• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61H
審判 全部無効 2項進歩性  A61H
管理番号 1287725
審判番号 無効2012-800074  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-05-02 
確定日 2014-02-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4879824号発明「マッサージ機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4879824号に係る出願(特願2007-147319号)は、平成19年6月1日の出願であって、その特許権の設定登録は平成23年12月9日にされ、その後、請求人ファミリー株式会社から無効審判が請求されたものである。以下、請求以後の経緯を整理して示す。
平成24年 5月 2日 審判請求書の提出
平成24年 7月27日 答弁書の提出
平成24年 7月27日 訂正請求書の提出
平成24年10月 5日 弁駁書の提出
平成24年12月 4日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人より)
平成24年12月 4日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人より)
平成24年12月18日 口頭審理の実施

第2 本件訂正の内容
平成24年7月27日になされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第4879824号の願書に添付した特許請求の範囲及び明細書を、平成24年7月27日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は、以下の訂正事項1?3のとおりである。
(1)訂正事項1
願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の「当該被施療者の身体が上昇している状態で、」を「当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、」に訂正する。(訂正箇所に下線付加。以下同じ。)

(2)訂正事項2
願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間を」を「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下部の領域をも」に訂正する。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0011】の「当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体が上昇している状態で、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間を前記マッサージ手段で施療することを特徴とする。」を「当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療することを特徴とする。」に訂正する。

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、平成24年7月27日付け訂正請求(以下、「本件訂正」という。)により訂正された特許第4879824号の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ、「本件訂正特許発明1」?「本件訂正特許発明4」という。)についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、無効とすべき理由を次のように主張すると共に、証拠方法として甲第1号証?甲第7号証を提出している。
(1)無効理由1
本件訂正特許発明1?4は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件訂正特許発明1?4は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3
本件訂正特許発明1?4は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証、甲第7号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が特許出願前に容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4
本件訂正特許発明1?4は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である、甲第7号証、甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が特許出願前に容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(5)無効理由5
本件訂正特許発明1?4は、その記載が、特許法第36条第6項第1号、及び第2号に規定する要件を満たしておらず、その特許は特許法123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2005-13463号公報
甲第2号証:特開平10-263037号公報
甲第3号証:特開2000-325416号公報
甲第4号証:特開2004-344534号公報
甲第5号証:特開2001-29413号公報
甲第6号証:特開2006-230708号公報
甲第7号証:特開2004-283266号公報

2.被請求人の主張
被請求人は、本件訂正を認める、本件無効審判の請求は認められない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由が無い旨主張する。

第4 訂正の可否についての当審の判断
1.訂正の目的について
(訂正事項1)
訂正事項1は、訂正前の「当該被施療者の身体が上昇している状態で、」との記載を訂正後の「当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、」との記載にするものである。
被施療者の身体を上昇させた場合、被施療者の身体が上昇している状態となることは明らかであるから、訂正後の「当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、」との記載は、訂正前の「当該被施療者の身体が上昇している状態」におけるマッサージ手段の進退移動範囲に関し、該マッサージ手段の進退移動範囲を大きくする態様を付加するものといえる。
そうすると、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(訂正事項2)
訂正事項2は、訂正前の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間を」との記載を訂正後の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも」との記載にするものである。
「間」が「二つのものに挟まれた部分。物と物とに挟まれた空間・部分」を意味する(広辞苑第6版)こと及び願書に添付した明細書の「マッサージ手段が施療する第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段の間とは、第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段の間の領域のみではなく、被施療者における前後方向の領域も含む。」(【0014】)との記載からして、訂正前の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間」は、「第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段の間の領域」、すなわち、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」のみではなく、「被施療者における前後方向の領域」も含むといえる。
そして、訂正後の「被施療者における前後方向の領域」は、「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間」が意味する「領域」、すなわち、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」を前提としたものであって、該挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」であることは明らかである。
そうすると、訂正後の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも」マッサージ手段で施療するとの記載は、「当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで」(訂正事項1)、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」と該挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」とを含む、「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域」において、「被施療者における臀部の下方の領域」をもマッサージ手段で施療することを意味するといえる。
以上によれば、訂正後の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも」との記載は、訂正前の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間」が意味する領域を明確にするとともに、訂正前の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間」が意味する領域を「被施療者における臀部の下方の領域」でもある点で限定することにより、マッサージ手段の進退移動の範囲を限定するものといえるから、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(訂正事項3)
訂正事項3は、訂正事項1,2に対応して、願書に添付した明細書の段落【0011】における記載を明瞭にするためのものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

したがって、訂正事項1?3は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮ないし第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2.新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更
(訂正事項1,2)
願書に添付した明細書又は図面には、以下の事項が記載されている。
ア:「なお、マッサージ手段が施療する第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段の間とは、第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段の間の領域のみではなく、被施療者における前後方向の領域も含む。」(【0014】)

イ:「(本発明の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機について、図に基づき説明する。図1は本実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図、図2は本実施形態に係るマッサージ機の側面断面図である。
(1.マッサージ機全体の構成)
本実施形態におけるマッサージ機の基本的構成要素は、被施療者の背中を支持する背もたれ部2と、この背もたれ部2の下端と接し被施療者が着座した場合に被施療者の臀部を支持する座部1と、当該座部1を支持する基台部5と、基台部5に接合し被施療者の肘を支持する肘置部10と、座部1の先端下側に枢設され被施療者の足が載置される脚載部3と、背もたれ部2の内部に揉み玉93及び揉み玉93を動作させる揉み玉機構を有するメカユニット70とを備える構成である。」(【0022】?【0023】)

ウ:「(6.メカユニットによるマッサージ)
前記メカユニット70によるマッサージは、例えば、揉み玉モータ91を正回転させながらメカユニット70を上昇させていく揉み玉上げ、揉み玉モータ91逆回転させながらメカユニット70を下降させていく揉み玉下げ、叩きモータ92を正回転させる叩き、揉み玉下げながらたたくさざなみ、一箇所を押圧する指圧、強よりさらに強い位置での揉み玉上げである深揉み玉上げ、強よりさらに強い位置での揉み下げである深揉み玉下げ、弱よりもさらに弱い位置での揉み玉下げであるさすり、指圧したままローリングして下から上へほぐすストレッチ、背中全体をローリングする全体背筋のばし、狭い範囲を集中的にローリングする部分背筋のばし等のマッサージがある。
(7.座部のエアバッグ)
前記座部1には、当該座部1の幅より少し短い長さを有する横長の腿部用エアバッグa4が配設されている。腿部用エアバッグa4の奥側には右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32が所定の距離を空けて併設されている。これらの各エアバッグは、基台部5内に格納された給排気部によってそれぞれ給排気されるようになっている。」(【0032】?【0033】)

エ:「また、腿部用エアバッグa4、右臀部用エアバッグa31、及び左臀部用エアバッグa32はエアによる直接的なマッサージ機能以外にも、被施療者の体を昇降させる機能を有する。被施療者の体を上昇させることで、通常ではメカユニット70の揉み玉93が届かないような被施療者の腰から臀部近傍にも揉み玉93によるマッサージを施すことができる。本実施形態に係るマッサージ機では、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間には所定の距離が空いており、被施療者の体を上昇させた際にはその距離に対応した空間を被施療者の腰から臀部の近傍に確保することができる。従って、従来は被施療者を支持するためのエアバッグが邪魔になってマッサージができなかった箇所にもマッサージを施すことができるようになる。」(【0035】)

オ:「図6(b)は右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気して膨張した場合の被施療者の背面図である。図示したように右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気することにより、被施療者Mの体はそれぞれのエアバッグの膨張に合わせて上昇する。被施療者Mの体が上昇したら被施療者Mの体と座部1との間に空間Sができる。この空間を利用することで被施療者Mの腰部及び臀部に対してメカユニット70によるマッサージを施すことができる。従来であれば右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32に分けずに一つの臀部用エアバッグとして被施療者Mの腰部及び臀部にマッサージを行っていたため、図の揉み玉93の位置には臀部用エアバッグが存在し、揉み玉93によるマッサージを十分に受けることができなったが、本実施形態に係るマッサージ機においては空間Sを確保しているため、被施療者Mの腰部及び臀部に対して揉み玉93によるマッサージを十分に行うことができる。またこの時、臀部の下方には空間Sがあり、揉み玉93の被施療者Mに対する進退移動の範囲を大きくすることで、臀部の下方の領域に対しても揉み玉93によるマッサージを行うことができる。」(【0038】)

a:イの記載及びウの記載からして、願書に添付した明細書又は図面には、
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする揉み玉93を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる右臀部用エアバッグa31と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる左臀部用エアバッグa32とを所定の距離を空けて備えたマッサージ機。」が記載されているといえる。

b:エの記載及びオの記載からして、aのマッサージ機は、「右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32により当該被施療者の身体が上昇している状態で、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間を揉み玉93で施療する」といえる。

c:「間」が「二つのものに挟まれた部分。物と物とに挟まれた空間・部分」を意味する(広辞苑第6版)こと及びアの記載からして、aの「右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間」が意味する「領域」は、「右臀部用エアバッグa31」と「左臀部用エアバッグa32」とに挟まれた「領域」のみではなく、「被施療者における前後方向の領域」も含むといえる。
そして、「被施療者における前後方向の領域」は、「右臀部用エアバッグa31」と「左臀部用エアバッグa32」とに挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」であることは明らかである。
そうすると、aの「右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間」が意味する「領域」は、「右臀部用エアバッグa31」と「左臀部用エアバッグa32」とに挟まれた「領域」と該「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」とを含むといえる。

d:c及びオの「右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気することにより、被施療者Mの体はそれぞれのエアバッグの膨張に合わせて上昇する。被施療者Mの体が上昇したら被施療者Mの体と座部1との間に空間Sができる。・・・本実施形態に係るマッサージ機においては空間Sを確保しているため、被施療者Mの腰部及び臀部に対して揉み玉93によるマッサージを十分に行うことができる。またこの時、臀部の下方には空間Sがあり、揉み玉93の被施療者Mに対する進退移動の範囲を大きくすることで、臀部の下方の領域に対しても揉み玉93によるマッサージを行うことができる。」との記載からして、aのマッサージ機は、「右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32により当該被施療者の身体を上昇させて揉み玉93の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32とに挟まれた領域と該領域に対して被施療者における前後方向の領域とを含む、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間の領域において、被施療者における臀部の下方の領域をも揉み玉93で施療する」といえる。

以上によれば、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする揉み玉93を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる右臀部用エアバッグa31と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる左臀部用エアバッグa32とを所定の距離を空けて備え、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32により当該被施療者の身体を上昇させて揉み玉93の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32とに挟まれた領域と該領域に対して被施療者における前後方向の領域とを含む、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間の領域において、被施療者における臀部の下方の領域をも揉み玉93で施療するマッサージ機。」が記載されているといえる。
そして、「右臀部用エアバッグa31」は「第1の身体昇降手段」といえ、「左臀部用エアバッグa32」は「第2の身体昇降手段」といえ、「揉み玉93」は「マッサージ手段」といえ、「右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32とに挟まれた領域と該領域に対して被施療者における前後方向の領域とを含む、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間の領域において、被施療者における臀部の下方の領域をも揉み玉93で施療する」は「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」といえるから、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
そうすると、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項に含まれる訂正事項1,2も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(訂正事項3)
訂正事項3は、訂正事項1,2に対応して、願書に添付した明細書の【0011】における記載を明瞭にするためのものであるから、訂正事項1,2について示したのと同様の理由で、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項1?3は、特許法第134条の2第9項にて準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3.まとめ
よって、一群の請求項についての本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第5 本件訂正後の各請求項の記載
上記のとおり、一群の請求項についての本件訂正は認められるから、本件特許発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのもの(本件訂正特許発明1?4)である。
「【請求項1】
被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え、当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療することを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
請求項1に記載のマッサージ機において、
前記第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段の外周における対向する内側を前記座部に支持されて固定され、外側を昇降させることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマッサージ機において、
前記被施療者の大腿部と接触して当該被施療者の大腿部を昇降させる大腿部昇降手段を備え、前記第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段と前記大腿部昇降手段が連係して当該被施療者の身体を昇降させることを特徴とするマッサージ機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のマッサージ機において、
前記身体昇降手段がエアバッグで形成され、当該エアバッグの給排気により被施療者を昇降させることを特徴とするマッサージ機。」

第6 無効理由についての当審の判断
I.無効理由5について
1.請求人の主張
請求人の無効理由5(記載不備)についての主張は、訂正事項1,2が、概ね以下の点で明確性とサポート要件を満たしていないから、本件訂正特許発明1?4は、その記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、又は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

(無効理由5(訂正事項1)明確性)
訂正事項1では、訂正前の「身体が上昇している状態」が「身体を上昇させて」に変更され、訂正前の「状態」の特定が外されており、被請求人が訂正請求書で述べる「被施療者の身体を上昇させた状態におけるマッサージ手段の進退移動範囲に関する態様を付加する」記載になっていない。
そのため、「訂正事項1は、(A)「第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により被施療者の身体を上昇させること」に加えて、「マッサージ手段の進退移動の範囲を大きくさせること(マッサージ手段の進退移動構造)」までも追加的に特定しているか、(B)「第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により被施療者の身体を上昇させることの作用としてマッサージ手段の進退移動の範囲が大きく確保されること」のみを追加的に特定しているのか、上記(A)及び(B)のいずれを特定しているのか分からず、本件訂正特許発明1は明確でない。(弁駁書3頁下段)

(無効理由5(訂正事項1)サポート要件)
訂正事項1を上記(A)及び(B)のいずれかを特定していると考えた場合であっても、当該訂正事項1の構成に、訂正明細書に実施形態として記載されたメカユニット70を下限に位置させた状態で揉み玉ユニット90を揺動させて揉み玉93の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくする構成以外に、具体的に如何なる構成が含まれ得るのか明確でなく、さらに、出願時の技術常識に照らしても、上記実施形態に記載された具体例を拡張ないし一般化することはできず、本件訂正特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した事項の範囲を超えたものである。(弁駁書4頁上段?5頁中段)

(無効理由5(訂正事項2)明確性)
訂正前の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間を」を、「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも」に訂正する当該訂正事項2では、その「間」の文言が、左右方向のみでの間を意味するのか、左右方向及び前後方向での間を意味するのか、左右方向及び上下方向での間を意味するのか、左右方向、前後方向及び上下方向での間を意味するのか、不明であり、さらに、「間の領域」及び「被施療者における前後方向の領域」が、それらの「領域」の具体的な内容の特定や「領域どうしの関係」の特定が不十分であり、どの「領域」をマッサージ手段で施療するのか依然として分からず、本件訂正特許発明1は明確でない。(審判請求書32頁下段、弁駁書5頁下段?7頁下段)

(無効理由5(訂正事項2)サポート要件)
訂正明細書及び願書に添付した図面の記載からは、どの「領域」をマッサージ手段で施療するものであれば本件訂正特許発明1の課題が解決され得るのか明確でなく、さらに、出願時の技術常識に照らしても、「間」の文言を「左右方向のみでの間」のような広義に解釈した範囲まで上記実施形態に記載された内容を拡張ないし一般化することはできず、本件訂正特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した事項の範囲を超えたものである。(審判請求書32頁下段?34頁下段)

2.判断
2-1.無効理由5(訂正事項1)明確性
訂正後の「当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、」との記載が、訂正前の「当該被施療者の身体が上昇している状態」におけるマッサージ手段の進退移動範囲に関し、該マッサージ手段の進退移動範囲を大きくする態様を付加するものであることは、前記「第4 訂正の可否についての当審の判断 2.訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について (1)訂正の目的 (訂正事項1)」において示したとおりである。
そして、訂正事項1の「マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすること」との記載は、通常の日本語の解釈からして、「マッサージ手段が被施療者に対して進退移動する範囲を大きくすること」を意味すると解されるから、訂正事項1の「当該被施療者の身体を上昇させてマッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすること」との記載は、「被施療者の身体が上昇している状態においてマッサージ手段が被施療者に対して進退移動する範囲を大きくすること」を意味するといえる。
そうすると、訂正事項1が上記(A)及び(B)のいずれを特定しているか否かにかかわらず、訂正事項1の「当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、」との記載は、明確である。
以上によれば、訂正事項1の記載は明確であり、請求人の(無効理由5(訂正事項1)明確性)における上記主張を採用することはできない。

