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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1289540 |
審判番号 | 不服2012-17268 |
総通号数 | 176 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-05 |
確定日 | 2014-07-10 |
事件の表示 | 特願2006-275691「主要なクラスタを判定する方法及びコンピュータ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月24日出願公開、特開2008- 97147〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2006年(平成18年)10月6日の出願であって,平成23年8月11日付けの拒絶理由の通知に対し,平成23年10月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成24年5月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成24年9月5日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成25年5月16日付けの審尋に対し,平成25年7月19日に回答書が提出されたものである。 第2 平成24年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年9月5日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容について 本件補正により,特許請求の範囲の記載は,次のとおり補正された。 (下線部は,補正箇所である。) 「【請求項1】 クラスタ分析によりアイテムを分類した複数のクラスタの中から主要なアイテムを含むクラスタをコンピュータが判定する方法であって, 前記コンピュータが,複数のアイテムを,確率空間にマップしてクラスタ分析することにより複数のクラスタに分類するステップと, 前記コンピュータが,分類した前記複数のクラスタのそれぞれについて,含まれるアイテム数及び前記確率空間におけるクラスタの大きさを示すコンパクト度をそれぞれ計算す るステップと, 前記コンピュータが,前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度であって,双方の重要度の総和が所定値に決められている相対的な重要度を指定するデータを受け付けるステップと, 前記コンピュータが,それぞれ計算した前記アイテム数及び前記コンパクト度並びに前記相対的な重要度を指定するデータに基づいて主要なアイテムを含むクラスタの判定をするステップと, 前記コンピュータが,判定した結果を出力するステップと, を含む方法。 【請求項2】 前記コンパクト度をそれぞれ計算するステップにおいて,前記コンピュータが 【数1】 により前記コンパクト度ν(X)を計算する請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記クラスタ分析について,前記コンピュータが,閾値を設定するデータを受け付けるステップを更に含み, 前記複数のクラスタに分類するステップにおいて,前記コンピュータが受け付けた前記閾値に基づいて前記コンピュータが,クラスタ分析を行う請求項1又は請求項2に記載の方法。 【請求項4】 クラスタ分析によりアイテムを分類した複数のクラスタの中から主要なアイテムを含むクラスタを判定するコンピュータであって, 複数のアイテムを,確率空間にマップしてクラスタ分析することにより複数のクラスタに分類する手段と, 分類した前記複数のクラスタのそれぞれについて,含まれるアイテム数及びコンパクト度をそれぞれ計算する手段と, 前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度であって,双方の重要度の総和が所定値に決められている相対的な重要度を指定するデータを受け付ける手段と, それぞれ計算したアイテム数及びコンパクト度並びに前記相対的な重要度を指定するデータに基づいて主要なアイテムを含むクラスタを判定する手段と, 判定した結果を出力する手段と, を備えるコンピュータ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成23年10月17日の手続補正による特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 クラスタ分析によりアイテムを分類した複数のクラスタの中から主要なアイテムを含むクラスタをコンピュータが判定する方法であって, 前記コンピュータが,複数のアイテムを,確率空間にマップしてクラスタ分析することにより複数のクラスタに分類するステップと, 前記コンピュータが,分類した前記複数のクラスタのそれぞれについて,含まれるアイテム数及び前記確率空間におけるクラスタの大きさを示すコンパクト度をそれぞれ計算するステップと, 前記コンピュータが,前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度を指定するデータを受け付けるステップと, 前記コンピュータが,それぞれ計算した前記アイテム数及び前記コンパクト度並びに前記相対的な重要度を指定するデータに基づいて主要なアイテムを含むクラスタの判定をするステップと, 前記コンピュータが,判定した結果を出力するステップと, を含む方法。 