• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1289546
審判番号 不服2013-5369  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-22 
確定日 2014-07-10 
事件の表示 特願2009- 10675号「空気調和機の制御方法及び空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月 5日出願公開、特開2010-169292号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年1月21日の出願であって、平成25年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年3月22日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、平成25年12月18日付けで当審において拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年12月24日)、これに対して、平成26年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年2月24日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項2】
室外熱交換器と、
前記室外熱交換器に送風可能な送風手段と、
前記室外熱交換器に当たる外風の風向と風速を検知する風向風速検知手段と、
前記送風手段の運転制御を行う送風運転制御手段と、を備え、
前記送風運転制御手段は、
前記室外熱交換器の除霜中に、前記風向風速検知手段の検知結果に基づいて、前記室外熱交換器への外風の影響を除くように前記送風手段を動作させるものであり、
また、前記室外熱交換器の除霜後に、前記風向風速検知手段の検知結果に基づいて、外風が前記室外熱交換器から前記送風手段に向かって吹いていると判定された場合、前記室外熱交換器における前記送風手段の側に所定の風圧の風が当たるように前記送風手段を制御し、また、前記風向風速検知手段の検知結果に基づいて、外風が前記送風手段から前記室外熱交換器に向かって吹いていると判定された場合、前記室外熱交換器に外風を補う所定の風圧の風が当たるように前記送風手段を制御するものである
ことを特徴とする空気調和機。」

3.引用文献
(1)当審で通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)において引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-183335号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の記載がある(下線は当審にて付加、以下同じ。)。

ア.「特許請求の範囲
1.圧縮機と、室内側熱交換器と、室外側熱交換器と、絞り装置と四方弁等を順次接続してなる冷凍サイクルと、室内側送風機と室外側送風機等により構成する空気調和機において、除霜運転中は室外側送風機を停止し、除霜終了後に、通常暖房運転時と逆方向に、一定時間、室外側送風機を運転することを特徴とする空気調和機。」(1ページ左下欄4?11行)

イ.「〔産業上の利用分野〕
本発明は、空気調和機に係り、特に暖房における除霜運転時の除霜効果を高め、暖房能力向上に好適な空気調和機に関するものである。」(1ページ左下欄13?16行)

ウ.「〔作用〕
室外側送風機を逆回転させ室外側熱交換機に残存の水滴を吹きとばすことにより、それが再凍結することがなくなるので、室外側熱交換器の吸熱量の減少を防ぎ、暖房能力の向上を図ることができる。
〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を第1図により説明する。第1図は本発明が実施されるべき室外機の断面図である。1はキャビネット、2は室外側熱交換器、3は送風羽根車で、一般にはプロペラファンが使用される。本羽根車は吸排気可能な形状を有する場合もある。4は送風用電動機であり、直流用でも交流用でも艮い。その他図示されていないが、圧縮機や四方弁、絞り装置の他、室内側に室内側熱交換器や室内側送風機によって空気調和機が構成されている。
本実施例において、通常の冷房、暖房運転時は、風は実線で示す矢印のごとく流れ、室外熱交換器2を送風用羽根車3の吸込側に設置し、騒音の低下を図っている。暖房における除霜運転で、除霜運転中は送風用電動機4を停止し、除霜を効果的に行ない、除霜終了後は、送風用電動機4を一定時間逆回転させ、破線で示す矢印のごとく風の流れを変え、室外熱交換器2に残存する水滴を吹きとばすものである。
第2図にフローチャートを示す。第3図に送風用電動機4を逆回転させる回路の例を示す。リレー5を切換えることにより、送風用電動機4の回転方向を変えることができる。本実施例によれば、除霜終了時に室外熱交換器に残存する水滴を除去でき、暖房再運転時の暖房能力の向上に効果がある。」(2ページ左上欄2行?右上欄14行)

