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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1289979
審判番号 不服2013-10292  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-04 
確定日 2014-07-17 
事件の表示 特願2008-311894「レンズ鏡筒およびそれを用いた電子撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月17日出願公開、特開2010-134324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年12月8日の出願であって、平成24年11月16日付けで手続補正がなされ、平成25年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成25年9月5日付け審尋に対して同年10月21日付けで回答書を提出している。

第2 平成25年6月4日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年6月4日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成25年6月4日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、明細書及び特許請求の範囲についてするものであって、平成24年11月16日付けで補正された本件補正前の請求項1に、
「伸縮可能なレンズ鏡筒において、
正の屈折力を有する一群レンズを保持し、光軸方向に移動可能な一群枠と、
前記一群レンズの光軸上の像側に負の屈折力を有する二群レンズを保持し、前記光軸方向に移動可能な二群枠と、
明るさ絞りおよび正の屈折力を有する三群レンズを保持し、前記レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸上の像側に位置させ、前記レンズ鏡筒が前記撮影可能状態より短縮した沈胴状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸から外れた位置に退避させる、前記光軸方向に移動可能で、かつ前記光軸方向と直交する方向に揺動可能な三群枠と、
正の屈折力を有する四群レンズを保持し、前記撮影可能状態では、前記三群レンズの光軸上の像側で前記光軸方向に移動可能な四群枠とを有し、
前記二群レンズは、二群物体側レンズと、該二群物体側レンズよりも外形の小さい二群像側レンズとの少なくとも二つのレンズを有し、
前記四群レンズは、前記二群物体側レンズよりも外形の小さいレンズからなり、
前記明るさ絞りおよび前記三群レンズは、前記レンズ鏡筒内で、前記沈胴状態において、前記光軸方向と直交する方向から見て、前記二群像側レンズの物体側端と、前記四群レンズの像側端との間に退避させるように構成した、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。」とあったものを、

「伸縮可能なレンズ鏡筒において、
正の屈折力を有する一群レンズを保持し、光軸方向に移動可能な一群枠と、
前記一群レンズの光軸上の像側に負の屈折力を有する二群レンズを保持し、前記光軸方向に移動可能な二群枠と、
明るさ絞りおよび正の屈折力を有する三群レンズを保持し、前記レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸上の像側に位置させ、前記レンズ鏡筒が前記撮影可能状態より短縮した沈胴状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸から外れた位置に退避させる、前記光軸方向に移動可能で、かつ前記光軸方向と直交する方向に揺動可能な三群枠と、
正の屈折力を有する四群レンズを保持し、前記撮影可能状態では、前記三群レンズの光軸上の像側で前記光軸方向に移動可能な四群枠とを有し、
