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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1289902 |
審判番号 | 不服2013-3325 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-20 |
確定日 | 2014-07-18 |
事件の表示 | 特願2009- 42011「撮像光学系及びそれを備える撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 9日出願公開、特開2010-197665〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年2月25日の出願であって、平成24年8月2日付けで拒絶理由が通知され、同年9月11日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、さらに、同年9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月23日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、その後、同年11月15日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、本件は、平成25年2月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成25年5月8日付けで、審判請求人に前置報告の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年7月11日付けで回答書が提出された。 さらに、当審において、平成25年12月17日に電話及びファクシミリにて特許請求の範囲及び明細書の記載についての問い合わせを行ったところ、平成26年1月6日にファクシミリにて回答が提出され、同年1月14日に電話にて前記ファクシミリによる回答についての問い合わせを行ったところ、同年1月15日にファクシミリにて回答が提出され、これらのファクシミリによる回答をも考慮して、当審において、同年2月10日付けで拒絶理由が通知され、同年4月14日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出された。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年4月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「物体側から順に、 開口絞りと、 正の屈折力を有する第1レンズと、 負の屈折力を有する第2レンズと、 正の屈折力を有する第3レンズと、 正の屈折力を有する第4レンズと、 負の屈折力を有する第5レンズと、 の5枚のレンズよりなり、 前記第1レンズが両凸レンズであり、 前記第3レンズの物体側面は物体側に凸であり、 前記第5レンズの両面が非球面であり、像側面が中心で像側に凹、中心から離れるに従い像側に凸形状であり、 前記第5レンズが最も径大に構成されており、 隣り合うレンズの間隔は全て固定であり、 固定焦点であることを特徴とする撮像光学系。」 2.引用刊行物 (1)当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平7-104180号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付した。) (a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、レンズ構成枚数が5枚で、画角が75度クラスであり、コンパクトカメラなどに好適な広角レンズに関するものである。 【0002】 【従来の技術】現在、コンパクトカメラは全長が短く、広画角なレンズが必要とされている。ところで、レンズが5枚構成で、パワー配列が正、負、正、正、負であるレンズ系としては、従来例えば特開昭61-90117号、特開昭64-33513号公報に記載されたものが知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特開昭61-90117号、特開昭64-33513号公報に記載されたレンズは、いずれも画角が65度前後と不充分であり、またプラスチックレンズを使用しているため、温度変化によりピントのずれや、レンズ性能の変化が起きてしまうといった問題がある。本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、レンズが5枚と少なく小型で、温度変化によるレンズ性能の変化も少なく、またF2.8で画角75度程度と、大口径、広画角で、良好に収差が補正された広角レンズを提供することを目的としている。