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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1288174
審判番号 不服2013-10974  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-12 
確定日 2014-05-29 
事件の表示 特願2008-103613号「動力式外科手術用器具」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月30日出願公開、特開2008-259860号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成20年4月11日(パリ条約による優先権主張 平成19年4月13日 アメリカ合衆国)の出願であって、平成24年10月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成25年1月18日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年2月19日付けで拒絶査定がなされたところ、同査定を不服として同年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年6月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。
「外科手術用器具であって、
ハウジング;
該ハウジングから遠位に延びて第一の長手方向軸を規定する、内視鏡部分;
少なくとも部分的に該ハウジング内に配置されている駆動モータ;
該駆動モータと機械的に協働するように配置されている駆動管であって、該駆動管を通って延びる駆動管軸の周りで回転可能である、駆動管;
該駆動管と機械的に協働するように配置されている発射棒であって、該発射棒の少なくとも一部分は、該駆動管に対して移動可能である、発射棒;
該内視鏡部分の遠位部分に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、該エンドエフェクタは、該発射棒と機械的に協働しており、その結果、該発射棒が該エンドエフェクタの外科手術機能を駆動する、エンドエフェクタ;および
該駆動モータと該駆動管との間に配置されたクラッチであって、該クラッチは、クラッチプレートおよびばねを備える、クラッチ
を備える、外科手術用器具。」

III.引用例の記載事項
1.国際公開第95/18572号
本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第95/18572号(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、『』に当審の仮訳を示す。)
引1ア:「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a stapling device. More particularly, the stapling device has a unique configuration, suitable for use as a tissue proximation device, an endoscopic surgical microstapler for the attachment of tissues such as for the reanastomosis of gastrointestinal organs and gynecological procedures with "B" shaped staples.」(1頁3?8行)
『発明の分野
本願発明は、ステープリング装置に関する。より詳細には、ステープリング装置は、組織近接装置としての使用に適した、ユニークな形態を有している。すなわち、“B”形状ステープルによる胃腸器官の再吻合術や婦人科手術のような組織を接着するための内視鏡外科マイクロステープラーである。』

引1イ:「SUMMARY OF THE INVENTION
The present invention includes a staple insertion mechanism and method of use thereof which applies surgical titanium wire staples to fasten tissues. The instrument carries a plurality of staples, which are sequentially inserted, and has an 11 mm diameter shaft adapted for endoscopic use through a trochar sleeve. The instrument operates by transmitting a mechanical force from an actuator, through elements in the shaft, to a stapling device in a head portion of the device. .」(3頁24?29行)
『発明の要約
本願発明は、ステープル挿入機構及び組織を留める外科チタンワイヤステープルを用いた該機構の使用方法を含む。器具は、連続的に挿入される複数のステープルを運び、トロカースリーブを通した内視鏡的使用のために直径11mmのシャフトを有する。器具は、装置の頭部におけるステープリング装置に、シャフトの中の要素を通じて、アクチュエータから機械力を伝達することにより機能する。』

引1ウ:「In operation, the trigger 11 is depressed and the outer sleeve 15 advances with respect to the staple magazine assembly 1, which is held by the spring loaded catch 18 in the aperture 18' of the proximal outer sleeve 14. The outer sleeve 15 initially presses against the former arm 5, which is pressed against the magazine body 16 and assumes an orientation parallel to the longitudinal axis of the staple magazine assembly 1. The tissues to be fastened are held between the former 4 at the end of the former arm 5 and the cover 29 on the bottom of the staple magazine assembly 1.
Further advance of the outer sleeve 15 rapidly presses the pusher arm 3 downward, against the magazine body 16, such that the pusher 2 is depressed fully, thereby expelling the active staple20, which is deformed by the former 4. Further advance of the outer sleeve 15 has little effect, but provides an overtravel region which assures proper fastening. 」(18頁32行?19頁2行)
『操作において、トリガー11が押し下げられ、アウタースリーブ15がステープルマガジンアセンブリ1に対して前進する。ステープルマガジンアセンブリ1は、近位アウタースリーブ14の隙間18’のスプリングが装填されたキャッチ18により保持される。アウタースリーブ15は、初めからフォーマーアーム5を押圧する。フォーマーアーム5は、マガジンボディ16に押しつけられるとともに、ステープルマガジンアセンブリ1の長軸に平行な方向に向けられる。留められる組織は、フォーマーアーム5の端部のフォーマー4とステープルマガジンアセンブリ1の底部上のカバー29との間に保持される。
アウタースリーブ15がさらに進むことによりプッシャーアーム3は、プッシャー2が十分に押し下げられように、下方に迅速にマガジンボディ16に押しつけられる。それによってフォーマー4により変形されたアクティブステープル20が発射される。アウタースリーブ15がさらに進んでも殆ど効果はないが、適切な留めを確実にするオーバートラベル領域を提供する。』

