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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C01B |
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管理番号 | 1289975 |
審判番号 | 不服2013-3993 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-01 |
確定日 | 2014-07-17 |
事件の表示 | 特願2007-531959「海水からの水素製造システム及び水素製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 1日国際公開、WO2007/023514〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年8月22日を国際出願日とする出願であって、平成23年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成24年2月9日付けで意見書が提出され、同年11月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年3月1日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、同年9月17日付けで、前置報告書を利用した審尋がされ、同年11月21日付けで回答書が提出され、平成26年1月21日付けで、当審により拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月17日付けで、意見書が提出されるとともに、手続補正がされたものである。 第2 特許請求の範囲の記載 本願の特許請求の範囲の記載は、平成25年3月1日付け手続補正書に記載の次のとおりのものである。以下、当該特許請求の範囲に属する発明を請求項の番号に従って「本願発明1」ないし「本願発明5」、これらを併せて「本願発明」といい、本願発明に係る明細書を、「本願明細書」という。 「【請求項1】 海水を導入させる密閉空間と密閉空間内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出手段とを有して密閉空間内の海水を高温高圧下で活性化処理する活性化装置と、 活性化装置で活性化された高温高圧の海水を受入れて通流させる管路装置であり、断面が3角形、5角形、6角形又は8角形のいずれかの形状の海水通流管を1個または複数含む管路装置と、を有することを特徴とする海水からの水素製造システム。 【請求項2】 前記複数の海水通流管は、長手軸が互いに平行でそれらの管端が揃うように支持手段を介して並列に配置支持された並列管ユニットを構成する請求項1記載の海水からの水素製造システム。 【請求項3】 海水通流管の断面形状、大きさ、管数、位置のいずれか又は複数の要素が異なる複数の並列管ユニットを縦続接続し、その際、縦列状に配置された海水通流管どうしがそれらの管内を管外から密閉した状態で長手方向に連通するように接続した請求項2記載の海水からの水素製造システム。 【請求項4】 海水通流管どうしは、それぞれの管中心軸がずれた状態で長手方向に連通接続された請求項3記載の海水からの水素製造システム。 【請求項5】 密閉空間内に導入した海水に高温高圧の蒸気を噴出させることにより、密閉空間内を高温高圧に維持した状態で海水を活性化処理し、 断面が3角形,5角形,6角形又は8角形状のいずれかの形状となる複数の海水通流管を長手軸が平行になるように並列させて構成された管路装置の該海水通流管内に活性化処理した海水を圧送機構を介して圧送することにより水素を製造することを特徴とする海水からの水素製造方法。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要の一つは、本願発明における「活性化処理」について、本願明細書の発明の詳細な説明からは、具現すべき装置及び工程が不明であり、しかも技術常識に基いても当業者が理解できないため、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。 第4 当審の判断 1.本願明細書の記載 本願明細書には、次の記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、海水を原料として、効率よく水素製造を期待できる海水からの水素製造システム及び水素製造方法に関する。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するために本発明は、海水Wを導入させる密閉空間Sと密閉空間S内に高温高圧の蒸気Tを噴出する蒸気噴出手段(18)とを有して密閉空間S内の海水Wを高温高圧下で活性化処理する活性化装置12と、活性化装置12で活性化された高温高圧の海水を受入れて通流させる管路装置であり、断面が3角形、5角形、6角形又は8角形のいずれかの形状の海水通流管40(403、405、406、408)を1個または複数含む管路装置14と、を有することを特徴とする海水からの水素製造システム10から構成される。