2-2.無効理由5(訂正事項2)明確性
訂正事項2の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも」マッサージ手段で施療するとの記載が、マッサージ手段で施療する訂正事項2の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域」が、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」と該挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」とを含む領域であって、かつ「被施療者における臀部の下方の領域」であることを意味するのは、前記「2-1.無効理由5(訂正事項1)明確性」で示したとおりである。
そして、「間」の文言は請求人が主張するような特定方向を前提としたものとはいえず、訂正事項2における「間の領域」及び「被施療者における前後方向の領域」は訂正事項2の記載から明確であって、それらの「領域」の具体的な内容の特定や「領域どうしの関係」の特定が不十分であるというべき根拠や、どの「領域」をマッサージ手段で施療するのか依然として分からないというべき根拠は見出せない。
以上によれば、訂正事項2の記載は明確であり、請求人の(無効理由5(訂正事項2)明確性)における上記主張を採用することはできない。

2-3.以上のとおり、訂正事項1,2の記載は明確であって、訂正事項1,2により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1の記載も明確であるから、本件訂正特許発明1は、その記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。 そして、本件訂正特許発明2?4において付加された各発明特定事項は明確であり、しかも、これら各発明特定事項を本件訂正特許発明1に付加することにより、本件訂正特許発明2?4が、不明確になるものでもない。
よって、本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により明確であり、その記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

2-4.無効理由5(訂正事項1,2)サポート要件
(1)訂正明細書の「被施療者が臀部全体の領域近傍を揉み玉500、600により強くマッサージしたい場合に、被施療者の臀部全体の下方の領域に直接接触しているエアバッグa3が邪魔になり揉み玉500、600による強いマッサージを十分に受けることができないという課題を有する。」(【0007】)との記載及び「本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、被施療者の臀部に対して揉み玉による揉みや叩きのマッサージを十分に施すことができるマッサージ機を提供することを目的とする。」(【0010】)との記載からして、訂正明細書には、発明の課題として、「被施療者の臀部全体の下方の領域に直接接触しているエアバッグに邪魔されずに被施療者の臀部に対して揉み玉による揉みや叩きのマッサージを十分に施すことができるマッサージ機を提供すること」が記載されているといえる。

(2)訂正明細書は、訂正事項1,2に対応して、願書に添付した明細書の【0011】における記載を訂正事項3により明瞭にしたものであるから、前記「第4 訂正の可否についての当審の判断 2.訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について (2)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更 (訂正事項1,2)」において示したのと同様の理由で、訂正明細書には、
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする揉み玉93を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる右臀部用エアバッグa31と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる左臀部用エアバッグa32とを所定の距離を空けて備え、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32により当該被施療者の身体を上昇させて揉み玉93の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32とに挟まれた領域と該領域に対して被施療者における前後方向の領域とを含む、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間の領域において、被施療者における臀部の下方の領域をも揉み玉93で施療するマッサージ機。」が記載されているといえる。
そして、「右臀部用エアバッグa31」は「第1の身体昇降手段」といえ、「左臀部用エアバッグa32」は「第2の身体昇降手段」といえ、「揉み玉93」は「マッサージ手段」といえ、「右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32とに挟まれた領域と該領域に対して被施療者における前後方向の領域とを含む、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間の領域において、被施療者における臀部の下方の領域をも揉み玉93で施療する」は「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」といえるから、訂正明細書には、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された程度に拡張ないし一般化された事項が記載されているといえる。
また、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも」マッサージ手段で施療するとの記載が、マッサージ手段で施療する訂正事項2の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域」が、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」と該挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」とを含む領域であって、かつ「被施療者における臀部の下方の領域」であることを意味するのは、前記「2-1.無効理由5(訂正事項1)明確性」で示したとおりであるから、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される本件訂正特許発明1は、その「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え、当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」構成により、訂正明細書に記載された、「被施療者の臀部全体の下方の領域に直接接触しているエアバッグに邪魔されずに被施療者の臀部に対して揉み玉による揉みや叩きのマッサージを十分に施すことができるマッサージ機を提供する」という発明の課題を解決することができるといえる。
以上によれば、訂正事項1,2により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、かつ、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。

(3)訂正事項1について請求人が主張する、当該訂正事項1の構成に、訂正明細書に実施形態として記載されたメカユニット70を下限に位置させた状態で揉み玉ユニット90を揺動させて揉み玉93の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくする構成以外に、具体的に如何なる構成が含まれ得るのか明確でないことは、当業者が訂正明細書に記載された事項を訂正事項1の程度に拡張ないし一般化することができないことをいう根拠とはならない。
また、請求人は、訂正事項2について、訂正明細書及び願書に添付した図面の記載からは、どの「領域」をマッサージ手段で施療するものであれば本件訂正特許発明1の課題が解決され得るのか明確でないと主張するが、訂正事項2の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも」との記載が、訂正事項2の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域」が、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」と該挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」とを含む領域であって、「被施療者における臀部の下方の領域」であることを意味し、明確であることは、前記「2-1.無効理由5(訂正事項2)明確性」で示したとおりであって、本件訂正特許発明1はその構成により発明の課題を解決するものである。
さらに、請求人は、訂正事項2について、出願時の技術常識に照らしても、「間」の文言を「左右方向のみでの間」のような広義に解釈した範囲まで上記実施形態に記載された内容を拡張ないし一般化することはできないと主張するが、「間」の文言は請求人が主張するような特定方向を前提としたものとはいえず、請求人の該主張は、前記「2-1.無効理由5(訂正事項2)明確性」で示した、訂正事項2における「間」についての前記理解を否定するものではない。
以上によれば、請求人の(無効理由5(訂正事項1)サポート要件)、(無効理由5(訂正事項2)サポート要件)における上記主張を採用することはできない。

(4)以上のとおり、本件訂正特許発明1は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載した発明であり、その記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そして、本件訂正特許発明2?4において付加された各発明特定事項は、それぞれ訂正明細書に記載された事項であり、しかも、これら各発明特定事項を本件訂正特許発明1に付加することにより、本件訂正特許発明2?4が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものでもない。
よって、本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により訂正明細書の発明の詳細な説明に記載した発明であり、その記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

3.まとめ
以上のとおり、本件訂正特許発明1?4は、その記載が、特許法第36条第1号及び第2号に規定する要件を満たしているから、本件訂正特許発明1?4に係る特許についての無効理由5には理由がない。

II.無効理由1について
1.本件訂正特許発明1について
本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由1は、本件訂正特許発明1は甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたというものである。(陳述要領書5頁下段)

1-1.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明
(1)甲第1号証
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2005-13463号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。
甲1ア:「【請求項1】
椅子型マッサージ機本体の背もたれ部に機械的マッサージを行う揉み玉を設けると共に、前記マッサージ機本体の腕載部にエアマッサージを行うエアバッグを設け、前記エアバッグの膨張により腕部を狭持しながら前記揉み玉により背中部を機械的にマッサージするようにしたマッサージ機。」(【特許請求の範囲】)

甲1イ:「【発明の属する技術分野】
本発明は、施療子による機械的マッサージ部とエアバッグの膨張収縮によるエアマッサージ部とを備えるマッサージ機に関する。」(【0001】)

甲1ウ:「本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、機械的マッサージ部及びエアマッサージ部によって、高いマッサージ効果を奏することが可能なマッサージ機を提供することにある。」(【0010】)

甲1エ:「また、前記エアバッグは、マッサージ機本体の背もたれ部、座部、脚載部、腕載部等に適宜設けており、エアバッグを設けた場所に応じて、使用者の脚部、腿部、臀部、腰部、背中部、肩部、頸部、腕部等を押圧してマッサージすることができる。」(【0023】)

甲1オ:「図1は、本発明に係るマッサージ機の一実施例を示す斜視図であり、図中、100は椅子型のマッサージ機本体である。また、図2は、図1に示したマッサージ機Aの側面視による説明図である。マッサージ機本体100は、使用者Mが着する座部101、この座部101を支持する基台部102、座部101の後側に枢軸103を介してリクライニング可能に連結した背もたれ部104、及び座部101の前側に略L字状の枢支連結部材105を介して上下方向へ揺動可能に連結した脚載部106とを備えており、座部101の両側には肘掛部107,107が立設してある。」(【0052】)

甲1カ:「脚載部106は、内部に2つの半円筒状の脚受115,115を互いに平行に設けて、正面視が略上断めがね枠形をなしており、脚受115,115の各両内側には、左右に対をなす脚上部用エアバッグa1,a1、a1,a1及び脚下部用エアバッグa2,a2、a2,a2が、それぞれ脚受115,115の中心軸の軸長方向へ距離を隔てて配設してある。また、座部101には、該座部101の幅寸法より少し短い長さ寸法を有する横長の臀部用エアバッグa3及び腿部用エアバッグa4が、座部101の奥側からこの順に、互いに距離を隔てて埋設してある。
一方、肘掛部107,107上にはそれぞれ、上側に開口を配した半円筒状の腕受116,116を設けてなる腕載部117,117が取付けてあり、両腕受116,116の内側には腕部用エアバッグa5,a5が腕受116,116に倣って配設してある。更に、背もたれ部104の正面側であって、両側縁近傍の位置にはそれぞれ、左右に対をなす背中部用エアバッグa6,a6及び腰部用エアバッグa7,a7が、背中部及び腰部の高さ位置に応じた位置に埋設してある。そして、これら各エアバッグa1,a2,…は、基台部102内に格納した給排気部によって配置位置別に給排気されるようになっている。」(【0055】?【0056】)

甲1キ:「このマッサージユニット4には、使用者Mの身体に、背もたれ部104の表面部を介して当接してマッサージを行う揉み玉5,6を具備する揉み玉駆動ユニット9が前後方向に揺動可能に配設してある。
すなわち、マッサージユニット4は、マッサージユニットケーシング22の下部に左右幅方向に向けて伸延させた状態で配設した昇降軸28の中央部に、揉み玉駆動ユニット9を構成する揉み玉駆動ユニットケーシング37が、前後方向へ向けて揺動自在に取付けてある。かかる前後方向への揺動により、揉み玉駆動ユニット9、ひいては揉み玉5,6が前後方向へ進退することになる。」(【0064】?【0065】)

甲1ク:「本実施例では、図11に示したように、揉み玉駆動ユニット9を進退させることによって、揉み玉5,6を背もたれ部104の内部に収納した収納位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L1で示す線上に位置する。)、極めて弱いマッサージを行うさすり位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L2で示す線上に位置する。)、弱いマッサージを行う弱位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L3で示す線上に位置する。)、中程度のマッサージを行う中位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L4で示す線上に位置する。)、強いマッサージを行う強位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L5で示す線上に位置する。)、極めて強いマッサージを行う深位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L6で示す線上に位置する。)の6段階に進退させることができるようにしてある。」(【0076】)

甲1ケ:「このようにして背中部への交互複合マッサージが終了すると、制御ユニット16は、臀部用エアバッグa3への給気を開始させ、給気開始から所定時間経過したか否かを判断する(ステップS140,S141)。制御ユニット16は、給気開始から所定時間経過するまで給気を実行させた後、給気停止して臀部用エアバッグa3を膨張状態に維持させる(ステップS142)。これによって、使用者Mの臀部が少し高い位置に維持される。
次に、制御ユニット16は、揉み玉駆動ユニット9を適宜位置まで前進させ(ステップS143)、揉み玉駆動ユニット9をして揉み玉5,6による揉み上げ等の機械的マッサージを終了タイミングまで実行させる(ステップS144,S145)。これによって、使用者Mの臀部を持ち上げた状態で同臀部に対して揉み玉5,6による機械的マッサージを施すことができ、臀部の下部側にも機械的マッサージを施すことができる。従って、使用者Mに対して、所謂ヒップアップ効果を与えることができる。」(【0127】?【0128】)

甲1a:甲1ア?甲1クの記載及び図1,2の図示内容からして、甲1には、「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする揉み玉5,6を備えるマッサージ機であって、横長の臀部用エアバッグa3を備えるマッサージ機」が記載されているといえる。
【図1】

甲1b:甲1ケの「制御ユニット16は、臀部用エアバッグa3への給気を開始させ、・・・臀部用エアバッグa3を膨張状態に維持させる・・・これによって、使用者Mの臀部が少し高い位置に維持される。」との記載及び図1,2の図示内容からして、甲1aの「マッサージ機」の「横長の臀部用エアバッグa3」は、「前記被施療者の右臀部及び左臀部を押圧して当該被施療者の右臀部及び左臀部を昇降させる横長の臀部用エアバッグa3」といえる。

甲1c:甲1キの「このマッサージユニット4には、使用者Mの身体に、背もたれ部104の表面部を介して当接してマッサージを行う揉み玉5,6を具備する揉み玉駆動ユニット9が前後方向に揺動可能に配設してある。・・・かかる前後方向への揺動により、揉み玉駆動ユニット9、ひいては揉み玉5,6が前後方向へ進退することになる。」との記載及び甲1クの「図11に示したように、揉み玉駆動ユニット9を進退させることによって、・・・強いマッサージを行う強位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L5で示す線上に位置する。)、極めて強いマッサージを行う深位置(図11において、揉み玉5,6の先端が符号L6で示す線上に位置する。)の6段階に進退させることができるようにしてある。」との記載及び図11の図示内容からして、甲1aの「マッサージ機」は、「強いマッサージを行うために、揉み玉5,6の被施療者に対する前後方向への進退移動の範囲を大きくすることができる」といえる。
【図11】

甲1d:甲1ケの「制御ユニット16は、臀部用エアバッグa3への給気を開始させ、・・・臀部用エアバッグa3を膨張状態に維持させる・・・これによって、使用者Mの臀部が少し高い位置に維持される。・・・使用者Mの臀部を持ち上げた状態で同臀部に対して揉み玉5,6による機械的マッサージを施すことができ、臀部の下部側にも機械的マッサージを施すことができる。」との記載からして、甲1aの「マッサージ機」は、「横長の臀部用エアバッグa3により当該被施療者の身体を上昇させた状態で、被施療者における臀部の下部側をも揉み玉5,6で施療する」といえる。

以上によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする揉み玉5,6を備えるマッサージ機であって、
被施療者の右臀部及び左臀部を押圧して当該施療者の右臀部及び左臀部を昇降させる横長の臀部用エアバッグa3を備え、
強いマッサージを行うために、揉み玉5,6の被施療者に対する前後方向への進退移動の範囲を大きくすることができ、
横長の臀部用エアバッグa3により当該被施療者の身体を上昇させた状態で、被施療者における臀部の下部側をも揉み玉5,6で施療するマッサージ機。」

(2)甲第2号証
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平10-263037号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲2ア:「【発明の属する技術分野】本発明は、身体へのマッサージ動作をエアアクチュエータによって行うようにしたマッサージ機に関するものである。」(【0001】)

甲2イ:「【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。本発明に係るマッサージ機1は、本実施形態では図2に示すように椅子本体2を具備して構成されたものとしてあり、椅子本体2の背凭れ部3に設けられた動作子4をマッサージ動作させる上部のマッサージ駆動部5と、このマッサージ駆動部5を背凭れ部3の高さ方向に沿って移動させる移動駆動部6とを有し、また図3に示すように椅子本体2の座面部7やフットレスト8に設けられた下部のマッサージ駆動部9,10を有している。」(【0013】)

