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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1288287
審判番号 不服2013-14851  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-02 
確定日 2014-06-06 
事件の表示 特願2009-031192「携帯電話端末の機能制御システム及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年8月26日出願公開、特開2010-187286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成21年2月13日の出願であって、平成25年4月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月2日に審判請求がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年4月11日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】 チケット購入又は入館申請により入ることが可能になる地域に入る前において、チケット購入時又は入館申請時に、自携帯端末の通信機能を用いてサーバ装置とデータ通信をすることにより、自携帯端末の利用者に対する、時間毎・場所毎・機能毎の機能制御情報を前記サーバから取得して記憶する取得・記憶手段と、
前記取得・記憶手段に記憶されている前記機能制御情報と、現在時刻と、自携帯端末の現在場所とに基づいて、各機能を有効にするか又は無効にするかを判断する判断手段と、 前記判断手段による判断に基づいて、各機能を有効又は無効にする制御手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末。」

2.引用発明
これに対して、原審の平成25年2月20日付け拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2006-31458号(以下、「引用例」という。)には、「携帯端末装置及び端末機能制限方法」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、非接触型のICカードと称される個人認証や代金決済を行う装置に相当する機能が内蔵又は装着された携帯端末装置及びその端末の機能制限方法に関し、特に、特定の場所に入場するための認証又は決済を行う場合に適用して好適な技術に関する。」

ロ.「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カメラや録音装置は、使用が規制されている場所が少なからず存在する。このため、カメラ機能付の携帯電話端末が持ち込まれた場合に、その端末を利用して、撮影禁止の場所やコンサート会場などが不正に撮影されることがないように、特定の場所に携帯電話端末を持ち込んだ場合に、その端末の機能を制限することが、特許文献1には記載されている。
【0006】
特許文献1には、携帯電話端末が備える無線電話通信機能を利用して、端末の使用禁止区域に入る際に、無線電話通信用の基地局からの信号に基づいて、端末の機能を制限させる処理についての記載がある。
【0007】
ところが、特許文献1に記載のように、無線電話通信用の基地局、あるいは基地局と同等の信号を発する通信装置からの信号の受信状況で端末の機能の制御を行うようにすると、基地局などからの信号が受信できる範囲は、一義的に決まるものではなく、そのときの電波の伝搬状況や、端末の受信性能などから、異なってしまう問題がある。従って、端末の機能が制限される範囲が、不確定となり、好ましくない問題がある。即ち、ある位置にある特定の端末では、機能を制限する信号を受信できたために、機能が制限され、同じ位置にある別の端末では、基地局からの信号の受信状況が悪いために機能が制限されない状況があり得ることになる。従って、従来技術では、端末の機能制限が必ずしも有効に機能するとは言えない状況であった。
【0008】
なお、ここまでの説明では、携帯電話端末を例にして説明したが、携帯電話端末以外のその他の携帯用の端末装置で、カメラ機能などの各種機能を備えた場合にも、同様の問題が存在する。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、携帯端末が備える機能の制限が、有効に機能するようにすることを目的とする。」

ハ.「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外部の近接したリーダ・ライタと無線通信を行う通信処理手段を備えた携帯端末装置に、特定の認証又は決済の処理が可能なことを登録し、リーダ・ライタとの通信で、認証又は決済のための処理が行われた場合に、所定の機能の動作について制限させるようにしたものである。
【0011】
このようにしたことで、特定の認証又は決済の処理が可能なことを登録した上で、その登録された認証又は決済処理を行うために、リーダ・ライタに近接させて通信を行うことで、そのことを契機として、機能制限が行われる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、リーダ・ライタに近接させて認証又は決済処理させたことを契機として、機能制限が行われ、例えば特定の場所に入場可能な登録を行った端末装置を使用して、その登録された場所に入場するための認証を行うことで、入場と同時に、その入場した者が所持した端末装置の機能制限が行われ、入場者などに対する確実な機能制限が可能となる。
【0013】
この場合、特定の認証又は決済の処理とは別の認証又は決済の処理が行われた場合に、機能の制限を解除するようにしたことで、例えば、退場する際の認証などを行うことで、制限された機能を元に戻すことが可能になる。
【0014】
また、特定の認証又は決済の処理が行われてから、予め設定した時間が経過した場合に機能の制限を解除するようにしたことで、時間で機能制限を管理することが可能になり、機能制限されたままになることがない。
【0015】
また、現在位置を判定して、特定の認証又は決済の処理が行われてから、現在位置の移動を判断した場合に、機能の制限を解除するようにしたことで、端末装置の所持者が移動することで、自動的に機能制限が解除され、特定の場所だけでの機能制限として有効に機能する。」