前記二群レンズは、二群物体側レンズと、該二群物体側レンズよりも外形の小さい二群像側レンズとの少なくとも二つのレンズを有し、
前記三群レンズは、物体側から順に2枚の正レンズと一枚の負レンズとを有し、前記二枚の正レンズのうちの像側の正レンズと前記負レンズとが接合されており、
前記明るさ絞りは、前記三群枠の物体側端部に形成されており、
前記四群レンズは、前記二群物体側レンズよりも外形の小さいレンズからなり、
前記明るさ絞りおよび前記三群レンズは、前記レンズ鏡筒内で、前記沈胴状態において、前記光軸方向と直交する方向から見て、前記二群像側レンズの物体側端と、前記四群レンズの像側端との間に退避させるように構成した、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。」とする補正を含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第三群レンズ」が本願の出願当初明細書の【0072】の記載を根拠として「物体側から順に2枚の正レンズと一枚の負レンズとを有し、前記二枚の正レンズのうちの像側の正レンズと前記負レンズとが接合されて」いるものとし、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「明るさ絞り」が本願の出願当初明細書の【0049】の記載を根拠として「前記三群枠の物体側端部に形成されて」いるものとするものであり、「第三群レンズ」及び「明るさ絞り」をそれぞれ限定する補正からなるものであり、本願の出願当初明細書に記載された事項の範囲内においてなされた補正であることは明らかである。

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たし、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-46504号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の撮像ユニット付きレンズ鏡筒の分解斜視図である。図2は、上記レンズ鏡筒を構成する鏡枠部材のうち、第二群枠とシャッタ・3群ユニットと退避カムの分解斜視図である。なお、図2においては細部を図示するために図1の左下から見た状態を示している。図3は、上記レンズ鏡筒を構成するレンズ鏡筒本体部と該本体部に装着可能な2つの異なる撮像ユニットとの分解斜視図である。図4は、上記レンズ鏡筒において、保持プレートを装着したレンズ鏡筒本体部を後方側(CCD取り付け側)から見た斜視図である。図5は、図4のB,C部の部分断面図であって、上記レンズ鏡筒本体部,保持プレート,センサ基台の取り付け部断面を示す。
【0017】
なお、以下の説明において、上記撮影レンズの光軸をOとし、該光軸O方向で被写体側を前方(各鏡枠の繰り出し方向)、結像側を後方(各鏡枠の繰り込み方向)とする。また、各部材の回転方向は、前方側から見た回転方向で示す。
【0018】
本実施形態のレンズ鏡筒1A、または、1Bは、それぞれ光軸O方向に突出した撮影可能な状態と収納された沈胴状態とに切り換え可能な沈胴式レンズ鏡筒であり、図3に示すようにレンズ鏡筒本体部50に対して異なる機能(仕様)を有する撮像ユニットであって、第一の機能を有する第一の撮像素子ユニットのセンサユニット33A、または、第二の機能を有する第二の撮像素子ユニットのセンサユニット33Bのいずれかが選択的に装着される。
【0019】
レンズ鏡筒本体部50は、図1に示すように固定枠2と、固定枠2に支持され、ズーミング時や沈胴駆動時に回転進退駆動される回転枠3と、回転規制状態で回転枠3とともに進退する移動枠4と、回転枠3と共に回転し、進退移動するカム枠5と、回転規制状態でカム枠5とともに進退する直進ガイド枠6と、回転規制状態で回転枠3により進退駆動されるシャッタ・三群ユニット32と、回転規制状態でカム枠5によりそれぞれ進退駆動される二群枠11および一群枠12と、フォーカシング時や沈胴駆動時に進退駆動される四群枠13と、撮影レンズ群として、一群枠12,二群枠11にそれぞれ保持される一群レンズ21,二群レンズ22と、退避枠である三群枠10に保持されるレンズ部(退避レンズ)である三群レンズ23と、四群枠13に保持されるフォーカシングレンズである四群レンズ24と、上記各鏡枠部材が組み込まれたレンズ鏡筒本体部50の後端の固定枠2に取り付けられる保持プレート15とからなる。」