甲2ウ:「また、全てのエアアクチュエータ21,25に対する空気の給排を一切行わずに、移動駆動部6を作動させてマッサージ駆動部5を移動させると、各動作子4によるローラ掛けが可能になり、これによってさすり動作に似たマッサージ効果を得ることができる。図3に示したように下部のマッサージ駆動部9は、椅子本体2の座面部7に座る使用者に対し、そのお尻を指圧可能に設けられたエアアクチュエータ35と、太ももの裏側を指圧可能に設けられたエアアクチュエータ36とを有している。
本実施形態では、これらエアアクチュエータ35,36にも蛇腹ポンプ構造又はバルーン構造を有したエアーセルを用いてあり(但し、動作子4は具備していない)、従って左右別々に配されたものとしてあるが、それぞれ左右のものは連通状態になっている。そのため、左右方向に長い一体のものとして形成することも可能である。」(【0025】?【0026】)

甲2エ:図3には、マッサージ機において、アクチュエータ35を座部の左右に所定の距離を空けて設ける態様が示されている。
【図3】

甲2a:甲2ア?甲2ウの記載、甲2エ及び図2,3の図示内容からして、甲第2号証には、「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする動作子4を備えるマッサージ機であって、前記被施療者の臀部を指圧可能に、座部の左右に所定の距離を空けて設けられたアクチュエータ35を備えるマッサージ機」が記載されているといえる。
そして、上記「被施療者の臀部を指圧可能に、座部の左右に所定の距離を空けて設けられたアクチュエータ35」が、それぞれ「被施療者の左右の臀部を指圧可能」に設けられたものであることは明らかである。

以上によれば、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする動作子4を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を指圧可能に設けられたアクチュエータ35と当該被施療者の左臀部を指圧可能に設けられたアクチュエータ35とを所定の距離を空けて備えたマッサージ機。」

(3)甲第3号証
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開2000-325416号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲3ア:「本発明は上記問題点に鑑み、人体の背中の中央部を叩き動作や揉み動作によって比較的強くマッサージできると同時に、背中の両側部を指圧動作等によってソフトにマッサージできるようにしたものである。」(【0004】)

甲3イ:「【課題を解決するための手段】上記問題点を解決する本発明の技術手段は、人体の背中の中央部を施療子9でマッサージするマッサージ器8が、人体の背中に沿って移動可能に設けられたマッサージ機において、前記マッサージ器8の両側方に、空気の給排気によって膨張収縮する空気式のマッサージ具41が設けられている点にある。本発明の他の技術手段は、前記マッサージ器8が、マッサージ機の背凭れ部4の左右中央部に昇降自在に設けられ、前記空気式のマッサージ具41が、前記背凭れ部4の両側部に設けられている点にある。」(【0005】)

甲3ウ:「図1及び図2において、前記座部3には、後ろ寄りに2個の空気式のマッサージ具45が設けられ、前寄りに2個の空気式のマッサージ具46が設けられている。後ろ寄りの各マッサージ具45は、エアセル47と椀状の施療子48とを備え、エアセル47に空気を供排することによりエアセル47は空気圧によって伸縮動作し、施療子48を介して使用者の尻を押圧するように構成されている。前寄りの各マッサージ具46はエアセル49と施療子50とを備え、エアセル49に空気を供排することによりエアセル49は空気圧によって伸縮動作し、施療子50を介して使用者の太ももを押圧するようになっている。」(【0019】)

甲3エ:「前記座部3内部には、エア駆動式のマッサージ部70が設けられている。マッサージ部70は、座部3の前後に設けられた2つのエアセル71,72から構成されている。これらのエアセル71,72は袋体により構成され、空気の給排気により膨張・収縮するものであって、後側のエアセル71は使用者の尻を押圧し、前側のエアセル72は太股を押圧する。前記フットレスト5は、左右の脚を別々に挟持することができる溝形の脚保持部74,74が設けられており、各脚保持部74,74にエア駆動式のマッサージ部80がそれぞれ設けられている。これらのマッサージ部80は、脚保持部74,74の底壁に設けられたエアセル81と、脚保持部74,74の両側壁に設けられたエアセル82とから構成されている。これらのエアセル81,82も袋体により構成され、空気の給排気により膨張・収縮するものであり、底壁のエアセル81はふくらはぎ裏を押圧し、側壁のエアセル82は足首を挟持状に押圧する。」(【0024】)

甲3オ:図1には、空気式のマッサージ具45を座部の左右に所定の距離を空けて設ける態様のマッサージ機が示されている。
【図1】

甲3a:甲3ア?甲3ウの記載及び図1,2の図示内容からして、甲第3号証には、「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする施療子9を備えるマッサージ機であって、前記被施療者の臀部を押圧する、座部の左右に所定の距離を空けて設けられた空気式のマッサージ具45を備えるマッサージ機。」
が記載されているといえる。
そして、上記「被施療者の臀部を押圧する、座部の左右に所定の距離を空けて設けられた空気式のマッサージ具45」が、それぞれ「被施療者の左右の臀部を押圧する」ものであることは明らかである。

以上によれば、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする施療子9を備えるマッサージ機であって、
被施療者の右臀部を押圧する空気式のマッサージ具45と当該被施療者の左臀部を押圧する空気式のマッサージ具45とを所定の距離を空けて備えたマッサージ機。」

(4)甲第4号証
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2004-344534号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲4ア:「そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、施療袋の取替えまたはメンテナンスが容易で、しかも人体被施療部に、挟持状或いは押広状又は捻り状の空圧施療を安価で適格に施すことができるようにしたマッサージ機における施療袋の取付け手段を提供する事を目的としてなされたものである。」(【0007】)

甲4イ:「また、本発明のマッサージ機における施療袋の取付け手段は、各種のマッサージ機における座部や背凭れ部或いは足載台に適宜設けられる施療袋が、被施療者側に膨縮部が配置されて、施療袋の基端部が披施療者否当接側に折曲させて止着されるようにしているため、施療袋を膨縮させた場合に、その折曲部を起点として膨縮部が起き上がるように起立させる事ができ、施療袋が対向状に配置され、その基端部が共に内側に配置されている場合には、被施療者の被施療部位を一対の施療袋間で挟持状に施療保持させる事ができる。」(【0018】)

甲4ウ:「【発明の実施の形態】
以下に、本発明のマッサージ機における施療袋の取付け手段を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。
図1乃至図29は、本発明のマッサージ機における施療袋の取付け手段を採用したマッサージ機及び施療袋の一実施形態を示すものであり、図1は本発明を採用したマッサージ機の一実施形態を示す斜視図であり、図2は本発明を採用したマッサージ機の一実施形態を示す使用状態図であり、図3は本発明を採用したマッサージ機の一実施形態示す説明図であり、図4乃至図6は本発明のマッサージ機における施療袋の取付け手段の一実施形態示す説明図であり、図7乃至図10は本発明を背凭れ部に採用したマッサージ機の一実施形態を示す説明図であり、図11及び図12は本発明を座部に採用したマッサージ機の一実施形態を示す説明図であり、図13乃至図18は本発明を足載台に採用したマッサージ機の一実施形態を示す説明図であり、図19は本発明を座部の太腿位置に採用したマッサージ機の一実施形態を示す説明図であり、図20は本発明を座部の尻部後部位置に採用したマッサージ機の一実施形態を示す説明図であり、図21乃至図29は、本発明を採用した場合の施療袋の形状や配置及び止着位置の一実施形態を示す説明図である。また、図30及び図31は従来のマッサージ機における施療袋の取付け手段を示す説明図である。
本発明を採用するマッサージ機1aは、図2の実施形態で示したように、被施療者が着座状態でマッサージ施療を受ける事ができるものであり、被施療者が着座して尻部や太腿の接触部となる座部2aと、被施療者の首部や肩部及び腰部の接触部となる背凭れ部3aを有し、該背凭れ部3aは座部2aに対し傾斜角度調整自在に取り付けられている。」(【0029】?【0030】)

甲4エ:「図1及び図7・図8の実施形態では、前記背凭れ部3a内部に、この中央に開口部331aを有する門状の板状部材33aを内装したものを示しており、該背凭れ部3a内には、施療子352aによる揺動施療及び打撃施療或いは指圧施療を任意に施す事ができるようにした施療機構35aが設けられ、該施療機構35aの施療子352aが板状部材33aの開口部331aで昇降自在にして稼動し得るようにしたものを例示している。」(【0033】)

甲4オ:「また、施療袋8aの座部2aへの取付けは、図11・図12及び図19・図20に示したように、該施療袋8aの至部側である膨縮部81aが座部2a上面側の披施療者当接側に位置するよう配置させて、該基端部82aを裏面側に折曲し、座部2aの披施療者否当接側に位置する基端部82aの止着穴85aでビス83a等を利用して該施療袋8aを止着させて取付けする。」(【0055】)

甲4カ:「更に、図20に示したように、座部2a左右の太腿位置に横長形状或いは縦長形状の施療袋8aを尻部後方左右に斜状に配置して施療袋8aが尻部左右から押圧するよう起立するよう配置させる事で、被施療者の尻部左右に強度な押圧力或いは軽度な押圧力による施療が行なえる。尚、これにおいても、逆方向に止着すれば、その作用も異なる作用をもたらす事は言うまでもない。」(【0074】)

甲4キ:図20には、マッサージ機において、施療袋8aを座部の左右に所定の距離を空けて設ける態様が示されている。
【図20】

甲4a:甲4ア?甲4カの記載、甲4キ及び図1?3,7,8,10,20の図示内容からして、甲第4号証には、「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする施療子352aを備えるマッサージ機であって、前記被施療者の臀部を押圧する、座部の左右に所定の距離を空けて設けられた施療袋8aを備えたマッサージ機」
が記載されているといえる。
そして、上記「被施療者の臀部を押圧する、座部の左右に所定の距離を空けて設けられた施療袋8a」が、それぞれ「被施療者の左右の臀部を押圧する」ものであることは明らかである。

以上によれば、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージする施療子352aを備えるマッサージ機であって、
被施療者の右臀部を押圧する施療袋8aと当該被施療者の左臀部を押圧する施療袋8aとを所定の距離を空けて備えたマッサージ機。」

(5)甲第5号証
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開2001-29413号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲5ア:「本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは空気袋の膨張によるマッサージ力を有効に利用することができるマッサージ機を提供するにあり、他の目的とするところは静脈内の血液を好ましい方向に流すことができて効果的なマッサージを得ることができるマッサージ機を提供するにある。」(【0005】)

甲5イ:「【発明の実施の形態】以下本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図示例のマッサージ機は、座部6とリクライニング自在とされている背もたれ8と、アームレストを兼ねたフレーム7とからなる椅子型のもので、その背もたれ8内には指圧マッサージを行うマッサージ手段(図示せず)を内蔵している。また、座部6の前方には脚載せ台4が配設されている。この脚載せ台4は、椅子のフレーム7にレイジィトング機構である伸縮機構5を介して取りつけられたもので、不使用時には伸縮機構5を縮めることで、座部6の下方に収納してしまうことができるようになっている。
そして、座部6の上面の前端寄りの左右には、それぞれ大腿部のマッサージ用の空気袋2,2を配置し、座部6の上面の後端寄りの左右には、それぞれ臀部のマッサージ用の空気袋3,3を配置し、脚載せ台4にはふくらはぎ部のマッサージ用の空気袋1,1をそれぞれ配置してある。」(【0010】?【0011】)

甲5ウ:「そして、これら空気袋1,2,3は、給排気手段9にチューブ10で接続されて、給排気手段9によってその膨張収縮がなされるようにしているのであるが、この時、これら空気袋1,2,3に対する給排気は、図3に示すタイミングで行われるように(図中○は給気、△は保持、×は排気)してある。
すなわち、まず脚載せ台4の空気袋1を膨張させ、次いで大腿部用の空気袋2を膨張させ、その後、臀部用の空気袋3を膨張させ、最後に全空気袋1,2,3を収縮させるのである。膨張させた空気袋1,2は、最後の同時収縮の時点まで膨張状態を維持するようにしてある。これは、空気袋1,2,3の膨張が静脈内の血液を心臓に向かう方向へ送ることができるようにしているためである。」(【0013】?【0014】)

甲5エ:「図4及び図5に他例を示す。ここでは座部6に配した2個の空気袋3,3を人体の大腿部から臀部にかけての部分に接して膨張時に下方から押圧するものとしてあり、またこれら空気袋3,3の両側には膨張時に人体の大腿部から臀部にかけての部分を側方から押圧することになる空気袋30,30を配してある。なお、空気袋30,30の外側面には硬質合成樹脂等からなるバックアッププレート31を配してあり、該空気袋30,30は、上記空気袋3,3と同時に、あるいは少しだけ早く膨張するように給排気タイミングを設定してある。図5中のMは背もたれ8内を背もたれに沿って上下移動自在となっているマッサージ機構、Cは操作器である。」(【0017】)

甲5オ:図5には、マッサージ用の空気袋3を座部の左右に所定の距離を空けて設ける態様のマッサージ機が示されている。
【図5】

甲5a:甲5ア?甲5エの記載、甲5オ及び図1,2,4,5の図示内容からして、甲第5号証には、「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、前記被施療者の臀部を押圧する、座部の左右に所定の距離を空けて設けられたマッサージ用の空気袋3を備えたマッサージ機。」
が記載されているといえる。
そして、上記「被施療者の臀部を押圧する、座部の左右に所定の距離を空けて設けられたマッサージ用の空気袋3」が、それぞれ「被施療者の左右の臀部を押圧する」ものであることは明らかである。

以上によれば、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
被施療者の右臀部を押圧するマッサージ用の空気袋3と当該被施療者の左臀部を押圧するマッサージ用の空気袋3とを所定の距離を空けて備えたマッサージ機。」

(6)甲第6号証
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(特開2006-230708号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲6ア:「【請求項1】
背もたれ部に上下昇降可能及び前後進退可能に施療体を配設し、前記背もたれ部に設定した施療体の上下可動範囲内で、前記施療体を前記背もたれ部から第1の進出限度位置まで前方進出可能としてマッサージを行なうマッサージ機において、
前記施療体の上下可動範囲内に設けた特別施療領域では、前記第1の進出限度位置よりも前方に設定した第2の進出限度位置まで前記施療体の前方進出を許可してマッサージを行なうようにしたことを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記特別施療領域として、前記施療体の上下可動範囲の上端部分の上側特別施療領域、及び/又は前記上下可動範囲の下端部分の下側特別施療領域を設定したことを特徴とする請求項1記載のマッサージ機。」(【特許請求の範囲】)

甲6イ:「しかしながら、もみ玉を用いて被施療者の肩部のマッサージを行う場合、もみ玉が、肩部の背中に略連続する部分、即ち肩部の背中側の稜部付近に当接するようにしてあるため、肩部に対するマッサージ効果が限定的であった。そのため、被施療者の肩部に対してより大きなマッサージ効果が得られるマッサージ機が要求されていた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、被施療者の肩部等に対してより大きなマッサージ効果が得られるマッサージ機を提供する。」(【0004】?【0005】)

甲6ウ:「前記背もたれ部3は、図3及び図5に示すように、縦に伸延する左右の縦フレーム30,30を具備しており、この縦フレーム30,30の前側に、図2に示すように、略中央に所定幅の長孔31aを形成した背もたれ板31を取付けるとともに、後側には背面カバー体32を取付け、この背面カバー体32と前記背もたれ板31との間にユニット配設空間Qを形成している。そして、このユニット配設空間Qに、左右のもみ玉7,7を備え、このもみ玉7,7を前記長孔31aに臨ませた状態で昇降可能とした機械式のマッサージユニット11を配設している。なお、このマッサージユニット11については後に詳述する。」(【0037】)

甲6エ:「また、図1?図5に示すように、前記座部1には、その左右側に肘掛部5,5を設けている。また、座部1の後部側には臀下部用エアバッグa4を、前部側には腿部用エアバッグa5を、左右側には臀側部用エアバッグa6をそれぞれ取付けている。」(【0039】)

