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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
管理番号 1288482
審判番号 不服2013-342  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-09 
確定日 2014-06-12 
事件の表示 特願2006-114891「高防食性亜鉛末含有塗料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日出願公開、特開2007-284600〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
この出願は、平成18年4月18日の出願であって、平成23年11月16日付けの拒絶理由通知に対して平成24年1月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年1月9日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正書が提出され、当審において同年8月30日付けで審尋がされ、同年11月1日に回答書が提出され、同年12月11日付けで拒絶理由が通知され、平成26年2月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願の請求項2に係る発明
平成26年2月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載によれば、本願の請求項2に係る発明は、
「更に(E)カップリング剤を含有する、請求項1に記載の高防食性亜鉛末含有塗料組成物。」
である。そして、「請求項1に記載の高防食性亜鉛末含有塗料組成物」は、
「A)エポキシ樹脂(ただし、エポキシ-ケチミン樹脂を除く。)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂(ただし、ポリイソシアネートポリマーを除く。)から選択されるバインダー樹脂100質量部(固形分重量)、(B)亜鉛末200?800質量部(ただし、本塗料組成物は亜鉛合金粉末は含まない。)、(C)ハイドロカルマイト又はハイドロタルサイトである腐食性イオン固定化剤を1?95質量部、(D)溶媒200?1000質量部を含有する高防食性亜鉛末含有塗料組成物。」
であるから、本願請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1を引用せずに記載すると、
「A)エポキシ樹脂(ただし、エポキシ-ケチミン樹脂を除く。)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂(ただし、ポリイソシアネートポリマーを除く。)から選択されるバインダー樹脂100質量部(固形分重量)、
(B)亜鉛末200?800質量部(ただし、本塗料組成物は亜鉛合金粉末は含まない。)、
(C)ハイドロカルマイト又はハイドロタルサイトである腐食性イオン固定化剤を1?95質量部、
(D)溶媒200?1000質量部、
更に(E)カップリング剤
を含有する、高防食性亜鉛末含有塗料組成物。」
であると認められる。

第3 当審が通知した拒絶の理由
平成25年12月11日付けで当審が通知した拒絶理由は、「本願請求項1?2に係る発明は、本願出願日前に頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、刊行物1?5として以下のものが提示されている。

1.特公昭63-6115号公報
2.特開2000-239570号公報
3.特開昭59-166568号公報
4.特開2005-336002号公報
5.特開2004-43905号公報(原査定における「引用文献A」)

第4 当審の判断
当審は、以下に詳述するとおり、本願発明は、上記拒絶理由に記載した理由によって拒絶をすべきものと判断する。

1.刊行物等及び刊行物等の記載事項
(1)刊行物等
刊行物1:特公昭63-6115号公報(上記刊行物1に同じ。)
刊行物2:特開2000-239570号公報(上記刊行物2に同じ。)
刊行物3:特開昭59-166568号公報(上記刊行物3に同じ。)
刊行物4:特開2005-336002号公報(上記刊行物4に同じ。)
刊行物5:特開2004-43905号公報(上記刊行物5に同じ。)
周知例1:特公昭58-56591号公報
周知例2:特公昭58-1704号公報

(2)刊行物等に記載された事項
(ア)刊行物1について
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

1a:「ジンクリツチペイントは一般に多量の亜鉛粉末を有機系または無機系の結合剤と混合して得られる塗料であつて、塗膜中の亜鉛と鉄鋼面との電気化学的作用による亜鉛の犠牲陽極作用と、亜鉛の腐食生成物による酸素や水分の遮断作用によつて防錆効果をもたらすものである。
この目的のために一般にジンクリツチペイントは乾燥塗膜中に亜鉛粉末を50?95重量%を含有することが必要である。またジンクリツチペイントに使用される亜鉛粉末は亜鉛酸化物や他の金属類を不純物として含有しない純度の高いものが防錆力に優れていることは周知である。
しかしながらこのジンクリツチペイントには次の様な欠点があつた。確かにジンクリツチペイントは他の成分からなる防錆塗料に比較して防錆力が高い。しかしこの防錆力は前述した様に塗膜中の亜鉛の犠牲陽極作用と腐食生成物を形成することによるものであるから塗膜中の亜鉛は消耗し防錆力が低下していくことは避けられない。特に高湿度雰囲気、塩素イオンを含む腐食環境においては、腐食生成物は緻密なものとなり得ないので防食作用が弱く、急速に塗膜中の亜鉛が溶出し消耗する。この様なことからジンクリツチペイントは長期的な防錆力を保持することは出来なかつた。
そこでジンクリツチペイントの欠点を改良するため、他の成分の防錆顔料を種々混合する塗料が開発されているが、長期的な防錆性において十分な効果をもたらすものは未だ出現していない。このためジンクリツチペイントで長期的な防錆効果を得るためには経済的には不味ではあるが、厚膜に塗装して防錆効果を保持していた。
本発明は上述した様なジンクリツチペイントの欠点を除去し、長期的な防錆力に優れた性能を有する新規な防錆塗料組成物を提供することを目的とするものである。」(第3欄6?40行)

