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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1287987
審判番号 不服2012-10603  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-07 
確定日 2014-05-21 
事件の表示 特願2007-522050「共焦点蛍光顕微鏡法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月26日国際公開、WO2006/008637、平成20年 3月13日国内公表、特表2008-507719〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 手続の経緯
本願は、平成17年7月19日(優先権主張2004年7月23日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成24年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年10月4日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成25年4月9日に回答書が提出された。
さらに、同年5月15日及び6月5日に、当審の合議体により求釈明がなされ、それに対して、それぞれ同年5月31日及び6月7日にファクシミリによる釈明が行われた。
その後、同年6月18日付けで、当審による拒絶理由の通知がなされ、これに対して、同年11月25日に、意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年11月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「共焦点蛍光顕微鏡用の装置であって、当該装置が、
標的上の照射領域に励起光を与える1以上の光源と、
標的からの蛍光発光を検出する1以上の検出器と
を備えており、
上記1以上の光源が、標的の直線部分を照射する線形成手段を含んでおり、
上記1以上の検出器が、蛍光発光のランダムアクセス読出しが可能であって、二次元画素の独立したリセット及び読出しが可能な1以上の二次元画素ベース受光器を備えており、上記1以上の検出器の検出領域が標的の直線部分の照射領域と光学的に共役しているとともに照射領域の走査と同期して移動し、上記検出器がローリングシャッタ手段を備えたCMOS検出器であって、該ローリングシャッタ手段が標的上の直線の像の幅以下の幅を有しているとともに、標的上の直線と光学的に共役している、装置。」