甲6オ:「この体側部用エアバッグa3を含む前記複数のエアバッグa1?a8には、図9に示した如くエアポンプ25から給気される。エアポンプ25には、同エアポンプ25から圧入される大気を一時的に貯留して各エアバッグa1?a8へ分流する分流器(図示せず)を連通連結している。そして、この分流器には、各エアバッグa1?a8に対応する複数の吐気口が設けられ、各吐気口には同吐気口の開口を開閉する電磁弁(図示せず)を設けている。そして、分流器の各吐気口と対応するエアバッグa1?a8とを、これも図示しない耐圧ホースによってそれぞれ連結し、前記電磁弁の開閉動作を後述する制御部G(図9参照)により制御して所要のエアバッグa1?a8を個別に給排気し、エアバッグa1?a8を膨張(膨出)・収縮させることにより、被施療者Mに対してエアマッサージを施すように構成している。なお、電磁弁B1?B18の開閉動作によってエアバッグa1?a8を膨張(膨出)・収縮させることができる一方、エアバッグa1?a8を膨張状態(膨出状態)に保持することもできる。」(【0044】)

甲6カ:「図10は、本発明に係るマッサージ機Aのもみ玉7,7の前進制御を説明する説明図であり、図中、3aは、背もたれ部の前面である。なお、図中、図6に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。図10に示した如く、制御部G(図9参照)には、マッサージユニット11のもみ玉7(7)を、背もたれ部の前面3aから前方の予め定めた位置(例えば、前後ストローク長で65mm程度の位置)までの間の適宜位置に進出させることが許可された第1進出限度位置L1、及び当該第1進出限度位置L1より前方の所定位置(例えば、前後ストローク長で110mm程度の位置)までの間の適宜位置に進出させることが許可された第2進出限度位置L2が設定してある。」(【0069】)

甲6キ:「一方、下側特別施療領域LDは、いずれの被施療者Mに拘らず略一定であるので、例えば座部1の表面の高さ位置から10cm上方の高さ位置までの領域に定めてある。このようにして定めた下側特別施療領域LDにおいて、もみ玉7(7)の進出を第2進出限度位置L2内の適宜位置まで許可してマッサージを実行することによって、被施療者Mの臀部を深部まで十分に施療することができる。」(【0075】)

甲6ク:「また、もみ玉7,7が下側特別施療領域内に位置する場合も前同様、もみ玉7,7が前記第1進出限度位置を越えて進出され得るため、もみ玉7,7が被施療者Mの臀部の深部に当接して当該部分のみならず大腿部をも施療することができる。
これによって、被施療者Mの肩部、臀部及び大腿部に対してより大きなマッサージ効果を与えることができる。」(【0123】?【0124】)

甲6ケ:図2には、座部に横長の臀下部用エアバッグa4を備えた態様のマッサージ機が示されている。
【図2】

甲6a:甲6ア?甲6エの記載及び図1?5,11,12の図示内容からして、甲第6号証には、「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするもみ玉7,7を備えるマッサージ機」が記載されているといえる。

甲6b:甲6オの「所要のエアバッグa1?a8を個別に給排気し、エアバッグa1?a8を膨張(膨出)・収縮させることにより、被施療者Mに対してエアマッサージを施す」との記載及び甲6ケの「横長の臀下部用エアバッグa4」が被施療者の右臀部及び左臀部を押圧することは明らかであることからして、甲6ケの「横長の臀下部用エアバッグa4」は「被施療者の右臀部及び左臀部を押圧してエアマッサージを施す」といえる。

甲6c:甲6bからして、甲6aの「マッサージ機」は、「被施療者の右臀部及び左臀部を押圧してマッサージを施す横長の臀下部用エアバッグa4を備えている」といえる。

甲6d:甲6カの「図10に示した如く、制御部G(図9参照)には、マッサージユニット11のもみ玉7(7)を、背もたれ部の前面3aから前方の予め定めた位置(例えば、前後ストローク長で65mm程度の位置)までの間の適宜位置に進出させることが許可された第1進出限度位置L1、及び当該第1進出限度位置L1より前方の所定位置(例えば、前後ストローク長で110mm程度の位置)までの間の適宜位置に進出させることが許可された第2進出限度位置L2が設定してある。」との記載、甲6キの「下側特別施療領域LDにおいて、もみ玉7(7)の進出を第2進出限度位置L2内の適宜位置まで許可してマッサージを実行することによって、被施療者Mの臀部を深部まで十分に施療することができる。」との記載、甲6クの「もみ玉7,7が下側特別施療領域内に位置する場合も前同様、もみ玉7,7が前記第1進出限度位置を越えて進出され得るため、もみ玉7,7が被施療者Mの臀部の深部に当接して当該部分のみならず大腿部をも施療することができる。これによって、被施療者Mの肩部、臀部及び大腿部に対してより大きなマッサージ効果を与えることができる。」との記載及び図10の図示内容からして、甲6aの「マッサージ機」は、「もみ玉7,7の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、被施療者における臀部の深部のみならず大腿部をももみ玉7,7で施療する」といえる。
【図10】

以上によれば、甲第6号証には、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするもみ玉7,7を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部及び左臀部を押圧してマッサージを施す横長の臀下部用エアバッグa4を備え、
もみ玉7,7の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、被施療者における臀部の深部のみならず大腿部をももみ玉7,7で施療するマッサージ機。」

(7)甲第7号証
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(特開2004-283266号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。

甲7ア:「【請求項1】
背凭れ部と座部とを夫々湾曲部を介して一体的に形成した椅子本体に、これら背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールを内装すると共に該ロングガイドレールに沿って施療機を移動自在に設け、該椅子本体を支持部材で一定高さに保持させて構成した事を特徴とする休息用椅子型施療機。」(【特許請求の範囲】)

甲7イ:「【産業上の利用分野】
本発明は、背凭れ部から脚載せ部にかけて施療子を案内移動させるロングガイドレールを備えて任意の角度で全身施療を行なわせる事ができるようにした休息用椅子型施療機に関するものである。」(【0001】)

甲7ウ:「ところで、前者の椅子型マッサージ構造においては、背凭れ部に背凭れ部の下方位置まで延びる延長部を有するロングガイドレールを配設し、該ロングガイドレールに施療子を備えた駆動機構をこれに沿って移動可能に設けているため、通常のマッサージ構造ではマッサージし得ない腰部下部及び尻部上部に施療子を当接させてマッサージすることができるという利点がある。」(【0003】)

甲7エ:「本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、座部と背凭れ部を備え、要すれば脚載せ部を備えた椅子型施療機において、椅子全体と、該椅子に内装される施療子及び該施療子を案内移動するガイドレールとの単一化を図って製造コストを低減させると共に、施療者が所望する任意の傾斜角度で頸部から足部に亘る全身施療を施す事ができる休息用椅子型施療機を提供するものである。」(【0007】)

甲7オ:「本発明の休息用椅子型施療機は、上記のように構成することにより次のような作用をもたらす。
すなわち、本発明の休息用椅子型施療機は、背凭れ部と座部とを夫々湾曲部を介して一体的に形成した椅子本体に、これら背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールを内装すると共に該ロングガイドレールに沿って施療機を移動自在に設けた構成である為、椅子本体やガイドレールの規格統一ができると共に部材コスト及び製造コストの低減を図って頸部と腰部の他、臀部や大腿部に亘る全身施療を施す事ができる施療機を得る事ができる。」(【0013】)

甲7カ:「更にまた本発明の休息用椅子型施療機は、給排気装置に連動して膨縮する空気袋の複数を配設した椅子本体に、ロングガイドレールに沿って移動自在な施療機を設けている為、施療機による全身施療と空気袋による空圧施療を任意に選択して、これらの一方若しくは双方を利用した施療を行なわせる事ができる。」(【0016】)

甲7キ:「すなわち、図1乃至図9に示した一実施形態では、背凭れ部21と座部22と脚載置部23とを夫々湾曲部を介して一体的に形成した椅子本体2とし、図10及び図11に示した一実施形態では、背凭れ部21と座部22とを夫々湾曲部を介して一体的に形成した椅子本体2としたものを例示しており、該椅子本体2には左右一対の肘掛け31を備えた支持部材3を備え、該支持部材3に枢着された回動軸5・5により椅子本体2が傾斜角度可変に傾動するよう支持された本発明の休息用椅子型施療機1を製作する場合を示している。
前記椅子本体2は、例えば角パイプや丸パイプ等で身体の線に沿うような形状に部分的に湾曲形成されたロングガイドレール24が、背凭れ部21の上端付近から脚載置部23の前端付近の位置にかけて内設されており、該ロングガイドレール24は施療子281を配設した施療機28を往復移動自在に設けられている。」(【0019】?【0020】)

甲7ク:「更に前記椅子本体2には、給排気装置29から給排気される圧空に連動して膨縮する空気袋71の複数を椅子本体2の任意の場所に適宜に配設されており、空気袋による空圧施療を行なわせる事ができるようにしている。
前記椅子本体2は、図3に示すように、前記各ロングガイドレール24・24の表面側に略平行に沿うような形状に形成された樹脂製や木製の枠部材251・251を左右に有する身体支持枠25と、該身体支持枠25の表面側に被覆したクッション材26と、該クッション材26の表面側に覆設された外装カバー27とで構成されている。」(【0022】?【0023】
)

甲7ケ:「図9に示した本発明の休息用椅子型施療機1は、前記椅子本体2の身体支持枠25に複数の空気袋71を配設した場合を例示しており、該椅子本体2を採用した場合には、椅子本体2の座部22下部位置や座部22と支持部材3間の空間位置適所に給排気装置7を配備させて、これら給排気装置7と各空気袋71・・間に通気管を介設して、給排気装置7からの圧空を各空気袋71・・に給排させて各空気袋71・・を適宜に膨縮させる事ができるようにしたものを示している。」(【0030】)

甲7コ:「また、本発明の休息用椅子型施療機には、図5に示すように、施療機28の作動及び施療種類や椅子本体2の傾倒角度を設定する有線或いは無線のリモコン装置6が設けられており、該リモコン装置6の操作により施療者に自動的に施療したり、指定施療部位を集中的に施療したり、更に、椅子本体2の角度を任意に設定したりする事ができ、効率的な施療を行わせる事ができる。」(【0033】)

甲7サ:図9には、空圧施療を施す空気袋71を座部の左右に所定の距離を空けて備えた態様のマッサージ機が示されている。
【図9】

甲7a:甲7ア?甲7ケの記載及び図1?9の図示内容からして、甲第7号証には、「背凭れ部と座部とを夫々湾曲部を介して一体的に形成した椅子本体に、これら背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールを内装すると共に該ロングガイドレールに沿って施療子281を移動可能に設けたマッサージ機」が記載されているといえる。

甲7b:甲7サからして、甲7aの「マッサージ機」は、「空圧施療を施す、座部の左右に所定の距離を空けて設けられた空気袋71を備えている」といえる。
そして、上記「空圧施療を施す、座部の左右に所定の距離を空けて設けられた空気袋71」が、それぞれ「被施療者の左右の臀部を押圧する」ものであることは明らかである。

甲7c:甲7オの「本発明の休息用椅子型施療機は、背凭れ部と座部とを夫々湾曲部を介して一体的に形成した椅子本体に、これら背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールを内装すると共に該ロングガイドレールに沿って施療機を移動自在に設けた構成である為、椅子本体やガイドレールの規格統一ができると共に部材コスト及び製造コストの低減を図って頸部と腰部の他、臀部や大腿部に亘る全身施療を施す事ができる施療機を得る事ができる。」との記載及び図2及び図9の図示内容からして、甲7aの「マッサージ機」は、「施療子281を座部に沿うよう移動させることにより、移動被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71とに挟まれた領域を含めて、被施療者における臀部の下方から大腿部に亘る領域を施療子281で施療する」といえる。
【図2】

以上によれば、甲第7号証には、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されている。
「背凭れ部と座部とを夫々湾曲部を介して一体的に形成した椅子本体に、これら背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールを内装すると共に該ロングガイドレールに沿って施療子281を移動可能に設けたマッサージ機であって、
被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71とを所定の距離を空けて備え、
施療子281を座部に沿うよう移動させることにより、被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71とに挟まれた領域を含めて、被施療者における臀部の下方から大腿部に亘る領域を施療子281で施療するマッサージ機。」

1-2.対比
本件訂正特許発明1と甲1発明とを対比する。

甲1発明の「マッサージする揉み玉5,6」は、本件訂正特許発明1の「少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段」に相当する。

甲1発明の「被施療者の右臀部及び左臀部を押圧して施療者の右臀部及び左臀部を昇降させる横長の臀部用エアバッグa3」と本件訂正特許発明1の「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え」られたものとは、「前記被施療者の臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の臀部を昇降させる身体昇降手段」である点で一致する。

甲1発明の「揉み玉5,6の被施療者に対する前後方向への進退移動」は本件訂正特許発明1の「マッサージ手段の被施療者に対する進退移動」に相当するから、「強いマッサージを行うために、揉み玉5,6の被施療者に対する前後方向への進退移動の範囲を大きくすることができ」る甲1発明と本件訂正特許発明1とは「マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることができる」点で一致する。

本件訂正特許発明1の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」との構成が、「前記マッサージ手段で施療する」「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域」が、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」と該挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」とを含む領域であって、かつ「被施療者における臀部の下方の領域」であることを意味するのは、前記「I.無効理由5について 2-1.無効理由5(訂正事項1)明確性」において示すとおりである。
そうすると、甲1発明の「被施療者における臀部の下部側」が「被施療者における臀部の下方の領域」を一部含むことは明らかだから、甲1発明の「被施療者における臀部の下部側」と本件訂正特許発明1の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域」とは、「被施療者における臀部の下方の領域」である点で一致する。

以上によれば、本件訂正特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の臀部を昇降させる身体昇降手段を備え、
前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることができ、
当該身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療するマッサージ機。」

(相違点1)
本件訂正特許発明1では、「前記被施療者の臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の臀部を昇降させる身体昇降手段」が「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え」たものであって、「当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」のに対して、
甲1発明では、「前記被施療者の臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の臀部を昇降させる身体昇降手段」が「被施療者の右臀部及び左臀部を押圧して施療者の右臀部及び左臀部を昇降させる横長の臀部用エアバッグa3」であって、「強いマッサージを行うために、揉み玉5,6の被施療者に対する前後方向への進退移動の範囲を大きくすることができ、横長の臀部用エアバッグa3により被施療者の身体を上昇させて、被施療者における臀部の下部側をも揉み玉5,6で施療する」点。

1-3.判断
相違点1について検討する。
(1)相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項の技術的意義
相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項である、「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え、当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療すること」の技術的意義について確認する。
訂正明細書には、「被施療者が臀部全体の領域近傍を揉み玉500、600により強くマッサージしたい場合に、被施療者の臀部全体の下方の領域に直接接触しているエアバッグa3が邪魔になり揉み玉500、600による強いマッサージを十分に受けることができないという課題を有する。」(【0007】)との記載、「本実施形態に係るマッサージ機では、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間には所定の距離が空いており、被施療者の体を上昇させた際にはその距離に対応した空間を被施療者の腰から臀部の近傍に確保することができる。従って、従来は被施療者を支持するためのエアバッグが邪魔になってマッサージができなかった箇所にもマッサージを施すことができるようになる。」(【0035】)との記載、「図6(b)は右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気して膨張した場合の被施療者の背面図である。図示したように右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気することにより、被施療者Mの体はそれぞれのエアバッグの膨張に合わせて上昇する。被施療者Mの体が上昇したら被施療者Mの体と座部1との間に空間Sができる。この空間を利用することで被施療者Mの腰部及び臀部に対してメカユニット70によるマッサージを施すことができる。従来であれば右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32に分けずに一つの臀部用エアバッグとして被施療者Mの腰部及び臀部にマッサージを行っていたため、図の揉み玉93の位置には臀部用エアバッグが存在し、揉み玉93によるマッサージを十分に受けることができなったが、本実施形態に係るマッサージ機においては空間Sを確保しているため、被施療者Mの腰部及び臀部に対して揉み玉93によるマッサージを十分に行うことができる。またこの時、臀部の下方には空間Sがあり、揉み玉93の被施療者Mに対する進退移動の範囲を大きくすることで、臀部の下方の領域に対しても揉み玉93によるマッサージを行うことができる。 」(【0038】)との記載が存在し、願書に添付した図面には次のような図6が存在する。
【図6】

