からあふれることになる。あるいは、そのようなオーバーフローを防ぐために、最大転送電荷量を下げる必要が生ずる。ゲート容量が各電極で異なるため、ゲートに印加されるパルスのタイミングが正確に一致していても実際の素子内部のタイミングに差が生ずる場合もある。
【0016】本発明は上記のような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、短時間での電荷転送を可能にしながら、ゲート容量のばらつき等に起因するパルス遅延時間の差の影響を受けにくい電荷転送装置の駆動方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明による電荷転送装置の駆動方法は、2以上の数n個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって保持された電荷を、1又はn未満の数m個ずれたn個の隣接する転送電極に対向する空乏層に移動させる際に、電荷移動前のn個の転送電極及び電荷移動後のn個の転送電極を含むn+m個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する状態を介在させ、n+m個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する期間をn個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する期間より短く設定することを特徴とする。
【0018】具体的な構成として、転送電極に4相の転送パルスが順次印加され、2つの隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって保持された電荷を、1つずれた2つの隣接する転送電極に対向する空乏層に移動させる際に、電荷移動前の2つの転送電極及び電荷移動後の2つの転送電極を含む3つの隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する状態を介在させ、3つの隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する期間を2つの隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する期間より短く設定する。」

b.刊行物2記載の技術事項
(a)「電荷の転送時間を短くすることができる転送方法であって」

刊行物2には、「例えば一体型ビデオカメラに固体撮像素子(イメージセンサ)として用いられている電荷転送装置の駆動方法」(【0001】)について記載されており、「従来の第2の駆動方法」として、従来の第1の駆動方法と比べて「第1の駆動方法の約半分の時間で電荷を転送することができる」(【0015】)方法が記載されている。
したがって、刊行物2には、「電荷の転送時間を短くすることができる転送方法」が記載されている。

(b)「印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2以上の数n個の連続したチャンネルと、印可される駆動パルスをLレベルとして電荷が貯められない2個の連続したチャンネルとが交互に形成され」

刊行物2には、「従来の第2の駆動方法」として、【0007】-【0013】、【図7】に、電荷の転送方法が記載されている。
それによると、例えば、時刻t=t2では、印可される駆動パルスφG1、φG2をHレベルとして対応する2個のチャンネルに電荷が貯められ、印可される駆動パルスφG3、φG4をLレベルとして対応する2個のチャンネルに電荷が貯められない。そのような4相の駆動パルスが転送方向に繰り返し印可される(この点については【図1】、【図2】も参照)。
よって、刊行物2に記載された「従来の第2の駆動方法」は、「印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2個の連続したチャンネルと、印可される駆動パルスをLレベルとして電荷が貯められない2個の連続したチャンネルとが交互に形成され」るものである。
また、刊行物2の【課題を解決するための手段】には、「本発明による電荷転送装置の駆動方法」として、「2以上の数n個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって保持された電荷を、1又はn未満の数m個ずれたn個の隣接する転送電極に対向する空乏層に移動させる際に、電荷移動前のn個の転送電極及び電荷移動後のn個の転送電極を含むn+m個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する状態を介在させ、n+m個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する期間をn個の隣接する転送電極に対向する空乏層にわたって電荷を保持する期間より短く設定することを特徴とする」方法が記載され、解決する課題は、「短時間での電荷転送を可能にしながら、」(【0016】)さらに、その他の課題を解決することであるから、刊行物2には、短時間での電荷転送を可能にする「従来の第2の駆動方法」においても、「印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2個の連続したチャンネル」の連続したチャンネルを2個ではなく「2以上の数n個の連続したチャンネル」とし得ることが理解できる。
したがって、刊行物2には、「印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2以上の数n個の連続したチャンネルと、印可される駆動パルスをLレベルとして電荷が貯められない2個の連続したチャンネルとが交互に形成され」る転送方法が記載されていると認められる。

(c)「前記印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2個の連続したチャンネルに電荷が存在するときに、2個の連続したチャンネルのうち後方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをLレベルにすると同時に、次の前方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをHレベルにすることを繰り返すことで電荷の転送を行う転送方法」

