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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
管理番号 1289208
審判番号 不服2012-15539  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-09 
確定日 2014-06-26 
事件の表示 特願2006-524762「精製ポリマー材料及びポリマー材料の精製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年3月10日国際公開、WO2005/021648、平成19年7月5日国内公表、特表2007-517918〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成16年8月23日(パリ条約による優先権主張 2003年8月26日 2004年8月19日 いずれもアメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成23年2月22日付けで拒絶理由が通知され、同年8月24日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年12月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成24年3月19日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年4月5日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年8月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月28日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月2日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年6月20日付けで前置報告がなされ、それに基づいて当審において同年7月4日付けで審尋がなされ、平成26年1月6日に回答書が提出されたものである。



第2 本願発明について

本願の請求項1?3に係る発明は、平成25年4月2日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「ポリマー材料の精製方法であって、当該方法が、
ポリ(アリーレンエーテル)とポリスチレンの全重量を基準にして60?30重量%のポリ(アリーレンエーテル)と40?70重量%のポリスチレンを押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、
メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含み、
得られる濾過ポリマー材料が可視粒状不純物を実質的に含まず、押出機内でのメルトの滞留時間が1分以内である、
ポリマー材料の精製方法。」



第3 前置審査における拒絶理由の概要

前置審査における平成24年9月28日付けで通知した拒絶理由(以下、「前置拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりのものを含むものである。

「本願発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、刊行物として、
「1.特開昭63-091231号公報
2.特開平07-304942号公報
3.国際公開第03/048254号」
を引用するものである。



第4 前置拒絶理由の妥当性についての判断

1.本願発明
本願発明は、上記第2 に記載したとおりのものである。

2.刊行物
・特開昭63-091231号公報(以下、「引用例1」という。)
・特開平07-304942号公報(以下、「引用例2」という。)
・国際公開第03/048254号(以下、「引用例3」という。)

3.引用例1?3の記載事項
(3-1)引用例1の記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1には、以下の事項が記載されている。
ア 「(2)芳香族ビニル単量体を主体とする重合体部分とポリフェニレンエーテル部分とから成る樹脂組成物を溶融成形して、光学素子を製造する方法において該樹脂組成物中に1μm以上の異物微粒子が10,000個/g以下であることを特徴とする光学素子の製造方法。
・・・
(8)該樹脂組成物が、その溶融状態のものを焼結金属フィルターを通して異物微粒子を除去した樹脂組成物である特許請求の範囲第(2)項記載の方法。」(特許請求の範囲請求項2及び8)

イ 「〈発明が解決しようとする問題点〉
光学素子は、寸法安定性、複屈折の近いことが要求されるが、なかでも光学式ディスク基板は、この要求が厳しく、その上記録、再生時のC/N比が充分高く、ビットエラーの小さいことが要求される。
・・・
本発明はかかる事情に鑑み、射出成形、圧縮成形等によっても複屈折が低く、しかも、斜め方向からの入射光に対しての複屈折が低く、かつ耐熱性が高く、機械的強度のバランスが良く、寸法安定性の優れていると共に、異物微粒子の少ない高性能、高信頼性の光学素子を提供することにある。」(第2頁右下欄18行?第3頁右上欄18行)

ウ 「本発明でいう、芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体とは、芳香族ビニル単量体単独重合体、及び芳香族ビニル単量体単位を50重量%以上含有する共重合体であって、芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、0-クロルスチレン、m-クロルスチレン、p-クロルスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、等が挙げられ、特にスチレンが好適に用いられる。
・・・
芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体部分とポリフェニレンエーテル部分との割合は前者が30?70重量%好ましくは40?55重量%であり、後者が30?70重量%、好ましくは45?60重量%である。」(第3頁右下欄10行?第5頁左上欄16行)