イ 「【0034】
シャッタ・三群ユニット32は、図2に示すように支持部材である三群用直進枠7と、押さえ板部材8と、変位枠であるシャッタ枠9と、三群レンズ23を保持する退避枠である三群枠10と、付勢手段(変位枠駆動機構)であって圧縮バネからなるシャッタ枠付勢バネ51と、枠支持軸52と、トーションバネである三群枠付勢バネ53とからなる。
【0035】
三群用直進枠7は、移動枠4により回転規制された状態でその内部に挿入され、回転枠3により進退駆動される枠部材である。この三群用直進枠7には外方3方に延びた腕部にガイド突部7aと該突部から突出する状態のカムフォロア42とが設けられ、さらに、軸支持穴7cと、前方側に突設されるシャッタ支持軸部7bとが設けられる。なお、三群用直進枠7は、三群枠10を撮影光路外に退避可能なスペ-スを有している。
【0036】
シャッタ枠9は、中央開口部9aとシャッタ支持軸部7bが摺動可能に嵌入する支持軸穴9cが設けられる支持軸穴ボス部9bとを有しており、さらに、該開口部9aを開閉するためのシャッタ羽根54(図6)と、該シャッタ羽根を回動駆動するためのシャッタアクチュエータ55を含むシャッタ機構とを内蔵している。
【0037】
三群枠10は、三群レンズ23を保持するレンズ保持部と、軸穴10bを有する軸支ボス部10aとを有しており、該ボス部の外周部には従動ピン10cが径方向に突出して設けられている。そして、三群枠10の被写体側の端部には開口絞り10dが配されている。このように、光路外に退避するレンズを、光学系の開口絞り10dに近接した三群レンズ23としている。一般に光学系の開口絞り位置では全ての光線束の径が最も小さくなっているので、開口絞り位置近傍に配されるレンズなどの径も小さくすることができる。従って、開口絞り位置近傍の光学要素である三群レンズ23を光路外へと退避可能な退避光学要素とすることで、撮影光路外に退避させる場合に三群枠10の回動角を小さくすることができるとともに、退避スーペースをも小さくすることで装置の小型化を図ることができる。」

ウ 「【0061】
次に、上述した構成を有するレンズ鏡筒1Aの各鏡枠部材の進退動作について、図6?12を用いて説明する。なお、レンズ鏡筒1Bについても同様の進退動作が行われる。
図6は、レンズ鏡筒1Aのテレ状態(回転枠の回動角θ0 )での光軸に沿った断面図である。図7は、上記レンズ鏡筒のワイド状態(回転枠の回動角θ1 )での光軸に沿った断面図である。図8は、上記レンズ鏡筒がワイド状態から沈胴状態に繰り込まれる途中の状態であって、第三群レンズ(退避レンズ)退避終了後、シャッタ枠押しつぶし開始時の状態(回転枠の回動角θ4 )を示す光軸に沿った断面図である。図9は、上記レンズ鏡筒の沈胴状態(回転枠の回動角θ5 )を示す光軸に沿った断面図である。図10,11は、図2のA矢視図であり、図10は、上記三群レンズが撮影光路内進出位置にあるときの状態、図11は、上記三群レンズが退避位置に退避した状態をそれぞれ示している。図12は、上記レンズ鏡筒において、テレから沈胴までの回転枠回動角に対する三群枠の位置の変化、および、シャッタ枠の三群枠に対する相対位置の変化を示す図である。
【0062】
以下の説明は、最初にレンズ鏡筒1Aが撮影可能なテレ状態(図6)にあるとし、その後、撮影可能なワイド状態(図7)を経て、沈胴途中の状態(図8)から撮影しない状態である沈胴状態(図9)までの繰り込み動作(セットダウン動作)の説明であるが、沈胴状態から撮影可能状態への繰り出し時(セットアップ動作時)には、上記繰り込み動作の逆の動作が実行される。
【0063】