ニ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
本例においては、非接触で無線通信を行うICカード機能が内蔵された携帯電話端末を使用する場合の処理に適用したものである。また本例では、携帯電話端末に内蔵されたICカード機能を使用して、特定の場所に入場できるように登録してあるものとする。さらに本例の携帯電話端末は、カメラ機能と、位置を測位する機能が内蔵された端末装置としてある。
【0017】
図1は、本例のシステム構成例を示した図である。図1に示すように、撮影制限などの機能制限を行う機能制限区域10が設定してあり、その機能制限区域10に入場するために、入場ゲート11が設置してある。入場ゲート11には、ICカード(又はICカード機能付端末)と通信を行うリーダ・ライタ12が設置してあり、機能制限区域10に入場できることが登録されたICカードを、リーダ・ライタ12に近接させて認証させることで、入場が許可されるシステムとしてある。リーダ・ライタ12は、例えば図示しない管理センタと通信を行う構成としてあり、管理センタ側に、機能制限区域10に入場できることが登録されたICカードの識別番号などの情報が記憶させてあり、リーダ・ライタ12が読み取ったICカードの識別番号などを、センタに記憶された情報と比較して、認証処理を行うようにしてある。リーダ・ライタ12を使用した認証処理をしない場合には、入場ゲート11の扉を開けない等の処理で、機能制限区域10に入場できないようにする。
【0018】
なお、機能制限区域10に入場する際に、入場料などの決済が必要な場合には、リーダ・ライタ12とICカードとの通信で、認証の代わりに(又は前後に)決済処理を行うようにしてもよいし、これらを同時に行ってもよい。
【0019】(略)
【0020】
機能制限区域10としては、例えばカメラでの撮影や録音が禁止される、特定の会社の中や、コンサート会場などが想定される。会社の場合には、ICカードは、その会社への入場が許可される社員証や入社許可証として登録されたものとなる。コンサート会場である場合には、ICカードは、その会場で開催されるコンサートの入場券として予め登録されたものとなる。」

ホ.「【0021】
次に、本例のICカード機能付端末100の構成を、図2を参照して説明する。本例の携帯電話端末100は、無線電話通信用のアンテナ101を備え、そのアンテナ101が無線電話通信用の通信回路102に接続してあり、制御部120の制御で、基地局との間で無線通信を行うようにしてある。通信回路102で通話用の通信を行う際には、受信した音声データを音声処理部109で処理して、スピーカ104に供給して出力させ、マイクロフォン103が拾って出力する音声データを、音声処理部109で処理して、通信回路102に供給して送信させる。
【0022】(略)
【0023】
また本例の携帯電話端末100は、カメラ部108を備え、カメラ部108で静止画の撮影及び動画の撮影が行える。撮影されたデータは、例えばメモリ105に記憶させて保存することができる。動画撮影の際に、音声録音を行うようにしてもよい。
【0024】
また、時計部110を備えて、現在時刻の計時を行うようにしてある。時計部110で現在時刻の計時を行う場合には、例えば無線電話システムなどで、時刻が自動的に補正されて、ユーザが時刻を修正できないようにしてもよい。さらに、位置検出部111を備えて、端末100の現在位置の測位を行うようにしてある。位置検出部111での現在位置の測位としては、例えばGPS(Global Positioning System)と称される人工衛星からの信号を受信して、測位するシステムが適用できる。或いは、無線電話用のどの基地局からの信号が、通信回路102でどの程度のレベルで受信できるかによって、測位するようにしてもよい。
【0025】
これらの端末100内の各ブロックは、制御ライン130を介して制御部120などと接続してあり、制御部120の制御で処理が行われるようにしてある。またデータライン140を介してデータ転送を行える構成としてあり、メモリ105に必要なデータを記憶させるようにしてある。このメモリ105には、携帯電話端末として必要なデータだけでなく、後述するICカード機能部150で必要なデータについても記憶させてある。但し、ICカード機能部150で必要なデータの一部については、ICカード機能部150側に記憶させるようにしてもよい。また本例においては、制御部120の制御で、端末100内の特定の機能の動作を制限することができるようにしてある。具体的には、例えばカメラ部108での撮影ができないように、制御部120が制御できるようにしてある。この機能制限に関して制御部120が制御する場合、その機能制限のために予め登録を必要とするときには、その登録処理についても、制御部120が登録処理を制御する登録手段として機能する。」

