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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1287982
審判番号 不服2013-5371  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-22 
確定日 2014-05-19 
事件の表示 特願2009-512101「照明装置、および、製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日国際公開、WO2007/139780、平成21年11月 5日国内公表、特表2009-538531〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本願は、2007年(平成19年)5月22日(パリ条約による優先権主張2006年5月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月6日付けで拒絶理由通知がなされ、この通知に対して、平成24年4月12日に手続補正がなされたが、平成24年11月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年3月22日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成25年3月22日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項9に係る発明は次のとおりのものである。

「照明装置を製造する方法であって、
反射要素にマウントされた固体発光素子に第1及び第2の電極を電気的に接続して、発光要素を形成する、電気的接続ステップと、
モールドキャビティにより画定される空間内に位置する領域に、前記発光要素を挿入する発光要素挿入ステップと、
前記空間の第1の部分に、少なくとも1つのシリコーン化合物からなる包囲体化合物を挿入する包囲体化合物挿入ステップと、
前記空間の第2の部分に、前記第1の電極の少なくとも一部分を実質的に取り囲むように支持領域形成化合物を挿入する支持領域化合物挿入ステップと
を含み、
前記包囲体化合物の外側表面の少なくとも一部分及び支持領域形成化合物の外側表面の少なくとも一部分は共に、包囲体-支持領域の結合された外側表面を画定しており、前記包囲体-支持領域の結合された外側表面と前記固体発光素子との間の空間がある状態、または空間がない状態で、包囲体-支持領域の結合された外側表面は前記固体発光素子の少なくとも95%を3次元で覆っている、
ことを特徴とする方法。」(以下「本願発明」という。)

なお、上記補正後の特許請求の範囲の請求項9の記載において、「少なくとも1つのシリコーン化合物からなる包囲体化合部」は、「少なくとも1つのシリコーン化合物からなる包囲体化合物」の誤記と認められるので、上記のとおり認定した(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

3 刊行物の記載

原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特表2004-524681号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある。

(1)「【請求項68】
放射線放出装置の製造方法において、
少なくとも1つの放射線エミッタをリードフレームに取り付け且つ電気的に結合してサブ組立体を形成する工程と、
前記サブ組立体を金型キャビティ内に挿入する工程と、
金型キャビティを第一の包封材料にて部分的に充填する工程と、
金型キャビティの残りの部分を第二の包封材料にて充填する工程と、
包封したサブ組立体を金型キャビティから除去する工程とを備える、放射線放出装置の製造方法。」

(2)「【0028】
このように、装置のパワーを減少させることを必要とせずに、内部の作動温度を低下させ、又は、これと代替的に、はんだ付けによる過渡的熱加工の損傷に対する装置の脆さを増すことなく、装置の熱抵抗を小さくすることにより装置のパワーを増しつつ、内部の作動温度を維持することは望ましいことであろう。」

(3)「【0041】
従来のLED装置の設計者が直面する更なる問題点は、LEDリードの1つをLEDチップに接続するために使用される線接合部が破断し、又はリード又はチップとの接触が失われる可能性がある点である。かかる故障は、例えば、包封体を通じ又は線接合部の周りの包封体の熱膨張/収縮を通じて線接合部に伝達されるせん断力に起因して生じる。
【0042】
上述した放射線エミッタのその他の形態は、また、過剰な作動温度に曝されたならば、性能の劣化、損傷、破損の可能性の増大又は劣化の加速も経験する。
従って、過剰な作動温度に起因する線接合の接点の破断又はその他の欠陥に起因する破損を受け難い一方にて、従来のLED装置よりも高放出出力の能力を有する放射線エミッタ装置を提供することが望ましい。
【0043】
更に、LED装置の製造のために使用される装置に対する改造の必要性が最小である一方にて、従来のLED装置に代えて本発明のLED装置を直ちに使用することを容易にし得るように、従来のLED装置と同一寸法及び形状を保持しつつ、従来のLED装置に優る改良された、放出出力を有する放射線エミッタ装置を提供することが望ましい。」