図6に示すようにレンズ鏡筒1Aがテレ状態にあり、回転枠3が回転角θ0 の回動位置にあるとき、カムフォロア3aが固定枠2のカム溝2aの円周溝部に嵌入した繰り出し状態にあり、移動枠4と共に撮影可能な位置に繰り出されている。カム枠5は、移動枠4のカム溝4cにより位置決めされ、回転枠3よりさらに前方に繰り出されている。一群枠12と二群枠11とは、それぞれカム枠5のカム溝5bと5aによりテレ位置に繰り出されている。
【0064】
さらに、上記テレ状態では三群用直進枠7は、回転枠3のカム溝3dにより繰り出されている。さらに、シャッタ枠9は、二群枠11の当接部11bにより支持軸穴ボス部9bの前端面9dが押圧され、テレ位置に位置決めされている(図6,12)。三群枠10は、三群用直進枠7とともに移動し、光軸O方向のテレ位置にある。この状態で三群枠10の従動ピン10cは、退避カム14のカム面14aと離間している。したがって、三群枠10は、三群枠付勢バネ53の付勢力で反時計回りに回動した撮影光路内に挿入した進出位置にあり(回動角α0 )、三群レンズ23は、シャッタ枠9の中央開口部9aよりも撮像素子側であって、撮影光路内の光軸O上の進出位置にある(図10,12)。
【0065】
上述したシャッタ枠9の位置決め状態では、シャッタ枠9に支持されるシャッタ羽根54の光軸O方向の位置は、二群レンズ22と三群レンズ23との間に介在し、極めて接近して位置している。このようにシャッタ羽根54に対して三群レンズ23を接近させることによりシャッタ羽根54を開口絞り10dに近接して配置することができる。これにより、シャッタ羽根54の開閉時において、軸上と軸外とで光量ムラを発生させることを防ぐことができ、シャッタの特性を高めることができる。
【0066】
四群枠13は、フォーカシングユニット18により上記テレ状態に対応したフォーカシング位置に進退駆動される。
【0067】
続いて、レンズ鏡筒1Aをワイド状態とする場合、ズーミングユニット17によりロングギヤ45を介して回転枠3を回動角θ1 まで回転駆動する。カム枠5は回転しながら繰り込まれる。カム枠5の回転に伴って、図7に示すように一群枠12は繰り込まれ、二群枠11は繰り出され、それぞれのワイド位置に移動する。三群用直進枠7は、回転枠3の回転に伴ってワイド位置に繰り込まれるが、シャッタ枠9は、支持軸穴ボス部9bの前端面9dが二群枠11の当接部11bから解放されるので、押さえ板部材8に当接した状態のワイド位置に移動する(図7,12)。この押さえ板部材8とが当接した状態は、シャッタ枠9のシャッタ羽根54まわりと三群レンズ23とがわずかに離れた状態である。この状態では、三群枠10の退避方向への回動動作がシャッタ枠9によって干渉されない。
【0068】
このように、本実施の形態ではワイド状態においてシャッタ羽根54はテレ状態時に較べて開口絞り10dから離間している。すなわち、ワイド状態ではシャッタ羽根54が開口絞り10dに対し被写体側に離間している。これにより、広角側で発生しやすい軸外光線によるコマ収差などを効果的に軽減することができる。なお、ワイド状態においても上述のテレ状態と同様に、シャッタ羽根54を開口絞り10dの近傍に配置するようにしてもよい。
【0069】
また、上述のワイド状態においても三群枠10の従動ピン10cは、退避カム14のカム面14aと離間しており、三群枠10は、図10に示す撮影光路に挿入された進出位置に保たれる。
【0070】
四群枠13は、フォーカシングユニット18により上記ワイド状態に対応したフォーカシング位置に進退駆動される。
【0071】
続いて、レンズ鏡筒1Aを沈胴状態にセットダウンする場合、図7のワイド状態から図8の沈胴途中の状態を経て図9の沈胴状態とする。詳しくは、図7のワイド状態にあるとき、ズーミングユニット17によりさらに回転枠3を反時計回りに回転駆動する。この回転駆動により回転枠3は、回転しながら繰り込み方向に移動する。
【0072】
回転枠3の上記繰り込み方向の移動に伴ってカム枠5を介して一群枠12および二群枠11が繰り込み方向に移動する。同時に三群用直進枠7もシャッタ枠9および三群枠10とともに繰り込み方向に移動する。