海水通流管40の断面形状は、好適には全ての辺の長さが同じ長さで設定された正3角形、正5角形、正6角形、正8角形のもので設けられるとよい。なお、管の断面形状の辺の長さが異なる形状のものでも良い。」 ウ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 以下添付図面を参照しつつ本発明の海水からの水素製造システム及び水素製造方法の実施の形態について説明する。 しかし以下の説明において、水素生成のメカニズムに関する部分は、実態的な解明がなされておらず、本発明者等による推測によるものである。 本発明の海水からの水素製造システムは、海水を原料として直接的に水素を製造するシステムである。図1ないし図7は、本発明の海水からの水素製造システムの実施形態を示している。図1に示すように、本実施形態において、海水からの水素製造システム10は、海水Wを高温高圧で活性化処理する活性化装置12と、活性化された高温高圧の海水を受け入れて通流させる管路装置14と、を含む。」 エ 「【0019】 本実施形態において、活性化装置12は、海水Wに高温高圧の蒸気を噴出してエネルギーを与えることにより反応性の高い活性化状態とする第1の処理手段である。図1において、本実施形態では、活性化装置12は、内部に密閉空間Sを有する密閉タンク16と、密閉空間S内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出装置18と、を有している。密閉タンク16は、例えば、両端を閉鎖した中空の横倒し円筒体からなり、耐熱、耐圧、耐蝕性のあるステンレス等の金属から設けられる。密閉タンクの中空内部は密閉されており、密閉空間Sとして、原水となる海水Wが導入される。密閉タンク16は、地面からある程度の高さに配置されて支持脚19に支持されている。密閉タンク16の上部には海水を密閉空間内Sに投入するための導入口20が設けられている。一方、密閉タンク16の下部には活性化させた海水Wを排水する排水口22が設けられている。これらの導入口20、排水口22はそれぞれ開閉弁24,25を有して開閉自在になっており、それらの閉鎖時には密閉空間Sが密閉保持される。なお、図1中、23は、密閉空間S内が所定圧力以上になるのを防止する安全弁である。」 オ 「【0020】 蒸気噴出装置18は、密閉空間S内に高温高圧の蒸気Tを噴出して該密閉空間の海水を高温高圧に蒸気処理する蒸気噴出手段である。本実施形態では、蒸気噴出装置18は、密閉空間S内に噴出口26を設けて密閉タンク16に接続された蒸気噴出管28と、高温高圧の蒸気を蒸気噴出管28に供給する蒸気発生装置としてのボイラ30と、を含む。蒸気噴出管28は、密閉タンク16の下面側に取り付けられており、その噴出口26を密閉空間S内に上方向に向けて取り付けられている。噴出口26から噴出する蒸気は、その蒸気噴出力により該密閉空間S内の海水Wを下から吹き上げ状に撹拌するようになっている。 すなわち、蒸気噴出管28からの蒸気は、その噴出力で海水を撹拌する撹拌手段を兼ねており、海水の活性化処理を促進させる。蒸気噴出管28から噴出される蒸気は、本実施形態では、例えば、温度180?300℃、圧力15?30atmに設定される。なお、蒸気噴出管28の噴出口近傍にはタンクからの海水の逆流を防止する逆止弁32が設けられている。なお、密閉タンクの密閉空間内の温度圧力を一定に保持するように、センサや弁の開閉等を制御する制御部を備えていてもよい。」 カ 「【0021】 活性化装置12で海水を高温高圧の蒸気で処理することにより、例えば、局所的に超高温高圧(数千度、数千気圧)となり、或はそれにより発生されるニュートリノ絡みで海水が活性化されると推測される。活性化装置12では、淡水の場合では、原子転換が起こり、例えば、カルシウムや鉄等のミネラル成分が増加することが確認されている。例えば、活性化装置12では水含有成分は、次式(a)?(e)のような原子転換が起こると考えられる。 【化2】 よって、海水の場合でも同様な原子転換が起こり、特定のミネラル成分が増加すると推測される。さらに、活性化処理された高温高圧の海水は、蒸気から熱エネルギーを得て内部エネルギーが高い状態となり、上式のような原子転換とともに、ラジカル反応等の化学反応が起こり、ラジカル類(H・、OH・等)や電子等が生じやすく、反応性が高い状態となっていると考えられる。」 キ 「【0022】図1に示すように、本実施形態では、処理装置12で活性化された高温高圧の海水は、圧送機構34を介して後述する管路装置14に圧送される。圧送機構34は、本実施形態では、密閉タンク16の排水口と管路装置14の一端側とを接続する接続管36と、接続管の中間位置に介設された圧力ポンプ38と、を含む。