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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1289222 |
審判番号 | 不服2013-18841 |
総通号数 | 176 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-30 |
確定日 | 2014-06-26 |
事件の表示 | 特願2011-177899「LSIパッケージ及びコア入りはんだバンプ並びにLSIパッケージ実装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月12日出願公開、特開2012- 9882〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年2月7日に出願した特願2006-29433号の一部を平成23年8月16日に新たな特許出願としたものであって、原審において平成25年1月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月30日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、平成26年1月22日付けで当審より審尋がなされ、同年3月13日に回答書が提出されたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年9月30日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項7に記載された 「【請求項7】 LSIパッケージに設置され当該LSIパッケージの基板への実装に用いられる、コア部とコーティング部との2層構造を有し、且つ前記コーティング部を構成するはんだ合金の融点が前記コア部を構成するはんだ合金の融点よりも低いことを特徴とするコア入りはんだバンプ。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「【請求項7】 LSIパッケージに設置され当該LSIパッケージの基板への実装に用いられる、コア部と該コア部の表面を全て覆うコーティング部との2層構造を有し、且つ前記コーティング部を構成するはんだ合金の融点が前記コア部を構成するはんだ合金の融点よりも低いことを特徴とするコア入りはんだバンプ。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された、「コーティング部」に関し、「該コア部の表面を全て覆うコーティング部」と限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合し、同改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。 (2)引用発明 当審において新たに引用する特開平7-99385号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【産業上の利用分野】本各発明は、はんだボール及びその製造方法並びに接続構造に関し、詳しくは、プリント配線板や電子部品等の接続端子間を電気的に接続するはんだボール、及びその製造方法、並びに接続端子間をはんだボールによって電気的に接続する接続構造に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、例えば複数のプリント配線板を積層する際に各プリント配線板の接続端子を電気的に接続したり、プリント配線板に電子部品を実装する際にプリント配線板の接続端子と電子部品の接続端子とを電気的に接続する手段として、はんだボールによるものがある。ここで、従来のはんだボールは、例えば、組成がSn/Pb=6/4の所謂6/4はんだ、組成がSn/Pb=9/1の所謂9/1はんだ、組成がSn/Pb=1/9の所謂1/9はんだ等の単一組成のはんだによって形成されたものであった。」(2頁1欄) ロ.「【0016】図1には、請求項1の発明に係るはんだボール100の一実施例を示してある。このはんだボール100は、溶融温度が約215℃の9/1はんだにより形成されたはんだボールを金属核10とし、この金属核10の表面に、溶融温度が約185℃の6/4はんだにより形成されたはんだ層20を被覆したものである。なお、本実施例に限らず、電導性に優れはんだより溶融温度が高い金(溶融温度約1064℃)や銀(溶融温度約962℃)等の金属によって金属核10を形成してもよい。 【0017】このようなはんだボール100を製造する際には、電解めっきや無電解めっきにより金属核10の表面にはんだ層20を被覆してもよいが、電解めっきや無電解めっきのようにめっきによりはんだ層20を形成すると、十分な厚さのはんだ層20を得るために長時間のめっき加工を必要とするばかりか、はんだ層20にバラツキが生じ高品質なはんだボール100を形成するのが困難である。また、めっきの前処理工程等の煩雑な工程を必要とする。このため、請求項2の発明に係るはんだボール100の製造方法により製造するとよい。」(3頁3?4欄) ハ.「【0023】次に、図4には、請求項3の発明に係る接続構造の一実施例を示してある。この接続構造は、複数のプリント配線板40を積層する際に、各プリント配線板40の対向する接続端子41をはんだボール100によって接続したものである。この接続構造においては、対向する接続端子41間に金属核10が介在されており、この金属核10の表面に被覆されたはんだ層20が、各々上側の接続端子41と下側の接続端子41とに溶着されている。そして、金属核10によって接続端子41間の隙間が確実に確保されており、はんだ層20によって接続端子41間が電気的に確実に接続されている。