(4)「【発明が解決しようとする課題】
【0044】
従って、本発明の1つの目的は、上述した問題点を解決し且つ改良された性能並びに致命的な損傷を受け難い放射線エミッタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
……
【0046】
本発明による放射線放出装置の製造方法は、(1)少なくとも1つの放射線エミッタをリードフレームに取り付け且つ電気的に結合してサブ組立体を形成する工程と、(2)サブ組立体を金型キャビティ内に挿入する工程と、(3)金型キャビティの少なくとも一部分を第一の包封材料で充填する工程と、(4)金型キャビティの残りを第二の包封材料で充填する工程と、(5)包封したサブ組立体を金型キャビティから除去する工程とを備えている。
【0047】
その他の点にて従来通りである、広範囲に亙る離散的オプト-エレクトロニクスエミッタにおいて、本発明は、信頼し得るパッケージのパワー容量を顕著に増大させ且つパッケージの熱抵抗及びパッケージの易損性を新規な仕方にて顕著に減少させるものである。」

(5)「【0058】
図1乃至図3には、本発明の第一の実施の形態による構造とされた放射線エミッタ装置10が図示されている。図示するように、放射線エミッタ装置10は、包封材12と、第一及び第二の電気リード14、16と、放射線エミッタ35とを有している。包封材12はエミッタ35及び電気リード14、16の各々の一部分を包封する。電気リード14、16は、THD用途用の構造とされたとき、装置を自動的に挿入することを助け得るように提供される選択的なそれぞれのスタンドオフ18、20を有することができる。
【0059】
図3に最も良く図示するように、第一の電気リード14の上端は水平方向上方に伸び且つ反射性カップ36を画成し、放射線エミッタ35は該反射性カップ上に取り付けられることが好ましい。放射線エミッタ35の第一の接触端子を第一の電気リード14に電気的に接続することは、ダイ取付け部(図示せず)を通じて行うか又は線接合部又はその他のコネクタを介して行うことができる。装置10は、放射線エミッタ35の第二の接触端子を第二の電気リード16に電気的に結合する線接合部38又はその他の手段を更に有している。第一のリード14及び第二のリード16の上端はその隔たった関係により、また、包封材12が比較的大きい電気抵抗を有する材料で出来たものであることが好ましいことによって互いに電気的に絶縁されている。
……
【0062】
本発明の放射線エミッタ装置10の包封材12は、少なくとも2つの作用領域30、32を有し、該領域30、32の間に遷移領域31がある。2つの別個の作用領域30、32は、包封材の異なる部分は包封材のその他の部分と顕著に相違する作用を果たし、第一の領域30は、第二の領域32と少なくとも1つの相違する特徴を有し、該特定の領域によって行われる作用の実施を最適にすることができるという本発明者らの認識に基づいて提供される。例えば、第一の領域30は、放射線エミッタ35から放出された放射線の波長に対し少なくとも部分的に透過性である一方、第二の領域32はかかる波長に対し透過性である必要はない。このことは、本発明の放射線エミッタ装置が第二の領域内で高性能パワー半導体包封材及びトランスファー成形コンパウンドの格別な有利な点を活用することを可能にする。これらの特徴は、比較的小さい熱膨張係数、比較的大きい熱伝導率、比較的大きいTg、比較的大きい比熱、酸素気体又は水蒸気に対する比較的小さい透過率及び比較的大きい物理的強度特性を含むことができる。多数の高パワーの非光学エレクトロニクス装置をパッケージし又はポット成形するために使用されるコンパウンドは、これら多くの範疇での大きなマージン即ち余裕により、従来のオプトエレクトロニクスエミッタ用として従来から使用されているものよりも優れる。その相違点の主な理由の1つは、説明する高性能材料が通常、不透明な混合体であること、すなわち、離散的オプトエレクトロニクスエミッタ装置内で放出される放射線帯域に対して透明でないためである。これらの作用的に魅力的な材料の不透明性は、本来的にその有利な性質(例えば、性能を向上させる鉱物、金属及び金属酸化物フィラーのため)に関係しており、従って、これらの材料は、従来、その不透明性のため、オプトエレクトロニクス構成要素にて使用することは考えられていなかった。しかし、かかる材料の使用を透明さを必要としない包封材12の領域に制限することにより、本発明は、これら材料の特徴の全ての有利な点を享受するものである。
【0063】
包封材12の第一の領域30は、光学的性能を維持し得るよう実質的に透明な材料であることが好ましい。第一の領域30は、選択的に、部分的に拡散するものとすることができる。第一の領域30は、オプトエレクトロニクスエミッタ装置用に一般に使用される任意の従来の透明な包封材で出来たものとすることができる。レンズ12の第一の領域30は、放射線エミッタ35、ダイ取付け部(存在するならば)及び放射線エミッタ35に接続された任意の線接合部38の一部分を覆い、包封し、保護し且つ支持することが好ましい。
【0064】
