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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1289556
審判番号 不服2011-9866  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-11 
確定日 2014-07-09 
事件の表示 特願2001-523798「病的事象の検出のための組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月22日国際公開、WO01/20027、平成15年 5月 7日国内公表、特表2003-515317〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2000年(平成12年)9月5日(パリ条約による優先権主張 1999年9月16日 フランス)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月5日付けで拒絶査定がされたところ、同年5月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成23年5月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認められる。

「被験者における癌又は神経変性疾患のインビトロ検出のための方法であって、
(i)該被験者からの血球の試料からの核酸を調製する工程であって、該血球は、リンパ球、マクロファージ、単球又は樹状細胞を含み、そして該核酸は、それらに由来するRNA又はcDNAを含み、該核酸を調製する工程は、血液細胞を処置し、核酸を放出させ、RNAを分離し、RNA又はその転写産物を増幅し、そして核酸を標識することを含む、工程、及び
(ii)該核酸の全部又は一部と少なくとも一つの核酸ライブリーとをハイブリダイゼーションし、ハイブリダイゼーションプロファイルを得る工程であって、該核酸ライブラリーは、遺伝子のスプライシング形態に特異的な複数の異なる核酸分子を含み、該スプライシング形態は、癌又は神経変性疾患に特徴的であり、
該核酸ライブラリーは、
(a)癌又は神経変性疾患を有するヒト対象から単離される血球から第1の核酸調製物を得る工程であって、該血球は、リンパ球、マクロファージ、単球又は樹状細胞を含む工程、
(b)癌又は神経変性疾患を有しないヒト対象から単離される血球から参照核酸調製物を得る工程、
(c)該第1の調製物と参照調製物との間のハイブリダイゼーション工程、及び(d)(c)において形成されたハイブリッドからの、不対ドメインの回収の工程であって、該ドメインの配列が、癌又は神経変性疾患を有するヒト対象の血球において示差的にスプライシングされている遺伝子産物に特徴的である工程
を含む方法によって得られ、
該ハイブリダイゼーションプロファイルは、癌又は神経変性疾患に特徴的な試料中の血球の存在を示し、これによって被験者における癌又は神経変性疾患の存在を検出する工程、を含む方法。」

3.拒絶査定の理由
拒絶査定の理由は、以下の点で、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものである。
「本願明細書には、実際に、被験者からの血球試料をもとに、被験者における病態の存在や進行を検出した実施例及び病的状態に特徴的な核酸ライブラリーを構築した実施例が何ら記載されておらず、請求項1-21に係る発明は、本願明細書に実質的に裏付けられていない。」

4.特許法第36条第4項について
本願発明の(ii)に記載された工程は、要するに、(ア)被験者の血球試料から調製された核酸と特定の核酸ライブラリーとをハイブリダイゼーションし、癌又は神経変性疾患に特徴的な試料中の血球の存在を示すハイブリダイゼーションプロファイルを得る工程と、これによって被験者における癌又は神経変性疾患の存在を検出する工程からなっており、(イ)ここでいう特定の核酸ライブラリーとは、癌又は神経変性疾患を有するヒト対象の血球において示差的にスプライシングされている遺伝子産物に特徴的な配列を有するドメインを回収する工程を含む方法で得られ、癌又は神経変性疾患に特徴的なスプライシング形態に対して特異的な複数の異なる核酸分子を含む核酸ライブラリーである。
上記のような(ii)の工程を含む本願発明が実施できるというためには、上記(イ)の特定の核酸ライブラリーが構築できること、及び、上記(ア)の、被験者の血球試料から調製された核酸と当該特定の核酸ライブラリーとをハイブリダイゼーションし、癌又は神経変性疾患に特徴的な試料中の血球の存在を示すハイブリダイゼーションプロファイルを得て、これにより被験者における癌又は神経変性疾患の存在を検出できること、が必要である。
そこで、このような観点で、本願明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているか否かについて検討する。