【0073】
上述の移動中、回転枠3が退避開始回動角θ2 (図12)まで回動すると、三群枠10の従動ピン10cが退避カム14のカム面14aと当接し(係合)、三群枠10の撮影光路から退避する方向の時計回り(図10のα方向)の回動が開始される。なお、この三群枠10の退避方向への回動動作の後半の期間にはレンズバリア27の閉方向への回動駆動が開始される。
【0074】
さらに、回転枠3が退避完了回動角θ3 (図12)まで回動すると、従動ピン10cがカム面14aから退避壁面14bに到達し、図8,11,12に示すように三群枠10は、退避位置となる回動角α1 まで回動し、三群レンズ23が撮影光路外に退避する。
【0075】
なお、上述した従動ピン10cが退避カム14のカム面14aと係合後、退避壁面14bに到達するまでの三群枠10の退避期間中(図8の状態まで)、シャッタ枠9は、二群枠11の当接部11bで押圧されず、押さえ板部材8に当接した状態に保持され、三群枠10とシャッタ枠9とが離れた状態が継続する(図12のシャッタ枠ワイド位置状態)。したがって、三群枠10の退避回動時にはシャッタ枠9と干渉することがなく、スムーズな退避動作が可能である。
【0076】
三群枠10の退避回動動作が終了後、三群用直進枠7とともにさらに繰り込み方向に繰り込まれ、一群枠および二群枠11も繰り込まれる。回転枠3がシャッタ押しつぶし開始の回動角θ4 (図12)まで回動すると、二群枠11の繰り込みに伴って当接部11bがシャッタ枠9の前端部9dに当接し、シャッタ枠9が押圧され、シャッタ枠付勢バネ51をさらに圧縮してシャッタ枠9の押しつぶし動作が開始される。その押しつぶし動作(繰り込み動作)によりシャッタ枠9が三群枠10と接近し、シャッタ枠9のシャッタ羽根部が退避位置にある三群枠10の光路側のスペ-スに進入してくる。
【0077】
さらなる沈胴動作が継続されて、回転枠3が沈胴回動角θ5 まで回動すると、回転枠3,カム枠5,一群枠12,二群枠11,三群用直進枠7等が完全にそれぞれの沈胴位置まで繰り込まれ(図9)、シャッタ枠9は、二群枠11によって完全押圧位置まで押圧され、沈胴位置に移動する(図12)。退避状態の三群枠10の光軸O側の空きスペ-スには、シャッタ枠9に保持されるシャッタ羽根54の他に二群枠11に保持される二群レンズ22の一部、さらに、四群枠13に保持される四群レンズ24が収まる。また、レンズバリア27も閉位置に回動駆動され、沈胴動作が終了する。
【0078】
上述したように本実施形態のレンズ鏡筒1A、または、1Bにおいては、三群枠10が一群枠等の鏡枠部材が突出した撮影可能状態にあるときは、撮影光路内への進出位置にあるが、上記鏡枠部材の沈胴動作中に退避位置に回動駆動される。そして、三群枠10が上記進出位置にあるとき、三群枠10とシャッタ枠9とが接近可能とするが、三群枠10が上記進出位置から退避位置に移行するとき、三群枠10とシャッタ枠9とを離間させて上記退避位置への移行を可能とする。退避位置に到達した後には、シャッタ枠9を三群枠10と接近させ、収納状態(沈胴状態)とする。このように構成することによりレンズ鏡筒の収納状態(沈胴状態)への移行をスムーズに行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、上述した三群枠10を退避位置へ駆動するための退避カム14を保持プレート15に一体的に設け、該保持プレート15を固定枠2に直接、固着した状態でレンズ鏡筒本体部50が構成される。このレンズ鏡筒本体部50単体の状態で各鏡枠の全ての動作やレンズ鏡筒本体部の動作を確認することができる(組み立て検査)。それらの動作確認を行った後、レンズ鏡筒本体部50に異なる機能を有するセンサユニット33A、または、33Bを選択的に装着することより異なる仕様のレンズ鏡筒1A、または、1Bが完成する。このようにセンサ装着前にレンズ鏡筒本体部の動作確認を行うことで組み立て検査工程の能率が向上する。また、異なる仕様毎に異なるレンズ鏡筒本体部を用いる必要がなく、少なくとも一種類のレンズ鏡筒本体部を用意するだけで複数の仕様の撮像ユニット付きレンズ鏡筒に対応することができ、生産性が向上する。
