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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1288066
審判番号 不服2012-6208  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-06 
確定日 2014-05-21 
事件の表示 特願2009-514562「ユニバーサルモバイル印刷エージェント」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月21日国際公開、WO2007/146858、平成22年 4月30日国内公表、特表2010-513995〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年6月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成18年6月9日、アメリカ合衆国;平成18年8月17日、アメリカ合衆国;平成19年6月8日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年11月30日付けで拒絶査定がなされ、平成24年4月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において平成25年5月7日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成25年10月11日付けの手続補正書により補正された請求項1の記載等からみて、次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
モバイルデバイスのための印刷出力を提供する方法であって、
前記モバイルデバイスからの印刷出力を初期化すること、
選択された出力デバイスはローカルか又はリモートかを決定すること、ここにおいて、前記ローカル出力デバイスは、前記モバイルデバイスと直接通信するデバイスであり、前記リモート出力デバイスは、中間デバイスを用いて前記モバイルデバイスと通信するデバイスである
前記モバイルデバイスから前記選択された出力デバイスへの接続は有線として又は無線として確立されるかを決定すること、ここにおいて、前記選択された出力デバイスへの接続は前記モバイルデバイスの決定されたロケーションで利用可能である、
前記接続によって、前記モバイルデバイス内に格納された少なくとも1つの画像を前記選択された出力デバイスに伝達すること、及び
前記選択された出力デバイスに基づいてホスト・デバイスとして又はクライアント・デバイスとして動作するかどうかを決定すること、
を備える方法。」

なお、平成25年10月11日付けの手続補正の請求項1には「前記決定されたロケーション」という記載があるが、当該記載以前には「決定されたロケーション」という記載がないこと、当該記載中の「前記」の有無にかかわらず当該記載が「モバイルデバイスの決定されたロケーション」を表しており、それ以外のものを表さないことは明らかであること、を考慮し、上記「前記決定されたロケーション」は「決定されたロケーション」の誤記と認め、本願発明を上記のとおりに認定した。

また、本願発明の「ここにおいて、前記選択された出力デバイスへの接続は前記モバイルデバイスの決定されたロケーションで利用可能である」という発明特定事項(以下、「発明特定事項A」と呼ぶ。)は、当該発明特定事項Aが属する文脈及びその文言上、「『前記モバイルデバイスから前記選択された出力デバイスへの接続は有線として又は無線として確立されるかを決定すること』という工程(以下、「工程A」と呼ぶ。)において『有線として又は無線として確立されるか』が決定される『選択された出力デバイスへの接続』が『モバイルデバイスの決定されたロケーション』において利用可能な接続であること」といった程度のこと以上のことを規定するものではないと解されるので、本審決は、そのような解釈を前提とする。

この点に関し、審判請求人は平成25年10月11日付けの意見書において、発明特定事項Aの技術的意義は明細書の段落[0037]に記載されたとおりであり、「モバイルデバイス110は、近くのサービスプロバイダのリストを動的に取得又は更新するためにそれの位置を利用できる。一例として、移動局110の位置を決定できる無線通信システム140は、移動局110がリモート印刷を開始すると、位置情報サービス(location based services)を移動局110に提供できる。移動局110は、無線通信システム140からのサービスプロバイダのリスト又はカタログを要求することができ、そして、そのリストは、モバイルデバイス110の位置に基づいて、無線通信システム140によって動的に生成できる。」というものである旨主張しているが、発明特定事項Aが属する文脈及びその文言からは、発明特定事項Aの技術的意義をそのようなものに限定して解することはできないから、上記審判請求人の主張は採用しない。

3.引用発明
(1)平成25年5月7日付けの拒絶理由通知に引用した「NOKIA:"Nokia N70"USER'S MANUAL,[Online]18 August 2005(2005-08-18),XP002466582 Retrieved from the Internet:URL:http://nds1.nokia.com/phones/files/guides/Nokia_N70_1_UG_en.pdf>[retrieved on 2008-01-28](国際予備審査報告においてD1として引用された文献)」(以下、「引用例1」と呼ぶ。)には、次の事項が記載されている。