第3 引用刊行物
1.原査定及び当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第2004/038461号(以下「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
なお、以下の記載は、引用例1のファミリー文献である特表2006-504140号公報のものを援用した。
(1a)1頁15?17行
「発明の分野
本発明は、一般的には共焦点の顕微鏡使用法に関する。さらに詳しくは、本発明は、共焦点顕微鏡の走査速度性能を向上させることに関する。」
(1b)1頁24?31行
「共焦点顕微鏡の主な制限は画像取得速度である。というのは、すべての画像が点ごとに再構成されるからである。典型的な商業的システムは、点照明の位置決めをするために比較的ゆっくりとしたガルバノメータ駆動ミラーに依存しており、ほぼ1Hzのフレームレートを有する。いくつかの照明点を走査する最速のシステムであっても、ほぼ200Hzで記録できるにすぎない。よりゆっくりとしたシステムをより高速な記録のために用いる1つの方法は、単一ライン上のピクセルからデータを収集することによる以外にないが、このライン走査技術でさえ、興味領域を選定する上での自由度を犠牲にして、ほぼ400Hzの有効フレームレートまで高めるにすぎない。」
(1c)2頁3?13行
「音響光学偏光器(AOD)の使用により、点照明が位置決めされる速度を増加させることができ、ユーザによって選択された興味領域におけるランダムアクセス走査が可能となる。しかし、AODの使用は、試料から戻ってくる光の経路を必要とする。その光の経路は照明の経路とは異なるので固定ピンホールを用いることができない。また、これは、走査励起点(scanning excitation spot)と空間的かつ時間的に同期するピンホール又はフィルタを必要とする。AODを利用する既存のシステムは存在するが、そのようなシステムは照明点を1つの次元において別の位置に移すAODを利用するのみである。第2の次元における照明点の偏向は、例えば代表的な共焦点顕微鏡に用いられているような比較的ゆっくりとしたガルバノメータ駆動ミラーを伴う。さらに、AODを利用する既存のシステムは、AODが照明点を偏向させる方向においてピンホールではなくスリットを用いるため、真の共焦点画像化が妨げられる。」
(1d)2頁14?17行
「したがって、各興味領域における滞留時間を減らすことなしに、高速度現象観測のための高い走査速度及び記録速度によって興味領域を選択する柔軟性を許容する共焦点顕微鏡が必要とされている。さらに、正確な領域選択を可能とするために、かかるシステムはフルフレームの共焦点画像を収集できる必要がある。」
(1e)2頁21行?3頁20行
「好ましい実施例においては、本発明はランダムアクセス共焦点顕微鏡を有する。かかる装置は、多くの領域を走査する時間を要することなく試料の選択された興味領域のみを走査し、興味領域からの結果のみを用いるために必要である。より高速なサンプリング速度を達成するためには、選択された興味領域のみを走査することが好ましい。また、選択された興味領域のみを走査することによって、各領域における滞留時間は、所定のフレームレートに対しては全領域を走査する必要のあるシステムと比べて一層長くなる。さらに、かかる高速度走査は所定の現象を観測するために必要となる。かかる現象の1つの例は、神経細胞の信号の処理及び伝達であるが、本発明は、その上、高速度現象を含むその他の分野において有効な用途を有している。
本発明に係る顕微鏡は、光源、高速度光偏向器、中央処理装置(CPU)、及びアドレス可能空間フィルタを有する。光源は、例えば顕微鏡のために使用される、例えばレーザのような平行光源である。高速度光偏向器は、好ましくは、音響光学偏向器(acousto-optic deflector(AOD))であるが、例えばテキサス・インスツルメンツ社のデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)のような、空間光変調器を用いてもよい。AODによって、光源の、より高い比率の光が興味領域に向けられるようになり、好ましい。AODはCPUに接続され、CPUによって光源からの光ビームがどこに向けられるのかが決定される。CPUは、高速度光偏向器及びアドレス可能空間フィルタに制御信号を送信可能な任意の従来のプロセッサでよい。アドレス可能空間フィルタはCPUによって制御され、高速度光偏向器と同期して興味領域を同時に照明及び検出可能とする。
アドレス可能空間フィルタは、点興味領域のランダムアクセス検出が可能な様々な配置を有する。領域は、試料のフルフレーム共焦点画像を見た後にユーザによって特定される。アドレス可能空間フィルタは、従来の共焦点顕微鏡に通常用いられているような、物理的なピンホールに限られない。1つの実施例では、アドレス可能空間フィルタはDMD及び(例えば光ダイオード又は光電子増倍管のような)別個の光検出器からなる。第2の実施例では、アドレス可能空間フィルタは、相補型金属酸化物半導体(CMOS)カメラからなる。DMDは、個別に動作可能な微細ミラーのアレイを与え、興味領域の位置に対応するミラーのみの動作を可能とする。これらのミラーの動作は、焦点面内の興味領域から光検出器への光の戻り蛍光、反射、又は伝達の方向を与える。その代わりに、CMOSカメラは、興味領域に対応する指定ピクセルのみを読み取ることもできる。さらに、CMOSカメラは、例えばCCDカメラのような従来の画像化システムの時間遅延なしに、個別のピクセルを読み出すことが可能である。DMD及びCMOSいずれの実施例のカメラも、すべての興味領域を1kHz以上で高速度ランダムアクセス画像化することが可能である。」
(1f)3頁26?28行
「前記方法は、複数の興味領域を順次選択して照明することをさらに有する。前記方法は、500Hz毎フレーム以上の周波数で前記ステップを繰り返すことを、なおもさらに有する。」
(1g)6頁1?19行
「本発明の第2の実施例は図2に概略的に示されている。図2に示されているランダムアクセス高速度共焦点顕微鏡7は、図1において用いられていたDMD60及び光検出器70の代わりに相補型金属酸化物半導体(CMOS)カメラ80を利用する。図2において、レーザ10は光ビーム15を放射する。光ビーム15はAOD20によって即座に方向を変えられる。光ビーム15の新たな位置は、光ビーム16として図2に示されている。光ビーム16はビームスプリッタ50によって、試料30上に光ビーム17として反射される。試料30上の興味領域35からの光ビーム25は、ビームスプリッタ50を通過して、CMOSカメラ80に向かう。第1の実施例のように、中央処理装置(CPU)40がAOD20に接続され、電子信号41を送信し、レーザ10からの光ビーム15がどこに向けられるのかを制御する。アドレス可能空間フィルタとして機能するCMOSカメラ80また、CPU40に接続される。CMOSカメラ80はAOD20と同期されて、試料30上の興味領域35の同時照明及び検出が可能となる。試料30からの光ビーム25は、複数のピクセル85、86、及び88よりなるCMOSカメラ80によって受信される。CMOSカメラ80によって、従来の画像化システムの時間遅延なしに、個別のピクセル読み出しが可能となる。CPU40は電子信号47をCMOSカメラ80に送信して、興味領域35に対応するピクセルのみを読み取る。したがって、興味領域35からの光ビーム25に対応するピクセル85のみが、CPU40によって読み取られる。非興味の領域36及び38からの光ビーム26及び28に対応したピクセル86及び88は、CMOSカメラ80によって無視される。興味領域35に対応するピクセル85のみが、CMOSカメラ80によって読み取られるため、試料30が走査される速度は増加する。」

上記各記載事項を含む引用例1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「ランダムアクセス高速度共焦点顕微鏡(7)に用いる装置であって、
レーザ(10)は光ビーム(15)を放射し、光ビームはAOD(20)によって方向を変えられ試料(30)上に反射され、
試料上の興味領域(35)からの戻り蛍光(25)はビームスプリッタ(50)を通過してCMOSカメラ(80)に向かい、
中央処理装置(CPU)(40)がAODに接続され、電子信号(41)を送信しレーザからの光ビームがどこに向けられるのかを制御し、アドレス可能空間フィルタとして機能するCMOSカメラもCPUに接続され、CMOSカメラはAODと同期されて試料上の興味領域の同時照明及び検出が可能となっており、
試料からの戻り蛍光はCMOSカメラ80によって受信され、CMOSカメラによって画像化システムの時間遅延なしに個別のピクセル読み出しが可能となる、装置。」(以下「引用発明」という。)