本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載があると認められる。

ア. ハイブリダーゼーション反応の産物を使用して本発明の病態に特徴的なクローンを単離するために、定量的方法と定性的方法の2つのアプローチを利用できること([0044]?[0046]段落)、
イ. 示差定量的バンク(ライブラリー)を確立するための方法として、高流量配列測定の電子的サブトラクション法、遺伝子発現の連続分析、核酸アレイ、ディファレンシャルディスプレイ、サブトラクティブクローニングがあること([0048]?[0053]段落)
ウ. 本発明は、示差定性的バンク、すなわち、少なくとも配列の一部が、病態細胞と対照細胞において示差的にスプライシングされる遺伝子の配列に対応する、核酸クローンを含むことを特徴とするバンク、の使用が特に有利であること([0055]?[0056]段落)
エ. 特定遺伝子のスプライシング突然変異が棘筋萎縮の発現を導くこと、特定遺伝子における特異的スプライシング突然変異がアルツハイマー病患者の生検標本で見いだされたこと、筋萎縮性側索硬化症やてんかんのような神経変性疾患における重要なタンパク質のトランスポーターにおけるスプライシング突然変異が、その機能に影響を及ぼすことが、知られていること([0058]段落)
オ. 対応するメッセンジャーの選択的スプライシングに由来する抗腫瘍遺伝子活性の不活性化の多くの例が知られていること([0059]段落)
カ. 本発明は、例えば未公開国際特許出願PCT/FR 99/00547に記載されている「DATAS」法により製造される示差定性的核酸バンクを使用すること([0061]段落)
キ. ハイブリダイゼーションの方法([0062]?[0064]段落)
ク. ハイブリダイゼーションにより生成する核酸集団を使用して、本発明の遺伝子マーカー(定性的ゲノム変質に特徴的なクローン)が、当業者に周知の任意の方法により同定できること([0065]段落)
ケ. これらの方法が、健常状況からの血球を病的状況からのものと区別可能にする、定性的遺伝子マーカーに対応する、クローン及び核酸バンクの生成を可能にすること、実験セクションに示されるように、これらの核酸調製物は、血液試料から神経変性障害及び癌を診断するのに特に有用なマーカーであること([0067]段落)
コ. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデル(突然変異G93Aを有するヒトSOD1遺伝子を発現するトランスジェニックマウス)及び同系対照からの試料で、DATAS(選択的スプライシングされた転写配列の示差的分析)法を用いた示差的定性分析が行われること([0080]?[0081]段落)、示差的定性分析が末梢全血又は血球画分において行われること([0082]段落)、同定されるスプライシング型の発現は、神経変性疾患の患者からの血液試料において探索されること([0086]段落)
サ. 示差定性的アプローチが、正常マウス及び肝細胞癌(HCC)を発現させるマウスの血球から抽出されるRNAを用いて行われること([0092]段落)、腫瘍の発現前に、異なる非常に早期に血球中に検出される特異的cDNAを使用することにより、健常及びトランスジェニックマウスの混合集団において、どの動物が腫瘍を発現するかを予測することができること([0094])、腫瘍発現の異なる動物の血液において同定されたプローブを使用して、癌患者からの血液試料に共通なサインを検出することもできること([0096段落])

以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、核酸ライブラリーを構築することや、それを利用して癌又は神経変性疾患の存在を検出することについて、一般的な記載や可能性の示唆がされているにとどまり、実際に、癌又は神経変性疾患を有するヒト対象の血球において示差的にスプライシングされている遺伝子産物に特徴的な配列を有するドメインを回収する工程を経て、癌又は神経変性疾患に特徴的なスプライシング形態に対して特異的な複数の異なる核酸分子を含む核酸ライブラリーを構築したことについて、実施例等の具体的な記載はされていないし、このような核酸ライブラリーに、被験者の血球由来の核酸をハイブリダイゼーションして、癌又は神経変性疾患に特徴的な血球の存在を示すハイブリダイゼーションプロファイルを得て、これにより癌又は神経変性疾患の存在を実際に検出したことについても、実施例等の具体的な記載はされていない。
そして、癌及び神経変性疾患に特徴的なスプライシング形態が、癌及び神経変性疾患の疾患部位から離れた場所にある血球の核酸に存在することが、出願時の技術常識であったとも認められない。
そうである以上、当業者は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、癌又は神経変性疾患を有するヒト対象の血球において示差的にスプライシングされている遺伝子産物に特徴的な配列を有するドメインを回収する工程を経て、癌又は神経変性疾患に特徴的なスプライシング形態に対して特異的な複数の異なる核酸分子を含む核酸ライブラリーを構築すること、そして、このような核酸ライブラリーに、被験者の血球由来の核酸をハイブリダイゼーションして、癌又は神経変性疾患に特徴的な血球の存在を示すハイブリダイゼーションプロファイルを得て、これにより癌又は神経変性疾患の存在を検出することができるとはいえない。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が、本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているということはできないから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項の規定に適合していない。