ア.
「Imaging

Image print

To print images with Image print, select the print option in the gallery, camera, image editor, or image viewer.
Use Image print to print your images using a data cable, a Bluetooth connection, or your memory card.
You can only print images that are in .jpeg format. The pictures taken with the camera are automatically saved in .jpg format.
To print to a PictBridge-compliant printer, select the print option before you connect the USB cable.
Select the image you want to print and Options > Print.

Printer selection

When you use Image print for the first time, a list of available printers is displayed after you select the image. Select a printer you want to use. The printer is set as the default printer.
If you have connected a PictBridge-compliant USB printer using the CA-53 cable supplied with the device, the printer is automatically displayed.
If the default printer is not available, a list of available printing devices is displayed.」(第44ページ左欄第1行?右欄第2行)
(当審訳)
「イメージング

イメージプリント

イメージプリントを使用して画像をプリントするために、ギャラリー、カメラ、イメージエディタ、あるいはイメージビューワの中でプリントオプションを選択して下さい。
データケーブル、ブルートゥース接続、あるいはメモリカードを使用して画像をプリントするために、イメージプリントを使用して下さい。
jpegフォーマットの画像のみプリント可能です。カメラで撮影された写真は自動的にjpegフォーマットで保存されます。
ピクトブリッジ対応のプリンタへプリントするために、USBケーブルを接続する前にプリントオプションを選択して下さい。
プリントしたい画像と、オプション>プリントを選択して下さい。

プリンタ選択

初めてイメージプリントを使用するとき、画像を選択した後に利用可能なプリンタのリストが表示されます。使用したいプリンタを選択して下さい。そのプリンタは、デフォルトプリンタとしてセットされます。
もしあなたが、デバイスと一緒に提供されるCA-53ケーブルを使用してピクトブリッジ対応のUSBプリンタを接続していたら、そのプリンタは自動的に表示されます。
デフォルトプリンタが利用できない場合は、利用可能なプリント装置のリストが表示されます。」

イ.
「Connectivity

Bluetooth connectivity

You can connect wirelessly to other compatible devices with Bluetooth technology. Compatible devices may include mobile phones, computers, and enhancements such as headsets and car kits. You can use wireless Bluetooth technology to send images, video clips, music and sound clips, and notes; to connect wirelessly to your compatible PC (for example, to transfer files); or to connect to a compatible printer to print images with Image print. See ‘Image print’, p. 44.」(第82ページ左欄第1?11行)
(当審訳)
「接続

ブルートゥース接続

ブルートゥース技術を用いて、他の互換機器とワイヤレスに接続することが可能です。互換機器は、携帯電話、コンピュータ、ヘッドセットや自動車キットのような拡張機器を含みます。あなたは、画像、ビデオクリップ、音楽、サウンドクリップ、および文書を送るために;あなたの互換PCとワイヤレスに接続するために(例えばファイルを転送するために);あるいはイメージプリントを使用して画像をプリントすべく互換プリンタに接続するために、ブルートゥース技術を使用することができます。’イメージプリント’,p.44をご覧下さい。」

ウ.
「PC connections

You can use your device with a variety of PC connectivity and data communications applications. With Nokia PC Suite you can synchronise contacts, calendar, and to-do notes, and transfer images between your device and a compatible PC.」(第85ページ右欄第1行?第6行)
(当審訳)
「PC接続

あなたは、様々なPC接続性とデータ通信アプリケーションとともに装置を使用することができます。ノキアPCスーツを使用して、あなたの装置と互換PCの間で、連絡先、カレンダ、to-doノートを同期させ、画像を転送することができます。」