刊行物2の上記転送方法は、上記した時刻t=t2の後、時刻t=t3において、パルスφG1がHレベルからLレベルに立ち下がると同時にパルスφG3がLレベルからHレベルに立ち上がる。t=t4ではパルスφG2及びφG3がHレベル、その他のパルスがLレベルになっており、転送電極G1の電極下にあった電荷は、2つの転送電極G2及びG3の電極下に転送されている。これが繰り返されて電荷が転送される。
したがって、刊行物2記載の転送方法は、「前記印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2個の連続したチャンネルに電荷が存在するときに、2個の連続したチャンネルのうち後方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをLレベルにすると同時に、次の前方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをHレベルにすることを繰り返すことで電荷の転送を行う転送方法」といえる。

(d)刊行物2記載の技術事項
以上をまとめると、刊行物2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

[刊行物2記載の技術事項]
電荷の転送時間を短くすることができる方法であって、印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2以上の数n個の連続したチャンネルと、印可される駆動パルスをLレベルとして電荷が貯められない2個の連続したチャンネルとが交互に形成され、前記印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2個の連続したチャンネルに電荷が存在するときに、2個の連続したチャンネルのうち後方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをLレベルにすると同時に、次の前方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをHレベルにすることを繰り返すことで電荷の転送を行う転送方法。

ウ.本願補正発明と刊行物1発明との対比
(ア)本願補正発明の「固体撮像素子の駆動方法」について

刊行物1発明は、固体撮像素子の駆動方法であるから、この点で本願補正発明と一致する。

(イ)本願補正発明の「光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す信号電荷のライン数を、複数フィールドで1フレームの信号電荷を読み出すフィールド読出モードとライン間引モードの2つの動作モードで異なるものとし」について

刊行物1発明の駆動方法は、「画素で光電変換された信号電荷が、読み出しパルスにより垂直CCDに送られ」るものであって、この「垂直CCD」は、「信号電荷を垂直転送する転送チャネル」といえるから、刊行物1発明の駆動方法は、「光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す」ものであるといえる。
また、刊行物1発明の駆動方法は、撮影モードとして、第1?第5の撮影モード(「動作モード」)があり、第1のモードは、「全ての画素の電荷を3フィールドで読み出す」モードであるから、「複数フィールドで1フレームの信号電荷を読み出すフィールド読出モード」といえ、第2?第5のモードは、「3フィールドのうちの1フィールドを繰り返す」モード、「3フィールドのうちの第1フィールドと第3フィールドを読み出し、それを垂直CCDにおいて加算して出力することを繰り返す」モード、「垂直方向12画素のうち、特定の2画素を常に読み出す間引きフィールドを繰り返す」モード、「垂直方向12画素のうち、特定の4画素を常に読み出し、水平CCDにおいて、垂直方向に隣り合う電荷を加算して出力する間引き加算フィールドを繰り返す」モードであるから、何れも、全てのラインのうち一部のラインを読み出す「ライン間引モード」といえる。
第1のモードでは、全てのラインが読み出され、第2?第5のモードでは、一部のラインが読み出されるから、第1のモードと第2?第5のモードでは、読み出す信号電荷のライン数が異なるといえる。
よって、刊行物1発明は、「光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す信号電荷のライン数を、複数フィールドで1フレームの信号電荷を読み出すフィールド読出モードとライン間引モードの2つの動作モードで異なるものと」するものであるといえる。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す信号電荷のライン数を、複数フィールドで1フレームの信号電荷を読み出すフィールド読出モードとライン間引モードの2つの動作モードで異なるものと」する点で一致する。

(ウ)本願補正発明の「前記転送チャネルのオンとオフをそれぞれが部分的に制御する複数の垂直転送電極に対して、P(Pは5以上の正の整数)相の垂直転送ドライブパルスを印加して行う垂直転送駆動タイミングの制御自体は、前記2つの動作モードで同じとして、垂直転送駆動を実行し、」について