(イ)刊行物2について
上記刊行物2には、以下の事項が記載されている。
2a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)シランカップリング剤、及び(D)粒子径10?50μmの亜鉛末を主成分とし、該シランカップリング剤(C)を塗料中の樹脂固形分100重量部に対して0.5?20重量部、さらに該亜鉛末(D)を塗料固形分中50?95重量%含有することを特徴とする防食塗料組成物。」
2b:「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、橋梁、プラントなど大型鋼構造物の摩擦接合部の塗装に有用な防食塗料組成物に関する。
【0002】
【従来技術及びその課題】橋梁、プラントなどの大型鋼構造物の建造に使用される鋼材には、加工・組立て期間中の錆の発生を防止するために、通常、ブラスト処理後に防錆性等に優れた防錆塗料としてジンクリッチペイントが予め塗装されている。該ジンクリッチペイントには、主にエポキシ樹脂などの有機系樹脂を結合剤とするものと、アルキルシリケ-トの加水分解縮合物などの無機系樹脂を結合剤とするものがあり、夫々適宜利用されている。
【0003】従来、上記のような大型鋼構造物の接合手段として、高力ボルトによる接合が広く用いられている。・・・この表面処理としてもジンクリッチペイントがしばしば使用されてきたが、塗膜が脆く、例えばボルト締め付け時等に塗膜が剥離する恐れがあり、またすべり係数も十分とは言えなかった。
・・・
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、粒子径の大きい亜鉛末を含有せしめて塗膜のすべり係数を確保するだけでなく、特定量のシランカップリング剤を配合せしめることにより鋼材と塗膜との密着性を高めることで接合部の摩擦耐力を向上させることを見出し本発明に到達した。」
2c:「【0018】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、以下「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0019】実施例1
「エピコ-ト1001-X-70」(油化シェルエポキシ社製、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂の不揮発分70%溶液)5部、タルク20部、酸化チタン3部、粒径約20μmの亜鉛末50部、ベントン0.2部、及び混合溶剤(トルエン/プロピレングリコ-ルモノメチルエ-テル/メチルイソブチルケトン)11.8部を容器に配合して混合攪拌し、ジンクリッチペイント主剤を得た。
【0020】次いでポリアミドアミン(「H1060」、三洋化成社製)3部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.25部及び上記混合溶剤6.75部を混合してなる硬化剤を、上記主剤に混合し、防食塗料を得た。
【0021】実施例2?6及び比較例1?3
実施例1において、塗料配合組成を表1に示す通りとする以外は実施例1と同様にして各防食塗料を得た。
【0022】得られた各防食塗料を下記性能試験に供した。結果を表1に併せて示す。
【0023】(試験方法)
・・・
【0024】(2)複合サイクル防食性試験:JHS403-1992の「塗料の耐複合サイクル防食性試験」方法に準じて、各防食塗料を被試験体に乾燥膜厚で75μmとなるよう塗装・乾燥させたものを、30日間試験に供し、下記基準で評価した。
○:一般部の塗膜に異常がなく、カット部では錆・フクレ幅が1.0mm未満
×:一般部の塗膜に錆が発生、もしくはカット部では錆・フクレ幅が1.0mm異常
(3)付着力:各防食塗料を被試験体に乾燥膜厚で75μmとなるよう塗装・乾燥させたものを、エルコメ-タ-社製「アドヒ-ジョンテスタ-」を用いて、付着力(kgf/cm^(2 ))を測定した。」
2d:「【0026】
【表1】