包封材12の第一の領域30は2つ又はより多くの部分から成るものとし、最内側部分は、本発明の包封材を成形する第一の段階の前に放射線エミッタ35に予め施されたシリコーン又はシラスティックグローブトップ40とすることができる。この第一の領域30の最内側部分は、これと代替的に、高性能エポキシ、シリコーン、ウレタン又は光学的に半透明性又は透明なフィラー又は拡散材を含むその他のポリマー材料としてもよい。
【0065】
包封材12の第一の領域30は、放射線エミッタ35により放出された放射線に対して実質的に透明な光学エポキシ混合体を含む組成物から成るものであることが好ましい。しかし、その他の透明な材料を使用することもでき、材料は、放射線エミッタの主たる放出帯域外の帯域にて透明である必要はない。
【0066】
包封材12の第二の領域32は、該包封材12の該領域の作用を最適にする材料で出来たものであることが好ましい。上述したように、第二の領域12は透明である必要はない。しかし、領域32の特定的な作用は、全体として、導電性リード線14、16まで伝播する機械的応力による破局的破損、応力及び累積疲労を最小にすることである。透明である必要はないことからこの目的に一層良く適した材料を選ぶことができるのみならず、その材料はまた、より大きい引張り及び圧縮強度、粘着性及び(又は)凝集性を含む、より高強度の性質を備えることもできる。
【0067】
包封材12の第二の領域32が果たす別の作用は、さもなければ第二の領域32又はリード14、16と包封材12との間の境界面を通じて装置内に上方に伝播するであろう酸素、分子水蒸気又はその他の試薬に対する障壁として機能することである。このように、第二の領域32は、放射性エミッタ35、ダイ取付け部(存在するならば)、線接合部38、リードフレームめっきの包封材部分、存在するであろう任意のフォトルミネッセント材料を含むその他の装置の内部組成物を酸素、分子水蒸気及びその他の試薬から効果的に保護するものでなければならない。包封材12の第二の領域32は透明である必要はないから、第二の領域32は従来の透明な包封材内に存在するものと比べて改良された障壁特性を有する構造とすることができる。
【0068】
第二の領域32が第一の領域30とより顕著に相違する特徴の1つは、多分、改良された熱的特長を有する点であろう。装置のより低熱抵抗を実現するため、第二の領域32は、少なくとも電気リード14、16を取り巻く装置の臨界的な領域にて、また、放射線エミッタ35を支持するリードの部分(すなわち、存在するならば、反射性カップ36)に対する熱的接合部にて大きい熱伝導率を有することが好ましい。はんだ付け工程からの比較的大きい熱抵抗保護作用を維持するため、包封材12の第二の領域32の底部分は、スタンドオフ18、20(存在するならば)よりも、又はスタンドオフ部が存在しないならば、加工中に溶融はんだとほぼ接触しない状態に止まり得るように設計されたリード上の同等の点よりも、導電性リード線14、16のはんだ付け可能な部分又は端部の近くまで伸びることはない。
【0069】
包封材12の第二の領域32を大きい熱容量を有するように形成することにより、第二の領域32は加工又は作動の間、過渡的温度の急上昇を抑制する働きをするであろう。また、第二の領域32を低熱膨張係数を有するような形態とすることにより、装置内の熱膨張及び収縮に起因する破局的破損、応力及び累積疲労は最小となる。
【0070】
包封材12の第一及び第二の領域30、32に対して相違する作用特徴を実現するため、2つの領域は相違する物理的性質を有することができる。かかる物理的性質は構造的又は組成的とすることができる。かかる相違する構造的特徴は、第一及び第二の領域30、32に対し同一の全体的な組成物を使用するが、2つの領域内の粒子サイズ又はミクロ構造的配向状態を変化させることにより実現することができる。かかる構造的特長は、焼鈍し、放射線硬化又はその他の放射線処理によって領域を相違するように処理することで成形過程の間に修正することができる。更に、ミクロ構造的配向は、磁界を包封材12を形成する領域の1つ又は2つ以上に印加することにより、変化させることができる。
【0071】
第一及び第二の領域30、32を形成するため2つの異なる組成が利用される場合、本発明の1つの好ましい実施の形態を形成するため、本発明の方法に関して以下に更に詳細に説明するように、材料の組成は同一の金型内で成形するのに適合したものであることが好ましい。第一及び第二の領域30、32を一体に成形することにより、領域30、32の間の遷移部31に凝集接合部を形成することができる。かかる凝集接合部は、全体として包封材の強度を向上させ且つさもなければ存在するであろう領域30、32の間の全ての境界面を介して酸素、水蒸気又はその他の試薬が放射線エミッタ35に達するのを防止するために望まれる。更に、かかる凝集接合部は、外面との連続性を提供する。更に以下に説明するように、第一及び第二の領域30、32に対して使用される組成物は、遷移部31にて部分的に相互に混合することが望ましい。遷移部31は、包封材12のかなり狭小な断面とし、又は第一及び第二の領域30、32の組成を使用して組成勾配が形成されるならば、より広く且つより大きく形成することができる。」