引1エ:「The present embodiment, shown in Figs. 63 and 64 consists of a magazine assembly 1, an outer sleeve 15, a tube-like body 49, an electrical rotary motor 50, a handle 10, an electrical power source 51, an electrical connection system 52, a trigger button 53, an electrical switch 54, a helical gear 55, and a limit switch 56. The principal of operation of the present embodiment is the use of a motor 50, which drives a helical screw gear 55, causing a linear movement of a follower 57. The follower 57 is linked to an assembly which causes closure of the stapling head, as described above with respect to Example 1. Completion of a stapling operation is detected by a limit switch 56, which initiates a reversal of the motor 50, bringing the system to the starting position, which is detected by a second limit switch 58.
Alternatively, the helical gear may be replace with a dual-cut helical cam-follower system, to provide automatic return without need for reversing the motor. This arrangement further eliminates the need for one of the limit switches 56, particularly for detecting maximum excursion. Further, since the return stroke requires less torque than the excursion/stapling stroke, the return may be faster, e.g. a steeper helix, than the stapling stroke.
Further, the former may be positioned at a desired displacement from the closed position in order to control the position of the staple tips after stapling. Likewise, the pusher may be stopped short of full travel to control the position of the staple tips. Either of these may be accomplished by providing a clutch and mechanism to separate the movements of the pusher arm and the former arm, and controlling engagement of the clutch. 」(21頁23行?22頁2行)
『図63及び64に示される本実施例は、マガジンアセンブリ1、アウタースリーブ15、管状体49、電気回転モータ50、ハンドル10、電源51、電気接続システム52、トリガーボタン53、電気スイッチ54、螺旋ギア55、リミットスイッチ56から構成される。本実施例の動作の主要な構成は、モータ50の使用であって、該モータ50は、螺旋ねじギア55を駆動し、フォロワー57を直線状に移動させる。フォロワー57は実施例1に関し上述したように、ステープリングヘッドを閉鎖させるアセンブリに連結されている。ステープリング動作の完了はリミットスイッチ56により検出され、該リミットスイッチ56はモータ50を逆転させて、システムをもう一つのリミットスイッチにより検出される開始位置に戻す。
あるいは、螺旋ギアは、モータを逆転させる必要のない自動復帰を提供する、2重-カット螺旋カム-フォロワーシステムと置き換えてもよい。この組み合わせでは、さらに、リミットスイッチ56の一つ、特に最大伸出を検出するスイッチの必要性がなくなる。さらに、復帰ストロークは伸出/ステープリングストロークより少ないトルクしか必要ないので、復帰は、例えば急勾配の螺旋により、ステープリングストロークより早くしてもよい。
さらに、フォーマーは、ステープリングの後にステープルチップの位置を制御するために、閉鎖位置から所望量変位した位置に設けてもよい。同様に、プッシャーは、ステープルチップの位置を制御するために、全行程より短い位置で止められてもよい。これらの一つは、プッシャーアーム及びフォーマーアームの動きを分離するクラッチ及び機構を提供するとともに、クラッチの噛み合いを制御することにより達成することができる。』

引1a:引1イの「器具は、装置の頭部におけるステープリング装置に、シャフトの中の要素を通じて、アクチュエータから機械力を伝達することにより機能する。」との記載、引1ウの記載及び図63の図示内容からして、ステープリング装置がアウタースリーブ14,15の遠位部分15に隣接して配置されているといえる。

引1b:引1エの「図63及び64に示される本実施例は、マガジンアセンブリ1、アウタースリーブ15、管状体49、電気回転モータ50、ハンドル10、電源51、電気接続システム52、トリガーボタン53、電気スイッチ54、螺旋ギア55、リミットスイッチ56から構成される。本実施例の動作の主要な構成は、モータ50の使用であって、該モータ50は、螺旋ねじギア55を駆動し、フォロワー57を直線状に移動させる。」との記載及び図63の図示内容からして、螺旋ギア55は、電気回転モータ50に取り付けられて駆動され、フォロワー57を駆動する螺旋ギア55であって、螺旋ギア55を通って延びる螺旋ギア軸の周りで回転可能であるといえる。