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明における請求項1記載の広角レンズでは、物体側から順に、正のパワーを持ち物体側に凸面を向けたメニスカス状の第1レンズ、負のパワーを持ち両凹の第2レンズ、正のパワーを持つ第3レンズ、正のパワーを持つ第4レンズ、負のパワーを持ち像側に凸面を向けたメニスカス状の第5のレンズとから構成され、レンズ全体の焦点距離をf、第iレンズの焦点距離とアッベ数をそれぞれf_(i)、ν_(i)としたとき、 (1) 0.7 < f_(1)/f < 1.5 (2) 0.5 < f_(3)/f < 1.0 (3) 1.0 < f_(4)/f < 4.0 (4) 23 < {(ν_(1)+ν_(3)+ν_(4))/3}-ν_(2)の各条件式を満足することを前記課題の解決手段とした。 【0005】請求項2記載の広角レンズでは、前記第2レンズの物体側の面と像側の面との近軸曲率半径をそれぞれr_(3)、r_(4)とし、第3レンズの物体側の面と像側の面との近軸曲率半径をそれぞれr_(5)、r_(6)としたとき、 (5) -5 < r_(3)/r_(4) < 0 (6) -20 < r_(5)/r_(6) < -0.2 の各条件式を満足することを前記課題の解決手段とした。請求項3記載の広角レンズでは、前記第5レンズの物体側の面の近軸曲率半径をr_(9)とし、レンズ全体の焦点距離をfとしたとき、 (7) -0.6 < r_(9)/f < -0.2 の条件式を満足するとともに、第5レンズの少なくとも1方の面が非球面であることを前記課題の解決手段とした。 【0006】 【作用】本発明における請求項1記載の広角レンズによれば、条件式(1)?(4)を満足することにより以下の作用を奏する。条件式(1)?(3)は、正レンズのパワー配分に関する条件式であり、正の第1、第3、第4レンズに該条件式(1)?(3)で示す適切なパワー配分をすることにより、大口径で良好な収差を持つレンズが得られる。条件式(1)?(3)の上限以上になると、正レンズ全体のパワーが小さくなる。したがって負レンズのパワーも小さくなるが、ペッツバール和が増大し広画角で平坦な像面が得られなくなる。また、下限以下になると、強い正負のパワーで構成されるので、像面湾曲は良好になるが、球面収差、コマ収差などが増大して大口径化ができなくなる。条件式(4)は色収差補正に関する条件式であり、正の第1、第3、第4レンズの各々の硝材のアッベ数の平均値と、強い負のパワーを持つ第2レンズ硝材のアッベ数との差を条件式(4)のように設定することにより、色収差を良好に補正することができる。条件式(4)の下限以下になると、色補正のため正負レンズともパワーを強くすることが必要になり、そのため高次の収差が発生して良好なレンズ性能が得られなくなる。 【0007】請求項2記載の広角レンズによれば、式(5)、(6)を満足することにより以下の作用を奏する。条件式(5)は、負の第2レンズの両面の収差係数を適切に分配するための条件式である。条件式(5)の上限以上、あるいは下限以下になると、第2レンズの両面の収差係数のバランスが悪化して良好な収差補正ができなくなる。条件式(6)は、正の第3レンズの両面の収差係数を適切に分配するための条件式である。条件式(6)の上限以上、あるいは下限以下になると、第3レンズの両面の収差係数のバランスが悪化して良好な収差補正ができなくなる。 【0008】請求項3記載の広角レンズによれば、条件式(7)を満足するとともに、第5レンズの少なくとも1方の面が非球面であることによって以下に述べる作用を奏する。条件式(7)は、負の第5レンズの物体側の面の条件式である。条件式(7)の下限以下になると球面収差の補正が過剰になり、また上限以上になると球面収差の補正不足になって良好な収差補正ができなくなる。また、負の第5レンズの少なくとも一方の面に非球面を使用することにより、歪曲収差及び像面湾曲の効果的な補正をすることができる。例えば、後述する実施例1、2では、それぞれ第5レンズの物体側の面または像側の面を非球面化したことにより、歪曲収差と像面湾曲とを補正している。また、実施例3では、第5レンズとしてその両面が非球面であるものを用いることにより、より小さく歪曲収差、像面湾曲を補正している。さらに、この例では第5レンズとしてプラスチックレンズを用いていないため、温度変化によるピントずれ、およびレンズ性能の変化が小さくなっている。 【0009】 【実施例】以下、本発明を実施例により詳しく説明する。これらの実施例において、rは近軸曲率半径であり、dはレンズの厚さまたはレンズ間隔(番号iが奇数のものはレンズの厚さを表し、番号iが偶数のものはレンズ間隔を表している。)