エ.上記記載事項ウ及び第1図から、除霜終了後、送風用電動機4を逆回転させると、送風用羽根車3から室外側熱交換器2に向かう風の流れになると理解できる。

オ.上記記載事項ウ及び第2図に示されたフローチャートから、引用文献1に記載された空気調和機は、送風用羽根車3を駆動する送風用電動機4を制御する制御手段を有していると理解できる。

上記記載事項ア?ウ及び認定事項エ、オを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「室外側熱交換器2と、
送風用羽根車3及び送風用電動機4と、
送風用羽根車3を駆動する送風用電動機4を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
暖房における除霜運転で、除霜運転中は送風用電動機4を停止し、除霜を効果的に行なうものであり、
また、除霜終了後は、送風用電動機4を、通常暖房運転時と逆方向に、一定時間逆回転させ、送風用羽根車3から室外側熱交換器2に向かう風により、室外側熱交換器2に残存する水滴を吹きとばすように、前記送風用電動機4を制御するものである
空気調和機」

(2)上記当審拒絶理由で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-140243号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

カ.「[作用]
この発明においては、空気調和機の冷房サイクル運転時に室外用の熱交換器である凝縮器の冷却用として、凝縮器冷却用ファンモータの回転方向及び回転数を疑縮器設置部付近の外気温度、外風方向、外風量等の外気状態及び凝縮器出口部の温度に応じて制御することにより、室外の外気状態により凝縮器の冷却用に適正な風量を得るものである。」(2ページ右下欄9?17行)

キ.「(10)は凝縮器により凝縮された冷媒の温度を検出するための凝縮器出口部付近に配設した温度検出装置、(11)は凝縮器が設置されている付近の外気温度を検出する温度検出装置(11a)、外風の風量を検出する風量計等の風量検出装置(11b)、外風の方向を検出するための風向計等の風向検出装置(11c)からなる外気状態検出装置、(12)は凝縮器出口部付近の温度検出装置(10)及び外気状態検出装置(11)からの信号を比較判断してインバータ(9)を制御するマイクロコンピュータ等で構成される制御回路、(13)は上記の整流回路(7)から制御回路(12)の各構成部分により構成されている凝縮器冷却用ファンモータ(1)用のモータ制御装置である。なお、前記制御回路(12)は温度検出装置(10)及び外気状態検出装置(11)からの双方の信号を比較して凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転方向及び回転数を制御する制御手段を構成する。」(3ページ右上欄1?19行)

ク.「インバータ(9)の出力電圧は外気状態検出装置(11)からの信号と、凝縮器出口部付近の温度検出装置(10)からの信号を受けて、最適電圧を演算する制御回路(12)からの信号によって制御され、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転方向及び回転数を制御し、凝縮器に対する送風量を設定する。また、このモータ制御装置(13)は第2図からも明らかなように、空気調和機運転制御装置(14)により運転スイッチ(16)がON状態の場合に作動するように設置されている。」(3ページ左下欄16行?右上欄6行)

