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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1287902
審判番号 不服2013-5140  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-18 
確定日 2014-05-14 
事件の表示 特願2010-520514「電気的回路装置及び電気的回路装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔2009年2月19日国際公開、WO2009/021786、平成22年12月2日国内公表、特表2010-537397〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年7月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年8月16日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月20日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月22日)、これに対し、平成25年3月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成25年3月18日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年3月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成24年6月28日付け手続補正)の請求項1に、

「【請求項1】
少なくとも1つの第1の回路デバイス(1)と少なくとも1つの第2の回路デバイス(3)を備え、
前記回路デバイス(1,3)が少なくとも1つのトランスファデバイス(2)の介在接続のもとで相互に電気的に接続され、
前記トランスファデバイス(2)は導電接着型接合部(32)を介して第1の回路デバイス(1)と導電的に接続され、さらに、
前記トランスファデバイス(2)は蝋付け接合部(29)を介して第2の回路デバイス(3)と導電的に接続されている電気的回路装置において、
前記第1の回路デバイス(1)は、第1の回路支持体技法で形成された少なくとも1つの第1の回路基板(5)を有し、
前記第2の回路デバイス(3)は、前記第1の回路支持体技法とは異なる第2の回路支持体技法で形成された少なくとも1つの第2の回路基板(17)を有し、さらに、
前記第1の回路デバイス(1)は、プリント基板を用いた技法か又はLTCC(Low Temperature Confired Ceramic)基板を用いたLTCC技法で形成され、
前記第2の回路デバイス(3)は、DCB(Direct Copper Bonded)基板を用いたDCB技法で形成されていることを特徴とする電気的回路装置。」
とあったものを、

「【請求項1】
少なくとも1つの第1の回路デバイス(1)と少なくとも1つの第2の回路デバイス(3)を備え、
前記回路デバイス(1,3)が少なくとも1つのトランスファデバイス(2)の介在接続のもとで相互に電気的に接続され、
前記トランスファデバイス(2)は導電接着型接合部(32)を介して第1の回路デバイス(1)と導電的に接続され、さらに、
前記トランスファデバイス(2)は蝋付け接合部(29)を介して第2の回路デバイス(3)と導電的に接続されている電気的回路装置において、
前記第1の回路デバイス(1)は、第1の回路支持体技法で形成された少なくとも1つの第1の回路基板(5)を有し、
前記第2の回路デバイス(3)は、前記第1の回路支持体技法とは異なる第2の回路支持体技法で形成された少なくとも1つの第2の回路基板(17)を有し、
ここで前記第1の回路デバイス(1)は、プリント基板を用いた技法か又はLTCC(Low Temperature Confired Ceramic)基板を用いたLTCC技法で形成され、前記第2の回路デバイス(3)は、DCB(Direct Copper Bonded)基板を用いたDCB技法で形成されており、さらに、
前記トランスファデバイス(2)は当該トランスファデバイスの上側(13)に第1の回路デバイス(1)との接続のための導電接着型接合部(32)を有し、さらに前記トランスファデバイスの下側(14)に第2の回路デバイス(2)との接続のための導電接着型接合部(32)及び/又は蝋付け接合部(29)を有していることを特徴とする電気的回路装置。」
と補正(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)するものである。

上記補正は、発明を特定するために必要な事項である「トランスファデバイス(2)」について「前記トランスファデバイス(2)は当該トランスファデバイスの上側(13)に第1の回路デバイス(1)との接続のための導電接着型接合部(32)を有し、さらに前記トランスファデバイスの下側(14)に第2の回路デバイス(2)との接続のための導電接着型接合部(32)及び/又は蝋付け接合部(29)を有している」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された実願平1-124257号(実開平3-63967号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、「混成集積回路」に関して、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「3.考案の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
この考案は、混成集積回路に関し、より具体的には、その集積度を向上させる手段に関する。
〔従来の技術〕
第2図は、従来の混成集積回路の一例を示す概略断面図である。
この混成集積回路は、表裏両面に所要パターンで電極3が形成されかつその所要の電極間が幾つかのスルーホール4を介して接続された構造の2枚の基板2a、2bを互いに重ね合わせ、かつこの2枚の基板2a、2bを先が二方向に分かれた何本かのリード端子6で挟み込みかつそれを基板2a、2bの表面の側辺部まで引き出された電極3に半田7によって半田付けした構造をしている。
各基板2a、2bの外側面には、IC、トランジスタ等の能動素子や抵抗、コンデンサ等の受動素子等から成る幾つかの電子部品5が搭載されている。
両基板2a、2b間の電気的接続は、全て上記リード端子6を経由して行われており、それによって全体として一つの回路が構成されている。」(第1頁15行?第2頁15行)