(ウ)刊行物3について
上記刊行物3には、以下の事項が記載されている。
3a:「樹脂を含む塗膜形成成分と、該塗膜形成成分100重量部に対し0.5?20重量部のハイドロタルサイトを含有することを特徴とする耐糸状腐食性塗料組成物」(第1頁「特許請求の範囲」の請求項1)
3b:「本発明の塗料組成物は、樹脂を含む塗膜形成成分と、該塗膜形成成分100重量部に対し0.5?20重量部のハイドロタルサイトを含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、糸状腐食を抑制することができる優れた塗料組成物を提供することができる。また、この塗料組成物は、後述する塩水噴霧試験に対しても優れた効果を有し、更に塗膜表面の滑らかさを損うおそれがない。
次に、本発明に係る塗料組成物が、この様な糸状腐食進行を阻止する理由は次のように考えられる。即ち、本発明の塗料組成物に含まれるハイドロタルサイトは、糸状腐食の直接原因と考えられている糸状腐食の先端に存在する酸と反応し、糸状腐食先端の酸性を継続的に中和する。しかして、ハイドロタルサイトのもつ陰イオン交換能により、糸状腐食の進行に触媒的役割を果たしていると考えられてる1価の無機陰イオンを捕捉し、糸状腐食先端を移動する1個の無機イオンを固定化する。」(第2頁左上欄9行?右上欄8行)
3c:「糸状腐食は容器、家具、電気製品、自動車などの塗装品における腐食形態の代表的なものの一つであり、この腐食を抑制するための努力が続けられている。」(第1頁右欄6?9行)

(エ)刊行物4について
上記刊行物4には、以下の事項が記載されている。
4a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硝酸イオンを含有するハイドロタルサイト粉末であって、該ハイドロタルサイト粉末5gを0.2モル/Lの塩化ナトリウム水溶液100mLに加え25℃で4時間放置した時に溶出する亜硝酸イオンの量が35mg/g以上であることを特徴とする亜硝酸イオン型ハイドロタルサイト粉末。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイト粉末5gを0.2モル/Lの塩化ナトリウム水溶液100mLに加え25℃で4時間放置した時に吸着する塩化物イオンの吸着量が20mg/g以上である請求項1記載の亜硝酸イオン型ハイドロタルサイト粉末。
・・・
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれかに記載の亜硝酸イオン型ハイドロタルサイト粉末を含有する
ことを特徴とする防錆剤組成物。
【請求項10】
更に、防錆顔料を含有する請求項9記載の防錆剤組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の防錆剤組成物を含有することを特徴とする防錆塗料組成物。」
4b:「【0021】
本発明にかかる亜硝酸イオン型ハイドロタルサイト粉末は前記亜硝酸イオン放出量の多い特性を有することにより、該ハイドロタルサイト粉末を含有する防錆剤組成物は金属材料に長期に亘って優れた防錆性能を付与することができる。
【0022】
さらに、本発明の亜硝酸イオン型ハイドロタルサイト粉末は、前記した亜硝酸イオン放出量であることに加え、塩化物イオン吸着量が20mg/g以上、好ましくは25?100mg/gであり、防錆性などの様々な効果を発現することができる。」

(オ)刊行物5について
上記刊行物5には、以下の事項が記載されている。
5a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮き錆のみ除去した錆が残存する耐候性鋼表面に、(a)湿気硬化型樹脂、(b)導電性材料、(c)腐食イオン固定化剤、及び(d)カップリング剤を含有する素地調整剤の塗膜(A)を、乾燥塗布量0.03?2kg/m^(2)の範囲で形成し、次いで、防錆剤を含有した防食塗膜(B)を、乾燥膜厚30?150μmで形成し、更に、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が85%以上の着色上塗塗膜(C)を、乾燥膜厚20?90μmで形成することを特徴とする耐候性鋼の防食法。
【請求項2】
前記素地調整剤のうち、(a)成分100質量部に対して、(b)成分を1?50質量部、(c)成分を1?95質量部、及び(d)成分を0.1?10質量部含有し、かつ(b)成分と(c)成分の合計が、5?100質量部である請求項1記載の防食法。」
5b:「【0013】
(c)成分について
(c)成分は、錆層と鉄素地との界面に存在するCl^(-)や、SO_(4)^(2-)等の腐食性イオン物質を捕集するとともに化学反応し、水不溶性の複塩を形成し、腐食性イオンを固定化し、不活性化するための腐食性イオン固定化剤である。このような固定化剤の例としては、代表的には、ハイドロカルマイトや、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
ハイドロカルマイトは、式、
・・・・で示される層状構造を持つ含水結晶性粉末である。アニオン(X)としては、・・・が代表的なものとして挙げられる。
これらアニオンは、塩素イオンや、硫酸イオン等と接触するとアニオン交換し、XであるNO^(3-)や、NO^(2-)等を遊離するとともに、腐食性イオン物質をハイドロカルマイト中に固定化し、不活性化する。また、遊離した上記アニオンは、耐候性鋼材表面に不働態皮膜を形成し、防食性を更に向上させる効果を有する。
ハイドロタルサイトは、式、
・・・で示される層状構造を持つ含水結晶性粉末である。これらアニオンは、塩素イオンや、硫酸イオン等と接触するとアニオン交換し、OH^(-)や、CO_(3)^(2-)を遊離するとともに、腐食性イオン物質をハイドロタルサイト中に固定化し、不活性化する。」
5c:「【0040】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。
なお、実施例中、「部」、「%」は、質量基準で示す。
(イ)素地調整剤の塗膜を形成するための組成物の調製
以下の表1に示す成分を混合分散し、素地調整剤の塗膜を形成するための組成物を調製し、密閉容器に貯蔵した。
【0041】
【表1】素地調整剤の塗膜を形成するための組成物