ヘ.「【0028】
次に、本例のICカード機能付携帯電話端末100を使用して、図1に示した機能制限区域10に入場した場合の処理例を、図3以降のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
まず、ICカード機能付携帯電話端末100の所持者は、予め機能制限区域10に入場できるように、携帯電話端末100のICカード機能部を、機能制限区域10の管理を行う側に登録してあるものとする。その登録処理例を、図3のフローチャートを参照して説明すると、例えば登録用のリーダ・ライタと通信を行って、携帯電話端末100の非接触ICカード処理制御部152に、個人認証用の情報を登録し(ステップS11)、その後、該当する認証時に停止させる機能の登録を行い(ステップS12)、登録処理を終了する。このようにして登録された情報は、例えば認証管理者用のパスワードがないと、アクセスできないようにして、保護するようにしてもよい。
【0030】
ステップS12での停止機能登録としては、例えばカメラ部108での撮影機能などの、管理を行う側で定めた機能である。カメラ機能を制限させる場合、カメラ部108の全ての機能を制限させる場合の他に、例えば動画の撮影だけを規制させて、静止画の撮影は制限しない等のように、一部だけを規制させてもよい。或いは、撮影機能は全て制限させて、録音機能は制限させないようにしてもよい。或いはまた、携帯電話端末100全体の動作を停止させる制限処理を行うようにしてもよい。但し、この全体の動作を停止させる場合には、ICカード機能部だけは、動作を停止させないようにする。
【0031】
ステップS12で、認証時に停止させる機能の登録を行う際には、上述した停止させる機能だけでなく、停止させる契機と、その停止を復旧させる契機についても、認証を管理する側の制御で登録させる。停止させる契機については、ステップS11で登録した情報に基づいた認証処理が行われて、機能規制区域10に入場された際であるが、停止を復旧させる契機としては、種々の処理が想定される。例えば、機能規制区域10から退場するために、退場用のリーダ・ライタ(入場用のリーダ・ライタと同じでもよい)と通信を行って、退場用の認証処理を行った場合がある。また、コンサート会場などの場合には、コンサートが終了する時間を、停止を復旧させる契機として登録することができる。この場合には、端末100内の時計部110で計時する時刻で復旧が制御されることになる。また、機能規制区域10から離れたことを検出した場合に、停止を復旧させる契機として登録することもできる。この場合には、位置検出部111で測位した現在位置情報を利用して、機能規制区域10から移動したことが検出されたことを利用できる。この位置情報を利用する場合には、機能規制区域10の絶対的な位置情報について、端末100に登録させる必要がある。
【0032】
これらの登録情報は、例えば携帯電話端末100側では、メモリ105に記憶され、端末100の非接触ICカード機能部150がリーダ・ライタと通信を行って、登録された認証が行われた場合に、そのことを制御部120が検出して、登録された機能を停止させる機能制限処理を行うようにしてある。」

ト.「【0033】
次に、このように登録されたICカード機能付携帯電話端末100の所持者が、図1に示した機能制限区域10に入場する場合の処理例を、図4を参照して説明する。携帯電話端末100の制御部120は、リーダ・ライタとの通信で、登録された認証が行われて、機能停止契機となる処理が行われたか否か判断する(ステップS21)。この停止契機となる処理が行われない場合には、そのままで待機する。
【0034】
ここで、停止契機となる処理が行われた場合には、制御部120の制御で、登録された機能(例えばカメラ撮影機能)を停止させ、ユーザ操作では作動できないようにする(ステップS22)。その後、制御部120は、登録された復旧契機となる状態になったか否か判断する(ステップS23)。この復旧契機としては、例えば上述した機能制限区域10からの退場を契機とする処理、時刻を契機とする処理、移動を契機とする処理などである。復旧契機となる状態でない場合には、登録された機能を停止させたままとする。
【0035】
そして、復旧契機となったことが判断された場合には、ステップS22で停止させた機能の制限を解除させる復旧処理を行い(ステップS24)、ステップS21の判断に戻る。
【0036】
このようにして処理を行うことで、ICカード機能付携帯電話端末100を利用して、機能制限区域10に入場する場合に、その入場処理のために、入場ゲートのリーダ・ライタと通信を行って、入場用の認証処理を行うことで、その端末100が、予め登録された機能制限情報に基づいて、機能が制限され、機能制限区域として有効に機能する。即ち、本例の場合には、図1の入場ゲートのリーダ・ライタと通信を行って、認証できない限りは、機能制限区域10に入場できないので、ICカード機能付携帯電話端末100は、入場時には必ず機能が制限されることになり、機能制限区域10に認証処理されて入場した端末の機能が不正に使用されるのを効果的に防止することができる。」