(2)「〔考案が解決しようとする課題〕
上記のような従来の混成集積回路は、リード端子6を経由してのみ両基板2a、2b間の電気的接続を行っており、そのため集積度が低いという問題がある。
これは、両基板2a、2b間の電気的接続を行うためには、そのための電極3をリード端子6と接続するために基板2a、2bの側辺部までわざわざ引き出して来なければならず、そのためのスぺースが必要になり、他の配線や電子部品搭載の自由度が制限されるからである。また、引出し途中で他の電極3とクロスする場合は、ジャンパーチップ等が余分に必要になる。
そこでこの考案は、上記のような点を改善して、集積度を従来例のものよりも向上させることができる混成集積回路を提供することを主たる目的とする。」(第2頁20行?第3頁16行)

(3)「〔実施例〕
第1図は、この考案の一実施例に係る混成集積回路を示す拡大断面図である。
この実施例の混成集積回路は、3枚の基板2a?2cを有している。各基板2a?2cは、例えばアルミナから成る。
各基板2a?2cは、それぞれ、その表裏両面に所要パターンの電極3が形成されており、かつその所要の電極間がスルーホール4を介して(より厳密に言えばスルーホール4内の電極を介して)接続されている。この電極3は、例えばCu、AgPd等から成る。
またこの例では、各基板2a?2c上の所要の電極3間にまたがるように抵抗膜8が形成されている。この抵抗膜8は、例えばRuO_(2)等から成る。
更にこの例では、上記電極3および抵抗膜8上を、後述するリード端子6の半田付け部および導電接着材料10による接着部を除外して、オーバーコート膜(グレーズ)9で覆っている。」(第4頁13行?第5頁12行)

(4)「上記各電極3、抵抗膜8およびオーバーコート膜9は、例えば厚膜印刷によって形成することができる。
基板2aおよび2cの後述するように重ね合わせたときに外側になる面には、IC、トランジスタ等の能動素子や抵抗、コンデンサ等の受動素子から成る幾つかのチップ型の電子部品5が搭載されている。
そして上記のような基板2a?2cを図示のように互いに重ね合わせ、向かい合う基板間をその相対向する所要の電極3の部分で導電接着材料10によって導電接着している。この導電接着材料10で導電接着する個所は、図示のように1個所ずつに限られるものではなく任意である。
上記のように導電接着する手段としては、例えば、(1)導電接着材料10として半田ペーストを用い、それを各基板2a?2cの所要個所に例えば印刷しておき、各基板2a?2cを重ね合わせた後に加熱処理して半田付けする手段、(2)導電接着材料10として導電ペーストを用い、それを各基板2a?2cの所要個所に例えば印刷しておき、各基板2a?2cを重ね合わせた後に加熱処理して硬化させる手段、(3)導電接着材料10として金(Au)電極材料を用い、それを各基板2a?2cの所要個所に例えば印刷しておき、各基板2a?2cを重ね合わせた後に各金電極材料間で溶着処理する手段、等が利用できる。」(第5頁13行?第6頁19行、(1)?(3)は丸付き数字を表す。)

(5)「また、従来例ではリード端子6でのみ基板2a、2b間の固定を行っていたが、上記構造によれば導電接着材料10による接着が併用できるので、各基板2a?2c間の固定が容易になる。」(第8頁8行?11行)

(6)「なお、各基板に設ける電極のパターン、スルーホールの数や位置、電子部品の種類や数、リード端子の数、抵抗膜やオーバーコート膜を設けるか否か、等は任意であり、また基板の表面で配線等が多層構造になっていても良い。
さらには、基板間の電気的接続は、上記実施例のようにリード端子6と導電接着材料10の両方でおこなわず、導電接着材料10のみでおこなうようにしてもよい。」(第9頁1行?9行)

(7)「〔考案の効果〕
以上のようにこの考案によれば、各基板間の電気的接続を、導電接着材料を用いて行っているので、基板間接続のための電極を基板の側辺部まで引き出す数を従来例に比べて減らすことができる。その結果、配線の自由度が向上すると共にスペース的にも余裕ができるので、従来例に比べて集積度を大幅に向上させることができる。
また、基板間の固定を導電接着材料による接着によりおこなうものであるので、各基板間の固定が容易になる。
更に、導電接着材料による電気的接続を用いているので、3枚以上の基板の重ね合わせも可能になる。」(第9頁18行?第10頁11行)