(6)「【0073】
本発明の放射線放出装置の全体的な物理的構造に関して説明したが、かかる放射線エミッタ装置を製造する本発明の方法について以下に説明する。しかし、放射線エミッタ装置10は、その他の方法を使用して形成することも可能であることが理解されよう。
【0074】
図10には、本発明の方法に対する工程及び選択的な工程を示すフロー図が図示されている。装置組立体の色々な段階を示す図4乃至図9を同時に参照しつつ図10に関して説明する。本発明の方法の第一の工程100はリードフレームを準備することである。リードフレームの一例が図4に図示され且つ参照番号52で表示されている。リードフレームは、従来の任意の技術を使用して任意の従来の形態にて形成することができる。リードフレーム52は金属で出来ており且つ押抜きし且つ選択的に後めっきすることができる。リードフレーム52は、また、選択的な超音波又はその他の洗浄を行うこともできる。図4に図示するように、リードフレーム52は、複数の放射線エミッタ装置用の第一及び第二の導電性リード14、16を有している。リード14、16は、リード14、16に対しほぼ垂直に伸びる第一のタイバー54及び第二のタイバー56によって互いに保持されている。リードフレーム52は、リードフレーム52の両端にて第一及び第二のタイバー54、56の間を伸び且つ複数対のリード14、16間を伸びる垂直方向フレーム部材58を更に備えることができる。
【0075】
リードフレーム52は、また、第一の電気リード14の一端に支持体(好ましくは、反射性カップ36)を有する形状とされることも好ましい。反射性カップ36は、その反射率を向上させ得るように研磨し又はめっきすることができる。
【0076】
過程の次の工程(工程102)は、1つ又はより多くの放射線エミッタ35をリードフレーム52上の反射性カップ36の各々に取り付けることである。最も好ましい実施の形態において、放射線エミッタ35はLEDチップであり、LEDチップは導電性エポキシ取付け部又は共融接合部により、カップ36の各々の中/その上に又はリードフレームのその他支持構造体に、ダイ接合される。LEDチップは、使用されるならば、任意の従来のLEDチップ又は任意のLEDチップ或いはその後に開発されるその他の放射線エミッタとすることができる。この工程の一部として、取り付けエポキシは、真空圧により選択的にガス抜きし、次に硬化し/冷却させることができる。次に、この構造体に対し選択的に上記の工程の後、超音波及びその他の洗浄過程を加えることができる。
【0077】
最も好ましい実施の形態の場合、次に、放射線エミッタ35をボンドワイヤーにより線接合し、放射線エミッタ35に対する望ましい導電路を確立する(工程104)。次に、工程106において、選択的なりん光体、グローブトップ又はその他の光学的又は物理的調整剤を放射線エミッタ35上に堆積させる。かかる光学的又は物理的調整剤の1つ以上が使用可能であることは認識すべきである(例えば、りん光体を最初に施し、硬化させ/乾燥させ、その後、シリコーンのグローブトップを施すことができる)。この段階にて何れが施されるかを問わずに、通常、次に乾燥させ且つ硬化させる(工程108)。選択的に、かかる選択的光学又は物理的調整剤は、次の工程に進む前に真空圧によりガス抜きすることができる。
【0078】