・・・
【0047】
実施例1
5年間無処理で屋外暴露し、浮き錆を有する3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面の付着物や脆弱錆のみをスコッチブライト除去し、表1に示す素地調整剤(i)を0.1kg/m^(2)となるよう塗装し、乾燥して、素地調整剤の塗膜を形成し、その上に、下記組成の防食塗料を乾燥膜厚が70μmになるよう塗装し、乾燥後、更にフッ素樹脂上塗塗料を乾燥膜厚が50μmになるよう一回塗装し、乾燥した後、裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。
その塗装鋼の耐候性及び防食性などの評価結果を以下の表2に示す。
【0048】
「防食塗料」
〔主剤成分〕
エポキシ樹脂溶液 ^(注6)) 200.0部
亜鉛粉末 29.6部
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 6.4部
メチルエチルケトン 26.0部
注6)エポキシ当量450のビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分50%
【0049】
〔硬化剤成分〕
ポリアミドアミン樹脂溶液 ^(注7)) 101.6部
キシレン 172.4部
注7)アミン価75mgKOH/g、固形分65%
「着色上塗塗料」
〔主剤成分〕
フッ素樹脂溶液 ^(注8)) 154.0部
二酸化チタン 55.4部
キシレン 61.6部
注8)樹脂の水酸基価45mgKOH/g、数平均分子量7000、
固形分65%
〔硬化剤成分〕
ヘキサメチレンジイソシアネート 17.6部
酢酸ブチル 53.6部」
5d:「【0061】
比較例1
5年間無処理で屋外暴露し、浮き錆を有する3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面の付着物、脆弱錆のみをスコッチブライト除去し、全く塗装しないで、耐候性及び防食性を評価した。その結果を以下の表2に示す。
【0062】
比較例2
実施例1において、素地調整剤及び防食塗料を塗装しないで、着色フッ素樹脂系上塗塗料のみを塗装し、その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した。その結果を以下の表2に示す。
【0063】
比較例3
5年間無処理で屋外暴露し、浮き錆を有する3×100×300(mm)のJIS G3141に規定された耐候性鋼(SMA400)表面の付着物、脆弱錆のみをスコッチブライト除去し、表1に示す素地調整剤(iv)を0.1kg/m^(2)となるよう塗装し、乾燥した後、防食塗料及び着色上塗塗料を塗装しないで裏面及び側面をエポキシ樹脂塗料でシールし、7日間自然乾燥させた。
その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0064】
比較例4
実施例1において、素地調整剤を塗装した後、防食塗料を塗装しないで、着色上塗塗料を塗装し、その塗装鋼の耐候性及び防食性を評価した結果を以下の表2に示す。
【0065】
【表2】塗装鋼の耐候性及び防食性、付着性の評価結果

【0066】
注24)サンシャインウェザーメーター300時間後の光沢保持率(%)
注25)屋外暴露2年
注26)複合サイクル試験1200サイクル後の防食性評価
注27)複合サイクル試験1200サイクル後の2mm碁盤目試験
表2からも明らかな通り、本発明の実施例においては、塗装鋼に対して、任意の色に着色でき、また塗装鋼に、優れた耐候性及び防食性を付与することができる。一方、無塗装の比較例1、素地調整剤の塗膜を形成していない比較例2、素地調整剤の塗膜のみの比較例3、及び防食塗料のみ塗装しない比較例4では、いずれも赤錆が発生した。」

