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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1288267
審判番号 不服2012-12291  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-29 
確定日 2014-06-06 
事件の表示 特願2003-349851「関節型ディスプレイを持つ超音波診断イメージングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開,特開2004-344636〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年10月8日に出願された特許法第36条の2第1項の外国語書面出願(優先権主張日 平成14年10月8日,米国)であって,平成21年12月4日付けで拒絶理由が通知され,平成22年6月2日付けで意見書と手続補正書の提出がなされた後,同年8月20日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年11月22日付けで意見書の提出がなされ,更に同年12月8日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成23年3月10日付けで意見書と手続補正書の提出がなされたが,平成24年2月28日付けで平成23年3月10日付けの手続補正に対して補正の却下の決定がなされるとともに,同日付で拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年6月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。

その後,平成25年3月25日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされ,回答書が同年6月25日付けで請求人より提出された。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年6月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により,補正前の特許請求の範囲(平成22年6月2日付けの手続補正により補正されたもの。なお,平成23年3月10日付けの手続補正は補正却下されている。)の請求項1は,次のとおりに補正された。なお,下線は補正箇所を示す。
「 【請求項1】
超音波診断イメージングシステムであって、
前記システムの電子構成要素が配置され、上面を持つカートと、
前記カート上に取り付けられた制御パネルと、
下端において前記カートに回動可能に取り付けられ、前記下端から上端に向かって前記カートの上で一定の角度で傾斜された下側関節アーム、及び一端において前記下側関節アームの前記上端に回動可能に取り付けられ、第2端を持つ上側関節アームを持つ、前記カートの前記上面に取り付けられた関節機構と、
前記上側関節アームの前記第2端に回動可能に取り付けられる表示装置と、
を有し、
前記下側関節アームが、前記カート面の垂直軸のまわりで回動する第1関節ジョイントで前記カートに接続され、前記下側関節アームが、前記垂直軸のまわりで回動する第2関節ジョイントで前記上側関節アームに接続され、前記第2端が、前記垂直軸のまわりで回動する第3関節ジョイントで前記表示装置に接続され、 前記下側関節アームの前記傾斜が、前記下側関節アームと前記上側関節アームとの間のピンチポイントの発生を防止する、超音波診断イメージングシステム。」(以下「補正発明」という)

特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は,
(1)「前記カートの上で一定の角度で傾斜された下側関節アーム」について,「前記下端から上端に向かって前記カートの上で一定の角度で傾斜された下側関節アーム」と,その傾斜状態を限定し,
(2)補正前の「前記下側アーム」という誤記を,「前記下側関節アーム」と訂正し,
(3)「カート」,「下側関節アーム」,「上側関節アーム」および「表示装置」の間の接続状態について,「前記下側関節アームが、前記カート面の垂直軸のまわりで回動する第1関節ジョイントで前記カートに接続され、前記下側関節アームが、前記垂直軸のまわりで回動する第2関節ジョイントで前記上側関節アームに接続され、前記第2端が、前記垂直軸のまわりで回動する第3関節ジョイントで前記表示装置に接続され、」と,補正前には特定されていなかった状態を追加,限定し,
(4)下側関節アームの傾斜について,「前記下側関節アームの前記傾斜が、前記下側関節アームと前記上側関節アームとの間のピンチポイントの発生を防止する、」という補正前には特定されていなかった事項を追加,限定する補正を行うものである。
そうすると,特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされてる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前の特許法」という)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物の記載事項
(1)本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許第5924988号明細書(以下「刊行物1」という)には,超音波システム表示装置に関して,次の事項が図面とともに記載されている。

(1-ア)
「The Ultrasound Image Generator 200
FIG. 2 shows components that comprise the ultrasound image generator 200: a transmit beamformer 220, a receive beamformer 230, and a signal processor 240 responsive to the receive beamformer 230 and coupled to the flat panel display device 130.
These components function together to construct an ultrasound image of a patient. The transmit beamformer 220 sends ultrasonic energy to a particular portion of the patient's body via a transducer, and the receive beamformer 230 gathers the resulting reflected ultrasound wave. The signal processor 240 interprets the gathered reflected wave to generate the ultrasound image on the flat panel display device 130.
It is important to note that any type of ultrasound image generator currently available or developed in the future can be used with the embodiments described herein.」
(3欄20?36行,当審訳:「超音波イメージ発生器200
図2は,超音波イメージ発生器200:送信ビーム形成器220,受信ビーム形成器230,および受信ビーム形成器230に応答し,平面パネル表示装置130に接続された信号プロセッサ240を含む構成要素を示す。
これらの構成要素は患者の超音波イメージを構築するためにともに機能する。送信ビーム形成器220は,変換器を経て患者の体の特別の部分に超音波エネルギーを送り込み,受信ビーム形成器230は,生じた反射超音波を集める。信号プロセッサ240は,平面パネル表示装置130上に超音波イメージを生成するために,集められた反射波を解読する。
現在利用可能な,又は今後開発される任意のタイプの超音波イメージ発生器が,ここに記載された具体例と共に使用できることに注目することは重要である。」)