エ 「本発明の樹脂組成物として、芳香族ビニル単量体単位を主体とする重合体と、ポリフェニレンエーテを混合して得るには、溶融混合もしくは溶液混合が適している。
混合度合は両重合体が互いに約1μ以下にまで分散混合されることが好ましく、更に分子スケールまで混合されることが好ましい。
混合状態が分子スケールにまで達したかどうかは混合物のガラス転移温度が唯一のものとなることで容易に判定される。
溶融混合は、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上にてスクリュー押出機、バンバリーミキサ-、ニーダーブレンダー、加熱ロールなどの混合機械を用いて高剪断下、行われる。
十分満足される混合状態を得るため、混合温度を高める、混合時間を延長する、更に剪断力を高めるといった方法が採用される。
・・・
溶融混合により、溶融した状態の樹脂組成物から1μm以上の大きさの異物微粒子を除くには、該溶融物をフィルターなかでも焼結金属フィルターを通過させることによって行う。
この焼結金属フィルターは、樹脂の溶融物のごとく粘度が高く、高圧がかかりしかも小さい目開きのもに適している。
焼結金属フィルターは、チューブ状、ディスク状のものを用いる。
濾過粒度はJISB 8356の規定で1μm?10μmのものを用いる。
工業的に大量に実施するには、先端に焼結金属フィルターを設置したスクリュー押出機で溶融混合を行うのが適している。」(第5頁右上欄18行?右下欄12行)

オ 「射出成形により本発明の光学素子を製造するに際しては溶融可塑化した樹脂温度を270℃以上350℃以下で射出成形することが好ましく、更に好ましくは300℃以上340℃以下である。
ここでいう樹脂温度とは射出成形機内においてヒーター等の外部加熱とスクリューの回転による剪断発熱によって可塑化熔融した射出シリンダー内での樹脂の温度である。
・・・樹脂温度が350℃を超すと、樹脂が分解し、ヤケ、シルバー等の不良現象が発生し、得られる光学式ディスク基板のビットエラーが著じるしく増加するので不適当である。」(第6頁左下欄15行?右下欄10行)

カ 「〈実施例〉
以下実施例をもって詳細に説明するが、下記はもとより、本発明を限定するものではない。
なお実施例中の部または%はいずれも重量基準である。
また実施例に示す物性測定及び処理操作は以下の方法により行った。
・・・
・異物微粒子数:リオン株式会社製自動液中微粒子計測器KL-01型により1μm以上の粒子の個数を測定し、試料1gあたりの異物数とした。
・・・
実施例1
特公昭47-36518号公報実施例2、No.9に記載の方法に従い、塩化マンガン、エタノールアミンを触媒として2,6-キシレノールを重合して極限粘度が0.52のポリ (2,6-ジメチルー1,4-フェニレン)エーテルを調製した。
このポリフェニレンエーテル樹脂40重量部とポリスチレン樹脂(住友化学工業製エスプライト○R(審決注:実際の記載は、「○の中にR」が上付き位置で表記されているものであるが表記できないのでこのように記す。)8、一般グレード、MFR10)60重量部とを混合配合し、二軸スクリュー押出機の先端にギヤポンプと、JISB 8356で規定された濾過粒度3μmの日本精線(株)製のディスク型焼結金属フィルターを設置して混練、ペレット化した。
該ペレットをシリンダー温度320℃、金型温度85℃にて射出成形し、直径120mm、厚み1.2mmの光学式ディスク基板を得た。
このディスク基板について光線透過率は86%であり、円板の中心より35mmの位置での複屈折は+2nm、吸水率は0.1%、ガラス転移温度は143℃、異物微粒子数は7,000個であった。」(第7頁右上欄7行?第8頁左上欄16行)

(3-2)引用例2の記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例2には、以下の事項が記載されている。
キ 「【請求項1】 ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、下記一般式〔I〕
【化1】

(式中、R^(1) は炭素数1?40のアルキル基、又はアリール基であり、R^(2) ,R^(3) ,R^(4) 及びR^(5) は水素原子、炭素数1?10のアルキル基、又はアリール基であり、これらは同じでも異っても良い。)
で表わされるスルホン酸ホスホニウム塩を0.1?20重量部配合して溶融混練するポリカーボネート樹脂組成物の製造方法において、樹脂温度T(ダイ出口での温度であって絶対温度°Kで表わす。)と溶融滞留時間t(秒)との関係が下記式〔II〕を満足することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【数1】
21000≦T(°K)×t(秒)≦30000 〔II〕
」(特許請求の範囲)