訂正明細書の上記記載及び図6の図示内容からして、従来は、右臀部用エアバッグと左臀部用エアバッグに分けずに一つの臀部用エアバッグにより被施療者の臀部にマッサージを行っていたため、エアバッグが直接接触している被施療者の臀部の下方の領域には該臀部用エアバッグが邪魔になって強いマッサージを十分に行うことができなかったところ、相違点1に係る上記発明特定事項は、所定の距離を空けて備えられた第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段により被施療者の身体を上昇させて被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段を挿入することができる空間を確保するとともに、被施療者の身体を上昇させた状態で該空間に挿入されるマッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることにより、すなわち、「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え、当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させ」るとともに「前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくする」ことにより、従来は臀部全体の下方の領域に直接接触している臀部用エアバッグが邪魔になって強いマッサージを十分に行うことができなかった領域である、「第1の身体昇降手段」と「第2の身体昇降手段」とに挟まれた「領域」と該挟まれた「領域」に対して「被施療者における前後方向の領域」とを含む領域であって、かつ「被施療者における臀部の下方の領域」をも、背凭れ部に備えられたマッサージ手段で施療することができるものといえる。

(2)甲2発明?甲5発明(周知技術)について
甲第2号証?甲第5号証には、甲2発明?甲5発明が記載されているが、甲2発明の「前記被施療者の右臀部を指圧可能に設けられたアクチュエータ35と当該被施療者の左臀部を指圧可能に設けられたアクチュエータ35」、甲3発明の「被施療者の右臀部を押圧する空気式のマッサージ具45と当該被施療者の左臀部を押圧する空気式のマッサージ具45」、甲4発明の「被施療者の右臀部を押圧する施療袋8aと当該被施療者の左臀部を押圧する施療袋8a」、甲5発明の「被施療者の右臀部を押圧するマッサージ用の空気袋3と当該被施療者の左臀部を押圧するマッサージ用の空気袋3」は、被施療者の左右の臀部をマッサージするために被施療者の身体を昇降させるものではあっても、身体を昇降させること自体を目的としたものではない。
つまり、甲2発明?甲5発明の上記構成は、あくまでもマッサージするために身体を昇降させる「身体昇降手段」として、「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え」たものものにすぎず、甲第2号証?甲第5号証には、被施療者の身体を上昇させて被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段を挿入することができる空間を確保するために、左右に分離された身体昇降手段を設けることが記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第1号証?甲第5号証には、被施療者の身体を上昇させて被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段を挿入することができる空間を確保するために、甲1発明の「前記被施療者の右臀部及び左臀部を押圧して施療者の右臀部及び左臀部を昇降させる横長の臀部用エアバッグa3」にかえて甲2発明?甲5発明の上記構成を適用する動機付けは存在せず、仮に甲2発明?甲5発明の上記構成を甲1発明に適用できたとしても、左右の身体昇降手段により臀部をマッサージするものにとどまり、さらに「当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」ことまで当業者が容易に想到することができたというべき根拠は見出せない。

(3)甲6発明、甲7発明について
甲第6号証には、甲6発明が記載されており、甲6発明の「当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするもみ玉7,7」は「当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段」といえ、以下同様に、「前記被施療者の右臀部及び左臀部を押圧してエアマッサージを施す横長の臀下部用エアバッグa4」は「前記被施療者の右臀部及び左臀部を押圧してマッサージを施す身体昇降手段」といえ、「被施療者における臀部の深部のみならず大腿部」は「当該身体昇降手段に対して前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域」を含むといえるから、甲6発明は、
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部及び左臀部を押圧してマッサージを施す身体昇降手段を備え、
前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該身体昇降手段に対して前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療するマッサージ機。」
といえる。
しかしながら、甲6発明の「横長の臀下部用エアバッグa4」はあくまでもマッサージするために身体を昇降させる「身体昇降手段」であって、甲第6号証には、「もみ玉7,7」(マッサージ手段)の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくするために「横長の臀下部用エアバッグa4」(身体昇降手段)により被施療者の身体を上昇させることや、さらに被施療者の身体を上昇させた状態で「もみ玉7,7」(マッサージ手段)の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることは記載も示唆もされていない。

甲第7号証には、甲7発明が記載されており、甲7発明の「施療子281」は、「背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールに沿って移動可能に設けた」ものであるから、「当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段」といえるものの、「背凭れ部に備え」られたものではない。
さらに、甲7発明の「施療子281」は、「座部に沿うよう移動」するものであって、被施療者に対して接近したり離れたりするものではなく、甲第7号証には、「施療子281」が「被施療者に対する進退移動の範囲を大きくする」ものと解すべき根拠は見出せない。
そして、甲7発明の「被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71」は「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させマッサージを施す第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させマッサージを施す第2の身体昇降手段」といえ、甲7発明の「被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71とに挟まれた領域を含めて、被施療者における臀部の下方から大腿部に亘る領域を施療子281で施療する」は「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」といえる。
そうすると、甲7発明は、
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールに沿って移動可能に設けられた当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させマッサージを施す第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させマッサージを施す第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え
マッサージ手段を座部に沿うよう移動させることにより、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療するマッサージ機。」
といえる。
しかしながら、甲7発明の「被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71」はあくまでもマッサージするために身体を昇降させる「身体昇降手段」であって、甲7発明は、「施療子281」(マッサージ手段)の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることなく、「マッサージ手段を座部に沿うよう移動させることにより、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」ものであり、甲第7号証には、「施療子281」(マッサージ手段)の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくするために「被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71」(身体昇降手段)により被施療者の身体を上昇させることや、さらに被施療者の身体を上昇させた状態で「施療子281」(マッサージ手段)の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることは記載も示唆もされていない。

以上によれば、甲第6号証及び甲第7号証には、被施療者の臀部の下方と座部との間に確保された空間に挿入されるマッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくするために、甲6発明の「前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該身体昇降手段に対して前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域を施療する」構成や甲7発明の「マッサージ手段を座部に沿うよう移動させることにより、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」構成を甲1発明に適用する動機付けは存在しない。

(4)甲1発明?甲7発明についてのまとめ
以上によれば、甲第1号証?甲第7号証には、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲1発明、甲2発明?甲5発明、甲6発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けは存在せず、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基いて当業者といえども容易に想到し得たものではない。

(5)請求人の主張について
請求人は、甲第2号証?甲第7号証に記載された発明について以下のように主張する。
(甲第2号証?甲第5号証に記載された発明について)
甲第2号証?甲第5号証に記載されているように、「座部の後部の身体昇降手段の構成として、第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備えた構成を採用すること」は従来周知の技術であって、例えば甲第4号証の各種図面等に記載のように、エアバッグ(空気袋)は出願時において既に当業者にとって種々の形態で部品として取り扱われるような存在となっているものであり、このような部品として取り扱われるようなエアバッグを、通常の機械設計等において適宜採用することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないことや、座部の後部のエアセルの構成として左右別々のものと左右一体のものを選択し得る旨の記載がある甲第2号証又は甲第3号証に触れた当業者であれば、甲第1号証発明の「臀部用エアバッグa3」を左右に所定の間隔を開けて備えた構成とするはずであることからすれば、甲第2号証?甲第5号証記載の構成を甲第1号証発明に適用し、甲第1号証発明の「臀部用エアバッグa3」を所定の距離を空けて備えた構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。(審判請求書23頁上段、弁駁書9頁中段?下段、口頭審理陳述要領書2頁下段)

(甲第6号証、甲第7号証に記載された発明について)
仮に、甲第1号証発明に甲第2号証?甲第5号証記載の構成を適用した発明が、「マッサージユニット4の進退移動の範囲を大きくすることで、第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段との間の領域をマッサージユニット4で施療するものでない」としても、甲第6号証及び甲第7号証に記載の「被施療者に対するもみ玉7、7や施療機28の進退移動の範囲を大きくしてもみ玉7、7や施療機28で施療する範囲を臀部の深部や大腿部にまで広げる技術」を採用して、上記構成とすることは、以下の理由で当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
一般に、マッサージ機を設計する設計者などの当業者は、常日頃から如何にすれば効果的なマッサージができるか、という願望(以下、「一般的な課題」という)を抱いているものであって、該一般的な課題を抱いている状態で甲第1号証の記載に触れた当業者が、技術分野が同一でかつ施療対象箇所も同じ甲第6号証又は甲第7号証記載の発明に接したならば、仮に動機付けとなる記載等がなくとも、これはいい技術だと思って甲第6号証又は甲第7号証に記載の構成を採用しようと試みるはずである。
しかも、本件訂正特許発明1、甲第1号証記載の発明、甲第6号証記載の発明及び甲第7号証記載の発明は「臀部に対して揉み玉によるマッサージを十分に施す」という共通の目的ないし課題を有するから、甲第1号証記載の発明において、「臀部」を効果的に施療すべく甲第6号証又は甲第7号証に記載の構成を採用しようとすることは当業者が普通に行うことである。
さらに、甲第1号証記載の発明に触れた当業者が、マッサージ手段の機能が本件訂正特許発明1及び甲第1号証記載の発明と共通し、かつ、マッサージ手段の進退移動の範囲を大きくして臀部の下方の領域に対してマッサージ手段によるマッサージを行おうとする点で本件訂正特許発明1と共通する甲第6号証記載の発明に接したときに、揉み玉5、6の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくして臀部の深部や大腿部を施療しようとすることは、極めて容易に行われることである。(審判請求書24頁上段?下段、弁駁書12頁上段から中段、陳述要領書2頁下段?5頁中段)

請求人の上記主張について検討する。
請求人が、甲第1号証?甲第7号証に記載された発明を組み合わせることの容易性の根拠として主張する上記事項を考慮しても、甲第1号証?甲第7号証に、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲1発明、甲2発明?甲5発明、甲6発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在するとはいえない。

(6)本件訂正特許発明1の効果について
請求人は、本件訂正特許発明1の効果について、甲第1号証発明も「臀部の下部側にも機械的マッサージを施すことができる。従って、使用者Mに対して、所謂ヒップアップ効果を与えることができる。」ものであり、本件訂正特許発明1の効果は、特許図面の【図6】の記載からすればあくまで程度の微差にすぎないのであって、本件訂正特許発明1の効果は、甲第1号証?甲第7号証記載のものから予測できる効果にすぎないと主張する。(審判請求書24頁中段、弁駁書13頁中段、陳述要領書5頁下段)

しかしながら、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項により、従来は臀部全体の下方の領域に直接接触している臀部用エアバッグが邪魔になって強いマッサージを十分に行うことができなかった領域をもマッサージ手段で施療することができることは、前記「(1)相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項の技術的意義」において示したとおりであって、願書に添付した図6はあくまでも概略図にすぎないから、請求人の上記主張は訂正明細書から把握される本件訂正特許発明1の上記効果を否定するものとはいえない。
そして、本件訂正特許発明1により奏される上記効果は、当業者といえども甲第1号証?甲第7号証に記載された発明から予測し得ないものである。

1-4.本件訂正特許発明1についてのまとめ
以上によれば、本件訂正特許発明1は、甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由1は理由がない。

2.本件訂正特許発明2?4について
本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により、甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明2?4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明2?4に係る特許についての無効理由1は理由がない。

II.無効理由2について
1.本件訂正特許発明1について
本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由2は、本件訂正特許発明1は甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたというものである。(陳述要領書7頁上段)

1-1.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明
甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明は、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-1.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明」において示したとおりである。

1-2.対比
本件訂正特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-2.対比」において示したとおりである。

1-3.判断
(1)判断
甲第1号証?甲第7号証に、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲1発明、甲2発明?甲5発明、甲6発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在しないことは、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-3.判断 (4)甲1発明?甲7発明についてのまとめ」において示したとおりである。
そうすると、甲第1号証?第5号証及び甲第7号証に、甲1発明?甲5発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在しないことは明らかであるから、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証?第5号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者といえども容易に想到し得たものではない。
そして、本件訂正特許発明1により奏される効果が、当業者といえども甲第1号証?甲第7号証に記載された発明から予測し得ないものであることは、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-3.判断 (6)本件訂正特許発明1の効果について」において示したとおりであるから、本件訂正特許発明1により奏される効果が、甲第1号証?第5号証及び甲第7号証に記載された発明から予測し得ないものであることは、明らかである。

(2)請求人の主張
請求人は、本件訂正特許発明1の無効理由2について、以下のように主張する。
「座部の後部の身体昇降手段を左右に分けること」についての進歩性の論理付けは、無効理由1について主張したとおりである。
そして、仮に、甲第1号証発明に甲第2号証?甲第5号証記載の構成を適用した発明が、「マッサージユニット4の進退移動の範囲を大きくすることで、第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段との間の領域をマッサージユニット4で施療するものでない」としても、甲第7号証には、「ロングガイドレール24に沿って施療機28を移動させることで、施療機28で臀部や大腿部に施療を施す技術」だけでなく、「ロングガイドレール24に沿って施療機28を移動させることで、空気袋71と空気袋71との間の領域を施療機28の施療子281で施療する技術」が記載されており、上述した一般的な課題を抱いている状態で甲第1号証の記載に触れた当業者が、技術分野が同一でかつ施療対象箇所も同じ甲第7号証記載の発明に接したならば、甲第7号証に記載の構成を採用しようと試みるはずである。
しかも、甲第7号証記載の発明は、本件発明及び甲第1号証記載の発明と共通の目的ないし課題を有するのであり、「臀部に対して揉み玉によるマッサージを十分に施す」という目的のもと、特定の施療対象箇所である「臀部」を効果的に施療すべく、共通の目的を有する甲第7号証に記載の構成を採用しようとすることは、当業者が普通に行うことである。
なお、本件訂正特許発明1の効果は、無効理由1について主張したように、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証記載のものから予測できる効果に過ぎない。(審判請求書26頁中段?27頁中段、弁駁書14頁中段?15頁中段、陳述要領書6頁上段?下段)

しかしながら、請求人が、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された発明を組み合わせることの容易性の根拠として主張する上記事項を考慮しても、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲1発明?甲5発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在するとはいえない。

1-4.本件訂正特許発明1についてのまとめ
以上によれば、本件訂正特許発明1は、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由2は理由がない。

2.本件訂正特許発明2?4について
本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により、甲第1号証?甲第5号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明2?4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明2?4に係る特許についての無効理由2は理由がない。

III.無効理由3について
1.本件訂正特許発明1について
本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由3は、本件訂正特許発明1は甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたというものである。(陳述要領書8頁中段)

1-1.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明
甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明は、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-1.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明」において示したとおりである。

1-2.対比
本件訂正特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-2.対比」において示したとおりである。

1-3.判断
(1)判断
甲第1号証?甲第7号証に、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲1発明、甲2発明?甲5発明、甲6発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在しないことは、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-3.判断 (4)甲1発明?甲7発明についてのまとめ」において示したとおりである。
そうすると、甲第1号証及び甲第7号証に、甲1発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在しないことは明らかであるから、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者といえども容易に想到し得たものではない。
そして、本件訂正特許発明1により奏される効果が、当業者といえども甲第1号証?甲第7号証に記載された発明から予測し得ないものであることは、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-3.判断 (6)本件訂正特許発明1の効果について」において示したとおりであるから、本件訂正特許発明1により奏される効果が、甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明から予測し得ないものであることは、明らかである。