(1-イ)
「SECOND PREFERRED EMBODIMENT
FIG. 4 illustrates a diagnostic medical imaging ultrasound system 400 of a second preferred embodiment. As in the first preferred embodiment, an ultrasound system cart 410 carries an ultrasound image generator 200 of the type described above and supports a flat panel display device 430. The structure and function of each of these components is the same as those described in system 100 of the first preferred embodiment.
Instead of merely being supported by the ultrasound system cart as in the first preferred embodiment, the flat panel display device 430 of this system 400 attaches to a support apparatus comprising two swiveling arms 440, 450. One swiveling arm 440 connects to the flat panel display device 430 in a way that allows the operator to tilt the display device 430, as shown in FIG. 4 and described more fully below. By swiveling the two arms 440, 450, an operator can position the flat panel display device 430 beyond the perimeter of the ultrasound system cart 410.
While FIG. 4 shows two swiveling arms 440, 450, there are many other designs for the support apparatus, which allow the flat panel display device 430 to be tilted, swiveled, adjusted for height, and extended horizontally. When these designs are used in combination, the flat panel display device can be tilted greater than 90 degrees from a vertical axis, be swiveled by more than 90 degrees, have a height adjustment greater than about 6 inches, and have a horizontal extension beyond the confines of the ultrasound system cart greater than about 6 inches.
It is important to note that the alternative designs described below are merely examples. Other alternatives, though not illustrated, can be used to provide the flat panel display device with a wide range of motion.」(5欄47行?6欄12行,当審訳:「第2の好ましい具体例
図4は,第2の好ましい具体例の診断医療イメージング超音波システム400を図示する。第1の好ましい具体例におけるように,超音波システムカート410は,上述されたタイプの超音波イメージ発生器200を運び,そして平面パネル表示装置430を支持する。これらのコンポーネントの各々の構造および機能は,第1の好ましい具体例のシステム100において述べられていたものと同じである。
第1の好ましい具体例でのように超音波システムカートに単に支持される代わりに,このシステム400の平面パネル表示装置430は,2つの回転するアーム440および450を含む支持装置に取り付ける。1つの回転アーム440は,図4に示されるように,オペレーターが表示装置430を傾けることを可能にするように,平面パネル表示装置430に接続され,そしてその方法は下記により十分に記述される。2つのアーム440,450を回転させることによって,オペレーターは,超音波システムカート410の周囲の向こう側に平面パネル表示装置430を位置決めすることができる。
図4は2つの回転アーム440,450を示しているが,支持装置については多くの他の設計があり,それは,平面パネル表示装置430が,傾けられ,回転され,高さを調節され,そして水平に伸張されることを可能にするものである。これらの設計が組み合わされて使用される場合,平面パネル表示装置は,垂直軸から90度以上傾けられ,90度以上回転され,約6インチより大きな高さ調節をされ,そして超音波システムの境界を約6インチより大きく越えて水平に延在することができる。
下記に述べられた別の設計が単なる例であることに注目することは重要である。他の選択肢は,図示されていないが,広範囲に動く平面パネル表示装置を提供するために使用することができる。」)