ク 「本発明においては、ポリカーボネート樹脂にスルホン酸ホスホニウム塩を配合して溶融混練する際に樹脂温度T(ダイ出口の温度であって絶対温度(°K)で表わす)と溶融滞留時間t(秒)との関係が21000≦T(°K)×t(秒)≦30000の関係を満足させること、好ましくは22000≦T(°K)×t(秒)≦27000の関係を満足させることが重要である。T(°K)×t(秒)が21000未満の場合は透明性の著しい低下が発生する。又T(°K)×t(秒)が30000を越える場合は樹脂や帯電防止剤の熱劣化が生じはじめ帯電防止性の低下や色調の低下が起こるので好ましくない。」(段落0015)

ケ 「【実施例】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明するが本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
・・・
〔実施例1〕
分子量21000のビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂(三菱化成製商標「ノバレックス」7022PJ)重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸のテトラブチルホスホニウム塩7重量部とイウオ含有エステル化合物〔ペンタエリスリトールテトラキス(ドデシルチオプロピオネート)…三菱油化商標「セノックス」412S〕0.1重量部を配合し、日本製鋼所製同方向2軸スクリュー押出機TEX44SSを用いて表-1に示す押出条件で溶融混練を行った後ペレット化した。得られたペレットを射出成形し成形品の物性を測定した。評価結果を表-1に示す。
〔実施例2?5〕
実施例1において押出条件を表-1に示す条件にした以外は実施例1と同様に行ない、ペレットを得、その成形品の物性を評価した。評価結果を表-1に示す。
〔比較例1?2〕
実施例1において押出条件を表-1に示す条件にした以外は実施例1と同様に行ない、ペレットを得、その成形品の物性を評価した。評価結果を表-1に示す。
〔実施例6?8〕
実施例1において、押出機として、日本製鋼所製同方向2軸押出機TEX65HCTを用い、押出条件を表-2に示す条件にした以外は実施例1と同様に行ないペレットを得、その成形品の物性を評価した。評価結果を表-2に示す。
〔比較例3〕
実施例6において押出条件を表-2に示す条件にした以外は実施例6と同様に行ないペレットを得、その成形品の物性を評価した。評価結果を表-2に示す。表-1の結果から明らかなように実施例1?5では溶融混練した成形品は透明性、滞電防止性とも良好な結果が得られたが、比較例1では透明性が不十分であり又比較例2では滞電防止性及び表面変色度が劣っている。また、表-2より、比較例3のものは透明性が劣っていることがわかる。」(段落0020?0024)

コ 「【表1】

」(段落0025)

サ 「【表2】

」(段落0026)

(3-3)引用例3の記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例3には、以下の事項が記載されている。
シ 「1.ポリフェニレンエーテルを含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物であって、
該ポリフェニレンエーテルが、次の式(1)

で表される繰り返し単位からなり、且つ次の特性(a)、(b)、及び(c)を有することを特徴とする組成物。
(a)該ポリフェニレンエーテルを、テトラメチルシランを基準物質として用いたプロトン核磁気共鳴分析装置(^(1)H-NMR)に付したとき、該ポリフェニレンエーテルは3.55ppmにトリプレットシグナル(S1)を示し、該トリプレットシグナル(S1)の積分強度の6.47ppmに観測されるシグナル(S2)の積分強度に対する百分比で表される該トリプレットシグナル(S1)の相対強度が0.05?0.25である。
(b)該ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液(濃度:0.05g/ml)を光路長1cmのセルを用いた紫外可視吸収スペクトル測定に付したとき、該ポリフェニレンエーテルの波長480nmにおける吸光度が0.01?0.40である。
(c)標準単分散ポリスチレンに関して得られた検量線を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した該ポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が、30,000?100,000である。
」(特許請求の範囲、請求項1)

ス 「たとえば、ポリフェニレンエーテルは、ポリスチレンとの相溶性が高いので、ポリスチレン系樹脂とのアロイとすることにより、ポリフェニレンエーテルの流動性を改良することが試みられてきた。」(2頁14?17行)