次の工程(工程110)は、透明なエポキシを反射性カップ36内に選択的に施し、その後、選択的にガス抜き工程を行い、このガス抜き工程は真空圧により行うことができる。このように透明なエポキシを選択的に施すことは、その後の成形工程の間、反射性カップ内で且つその周りで泡が発生するのを防止するために行うことができる。施された透明なエポキシは、以下に説明する第一の成形段階の間に施されるものと同一の材料とすることができる。工程110の後、リードフレームサブ組立体50(図4)の製造が完了し、かかるサブ組立体は成形の準備が整う。
【0079】
このように、次の工程(工程112)はリードフレームサブ組立体50を反転させ且つリードフレームサブ組立体を金型60内に形成された包封金型キャビティ62内に挿入し且つ整合させることである。図5に図示するように、金型は、リードフレームサブ組立体50を受け取り且つ金型キャビティ62に対する適正な位置に整合させるため、複数のリードフレーム支持体64を有することが好ましい。図6には、かかる1つの金型キャビティ62の断面図が図示され、リードフレームサブ組立体50の相応する部分は反転され且つキャビティ62内に挿入されている。
【0080】
次の工程(114)は、包封の第一の段階を行い、これにより透明なエポキシレンズ材料が包封材金型キャビティ62内に分配されるようにする(好ましくは、射出法により)。精密な計測量供給又はフィードバッグを使用して、透明なエポキシを反転した反射性カップ36の縁まで又はその上方に充填し、或いは何らかの理由のため、装置内に反射性カップが存在しないならば、放射線エミッタ35の表面まで充填することが好ましい。例えば、図7を参照するとよい。次に、真空圧により透明なエポキシから泡を除去するため、選択的なガス抜き工程(工程116)が行われる。次に、透明なエポキシを前硬化させる工程(118)を選択的に行うことができる。この選択的な前硬化は、2つの主要な包封材料の自由な混合を最小にすべく硬化するのに十分ではあるが、何らかの混合を阻止する程に顕著ではないようにすることができる。遷移領域31内の多少の僅かな混合は均質な強度、凝縮性接合等にとって良好であると考えられる。
【0081】
次の工程(工程120)は、ベースエポキシが金型キャビティ62の残りの部分を充填し得るように金型キャビティ62内に分配される(射出法によることが好ましい)包封成形法の第一の段階を行うことである。装置本体の所定の底部又はスタンドオフ18、20(存在するならば)の頂部まで正確に充填するために、精密な計測量供給すなわちフィードバックが使用されることが好ましい。図8には、第2の段階の後の適宜に充填した金型キャビティ62が図示されている。
【0082】
工程120の後、工程122を選択的に行い、これにより、ベース包封材料が真空圧によってガス抜きされ、全ての気泡を除去する。
次に、工程124において、未だ完全に硬化していない、それ以前に所要位置にある全ての他の材料の残留物を硬化させると共に、ベース包封材料を硬化させる。次に、工程126において、ほぼ仕上がったリードフレーム構造体を金型60から突き出す。次に、選択的な硬化後工程128を行い、その後に、選択的な洗浄/バリ取り工程130を行うことができる。形成される構造体は図9に図示されている。
【0083】
次の工程は、単一化工程132であり、これにより、第2のタイバー56及び垂直方向リードフレーム部材58を仕上がった、リードフレーム組立体から切除し、第1のタイバー54を装置の各々について第一及び第二の電気リード14、16の間にて、且つ装置の各々の間にて、カットする。スタンドオフが望みでないならば、第一のタイバー54の全体を除去することができ、さもなければ、残るタイバー54の部分は、スタンドオフ18、20として作用することができる。」