(カ)周知例1について
上記周知例1には、以下の事項が記載されている。

6a:「本発明はかかる従来のジンクリツチ塗料の欠点を補い、密着性、耐食性、溶接性の3つの特性のすべてを満足しうる金属被覆用の組成物を提供するものである。本発明者らは、上記ジンクリツチ塗料の欠点を解消した組成物として、すでに亜鉛末塗料のビヒクルとしてエポキシ系樹脂と有機りん化合物とを配合したビヒクルを用い、必要によりこれらに硬質導電性粉末を添加した組成物を発明し、同時に特許出願しているが、本発明はその発明による組成物より一層進んだ組成物、すなわち耐食性を一段と向上させた組成物を提供せんとするものである。
本発明の組成物は、エポキシ系樹脂と有機りん化合物からなるビヒクルに亜鉛末とマグネシウム化合物粉末と必要により硬質導電性粉末を配合してなるものである。」(第2欄31行?第3欄9行)
6b:「第 1 表
・・・

」(第6?9頁)

(キ)周知例2について
上記周知例2には、以下の事項が記載されている。

7a:「特許請求の範囲
1 (イ) 亜鉛粉末20?80重量%と導電性酸化亜鉛80?20重量%とを混合してなる防錆顔料50?95重量部及び
(ロ)結合剤として有機合成樹脂又は無機結合剤を5?50重量部(不揮発分として)含み、有機溶剤又は水を加えてなる、改良された溶接性、防錆性と上塗適合性を有する防食用塗料の組成物。」
7b:「 従来より腐食性金属面のための保護被覆組成物として亜鉛粉末を主成分とする種々の組成物が提案されている。・・・一般に市販されている亜鉛粉末塗料には通常、亜鉛粉末が70重量%以上の高濃度の亜鉛粉末が含まれている。しかしながら該高濃度亜鉛粉末塗料を塗装した鋼板を溶接、溶断する場合、・・・作業員が亜鉛熱病にかかる恐れもある。
又、該高濃度亜鉛粉末塗料を塗布した鋼板は溶接、溶断性が悪く、・・・溶接、溶断が非常に困難になるといわれている。又高濃度亜鉛粉末塗料を塗付した鋼板は、・・・フクレが発生し、付着性が著しく低下する。
高濃度亜鉛粉末塗料において亜鉛粉末の一部をアルミニウム金属粉等で置換することが提案されているが、・・・防食性に実用上支障を来たす。
本発明は上記の如き溶接性、上塗適合性に有害な亜鉛粉末の一部を防食効果を減じない程度に、化学的により安定な導電性酸化亜鉛に置換し溶接性上塗適合性を改良した防食塗料組成物であり、本発明に従うときは、・・・溶接性が著しく改良されかつ溶性速度が上昇すると共にすぐれた防食効果を与え上塗適合性も改善される。」(第1欄34行?第3欄3行)
7c:「以下の例においてとくに掲記しない限り成分の数量は重量部であらわす。
・・・

」(第4欄38行?第9欄2行)

2.刊行物2に記載された発明
刊行物2には、摘示2aの記載からみて、
「(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)シランカップリング剤、及び(D)粒子径10?50μmの亜鉛末を主成分とし、該シランカップリング剤(C)を塗料中の樹脂固形分100重量部に対して0.5?20重量部、さらに該亜鉛末(D)を塗料固形分中50?95重量%含有することを特徴とする防食塗料組成物。」
が、記載され、また、実施例(摘示2c及び2d)においては、溶剤を用いて上記防食塗料組成物を調整することが記載されている。
よって、刊行物2には、
「(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)シランカップリング剤、及び(D)粒子径10?50μmの亜鉛末を主成分とし、該シランカップリング剤(C)を塗料中の樹脂固形分100重量部に対して0.5?20重量部、さらに該亜鉛末(D)を塗料固形分中50?95重量%、及び、溶剤を含有する防食塗料組成物。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されていると認められる。

3.対比・判断
(1)対比
引用発明の「エポキシ樹脂」は「アミン硬化剤」とともに用いられるものであるから、「エポキシ-ケチミン樹脂」には該当せず、本願発明の「エポキシ樹脂(ただし、エポキシ-ケチミン樹脂を除く。)、・・・から選択されるバインダー樹脂」に相当する。
また、引用発明の「亜鉛末」は、特に合金粉末を用いるものでないので、本願発明の「亜鉛末」及び、「(ただし、本塗料組成物は亜鉛合金粉末は含まない。)」に相当することは明らかである。
さらに、引用発明の「溶剤」及び「シランカップリング剤」が、本願発明の「溶媒」及び「カップリング剤」に相当することも明らかである。
そして、引用発明の「防食塗料組成物」は、「防食」性であり、「高防食」性であることと客観的な差違があるものとは認められず、また、「亜鉛末」を含有するものであるから、本願発明の「高防食性亜鉛末含有塗料組成物」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「A)エポキシ樹脂(ただし、エポキシ-ケチミン樹脂を除く。)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂(ただし、ポリイソシアネートポリマーを除く。)から選択されるバインダー樹脂、
(B)亜鉛末(ただし、本塗料組成物は亜鉛合金粉末は含まない。)、
(D)溶媒、
更に(E)カップリング剤
を含有する、高防食性亜鉛末含有塗料組成物。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願発明においては、「(B)亜鉛末」、及び「(D)溶媒」の含有量が、「バインダー樹脂100質量部(固形分重量)」に対し、それぞれ、「200?800質量部」及び「200?1000質量部」であるのに対し、引用発明においてはそのような含有量とはなっていない点