(1-ウ)
「FIG. 5 illustrates two hinges 540, 550 attached to a first arm 560. The first hinge 540 connect the first arm 560 to the flat panel display device 530, allowing the display device 530 to tilt. The second hinge 550 connects the first arm 560 to a second arm 570, providing the display device 530 with vertical extension. The second arm 570 attaches to the cart 510 with a device 580 that allows the display device 530 to swivel. The arms 560, 570 cooperate to allow the display device 530 to extend beyond the footprint of the cart 510.
In FIG. 6, a swiveling hinge 620 connects the display device 630 to the cart 610. By articulating this hinge 620, the operator can tilt and swivel the display device 630.」(6欄13?21行,当審訳:「図5は,第1のアーム560に取り付けられた2つのヒンジ540,550を図示する。第1のヒンジ540は,平面パネル表示装置530に第1のアーム560を接続し,表示装置530が傾くことを可能にする。第2のヒンジ550は,第1のアーム560を第2のアーム570に接続し,表示装置530が垂直に延在するようにする。第2のアーム570は,カート510へ,表示装置530が回転できるようにする装置580で取り付けられている。アーム560,570は,表示装置530がカート510の足跡を越えて延在することができるように協働する。
図6において,回転ヒンジ620は表示装置630をカート610に接続詞している。このヒンジ620を関節で接続することによって,オペレーターは,表示装置630を傾け回転することができる。」)

(1-エ)
「The flat panel display device 730 shown in FIG. 7 is attached to the ultrasound system cart 710 by two swiveling arms 740, 750. With these arms 740, 750, the operator can horizontally position the display device 730 outside the perimeter of the cart 710. One swiveling arm 750 connects to the display device 730 with a swiveling hinge 760. With this connection, the operator can swivel and tilt the display device 730 to a desired position.」(第6欄25行?32行,当審訳:「図7に示される平面パネル表示装置730は,2つの回転アーム740,750によって超音波システムカート710に取り付けられている。これらのアーム740,750で,オペレーターは,カート710の周囲の外側に表示装置730を水平に位置決めすることができる。1つの回転アーム750は,表示装置730に回転ヒンジ760を用いて接続する。この接続で,オペレーターは,希望の位置へ表示装置730を回転し,傾けることができる。」)

(2)本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平8-140970号公報(以下「刊行物3」という)には,超音波診断装置に関して,次の事項が図面とともに記載されている。

(3-ア)
「【0002】【従来の技術】従来の超音波診断装置について、従来の超音波診断装置の典型例を示す図6を参照して説明する。超音波画像を得るために、超音波を送受波するプローブ3を、患者の検査対象部位に当て、このプローブ3から超音波を送波させる。検査対象部位からの反射波を受波し、これを輝度情報に変換した画像として観察用モニタ4に表示させる。この観察用モニタ4は、水平方向および垂直方向に回転させることのみ可能で、超音波診断装置本体1に半固定的に設けられている。このため、超音波診断装置本体1はキャスター9がついていて移動させることができるが、観察用モニタ4の移動範囲はかなり制約をうける。操作パネル2には超音波の患者体内での距離による減衰量の感度を調節するSTCボリューム18があり、観察用モニタ4にはドプラ音を再生するためのスピーカ19がある。」

(3-イ)
「【0006】【実施例】本発明の一実施例について図1を参照して説明する。1は超音波診断装置本体である。4および5は超音波画像を表示させる観察用モニタであり、以後4を第一の観察用モニタ、5を第二の観察用モニタと呼ぶ。6は第二の観察用モニタ5を超音波診断装置本体1から離れた任意の位置に移動させるためのアームであり、超音波診断装置本体1とアーム保持部7で接続されている。3は超音波を送受波するプローブ、2は超音波診断の検査モードの設定や得られた画像に対する処理操作を行う操作パネル、9は超音波診断装置を移動させるためのキャスターである。」
(3c)そして,上記記載に対応して,図1,6には,キャスター9が付いていて移動させることができる超音波診断装置本体1の上面に,超音波診断の検査モードの設定や得られた画像に対する処理操作を行う操作パネルが設けられていることが図示されている。

3 対比・検討
(1)刊行物に記載された発明
刊行物1の図4には,下側の回転アーム450がカート410の上面に下端から上端に傾斜した状態で取り付けられ,回転アーム450の上端に上側の回転アーム440の一端が接続される一方,回転アーム440の他端には平面パネル表示装置が取り付けられていることが図示されている。
また,図5には,下側の第2のアーム570が,装置580により超音波システムカート510の上面で垂直軸のまわりで回転できるだけでなく,該カートの上面に対し傾斜できること,および上側の第1のアーム560をその一端で下側の第2のアーム570に接続する第2のヒンジ550は,表示装置530がヒンジ540を介して取り付けられている上側の第1のアーム560の他端の該カートの上面からの高さ変えて表示装置530の垂直方向の位置を変えることができると共に,上側の第1のアーム560を垂直軸のまわりで回転できるものであることが図示されている。また,表示装置530はヒンジ540により,水平軸まわりに回動できることも図示されている。