(2)請求人の主張
請求人は、本件訂正特許発明1の無効理由3について、以下のように主張する。
甲第7号証には、無効理由1及び無効理由2で示した構成だけでなく、「右臀部を空圧施療する空気袋71と左臀部を空圧施療する空気袋71とを所定の距離を空けて備え、ロングガイドレール24に沿って施療機28を移動させることで、空気袋71と空気袋71との間の領域を施療機28の施療子281で施療する」ことが記載されているのであり、つまり、「座部の後部の身体昇降手段を左右に分けること」と、「マッサージ手段の施療範囲を「間の領域」にまで広げること」とがいずれも記載されているのであり、上述した一般的な課題を抱いている状態で甲第1号証の記載に触れた当業者が、技術分野が同一でかつ施療対象箇所も同じ甲第7号証記載の発明に接したならば、甲第7号証に記載の構成を採用しようと試みるはずである。
しかも、甲第7号証記載の発明は、本件発明及び甲第1号証記載の発明と共通の目的ないし課題を有するのであり、「臀部に対して揉み玉によるマッサージを十分に施す」という目的のもと、特定の施療対象箇所である「臀部」を効果的に施療すべく、共通の目的を有する甲第7号証に記載の構成を採用しようとすることは、当業者が普通に行うことである。
なお、本件訂正特許発明1の効果は、無効理由1について主張したように、甲第1号証及び甲第7号証記載のものから予測できる効果に過ぎない。(審判請求書28頁中段?29頁中段、弁駁書16頁上段?17頁上段、陳述要領書7頁中段?8頁中段)

しかしながら、請求人が、甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明を組み合わせることの容易性の根拠として主張する上記事項を考慮しても、甲第1号証及び甲第7号証に、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲1発明及び甲7発明を総合し、相違点1に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在するとはいえない。

1-4.本件訂正特許発明1についてのまとめ
以上によれば、本件訂正特許発明1は、甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由3は理由がない。

2.本件訂正特許発明2?4について
本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そして、甲第4号証及び甲第5号証は、本件訂正特許発明2,3で付加された発明特定事項に対応するものである(審判請求書29頁下段?30頁上段)から、本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により、甲第1号証、甲第7号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明2?4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明2?4に係る特許についての無効理由3は理由がない。

IV.無効理由4について
1.本件訂正特許発明1について
本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由4は、本件訂正特許発明1は甲第7号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたというものである。(陳述要領書10頁中段)

1-1.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明
甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明は、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-1.甲各号証の記載内容と甲各号証に記載された発明」において示したとおりである。

1-2.対比
本件訂正特許発明1と甲7発明とを対比する。
甲7発明の「施療子281」は、「背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールに沿って移動可能に設けた」ものであるから、本件訂正特許発明1の「マッサージ手段」と「当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段」であるで点一致するものの、「背凭れ部に備え」られたものではない。
さらに、甲7発明の「施療子281」は、「座部に沿うよう移動」するものであって、被施療者に対して接近したり離れたりするものではなく、甲第7号証には、「施療子281」が「被施療者に対する進退移動の範囲を大きくする」ものと解すべき根拠は見出せない。

甲7発明の「被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71」は、本件訂正特許発明1の「第1の身体昇降手段」及び「第2の身体昇降手段」と「前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段」である点で一致するものの、あくまでもまでもマッサージするために被施療者の身体を押圧して昇降するものにすぎない。

甲7発明の「被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71とに挟まれた領域を含めて、被施療者における臀部の下方から大腿部に亘る領域を施療子281で施療する」は、本件訂正特許発明1の「当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」に相当するものの、甲7発明は、「施療子281」の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることなく、「マッサージ手段を座部に沿うよう移動させることにより、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」ものである。

以上によれば、本件訂正特許発明1と甲7発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療するマッサージ機。」

(相違点2)
本件訂正特許発明1では、「当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備える」とともに、「当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」のに対して、
甲7発明では、「施療子281」が、「当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段」といえるものの、「背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールに沿って移動可能に設け」られたものであって、「背もたれ部に備え」られたものではなく、
「被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71」が、「被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段」といえるものの、マッサージするために被施療者の身体を押圧して昇降するものであり、
「施療子281」(マッサージ手段)の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることなく、「施療子281を座部に沿うよう移動させることにより、被施療者の右臀部に空圧施療を施す空気袋71と当該被施療者の左臀部に空圧施療を施す空気袋71とに挟まれた領域を含めて、被施療者における臀部の下方から大腿部に亘る領域を施療子281で施療する」ものである点。

1-3.判断
(1)判断
甲第1号証には、甲1発明が記載されており、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-2.対比」における甲1発明についての検討内容を考慮すれば、甲1発明は、
「被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
被施療者の右臀部及び左臀部を押圧して施療者の右臀部及び左臀部を昇降させる身体昇降手段を備え、
強いマッサージを行うために、前記マッサージ手段の被施療者に対する前後方向への進退移動の範囲を大きくすることができ、
当該身体昇降手段により被施療者の身体を上昇させた状態で、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療するマッサージ機。」といえる。
甲1発明は、「強いマッサージを行うために、前記マッサージ手段の被施療者に対する前後方向への進退移動の範囲を大きくすることができ」、「当該身体昇降手段により被施療者の身体を上昇させた状態で、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療する」ものであるが、甲第1号証には、「身体昇降手段」(横長の臀部用エアバッグa3)により「マッサージ手段」(揉み玉5,6)を挿入する空間を確保することや、「身体昇降手段(横長の臀部用エアバッグa3)により被施療者の身体を上昇させた状態で」「マッサージ手段(揉み玉5,6)の被施療者に対する前後方向への進退移動の範囲を大きくする」ことは記載も示唆もされていない

そうすると、甲第7号証及び甲第1号証には、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲7発明及び甲1発明を総合し、相違点2に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けは存在せず、相違点2に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項は、甲第7号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者といえども容易に想到し得たものではない。
そして、本件訂正特許発明1により奏される効果が、当業者といえども甲第1号証?甲第7号証に記載された発明から予測し得ないものであることは、前記「II.無効理由1について 1.本件訂正特許発明1について 1-3.判断 (6)本件訂正特許発明1の効果について」において示したとおりであるから、本件訂正特許発明1により奏される効果が、甲第7号証及び甲第1号証に記載された発明から予測し得ないものであることは、明らかである。

(2)請求人の主張
請求人は、本件訂正特許発明1の無効理由4について、以下のように主張する。
甲第7号証には、「右臀部を空圧施療する空気袋71と左臀部を空圧施療する空気袋71とを所定の距離を空けて備え、ロングガイドレール24に沿って施療機28を移動させることで、空気袋71と空気袋71との間の領域を施療機28の施療子281で施療する技術」が既に開示されており、本件訂正特許発明1においては、マッサージ手段の具体的な進退移動構造やマッサージ手段が被施療者に対してどのように進退するのかが特定されていないため、甲第7号証発明のように「ロングガイドレール24に沿って施療機28を移動させる」ものであっても、「施療機28の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、空気袋71,71の間の領域を施療機28で施療する」ものなのである。
また、甲第1号証には、「臀部用エアバッグa3により使用者Mの臀部を持ち上げた状態で同臀部に対して揉み玉5、6による機械的マッサージを施すこと」が記載されており、上述した一般的な課題を抱いている状態で甲第7号証の記載に触れた当業者が、技術分野が同一でかつ施療対象箇所も同じ甲第1号証記載の発明に接したならば、甲第1号証に記載の構成を採用しようと試みるはずである。
しかも、無効理由1について主張したように、甲第7号証記載の発明は、本件発明及び甲第1号証記載の発明と共通の目的ないし課題を有するのであり、「臀部に対して揉み玉によるマッサージを十分に施す」という目的のもと、特定の施療対象箇所である「臀部」を効果的に施療すべく、共通の目的を有する甲第1号証に記載の構成を採用しようとすることは、当業者が普通に行うことである。
さらに、甲第7号証記載の発明と甲第1号証記載の発明とは、機械的マッサージとエアマッサージとの連動マッサージによって効率的なマッサージを行おうとする点でも共通するのであり、甲第7号証記載の発明に触れた当業者が、同じように連動マッサージによりマッサージ効果を高めようとする甲第1号証記載の発明に接したときに、その連動マッサージの制御形態の一つとして甲第1号証に記載された上記相違点に係る構成を採用しようとすることは、極めて容易に行われることである。
なお、本件訂正特許発明1の効果は、無効理由1について主張したように、甲第7号証及び甲第1号証記載のものから予測できる効果に過ぎない。(審判請求書30頁中段?31頁下段、弁駁書17頁下段?20頁上段、陳述要領書8頁下段?10頁中段)

請求人の上記主張について検討する。
本件訂正特許発明1においては、マッサージ手段の具体的な進退移動構造やマッサージ手段が被施療者に対してどのように進退するのかが特定されていなくても、「マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくする」との限度で特定されており、本件訂正特許発明1の「マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすること」は、通常の日本語の解釈からして、「マッサージ手段が被施療者に対して進退移動する範囲を大きくすること」を意味するといえる。
そして、甲7発明の「施療子281」は、「背凭れ部と座部に沿うよう湾曲部を介して一体的に形成したロングガイドレールに沿って移動可能に設け」られるとともに「座部に沿うよう移動」するものであって、被施療者に対して接近したり離れたりして、「被施療者に対する進退移動の範囲を大きくする」ものとはいえない。
また、請求人が、甲第7号証及び甲第1号証に記載された発明を組み合わせることの容易性の根拠として主張する上記事項を考慮しても、甲第7号証及び甲第1号証に、被施療者の臀部の下方と座部との間にマッサージ手段の進退移動の範囲を大きくするための空間を確保するという特定の意図をもって、甲7発明及び甲1発明を総合し、相違点2に係る本件訂正特許発明1の発明特定事項を導き出す動機付けが存在するとはいえない。
そして、本件訂正特許発明1により奏される効果が、当業者といえども甲7発明及び甲1発明から予測し得ないものであることは、上記のとおりである。

1-4.本件訂正特許発明1についてのまとめ
以上によれば、本件訂正特許発明1は、甲第7号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明1に係る特許についての無効理由4は理由がない。

2.本件訂正特許発明2?4について
本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
そして、甲第4号証及び甲第5号証は、本件訂正特許発明2,3で付加された発明特定事項に対応するものである(審判請求書31頁下段?32頁上段)から、本件訂正特許発明2?4は、本件訂正特許発明1について示した理由と同様の理由により、甲第7号証、甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件訂正特許発明2?4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、本件訂正特許発明2?4に係る特許についての無効理由4は理由がない。