相違点2:本願発明は、「ハイドロカルマイト又はハイドロタルサイトである腐食性イオン固定化剤を1?95質量部」を含有するのに対し、引用発明においてはそのような特定がなされていない点

(2)相違点等の判断
ア.相違点1について
引用発明は、「ジンクリッチペイント」に係る発明であり(摘示2b及び2c)、また、「亜鉛末」は、「塗料固形分中50?95重量%含有」されるものである。そして、例えば、実施例2においては、エポキシ樹脂である「エピコート1001-X-70」(不揮発分70%)10部に対して亜鉛末63部、及び溶剤を11部程度配合すること、すなわち、樹脂の固形分100重量部に対して、亜鉛末を900重量部、溶剤を157重量部程度と、本願発明に近い配合量にて亜鉛末と溶剤を配合することも記載されている。
そして、「ジンクリッチペイント」において、結合剤成分である樹脂の固形分100重量部に対して、200?800重量部程度の割合で亜鉛末を配合することも通常行われている。(例えば、周知例1の実施例5、8、9、12、14、16?18には、エポキシ樹脂100重量部に対する割合に換算して、亜鉛末を227(実施例8)?763(実施例12)重量部程度含有する、従来のジンクリッチ塗料を改良した金属被覆用組成物が記載されている(摘示6a及び6bを参照)。また、周知例2の実施例11?13には、エポキシ樹脂100重量部に対する割合に換算して、亜鉛粉末を291?473重量部程度含有する、従来の高濃度亜鉛粉末塗料(ジンクリッチペイントと同義)を改良した防食用塗料の組成物が記載されている(摘示7a?7cを参照)。)
よって、上記実施例において配合されている割合から、防食性の程度や付着性を考慮して、亜鉛末の配合量を上記のような通常行われている範囲とすることは当業者が容易になし得るものである。
また、溶媒についても、その配合量を、塗布作業性などの点から好適化することも通常行われており、上記実施例において配合されている割合から、特に、樹脂の固形分100重量部に対して、溶剤を200?1000重量部となるように調整することも当業者が適宜なし得るものである。
よって、引用発明において、「(B)亜鉛末」、及び「(D)溶媒」の含有量が、「バインダー樹脂100質量部(固形分重量)」に対し、それぞれ、「200?800質量部」及び「200?1000質量部」となるように調整することは当業者が容易になし得るものである。

イ.相違点2について
上記刊行物3には、摘示3a及び3bの記載からみて、「耐糸状腐食性塗料組成物」において、樹脂を含む塗膜形成成分100重量部に対してハイドロタルサイトを0.5?20重量部含有させることにより、ハイドロタルサイトのもつ陰イオン交換能により、無機陰イオンを捕捉し、固定化して、塩水噴霧試験等にも優れた腐食抑制効果を発揮できることが記載されている。

また、刊行物4には、摘示4aの記載からみて、「亜硝酸イオンを含有するハイドロタルサイト粉末であって、該ハイドロタルサイト粉末5gを0.2モル/Lの塩化ナトリウム水溶液100mLに加え25℃で4時間放置した時に溶出する亜硝酸イオンの量が35mg/g以上」であり、また「塩化物イオンの吸着量が20mg/g以上である」「亜硝酸イオン型ハイドロタルサイト粉末」、及び、当該粉末を、「防錆塗料組成物」に含有させることが記載されている。さらに、摘示4bには、上記物性により、上記ハイドロタルサイト粉末は金属に長期に亘る防錆性能を付与することが記載されている。

さらに、刊行物5には、摘示5aの記載からみて、「素地調整剤」においてではあるが、ハイドロカルマイトあるいハイドロタルサイトから選ばれる腐食イオン固定化剤を含有させることが記載されている。
また、摘示5bには、それにより、錆層と鉄素地との界面に存在するCl^(-)や、SO_(4)^(2-)等の腐食性イオン物質を捕集し、腐食性イオンを固定化し、不活性化させて、防食性の低下を防止することが可能となることが記載されている。