セ 「該組成物中のポリフェニレンエーテルの含有量については特に限定はない。しかし、ポリフェニレンエーテルの含有量は、通常0.1?99.9重量%、好ましくは10?90重量%、さらに好ましくは15?85重量%である。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物のポリフェニレンエーテル以外の成分については、特に限定はない。他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び添加剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の成分を用いることができる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリスチレン系樹脂(ゴム補強ポリスチレンやAS、ABS樹脂等も含む)、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、液晶樹脂、熱可塑性エラストマーを挙げることができる。」(13頁10?22行)

ソ 「本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、たとえば、原料ポリフェニレンエーテルと他の成分との混合物を溶融混練する方法によって製造することができる。
・・・
溶融混練は、押出機、加熱ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー等を用いて行うことができる。溶融混練する温度は、通常、原料ポリフェニレンエーテルのガラス転移点(約215℃)以上、好ましくは240?390℃、さらに好ましくは260?370℃、特に好ましくは270?340℃である。また、滞留時間は好ましくは25?300秒である。」(19頁15行?20頁8行)

タ 「(ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造)
下記の成分(1)?(4)をヘンシェルミキサー(日本国三井鉱山(株)製FM-3)に導入し、室温で5分間混合した。
(1)上で得られた乾燥パウダー状のポリフェニレンエーテル:78重量部、
(2)ホモポリスチレン樹脂(日本国A&Mポリスチレン(株)製GPPS685):11重量部、
(3)耐衝撃性ポリスチレン樹脂(日本国A&Mポリスチレン(株)製ハイインパクトポリスチレンH9405):11重量部、及び
(4)リン系難燃剤(日本国大八化学工業(株)製CR-741):9重量部。
得られた混合物を二軸押出機(ドイツ国WERNER&PFLEIDER社製ZSK-25)(日本国特開2001-47496号公報実施例1に記載のスクリュー構成のスクリュー径25mmの二軸押出機)を用いて、滞留時間59秒(200g/分の押出速度)で溶融混練押出を行い、樹脂組成物のストランドを得た。押出機吐出口における組成物温度は320?330℃の範囲に保った。得られたストランドを、水温を60℃に設定したストランドバスに通した後、ペレタイザー(日本国いすず化工機(株)製SCF-100)を用いて切断し、ペレット状のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。」(29頁10行?30頁11行)

4.引用例1に記載された発明
引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、摘示ア、ウ及びエより、次のとおりのものであるといえる。

「芳香族ビニル単量体を主体とする重合体部分とポリフェニレンエーテル部分とから成り、両者の割合が前者が30?70重量%であり、後者が30?70重量%であり、その樹脂組成物を、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上にてスクリュー押出機、バンバリーミキサ-、ニーダーブレンダー、加熱ロールなどの混合機械を用いて高剪断下、溶融混合してなり、その溶融状態のものを、濾過粒度がJISB 8356の規定で1μm?10μmの焼結金属フィルターを通して異物微粒子を除去してなり、樹脂組成物中に1μm以上の異物微粒子が10,000個/g以下である樹脂組成物を溶融成形してなる、光学素子の製造方法。」

5.対比
引用発明における「樹脂組成物」は、光学素子を製造するためのものであって、当該光学素子は、摘示イ及びカから、光学式ディスク基板を含むものであるところ、これは本願明細書におけるデータ記憶媒体と共通するものであることから、本願発明における「ポリマー材料」に該当する。
そして、引用発明における「芳香族ビニル単量体を主体とする重合体」は、摘示ウ及びカから、スチレンの単独重合体すなわちポリスチレン樹脂である態様を包含するから、本願発明における「ポリスチレン」に該当し、引用発明における「ポリフェニレンエーテル」は、本願発明における「ポリ(アリーレンエーテル)」に該当し、それらの割合についても、両者は重複一致している。
また、引用発明において樹脂組成物を溶融混合するに際して「スクリュー押出機」を用いる態様を包含するものであり、これは本願発明における「押出機」に該当し、引用発明における「溶融状態のもの」は、本願発明における「メルト」に該当する。
そして、引用発明において、「樹脂組成物が溶融状態のものを、濾過粒度がJISB 8356の規定で1μm?10μmの焼結金属フィルターを通して異物微粒子を除去してな」ることは、樹脂組成物から異物微粒子を除去することであるから、ポリマー材料からすると精製することに相当し、結局のところ、本願発明において、「溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含む、ポリマー材料の精製方法」に相当する。
よって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
ポリマー材料の精製方法であって、当該方法が、
ポリ(アリーレンエーテル)とポリスチレンの全重量を基準にして60?30重量%のポリ(アリーレンエーテル)と40?70重量%のポリスチレンを押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、
メルトを溶融濾過システムで溶融濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含む、
ポリマー材料の精製方法。