刊行物1発明における「垂直CCD」は、「複数の転送電極それぞれに6相駆動パルスを加えることで6相で信号電荷を転送させる」ものであり、この6相駆動パルスによる転送を行うことは、「複数の垂直転送電極に対して、P(Pは5以上の正の整数)相の垂直転送ドライブパルスを印加して行う垂直転送駆動タイミングの制御を行って、垂直転送駆動を実行」することといえる。
また、刊行物1発明の「複数の転送電極」は、「垂直CCD」(信号電荷を垂直転送する「転送チャネル」といえる)の所定の部分毎に(オンとオフからなる2値の)パルスを加えるものであるから、「前記転送チャネルのオンとオフをそれぞれが部分的に制御する」ものであるといえる。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記転送チャネルのオンとオフをそれぞれが部分的に制御する複数の垂直転送電極に対して、P(Pは5以上の正の整数)相の垂直転送ドライブパルスを印加して行う垂直転送駆動タイミングの制御を行って、垂直転送駆動を実行」する点では共通している。
しかしながら、垂直転送駆動タイミングの制御に関して、本願補正発明は、「垂直転送駆動タイミングの制御自体は、前記2つの動作モードで同じとして」いるのに対し、刊行物1発明では、2つの動作モードで同じか否か明らかではない点で両者は相違する(相違点1)。

(エ)本願補正発明の「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分と、連続してオフした2個の転送チャネル部分とが交互に形成され、前記連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分から形成される前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で1個の転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で1個の転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う」について

刊行物1発明の、6相駆動パルスにより信号電荷を転送させることは、何れの撮影モードでも行われることであるから、本願補正発明と刊行物1発明とは、「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、前記信号電荷の垂直転送を行う」点では共通するといえる。
しかしながら、本願補正発明では、「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分と、連続してオフした2個の転送チャネル部分とが交互に形成され、前記連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分から形成される前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で1個の転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で1個の転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う」のに対し、刊行物1発明では、垂直転送駆動によって、各動作モードにおける信号電荷の垂直転送がどのように行われるのかは特定されていない点で両者は異なる(相違点2)。

(オ)一致点、相違点
以上をまとめると、本件補正発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す信号電荷のライン数を、複数フィールドで1フレームの信号電荷を読み出すフィールド読出モードとライン間引モードの2つの動作モードで異なるものとし、
前記転送チャネルのオンとオフをそれぞれが部分的に制御する複数の垂直転送電極に対して、P(Pは5以上の正の整数)相の垂直転送ドライブパルスを印加して行う垂直転送駆動タイミングの制御を行って、
垂直転送駆動を実行し、
当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、前記信号電荷の垂直転送を行う
固体撮像素子の駆動方法。

[相違点]
相違点1
垂直転送駆動タイミングの制御に関して、本願補正発明は、「垂直転送駆動タイミングの制御自体は、前記2つの動作モードで同じとして」いるのに対し、刊行物1発明では、2つの動作モードで同じか否か明らかではない点。

相違点2
本願補正発明では、「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分と、連続してオフした2個の転送チャネル部分とが交互に形成され、前記連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分から形成される前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で1個の転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で1個の転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う」のに対し、刊行物1発明では、垂直転送駆動によって、各動作モードにおける信号電荷の垂直転送がどのように行われるのかは特定されていない点。

エ.当審の判断
相違点1、相違点2について、併せて検討する。
刊行物1発明では、信号電荷の垂直転送がどのように行われるのかは特定されていないが、刊行物1発明のような、CCDを駆動することにより信号電荷を転送するものにおける駆動パルスによる転送方法は種々の方法が知られている。
そのような方法の1つとして、電荷の転送時間を短くすることができる方法であって、印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2以上の数n個の連続したチャンネルと、印可される駆動パルスをLレベルとして電荷が貯められない2個の連続したチャンネルとが交互に形成され、前記印可される駆動パルスをHレベルとして電荷が貯められた2個の連続したチャンネルに電荷が存在するときに、2個の連続したチャンネルのうち後方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをLレベルにすると同時に、次の前方の1個のチャンネルに印可される駆動パルスをHレベルにすることを繰り返すことで電荷の転送を行う転送方法は、刊行物2に記載されているように知られていることである。
刊行物1発明は、電子スチルカメラに用いられているCCDを用いた固体撮像素子の駆動方法であり、そのCCDの動作速度を向上させるという課題は想定し得るものであるから、刊行物1発明において、CCDの動作速度の向上、すなわち、垂直CCDの転送時間を短くするために、刊行物2に記載された電荷の転送時間を短くする転送方法を採用しようとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。その場合、刊行物1の方法は6相(本願補正発明でいう「P相」)駆動パルスであるから、その6から連続してオフしている転送チャネルの2個を引いた4個(本願補正発明でいう「P-2個」)が連続してオンしている転送チャネルの数となる。
また、垂直CCDの転送時間を短くしようとすることは、刊行物1発明の複数の撮影モードの何れにおいても同様に考えられることであるから、複数の撮影モードの何れにおいても刊行物2に記載された転送方法を採用し、その結果として、複数の撮影モード間で垂直転送駆動タイミングの制御を同じとすることは、該制御を積極的に異ならせるようにする理由も刊行物1には見当たらず、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、刊行物1発明において、刊行物2に記載された技術を適用し、「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分と、連続してオフした2個の転送チャネル部分とが交互に形成され、前記連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分から形成される前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で1個の転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で1個の転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う」ようにし、かつ、「垂直転送駆動タイミングの制御自体は、前記2つの動作モードで同じ」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