よって、これらの刊行物3?5に示されるとおり、塩素イオン等の腐食性のイオンの存在下における防錆性の向上を目的として、金属素地に直接塗装される塗料組成物に、ハイドロタルサイトやハイドロカルマイト等の、腐食性のイオンを捕捉・固定化する、いわゆる腐食性イオン固定化剤を添加することは周知の技術である。

そして、刊行物2に記載の防食塗料組成物は、「橋梁、プラント」(摘示2b)などに用いることが記載され、さらに、実施例において、その防食性の試験として、塩水噴霧-湿潤-乾燥を繰り返して行う「複合サイクル防食性試験:JHS403-1992の「塗料の耐複合サイクル防食性試験」」が行われている(摘示2c(【0024】)ことからみて、塩水の存在下で金属基材表面へ用いられることを前提とした、防食性が要求される塗料であることは明らかである。
また、引用発明は、上記(ア)において述べたとおり「ジンクリッチペイント」であるところ、例えば、刊行物1には、
「しかしながらこのジンクリツチペイントには次の様な欠点があつた。・・・しかしこの防錆力は前述した様に塗膜中の亜鉛の犠牲陽極作用と腐食生成物を形成することによるものであるから塗膜中の亜鉛は消耗し防錆力が低下していくことは避けられない。特に高湿度雰囲気、塩素イオンを含む腐食環境においては、腐食生成物は緻密なものとなり得ないので防食作用が弱く、急速に塗膜中の亜鉛が溶出し消耗する。この様なことからジンクリツチペイントは長期的な防錆力を保持することは出来なかつた。」(摘示1a)
と、記載されているように、このようなジンクリッチペイントにおいて、塩素イオンを含む腐食環境における長期的な防錆力の付与は、周知の課題でもある。

さらに、刊行物5の実施例(摘示5c及び5d)には、腐食イオン固定化剤を含む素地調整剤の塗膜(A)と、亜鉛末(防錆剤)を含む防食塗料からなる防食塗膜(B)及び着色上塗塗膜(C)の3層から形成される、複数の塗膜層からなる塗膜(以下、「積層塗膜」という。)が、長期の防食性を発揮することが記載されているが、このことは、一つの積層塗膜において、防食塗膜中の亜鉛末および腐食イオン固定化剤が共存して、長期の防食性を発揮できることを示しているといえる。

よって、引用発明の防食塗料組成物において、塩素イオン等に対する更なる防食性の向上を目的として、塩素イオン等の腐食性のイオンの影響を低下させるために、上記のとおり腐食性イオン固定化剤として周知のハイドロタルサイトやハイドロカルマイトを配合することは当業者が容易になし得るものである。
また、組成物に添加剤を配合する際に含有量を好適化することは通常行うことであるし、さらに、刊行物5の摘示5a(【請求項2】)の
「前記素地調整剤のうち、(a)成分100質量部に対して、・・・(c)成分を1?95質量部、・・・含有し、かつ(b)成分と(c)成分の合計が、5?100質量部である請求項1記載の防食法。」
との記載等からみて、腐食性イオン固定化剤を配合する際に、樹脂100重量部に対して1?95重量部程度とすることも通常行われていると認められるので、引用発明の防食塗料組成物に配合する際に、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して、1?95重量部程度とすることも当業者ならば容易になし得るものである。

ウ.効果について
本願発明の効果は、本願発明の詳細な説明の段落【0011】における、
「本発明の目的は、かかる実情に鑑み、腐食性イオン固定化剤等を用いることにより鋼材表面に付着しているCl^(-)や、SO_(4)^(2-)等の腐食性イオン物質を効率よく捕集、固定化し、亜鉛末の溶出をコントロールして従来の亜鉛末含有塗料以上の高い防食性および付着性を示す高防食性亜鉛末含有塗料を提供することにある。」
との記載からみて、Cl^(-)や、SO_(4)^(2-)等の腐食性イオン物質を効率よく捕集、固定化して、亜鉛末含有塗料以上の高い防食性および付着性を示す高防食性亜鉛末含有塗料を提供できることであると解される。
そして、刊行物4や5においても、上記のとおり、防食塗料へのハイドロカルマイトあるいハイドロタルサイトの添加により、腐食性イオン物質を捕集して、「防食性を更に向上させる効果を有する」(摘示5b)、及び、「長期の防食性を付与できること」(摘示4b)などが記載されている。
また、上記イ.において述べたとおり、刊行物5の実施例(摘示5c及び5d)においては、一つの積層塗膜中に防食塗膜中の亜鉛末および腐食イオン固定化剤が共存して、長期の防食性を発揮できることも示されている。
よって、引用発明の亜鉛末を多量に含む防食塗料組成物において、腐食性イオン固定化剤を添加することにより防食性を高めることができることは、当業者が予測し得る程度のものである。
さらに、亜鉛、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト等の成分が、バインダー樹脂に対して多すぎればその付着性は低下し、少なすぎればその添加効果が発揮されないことも当業者の技術常識であり、その含有量を規定したことによる格別の効果があるものとも認められない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、本願出願日前に頒布された刊行物2に記載された発明、及び刊行物1、3?5及び周知例1及び2に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 請求人の主張について
請求人は、平成26年2月6日付けの意見書において次の主張をしている。