そうすると,刊行物1の図4,5に記載された2つの回転アームを接続した機構は,「関節機構」といえるものであることは明らかであるし,「回転」は「回動」の一種であるから,刊行物1の図4,5についてのこれらの記載を勘案すると,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「診断医療イメージング超音波システムにおいて,
超音波イメージ発生器を運び,上面を持つ超音波システムカートと,
下端において前記カートに回動可能に取り付けられ,前記下端から上端に向かって前記カートの上で傾斜される下側の第2のアーム,および一端において前記下側の第2のアームの上端に回動可能に取り付けられ,他端を持つ上側の第1のアームを持つ,前記カートの前記上面に取り付けられた関節機構と,
前記上側の第1のアームの前記他端に回動可能に取り付けられる表示装置と,
を有し,
前記下側の第2のアームが,前記カート面の垂直軸のまわりで回動する装置で前記カートに接続され,前記下側の第2のアームが,前記垂直軸のまわりで回動する第2のヒンジで前記上側の第1のアームに接続され,前記他端が,水平軸のまわりで回動する第1のヒンジで前記表示装置に接続され,
前記上側の第1のアームも前記カートの前記上面からの高さが変更できるように傾斜できる,
診断医療イメージング超音波システム。」(以下「引用発明1」という)

また,刊行物1の図7に記載された2つの回転アーム740,750を接続した機構は,「関節機構」といえるものであることは明らかである。
そして,「回転」は「回動」の一種であるし,刊行物1の上記記載事項(1-エ)中に記載はないものの,図7において下側の回転アーム740は,その一端でカート710に対し垂直軸まわりに回転し,他端において上側の回転アーム750と垂直軸まわりに回転するように接続されていることが視認されるから,図7についての記載を中心に刊行物1の記載を勘案すると,刊行物1には,次の発明も記載されているものと認められる。

「診断医療イメージング超音波システムにおいて,
超音波イメージ発生器を運び,上面を持つ超音波システムカートと,
一端において前記カートに回動可能に取り付けられる下側の第2アーム,及び一端において前記下側の第2アームの他端に回動可能に取り付けられ,第2端を持つ上側の第1アームを持つ,前記カートの前記上面に取り付けられた関節機構と,
前記上側の第1アームの前記第2端に回動可能に取り付けられる表示装置と,
を有する診断医療イメージング超音波システム。」(以下「引用発明2」という)

(2)補正発明と引用発明1との対比
補正発明と引用発明1とを比較すると,引用発明1の「診断医療イメージング超音波システム」は,補正発明の「超音波診断イメージングシステム」に相当し,刊行物1の上記記載(1-ア)にその構成要素が記載されている引用発明1の「超音波イメージ発生器」は,前記診断医療イメージング超音波システムの電子構成要素に他ならないから,引用発明1の「超音波イメージ発生器を運び,上面を持つ超音波システムカート」は,補正発明の「前記システムの電子構成要素が配置され、上面を持つカート」に相当する。
また,引用発明1の「下側の第2アーム」,「上側の第1アーム」は,それぞれ,補正発明の「下側関節アーム」,「上側関節アーム」に相当する。
そして,引用発明1において,「前記下側の第2アーム」を「前記カート」に接続させている「装置」,「前記下側の第2アーム」を「前記上側の第1アーム」に接続させている「第2ヒンジ」および「前記上側の第1アームの第2端」を表示装置に接続させている「第1ヒンジ」は,それぞれ,「第1関節ジョイント」,「第2関節ジョイント」,そして「第3関節ジョイント」と表現し得る接続部材である。

そうすると,両者は,
(一致点)
「超音波診断イメージングシステムであって,
前記システムの電子構成要素が配置され,上面を持つカートと,
下端において前記カートに回動可能に取り付けられ,前記下端から上端に向かって前記カートの上で傾斜された下側関節アーム,及び一端において前記下側関節アームの前記上端に回動可能に取り付けられ,第2端を持つ上側関節アームを持つ,前記カートの前記上面に取り付けられた関節機構と,
前記上側関節アームの前記第2端に回動可能に取り付けられる表示装置と,
を有し,
前記下側関節アームが,前記カート面の垂直軸のまわりで回動する第1関節ジョイントで前記カートに接続され,前記下側関節アームが,前記垂直軸のまわりで回動する第2関節ジョイントで前記上側関節アームに接続され,前記第2端が第3関節ジョイントで前記表示装置に接続された,超音波診断イメージングシステム。」
である点で一致し,下記の点で相違する。