<相違点1>
本願発明は、「得られる濾過ポリマー材料が可視粒状不純物を実質的に含ま」ないものであるのに対して、引用発明では、「樹脂組成物中に1μm以上の異物微粒子が10,000個/g以下である」と規定されている点。

<相違点2>
本願発明は、「押出機内でのメルトの滞留時間が1分以内である」のに対して、引用発明では、特段の規定がない点。

6.判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
本願明細書においては、「『可視粒状不純物を実質的に含有しない』とは、ライトボックスで見たとき、10gのポリマー材料を50mlのクロロホルム(CHCl_(3))に溶解したサンプル中に観察される可視斑点の数が5個未満であることを意味する。前述したように、肉眼に見える粒子は典型的には直径30μm超の粒子である。」(段落0038)と記載されており、ここで「可視粒状不純物」とは、「平均粒径30μm以上の粒子を意味する。」(段落0014)と定義されているとおりである。
そして、本願明細書では、「上述のニーズは、ポリ(アリーレンエーテル)とポリ(アルケニル芳香族)を押出機で溶融ブレンディングしてメルトを形成し、メルトを溶融濾過システムで濾過して濾過ポリマー材料を得る工程を含む本発明のポリマー材料の精製方法によって満足される。通常、押出機内でのメルトの平均滞留時間は約5分以下である。濾過によって、ポリマー材料中に存在する粒状不純物を除去して、粒状不純物量の低減した濾過ポリマー材料を得る。」(段落0015)とも記載されていることから、濾過によって、ポリマー材料中に存在する可視粒状不純物を除去して、可視粒状不純物を実質的に含有しない濾過ポリマー材料を得ているものと認められる。
ここで、引用発明においては、樹脂組成物が溶融状態のものを、濾過粒度がJISB 8356の規定で1μm?10μmの焼結金属フィルターを通して異物微粒子を除去してなるものであって、「樹脂組成物中に1μm以上の異物微粒子が10,000個/g以下である」と規定されているところ、その具体的なものとして、引用例1の実施例1では、「JISB 8356で規定された濾過粒度3μmの日本精線(株)製のディスク型焼結金属フィルター」(摘示カ)を用いて濾過しているのであって、本願明細書の実施例では、「焼結金属繊維フィルター(PALL、孔径3μm、キャンドル形状)」を用いて濾過していることから、両者はそのフィルター孔径が一致しており、当該孔径が30μmよりも1/10小さいものであるし、引用発明におけるフィルターの濾過粒度がJISB 8356の規定で1μm?10μmであることに鑑みても、得られた濾過ポリマー材料は、「平均粒径30μm以上の粒子」を実質的に含有しないものであるといえる。そうすると、上記相違点1に係る、「得られる濾過ポリマー材料が可視粒状不純物を実質的に含ま」ない点は、引用例1に記載されているに等しいといえることから、上記相違点1は、本願発明と引用発明との実質上の相違点ではない。
仮にそうでないとしても、特に光学素子において可視粒状不純物が明らかな欠陥となることは当該技術分野において自明のことにすぎず、引用発明が、異物微粒子の少ない光学素子の製造方法に関するものであることに鑑みると、引用発明において、得られた光学素子が平均粒径30μm以上の可視粒状不純物を実質的に含有しないようにすることは、引用例1の記載に基づいて、その発明の技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が適宜設定し得る程度のものにすぎないし、そのことによる効果も予測し得る程度のものにすぎない。