そして、引用例1のタイトルと記載内容を当業者の常識に照らせば、以下のことがいえる。

(ア)引用例1は、ノキア社のN70という製品のユーザーズマニュアルであり、N70という製品は、携帯電話端末である。

(イ)上記記載事項ア.に示される「プリンタ」は、ピクトブリッジ対応のプリンタを含むとされているところ、該ピクトブリッジ対応のプリンタは、上記N70と直接通信するプリンタであり、N70のための印刷出力を提供するものである。

(ウ)上記記載事項イ.、ウ.にも示されるように、上記N70は、PCへも接続可能で、PCへも画像を転送可能なものである。また、一般にPCは、それに接続されるプリンタへ、転送された画像を出力可能であり、上記N70に接続され、当該N70から画像を転送されるPCも、当然にそれに接続されるプリンタへN70から転送された画像を出力可能と考えられる。したがって、上記N70に接続されるPCに接続されるプリンタも、N70のための印刷出力を提供するものといえる。

(エ)N70のユーザは、選択されたプリンタが上記(イ)で言及したプリンタか上記(ウ)で言及したプリンタかを決定することができる。

(オ)上記記載事項ア.に示される「データケーブル」を使用しての画像のプリント時には、N70からプリンタへの接続は有線として確立され、同「ブルートゥース接続」を使用しての画像のプリント時には、N70からプリンタへの接続は無線として確立される。
そして、N70のユーザは、選択されたプリンタが上記「データケーブル」で接続されるプリンタか上記「ブルートゥース接続」で接続されるプリンタかについても、決定することができる。

(カ)N70は、上記(オ)で言及した「接続」によって、N70に格納された画像を選択されたプリンタへ伝達する。

以上を総合すると、引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。

「携帯電話端末のための印刷出力を提供する方法であって、
選択されたプリンタは携帯電話端末と直接通信するプリンタか、PCを用いて前記携帯電話端末と通信するプリンタであるかを決定すること、
前記携帯電話端末から前記選択されたプリンタへの接続は有線として又は無線として確立されるかを決定すること、
前記接続によって、前記携帯電話端末内に格納された少なくとも1つの画像を前記選択されたプリンタへ伝達すること、
を備える方法。」

(2)平成25年5月7日付けの拒絶理由通知に引用した特開2004-118261号公報(以下、「引用例2」と呼ぶ。)には、次の記載がある。

ア.
「【0002】
【従来の技術】
従来、通信制御を主体的に行なうホストと、ホストからの通信制御に従って通信を行なうデバイスとのいずれか一方の役割を選択的に設定することができる通信コントローラの一例として、USB On-The-Goの規格に従う通信コントローラがある。この通信コントローラを備えた電子機器(例えば、パーソナルコンピュータや、それの周辺機器であるプリンタ、デジタルカメラ、携帯電話機、PDA等)は、他の電子機器と接続されたとき、初期的に、USBホストとUSBデバイスのいずれか一方の役割を持つ。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、USB On-The-Goに従う通信を行なうためには、通常、所定の通信ケーブルの一端のプラグを一方の電子機器のレセプタに挿し、他端のプラグを他方の電子機器のレセプタに挿して、電子機器同士を通信ケーブルを介して通信可能に接続する必要がある。このとき、各電子機器がUSBホストとなるかUSBデバイスとなるかは、その電子機器のレセプタに挿されたプラグの形状によって決まってしまう。
【0004】
しかし、プラグの形状によってUSBホストとなるかUSBデバイスとなるかが決まってしまうのでは使い勝手が良くない。
【0005】
なぜなら、第1に、ユーザは、通信ケーブルを機器に接続する度に、いちいち、その機器をUSBホストとして又はUSBデバイスとして使用するかに基づいてプラグの形状を意識しなければならないからである。第2に、機能が充実している方の機器をUSBホストにすることが望ましい場合があるが、そのためには、どちらの機器の方が機能的に充実しているかを知らなければならないからである。
【0006】
このような問題点は、USB On-The-Goに従う通信に限らず、ホストとしての役割を一方の機器に分担し、デバイスとしての役割を他方の機器に分担する他の通信においても存在し得るものである。
【0007】
従って、本発明の目的は、ホストとしての役割を一方の機器に分担し、デバイスとしての役割を他方の機器に分担する必要がある通信において、フレキシブル且つ適切に、ホスト又はデバイスの役割分担を切換えることにある。」