A:「刊行物2について
・・・刊行物2の塗料は、構造物の摩擦接合部への塗装に適用されるものであり、長期の防食性を重視する場所に使用されるものではありません。従来の有機系亜鉛末含有塗料が長期の防食性を重視する場所にはあまり使用されるものでないことは、本願の段落段落(0003)?(0004)でも説明されております。
更に、刊行物2にはイオン固定化剤についての記載が一切ありません。
このように、刊行物2が教示する塗料は、本願発明の塗料とは、組成も、用途も、本質的に異なるものですから、刊行物2は、本願発明を教示も示唆もするものではありません。本願発明は刊行物2に基づいて当業者が容易に想到できた発明ではありません。」

B:「本願発明に係る実施例では、上記の如く、霧吹きで食塩水を振りかけ乾燥させたサンドブラスト鋼板(本願明細書の段落0052)を用いて性能評価を行っています。そして、本願発明に係る亜鉛末含有塗料は、塩分含有のサンドブラスト鋼板においても高い防食性及び付着性を示す(本願明細書の段落0067)ものであり、また本願発明では、重防食のために多量の亜鉛末を含むとともに、ふくれやはく離の原因となることが多く防錆剤として使用しにくい面があったイオン固定剤を、塗料の配合と配合方法の最適化を図ることで、そのような不具合点を解消しことを特徴としており、このような効果は、刊行物1?5には記載も示唆もなされておらず、当業者の予想を超えるものであります。」

A.について
刊行物2に記載の塗料、すなわち、引用発明の防食塗料組成物は、構造物の摩擦接合部の塗装に適用されるものであるが、構造物の接合部の塗料であっても、頻繁に塗り替えられるものではなく、技術常識からみて長期の防食性が必要であることは明らかである。
また、上記第4の3.(2)において述べたとおり、本願発明の腐食性イオン固定化剤等に係る構成の点は周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものであり、「刊行物2が教示する塗料は、本願発明の塗料とは、組成も、用途も、本質的に異なるものですから、刊行物2は、本願発明を教示も示唆もするものではありません。本願発明は刊行物2に基づいて当業者が容易に想到できた発明ではありません。」という主張は当を得ないものである。

B.について
上記第4の3.(2)ウ.において述べたとおり、引用発明の亜鉛末を多量に含む防食塗料組成物において、腐食性イオン固定化剤を添加することにより塩水下における防食性を高めることができることは、当業者が予測し得る程度のものである。
また、亜鉛、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト等の成分が、バインダー樹脂に対して多すぎればその付着性が低下して、経時的にふくれや剥離の原因となることから、その含有量を好適な範囲とすることは当業者において通常行われていることであり、その含有量を規定したことにより当業者が予測し得ない格別の効果があるものとも認められない。

よって、上記の様なサンドブラスト鋼板を用いて行った防食性等についての本願発明の実施例が示されたとしても、当業者が予測し得ないほどのものとはいえないから、請求人の主張は採用することができず、上記第4の判断を左右するものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、その余につき検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-25 
結審通知日 2014-04-01 
審決日 2014-04-30 
出願番号 特願2006-114891(P2006-114891)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 小石 真弓
橋本 栄和
発明の名称 高防食性亜鉛末含有塗料組成物  
代理人 亀松 宏  
代理人 永坂 友康  
代理人 青木 篤  
代理人 小林 良博  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  
代理人 亀松 宏  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  
代理人 小林 良博  
代理人 亀松 宏  
代理人 古賀 哲次  
代理人 古賀 哲次  
代理人 小林 良博  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  

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