(2)相違点2について
引用発明では、樹脂組成物が溶融状態のものを、焼結金属フィルターを通して異物微粒子を除去してなるものであるものの、その押出機内での滞留時間については特に規定されていない。
しかしながら、一般に、樹脂を押出機中で溶融混練する際に高温下におかれる樹脂が熱劣化することがあり、それに起因して特に色調などに悪影響を及ぼすことは、文献を挙げるまでもなく、本願の優先日前によく知られていることであり(例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂が溶融時の熱劣化により分解しヤケ等を生じることは、引用例1の摘示オにも示されている。)、こうした不具合の発生を回避するため、樹脂の溶融滞留時間をコントロールする必要性もよく知られていることに過ぎない。(例えば、ポリカーボネート樹脂に係るものではあるものの、押出機内での溶融混練の際に、添加剤の性能低下とともに樹脂の熱劣化による色調低下を防止するために、樹脂温度と溶融滞留時間を特定の関係下に制御することが知られており、その具体的な滞留時間が1分以内であることも明記されている(刊行物2の摘示キ?サ)。)
ここで、引用例1では、「溶融混合は、・・・混合機械を用いて高剪断下、行われる。十分満足される混合状態を得るため、混合温度を高める、混合時間を延長する、更に剪断力を高めるといった方法が採用される。」(摘示エ)と記載されているが、この記載は、あくまでも、溶融混合において、十分満足される混合状態を得ることが重要であることについて述べているのであって、「混合時間を延長する」と記載されているものの、その態様に限られるものではなく、「混合温度を高める」あるいは「剪断力を高める」といった様々な態様を採用することができることについて記載しているものと理解される。
そうすると、引用発明において、溶融混合に際し、(十分満足される混合状態を得るため、混合温度を高める、あるいは剪断力を高めるといった方法を採用しつつ、)十分な混合状態が達成される限りにおいては、樹脂の熱劣化を防ぐという観点の基に、溶融混合における滞留時間をできる限り短くすることは、当業者であれば当然に留意すること、あるいは想到し得ることにすぎないし、その値を具体的に1分以内とすることも、刊行物3の記載(摘示シ?タ)から、当業者が容易になし得る程度のものであるといわざるを得ない。
そして、本願発明において、滞留時間を1分以内と規定することにより、格別予測し得ない顕著な効果が奏されるものともいえない。