【0080】
なお、上述した実施形態のレンズ鏡筒においては、沈胴時(三群枠退避後)、シャッタ枠9を二群枠11の押圧により三群枠10側に押しつぶし駆動する構成を採用したが、これに限らず、沈胴時にシャッタ枠9を、例えば、カム枠等のカム溝により進退駆動して三群枠退避後、三群枠10側に接近させる構成を採用することもできる。この場合、ワイド状態でシャッタ枠9を三群枠10側により接近させることが可能となる。
【0081】
また、上述した実施形態においては、レンズ鏡筒本体部50に選択的に装着されるセンサユニットとしてぶれ補正機能なしのセンサユニット33Aとぶれ補正機能付きのセンサユニット33Bを適用したが、これに限らず、例えば、適用する撮像素子の画素数が異なるユニットや撮像素子のサイズの違うユニット、さらには、CCDまたはCMOSを適用するユニットなど撮像素子の仕様が異なるセンサユニットを選択的に適用する構成であってもよい。
【0082】
この発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。」

オ レンズ鏡筒1Aのテレ状態での光軸に沿った断面図である図6、及び、レンズ鏡筒1Aのワイド状態での光軸に沿った断面図である図7の記載からみて、一群レンズ21は全体として両凸である正レンズであり、二群レンズ22は被写体側レンズと該被写体側レンズよりも外形の小さい結像側レンズの2つのレンズからなる全体として両凹である負レンズであり、三群レンズ23は二群レンズ22の結像側にあり被写体側から順に2枚の両凸である正レンズと1枚の両凹である負レンズとからなり、前記2枚の正レンズのうちの結像側の正レンズと前記負レンズとは全面に亘って接触し、四群レンズ24は、二群レンズ22の被写体側レンズよりも外形の小さいレンズからなることが見て取れる。

カ レンズ鏡筒1Aの沈胴状態を示す光軸に沿った断面図である図9の記載からみて、三群枠10が、レンズ鏡筒1A内で、光軸方向と直交する方向から見て、二群レンズ22の結像側レンズの被写体側端より結像側で、四群レンズ24の像側端より像側に突出して退避していることが見て取れる。

カ 上記アないしオから、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
「光軸方向に突出した撮影可能な状態と収納された沈胴状態とに切り換え可能な沈胴式レンズ鏡筒において、
それぞれ進退駆動される一群枠12、二群枠11、三群枠10を有するシャッタ・三群ユニット32、及び、四群枠13を有し、
撮影レンズ群は、一群枠12,二群枠11にそれぞれ保持される一群レンズ21,二群レンズ22と、退避枠である三群枠10に保持されるレンズ部である三群レンズ23と、四群枠13に保持されるフォーカシングレンズである四群レンズ24とからなり、
一群レンズ21は正レンズであり、二群レンズ22は被写体側レンズと該被写体側レンズよりも外形の小さい結像側レンズの2つのレンズからなる負レンズであり、三群レンズ23は被写体側から順に2枚の正レンズと1枚の負レンズとからなり、前記2枚の正レンズのうちの結像側の正レンズと前記負レンズとは全面に亘って接触しており、四群レンズ24は、二群レンズ22の被写体側レンズよりも外形の小さいレンズからなり、
三群枠10は、その被写体側の端部に開口絞り10dが配され、撮影可能なテレ状態あるいはワイド状態では、撮影光路内に挿入した進出位置にあり、三群レンズ23が撮影光路内の二群レンズ22の結像側で四群レンズの被写体側の光軸上の進出位置にあり、撮影しない状態である沈胴状態では、退避位置まで回動し、三群レンズ23が撮影光路外に退避し、
三群枠10が、レンズ鏡筒1A内で、沈胴状態において、光軸方向と直交する方向から見て、二群レンズ22の結像側レンズの被写体側端より結像側で、四群レンズ24の結像側端より結像側に突出して退避しているレンズ鏡筒。」(以下「引用発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-90065公報(以下「引用例2」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【請求項1】