チ.「【0042】
また、上述した実施の形態では、予め機能制限区域に入場できるように登録する処理として、ICカード機能を利用したリーダ・ライタとの通信で、登録処理を行う例について説明したが、携帯電話端末の無線電話機能を利用して、管理者側のサーバなどにアクセスして、登録処理を行うようにしてもよい。」

上記引用例の記載及び図面を参照すると、上記ハ.【0031】、ニ.【0016】、【0020】の記載によれば、引用例には、
「コンサート会場などの機能制限区域10に入場するための入場券等、特定の認証又は決済の処理が可能なことを予め登録したICカード機能を備え、制御部120の制御により、入場時の認証と同時に機能制限を行うようにしたICカード機能付携帯電話端末100」が記載されている。
上記ハ.【0031】、ヘ.、チ.、及び図3の記載によれば、引用例には、
「制御部120は、無線電話機能を利用して管理者側のサーバと通信を行うことにより、ICカード処理制御部152に、前記特定の認証又は決済の処理が可能なことを登録し、その後、例えば、停止させる機能として管理を行う側が定めたカメラ部108での撮影機能などと、その機能を停止させる契機と、その停止を復旧させる契機を登録」することが記載されている。
上記ヘ.【0031】、ト.【0033】?【0035】、及び図4の記載によれば、引用例には、
「制御部120」は、「コンサート会場等の機能制限区域10に入場する際、登録された認証が行われて、機能停止契機となる処理が行われた場合は、前記登録された機能を停止させ、その後、時計部110で計時した時刻がコンサート等の終了時刻となったこと、又は、位置検出部111で測位した現在位置情報が機能制限区域10から離れたことを検出して、登録された復旧契機となる状態になったか否かを判断し、復旧契機となる状態になったと判断された場合、前記機能の停止を解除させる」ことが記載されている。

したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「コンサート会場などの機能制限区域10に入場するための入場券等、特定の認証又は決済の処理が可能なことを予め登録したICカード機能を備え、制御部120の制御により、入場時の認証と同時に機能制限を行うようにしたICカード機能付携帯電話端末100において、
制御部120は、無線電話機能を利用して管理者側のサーバと通信を行うことにより、ICカード処理制御部152に、前記特定の認証又は決済の処理が可能なことを登録し、その後、例えば、停止させる機能として管理を行う側が定めたカメラ部108での撮影機能などと、その機能を停止させる契機と、その停止を復旧させる契機を登録し、コンサート会場等の機能制限区域10に入場する際、登録された認証が行われて、機能停止契機となる処理が行われた場合は、前記登録された機能を停止させ、その後、時計部110で計時した時刻がコンサート等の終了時刻となったこと、又は、位置検出部111で測位した現在位置情報が機能制限区域10から離れたことを検出して、登録された復旧契機となる状態になったか否かを判断し、復旧契機となる状態になったと判断された場合、前記機能の停止を解除させるようにしたICカード機能付携帯電話端末100。」

3.対比・判断
本願発明は、発明を特定する事項を、「チケット購入又は入館申請」、「チケット購入時又は入館申請時」というように択一的に記載しているので、ここでは、それぞれ前者の「チケット購入」、「チケット購入時」を選択して検討する。
イ.引用発明は、「ICカード機能付携帯電話端末100」であるから、「携帯端末」である点で本願発明と一致する。

ロ.引用発明の「コンサート会場などの機能制限区域10」は、「入場券等、特定の認証又は決済の処理が可能なことを予め登録したICカード機能」により「入場する」地域であるから、「チケット購入により入ることが可能になる地域」といえる。
また、引用発明の「停止させる機能として管理を行う側が定めたカメラ部108での撮影機能など」は、「機能毎の機能制御情報」といえる。
そして、機能毎の機能制御情報をサーバから取得する時点が、「チケット購入により入ることが可能になる地域に入る前」であることは自明である。
更に、「制御部120は、無線電話機能を利用して管理者側のサーバと通信を行うことにより、ICカード処理制御部152に、前記特定の認証又は決済の処理が可能なことを登録し、その後、例えば、停止させる機能として管理を行う側が定めたカメラ部108での撮影機能などと、その機能を停止させる契機と、その停止を復旧させる契機を登録」するものであるから、「ICカード処理制御部152」が何らかの記憶手段を有していることは自明であり、前記「制御部120」及び「ICカード処理制御部152」は、「自携帯端末の利用者に対する、機能毎の機能制御情報を前記サーバから取得して記憶する取得・記憶手段」といえる。
以上によれば、引用発明は、以下の相違点1、2は別として、「チケット購入により入ることが可能になる地域に入る前において、自携帯端末の通信機能を用いてサーバ装置とデータ通信をすることにより、自携帯端末の利用者に対する、機能毎の機能制御情報を前記サーバから取得して記憶する取得・記憶手段」を備える点で本願発明と一致する。