イ.
「【0039】
図4は、第3の実施形態でのUSBアプリケーション7の動作の流れを示す。
【0040】
第3の実施形態では、デジタルカメラ1のUSBアプリケーション7(プリンタ3のUSBアプリケーション21も同様)は、第1及び第2の少なくとも一方の実施形態での動作に代えて或いは加えて、以下のように動作することが可能である。すなわち、USBアプリケーション7は、DRDコントローラ10を介して、通信相手機器であるプリンタ3に関するプリンタ情報をプリンタ3から取得し、デジタルカメラ1に関するカメラ情報と、取得したプリンタ情報とを比較して、その比較の結果に基づいて(換言すれば、デジタルカメラ1とその通信相手機器であるプリンタ3との関係に基づいて)、デジタルカメラ1の現在の役割分担を切換える必要があるか否かを判断することができる。
【0041】
具体的に言うと、USBアプリケーション7は、DRDコントローラ10に、プリンタ3と通信して、プリンタ3からプリンタ情報(例えば、プリンタ3の性能、電源等の状態、データの種類など)を取得することを命令し、その命令に応答してプリンタ情報を取得したならば、カメラ情報とプリンタ情報とを比較して、その比較の結果に基づいて、どちらの機器1又は3がUSBホストとなるかを決定する(S31)。より具体的には、USBアプリケーション7は、カメラ情報とプリンタ情報とを比較して、両機器1、3の性能の差、両機器1、3の機種の関係、及び、両機器1、3の電源等の状態の少なくとも1つの機器関係状況を検出し、その検出の結果と、所定の条件とに基づいて、どちらの機器1又は3がUSBホストとなるかを決定する(例えば、機能的に優れている方の機器(具体例としては、印刷を命じる際により詳細な条件設定をすることができる方の機器)をUSBホストに決定する)。
【0042】
S31の結果、デジタルカメラ1の現在の役割分担を切換える必要がなければ(S32でN)、USBアプリケーション7は、通常の動作をし(S36)、一方、デジタルカメラ1の現在の役割分担を切換える必要があれば(S32でY)、DRDコントローラ10へHNPを要求する。その後の動作は、第2の実施形態と略同様である。
【0043】
この第3の実施形態によれば、通信相手機器との関係に基づいて、各機器の役割分担が決まる(例えば、機能的に優れている方の機器が、USBホストとなって、使い易くなる)。これにより、この実施形態でも、ユーザは、機器1、3に挿すプラグ31又は33の形状を意識しなくても良いの便利である。」

そして、引用例2の上記記載事項を関連図面と技術常識に照らせば、引用例2には次の発明(以下、「引用例2発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「デジタルカメラのための印刷出力を提供する方法であって、選択されたプリンタに基づいてデジタルカメラがホストとして又はデバイスとして動作するかどうかを決定すること、を備える方法。」

また、引用例2発明の「デジタルカメラ」、「プリンタ」、「ホスト」、「デバイス」は、それぞれ、本願発明の「モバイルデバイス」、「出力デバイス」、「ホスト・デバイス」、「クライアント・デバイス」に相当するものといえるから、引用例2発明は、「モバイルデバイスのための印刷出力を提供する方法であって、選択された出力デバイスに基づいてモバイルデバイスがホスト・デバイスとして又はクライアント・デバイスとして動作するかどうかを決定すること、を備える方法。」と表現することもできる。