(8)基板2a、基板2aに形成される電極3、抵抗膜8、オーバーコート膜9、及び基板2aに搭載される電子部品5(以下「基板2aからなる回路部品」という。)と、基板2b、基板2bに形成される電極3、抵抗膜8、及びオーバーコート膜9(以下「基板2bからなる回路部品」という。)と、基板2c、基板2cに形成される電極3、抵抗膜8、オーバーコート膜9、及び基板2cに搭載される電子部品5(以下「基板2cからなる回路部品」という。)とは、上記(4)の「上記各電極3、抵抗膜8およびオーバーコート膜9は、例えば厚膜印刷によって形成することができる。」との記載、及び上記(6)の「基板の表面で配線等が多層構造になっていても良い。」との記載からみて、それぞれ、印刷を用いて形成された基板2a並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9と、印刷を用いて形成された基板2b並びに基板2bに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9と、印刷を用いて形成された基板2c並びに基板2cに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9とを有することが示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「基板2aからなる回路部品と基板2cからなる回路部品を備え、
前記基板2aからなる回路部品及び基板2cからなる回路部品が基板2bからなる回路部品を間に重ね合わせ、向かい合う基板からなる回路部品間をその相対向する電極3の部分で導電接着し、
前記基板2bからなる回路部品は導電接着材料10を介して基板2aからなる回路部品と導電接着し、さらに、
前記基板2bからなる回路部品は導電接着材料10を介して基板2cからなる回路部品と導電接着している混成集積回路において、
前記基板2aからなる回路部品は、印刷を用いて形成された基板2a並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を有し、
前記基板2cからなる回路部品は、印刷を用いて形成された基板2c並びに基板2cに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を有し、
ここで前記基板2aからなる回路部品は、前記印刷を用いて形成された基板2a並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を用いて形成され、また、前記基板2cからなる回路部品は、前記印刷を用いて形成された基板2c並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を用いて形成され、
さらに、
前記基板2bからなる回路部品は当該基板2bからなる回路部品の上側に基板2aからなる回路部品との接続のための導電接着材料10を有し、さらに前記基板2bからなる回路部品の下側に基板2cからなる回路部品との接続のための導電接着材料10を有している混成集積回路。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「基板2aからなる回路部品」が刊行物の第1図の上下関係からみて前者の「第1の回路デバイス(1)」に相当し、以下同様に、「基板2cからなる回路部品」が「第2の回路デバイス(3)」に、「基板2bからなる回路部品」は「トランスファデバイス(2)」に、「前記基板2aからなる回路部品及び基板2cからなる回路部品が基板2bからなる回路部品を間に重ね合わせ、向かい合う基板からなる回路部品間をその相対向する電極3の部分で導電接着し」は「前記回路デバイス(1,3)がトランスファデバイス(2)の介在接続のもとで相互に電気的に接続され」に、「前記基板2bからなる回路部品は導電接着材料10を介して基板2aからなる回路部品と導電接着し」は「前記トランスファデバイス(2)は導電接着型接合部(32)を介して第1の回路デバイス(1)と導電的に接続され」に、「混成集積回路」は「電気的回路装置」に、「印刷を用いて形成された基板2a並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9」は「第1の回路支持体技法で形成された第1の回路基板(5)」及び「プリント基板」に、「基板2c並びに基板2cに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9」は「第2の回路基板(17)」にそれぞれ相当する。

また、後者の「前記基板2bからなる回路部品は導電接着材料10を介して基板2cからなる回路部品と導電接着し」と前者の「前記トランスファデバイス(2)は蝋付け接合部(29)を介して第2の回路デバイス(3)と導電的に接続され」とは、「前記トランスファデバイスは導電接着接合部を介して第2の回路デバイスと導電的に接続され」という限りで共通し、後者の「前記基板2aからなる回路部品は、前記印刷を用いて形成された基板2a並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を用いて形成され、また、前記基板2cからなる回路部品は、前記印刷を用いて形成された基板2c並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を用いて形成され」と前者の「前記第1の回路デバイス(1)は、プリント基板を用いた技法か又はLTCC(Low Temperature Confired Ceramic)基板を用いたLTCC技法で形成され、前記第2の回路デバイス(3)は、DCB(Direct Copper Bonded)基板を用いたDCB技法で形成され」とは、「前記第1の回路デバイス(1)は、プリント基板を用いた技法で形成され」という限りで共通する。