本実施形態では、圧力ポンプ38は、例えば、40?50atm程度の高い圧力で海水を管路装置14へ圧送する。」 ク 「【0023】 管路装置14は、図2、図3、図4に示すように断面形状Pが3角形、5角形、6角形、8角形のいずれかの形状となる海水通流管40を複数有している。本実施形態では、図1にも示すように、管路装置14は、全体として水平状に長手軸を配置させた筒体で構成されており、その筒体内部に複数の海水通流管40を有して設けられている。管路装置14の一端側から他端側に向けて上記活性化装置12で活性化した高温高圧の海水を高い圧力で通流させるようになっている。これにより、例えば、活性化された海水が該管路装置14の海水通流管40内を通流する際に海水中の水分子(H_(2)O)が局所的に発生する高エネルギーを受けて、水素(H_(2))が分離生成すると考えられる。すなわち、管路装置14は、本実施形態に係る水素製造システムにおける主な水素発生部部分を構成していると考えられる。上記のような断面形状Pが3,5,6,8角形といった特定の管内に海水を通流させることで多くの水素が発生することが確認されていることから、それらの断面形状の管内で海水からの水素の分離生成のための高エネルギーの場を発生させやすいと考えられる。」 ケ 「【0029】 次に、本実施形態に係る海水からの水素製造システムの作用を水素製造方法とともに説明する。活性化装置12の密閉タンク16内に、排水口22を閉じた状態で導入口20から原料となる海水を導入する。導入口の開閉弁を閉鎖して、例えば、230℃、25atmの蒸気を蒸気噴出装置18を介して密閉空間S内に噴出させつつ、密閉空間S内を高温高圧に維持しながら、海水を活性化処理する。この際、蒸気は海水を撹拌するように噴出される。そして、例えば、1時間程度処理した後に、排水口22を開くとともに、活性化処理した高温高圧の海水を圧送機構34を介して管路装置14の海水通流管403?408内に高圧状態で通流させる。この際、活性化された海水が該管路装置14の海水通流管40内を通流する際に海水中の水分子が局所的に発生する高エネルギー(例えば、超高温高圧の反応)を受けて、水素が分離生成すると考えられる。この海水通流管内における水素生成のメカニズムについては、実態的な解明はなされていないが、例えば、管内におけるキャビテーションのような微小気泡の発生と崩壊による超高温高圧の発生現象や、水分子から水素が直接的に熱分離する反応、水及びその他のラジカル反応等の化学反応、活性化された海水中に含まれるナトリウム、カルシウム、鉄等のミネラル成分、塩素、その他の含有成分との酸化還元反応、或いは、後述の高尾が提唱するニュートリノ反応等の現象が単独又はそれらのいくつかの現象・反応が複雑に組み合わさって、水から水素が生成するものと考えられる。その一例として、例えば、水分子のラジカル反応について考慮すると、例えば、次式のような反応によって水素が発生すると考えられる。 【化3】 なお、その他の詳細なラジカル反応については省略する。ニュートリノ励起原子ラジカル及びニュートリノ形態波動共鳴については、次式のように海水通流管内でニュートリノ(ν)、反ニュートリノ(ν*)が発生し、その発生したニュートリノ(ν、ν*)が水分子と反応して水素が発生すると考えられる。 【化4】 なお、式中、e-は電子、e+は陽電子である。したがって、上記の式(5)(6)(7)(10)により水素(H2)が発生すると考えられる。一般的には、ニュートリノは、例えば、核融合、核分裂、その他の原子核反応、素粒子反応時等に創生されることが多く、電荷をもたない微粒子で弱い相互作用しかなく他の物質とはほとんど反応しないことが知られている。その一方で、ニュートリノ(ν)は、下式(11)(12)のように、原子核(中性子)と反応して核変換等起こすことも知られている。 【化5】 なお、式中、nは中性子、pは陽子、e-は電子である。ニュートリノが上式(3)?(10)のような反応を起こし水からの水素発生に関係していると推測される。」 コ 図1「 」 2.本願明細書の特許法第36条第4項第1号の適合性について a.前記ア(【0001】)の記載から、本願発明は、海水を原料とする水素製造システム及び水素製造方法に関するものである。 b.前記イ(【0006】)の記載から、本願発明は、「海水Wを導入させる密閉空間Sと密閉空間S内に高温高圧の蒸気Tを噴出する蒸気噴出手段(18)とを有して密閉空間S内の海水Wを高温高圧下で活性化処理する活性化装置12と、活性化装置12で活性化された高温高圧の海水を受入れて通流させる管路装置であり、断面が3角形、5角形、6角形又は8角形のいずれかの形状の海水通流管40(403、405、406、408)を1個または複数含む管路装置14と、を有する」水素製造システム10から構成される。 c.