引1c:引1エの「本実施例の動作の主要な構成は、モータ50の使用であって、該モータ50は、螺旋ねじギア55を駆動し、フォロワー57を直線状に移動させる。フォロワー57は実施例1に関し上述したように、ステープリングヘッドを閉鎖させるアセンブリに連結されている。」との記載の「ステープリングヘッド」、「フォロワー57」は、それぞれ、引1イの「器具は、装置の頭部におけるステープリング装置に、シャフトの中の要素を通じて、アクチュエータから機械力を伝達することにより機能する。」との記載の「ステープリング装置」、「シャフトの中の要素」を意味することが明らかだから、これらの記載、引1ウの記載及び図63の図示内容からして、フォロワー57は、螺旋ギア55に螺合しているフォロワー57であって、螺旋ギア55に対して直線状に移動し、ステープリング装置に機械力を伝達することによりアステープリング装置からアクティブステープル20を発射させるものといえる。
同様に、上記記載、引1ウの記載及び図63の図示内容からして、ステープリング装置は、アウタースリーブの遠位部分15に隣接して配置されたステープリング装置であって、該ステープリング装置は、フォロワー57から機械的力を伝達され、その結果、フォロワー57が該ステープリング装置にアクティブステープル20を発射させるものといえる。

これら記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「胃腸器官の再吻合術や婦人科手術のような組織を接着するための内視鏡外科マイクロステープラーであって、
ハンドルボディ9;
ハンドルボディ9から遠位に延びて第一の長手方向軸を規定する、アウタースリーブ14,15;
ハンドルボディ9に取り付けられている電気回転モータ50;
電気回転モータ50に取り付けられて駆動され、フォロワー57を駆動する螺旋ギア55であって、螺旋ギア55を通って延びる螺旋ギア軸の周りで回転可能である、螺旋ギア55;
螺旋ギア55に螺合しているフォロワー57であって、フォロワー57は、螺旋ギア55に対して直線状に移動し、ステープリング装置に機械力を伝達することによりアステープリング装置からアクティブステープル20を発射させる、フォロワー57;および
アウタースリーブの遠位部分15に隣接して配置されたステープリング装置であって、該ステープリング装置は、フォロワー57から機械的力を伝達され、その結果、フォロワー57が該ステープリング装置にアクティブステープル20を発射させる、ステープリング装置
を備える、胃腸器官の再吻合術や婦人科手術のような組織を接着するための内視鏡外科マイクロステープラー。」

2.特開平8-643号公報
本願の優先権主張日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-643号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
引2ア:「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は歯科治療装置、特にインプラト材埋め込み用のねじ孔を形成するための歯科治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、義歯の安定維持を図るため、欠如歯部の軟組織下の顎骨などにインプラント材を埋め込み、この上から義歯を植設する処置が行われている。インプラント材はあらかじめ螺刻面を有するよう成形加工され、歯科治療装置の先端工具により形成された処置部のねじ孔に嵌入される。また、ねじ孔の形成時におけるカウンタートルクが許容値を超えると、先端工具に過剰な負荷が加わり、ねじ孔にねじ山の崩れや深さの狂いが生じ、インプラント材の取付けに支障を来すばかりでなく、歯科治療装置が故障する場合もある。これを防止するため、従来の歯科治療装置では、モータの回転を減速してねじ孔穿削に必要な高トルクを与えるために内在される減速装置と前記モータとの間に、一対の凹凸面をスプリングにより軸方向に嵌合させたモータ側クラッチ板および工具側クラッチ板(クラッチ機構)を設け、先端工具が過負荷状態となった場合は、上記各凹凸面の嵌合がスプリングの付勢に抗して解除され、モータ側クラッチ板が工具側クラッチ板に対しクリック回動することにより、先端工具のトルクが低減するよう設計されている。」

これら記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「歯科治療装置において、過負荷状態となってインプラント材の取付けの失敗や歯科治療装置の故障を防ぐために、駆動モータと内在される減速装置との間にクラッチプレートおよびばねを備えるクラッチを配置すること。」