ハ.引用発明の「制御部120」による「コンサート会場等の機能制限区域10に入場する際、登録された認証が行われて、機能停止契機となる処理が行われた場合は、前記登録された機能を停止させ、その後、時計部110で計時した時刻がコンサート等の終了時刻となったこと、又は、位置検出部111で測位した現在位置情報が機能制限区域10から離れたことを検出して、登録された復旧契機となる状態になったか否かを判断」する処理は、「取得・記憶手段に記憶されている前記機能制御情報と、現在時刻と、自携帯端末の現在場所とに基づいて、各機能を有効にするか又は無効にするかを判断する」処理といえるから、かかる処理を行う「制御部120」は、本願発明の「判断手段」と一致する。

ニ.引用発明の「制御部120」による「復旧契機となる状態になったと判断された場合、前記機能の停止を解除させる」処理は、「前記判断手段による判断に基づいて、各機能を有効又は無効にする」処理といえるから、かかる処理を行う「制御部120」は、本願発明の「制御手段」と一致する。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「チケット購入により入ることが可能になる地域に入る前において、自携帯端末の通信機能を用いてサーバ装置とデータ通信をすることにより、自携帯端末の利用者に対する、機能毎の機能制御情報を前記サーバから取得して記憶する取得・記憶手段と、
前記取得・記憶手段に記憶されている前記機能制御情報と、現在時刻と、自携帯端末の現在場所とに基づいて、各機能を有効にするか又は無効にするかを判断する判断手段と、 前記判断手段による判断に基づいて、各機能を有効又は無効にする制御手段と、
を備える携帯端末。」

(相違点1)
本願発明は、機能制御情報をサーバから取得して記憶するタイミングが、「チケット購入時」であるのに対して、引用発明は、該タイミングが不明である点。

(相違点2)
本願発明は、機能制御情報が「時間毎・場所毎・機能毎」であるのに対して、引用発明は、「機能毎」である点。

そこで、まず、相違点1について検討する。
特開2006-25160号公報の【0059】、【0065】、特開2007-282017号公報の【0012】に記載されているように、携帯端末において、自携帯端末の利用者に対する機能制御情報を、チケット購入時に取得し記憶することは周知であるから、引用発明において、機能制御情報をサーバから取得して記憶するタイミングを、「チケット購入時」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

次に、相違点2について検討する。
引用発明では、携帯端末の特定の機能の有効/無効を、例えばコンサート会場エリア全域において、またコンサート時間全体に亘って制御するようにしており、コンサート会場の特定の場所や特定の時間帯において、有効/無効を制御するようなことは行われていない。
しかしながら、特開2001-36948号公報の【0010】【0011】に記載されているように、コンサートホールや劇場等では、携帯電話の使用を完全に禁止するのではなく、特定の場所や所定の時間帯に限っては携帯電話の通話を可能にして欲しいという社会的ニーズがあり、また、特開2007-300447号公報の【0020】、【0021】、前掲特開2007-282017号公報の【0008】?【0017】に記載されているように、イベント会場等の使用制限エリア内において、更に時間毎、場所毎に機能を制限することは周知と認められる。
上記社会的ニーズ及び周知技術に照らすと、引用発明において、「機能毎」の機能制御情報に「時間毎・場所毎」を加え、機能制御情報を「時間毎・場所毎・機能毎」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の効果も引用発明、及び周知技術から到達した構成から当業者が予測し得る範囲のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-02 
結審通知日 2014-04-03 
審決日 2014-04-22 
出願番号 特願2009-31192(P2009-31192)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町井 義亮  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 田中 庸介
山中 実
発明の名称 携帯電話端末の機能制御システム及びその方法  
代理人 永井 道雄  
代理人 仲野 孝雅  
代理人 関口 正夫  

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