4.対比
本願発明と引用例1発明を対比すると、引用例1発明の「携帯電話端末」、「プリンタ」、「PC」、「携帯電話端末と直接通信するプリンタ」、「PCを用いて前記携帯電話端末と通信するプリンタ」は、それぞれ、本願発明の「モバイルデバイス」、「出力デバイス」、「中間デバイス」、「ローカル出力デバイス」、「リモート出力デバイス」に相当するものということができるから、本願発明と引用例1発明の間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「モバイルデバイスのための印刷出力を提供する方法であって、
選択された出力デバイスはローカルか又はリモートかを決定すること、ここにおいて、前記ローカル出力デバイスは、前記モバイルデバイスと直接通信するデバイスであり、前記リモート出力デバイスは、中間デバイスを用いて前記モバイルデバイスと通信するデバイスである
前記モバイルデバイスから前記選択された出力デバイスへの接続は有線として又は無線として確立されるかを決定すること、
前記接続によって、前記モバイルデバイス内に格納された少なくとも1つの画像を前記選択された出力デバイスに伝達すること、
を備える方法。」
である点。

<相違点1>
本願発明は、「モバイルデバイスからの印刷出力を初期化すること」という工程(以下、「工程B」と呼ぶ。)を有するのに対し、引用例1発明はそれに相当する工程を有しない点。

<相違点2>
本願発明は、上記2.で言及した発明特定事項Aを具備するものであるのに対し、引用例1発明は、発明特定事項Aに相当する構成を有するものではない(引用例には、モバイルデバイス(携帯電話端末)のロケーション決定に関する記載や、有線として又は無線として確立されるかが決定される「選択された出力デバイス(プリンタ)への接続」が決定されたロケーションで利用可能であることに関する記載がない。)点。

<相違点3>
本願発明は、「前記選択された出力デバイスに基づいてホスト・デバイスとして又はクライアント・デバイスとして動作するかどうかを決定すること」という工程(以下、「工程C」と呼ぶ。)を有するのに対し、引用例1発明はそれに相当する工程を有しない点。

5.判断
(1)上記相違点1について
情報処理の技術分野一般において、各種処理の前に必要に応じた初期化処理を行うことはごく普通に行われていることであり、引用例1発明においても、そのような初期化処理をするのが望ましい場合は当然にあり得るから、引用例1発明に上記工程Bに相当する工程を設けることは、当業者が容易に推考し得たことである。

(2)上記相違点2について
以下の事情を勘案すると、引用例1発明を発明特定事項Aに相当する構成を有するものとすること、換言すれば、引用例1発明の工程A(上記2.で言及した「工程A」)に相当する工程において「有線として又は無線として確立されるか」が決定される「選択された出力デバイスへの接続」を「『モバイルデバイスの決定されたロケーション』において利用可能な接続」とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

ア.モバイルデバイスに、ロケーションを決定する機能(自身の位置を特定する機能)を持たせる技術は、平成25年5月7日付けの拒絶理由通知の「3.請求項7、8について」の欄でも言及したように、本願優先日前に周知であり、引用例1発明が対象とするモバイルデバイス(携帯電話端末)においても該周知の技術が有用かつ採用可能であることは、当業者に明らかであるから、引用例1発明が対象とするモバイルデバイス(携帯電話端末)を、ロケーションを決定する機能(自身の位置を特定する機能)を有するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