第4 当審の判断
1.対比
本願発明と、引用発明を対比する。
(1)引用発明の「ランダムアクセス高速度共焦点顕微鏡」、「試料」、「興味領域」、「レーザ」、「光ビーム」、「戻り蛍光」及び「CMOSカメラ」は、それぞれ本願発明の「共焦点蛍光顕微鏡」、「標的」、「照射領域」、「光源」、「励起光」、「標的からの蛍光発光」及び「CMOS検出器」に相当する。
(2)当業者の技術常識に照られば、引用発明の「CMOSカメラ」と本願発明の「CMOS検出器」は、ともに「検出器が、蛍光発光のランダムアクセス読出しが可能であって、二次元画素の独立したリセット及び読出しが可能な二次元画素ベース受光器を備えており、上記検出器の検出領域が標的の照射領域と光学的に共役しているとともに照射領域の走査と同期して移動するCMOS検出器」である点で共通する。

したがって、両者は、
「共焦点蛍光顕微鏡用の装置であって、当該装置が、
標的上の照射領域に励起光を与える1以上の光源と、
標的からの蛍光発光を検出する1以上の検出器と
を備えており、
1以上の検出器が、蛍光発光のランダムアクセス読出しが可能であって、二次元画素の独立したリセット及び読出しが可能な1以上の二次元画素ベース受光器を備えており、上記1以上の検出器の検出領域が標的の照射領域と光学的に共役しているとともに照射領域の走査と同期して移動するCMOS検出器である、装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
光源が、本願発明では、標的の「直線部分を照射する線形成手段を含んで」いるのに対して、引用発明はどのような構成を有しているか不明な点。
(相違点2)
CMOS検出器が、本願発明では「ローリングシャッタ手段を備え、該ローリングシャッタ手段が標的上の直線の像の幅以下の幅を有しているとともに、標的上の直線と光学的に共役している」のに対して、引用発明はそのような構成を有しているかどうか不明な点。

2.判断
上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
共焦点蛍光顕微鏡において、光源を「直線部分を照射する線形成手段を含んだもの」とすることにより、線共焦点顕微鏡として構成することは、本願の優先日時点でごく普通に行われている周知技術(本願明細書の段落【0007】、【0015】や特開2004-199063号公報、特開2000-56244号公報参照)であって、しかも、線走査と点走査が速度と自由度においてトレードオフの関係にあることは従来から当業者によく知られており(上記摘記事項(1b)、(1d)及び上記周知技術を示す文献参照)、そのどちらを採用するかは、装置の用途や要求される性能、並びにコスト等の種々の要素を総合的に勘案することによって、当業者が適宜選択し得るものである。
そして、引用発明の装置に当該周知技術を適用し、線共焦点顕微鏡として構成することに格別の技術的困難性も阻害要因もない。
してみると、引用発明に上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
この点について、請求人は意見書で「引用発明が線走査方式を採用する余地はない」旨主張するが、引用発明においては、種々の要素を総合的に勘案した結果点走査を採用しているということであって、上記のとおり、引用発明に線走査方式を採用することに格別の技術的困難性はないのであるから、当業者が引用発明に線走査方式を採用できないということにはならない。
したがって、請求人の上記主張には理由がない。
(相違点2について)
CMOS検出器に、フィルムカメラにおけるフォーカルプレーンシャッタと同様に作用する電子的フォーカルプレーンシャッタともいえるローリングシャッタを付加することは、本願の優先日時点で当業者が適宜行っていた事項である。
したがって、引用発明のCMOS検出器に当該ローリングシャッタを付加することは、その必要に応じて、当業者が適宜採用しうる事項である。
その場合、該ローリングシャッタが標的上の直線と光学的に共役していることは、共焦点蛍光顕微鏡の原理に照らせば、当業者にとって自明の事項である。
また、ローリングシシャッタがフィルムカメラにおけるフォーカルプレーンシャッタと同様に作用するものであることに照らせば、該ローリングシャッタが標的上の直線の像の幅以下の幅を有しているように構成することは、当業者が当然考慮すべき事項である。
してみると、引用発明に上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測しうる範囲にものであって、格別なものではない。

3.結論
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-13 
結審通知日 2013-12-17 
審決日 2014-01-06 
出願番号 特願2007-522050(P2007-522050)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
吉野 公夫
発明の名称 共焦点蛍光顕微鏡法及び装置  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
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