(7)図4ないし図10は次のものである。



(8)上記(5)及び(6)を踏まえて、図8及び図9をみると、2つの包封材料からなる包封材が放射線エミッタの全体を内包しており、ベース包封材料が第一及び第二の導電性リードの放射線エミッタを取り付けた側の一部分を内包していることがみてとれる。

4 引用発明

上記3(特に(1)、(6)及び(8)によれば、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「少なくとも1つの放射線エミッタをリードフレームに取り付け且つ電気的に結合してサブ組立体を形成する工程と、
サブ組立体を金型キャビティ内に挿入する工程と、
金型キャビティを第一の包封材料にて部分的に充填する工程と、
金型キャビティの残りの部分を第二の包封材料にて充填する工程と、
包封したサブ組立体を金型キャビティから除去する工程とを備える、放射線放出装置の製造方法であって、
リードフレームは第一及び第二の導電性リードを有し、第一の電気リードの一端に反射性カップを有し、
放射線エミッタをリードフレーム上の反射性カップにダイ接合し、放射線エミッタをボンドワイヤーにより線接合して、放射線エミッタに対する導電路を確立し、
第一及び第二の包封材料からなる包封材が放射線エミッタの全体を内包しており、第二の包封材料が第一及び第二の導電性リードの放射線エミッタを取り付けた側の一部分を内包している、放射線放出装置の製造方法。」

5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「放射線放出装置の製造方法」は、本願発明の「照明装置を製造する方法」に相当する。

(2)引用発明は、「少なくとも1つの放射線エミッタをリードフレームに取り付け且つ電気的に結合してサブ組立体を形成する工程」において、「放射線エミッタ」を「第一及び第二の導電性リードを有」する「リードフレーム」の「第一の電気リードの一端に」設けられた「反射性カップにダイ接合し」、「ボンドワイヤーにより線接合して」、「導電路を確立」するから、引用発明の「放射線エミッタ」、「第一及び第二の導電性リード」、「反射性カップ」及び「サブ組立体」は、本願発明の「固体発光素子」、「第1及び第2の電極」、「反射要素」及び「発光要素」に相当し、引用発明は、本願発明の「反射要素にマウントされた固体発光素子に第1及び第2の電極を電気的に接続して、発光要素を形成する、電気的接続ステップ」との特定事項を備えている。

(3)引用発明の「金型キャビティ」は、本願発明の「モールドキャビティ」に相当し、引用発明の「サブ組立体を金型キャビティ内に挿入する工程」は、本願発明の「モールドキャビティにより画定される空間内に位置する領域に、前記発光要素を挿入する発光要素挿入ステップ」に相当する。

(4)引用発明の「第一の包封材料」と、本願発明の「シリコーン化合物からなる包囲体化合物」とは、「包囲体化合物」である点で共通し、引用発明の「金型キャビティを第一の包封材料にて部分的に充填する工程」と、本願発明の「前記空間の第1の部分に、少なくとも1つのシリコーン化合物からなる包囲体化合物を挿入する包囲体化合物挿入ステップ」とは、「前記空間の第1の部分に、包囲体化合物を挿入する包囲体化合物挿入ステップ」である点で共通する。

(5)引用発明の「第二の包封材料」は、「金型キャビティの残りの部分」に、「第一及び第二の導電性リードの放射線エミッタを取り付けた側の一部分を内包」するように「充填」されるので、引用発明の「第二の包封材料」は、本願発明の「支持領域形成化合物」に相当し、引用発明の「金型キャビティの残りの部分を第二の包封材料にて充填する工程」は、本願発明の「前記空間の第2の部分に、前記第1の電極の少なくとも一部分を実質的に取り囲むように支持領域形成化合物を挿入する支持領域化合物挿入ステップ」に相当する。