ケ.「第3図において、横軸を凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転数Nとし、縦軸をこの凝縮器冷却用ファンによる送風量Qとし、これに、室外に設置した疑縮器に吹付ける外風の風速Vをパラメータとした場合の凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転数と送風量との関係について述べる。
V=0の場合、即ち、外風が全く無い、所謂無風状態においては、凝縮器の冷却効率が最もよい送風量である定路風量Q_(0)(或いは-Q_(0))を得るためには、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転数をN_(0)(或いは-N_(0))とすればよい。
しかし、V>0の場合、即ち、外風方向が凝縮器冷却用ファンモータ(1)の初期設定方向である順方向回転による凝縮器冷却用ファンの送風方向と一致する場合には、凝縮器冷却用ファンモータ(1)を回転数N_(0)で運転を続行すると、Q>Q_(0)となり必要以上の過剰な送風量となり、不経済であるとともに冷却効率もよくない。特に、V=V1の場合には、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の運転を停止して回転数N=0としても、定格風量Q_(0)を得ることができる。
一方、上記外風方向とは逆方向の場合、即ち、外風方向が凝縮器冷却用ファンモータ(1)の初期設定方向である順回転方向による凝縮器冷却用ファンの送風方向と逆風のV<0の場合は、凝縮器冷却用ファンモータ(1)を初期設定方向である順方向に回転させ、凝縮器冷却用ファンによる順方向の定格風量Q_(0)を得ようとするためには、外風に抵抗して凝縮器冷却用ファンの送風量を増加させる必要があり、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の運転を回転数N_(0)以上の高速運転にする必要がある。ところが、凝縮器冷却用ファンモータ(1)を初期設定方向とは逆方向に回転させれば、より少ない回転数で定格風量-Q_(0)を得ることができる。この外風が逆方向の場合も、
V=-V1の場合には、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の運転を停止して回転数N=0としても、定格用風量-Q_(0)を得ることができる。
このように、外風の方向及び量に応じて凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転方向及び回転数を変化させて、より少ない回転数で効率的な運転により定格風量を得ることかできる。即ち、これは、凝縮器に吹付ける風量、放熱効果とは密接に関係するが、この送風方向には影響を受けないことによるものである。
ところで、外風の風速VがV>Vlの場合、或いはV<-V1の場合には、各々外風方向とは逆方向の送風を行なって定格風量にする必要がある。
これは、一見外風に抗して送風を行なうため不経済のように感ずるが、定格風量時において凝縮器の冷却効率が最もよいことに起因する。」(3ページ右下欄11行?4ページ左下欄1行)

コ.「まず、0≦Vの場合のうち、0≦V≦V1の場合は、外風量が増大するに従って、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転数は初期設定方向である順方向回転のままで次第に減少させる必要がある。そして、V1≦Vの場合には、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転方向は初期設定方向とは逆方向に逆転をさせて、外風量が増大するに従って、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転数も増加させる必要がある。
一方、V<0の場合のうち、-Vl≦V<0の場合は、外風量の絶対値が増大するに従って、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転数は初期設定方向とは逆方向で減少させる必要がある。そして、V<-V1の場合には、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転方向は再び逆転をして、初期設定方向の回転方向として、外風量の絶対値が増大するに従って、凝縮器冷却用ファンモータ(1)の回転数を増加させる必要がある。
したがって、外風がV<-Vl、0≦V≦V1の条件下では、この凝縮器冷却用ファンモータ(1)は初期設定方向である順方向の回転とし、他の条件ではこれと逆方向の回転とし、しかもこれらの各回転数は外風量に応じて変化をさせ、常に定格送風量を得ることができるように設定する。」(4ページ左下欄7行?右下欄10行)

上記記載事項カ?コを総合すると、引用文献2には、
「空気調和機を冷房用に使用する場合の凝縮器である室外用の熱交換器において、凝縮器設置部付近の外風方向と外風量を検出し、凝縮器冷却用ファンモータの回転方向及び回転数を、検出した外風方向と外風量に応じて制御し、適正な送風量を得る」
という技術思想が示されている。

また、その技術思想の具体化の手段として、
「外風方向が凝縮器冷却用ファンモータ(1)の初期設定方向である順方向回転による凝縮器冷却用ファンの送風方向と一致する場合、すなわち、外風の風速Vが、0<Vの場合のうち、0<V<V1では、外風量が増大するに従って、ファンモータの回転数を初期設定方向である順方向回転のままで次第に減少させ、V=V1で、ファンモータの回転数NをN=0とし、V1<Vで、ファンモータの回転方向を逆転させて、外風量が増大するに従って、ファンモータ(1)の回転数も増加させることにより、定格風量Q_(0)を得る」という技術手段(以下「技術手段1」という。)が示されている。