したがって、両者は、
「第1の回路デバイスと第2の回路デバイスを備え、
前記回路デバイスがトランスファデバイスの介在接続のもとで相互に電気的に接続され、
前記トランスファデバイスは導電接着型接合部を介して第1の回路デバイスと導電的に接続され、さらに、
前記トランスファデバイスは導電接着接合部を介して第2の回路デバイスと導電的に接続されている電気的回路装置において、
前記第1の回路デバイスは、第1の回路支持体技法で形成された第1の回路基板を有し、
前記第2の回路デバイスは、第2の回路基板を有し、
ここで前記第1の回路デバイス(1)は、プリント基板を用いた技法で形成され、
さらに、
前記トランスファデバイスは当該トランスファデバイスの上側に第1の回路デバイスとの接続のための導電接着型接合部を有し、さらに前記トランスファデバイスの下側に第2の回路デバイスとの接続のための導電接着型接合部を有している電気的回路装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願補正発明は、第2の回路デバイス(3)が「前記第1の回路支持体技法とは異なる第2の回路支持体技法で形成された」第2の回路基板(17)を有し、ここで「前記第2の回路デバイス(3)は、DCB(Direct Copper Bonded)基板を用いたDCB技法で形成されて」いると共に、トランスファデバイス(2)が「蝋付け接合部(29)」を介して第2の回路デバイス(3)と導電的に接続され、前記トランスファデバイスの下側(14)に第2の回路デバイス(2)との接続のための「導電接着型接合部(32)及び/又は蝋付け接合部(29)」を有するのに対し、
引用発明は、基板2cからなる回路部品が印刷を用いて形成された基板2c並びに基板2cに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を有し、ここで前記基板2cからなる回路部品は、前記印刷を用いて形成された基板2c並びに基板2aに形成された電極3、抵抗膜8及びオーバーコート膜9を用いて形成され、また、基板2bからなる回路部品が導電接着材料10を介して基板2cからなる回路部品と導電接着し、さらに前記基板2bからなる回路部品の下側に基板2cからなる回路部品との接続のための導電接着材料10を有している点。

4 当審の判断
そこで、相違点を検討する。
刊行物には、基板2aからなる回路部品及び基板2cからなる回路部品に搭載される電子部品5について「基板2aおよび2cの・・・外側になる面には、IC、トランジスタ等の能動素子や抵抗、コンデンサ等の受動素子から成る幾つかのチップ型の電子部品5が搭載されている。」(前記2(4))と記載されており、この記載からみて、基板2aからなる回路部品及び基板2cからなる回路部品には、同種或いは異種の電子部品が適宜搭載されることが示されているといえる。

本願の優先権主張の日前の技術水準をみると、本願明細書の背景技術(段落【0003】)に記載される「制御エレクトロニクス系として構成された第1の回路デバイスと、パワーエレクトロニクス系として構成された第2の回路デバイスからなっている」回路装置は、周知技術(例えば、特許第2600516号公報の【従来の技術】の「図4に示すように、放熱用銅ベース板10の上に、絶縁層であるAl_(2)O_(3)13の両面に銅パターン12,14が形成されたDBC基板11が載置され、そのDBC基板11の表面の銅パターン14上にパワートランジスタ1UP,1UNが半田付け等により搭載されている。また、制御回路2UPを構成するICや抵抗,コンデンサ等の部品はプリント基板20上の銅パターン21に接続されて搭載されており、これらプリント基板20とDBC基板11とのパターン間の接続は継ぎ端子30にて結線されている。」(段落【0004】)との記載及び図4、特開平2-58364号公報の「パワートランジスタ素子と制御回路とを別々に分割されたセラミツクス基板上に搭載している」(第3頁左下欄2行?3行)との記載参照。)であり、また、パワーエレクトロニクス系として構成された回路デバイスをDCB基板から形成することも周知技術(例えば、前掲特許第2600516号公報の段落【0004】及び図4、特開平10-74864号公報の段落【0002】の「【従来の技術】DBC基板は・・・高速、大電力スイッチングモジュール用基板として用いられ、例えば図3に示した構造を有している。」との記載及び図3参照。)である。
ここで「DBC基板」はDirect Bonding Copper基板の略語であって、本願明細書の「プリント基板/基板5,12,17として例えばSTD基板、LTCC(Low Temperature Confired Ceramic)基板、DCB(Direct Copper Bonded)基板、従来のプリント基板などである。」(段落【0027】)との記載及び「各デバイス(第1の回路デバイス1,トランスファデバイス2,第2の回路デバイス3)がそれぞれの技術(従来のプリント基板、LTCC基板、DBC基板)で処理され」(段落【0031】)との記載からみて、「DCB基板」と「DBC基板」は単なる表記上の相違である。