【請求項2】 前記コンパクト度をそれぞれ計算するステップにおいて,前記コンピュータが 【数1】 により前記コンパクト度ν(X)を計算する請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記クラスタ分析について,前記コンピュータが,閾値を設定するデータを受け付けるステップを更に含み, 前記複数のクラスタに分類するステップにおいて,前記コンピュータが受け付けた前記閾値に基づいて前記コンピュータが,クラスタ分析を行う請求項1又は請求項2に記載の方法。 【請求項4】 クラスタ分析によりアイテムを分類した複数のクラスタの中から主要なアイテムを含むクラスタを判定するコンピュータであって, 複数のアイテムを,確率空間にマップしてクラスタ分析することにより複数のクラスタに分類する手段と, 分類した前記複数のクラスタのそれぞれについて,含まれるアイテム数及びコンパクト度をそれぞれ計算する手段と, 前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度を指定するデータを受け付ける手段と, それぞれ計算したアイテム数及びコンパクト度並びに前記相対的な重要度を指定するデータに基づいて主要なアイテムを含むクラスタを判定する手段と, 判定した結果を出力する手段と, を備えるコンピュータ。」 (3)上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度を指定するデータを受け付けるステップ」との事項を,「前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度であって,双方の重要度の総和が所定値に決められている相対的な重要度を指定するデータを受け付けるステップ」との事項に補正するものであり,補正前の請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度を指定するデータを受け付ける手段」との事項を,「前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度であって,双方の重要度の総和が所定値に決められている相対的な重要度を指定するデータを受け付ける手段」との事項に補正するものであるから,「重要度」について,上記のとおり限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。) を目的とするものに該当する。 上記補正の,補正前の請求項2に記載した発明を補正後の請求項2に記載した発明とする補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第3号に掲げる誤記の訂正に該当する。 2 補正の適否 そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1に記載したとおりのものである。 (2)引用例の記載事項 ア 引用例1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願の日前に頒布された刊行物である,特開2004-341948号公報(平成16年12月2日出願公開。以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 a 「【0001】【発明の属する技術分野】 本発明は,パーソナルコンピュータなど汎用の情報処理装置や,専用装置上に実現される文書検索システム,文書分類システム,およびテキスト情報分析システムなど,文書処理システムに用いることができる,テキストデータの概念を抽出する概念抽出技術に係り,特に,内容に基づきテキストデータを分類する文書分類技術を利用してテキストデータ集合を対象に概念抽出をおこなえる概念抽出技術に関する。」 b 「【0006】【発明の実施の形態】 以下,図面により本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお,ここで扱うテキストデータとは,文書および文書の一部(例えば概要部分や,文書をいくつかの部分に分割したもの),またはメール文書やコールセンターの問い合わせ記録など,自然言語により記述されたデータ単位である。また,以下の説明では,テキストデータ集合からの漸次的概念抽出の好適な例としてアンケート調査などにより得られた自由記述回答データの分析場面を想定する。 図1は,本発明の第1の実施例を示す,概念抽出システムの構成ブロック図である。