前記エ(【0019】)の記載から、図1に示された本願発明の実施形態においては、「活性化装置12は、内部に密閉空間Sを有する密閉タンク16と、密閉空間S内に高温高圧の蒸気を噴出する蒸気噴出装置18と、を有して」おり、「密閉タンク16は、例えば、両端を閉鎖した中空の横倒し円筒体からなり、耐熱、耐圧、耐蝕性のあるステンレス等の金属から設けられ」、「密閉タンクの中空内部は密閉されており、密閉空間Sとして、原水となる海水Wが導入され」、「密閉タンク16の上部には海水を密閉空間内Sに投入するための導入口20が設けられてい」て、「密閉タンク16の下部には活性化させた海水Wを排水する排水口22が設けられてい」て、「これらの導入口20、排水口22はそれぞれ開閉弁24,25を有して開閉自在になっており、それらの閉鎖時には密閉空間Sが密閉保持され、「密閉空間S内が所定圧力以上になるのを防止する安全弁」23が備えられている。 d.前記オ(【0020】)の記載から、「蒸気噴出装置1は、密閉空間S内に噴出口26を設けて密閉タンク16に接続された蒸気噴出管28と、高温高圧の蒸気を蒸気噴出管28に供給する蒸気発生装置としてのボイラ30と、を含む」ものであり、「蒸気噴出管28は、密閉タンク16の下面側に取り付けられており、その噴出口26を密閉空間S内に上方向に向けて取り付けられてい」て、「噴出口26から噴出する蒸気は、その蒸気噴出力により該密閉空間S内の海水Wを下から吹き上げ状に撹拌するようになって」おり、蒸気は、「例えば、温度180?300℃、圧力15?30atmに設定され」ているものである。 e.前記カ(【0021】)の記載から、「活性化装置12で海水を高温高圧の蒸気で処理することにより、例えば、局所的に超高温高圧(数千度、数千気圧)となり、或はそれにより発生されるニュートリノ絡みで海水が活性化されると推測され」るもので、「活性化装置12では、淡水の場合では、原子転換が起こり、例えば、カルシウムや鉄等のミネラル成分が増加することが確認されてい」て、「例えば、活性化装置12では水含有成分は、次式(a)?(e)のような原子転換が起こると考えられ」、 「【化2】 」 また、「海水の場合でも同様な原子転換が起こり、特定のミネラル成分が増加すると推測され」、「活性化処理された高温高圧の海水は、蒸気から熱エネルギーを得て内部エネルギーが高い状態となり、上式のような原子転換とともに、ラジカル反応等の化学反応が起こり、ラジカル類(H・、OH・等)や電子等が生じやすく、反応性が高い状態となっていると考えられる」というものである。 f.前記キ(【0022】)の記載から、「処理装置12で活性化された高温高圧の海水」は、「圧力ポンプ38」によって、「例えば、40?50atm程度の高い圧力で海水を管路装置14へ圧送」される。 g.前記ク(【0023】)の記載から、「管路装置14は、図2、図3、図4に示すように断面形状Pが3角形、5角形、6角形、8角形のいずれかの形状となる海水通流管40を複数有してい」て、「活性化装置12で活性化した高温高圧の海水を高い圧力で通流させるようになってい」て、「例えば、活性化された海水が該管路装置14の海水通流管40内を通流する際に海水中の水分子(H_(2)O)が局所的に発生する高エネルギーを受けて、水素(H_(2))が分離生成すると考えられる」ものであり、「それらの断面形状の管内で海水からの水素の分離生成のための高エネルギーの場を発生させやすいと考えられる」というものである。 h.前記ケ(【0029】)の記載から、「活性化装置12の密閉タンク16内に、排水口22を閉じた状態で導入口20から原料となる海水を導入」し、「導入口の開閉弁を閉鎖して、例えば、230℃、25atmの蒸気を蒸気噴出装置18を介して密閉空間S内に噴出させつつ、密閉空間S内を高温高圧に維持しながら、海水を活性化処理」した後に、「排水口22を開くとともに、活性化処理した高温高圧の海水を圧送機構34を介して管路装置14の海水通流管403?408内に高圧状態で通流させ」、「活性化された海水が該管路装置14の海水通流管40内を通流する際に海水中の水分子が局所的に発生する高エネルギー(例えば、超高温高圧の反応)を受けて、水素が分離生成すると考えられる」というものである。 そうすると、本願発明の水素生成のメカニズムは明らかでないとしても、上記g、hから、本願発明1の「水素製造システム」では、海水に対する「活性化処理」によって活性化された海水を、断面が3角形、5角形、6角形又は8角形のいずれかの形状の海水通流管内を通流させることで、水素が分離生成するものであるということができる。 そして、本願明細書においては、上記eから、「活性化処理」とは、活性化装置で海水を高温高圧の蒸気で処理することにより、海水が局所的に超高温高圧(数千度、数千気圧)となるような処理であって、それによって発生されるニュートリノによって、海水に原子転換が起こり、カルシウムや鉄等のミネラル成分が増加するような処理であるとしている。 また、本願明細書には、上記c、dから、活性化処理を行う活性化装置の実施形態について、密閉空間S内の海水Wに対して、温度180?300℃、圧力15?30atmに設定された蒸気を噴出口26から噴出して、該密閉空間S内の海水Wを下から吹き上げ状に撹拌するようすることが記載されている。 