さらに、引用文献2には、ファンモータ(1)の初期設定方向である順回転方向による凝縮器冷却用ファンの送風方向と逆風のV<0の場合は、定格風量-Q_(0)を得る技術手段の従来技術として、
「ファンモータを初期設定方向である順方向に回転させ、ファンによる順方向の定格風量Q_(0)を得ようとするためには、外風に抵抗してファンの送風量を増加させる」という技術手段(以下「技術手段2」という。)が示されており、技術手段2も上記技術思想の具体化の手段ということができる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「室外側熱交換器2」、「送風用羽根車3及び送風用電動機4」、「送風用羽根車3を駆動する送風用電動機4を制御する制御手段」、「暖房における除霜運転」及び「除霜終了後」は、その機能に照らし、それぞれ本願発明の「室外熱交換器」、「送風手段」、「送風手段の運転制御を行う送風運転制御手段」、「室外熱交換器の除霜」及び「室外熱交換器の除霜後」に相当する。
また、引用発明の「送風用羽根車3から室外側熱交換器2に向かう風」は、本願発明の「室外熱交換器における前記送風手段の側に」「風が当たる」ことに相当する。

よって、両者は、

(一致点)
「室外熱交換器と、
前記室外熱交換器に送風可能な送風手段と、
前記送風手段の運転制御を行う送風運転制御手段と、を備え、
前記送風運転制御手段は、
室外熱交換器の除霜後に、室外熱交換器における前記送風手段の側に風が当たるように前記送風手段を制御するものである
空気調和機。」
で一致し、

(相違点1)
本願発明が、「前記室外熱交換器に当たる外風の風向と風速を検知する風向風速検知手段」を備えているのに対し、引用発明は、風向風速検知手段を備えていると特定されていない点、

(相違点2)
本願発明の送風運転制御手段が、「室外熱交換器の除霜中に、風向風速検知手段の検知結果に基づいて、前記室外熱交換器への外風の影響を除くように前記送風手段を動作させるものであ」るのに対し、引用発明の制御手段は、「暖房における除霜運転で、除霜運転中は送風用電動機4を停止し、除霜を効果的に行な」う点、

(相違点3)
本願発明の送風運転制御手段が、「室外熱交換器の除霜後に、風向風速検知手段の検知結果に基づいて、外風が前記室外熱交換器から送風手段に向かって吹いていると判定された場合、前記室外熱交換器における前記送風手段の側に所定の風圧の風が当たるように前記送風手段を制御し、また、前記風向風速検知手段の検知結果に基づいて、外風が前記送風手段から前記室外熱交換器に向かって吹いていると判定された場合、前記室外熱交換器に外風を補う所定の風圧の風が当たるように前記送風手段を制御するものである」のに対し、引用発明の制御手段は、「除霜終了後は、送風用電動機4を、通常暖房運転時と逆方向に、一定時間逆回転させ、送風用羽根車3から室外側熱交換器2に向かう風により、室外側熱交換器2に残存する水滴を吹きとばすように、前記送風用電動機4を制御するものである」点、

で相違する。

5.判断
先ず、相違点1?3に共通して、引用発明に引用文献2に示された技術思想を適用すること容易想到性について検討する。
上記技術思想は、空気調和機を冷房用に使用する場合の凝縮器である室外用の熱交換器を前提としたものであり、引用発明の空気調和機が、除霜運転時又は除霜終了後の室外側熱交換器を前提としている点で相違するが、引用発明は、送風用電動機を制御しているので、室外熱交換器に対する適正な送風量を設定しているということができ、この点は、上記技術思想の「適正な送風量を得る」ことと共通する。
さらに、引用発明は、外風の影響を考慮したものではないが、空気調和機において、室外熱交換器へ外風が影響することは技術常識であるので、引用文献2に接した当業者であれば、室外熱交換器への外風の影響を、室外側熱交換器を有する空気調和機一般が内在する課題として認識できるものである。
よって、上記技術思想を、その凝縮器である室外用の熱交換器を除霜運転時又は除霜終了後の室外側熱交換器として、引用発明に適用することは、当業者が容易に想到することである。