なお、本実施例の如く複数のプリント配線板40を積層する際に限らず、例えばプリント配線板40に電子部品を実装する際に、プリント配線板40の接続端子41と電子部品の接続端子41とを接続したものであってもよい。」(4頁5欄) 上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ロ.の【0016】における「図1には、請求項1の発明に係るはんだボール100の一実施例を示してある。このはんだボール100は、溶融温度が約215℃の9/1はんだにより形成されたはんだボールを金属核10とし、この金属核10の表面に、溶融温度が約185℃の6/4はんだにより形成されたはんだ層20を被覆したものである。」との記載、及び図1によれば、はんだボール(100)は、金属核(10)と該金属核(10)の表面を全て覆うはんだ層(20)との2層構造を有している。 ここで、前述のはんだ層(20)の6/4はんだの溶融温度は、約185℃であり、前述の金属核(10)の9/1はんだの溶融温度は、約215℃であるから、はんだ層(20)を構成する6/4はんだの溶融温度は、金属核(10)を構成する9/1はんだの溶融温度よりも低いということができる。 また、上記ハ.の【0023】における「本実施例の如く複数のプリント配線板40を積層する際に限らず、例えばプリント配線板40に電子部品を実装する際に、プリント配線板40の接続端子41と電子部品の接続端子41とを接続したものであってもよい。」との記載、及び図4によれば、前述のはんだボール(100)は、電子部品のプリント配線板への実装に用いられるものということができる。 したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「電子部品のプリント配線板への実装に用いられる、金属核(10)と該金属核(10)の表面を全て覆うはんだ層(20)との2層構造を有し、且つ前記はんだ層(20)を構成する6/4はんだの溶融温度が前記金属核(10)を構成する9/1はんだの溶融温度よりも低いはんだボール(100)。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明1とを対比する。 a.引用発明1の「電子部品」は、補正後の発明の「LSIパッケージ」を含む。 b.引用発明1の「プリント配線板」、「金属核(10)」、「はんだ層(20)」及び「溶融温度」は、補正後の発明の「基板」、「コア部」、「コーティング部」及び「融点」にそれぞれ相当する。 c.引用発明1の「6/4はんだ」及び「9/1はんだ」は、上記引用例1の上記イ.の【0002】における「はんだボールは、例えば、組成がSn/Pb=6/4の所謂6/4はんだ、組成がSn/Pb=9/1の所謂9/1はんだ」との記載によれば、いずれも「はんだ合金」ということができる。 d.引用発明1の「はんだボール(100)」は、はんだ付け技術の技術常識によれば、電子部品と基板間の相互接続に用いる金属核(10)(コア部)を内部に有するはんだボールであるから、「コア入りはんだバンプ」ということができる。 したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「電子部品の基板への実装に用いられる、コア部と該コア部の表面を全て覆うコーティング部との2層構造を有し、且つ前記コーティング部を構成するはんだ合金の融点が前記コア部を構成するはんだ合金の融点よりも低いコア入りはんだバンプ。」 (相違点1) 「はんだバンプ」を設置する対象に関し、 補正後の発明は、「LSIパッケージに設置され」るのに対し、引用発明1は、その様な特定がない点。 (相違点2) 「電子部品」に関し、 補正後の発明は、「当該LSIパッケージ」であるのに対し、引用発明1は、その様な特定がない点。 そこで、上記相違点1及び2について検討する。 はんだ付け技術を用いた電子部品の基板への実装の技術分野において、電子部品として、LSIパッケージを用い、はんだバンプをLSIパッケージ設置することは、例えば、特開2004-165511号公報(段落【0002】?【0004】、【0016】、【0017】、図1、2)、特開2001-93925号公報(段落【0002】、【0003】、図8)に開示されているように周知である。 そうすると、当業者であれば、「はんだバンプ」を、補正後の発明のように「LSIパッケージに設置され」るようにすること(相違点1)、及び「電子部品」として「当該LSIパッケージ」を採用すること(相違点2)に格別な困難性はない。 そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成25年9月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明 原審において引用された特開平3-217024号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ニ.「〔産業上の利用分野〕 本発明は電極を精密に接合させるための技術、特に、フリップチップのように高密度に配置された電極を基板側に正確に位置合わせさせるために用いて効果のある技術に関するものである。」(1頁右下欄5?9行) ホ.「第7図は本発明による半導体装置の第4実施例の搭載前を示す正面図、第8図は第7図の実施例による半導体装置の搭載後を示す正面図である。 本実施例は、第5図及び第6図に示した実施例が、低融点電極用合金7を特定した基板電極6に設けていたのに対し、逆に、電極用合金4側に薄く形成するようにしたものである。すなわち、搭載部品1側の配線2の全てに電極用合金4のみを設けるものとし、この内の四隅(あるいは対角線上の最も外側の2点)にのみ低融点電極用合金8を設けるものとしたものである。低融点電極用合金8の形成方法は、低融点電極用合金7と同様にマスクを用いて蒸着を行うことにより達成できる。 