第7 むすび
以上のとおり、一群の請求項についての本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
そして、本件訂正特許発明1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、また、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもなく、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件訂正特許発明1?4に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
マッサージ機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部及び背もたれ部を備えるマッサージ機に関し、特に、被施療者の臀部のマッサージを行うマッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術となるマッサージ機としては、特許文献1に示すものがある。この特許文献1に示す技術について図を用いて説明する。図14は、特許文献1に示す技術のマッサージ機の全体斜視図である。マッサージ機本体200は、被施療者Mが着する座部201と、座部201を支持する基台部202と、座部201の後側にリクライニング可能に連結した背もたれ部204と、座部の前側に上下方向へ揺動可能に連結した脚載部206とを備えており、座部201の両側には、肘掛部207、207が立設している。
【0003】
背もたれ部204の中央を通る縦軸上には、機械的マッサージを行う叩き機構と揉み機構を有するマッサージユニット400が埋設してあり、マッサージユニット400は背もたれ部204内にその両側縁から距離を隔てて互いに平行に縦設したガイドレールによって案内されて、昇降するようにしてある。マッサージユニット400には、被施療者Mの身体に背もたれ部204の表面部を介して当接してマッサージを行う揉み玉500、600を具備する揉み玉駆動ユニットが前後方向に揺動可能に配設してある。
【0004】
座部201には、該座部201の寸法より少し短い長さ寸法を有する横長の臀部用エアバッグa3及び腿部用エアバッグa4が、座部201の奥側から順に、互いに距離を隔てて埋設してある。これらの各エアバッグa1、a2、・・・は、基台部202内に格納した給排気部によって配置位置別に給排気されるようになっている。
【0005】
これにより、揉み玉による背中下方部の機械的マッサージと、座部に設けたエアバッグによる臀部の上下移動を伴うエアマッサージとを交互にまたは同時に行うことができる。また、臀部全体の上方の領域を後方から強くマッサージする動作と、臀部全体の下方の領域を下からソフトにマッサージする動作とを繰り返すため、筋肉の緊張がより緩和され、被施療者に対するマッサージ効果も向上するというものである。
【特許文献1】特開2005-13463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、背もたれ部204のガイドレールに沿って揉み玉500、600が上下動して臀部をマッサージする構成であることから、揉み玉500、600の移動が座部201の上面で制限されて、座部201に着座する被施療者の臀部全体の下方の領域を十分にマッサージすることができないという課題を有する。
【0007】
また、被施療者が臀部全体の領域近傍を揉み玉500、600により強くマッサージしたい場合に、被施療者の臀部全体の下方の領域に直接接触しているエアバッグa3が邪魔になり揉み玉500、600による強いマッサージを十分に受けることができないという課題を有する。
【0008】
さらに、座部201に設けたエアバッグa3により被施療者の臀部を上下動させるが、エアバッグにエアが給気された場合にエアバッグの上面が丸みをおびた状態になってしまうため、被施療者が不安定となり危険な場合がある。
【0009】
さらにまた、特許文献1では背中のマッサージと臀部のマッサージとを個別独立して別途に行われることから、背中から臀部にかけて揉み玉500、600による揉み、叩きのマッサージを一連に実行できないという課題を有する。
【0010】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、被施療者の臀部に対して揉み玉による揉みや叩きのマッサージを十分に施すことができるマッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1 臀部のマッサージ)
本発明に係るマッサージ機は、被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え、当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療することを特徴とする。
【0012】
このように、本発明においては被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と、被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段という2つの別々の昇降手段を所定の距離を空けて備え、第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体が上昇している状態で、第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段との間をマッサージ手段で施療するため、被施療者の臀部近傍を背もたれ部に備えられたマッサージ手段により効果的にマッサージすることができる。
【0013】
また、これまでは身体昇降手段とマッサージ手段の関連性がなく、個別独立にマッサージを行っていたが、身体昇降手段の昇降動作と背もたれ部に備えられたマッサージ手段を連動させることで、被施療者の臀部から腰部にかかる領域のマッサージを一連の動作でシームレスに施療することができる。
【0014】
なお、マッサージ手段が施療する第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段の間とは、第1の身体昇降手段と第2の身体昇降手段の間の領域のみではなく、被施療者における前後方向の領域も含む。
【0015】
(2 安定性)
本発明に係るマッサージ機は、前記第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段の外周における対向する内側を前記座部に支持されて固定され、外側を昇降させることを特徴とする。
このように、本発明においては第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段の外周における対向する内側を座部に支持されて固定され、外側を昇降させるため、被施療者の身体を上昇させる時に被施療者の臀部が、それぞれの昇降手段に収まるようにして上昇することで、被施療者の身体を安定させて安全に昇降することができる。
【0016】
また、第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段による上昇の動作を行う場合、被施療者の臀部を挟み込むようにして、被施療者の身体を上昇させるため、被施療者の臀部に対して第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段による外側から内側への施療を行うことができ、マッサージ手段によるマッサージと組み合わせることで複合的なマッサージを行うことができる。
【0017】
(3 大腿部の昇降手段)
本発明に係るマッサージ機は、前記被施療者の大腿部と接触して当該被施療者の大腿部を昇降させる大腿部昇降手段を備え、前記第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段と前記大腿部昇降手段が連係して当該被施療者の身体を昇降させることを特徴とする。
【0018】
このように、本発明においては被施療者の大腿部と接触して被施療者の大腿部を昇降させる大腿部昇降手段を備え、第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段と大腿部昇降手段がお互いに連係して動作することで被施療者の身体を昇降させるため、被施療者の状態に応じて安全に昇降させることができる。例えば、被施療者がマッサージ機から立ち上がる場合は、第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段を上昇させ、大腿部昇降手段は下降させる。そうすることで被施療者が前かがみの状態となり、マッサージ機から立ち上がりやすくなる。また、被施療者の臀部が後方に突き出た状態になり、被施療者の臀部とマッサージ手段が適切に当接した状態で十分なマッサージをすることができる。
【0019】
また、第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段を下降させ、大腿部昇降手段を上昇させた場合は、被施療者の重心が後方に移動することで、結果的に被施療者の臀部を後方にずらすことができる。そうすることで、被施療者の臀部を第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により上昇させやすくすることができる。
【0020】
さらに、第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段と大腿部昇降手段の両方を上昇させた場合は、被施療者はより安定的で且つ安全に身体を上昇させることができる。
なお、大腿部昇降手段のみを上昇させる場合には、被施療者にリクライニングを促すメッセージを表示するようにしてもよい。そうすることで、より確実に被施療者のマッサージを行うことができる。
【0021】
(4 エアバッグによる昇降)
本発明に係るマッサージ機は、前記身体昇降手段がエアバッグで形成され、当該エアバッグの給排気により被施療者を昇降させることを特徴とする。
このように、本発明においては身体昇降手段がエアバッグであるため、被施療者の臀部において身体昇降手段と接触している領域をエアバッグの押圧により施療することが可能となり、マッサージ効果を上げることができる。また、被施療者との接触箇所がエアバッグであるため、被施療者の触感もよく使い心地が良くなるという効果も有する。
また、それぞれの身体昇降手段の外周の対向する内側を座部に固定した場合は、エアの給排気により被施療者の臀部を施療することができ、マッサージ効果を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(本発明の第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機について、図に基づき説明する。図1は本実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図、図2は本実施形態に係るマッサージ機の側面断面図である。
【0023】
(1.マッサージ機全体の構成)
本実施形態におけるマッサージ機の基本的構成要素は、被施療者の背中を支持する背もたれ部2と、この背もたれ部2の下端と接し被施療者が着座した場合に被施療者の臀部を支持する座部1と、当該座部1を支持する基台部5と、基台部5に接合し被施療者の肘を支持する肘置部10と、座部1の先端下側に枢設され被施療者の足が載置される脚載部3と、背もたれ部2の内部に揉み玉93及び揉み玉93を動作させる揉み玉機構を有するメカユニット70とを備える構成である。
【0024】
(2.背もたれ部)
背もたれ部2は、リクライニングでき、被施療者との接触面の両端側にクッション材を配設し、着座して背もたれ部2にもたれると被施療者の背中が背もたれ部2の中心に位置するようになっている。背もたれ部2の正面側であって、両側縁近傍の位置にはそれぞれ左右に対をなす背中部用エアバッグa6及び腰部用エアバッグa7が、背中部及び腰部の高さ位置に応じて埋設してある。座部1と背もたれ部2は枢軸15を介して連結されており、リクライニングの際はこの枢軸15を中心に背もたれ部2を傾動させることで適度な角度でリクライニングを行う。リクライニング機能は、支持アーム16と背もたれ部2の下端近傍の間にリニア動作を行うリクライニングアクチュエータ17が架設されており、当該リクライニングアクチュエータ17の進退動作によって、前記背もたれ部2を、枢軸15を中心に傾動させることで実現される。リクライニングアクチュエータ17はリクライニング用モータ18から駆動力が与えられるようになっており与えられた駆動力によって進退動作を行う。また、前記枢軸15の近傍には背もたれ部2の傾動角度を検出するリクライニング角度検出センサ(図示しない)が配設されており、リクライニング角度の調整を行っている。
【0025】
(3.肘置部)
肘置部10は、座部1の両側に位置し基台部5と接合している。背もたれ部2がリクライニングすることで座部1が傾動した場合でも、被施療者の前腕を安定的に支持できるようにカーブを有して形成されている。
【0026】
(4.脚載部)
脚載部3は、座部1の前端側に位置している。脚載部3は、内部に2つの半円筒状の脚受11を互いに平行に設けて、脚受11の各両内側には、左右に対をなす脚上部用エアバッグa1及び脚下部用エアバッグa2が、それぞれ脚受11の中心軸の軸長方向へ所定の距離を隔てて配設してある。
【0027】
また、脚載部3は、被施療者の脚当接面方向に傾動することが可能となっている。脚載部3の傾動動作は、基台部5内に配設された前記支持アーム16と脚載部3の裏面との間に架設された、リニア動作するフットレストアクチュエータ19の進退動作によって、脚載部3を枢支連結部材(図示しない)の枢軸回りに傾動させて実現している。フットレストアクチュエータ19にはフットレスト駆動用モータ20から駆動力が与えられるようになっており、与えられた駆動力によってフットレストアクチュエータ19は進退動作をする。また、前記枢支連結部材(図示しない)の近傍に、脚載部3の傾動角度を検出するフットレスト角度検出センサ(図示しない)が配設してある。
【0028】
(5.メカユニット)
図3は本実施形態に係るメカユニットの各面図、図4は本実施形態に係る揉み玉ユニットの側面図である。
メカユニット70は、施療子である揉み玉93及び揉み玉93を動作させる揉み玉機構を有し傾動可能な傾動部と、この傾動部を傾動可能な状態で支持するメカユニットベースとからなる。このメカユニット70には揉み玉93に揉み動作を行わせるための揉みモータ91、叩き動作を行わせるための叩きモータ92、揉み玉93及び揉み玉機構を傾動させるための強弱モータ(進退モータ)98を配設している。このように揉み玉93だけが延出して施療を行うのではなく、揉み玉機構も併せて傾動し、突出した状態で揉み玉93による施療がなされるので、揉み玉93のみが延出するタイプのマッサージ機と比べより安定した状態で揉み玉93により施療できる。このメカユニットベースにはメカユニット70が昇降するための昇降軸82が配設され、この昇降軸82の両端にガイドローラ74、76がそれぞれ設けられている。メカユニットベースのガイドローラ74、76の上部位置にさらにガイドローラ73、75が設けられている。
【0029】
背もたれ部2内には背もたれ部2の上下方向に沿って形成されている1対のガイドレール71が配設されている。このガイドレール71にメカユニット70の左右2つずつ設けられたガイドローラ73、74、75、76を挿嵌し、ガイドローラ74、76に隣接して設けられるピニオンギア77、78を介してメカユニット70の右側組付台80aに配設された昇降モータ81からの運動が伝達され、昇降モータ81の駆動に応じてメカユニット70の昇降動作を実現している。
【0030】
昇降モータ81からの運動の伝達は、昇降モータ81の回転軸の先端に形成されたウォーム(図示しない)と、昇降軸82に装着したウォームホイール(図示しない)とが係合し、昇降モータ81が駆動することで回転軸(図示しない)が回転しウォームが回転し、係合するウォームホイールが回転することでピニオンギア77、78に回転力が伝達される。これらウォーム、ウォームホイール、回転軸は、ギアボックス83により被覆されている。昇降軸82はメカユニット70の下部に位置するように配設されている。昇降軸82は右側組付台80aの底部に配設されたギアボックス83(正確にはギアボックスが被覆する軸受)と、左側組付台80bの底部に配設された軸受84により回動可能に支持されている。右側組付台80aと左側組付台80bの底部は断面凹状の連結杆85により連結されている。右側組付台80aと左側組付台80bの上部も中空杆86が架設されている。中空杆86の両端にガイドローラ73、75が回動可能に取り付けられている。中空杆86自体は両端近傍部分をそれぞれ右側組付台80aと左側組付台80bに接合して固定されており回動しない。なお、連結杆85及び中空杆86は溶接により右側組付台80a及び左側組付台80bに接合している。
【0031】
揉み玉ユニット90は昇降軸82に装着され、昇降軸82を中心に回動可能になっている。揉み玉ユニット90は揉み玉モータ91、叩きモータ92からの運動を揉み玉93に伝達するための揉み玉機構と、叩き機構を有しており、この揉み玉機構及び叩き機構が揉み玉ユニット90のハウジング94に内設されている。このハウジング94の上部に昇降軸82を中心として所定半径距離95aとなる側面上辺を有するように曲折したラック95が所定間隔の4箇所のネジ留めにより取り付けられている。このラック95と係合するピニオンギア96が前記メカユニット70の上部に位置するように配設されている進退軸97に装着されている。また、進退軸97にはウォームホイール(図示しない)が装着されている。メカユニット70の左側組付台80bに配設された進退モータ98の回転軸(図示しない)の先端に形成されたウォーム(図示しない)とウォームホイールが係合している。これらウォームホイール、回転軸、ウォームはギアボックス99に内設されている。進退モータ98が回転することにより、回転軸及びウォームが回転し、係合するウォームホイールが回転する。このウォームホイールが回転することで、進退軸97が回転し、ピニオンギア96も係合するラック95に沿って回転し、揉み玉ユニット90が被施療者の背中方向に進退する。なお、進退軸97は右側組付台80aの上部に配設された軸受と、左側組付台80bの上部に配設されたギアボックス99(正確にはギアボックスが被覆する軸受)とにより回動可能に支持されている。
【0032】
(6.メカユニットによるマッサージ)
前記メカユニット70によるマッサージは、例えば、揉み玉モータ91を正回転させながらメカユニット70を上昇させていく揉み玉上げ、揉み玉モータ91逆回転させながらメカユニット70を下降させていく揉み玉下げ、叩きモータ92を正回転させる叩き、揉み玉下げながらたたくさざなみ、一箇所を押圧する指圧、強よりさらに強い位置での揉み玉上げである深揉み玉上げ、強よりさらに強い位置での揉み下げである深揉み玉下げ、弱よりもさらに弱い位置での揉み玉下げであるさすり、指圧したままローリングして下から上へほぐすストレッチ、背中全体をローリングする全体背筋のばし、狭い範囲を集中的にローリングする部分背筋のばし等のマッサージがある。
【0033】
(7.座部のエアバッグ)
前記座部1には、当該座部1の幅より少し短い長さを有する横長の腿部用エアバッグa4が配設されている。腿部用エアバッグa4の奥側には右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32が所定の距離を空けて併設されている。これらの各エアバッグは、基台部5内に格納された給排気部によってそれぞれ給排気されるようになっている。
【0034】
(8.各エアバッグの機能)
各エアバッグa1、a2、・・・は空気の給排気により伸縮したり、膨張、収縮することでそれぞれのエアバッグが配置された位置における体の各所を刺激してマッサージを行う。また、揉み玉によるマッサージと組み合わせることで、より効果的なマッサージを行うことができる。脚上部用エアバッグa1、及び脚下部用エアバッグa2にはエアによる直接的なマッサージ機能以外にも脚を固定する機能も有する。脚上部用エアバッグa1、及び脚下部用エアバッグa2は被施療者の脚を狭持することで脚を固定し、その状態で脚載部3を被施療者から離れる方向にスライドさせることで伸びによるストレッチ効果を得ることができる。また、脚載部3を下方に回動させることで同じように伸びによるストレッチ効果が得られる。
【0035】
また、腿部用エアバッグa4、右臀部用エアバッグa31、及び左臀部用エアバッグa32はエアによる直接的なマッサージ機能以外にも、被施療者の体を昇降させる機能を有する。被施療者の体を上昇させることで、通常ではメカユニット70の揉み玉93が届かないような被施療者の腰から臀部近傍にも揉み玉93によるマッサージを施すことができる。本実施形態に係るマッサージ機では、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32との間には所定の距離が空いており、被施療者の体を上昇させた際にはその距離に対応した空間を被施療者の腰から臀部の近傍に確保することができる。従って、従来は被施療者を支持するためのエアバッグが邪魔になってマッサージができなかった箇所にもマッサージを施すことができるようになる。
【0036】
(9.給排気部)
図5は、本実施形態に係るマッサージ機に設けた給排気部の構成を示すブロック図である。図中、118は各エアバッグa1、a2、・・・に給気するためのエアポンプである。エアポンプ118には、当該エアポンプ118から圧入される大気を一時的に貯留すると共に、各エアバッグa1、a2、・・・に分流する分流器119が連結してある。分流器119には、複数の吐気口が各エアバッグa1、a2、・・・に対応して設けてあり、各吐気口には当該吐気口の開口を開閉する電磁弁B1、B2、・・・がそれぞれ設けてある。この分流器119の各吐気口と、対応するエアバッグa1、a2、・・・とは耐圧ホースによってそれぞれ連結してある。そして、これらの電磁弁B1、B2、・・・の開閉動作を制御することによって所要のエアバッグa1、a2、・・・に対して給排気して、エアバッグa1、a2、・・・を膨張、収縮させる。これによって、被施療者に対してエアマッサージ及びその他の動作が行われる。
【0037】
(10.腰、臀部のマッサージ)
図6は腰部から臀部近傍に対してメカユニット70によるマッサージを図示した模式図である。図6(a)は被施療者の上方から見た場合の上面図であり、図6(b)は被施療者の後方から見た場合の背面図である。被施療者Mが座部1に着座した際、腿部用エアバッグa4は被施療者Mの大腿部の裏に当接している。また、右臀部用エアバッグa31は被施療者Mが着座した際に被施療者Mの右臀部、左臀部用エアバッグa32は被施療者Mが着座した際に被施療者Mの左臀部にそれぞれ当接している。そして、メカユニット70の揉み玉93は、揉み上げ、揉み下げ等のマッサージを行いながら被施療者Mの首から腰にかけて当接して揉み、叩きのマッサージを施す。しかしメカユニット70が昇降移動できる範囲には制限があるため、被施療者Mが座部1に着座した状態であれば、非施療者Mの腰部近傍まではマッサージできても、臀部まではマッサージをすることができない。そこで、それぞれの臀部用エアバッグに給気することにより被施療者の体を上昇させ、メカユニット70の揉み玉93が届く高さまで臀部の位置を移動させることで、臀部のマッサージを行う。
【0038】