IV.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「胃腸器官の再吻合術や婦人科手術のような組織を接着するための内視鏡外科マイクロステープラー」、「ハンドルボディ9」は、それぞれ、本願発明の「外科用手術用器具」、「ハウジング」に相当する。

引用発明1は「内視鏡外科マイクロステープラー」であることや、引用例1の「器具は、連続的に挿入される複数のステープルを運び、トロカースリーブを通した内視鏡的使用のために直径11mmのシャフトを有する。」(引1イ)との記載を参酌すると、引用発明1の「アウタースリーブ14,15」は本願発明の「内視鏡部分」に相当する。

引用発明1の「電気回転モータ50」は本願発明の「駆動モータ」に相当し、引用発明1の「ハンドルボディ9に取り付けられている電気回転モータ50」と本願発明の「少なくとも部分的に該ハウジング内に配置されている駆動モータ」とは、「該ハウジングに取り付けられている駆動モータ」である点で一致する。

引用発明1の「電気回転モータ50に取り付けられて駆動され」ることは、「駆動モータと機械的に協働するように配置されている」ことといえ、「フォロワー57を駆動する螺旋ギア55」は「駆動部材」といえる。
そうすると、引用発明1の「電気回転モータ50に取り付けられて駆動され、フォロワー57を駆動する螺旋ギア55であって、該螺旋ギアを通って延びる螺旋ギア軸の周りで回転可能である、螺旋ギア55」と本願発明の「該駆動モータと機械的に協働するように配置されている駆動管であって、該駆動管を通って延びる駆動管軸の周りで回転可能である、駆動管」とは、「該駆動モータと機械的に協働するように配置されている駆動部材であって、該駆動部材を通って延びる駆動部材軸の周りで回転可能である、駆動部材」である点で一致する。

引用発明1の「螺旋ギア55に螺合している」ことは「該駆動部材と機械的に協働するように配置されている」ことといえ、「ステープリング装置に機械力を伝達することによりアクティブステープル20を発射させる、フォロワー57」は「発射部材」といえ、「フォロワー57は、螺旋ギア55に対して直線状に移動」することは「該発射部材の少なくとも一部分は、該駆動部材に対して移動可能である」ことといえる。
そうすると、引用発明1の「螺旋ギア55に螺合しているフォロワー57であって、フォロワー57は、螺旋ギア55に対して直線状に移動し、ステープリング装置に機械力を伝達することによりアステープリング装置からアクティブステープル20を発射させる、フォロワー57」と本願発明の「該駆動管と機械的に協働するように配置されている発射棒であって、該発射棒の少なくとも一部分は、該駆動管に対して移動可能である、発射棒」とは、「該駆動部材と機械的に協働するように配置されている発射部材であって、該発射部材の少なくとも一部分は、該駆動部材に対して移動可能である、発射部材」である点で一致する。

引用発明1の「ステープリング装置」は本願発明の「エンドエフェクタ」に相当し、引用発明1の「アウタースリーブの遠位部分15に隣接して配置されたステープリング装置」は本願発明の「該内視鏡部分の遠位部分に隣接して配置されたエンドエフェクタ」に相当する。
また、引用発明1の「フォロワー57から機械的力を伝達され」ることは「該発射部材と機械的に協働して」いることといえ、引用発明1の「フォロワー57が該ステープリング装置にアクティブステープル20を発射させる」ことは「該発射部材が該エンドエフェクタの外科手術機能を駆動する」ことといえる。
そうすると、引用発明1の「アウタースリーブの遠位部分15に隣接して配置されたステープリング装置であって、該ステープリング装置は、フォロワー57から機械的力を伝達され、その結果、フォロワー57が該ステープリング装置にアクティブステープル20を発射させる、ステープリング装置」と本願発明の「該内視鏡部分の遠位部分に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、該エンドエフェクタは、該発射棒と機械的に協働しており、その結果、該発射棒が該エンドエフェクタの外科手術機能を駆動する、エンドエフェクタ」とは、「該内視鏡部分の遠位部分に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、該エンドエフェクタは、該発射部材と機械的に協働しており、その結果、該発射部材が該エンドエフェクタの外科手術機能を駆動する、エンドエフェクタ」である点で一致する。