オ.独立特許要件のまとめ
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)補正の適否のまとめ
よって、この手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成25年7月2日付けの手続補正は、上述のとおり却下されたので、本願の請求項1-9に係る発明は、平成23年10月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりのものである。

[本願発明]
「光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す信号電荷のライン数を、フィールド読出モードとライン間引モードの2つの動作モードで異なるものとし、
前記転送チャネルのオンとオフをそれぞれが部分的に制御する複数の垂直転送電極に対して、P(Pは5以上の正の整数)相の垂直転送ドライブパルスを印加して行う垂直転送駆動タイミングの制御自体は、前記2つの動作モードで同じとして、
垂直転送駆動を実行し、
当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分の並びで形成される、前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う
固体撮像素子の駆動方法。」

2.刊行物
刊行物1に記載された発明、及び、刊行物2に記載された技術事項は、上記「第2.2.(2)イ.刊行物」に記載したとおりである。

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、上記「第2.2.(2)ウ.本願補正発明と刊行物1発明との対比」と同様に、本願発明と刊行物1発明との一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
光電変換によって得た信号電荷を垂直転送する転送チャネルに読み出す信号電荷のライン数を、フィールド読出モードとライン間引モードの2つの動作モードで異なるものとし、
前記転送チャネルのオンとオフをそれぞれが部分的に制御する複数の垂直転送電極に対して、P(Pは5以上の正の整数)相の垂直転送ドライブパルスを印加して行う垂直転送駆動タイミングの制御を行って、
垂直転送駆動を実行し、
当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、前記信号電荷の垂直転送を行う
固体撮像素子の駆動方法。

[相違点]
相違点1
垂直転送駆動タイミングの制御に関して、本願発明は、「垂直転送駆動タイミングの制御自体は、前記2つの動作モードで同じとして」いるのに対し、刊行物1発明では、2つの動作モードで同じか否か明らかではない点。

相違点2
本願発明では、「当該垂直転送駆動によって、前記2つの動作モードの何れにおいても、連続してオンしたP-2個の転送チャネル部分の並びで形成される、前記信号電荷のパケットごとに、当該パケットよりも垂直転送方向の前方側で転送チャネル部分をオンさせ、当該パケット内の最後端で転送チャネル部分をオフさせて前記パケットを垂直転送方向にシフトし、当該シフトを繰り返すことで前記信号電荷の垂直転送を行う」のに対し、刊行物1発明では、垂直転送駆動によって、各動作モードにおける信号電荷の垂直転送がどのように行われるのかは特定されていない点。

4.判断
相違点1は、上述した本願補正発明との相違点1と同じものであり、相違点2は、上述した本願補正発明との相違点2から、「連続してオフした2個の転送チャネル部分とが交互に形成され」る点、及び、パケットをシフトするときのオン、オフする転送チャネルを「1個」とする点を除いたものであるから、相違点1、2に対する判断は、上述と同様の判断となり、刊行物1発明、及び、刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
したがって、本願発明は、刊行物1発明、及び、刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項2-9について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-12 
結審通知日 2014-03-18 
審決日 2014-03-25 
出願番号 特願2009-160771(P2009-160771)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 岳士  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 千葉 輝久
渡邊 聡
発明の名称 固体撮像素子の駆動方法並びに固体撮像装置およびカメラシステム  
代理人 佐藤 隆久  

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