図示したように,この実施例の概念抽出システムは,テキストデータの形態素解析をおこなって単語(またはトークン)とその品詞など言語情報を抽出するテキストデータ解析部2,および抽出された単語などの出現頻度を計数するテキストデータ計数部3を有して,その出現頻度に基づいたテキストベクトルを生成するテキストベクトル生成部1,そのテキストベクトルを記憶しておくテキストベクトル記憶部5,およびテキストデータ解析部2による形態素解析結果を記憶しておくテキスト解析結果記憶部6などから成る解析結果記憶部4,前記テキストベクトル記憶部5に記憶されているテキストベクトルに基づいてテキストデータを複数のクラスタに分類するクラスタリング部8,および分類された各クラスタの特徴を求めるクラスタ特徴算出部9などから成るクラスタ処理部7,前記各クラスタ中から一部のクラスタを選択させるクラスタ選択部10,選択されたクラスタに係るクラスタ情報を記憶しておく選択クラスタ記憶部11,そのクラスタ情報などに基づきテキストベクトル記憶部5に記憶されているテキストベクトルを修正するテキストベクトル修正部12などを備えている。 なお,請求項1記載のテキストベクトル生成手段,テキストベクトル記憶手段,クラスタリング手段,クラスタ選択手段,選択クラスタ記憶手段,およびテキストベクトル修正手段はそれぞれ,テキストベクトル生成部1,テキストベクトル記憶部5,クラスタリング部8,クラスタ選択部10,選択クラスタ記憶部11,およびテキストベクトル修正部12により実現される。また,前記したテキストベクトル生成部1,クラスタリング部8を含むクラスタ処理部7,クラスタ選択部10,およびテキストベクトル修正部12はプログラムを記憶したRAMおよびそのプログラムに従って動作するCPUなどにより実現され,テキストベクトル記憶部5を含む解析結果記憶部4および選択クラスタ記憶部11はRAMおよびハードディスク記憶装置それぞれの一記憶領域として実現される。 【0007】 図8に,この実施例の動作フローを示す。以下,図8に従って,この動作フローを説明する。 まず,テキストデータ解析部2が,公知の形態素解析アルゴリズムを用い,入力されたテキストデータに含まれる単語(または,単なる単語でなく,ルールを用いて複数の形態素を変換して新たに生成した例えば複合語や異表記を統一したものなどを含むトークンと呼ばれるもの)とその品詞など言語情報を抽出する(S1)。例えば,[ソフトウェアの操作方法は難しくいつも苦労する]というテキストデータからは,ソフトウェア-(名詞)/の-(助詞)/操作-(名詞)/方法-(名詞)/は-(助詞)/難しい-(形容詞)/いつも-(副詞)/苦労-(名詞)/する-(助動詞)が抽出される。 続いて,テキストデータ計数部3が,予め設定されたストップワード(計数除外単語や計数除外品詞)テーブルを参照して,各テキストデータにおける有効な単語(またはトークン)の出現頻度を単語(またはトークン)毎に計数し(S2),図2に示したように,テキストデータ毎に,抽出されたすべての有効単語(または有効トークン)のベクトルとして表現される行列に計数結果を書き込んで行く(mは全テキストデータ数,nは全テキストデータ集合内に出現する全有効単語数)。なお,行列の要素に単純に出現頻度を用いるのではなく,テキストデータの長さや,単語の全テキストデータ集合内での総出現頻度を用いて重み付けをおこなってもよい。 テキストデータがある限り(S3でY)前記したステップS1,S2をくり返し,対象とするテキストデータがなくなると(S3でN),テキストデータ計数部3は行列の生成を完了する(S4)。そして,その行列のデータをテキストベクトル記憶部5に保存する(S5)。 【0008】 次に,クラスタリング部8が,テキストベクトル記憶部5に格納された行列のデータを用い,テキストベクトル間の余弦(内積や距離でもよい)を測度としてk-means法,最大距離法などの既知のアルゴリズムを用いてクラスタを生成し,k個のクラスタに全テキストデータを割り当てる(S6)。また,クラスタ特徴算出部9は,生成された各クラスタの特徴を表すクラスタ特徴トークンを求める。この実施例では,クラスタkのクラスタ特徴トークンを,“トークンiが出現するクラスタk所属のテキストデータ数/全テキストデータセットにおけるトークンiが出現するテキストデータ数”が一定以上の値をとるトークンiを特徴トークンとしている。 例えば,クラスタkの特徴トークンは,次のようにして計算される。まず,テキストベクトル記憶部5に格納されている行列に基づいて,各トークン毎に列方向に要素が1以上であればカウンタを順次加算し,全テキストデータにおける各トークンの出現データ数を算出する。次いで,クラスタkに所属するテキストデータの識別子をもとにテキストベクトル記憶部5からそのテキストデータのみからなる部分行列を生成し,同様に,各トークン毎に列方向に要素が1以上であればカウンタを順次加算し,当該クラスタ所属のテキストデータ数を算出する。順次このような計算を繰り返すことで,各トークンの全テキストデータに対する出現データ数と,クラスタkに所属するテキストデータにおける出現データ数とが計算できる。次いで,順次各トークン毎に2つの数を用いて除算することで特徴量を求め,その値があらかじめ定めたM以上のトークンを特徴トークンとして,その識別子をクラスタ選択部10へ出力する。