次に上記相違点1?3についてそれぞれ検討する。

(相違点1について)
上記技術思想において検出する「外風量」は本願発明の検知する「外風の」「風速」に相当する。また、上記技術思想において、検出する「外風方向と外風量」は凝縮器設置付近のものであるので、本願発明の「室外熱交換器に当たる外風の風向と風速」に相当する。
よって、引用発明に上記技術思想を適用することにより、室外側熱交換器に当たる外風の風向と風速を検知する風向風速検知手段を備えることは、当業者が容易に想到することである。

(相違点2について)
本願発明において、除霜中に「外風の影響を除くように前記送風手段を動作させる」ことは、本願明細書の「室外ファン3が発生させる風により外風を相殺することで、除霜中の室外熱交換器2にはほとんど風が当たらない状態となる。このように、室外熱交換器2への外風の影響を除去することで、効果的に除霜を行うことができる。例えば、従来であれば、外風が強い場合にはその影響で室外熱交換器2が冷やされて高温のガス冷媒による除霜効果を低下させていたが、本実施の形態1に係る空気調和機100によればそのようなこともない。なお、外風が無く無風状態である場合には、ファンモーター4を動作させなくてよい。」(段落【0017】)との記載から、「送風手段により外風を相殺することで、除霜中の室外熱交換器2にはほとんど風が当たらない状態にする」ことと理解できる。

また、引用発明の「電動機4を停止し、除霜を効果的に行な」うことの技術的意味が、除霜時に室外側熱交換器に風が当たらないようにして、除霜を効果的に行うことであることは、明らかである。
そうすると、相違点2において、除霜中に室外熱交換器に風が当たらない状態にしようとしている点で、本願発明と引用発明は共通している。

ここで、引用文献2に示された技術手段1は、外風の風速Vが風向が順方向である0<Vの場合に、風速Vが、V1より低い場合、V1と同じ場合又はV1より高い場合の何れに拘わらず、定格風量Q_(0)を得るものであるので、「ファンモータの回転方向及び回転数の制御により外風を相殺して、さらに、室外熱交換器に定格風量Q_(0)を当てる技術手段」であるということができる。そして、室外熱交換機に風が当たらないようにするためには、上記技術手段1の定格風量Q_(0)を風量0とする程度は当業者が直ちに想到することである。
よって、引用発明において、除霜中に室外熱交換器に風が当たらない状態するために、上記技術手段1を、その定格風量Q_(0)を風量0として、適用することにより、送風手段により外風を相殺するようにすることは当業者が容易に想到することである。

(相違点3について)
(1)本願発明の「外風が前記室外熱交換器から送風手段に向かって吹いていると判定された場合」において、「室外熱交換器における送風手段の側に所定の風圧の風が当たるように送風手段を制御」することは、本願明細書の「除霜後の室外熱交換器2には融解水が付着しているので、外風と室外ファン3が発生させる風によって所定の風圧を与えることで、室外熱交換器2に付着した融解水を吹き飛ばす。例えば、室外ファン3から室外熱交換器2の方向に融解水を吹き飛ばしたい場合において、外風が室外熱交換器2から室外ファン3の方向に吹いているときには、外風を相殺し、さらに、室外熱交換器2に所定の風圧を与えることができるようにファンモーター4の動作を制御する。反対に、外風が室外ファン3から室外熱交換器2の方向に吹いているときには、室外熱交換器2に所定の風圧を与えることができるよう、外風を補うようにファンモーター4の動作を制御する。このようにすることで、室外熱交換器2に付着した融解水を効果的に吹き飛ばすことができる。なお、外風が所定の風圧を有している場合には、外風により融解水を吹き飛ばすことができるので、ファンモーター4を動作させなくてよい。」(段落【0018】)との記載から、「外風を相殺し、さらに、室外熱交換器2に所定の風圧を与えるように送風手段を制御」することということができる。