しかしながら、技術常識からは、海水が入った密閉空間に対して蒸気を噴出することで、海水は加熱されて海水の温度は上昇し、噴出された蒸気や海水の蒸発によって密閉空間内の圧力が上昇する程度のことは理解できても、温度180?300℃、圧力15?30atmに設定された蒸気を海水が入った密閉空間に噴出させるだけでは、密閉空間内の圧力は、局所的にも数千度ないし数千気圧にはならないことは技術常識である。 そして、温度180?300℃、圧力15?30atmに設定された蒸気を、密閉空間内の海水に対して噴出することによって、素粒子であるニュートリノが発生して、海水が原子転換が起こり、海水中のカルシウムや鉄等のミネラル成分が増加することは、なんら実証されていないし、そのような現象は生じないことは技術常識からみて明らかである。 そうすると、本願明細書に開示された「活性化処理」は、技術常識によれば、海水を撹拌し、海水の温度を上昇させる程度の処理というべきであって、海水を局所的に、数千度ないし数千気圧にするような処理とは認めることができないし、それによって発生されるニュートリノによって、海水に原子転換が起こり、カルシウムや鉄等のミネラル成分が増加するような処理であるとも認めることができない。 してみると、上述したように、本願発明1の「水素製造システム」では、海水に対する「活性化処理」によって活性化された海水を、断面が3角形、5角形、6角形又は8角形のいずれかの形状の海水通流管内を通流させることで、水素が分離生成するものとしているところ、本願明細書は、当該「活性化処理」については、どのような処理なのかについて推測を記載する程度にとどまり、「活性化処理」が前提とする「海水が局所的に超高温高圧(数千度、数千気圧)となる」ような処理については、どのような処理なのかを、これを客観的に明らかにした記載は見出すことができないのであるから、本願明細書の記載は、本願発明の「活性化処理」について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。 また、請求人が意見書、審判請求書及び回答書に添付した資料である、平成24年1月24日付けの宮代知直氏他2名による実験証明書には、「(2)活性化装置」について、次の記載がある。 「(2)「活性化装置」(亜臨界水反応装置)(スチーム撹絆)と管路装置を組み合わせて使用した場合(実施例1-3) 実施例1-3まず、原海水(15℃、300Kg)を、0. 5m^(3)密閉空間を有する「活性化装置」(亜臨界水反応装置)(材質:ステンレス)に導入する。つぎに、密閉空間内に高温高圧(300℃、30atm)の加熱蒸気(500Kg/Hr、1時間)を噴出させ、密閉空間内の海水を高温高圧下(180℃、10atm)で活性化処理する。 その後、活性化処理海水を圧送機構(圧力ポンプ10-30気圧)により管路装置を通流(30atm)させる。」(2頁10?17行) この記載によれば、「活性化装置(亜臨界水反応装置)」内の密閉空間内の海水に、300℃、30atmの蒸気を噴出させて、海水を、高温高圧下(180℃、10atm)で処理することまでは理解できても、当該密閉空間内が超高温高圧(数千度、数千気圧)となることについては確認していなし、素粒子であるニュートリノが発生して、海水と原子転換が起こり、海水中のカルシウムや鉄等のミネラル成分が増加することも確認しておらず、断面が3角形、5角形、6角形又は8角形のいずれかの形状の海水通流管内を通流する際に水分子から水素が分離する海水となるように処理する「活性化処理」について、どのような処理なのかを明らかにするものとは認めることができない。 そうすると、上記実験証明書は、本願発明の「活性化処理」を裏付ける実験としては、十分なものということはできない。 したがって、上記実験証明書を参酌しても、本願明細書の記載は、本願発明の「活性化処理」について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるということはできない。 第5 むすび 上記のとおり、本願は、本願明細書の発明の詳細な説明が、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-04-23 |
結審通知日 | 2014-04-30 |
審決日 | 2014-05-30 |
出願番号 | 特願2007-531959(P2007-531959) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(C01B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 政博 |
特許庁審判長 |
川端 修 |
特許庁審判官 |
中澤 登 吉水 純子 |
発明の名称 | 海水からの水素製造システム及び水素製造方法 |
代理人 | 秋元 輝雄 |
代理人 | 秋元 輝雄 |
代理人 | 秋元 輝雄 |