イ.一般に、提示された複数の選択肢の中から特定のものをユーザが選択することができるように装置を構成する場合において、利用可能なもののみを選択肢として提示するのが望ましいことは、当然のことであるし、利用可能なもののみを選択肢として提示するようにすること自体は、上記3.の(1)のア.に摘記した箇所の「利用可能なプリンタのリストが表示されます」、「デフォルトプリンタが利用できない場合は、利用可能なプリント装置のリストが表示されます」という記載に示されるように、引用例1発明が対象とするモバイルデバイス(携帯電話端末)において既に実現されていることでもある。
引用例1の記載からは、上記「利用可能なプリンタのリストが表示されます」、「デフォルトプリンタが利用できない場合は、利用可能なプリント装置のリストが表示されます」という記載における「利用可能な」が、「プリンタないしプリント装置自体が利用可能」であることを示しているのか「プリンタないしプリント装置への接続部分も含めて利用可能」であることを示しているのか、が定かでないが、ユーザにとって「プリンタないしプリント装置への接続部分も含めて利用可能」であることが示されるのが好ましいことは当然のことであるし、引用例1発明が対象とするモバイルデバイス(携帯電話端末)を「『プリンタないしプリント装置への接続部分も含めて利用可能』なプリンタないしプリント装置」のみを選択肢として提示するように構成することができない理由はない。
してみれば、引用例1発明が対象とするモバイルデバイス(携帯電話端末)を、「『プリンタないしプリント装置への接続部分も含めて利用可能』なプリンタないしプリント装置」のみを選択肢として提示するように構成することも、当業者が容易に推考し得たことである。

ウ.上記ア.イ.によれば、引用例1発明の、モバイルデバイス(携帯電話端末)を、ロケーションを決定する機能(自身の位置を特定する機能)を有するものとするとともに、「『プリンタないしプリント装置への接続部分も含めて利用可能』なプリンタないしプリント装置」のみを選択肢として提示するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、引用例1発明におけるモバイルデバイス(携帯電話端末)から選択された出力デバイス(プリンタ)への画像の伝達は、当然のことながら「モバイルデバイス(携帯電話端末)が存在する位置」においてなされるものであり、上記ア.のようにした場合には、その「モバイルデバイス(携帯電話端末)が存在する位置」は、当然に「モバイルデバイス(携帯電話端末)の決定されたロケーション」となる。
してみれば、上記のように引用例1発明の、モバイルデバイス(携帯電話端末)を、ロケーションを決定する機能(自身の位置を特定する機能)を有するものとするとともに、「『プリンタないしプリント装置への接続部分も含めて利用可能』なプリンタないしプリント装置」のみを選択肢として提示するものとする場合に、そこでいう「利用可能」が「モバイルデバイス(携帯電話端末)の決定されたロケーションにおいて利用可能」とされるべきことは、当然のことである。

エ.引用例1発明が対象とするモバイルデバイス(携帯電話端末)を、「『プリンタないしプリント装置への接続部分も含めてモバイルデバイス(携帯電話端末)の決定されたロケーションにおいて利用可能』なプリンタないしプリント装置」のみを選択肢として提示するように構成した場合には、引用例1発明の工程Aに相当する工程において「有線として又は無線として確立されるか」が決定される「選択された出力デバイスへの接続」は、当然に「『モバイルデバイスの決定されたロケーション』において利用可能な接続」となる。

オ.以上のことは、引用例1発明を発明特定事項Aに相当する構成を有するものとすることが当業者にとって容易であったことを意味している。

(3)上記相違点3について
引用例1発明と引用例2発明は、「モバイルデバイスのための印刷出力を提供する方法」である点で共通し、引用例1発明においても、引用例2発明が有用かつ採用可能であることは当業者に明らかであるから、引用例1発明において引用例2発明を採用すること、換言すれば、引用例1発明に上記工程Cに相当する工程を設けることは、当業者が容易に推考し得たことである。

(4)本願発明の効果について
本願発明によりもたらされる効果は、引用例1、2に記載された事項及び周知の事項から当業者が予測し得る程度のものであり、本願発明の進歩性を肯定する根拠となり得るものではない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明、引用例2発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-04 
結審通知日 2013-12-10 
審決日 2014-01-06 
出願番号 特願2009-514562(P2009-514562)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 友章  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 山田 正文
清水 稔
発明の名称 ユニバーサルモバイル印刷エージェント  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 哲  
代理人 堀内 美保子  
代理人 砂川 克  
代理人 佐藤 立志  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 岡田 貴志  
代理人 竹内 将訓  
代理人 高倉 成男  
代理人 白根 俊郎  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 中村 誠  
代理人 村松 貞男  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  

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