(2)同様に、本願発明の「外風が送風手段から室外熱交換器に向かって吹いていると判定された場合」における「室外熱交換器に外風を補う所定の風圧の風が当たるように送風手段を制御する」ことは、「室外熱交換器2に所定の風圧を与えることができるよう、外風を補うように送風手段を制御する」ことということができる。

また、引用発明の「室外側熱交換器2に残存する水滴を吹きとばすように、前記送風用電動機4を制御する」ことは、水滴を吹き飛ばすため、所定の風圧を室外側熱交換器2に与えているということでき、この点において本願発明と共通する。

(3)先ず、上記(1)の外風が前記室外熱交換器から送風手段に向かって吹いていると判定された場合について検討する。
引用文献2に示された技術手段2において、外風の風速Vが逆風であるV<0の場合は、本願発明の「外風が前記室外熱交換器から送風手段に向かって吹いていると判定された場合」に相当する。
また、上記技術手段2の「外風に抵抗してファンの送風量を増加させる」ことは、上記「外風を相殺し、さらに、室外熱交換器2に所定の風圧を与えるように送風手段を制御」することに相当する。
よって、引用発明において、除霜後に室外熱交換器に所定の風圧を与えるために、上記技術手段2を適用することにより、外風が前記室外熱交換器から送風手段に向かって吹いていると判定された場合に、外風を相殺するように送風手段を制御するようにすることは、当業者が容易に想到することである。

なお、引用文献2には、V<0の場合に、上記技術手段2とは別に、ファンを制御し、定格風量-Q_(0)を得る技術手段が示されているが、これは、引用文献2の「凝縮器に吹付ける風量、放熱効果とは密接に関係するが、この送風方向には影響を受けないことによるものである。」(記載事項ケ)との記載から、ファンから送風する熱交換器が、空気調和機を冷房用に使用する場合の凝縮器という条件の下において可能であると理解できる。
そして、引用発明の除霜終了後の水滴を吹きとばす運転は、上記条件下にないことは明らかであるので、引用文献2における上記技術手段の記載が、引用発明に上記技術手段2を適用することの阻害要因とはならない。


(4)次に、上記(2)の外風が送風手段から室外熱交換器に向かって吹いていると判定された場合について検討する。
上記技術手段1において、外風の風量Vが、順方向である0<V<V1の場合は、本願発明の「外風が送風手段から室外熱交換器に向かって吹いていると判定された場合」に相当する。また、上記技術手段1の「外風量が増大するに従って、ファンモータの回転数を初期設定方向である順方向回転のままで次第に減少させ」ることは、上記「室外熱交換器2に所定の風圧を与えることができるよう、外風を補うように送風手段を制御する」ことに相当する。
よって、引用発明において、除霜後に室外熱交換器に所定の風圧を与えるために、上記技術手段1を適用することにより、外風が送風手段から室外熱交換器に向かって吹いていると判定された場合に、外風を補うように送風手段を制御するようにすることは、当業者が容易に想到することである。

なお、外風が、融解水を吹き飛ばすための所定の風圧以上である場合について、本願発明は特定していないが、引用発明に上記技術手段1を適用した場合は、融解水を吹き飛ばすことが目的であるので、ファンモータを逆回転するかどうかは、当業者が適宜判断しうることである。

したがって、相違点3に係る本願発明の特定事項は、引用発明に引用文献2に示された技術手段1及び2を適用することにより、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本願発明により得られる効果も、引用発明、引用文献2に示された技術思想、技術手段1及び2から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

5.結び
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1及び2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-09 
結審通知日 2014-05-13 
審決日 2014-05-26 
出願番号 特願2009-10675(P2009-10675)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 山崎 勝司
竹之内 秀明
発明の名称 空気調和機の制御方法及び空気調和機  
代理人 山東 元希  
代理人 高梨 範夫  
代理人 大谷 元  
代理人 小河 卓  
代理人 小銭 幸恵  
代理人 小林 久夫  
代理人 村田 健誠  
代理人 安島 清  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