そして、前記周知技術を知った当業者であれば、刊行物の前記示唆に基づいて、基板2aからなる回路部品を「制御エレクトロニクス系として構成された第1の回路デバイス」とし、基板2cからなる回路部品を「パワーエレクトロニクス系として構成された第2の回路デバイス」として用い、その際に、基板2cからなる回路部品をDCB基板から形成することは、容易に想到し得たことである。

そうすると、引用発明において、前記周知技術を適用して、「前記第1の回路支持体技法とは異なる第2の回路支持体技法で形成された」第2の回路基板(17)を有し、ここで「前記第2の回路デバイス(3)は、DCB(Direct Copper Bonded)基板を用いたDCB技法で形成され」るようにすることに格別の困難性はない。

また、前述のように、基板2cからなる回路部品を「パワーエレクトロニクス系として構成された第2の回路デバイス」として用いた場合、パワーエレクトロニクス系素子の発熱が著しいことは、技術常識(例えば、前掲特開平2-58364号公報の「パワートランジスタ素子は発熱が著しくそれを搭載するセラミックス基板、特にメタライズ層に繰返し過大な熱応力ないし熱歪が作用する」(第3頁左下欄4行?7行)との記載参照。)であるから、基板2cからなる回路部品を基板2bからなる回路部品に導電接着する導電接着材料10に適切な材料を用いることは、設計的事項であるところ、本願の優先権主張の日前に、パワーエレクトロニクス系素子を蝋付けによって基板に取り付けることが周知技術(例えば、特開平6-224575号公報の段落【0002】の「【従来の技術】パワー素子はプリント配線板としての基板上に取り付けられている。この場合パワー素子は冷却面に固定され,次いで基板にろう接される。」との記載、同段落【0008】の「基板15上には,図示していないが,従来の形式で電気素子が配置されている。基板15の外縁のところにはパワー素子17が例えばろう接によって取り付けられている。」との記載、特開平3-174762号公報の「夫々の基板(2A)(2B)上に形成された導電路(3)上にはパワートランジスタ、小信号用トランジスタ、IC,チップ抵抗、チップコンデンサ等の複数の回路素子(4)とアルミ電解コンデンサ等の大型(背の高い)の電子部品(13)が所望のろう材によって固着接続される。」(第5頁左下欄1行?6行)との記載参照。)であるから、パワーエレクトロニクス系素子の発熱に耐えるように、「導電接着材料10」として、刊行物1に記載された「半田付け」(前記2(4))に近接した接合技術である「蝋付け」を選択することは、当業者が容易になし得た設計変更である。

以上のとおりであるから、引用発明において、前記周知技術を適用して、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明、刊行物に記載された事項、及び前記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、平成25年9月9日付け回答書において「本願の現在の請求項1ないし5に、『前記第1の回路デバイス(1)は低電流回路デバイスとして構成され、前記第2の回路デバイス(3)は高電流回路デバイスとして構成され』との構成を加え、かつ『ここで前記第1の回路デバイス(1)は、LTCC(Low Temperature Confired Ceramic)基板を用いたLTCC技法で形成され、前記第2の回路デバイス(3)は、DCB(Direct Copper Bonded)基板を用いたDCB技法で形成されており、』との構成に限定して、現在の請求項1ないし5に係る本願発明を、下記補正案に示す通りさらに減縮する用意があります。」(「2.前置報告に鑑みた補正案」中「(2)本願発明と引用発明1乃至2との対比」の欄)として補正案を示しているが、本願の優先権主張の日前に、回路デバイスをLTCC基板として形成すること、及び制御エレクトロニクスが低電流であり、パワーエレクトロニクスが高電流であることは、それぞれ周知技術であるから、前記補正案のように減縮しても、上記判断に影響はない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成24年6月28日付けの手続補正書の請求項1ないし6に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明における「トランスファデバイス(2)」についての「前記トランスファデバイス(2)は当該トランスファデバイスの上側(13)に第1の回路デバイス(1)との接続のための導電接着型接合部(32)を有し、さらに前記トランスファデバイスの下側(14)に第2の回路デバイス(2)との接続のための導電接着型接合部(32)及び/又は蝋付け接合部(29)を有している」との限定を省くものである。

そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕3及び4」に記載したとおり、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-18 
結審通知日 2013-11-25 
審決日 2013-12-20 
出願番号 特願2010-520514(P2010-520514)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 島田 信一
冨岡 和人
発明の名称 電気的回路装置及び電気的回路装置の製造方法  
代理人 高橋 佳大  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  

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