、nは硝材の屈折率、νは硝材のアッベ数である。また、番号の右に付した*は。その番号が表すレンズ面が非球面であることを示している。また、この非球面の形状は、光軸をz軸、光の進行方向を正として、光軸からの高さをh、円錐係数をK、非球面係数をA、B、C、Dとしたとき、次の展開式 【数1】 によって表される。」 (b)「【0012】(実施例3)図5に示すレンズ構成とした。各数値は次のとおりである。 i r d n ν 1 10.392 1.80 1.80300 46.7 2 21.486 1.27 3 -51.156 1.30 1.69895 30.1 4 14.156 1.50 5 15.141 2.50 1.64000 60.3 6 -58.272 1.81 7 35.665 3.00 1.55963 61.1 8 -202.218 5.05 9* -10.732 2.00 1.51633 64.2 10* -25.747 非球面係数 i(9) K=-5.99677 E-01、A=-1.05933 E-03、B=3.42742 E-06、C=-2.82672 E-08、D=0 i(10) K=3.09145、A=-5.56318 E-04、B=4.35134 E-06、C=0、D=0 F:2.8、f=28.0、B.F=10.881、f_(1)/f=0.835、f_(3)/f=0.680、f_(4)/f=1.944 (ν_(1)+ν_(3)+ν_(4))/3=25.897 r_(3)/r_(4)=-3.614、r_(5)/r_(6)=-0.260、r_(9)/f=-0.383 このような構成の実施例における、球面収差、非点収差、歪曲収差を調べた。得られた結果を図6に示す。」 (c)「【図5】 」 (d)「【図6】 」 (e)上記記載事項(b)の実施例3のレンズデータから、第3レンズの物体側面は物体側に凸であること、実施例3の広角レンズが単焦点レンズであること(ズームレンズではないこと)は、当業者の技術常識から明らかである。 (f)上記記載事項(c)の図5の記載から、第5レンズが最も径大に構成されていること、第5レンズの像側面が全体的に像側に凸形状であることが読み取れる。 すると、上記引用文献1の記載事項及び技術常識から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「物体側から順に、正のパワーを持ち物体側に凸面を向けたメニスカス状の第1レンズ、負のパワーを持ち両凹の第2レンズ、正のパワーを持つ第3レンズ、正のパワーを持つ第4レンズ、負のパワーを持ち像側に凸面を向けたメニスカス状の第5のレンズとから構成され、 第3レンズの物体側面は物体側に凸であり、 第5レンズの両面が非球面であり、像側面が全体的に像側に凸形状であり、 第5レンズが最も径大に構成されており、 単焦点レンズである広角レンズ。」 3.対比 (1)本願発明と引用発明との対比 (a)引用発明の「物体側から順に、正のパワーを持」つ「第1レンズ、負のパワーを持」つ「第2レンズ、正のパワーを持つ第3レンズ、正のパワーを持つ第4レンズ、負のパワーを持」つ「第5のレンズとから構成され」た「広角レンズ」は、本願発明の「物体側から順に、」「正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、正の屈折力を有する第4レンズと、負の屈折力を有する第5レンズと、の5枚のレンズよりな」る「撮像光学系」に相当する。 (b)引用発明の「第3レンズの物体側面は物体側に凸であ」る構成、「第5レンズの両面が非球面であ」る構成、「第5レンズ最も径大に構成されて」いる構成は、それぞれ、本願発明の「前記第3レンズの物体側面は物体側に凸であ」る構成、「前記第5レンズの両面が非球面であ」る構成、「前記第5レンズが最も径大に構成されて」いる構成に相当する。 (c)本願発明の「固定焦点である」が示す構成について、平成26年1月6日、同年1月15日の請求人のファクシミリによる回答を参照すると、「固定焦点である」は、ズームレンズではない、いわゆる単焦点光学系であることを意味するものと認められるから、引用発明の「単焦点レンズである」構成は、本願発明の「固定焦点である」構成に相当する。 (2)一致点 してみると、両者は、 「物体側から順に、 正の屈折力を有する第1レンズと、 負の屈折力を有する第2レンズと、 正の屈折力を有する第3レンズと、 正の屈折力を有する第4レンズと、 負の屈折力を有する第5レンズと、 の5枚のレンズよりなり、 前記第3レンズの物体側面は物体側に凸であり、 前記第5レンズの両面が非球面であり、 前記第5レンズが最も径大に構成されており、 固定焦点である撮像光学系。」で一致し、次の各点で相違する。 (3)相違点 (イ)開口絞りについて、本願発明では、「物体側から順に、開口絞りと、正の屈折力を有する第1レンズと、・・・」、すなわち、開口絞りが第1レンズの物体側にあるのに対して、引用発明では、開口絞りに関する構成が明らかでない点で相違する。 (ロ)第1レンズについて、本願発明では、「両凸レンズであ」るのに対して、引用発明では、「物体側に凸面を向けたメニスカス状」である点で相違する。 (ハ)第5レンズについて、本願発明では、「像側面が中心で像側に凹、中心から離れるに従い像側に凸形状であ」るのに対して、引用発明では、「像側面が全体的に像側に凸形状であ」る点で相違する。 (ニ)本願発明の「隣り合うレンズの間隔は全て固定であり」が示す構成について、平成26年1月6日、同年1月15日の請求人のファクシミリによる回答を参照すると、単焦点光学系において、特に、「隣り合うレンズの間隔は全て固定であ」ることを明確化したものであって、合焦のために5つのレンズのうちの一部のレンズのみが移動して、隣り合うレンズの間隔が変化するような構成が含まれない(合焦のために5つのレンズが全体として移動する構成は含む)ことを意味するものと認められる。 これに対して、引用発明は、単焦点レンズであるから、変倍のために隣り合うレンズの間隔が変化する構成ではないが、フォーカシング機構を有するか否かが不明であり、また、フォーカシング機構を有するとしても、フォーカシング機構の具体的構成が不明であるから、フォーカシング機構のために隣り合うレンズの間隔が変化するか否かが不明であって、結局、隣り合うレンズの間隔に関する構成は明らかでない。 すると、隣り合うレンズの間隔について、本願発明では、「隣り合うレンズの間隔は全て固定であ」るのに対して、引用発明では、隣り合うレンズの間隔に関する構成が明らかでない点で相違する。 4.判断 (1)相違点(イ)について 固体撮像素子を用いたカメラに使用する撮像レンズにおいて、固体撮像素子のケラレ防止等のためにテレセントリック性をよくすること、そして、テレセントリック性をよくするために開口絞りを最も物体側に配置することが、特開平10-123418号公報(特に、段落【0002】?【0005】、【0016】参照)、特開平11-84234号公報(特に、段落【0008】参照)、特開平5-40220号公報(特に、段落【0003】、【0011】参照)、特開2004-212908号公報(特に、段落【0004】?【0005】参照)、特開2001-75006号公報(特に、段落【0002】?【0011】参照)に示されるように周知である。 そして、引用発明を固体撮像素子を用いたカメラに使用することも当然に想定されるものであるから、引用発明において、テレセントリック性をよくするために開口絞りを最も物体側に配置することは、当業者が容易に想到し得ることである。 なお、請求人は、平成26年4月14日付けの意見書において、引用文献1の実施例3のレンズデータを解析して、開口絞りが第2レンズと第3レンズの間に配置されていると主張しているところ、仮に、引用文献1の実施例3の広角レンズにおいて、開口絞りが第2レンズと第3レンズの間に配置されているとの主張が正しいとしても、引用文献1には開口絞りの配置についての記載はなく、開口絞りが第2レンズと第3レンズの間に配置されていることに格別な技術的意味はないから、引用発明において、テレセントリック性をよくするために開口絞りを最も物体側に配置することを阻害する要因にはならない。 (2)相違点(ロ)について 撮像レンズにおいて、正のパワーを持つレンズは、物体側に凸のメニスカスレンズ、物体側に凸の平凸レンズ、両凸レンズ、像側に凸の平凸レンズ、像側に凸のメニスカスレンズのいずれかであることは自明であって、これらのうちのいずれにするかは、撮像レンズの設計において、収差等を考慮して適宜選択されるものである。(「ベンディング」と呼ばれる周知の設計手法である。) そして、引用文献1の全記載を参照しても、引用発明において、「第1レンズ」が物体側に凸面を向けたメニスカス形状であることに格別な技術的意味は認められず、他の形状とすることを阻害する要因もないから、上述のとおり、開口絞りの配置等に応じて、「第1レンズ」の形状を両凸レンズとすることは、当業者が適宜設計変更し得る程度の事項である。 なお、請求人は、平成26年4月14日付けの意見書において、「引用文献1・・・の発明は、「第2レンズと第3レンズの間に開口絞りを配置する」ことと、「第1レンズの形状を、像側に凹面を向けたメニスカス形状」にすること、とが密接に関連した発明で、これによって軸外収差、特に非点収差の発生を抑制するものです。」と主張するが、そのような技術事項が引用文献1には記載も示唆もされていないことは明らかであって、該主張は失当である。 (3)相違点(ハ)について 撮像レンズの設計において、非球面形状の設計は適宜行えるものであり、また、光軸付近とその周辺との凹凸が逆転する形状も当業者には知られているものであるから、引用発明において、第5レンズの像側面の非球面形状を、光軸付近で像側に凹、その周辺で像側に凸形状となるように設計することは、当業者が適宜なし得ることである。 (4)相違点(ニ)について 上記「3.」「(3)」「(ニ)」で記載したとおり、引用発明は、フォーカシング機構のために隣り合うレンズの間隔が変化するか否かが不明であるが、撮像レンズにおいて、フォーカシング機構を有さない固定焦点(一般的な意味での固定焦点である。)、フォーカシング機構として、撮像レンズ全体を一体的に移動させてフォーカシングを行う構成は、いずれも、普通に知られているものであるから、引用発明において、これら2つのうちのいずれかを採用して、隣り合うレンズの間隔が全て固定である構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 (5)効果について 本願発明が奏し得る効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 なお、請求人は、平成26年4月14日付けの意見書において、 「このように、本願請求項1に係る発明は、特徴(A)と特徴(B)とが密接に関連した発明、すなわち、「最も物体側に開口絞りを配置する」ことと、「第1レンズの形状を両凸形状」にすること、とが密接に関連した発明で、これによって軸外収差、特に非点収差の発生を抑制するものです。」、 「また、特徴(B)を備えること、すなわち、第1レンズを両凸正レンズとすることで、正屈折力を両側のレンズ面に分担できるので、本願請求項1に係る発明は、特に球面収差の発生を抑えながら、第1レンズの正屈折力の十分な確保も行いやすくなるという格別の効果を奏します」、 「また、特徴(B)による効果、すなわち、第1レンズの正屈折力を十分に確保できることは、本願請求項1に係る発明の特徴(C)とも密接に関連します。特徴(C)では、第5レンズの像側面は中心で像側に凹であるため、第5レンズの負屈折力を大きくすることができます。この場合、第1レンズの正屈折力と第5レンズの負屈折力とを大きくできるので、レンズ系全体としてテレフォト効果を強めることができます。その結果、レンズ全長を短縮することができます。このように、特徴(B)を備えることは、球面収差の発生の抑制だけでなく、レンズ全長の短縮化にも有利となります。」、 「また、特徴(C)では、第5レンズの像側面は中心で像側に凹、中心から離れるに従い像側に凸形状であることから、次のような格別の効果を奏します。 最も物体側に開口絞りを配置した場合、第5レンズが開口絞りから遠くなります。この場合、第5レンズでの軸外主光線の入射高が大きくなるので、歪曲収差を含む軸外収差への影響が大きくなります。一方で、他のレンズと比較して、第5レンズでは軸上光線の通過位置と最も外側の軸外光線の通過位置とが離れます。 そこで、第5レンズの像側面を中心で像側に凹、中心から離れるに従い像側に凸形状にすることで、レンズ系全体のテレフォト効果を得ながら第5レンズと像面を近づけることができ、全長短縮に有利となります。さらに、中心領域と中心から離れた周辺領域とで異なる光学作用を持たせるとともに、軸外での正屈折力を持たせることができるので、最も物体側に開口絞りを配置したときに発生しやすい軸外収差、特に歪曲収差と像面湾曲を良好に補正することができます。」、 「以上のように、本願請求項1に係る発明は、引用文献1や引用文献2に開示も示唆もされていない特徴(A)、(B)及び(C)を備え、特徴(A)、(B)及び(C)が密接に関連することで、引用文献1や引用文献2から予測できない格別の効果を奏するものです。」 と、本願発明の効果を主張するが、これらの効果は、本願の明細書及び図面には記載されておらず、かつ、本願の明細書及び図面の記載から自明のものであるとも認められない。 また、本願の明細書及び図面には、これらの効果を奏するという技術的意味を持った構成としての「特徴(A)、(B)及び(C)」を備える本願発明という技術事項が記載されているとも認められないから、請求人の該主張は採用し得るものではない。 (6)結論 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-20 |
結審通知日 | 2014-05-21 |
審決日 | 2014-06-03 |
出願番号 | 特願2009-42011(P2009-42011) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小倉 宏之 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
北川 清伸 神 悦彦 |
発明の名称 | 撮像光学系及びそれを備える撮像装置 |
代理人 | 斎藤 圭介 |