実装に際しては、第7図のように搭載部品1と搭載基板5を位置決めしてから、両者を圧着した状態で低融点電極用合金8が溶融する程度の温度で予備加熱し、低融点電極用合金7のみを溶融させ、この低融点電極用合金7を電極用合金4と基板電極6の間に介在させる。これによって、搭載部品1と搭載基板5が固定され、外力が加えられても電極間に位置ずれを生じさせることがない。低融点電極用合金8を溶融させた後、加熱炉などへ搬入して電極用合金4を溶融させ、電極用合金4と基板電極6をはんだ接続する。 以上本発明によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。 例えば、前記各実施例では、低融点の電極用合金3(あるいは、低融点電極用合金7、低融点電極用合金8)を配線2側または基板電極6側のいずれか一方に設けるものとしたが、双方に設けるようにしてもよい。 また、前記実施例においては、はんだバンプを例に説明したが、この他、ガルウィング型のリードを有するものに対しても適用可能である。」(3頁右下欄2行?4頁左上欄17行) 上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ホ.における「低融点電極用合金7を特定した基板電極6に設けていたのに対し、逆に、電極用合金4側に薄く形成するようにしたものである。すなわち、搭載部品1側の配線2の全てに電極用合金4のみを設けるものとし、この内の四隅(あるいは対角線上の最も外側の2点)にのみ低融点電極用合金8を設けるものとしたものである。」との記載、及び第7図によれば、搭載部品(1)の搭載基板(5)への実装において、搭載部品(1)の下面四隅の電極用合金(4)に着目してみると、電極用合金(4)は、低融点電極用合金(7)を表面に設けている。 ここで、前述の電極用合金(4)は、低融点電極用合金(7)を表面に設けているから、この構造を2層構造を有しているということができる。そして、上記ホ.における「前記実施例においては、はんだバンプを例に説明した」との記載によれば、前述の2層構造を有したものは、はんだバンプである。 また、前述の低融点電極用合金(7)の融点は、電極用合金(4)の融点より低いことは明らかである。 また、上記ホ.における「第7図は本発明による半導体装置の第4実施例の搭載前を示す正面図」との記載によれば、搭載部品(1)は、半導体装置である。 したがって、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体装置に設置され当該半導体装置の搭載基板(5)への実装に用いられる、電極用合金(4)と低融点電極用合金(7)との2層構造を有し、且つ前記低融点電極用合金(7)の融点が前記電極用合金(4)の融点よりも低いはんだバンプ。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明2とを対比する。 e.引用発明2の「半導体装置」は、本願発明の「LSIパッケージ」を含む。 f.引用発明2の「電極用合金(4)」及び「低融点電極用合金(7)」は、本願発明の「コア部」及び「コーティング部」にそれぞれ相当する。 g.引用発明2の「低融点電極用合金(7)」及び「電極用合金(4)」は、電極用合金の組成に着目すれば、はんだバンプを構成するはんだ合金から成るものであり、それぞれの「融点」は、上記f.の対比を考慮すると、「コーティング部を構成するはんだ合金の融点」及び「コア部を構成するはんだ合金の融点」ということができる。 h.引用発明2の「はんだバンプ」は、電極用合金(4)(コア部)を内部に有するはんだバンプであるから、「コア入りはんだバンプ」ということができる。 したがって、本願発明と引用発明2は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「半導体装置に設置され当該半導体装置の基板への実装に用いられる、コア部とコーティング部との2層構造を有し、且つ前記コーティング部を構成するはんだ合金の融点が前記コア部を構成するはんだ合金の融点よりも低いコア入りはんだバンプ。」 (相違点) 「半導体装置」に関し、 本願発明は、「LSIパッケージ」であるのに対し、引用発明2は、その様な特定がない点。 そこで、上記相違点について検討する。 はんだ付け技術を用いた電子部品の基板への実装の技術分野において、実装する電子部品として、LSIパッケージを用いることは、例えば、特開2004-165511号公報(段落【0002】?【0004】、【0016】、図1)、特開2001-93925号公報(段落【0002】、【0003】、図8)に開示されているように周知である。 そうすると、当業者であれば、引用発明の「半導体装置」として「LSIパッケージ」を採用することに格別な困難性はない。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明2及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願は、その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-04-22 |
結審通知日 | 2014-04-30 |
審決日 | 2014-05-14 |
出願番号 | 特願2011-177899(P2011-177899) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮本 靖史 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 関谷 隆一 |
発明の名称 | LSIパッケージ及びコア入りはんだバンプ並びにLSIパッケージ実装方法 |
代理人 | 馬場 資博 |
代理人 | 境 廣巳 |