(6)引用発明は、「第一及び第二の包封材料からなる包封材が放射線エミッタの全体を内包して」いるから、引用発明の「第一及び第二の包封材料からなる包封材」は、本願発明の「包囲体-支持領域」に相当し、引用発明は、本願発明の「包囲体化合物の外側表面の少なくとも一部分及び支持領域形成化合物の外側表面の少なくとも一部分は共に、包囲体-支持領域の結合された外側表面を画定しており、前記包囲体-支持領域の結合された外側表面と前記固体発光素子との間の空間がある状態、または空間がない状態で、包囲体-支持領域の結合された外側表面は前記固体発光素子の少なくとも95%を3次元で覆っている」との特定事項を備えている。

以上によれば、両者は、

「照明装置を製造する方法であって、
反射要素にマウントされた固体発光素子に第1及び第2の電極を電気的に接続して、発光要素を形成する、電気的接続ステップと、
モールドキャビティにより画定される空間内に位置する領域に、前記発光要素を挿入する発光要素挿入ステップと、
前記空間の第1の部分に、包囲体化合物を挿入する包囲体化合物挿入ステップと、
前記空間の第2の部分に、前記第1の電極の少なくとも一部分を実質的に取り囲むように支持領域形成化合物を挿入する支持領域化合物挿入ステップと
を含み、
前記包囲体化合物の外側表面の少なくとも一部分及び支持領域形成化合物の外側表面の少なくとも一部分は共に、包囲体-支持領域の結合された外側表面を画定しており、前記包囲体-支持領域の結合された外側表面と前記固体発光素子との間の空間がある状態、または空間がない状態で、包囲体-支持領域の結合された外側表面は前記固体発光素子の少なくとも95%を3次元で覆っている、方法。」

で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

本願発明では、包囲体化合物が少なくとも1つのシリコーン化合物からなるのに対し、引用発明では、包囲体化合物の材料が特定されていない点(以下「相違点」という。)。

6 判断

(1)相違点について

ア 固体発光素子の封止体材料として、シリコーン化合物を用いることは周知の技術である(例えば、特開2002-314142号公報の段落【0035】には、封止体材料として、シリコーン樹脂を用いると、発光ピーク波長が400nm未満の短波長光に対しても十分な耐久性を有することが記載されている。また、特開2004-140220号公報の段落【0006】には、発光半導体チップをシリコーン樹脂によって封止したLEDが知られていることが記載されている。)。

イ そして、引用発明において、包囲体化合物の材料として何を用いるかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項というべきところ、上記周知のシリコーン化合物を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

(2)本願発明の効果について

本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

(3)審判請求書の主張について

審判請求書において、請求人は、引用文献には、シリコーン化合物からなる包囲体化合物は開示も示唆もされておらず、引用文献に記載の第一の包封材料をシリコーン化合物とする動機づけはない旨、並びに、引用文献には、包囲体化合物の外側表面及び支持領域形成化合物の外側表面は共に、包囲体-支持領域の結合された外側表面を画定しており、包囲体-支持領域の結合された外側表面は固体発光素子の少なくとも95%を3次元で覆っていることは開示も示唆もされていない旨主張するが、上記5及び6(1)のとおりであって、採用できない。

(4)回答書の主張について

回答書において、請求人は、本願発明を限定し、包囲体領域と支持領域は反射性要素の上側リップに隣接する面に沿って互いに突き合わさっているとの構成を追加する補正を提案しているが、引用文献の段落【0080】には、「透明なエポキシを反転した反射性カップ36の縁まで又はその上方に充填し」と記載されており、引用発明において、上記提案の構成を採用することは当業者が適宜なし得ることである。

7 むすび

したがって、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-25 
結審通知日 2013-12-26 
審決日 2014-01-07 
出願番号 特願2009-512101(P2009-512101)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芝沼 隆太  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 服部 秀男
畑井 順一
発明の名称 照明装置、および、製造方法  
代理人 星野 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 大牧 綾子  

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