(相違点1)
補正発明では「前記カート上に取り付けられた制御パネル」を有するのに対し,引用発明1では,前記カート上に取り付けられた制御パネルを有するか否か,不明である点。

(相違点2)
「下側関節アーム」が,補正発明では「前記下端から上端に向かって前記カートの上で一定の角度で傾斜され」,「前記傾斜が、前記下側関節アームと前記上側関節アームとの間のピンチポイントの発生を防止する」のに対し,引用発明1では「下側の第2アームは前記下端から上端に向かって前記カートの上で傾斜されている」ものの,その角度は可変であって「一定の角度で傾斜している」ものではない点。

(相違点3)
「上側関節アームの前記第2端での前記表示装置の接続」が,補正発明では「前記第2端が、前記垂直軸のまわりで回動する第3関節ジョイントで前記表示装置に接続され」るのに対し,引用発明1では「前記他端が,水平軸のまわりで回動する第1ヒンジで前記表示装置に接続される」点。

(3)相違点についての検討
(相違点1について)
超音波診断イメージングシステムの電子構成要素が配置され,上面を持つカートを有する超音波診断イメージングシステムにおいて,超音波診断の検査モードの設定や得られた画像に対してどのように処理を行うのか等,前記システムにおける電子構成要素の処理操作を制御する「制御パネル」,すなわち,「操作パネル」を前記カート上に取り付けることは,例えば刊行物3にも記載されているように,本願優先権主張日前に超音波診断イメージングシステムにおいて周知慣用の事項に過ぎないから,引用発明1においても,前記カート上に取り付けられた制御パネルを有するとすることは,当業者が適宜採用する設計的事項であるというべきである。

(相違点2について)
ある部材とその上面に対し垂直軸まわりに回動するアーム状部材の2つの部材が交叉する角度が変化するとき,指を挟み込む程度の入り隅部分が2つの部材の間に形成され指を挟み込む状況,すなわちピンチポイントの発生が一般に生じ得るが,そのようなピンチポイントの発生を防止するために,アーム状部材の下端から上端に向かって他方の部材の上で一定の角度で傾斜させることにより,アーム状部材と他方の部材の上面との間に一定の隙間を確保してピンチポイントの発生を防止できることは,本願優先権主張日前に一般的に知られた技術的事項である。例えば,特表2001-161490号公報の段落【0025】?【0027】には,「以上のように、本実施例の椅子は、肘本体3を台座10に取り付けているリンク機構2のうちの第2のリンク要素5が、平面視において台座10の外縁10xとの間に指を挟み込む程度の入り隅部分αを形成しつつ交叉角度を変化させるものであるが、このリンク要素5の一端側における台座10への重合部を常に台座10の外縁10xの内側に在るように設定して、その重合部付近におけるリンク要素5と台座10との間に上下方向の隙間Δを形成しておくようにしたものである。
このため、平面視においてリンク要素5が台座10に次第に重合してゆき、その際にリンク要素5と台座10の外縁10xとの交叉部分の入り隅部分αに指が挿入されていても、交叉部分に設けた上下方向の隙間Δに指を逃がすことによって、指挟みの発生を有効に防止することができる。このため、指挟み事故等を考慮に入れることなく、リンク機構2の自由な設計を可能にして、安全である上に使い勝手に優れた可動肘本体付きの椅子を提供することができる。
特に、その隙間Δを、リンク要素5の重合部付近を台座10から離間する側へ変位させることによって形成しているため、リンク機構2の構造の簡素化を図ることができる。」と記載されている。
そして,ピンチポイントの発生を防止する,すなわち,安全性を高めることは,特定の技術分野に限られた技術課題ではなく,回動して交叉する2つの部材を有する装置において普通に要請される一般的技術課題であるといえる。
そうすると,一般的に知られた上記技術的事項を引用発明1に適用して,相違点2における補正発明の構成とすることは,十分動機付けがあり,また,何ら阻害要因や困難性もなく,当業者が容易に想到し得た事項であるといえる。