クラスタ選択部10は,渡されたトークン識別子をキーとして,テキスト解析結果記憶部6からそのトークン表記を検索して表示する。例えば,図3においては,クラスタ1について“管理”,“ダウン”,“多忙”,“システム”を特徴トークンとして表示するのである。 【0009】 こうして,クラスタ選択部10は,表示手段と入力手段とを用いたユーザーインターフェースにより,利用者にクラスタを選択させる。図3に示したような画面のユーザーインターフェースを用いて,利用者は有益な概念であると判断したクラスタを選択・指示するのである。なお,この実施例のクラスタ選択部10では,クラスタを表示する際,クラスタリング部8によって生成されたクラスタを以下のクラスタ重要度スコアを用いてソートし,所属テキストデータ数が多く,クラスタ凝集度が高いクラスタが上位に表示されるようしている。 Tk=(1/NkΣ(Ski-Hk)2)1/2Nk/N (当審注:Tkの式の下線は上付数字である。) Tk・・クラスタkのクラスタ重要度スコア Nk・・クラスタk所属のテキストデータ数 N・・全テキストデータ数 Ski・・クラスタk所属のテキストiの類似度スコア(距離,内積,余弦) Hk・・クラスタkの平均類似度スコア クラスタ選択部10により,利用者は,保存したいクラスタ(クラスタリングが適切で,利用者が有益であると判断したクラスタ)をマウスなどを用いて選択することができる。図3において,■印は選択されたことを示し,クラスタ特徴トークンとして,特徴単語を示している。また,メンバ数とは,各クラスタに属するテキストデータ数である。 保存するクラスタを選択後,再実行ボタン(図3参照)を押下すると,クラスタ選択部10は,選択されたクラスタの識別子を選択クラスタ記憶部11に,クラスタ識別子,所属テキストデータの識別子,およびクラスタ特徴トークンの識別子をテキストベクトル修正部12に渡す(S7でY)。選択クラスタ記憶部11は渡されたクラスタ識別子を保持する。なお,終了ボタンを押下した場合は,概念抽出処理を終了する(S7でN)。」 (イ)上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。 a 引用例1に記載された技術は,情報処理装置上で実現される文書分類システムであって,内容に基づきテキストデータを分類する文書分類技術に関する(【0001】)。 b 文書など,自然言語により記述されたデータ単位であるテキストデータから単語など言語情報を抽出し,出現頻度に基づいたテキストベクトルを生成し,テキストベクトルに基づいてテキストデータを複数のクラスタに分類(【0006】)する。 c クラスタリング部はテキストベクトル間の距離を測度としてクラスタを生成(【0008】)し,生成されたクラスタのうち,所属テキストデータ数が多く,クラスタ凝集度が高いクラスタを重要なクラスタとし,表示する(【0009】)。 (ウ)これらのことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「情報処理装置上で実現される,内容に基づきテキストデータを分類する文書分類システムであって, 文書など,自然言語により記述されたデータ単位であるテキストデータから単語など言語情報を抽出し,出現頻度に基づいたテキストベクトルを生成し,テキストベクトル間の距離を測度としてクラスタを生成してテキストデータを複数のクラスタに分類すること, 生成されたクラスタのうち,所属テキストデータ数が多く,クラスタ凝集度が高いクラスタを重要なクラスタとし,表示する文書分類システム。」 イ 引用例2 (ア)同じく引用された,本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2005-227974号公報(平成17年8月25日出願公開。以下,「引用例2」という。)には,次の記載がある。 a 「【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 この発明は,例えば,文書を分類して管理する文書管理技術に関し,とくに,固有名に着目して文書をユーザに提示するようにしたものである。 【背景技術】 【0002】 企業情報や製品情報を分析する場合,企業情報や製品情報を集めて分類し,分析することが考えられる。分類結果を表示する方法としては,リスト表示,属性別表示(例えば特許文献1)がある。特許文献1では,クラスタリング結果について,クラスタごとの件数のグラフ表示,特定クラスタの件数の時系列グラフ表示等で分かり易く表示している。 (途中略) 【0004】 この発明は,以上の事情を考慮してなされたものであり,分類結果を固有名別に表示し,さらに,ユーザの利用目的に応じて情報の重要度をコントロールできるような分類結果表示技術を提供することを目的としている。」 b 「【0030】 関連度計算部12は,例えば,以下のようなルールを用いて固有名ごとに関連度スコアを計算し,スコアが高いほど関連度を高く設定する。また,ユーザが利用目的や対象文書に応じて各ルールのスコアをカスタマイズできるようにしてもよい。 【0031】 (1)出現頻度(頻度スコア) (a)述べられる回数が多いほどその固有名がその文書の主要テーマである可能性が高いので,その固有名の出現頻度が高いほどスコアを高く設定する。 (途中略) 【0032】 (2)出現位置(位置スコア) (a)ニュース記事や技術論文などでは冒頭部分で文書の重要なテーマを述べることが多いので,その固有名が冒頭部分に出現する場合,スコアを高く設定する。 (途中略) 【0033】 (3)接続する助詞(助詞スコア) (途中略) 【0035】 文書ごとの各固有名の関連度スコアは,文書ごとの固有名ごとに(1)頻度スコア,(2)位置スコア,(3)助詞スコアを加算したものである。」 c 「【0040】 なお,スコアをカスタマイズするようにしてもよい。例えば,図6に示すように,各ルールのスコアを外部ファイルで定義し,スコア値を参照するようにしておくことにより,外部ファイルのスコア値を変更することでスコアをカスタマイズすることができる。あるいは,スコアの種別ごとに重み付けをユーザや管理者が指定できるようにし,関連度スコアを各スコアの重み付け加算により行なうようにしても良い。」 (イ)上記記載から,引用例2には,次の技術が記載されている。 「文書を分類して整理する際,各固有名の,スコアが高いほど重要である可能性が高い複数種別のスコアを加算して関連度スコアを計算し,これがより高いものを重要な固有名とするに当たり,重み付けを指定し重み付け加算できるようにする。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「情報処理装置」は,後記する点で相違するものの,本件補正発明の「コンピュータ」に相当する。 (イ)引用発明の,自然言語により記述されたデータ単位である「テキストデータ」は,本件補正発明の「アイテム」に相当し,引用発明が「テキストデータ」から単語など言語情報を抽出し,出現頻度に基づいて「テキストベクトルを生成」することは,本件補正発明の「複数のアイテムを,確率空間にマップ」することに相当する。 (ウ)引用発明が,「情報処理装置」上で,「テキストベクトル間の距離を測度としてクラスタを生成してテキストデータを複数のクラスタに分類」することは,本件補正発明の「コンピュータが,複数のアイテムを,確率空間にマップしてクラスタ分析することにより複数のクラスタに分類」することに相当する。 (エ)引用発明の,「生成されたクラスタ」の「所属テキストデータ数」は,本件補正発明の「分類した複数のクラスタ」の「含まれるアイテム数」に相当し,引用発明の「生成されたクラスタ」の「クラスタ凝集度」は,本件補正発明の「確率空間におけるクラスタの大きさを示すコンパクト度」に相当する。 ここで,引用発明は,「情報処理装置」上で,「生成されたクラスタのうち,所属テキストデータ数が多く,クラスタ凝集度が高いクラスタを重要なクラスタ」とするために,「生成されたクラスタ」のそれぞれの「所属テキストデータ数」と「クラスタ凝集度」とを計算することが明らかである。 そして,引用発明の「情報処理装置」が「所属テキストデータ数」が多く「クラスタ凝集度」が高い「クラスタ」を「重要なクラスタとし,表示する」ことは,後記する点で相違するものの,本件補正発明の「コンピュータ」が「アイテム数」及び「コンパクト度」に基づいて「主要なアイテムを含むクラスタ」と「判定」し,「出力」することに相当する。 してみると,引用発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「コンピュータが,分類した複数のクラスタのそれぞれについて,含まれるアイテム数及び確率空間におけるクラスタの大きさを示すコンパクト度をそれぞれ計算」する点で共通し,「それぞれ計算したアイテム数及びコンパクト度に基づいて主要なアイテムを含むクラスタの判定」をし,「判定した結果を出力」する点で共通する。 (オ)以上(ア)?(エ)のことから,引用発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「クラスタ分析によりアイテムを分類した複数のクラスタの中から主要なアイテムを含むクラスタをコンピュータが判定」する「方法」であって,「複数のクラスタに分類」し,「アイテム数とコンパクト度を計算」し,「主要なアイテムを含むクラスタを判定」し,「判定した結果を出力」する各「ステップ」を有する点で共通する。 イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 【一致点】 「クラスタ分析によりアイテムを分類した複数のクラスタの中から主要なアイテムを含むクラスタをコンピュータが判定する方法であって, コンピュータが,複数のアイテムを,確率空間にマップしてクラスタ分析することにより複数のクラスタに分類するステップと, コンピュータが,分類した複数のクラスタのそれぞれについて,含まれるアイテム数及び確率空間におけるクラスタの大きさを示すコンパクト度をそれぞれ計算するステップと, コンピュータが,それぞれ計算したアイテム数及びコンパクト度に基づいて主要なアイテムを含むクラスタの判定をするステップと, コンピュータが,判定した結果を出力するステップと, を含む方法。」 