図6(b)は右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気して膨張した場合の被施療者の背面図である。図示したように右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気することにより、被施療者Mの体はそれぞれのエアバッグの膨張に合わせて上昇する。被施療者Mの体が上昇したら被施療者Mの体と座部1との間に空間Sができる。この空間を利用することで被施療者Mの腰部及び臀部に対してメカユニット70によるマッサージを施すことができる。従来であれば右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32に分けずに一つの臀部用エアバッグとして被施療者Mの腰部及び臀部にマッサージを行っていたため、図の揉み玉93の位置には臀部用エアバッグが存在し、揉み玉93によるマッサージを十分に受けることができなったが、本実施形態に係るマッサージ機においては空間Sを確保しているため、被施療者Mの腰部及び臀部に対して揉み玉93によるマッサージを十分に行うことができる。またこの時、臀部の下方には空間Sがあり、揉み玉93の被施療者Mに対する進退移動の範囲を大きくすることで、臀部の下方の領域に対しても揉み玉93によるマッサージを行うことができる。
【0039】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るマッサージ機に関して、図を用いて説明する。
(1.臀部用エアバッグの固定)
図7は本実施形態に係るマッサージ機の座部の上断面図及び側断面図である。図7(a)は座部1の上断面図であり図7(b)は座部1の側断面図である。座部1の前側には腿部用エアバッグa4が備えられている。座部1の後側には右臀部用エアバッグa31(右臀部用エアバッグ下a311、右臀部用エアバッグ上a312)と左臀部用エアバッグa32(左臀部用エアバッグ下a321、左臀部用エアバッグ上a322)が所定の距離を空けて備えられる。右臀部用エアバッグ下a311と右臀部用エアバッグ上a312は重なるようにしてタッピングスクリュー132及びスピードナット130により座部1に固定されている。右臀部用エアバッグ下a311と右臀部用エアバッグ上a312も同様に重なるようにしてタッピングスクリュー132及びスピードナット130により座部1に固定されている。
【0040】
また、右臀部用エアバッグ下a311と右臀部用エアバッグ上a312は右臀部用エアバッグ給排気部136と接続しており、図5に示したようにエアポンプ118から送られてくるエアを給気及び排気している。同様に左臀部用エアバッグ給排気部136と腿部用エアバッグ給排気部140も図5に示したエアポンプ118から送られてくるエアを給排気している。
【0041】
なお、本実施形態においては右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32はそれぞれ2つのエアバッグa311、a322とa321、a322を備える構成としたが、2つ以上を用いてもよいし1つでもよい。
また、座部への固定方法に関しても、例えば軸を固定しその軸を中心に蝶番のようにエアバッグを回動さるようにする等、本実施形態に限定しない。
【0042】
(2.腰、臀部のマッサージ)
図8は本実施形態に係るマッサージ機により腰部から臀部近傍に対してメカユニット70によるマッサージを図示した模式図である。図6の場合と異なる点は図8(a)において、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32を被施療者Mの上方から見た場合の外周の内側方向の所定箇所を座部1に固定している点である。固定の仕方としては、それぞれのエアバッグの外周の内側をタッピングスクリュー132及びスピードナット130により座部1に支持されて固定されている。それぞれの臀部用エアバッグに給気することで被施療者Mの身体を上昇させることができるが、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32の外周の内側が固定されていることで、被施療者Mの臀部とエアバッグとの当接面が内側に傾斜しているため、従来に比べて被施療者Mの身体を安定して上昇させることができる。
【0043】
図8(b)は右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32に給気して膨張した場合の被施療者の背面図である。前記で示した通り、被施療者Mの臀部がそれぞれの臀部用エアバッグに収まることで被施療者Mの身体が安定している。そのため、被施療者Mがバランスを崩す危険が減り、安全性が向上する。
【0044】
また、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32の外周の所定箇所が固定されていない場合に比べて空間Sが広がっているため、より広範囲をメカユニット70によりマッサージを行うこともできる。
【0045】
さらに、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32が被施療者の臀部と接触する面が図8(b)に示すように逆ハの字型になっている。つまりこの状態でエアの給排気を行うことでエアによる外側から内側への施療を臀部に対して行うこともできる。また、メカユニット70によるマッサージを組み合わせることで複合的なマッサージを行うことができる。
【0046】
さらにまた、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32の外側から内側への施療とメカユニット70による後方からのマッサージを連動させて動作させることで、一連の動作でシームレスなマッサージを行うことができ、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32の給排気により被施療者の身体を上下動させることによりマッサージ手段のマッサージ箇所も一定にならず、広範囲を施療できるため、多様的で且つ効果的なマッサージを行うことができる。
【0047】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機に関して、図を用いて説明する。
(1.腿部用エアバッグとの連係)
図9は本実施形態に係るマッサージ機の座部に備えるエアバッグの動作を示した模式図である。図9(a)は本実施形態に係るマッサージ機の上断面図であり、座部1の後側(被施療者Mの背側)には右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32を備え、座部1の前側(被施療者Mの腹側)には腿部用エアバッグa4を備えている。
【0048】
図9(b)は本実施形態に係るマッサージ機の側断面図であり、腿部用エアバッグと臀部用エアバッグはいずれも給気されていない状態で被施療者Mがマッサージ機に座っている状態である。被施療者Mが腰部から臀部近傍に対してメカユニット70によるマッサージを行う場合は、まずは腿部用エアバッグa4を給気させ、臀部用エアバッグa31、a32には給気しない(図9(c))。その場合、被施療者Mの重心は自然に後方(被施療者Mの背側)に移動し、被施療者Mの臀部が背もたれ部2の方向にずれ、被施療者Mをマッサージに適した正しい姿勢に近づけることができる。したがって、その後臀部用エアバッグa31、a32に給気を開始した際に、被施療者Mの臀部の位置が適正化され、臀部を右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32により上昇させやすくすることができる。
【0049】
そして図9(d)に図示するように臀部のマッサージの際は臀部用エアバッグa31、a32のみ給気され、腿部用エアバッグa4に給気された空気は排気されるため、被施療者Mの臀部が後方に突き出た状態となり、背もたれ部2に備えられたメカユニット70により被施療者Mの臀部を効果的にマッサージできるという効果も有している。
【0050】
なお、被施療者Mがマッサージ機から立ち上がる場合も、臀部用エアバッグa31、a32を給気させ、腿部用エアバッグa4には給気しない。そうすることで被施療者Mの重心は自然に前方(被施療者Mの腹側)に移動し、楽に立ち上がることができる。
このように、臀部用エアバッグa31、a32及び腿部用エアバッグa4が連係することにより、被施療者Mの臀部に対して効果的なマッサージを施療することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
(1.リクライニングを利用した臀部のマッサージ)
図10は、本実施形態に係るマッサージ機をリクライニングした場合の模式図である。
前記のような被施療者Mの臀部に対するマッサージを効果的に行う場合、揉み玉93が被施療者Mの臀部に適切に当接することが必要となる。しかし、被施療者Mがマッサージ機に浅く腰掛けてしまうことがあり、そのような場合は揉み玉93が被施療者Mの臀部に適切に当接しないことも起こりうる。本実施形態に係るマッサージ機では被施療者Mの臀部に揉み玉93を適切の当接させるためにリクライニングを利用する。
【0052】
図10(a)はリクライニングに加えて腿部用エアバッグa4を給気した場合の図である。腿部用エアバッグa4の給気により、臀部用エアバッグa31、a32のみ給気した場合に比べて被施療者Mの重心が後方に移動することに加え、リクライニングにより被施療者Mの臀部が背側にずれてメカユニット70との距離を近接させることができる。従って、被施療者Mの臀部は、メカユニット70の揉み玉93に当接されやすくなり、十分に臀部のマッサージを行うことができる。
【0053】
そして上述の実施例と同様に臀部用エアバッグa31、a32に給気を開始した際に、被施療者Mの臀部を右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32により上昇させやすくすることができる。
【0054】
また、図10(b)に示すように座部1と背もたれ部2のなす角度θを維持したまま座部1と背もたれ部2が共に被施療者の後方向に傾動するようにリクライニングすることもできる。さらに、図10(c)に示すように座部1と背もたれ部2のなす角度θを大きくしながら被施療者の後方に倒れるように背もたれ部2を傾動する動作に合わせて座部1も被施療者の後方向に傾動するようにリクライニングすることもできる。いずれの方法においても被施療者Mの臀部とメカユニット70との間の距離を近づけることができ、腰部から臀部近傍に対して揉み玉93によるマッサージをより良好に行うことができる状態となる。
【0055】
なお、図10(b)、(c)のいずれの場合であっても、リクライニングに加え腿部用エアバッグa4を給気すれば被施療者Mの重心が更に後方に傾き、リクライニングにより被施療者Mの臀部が背側にずれて適正なマッサージ姿勢により近づけることが出来る。
【0056】
適正なマッサージ姿勢となれば上述の実施例と同様に臀部用エアバッグa31、a32に給気を開始した際に、被施療者Mの臀部を右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32により上昇させやすくすることができる。
【0057】
上記図10(a)、(b)、(c)に示した実施例においては臀部のマッサージにおける臀部用エアバッグa31、a32の給気に際し、腿部用エアバッグa4の給気のみならず背もたれ部2のリクライニング動作とも関連付けて、連係させている。
【0058】
なお、上記図9、図10に示すような腿部用エアバッグa4の連係が係わる実施例においてはメカユニット70による臀部のマッサージ開始時には腿部用エアバッグa4は排気状態となっているほうが被施療者Mの姿勢を前かがみにすることで臀部を突き出すことが出来、メカユニット70による臀部のマッサージが効果的になる。また、被施療者Mに対するマッサージ姿勢の適性化は前記腿部用エアバッグa4の給気やリクライニングによる方法以外に、被施療者Mに深く腰掛ける旨の通知を行うようにしてもよい。その場合は、リモートコントロールの画面に表示したり、音声により通知する等、被施療者Mが認識できる方法であれば何でもよい。
【0059】
(2.臀部用エアバッグの形状パターン)
図11は臀部用エアバッグの複数の形状パターンを示した模式図である。
図11(a)は右臀部用エアバッグ、左臀部用エアバッグ、及び腿部用エアバッグを一体化して腿臀部用エアバッグa8としたものである。この場合、前記のように右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32は座部1に固定されていない。この状態でエアバッグa8に給気を行うと、被施療者Mは姿勢を保ったまま上昇し、揉み玉93により被施療者Mの臀部の内側をメカユニット70によりマッサージすることができる。なお、腿臀部用エアバッグa8の形状はこれに限定しない。
【0060】
図11(b)は臀部用エアバッグa3と腿部用エアバッグa4にわかれているが、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32が一体化している。従って、構成要素は図14に示した従来技術と変わらないが、臀部用エアバッグa3の形状が異なる。ここでは、被施療者Mの臀部の内側と臀部用エアバッグa3が当接する箇所が凹んだ形状となっており、右臀部用エアバッグa31と左臀部用エアバッグa32が一体化しているとはいえ被施療者の臀部の内側に空間を確保することができ、臀部に対してメカユニット70によりマッサージすることができる。このように、臀部用エアバッグa3の形状は様々な形状を有することができる。なお、臀部用エアバッグa3の形状はこれに限定しない。
【0061】
図11(c)は第2の実施形態に係るマッサージ機と同じ構成要素だが、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32の形状が異なる。ここでは、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32の形状が矩形ではなく円形である。そして、この場合、それぞれのエアバッグを座部1に固定する際は図示したように点で固定することができる。従って、前記第2の実施形態で示した機能と全く同じ機能を実現することができる。なお、右臀部用エアバッグa31及び左臀部用エアバッグa32の形状はこれに限定せず、多角形等あらゆる形状を有することが可能である。
【0062】
(3.一連のマッサージ動作)
図13は本実施形態に係るマッサージ機の自動コースチャートである。
本実施形態に係るマッサージ機は前記にも示したように揉み上げや揉み下げ等の様々な種類のマッサージを行うことが可能である。また、メカユニット70とエアバッグa1、a2、・・・のマッサージを組み合わせることでより多くのマッサージを行うことができる。図13に示したチャートはその一例である。上段部はメカユニット70の動作を示し、下段部はエアバッグの動作を示す。縦方向はメカユニット70及び各エアバッグが動作する体の各所が被施療者Mの上方から下方に掛けて列記されており、横方向は時間軸を示す。横軸の1メモリは10秒である。
【0063】
図13において、例えば自動コースがスタートしてから40秒から50秒の10秒間はメカユニット70により被施療者の肩を中速で揉み下げ(2)は揉み下げを示す)をしながら脚上部、脚下部、足首部をエアバッグによりマッサージする。そして、順番に肩、首、肩、肩甲骨、背、腰とマッサージを行って、2分後には臀部のエアマッサージを行いながら、上記したように被施療者の身体を昇降させてメカユニット70により臀部のマッサージを行う。臀部のマッサージを終えると、再びメカユニット70は被施療者の上方に向かいながらマッサージを行う。
【0064】
このように、本実施形態に係るマッサージ機は座部1に配設された臀部用エアバッグa31、a32とメカユニット70の動作が深く関与していることにより、被施療者の背部から臀部までのマッサージを一連の動作でシームレスに行うことができる。従って、前記のように自動コースに組み込むことも可能となり、被施療者は効果的なマッサージを受けることができる。
【0065】
以上、本発明に係るマッサージ機では、従来はできなかった被施療者Mの臀部を揉み玉93により効果的にマッサージすることが可能となる。
なお、上記各実施形態ではエアバッグにより被施療者Mの身体を昇降させるようにしたが、エアバッグに限定せずに被施療者Mの体を昇降できるものであればよい。
【0066】
以上の前記各実施形態により本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は実施形態に記載の範囲には限定されず、これら各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能である。そして、かような変更又は改良を加えた実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。このことは、特許請求の範囲及び課題を解決する手段からも明らかなことである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の全体斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の側断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機のメカユニットの各面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の揉み玉ユニットの各面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の給排気部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るマッサージ機の腰部から臀部近傍のマッサージを図示した模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るマッサージ機の座部の上断面図及び側断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るマッサージ機の腰部から臀部近傍のマッサージを図示した模式図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るマッサージ機の座部に備えるエアバッグの動作を示した模式図である。
【図10】その他の実施形態に係るマッサージ機をリクライニングした場合の模式図である。
【図11】臀部用エアバッグの複数の形状パターンを示した模式図である。
【図12】本発明のその他の実施形態に係るマッサージ機の自動コースチャートである。
【図13】従来技術におけるマッサージ機の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
a1 脚上部用エアバッグ
a2 脚下部用エアバッグ
a3 臀部用エアバッグ
a31 右臀部用エアバッグ
a311 右臀部用エアバッグ上
a312 右臀部用エアバッグ下
a32 左臀部用エアバッグ
a321 左臀部用エアバッグ上
a322 左臀部用エアバッグ下
a4 腿部用エアバッグ
a6 背中部用エアバッグ
a7 腰部用エアバッグ
a8 腿臀部用エアバッグ
1 座部
2 背もたれ部
3 脚載部
5 基台部
10 肘置部
11 脚受
15 枢軸
16 支持アーム
17 リクライニングアクチュエータ
18 リクライニング用モータ
19 フットレストアクチュエータ
20 フットレスト駆動用モータ
70 メカユニット
71 ガイドレール
73 ガイドローラ
74 ガイドローラ
75 ガイドローラ
76 ガイドローラ
77 ピニオンギア
78 ピニオンギア
80a 右組付台
80b 左組付台
81 昇降モータ
82 昇降軸
83 ギアボックス
84 軸受
85 連結杆
86 中空杆
90 揉み玉ユニット
91 揉みモータ
92 叩きモータ
93 揉み玉
94 ハウジング
95 ラック
95a 所定半径距離
96 ピニオンギア
97 進退軸
98 進退モータ
99 ギアボックス
118 エアポンプ
119 分流器
130 スピードナット
132 タッピングスクリュー
136 右臀部用エアバッグ給排気部
140 腿部用エアバッグ給排気部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部と、当該座部に連接され当該被施療者の背中を支持する背もたれ部と、当該背もたれ部に当該被施療者の少なくとも背部をマッサージするマッサージ手段を備えるマッサージ機であって、
前記被施療者の右臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の右臀部を昇降させる第1の身体昇降手段と当該被施療者の左臀部を押圧して少なくとも当該被施療者の左臀部を昇降させる第2の身体昇降手段とを所定の距離を空けて備え、当該第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段により当該被施療者の身体を上昇させて前記マッサージ手段の被施療者に対する進退移動の範囲を大きくすることで、当該第1の身体昇降手段と当該第2の身体昇降手段との間の領域を、被施療者における前後方向の領域を含めて、被施療者における臀部の下方の領域をも前記マッサージ手段で施療することを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
請求項1に記載のマッサージ機において、
前記第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段の外周における対向する内側を前記座部に支持されて固定され、外側を昇降させることを特徴とするマッサージ機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマッサージ機において、
前記被施療者の大腿部と接触して当該被施療者の大腿部を昇降させる大腿部昇降手段を備え、前記第1の身体昇降手段及び第2の身体昇降手段と前記大腿部昇降手段が連係して当該被施療者の身体を昇降させることを特徴とするマッサージ機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のマッサージ機において、
前記身体昇降手段がエアバッグで形成され、当該エアバッグの給排気により被施療者を昇降させることを特徴とするマッサージ機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-02-06 
結審通知日 2013-02-08 
審決日 2013-02-20 
出願番号 特願2007-147319(P2007-147319)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (A61H)
P 1 113・ 121- YAA (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 関谷 一夫
高田 元樹
登録日 2011-12-09 
登録番号 特許第4879824号(P4879824)
発明の名称 マッサージ機  
代理人 金澤 美奈子  
代理人 辻本 希世士  
代理人 辻本 一義  
代理人 丸山 英之  
代理人 坂元 孝之  
代理人 辻本 一義  
代理人 濱野 孝  
代理人 辻本 一義  
代理人 辻本 希世士  
代理人 坂元 孝之  
代理人 辻本 良知  
代理人 辻本 良知  
代理人 辻本 希世士  
代理人 丸山 英之  
代理人 松田 裕史  
代理人 坂元 孝之  
代理人 丸山 英之  
代理人 松田 裕史  
代理人 松田 裕史  
代理人 金澤 美奈子  
代理人 沖中 仁  
代理人 辻本 良知  
代理人 金澤 美奈子  
代理人 藤川 義人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