7.まとめ
上記検討のとおり、本願発明は、引用例1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。



第5 請求人の主張についての検討

請求人は、平成25年4月2日提出の意見書において、概略、
「(3-2-1)引用文献1の特開昭63-091231号公報には、上記したような、『押出機長さ及び押出機スクリュー設計の選択、及びスクリュー速度及び供給速度の制御によって、メルトの滞留時間を最小限に抑えるのが好ましい。』ということについて示唆さえしていない。逆に引用文献1は、『十分満足される混合状態を得るため、混合温度を高める、混合時間を延長する、更に剪断力を高めるといった方法が採用される』(公報第5頁左下欄9?11行)と、本発明の上記発見とは正反対の記載をしている。
よって、本発明が引用文献1に記載の発明から容易に発明できた旨の拒絶理由には根拠がない。
(3-2-2)引用文献2の特開平07-304942号公報には、溶融濾過をしない方法としてポリカーボネート樹脂に特定のスルフォン酸ホスホニウム塩を配合して溶融混練する方法(公報請求項1)について記載されている。
まず、ポリカーボネート樹脂は本発明の精製方法が対象とするポリ(アリーレンエーテル)とポリスチレンとは全く異なる化学物質である。そしてこの引用文献には、ポリカーボネート樹脂に特定のスルフォン酸ホスホニウム塩を配合して溶融混練する際の溶融滞留時間がそれから溶融濾過無しに成形した成形品の透明度・表面変色に関係している旨が開示されているだけであり、本発明の課題であるポリ(アリーレンエーテル)とポリスチレンを溶融濾過して濾過ポリマー材料を得る際の可視粒子(『黒斑』)の問題と関係する記載はない。引用文献1の『十分満足される混合状態を得るため、混合温度を高める、混合時間を延長する、更に剪断力を高めるといった方法が採用される』との記載に鑑みても、引用文献1と2を組合わせる理由は無い。当業者であっても、可視粒子(『黒斑』)を除去又は減じるために、せいぜい溶融濾過か、又は滞留時間を減少するかのいずれかのみを選択し、両方を選択することはないと考えられる。
(3-2-3)引用文献3の国際公開第03/048254号には、NMRスペクトルにおいて特定のトリプレットシグナルなどの特性を有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物を製造するための溶融濾過をしない方法として、『溶融混練は、押出機、加熱ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー等を森いて行うことができる、溶融混練する温度は、通常、原料ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度(約215℃)以上、好ましくは240℃?390℃、さらに好ましくは260?370℃、特に好ましくは270?340℃である。また、滞留時間は好ましくは25?300秒である。溶融混練の温度及び/又は滞留時間が上記の範囲にない場合、上記の特性(a)を有するポリフェニレンエーテルを得ることは困難になる。』(公報20頁2?8行)と開示されている。
引用文献3は本発明の課題である可視粒子(『黒斑』)の問題と完全に関係がない。この引用文献の上記25?300秒の滞留時間はNMRスペクトルにおいて特定のトリプレットシグナルの特性を維持あるいは創造することに関連しており、したがって特定の化学物質を製造するためのものである。従って、この引用文献3を見てこの滞留時間を溶融濾過について記載されている他の文献にあてはめる者はいない。これらの文献を組合わせる理由がないからである。引用文献1の『十分満足される混合状態を得るため、混合温度を高める、混合時間を延長する、更に剪断力を高めるといった方法が採用される』との記載に鑑みても、引用文献1と3を組合わせる理由は無い。」
と主張している。

しかしながら、請求人の主張は、以下のとおり、いずれも採用することはできない。

(3-2-1)については、第4 6.(2)で述べたとおり、樹脂を押出機中で溶融混練する際に高温下におかれる樹脂が熱劣化することがあり、それに起因して特に色調などに悪影響を及ぼすことは本願の優先日前によく知られていることであり、こうした不具合の発生を回避するため、樹脂の溶融滞留時間をコントロールする必要性もよく知られていることに過ぎない。そして、引用例1の上記記載(摘示エ)は、あくまでも、溶融混合において、十分満足される混合状態を得ることが重要であることについて述べているのであって、「混合時間を延長する」態様に限られるものではないと理解されるから、阻害要因となり得るものではなく、請求人のこの主張は受け入れられるものではない。

(3-2-2)については、第4 6.(2)で述べたとおり、引用例2は、あくまでも、溶融樹脂の温度と滞留時間との関係という一般的な技術常識を示すために引用したものであるから、かかる主張は意味のないものである。
そして、当業者であっても、可視粒子(『黒斑』)を除去又は減じるために、せいぜい溶融濾過か、又は滞留時間を減少するかのいずれかのみを選択し、両方を選択することはないとの主張についても、その根拠が不明であって、それらの両方を選択し得ることは、第4 6.(2)で述べたとおりである。

(3-2-3)についても、第4 6.(2)で述べたとおり、引用例3は、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物において、溶融混練における滞留時間が1分以内であることが公知技術であることを示すために引用したものであるから、かかる主張は意味のないものである。
そして、引用例3においても示された溶融混練における滞留時間が1分以内であることを引用例1に適用するに際して、十分な動機付けがあることは、第4 6.(2)で述べたとおりである。



第6 むすび

以上のとおり、前置審査における拒絶理由は妥当なものであるから、本願は、この理由によって拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-24 
結審通知日 2014-01-27 
審決日 2014-02-14 
出願番号 特願2006-524762(P2006-524762)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 勇生阪野 誠司  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 塩見 篤史
大島 祥吾
発明の名称 精製ポリマー材料及びポリマー材料の精製方法  
代理人 星野 修  
代理人 小林 泰  
代理人 野矢 宏彰  
代理人 富田 博行  
代理人 小野 新次郎  
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