【相違点】 本件補正発明が,コンピュータが,「アイテム数及びコンパクト度に対する相対的な重要度であって,双方の重要度の総和が所定値に決められている相対的な重要度を指定するデータを受け付けるステップ」を有し,「アイテム数及びコンパクト度並びに相対的な重要度を指定するデータに基づいて主要なアイテムを含むクラスタの判定」するのに対し,引用発明はそのようなものではない点。 (4)判断 以下,相違点について検討する。 ア 相違点について 引用例2には,再掲すれば,「文書を分類して整理する際,各固有名の,スコアが高いほど重要である可能性が高い複数種別のスコアを加算して関連度スコアを計算し,これがより高いものを重要な固有名とするに当たり,重み付けを指定し重み付け加算できるようにする。」との技術が記載されている。 引用発明は,有益な概念のクラスタを,複数に分類されたクラスタから得るための重要度を求めるものであり,「所属テキストデータ数」と「クラスタ凝集度」は,分類されたクラスタの複数のスコアであって,スコアが高いほどクラスタが重要である可能性が高い複数種別のスコアである点で引用例2のスコアと共通する。 してみると,引用発明が,所属テキストデータ数が多く,クラスタ凝集度が高いクラスタを重要なクラスタとする際,引用例2に記載された技術を適用することにより,情報処理装置が,所属テキストデータ数及びクラスタ凝集度に,それぞれの重み付けを指定できるよう構成し,所属テキストデータ数及びクラスタ凝集度並びにそれぞれの重み付けを指定するデータに基づいて,関連度スコアを計算し,クラスタの重要度を判断するよう構成すること,すなわち,「コンピュータが,アイテム数及びコンパクト度に対する重要度を指定するデータを受け付けるステップ」を有するよう構成し,「アイテム数及びコンパクト度並びに重要度を指定するデータに基づいて主要なアイテムを含むクラスタを判定」するよう構成することは,当業者が容易に想到することができたものである。 その際,重要度を指定するに当たり,重みの合計を所定値とすることにより相対化し,「双方の重要度の総和を所定値」とすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。 イ そして,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用例2に記載された発明の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 ウ したがって,本件補正発明は,引用例1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび 本件補正は,平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反してなされたものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成24年9月5日の手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成23年10月17日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 再掲すれば,次のとおり。 「クラスタ分析によりアイテムを分類した複数のクラスタの中から主要なアイテムを含むクラスタをコンピュータが判定する方法であって, 前記コンピュータが,複数のアイテムを,確率空間にマップしてクラスタ分析することにより複数のクラスタに分類するステップと, 前記コンピュータが,分類した前記複数のクラスタのそれぞれについて,含まれるアイテム数及び前記確率空間におけるクラスタの大きさを示すコンパクト度をそれぞれ計算するステップと, 前記コンピュータが,前記アイテム数及び前記コンパクト度に対する相対的な重要度を指定するデータを受け付けるステップと, 前記コンピュータが,それぞれ計算した前記アイテム数及び前記コンパクト度並びに前記相対的な重要度を指定するデータに基づいて主要なアイテムを含むクラスタの判定をするステップと, 前記コンピュータが,判定した結果を出力するステップと, を含む方法。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1,2及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から「重要度」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載のとおり,引用例1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-07 |
結審通知日 | 2014-05-13 |
審決日 | 2014-05-26 |
出願番号 | 特願2006-275691(P2006-275691) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩田 淳 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 清田 健一 |
発明の名称 | 主要なクラスタを判定する方法及びコンピュータ |
代理人 | 中嶋 裕昭 |
代理人 | 酒井 宏明 |