5.特許法第36条第6項第1号について
本願発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものであるか否かについて検討する。
本願明細書[0001]段落の「本発明は、病的事象の検出のための新しい組成物及び方法に関する。更に詳細には、病的事象の遠隔検出のための組成物及び方法に関する。」との記載、及び[0009]段落の「疾患、特に細胞シグナル生成調節機序の欠損に関連する疾患、とりわけ癌、神経変性障害、狭窄症などのような、過剰な細胞増殖を特徴とする疾患の発現の早期で、簡便かつ信頼性ある検出を可能にする、道具及び方法に対する真のニーズが存在する。」との記載からみて、本願発明の課題は、癌、神経変性障害の発現の早期で、簡便かつ信頼性ある遠隔検出のための方法の提供であると認められる。
一方、4.で述べたとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、癌又は神経変性疾患を有するヒト対象の血球において示差的にスプライシングされている遺伝子産物に特徴的な配列を有するドメインを回収する工程を経て、癌又は神経変性疾患に特徴的なスプライシング形態に対して特異的な複数の異なる核酸分子を含む核酸ライブラリーを構築すること、そして、このような核酸ライブラリーに、被験者の血球由来の核酸をハイブリダイゼーションして、癌又は神経変性疾患に特徴的な血球の存在を示すハイブリダイゼーションプロファイルを得て、これにより癌又は神経変性疾患の存在を検出することができるとはいえないから、発明の詳細な説明は「癌、神経変性障害の発現の早期で、簡便かつ信頼性ある遠隔検出のための方法の提供」という本願発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されていない。
したがって、本願の請求項1には、発明の詳細な説明において本願発明の課題が解決できると当業者が認識できない発明が記載されていることとなり、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合していない。

6.審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において以下の(1)及び(2)の主張をしている。
(1)本発明者は、本明細書に記載の方法と全く同一の方法が、血球において、初期前兆段階で、神経変性疾患、たとえば、牛海綿状脳症(狂牛病:BSE)を含む感染性海綿状脳症(TSE)のクラスの検出を可能にすることを証明する追加の実験を行った。これらの実験は、ファビエンヌ・シュバイクホッファー博士の陳述書(参考資料1)に記載されており、さらに癌又は神経変性疾患を検出するための本発明の実施可能性も明らかにしている。
(2)本明細書の実施可能性についてのさらなる説明として、アルツハイマー病に特異的であるさらなるマーカーも明らかにされている。より具体的には、プロファイリングアッセイが、臨床的に診断されたアルツハイマー病患者からの血液に由来するRNAのプールと年齢適合対照群患者からの血液に由来するRNAのプールとの間で行われた。ライブラリーの特徴づけは、二つのシグナル経路の検討をもたらした。スプライスアレイは、これらの二つのシグナル経路に関連する遺伝子における公知の全てのスプライシングをモニターするためにデザインされている(一方の経路について130遺伝子、他方について52遺伝子)。このスプライスアレイを5人のAD患者及び5人の年齢適合患者から得られた個々のラベル標的とハイブリダイズさせた。発現データの統計学的解析(ANOVA)によって、79プローブが、対照集団と比べてAD集団において上方制御されていた。したがって、これらの結果は、さらに、本発明の教示に接した当業者であれば、細胞シグナル経路における調節解除に関連するリモート病理の血液マーカーを同定することができ、本発明の目的の検出のために用いるこができることを明らかにした。

しかしながら、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明が、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、また、本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない場合に、出願後に実験結果を提出して、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載不備を補うことはできない。仮に、審判請求人が提出した実験結果を参酌したとしても、以下のとおり、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載不備は解消しない。
(1)について
審判請求人が提出した陳述書に記載された実験において、マウスやヒツジの脾臓サンプルから、感染性海綿状脳症(TSE)に関するマーカーとして具体的にどのようなマーカーが得られたのか、そして、得られたマーカーがTSEに特徴的なスプライシング形態の核酸であるのかは不明である。さらに、血球由来の、癌に特徴的なスプライシング形態の核酸については、何ら記載されていない。したがって、提出された陳述書は、審判請求人が主張するような、癌又は神経変性疾患を検出するための本願発明の実施可能性を明らかにしたものであるということはできない。
(2)について
審判請求人の主張を裏付ける実験報告書等の証拠が提出されておらず、アルツハイマー患者の血液マーカーが具体的にどのようなものであるか、そして、それが血球由来のものであるのかは不明である。さらに、血球由来の、癌に特徴的なスプライシング形態の核酸については、何ら示されていない。したがって、(2)の主張も本願発明の実施可能性を説明したことにはならない。

7.まとめ
以上検討したところによれば、請求項1に係る発明について発明の詳細な説明が特許法第36条第4項の規定に適合しておらず、また、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合していない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-05 
結審通知日 2014-02-12 
審決日 2014-02-25 
出願番号 特願2001-523798(P2001-523798)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C12N)
P 1 8・ 537- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 みどり北村 悠美子  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 田中 晴絵

高堀 栄二
発明の名称 病的事象の検出のための組成物及び方法  
代理人 齋藤 房幸  
代理人 鈴木 音哉  
代理人 津国 肇  
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