(相違点3について)
刊行物1の図7及び上記記載事項(1-エ)に「1つの回転アーム750は,表示装置730に回転ヒンジ760を用いて接続する。この接続で,オペレーターは,希望の位置へ表示装置730を回転し,傾けることができる。」とあるように,「上側関節アームの第2端が,垂直軸のまわりで回動する関節ジョイントで表示装置に接続される」ことも,本願優先権主張日前に一般的に知られた技術的事項に過ぎない。
そうすると,一般的に知られた上記技術的事項を引用発明1に適用して,相違点3における補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項であるといえる。

(効果について)
そして,相違点1?3による効果は,刊行物1記載の事項,周知慣用の事項および一般的に知られた技術的事項から,当業者ならば予測し得る範囲のものであって,格別顕著なものとはいえない。

したがって,補正発明は,引用発明1,周知慣用の事項および一般的に知られた技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1ないし16に係る発明は,平成22年6月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであって,その請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
超音波診断イメージングシステムであって、
前記システムの電子構成要素が配置され、上面を持つカートと、
前記カート上に取り付けられた制御パネルと、
下端において前記カートに回動可能に取り付けられ、前記カートの上で一定の角度で傾斜された下側関節アーム、及び一端において前記下側アームの前記上端に回動可能に取り付けられ、第2端を持つ上側関節アームを持つ、前記カートの前記上面に取り付けられた関節機構と、
前記上側関節アームの前記第2端に回動可能に取り付けられる表示装置と、
を有する超音波診断イメージングシステム。」(以下「本願発明」という)

2 引用刊行物等の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1,3の記載事項は,前記「第2 2 引用刊行物等の記載事項」に記載したとおりである。

3 対比,検討
(1)対比
本願発明と引用発明2とを比較すると,引用発明2の「診断医療イメージング超音波システム」は,本願発明の「超音波診断イメージングシステム」に相当し,刊行物1の上記記載(1-ア)にその構成要素が記載されている引用発明2の「超音波イメージ発生器」は,前記診断医療イメージング超音波システムの電子構成要素に他ならないから,引用発明2の「超音波イメージ発生器を運び,上面を持つ超音波システムカート」は,本願発明の「前記システムの電子構成要素が配置され,上面を持つカート」に相当する。
また,引用発明2の「下側の第2アーム」,「上側の第1アーム」は,それぞれ,本願発明の「下側関節アーム」,「上側関節アーム」に相当する。

そうすると,両者は,
(一致点)
「超音波診断イメージングシステムであって,
前記システムの電子構成要素が配置され,上面を持つカートと,
一端において前記カートに回動可能に取り付けられた下側関節アーム,及び一端において前記下側関節アームの前記一端ではない他端に回動可能に取り付けられ,第2端を持つ上側関節アームを持つ,前記カートの前記上面に取り付けられた関節機構と,
前記上側関節アームの前記第2端に回動可能に取り付けられる表示装置と,
を有する超音波診断イメージングシステム。」
である点で一致し,下記の点で相違する。

(相違点4)
本願発明は「前記カート上に取り付けられた制御パネル」を有するのに対し,引用発明2は,前記カート上に取り付けられた制御パネルを有することは特定されていない点。

(相違点5)
「下側関節アーム」が,本願発明では「前記カートの上で一定の角度で傾斜された下側関節アーム」であって,「下端において前記カートに回動可能に取り付けられた」ものであるのに対し,引用発明2では「一定の角度で傾斜している」ものではなく,「下側関節アームの2つの端部に上端,下端の区別がない」点。

(2)相違点についての検討
(相違点4について)
相違点4は,相違点1と同じであるから,上記「第2 3 対比,検討 (2)相違点についての検討 (相違点1について)」にて検討したとおりである。

(相違点5について)
相違点5は,実質的に相違点2と同じであるから,上記「第2 3 対比,検討 (2)相違点についての検討 (相違点2について)」にて検討したとおりである。

したがって,本願発明も,引用発明2,周知慣用の事項および一般的に知られた技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-10 
結審通知日 2014-01-14 
審決日 2014-01-27 
出願番号 特願2003-349851(P2003-349851)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 森林 克郎
三崎 仁
発明の名称 関節型ディスプレイを持つ超音波診断イメージングシステム  
代理人 津軽 進  
代理人 笛田 秀仙  

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