以上によれば、本願発明と引用発明1とは次の点で一致する。
(一致点)
「外科手術用器具であって、
ハウジング;
該ハウジングから遠位に延びて第一の長手方向軸を規定する、内視鏡部分;
該ハウジングに取り付けられている駆動モータ;
該駆動モータと機械的に協働するように配置されている駆動部材であって、該駆動部材を通って延びる駆動部材軸の周りで回転可能である、駆動部材;
該駆動部材と機械的に協働するように配置されている発射部材であって、該発射部材の少なくとも一部分は、該駆動部材に対して移動可能である、発射部材;および
該内視鏡部分の遠位部分に隣接して配置されたエンドエフェクタであって、該エンドエフェクタは、該発射部材と機械的に協働しており、その結果、該発射部材が該エンドエフェクタの外科手術機能を駆動する、エンドエフェクタ
を備える、外科手術用器具。」

そして、両者は以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、「駆動モータ」が「少なくとも部分的に該ハウジング内に配置されている」のに対して、
引用発明1では、電気回転モータ50(駆動モータ)がハンドルボディ9(ハウジング)に取り付けられている点。

(相違点2)
本願発明では、「駆動部材」、「発射部材」が、それぞれ、「駆動管」、「発射棒」であるとともに、「該駆動モータと該駆動管との間に配置されたクラッチであって、該クラッチは、クラッチプレートおよびばねを備える、クラッチ」を備えているのに対して、
引用発明1では、「駆動部材」、「発射部材」が、それぞれ、「ヘリカルギア55」、「フォロワー57」であるとともに、「クラッチ」を備えていない点。

V.判断
1.相違点について以下検討する。
(相違点1)
物品の構成要素の配置は当業者が必要に応じて適宜決定し得る程度の事項であるから、引用発明1において、電気回転モータ50(駆動モータ)を少なくとも部分的にハンドルボディ9(ハウジング)内に配置されているようにして相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。

(相違点2)
引用発明2の「インプラント材の取付け」が「外科手術」に含まれることは明らかであって、そのための「歯科治療装置」は「外科手術器具」といえ、「インプラント材の取付けの失敗や歯科治療装置の故障」は「外科手術の失敗や外科手術器具の故障」といえ、「内在される減速装置」は「駆動モータにより駆動される部材」といえるから、引用発明2は、
「外科手術器具において、過負荷状態となって外科手術を失敗したり外科手術器具が故障したりすることを防ぐために、駆動モータと該駆動モータにより駆動される部材との間に、クラッチプレートおよびばねを備えるクラッチを配置すること」といえる。
他方、引用発明1の「胃腸器官の再吻合術や婦人科手術のような組織を接着するための内視鏡外科マイクロステープラー」(外科手術器具)において駆動モータを使用する場合、過負荷状態が生じるおそれがあることは明らかであるとともに、過負荷状態となって外科手術を失敗したり外科手術器具が故障したりすることを防ぐことは自明の課題であることからすれば、引用発明1に引用発明2のクラッチに係る構成を適用することに格別の困難性は見出せない。
そして、引用発明2は、クラッチを駆動モータと該駆動モータにより駆動される部材との間に配置するものであるから、引用発明1に引用発明2のクラッチに係る構成を適用するに当たり、引用発明2のクラッチに係る構成を電気回転モータ50(駆動モータ)と電気回転モータ50により駆動されるヘリカルギア55(該駆動モータにより駆動される部材)との間に配置することは当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。
加えて、物品の構成要素の形状は当業者が必要に応じて適宜決定し得る程度の事項であるから、引用発明1のヘリカルギア55、フォロワー57を、それぞれ、管状部材、棒状部材とすることも、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。
なお、本願発明においては、駆動管と発射棒とは「機械的に協働する」と規定されているのみでその詳細は規定されていないが、仮に駆動管の回転により発射棒を移動するものと解しても、管の回転により棒を移動させる構成は一般的に用いられている程度の事項であるから、引用発明1におけるヘリカルギア55の回転によりフォロワー57を移動させる構成を管の回転により棒を移動させる構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎない。
以上によれば、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が引用発明1及び引用発明2に基いて容易に想到し得たものである。

2.本願発明の効果は、当業者が引用発明1及び引用発明2から予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は当業者が引用発明1及び引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-27 
結審通知日 2014-01-06 
審決日 2014-01-17 
出願番号 特願2008-103613(P2008-103613)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武山 敦史  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 関谷 一夫
横林 秀治郎
発明の名称 動力式外科手術用器具  
代理人 大塩 竹志  

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