複数のレンズ群の少なくとも一部を沈胴させてレンズ群を収納する沈胴状態から前記レンズ群の少なくとも一部を対物側に移動することにより撮影状態とするレンズ鏡胴であって、
前記複数のレンズ群をそれぞれ保持する複数のレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を内部に保持する可動レンズ鏡胴と、前記可動レンズ鏡胴を介して前記レンズ保持枠を駆動するレンズ保持枠駆動手段と、を備え、
前記レンズ保持枠は、撮影状態では全てのレンズ群を同一の光軸上に位置させ、沈胴状態では少なくとも1つのレンズを含む退避レンズを前記可動レンズ鏡筒の内径よりも外側に退避させるべく、前記退避レンズを保持し且つ移動させる退避レンズ保持枠を含むレンズ鏡胴において、
前記退避レンズ保持枠にはカムが形成され、前記カムは退避レンズ保持枠駆動部材を利用して、前記退避レンズを撮影位置及び収納位置に駆動できるような形状を有し、さらに前記退避レンズ保持枠駆動部材が、前記カム形状の収納領域を超えて前記退避レンズ保持枠のカム外に移動できないように、前記退避レンズ保持枠駆動部材にストッパを有することを特徴とするレンズ鏡胴。」

イ 「【0031】
図9を参照して、撮影状態について説明すると、第1レンズ群11、第2レンズ群12、第3レンズ群13および第4レンズ群14は、物体側から順次配列されるとともに、第2レンズ群12と第3レンズ群13の間に、シャッタ/絞りユニット15が、挿入配置され、第4レンズ群14の像面側には、CCD(電荷結合素子)等を用いて構成される固体撮像素子16が配置される。これら第1レンズ群11?第4レンズ群14は、焦点距離可変のズームレンズを構成する。第1レンズ群11は、1枚以上のレンズからなり、該第1レンズ群11を一体的に保持する第1レンズ保持枠17を介して直進筒27に固定保持されている。」

ウ 「【0042】
第3レンズ群13は、第3レンズ保持枠31に保持されている。第3レンズ保持枠31は、一端に第3レンズ群13を保持しており、他端が第3レンズ群13の光軸と実質的に平行な第3群主ガイド軸32によって回動可能に且つ第3群主ガイド軸32に沿ってスライド移動可能に支持されている。第3レンズ保持枠31は、図8に示すように撮影状態における光軸上に第3レンズ群13を挿入した光軸上位置と、図7に示すように沈胴収納状態における第3レンズ群13を固定枠21の固定筒部分から外部に退避した収納位置との間で第3群主ガイド軸32を中心として回動する。第3レンズ保持枠31の回動端側の第3レンズ群13の近傍には、この場合回動軸側と第3レンズ群13の支持部側とで主ガイド軸に平行な方向における位置を異ならせるクランク状の屈曲部が形成され、該屈曲部からほぼ回動端方向にストッパ31a(図15)および遮光片31bが突設されている。」

エ レンズ光軸を境として上半部および下半部に、レンズ群を望遠位置まで突出した撮影状態および沈胴させて収納した沈胴収納状態におけるレンズ鏡胴における各レンズ群、レンズ保持枠ならびに各種レンズ鏡筒の要部をそれぞれ示す縦断面図である図9(a)の記載からみて、沈胴収納状態で第3レンズ群13は第4レンズ群14の像面側端より物体側に退避することが見て取れる。

オ 上記アないしエから、引用例2には次の事項が記載されているものと認められる。
「複数のレンズ群の少なくとも一部を沈胴させてレンズ群を収納する沈胴状態から前記レンズ群の少なくとも一部を対物側に移動することにより撮影状態とするレンズ鏡胴であって、
前記複数のレンズ群をそれぞれ保持する複数のレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を内部に保持する可動レンズ鏡胴と、前記可動レンズ鏡胴を介して前記レンズ保持枠を駆動するレンズ保持枠駆動手段と、を備え、
前記レンズ保持枠は、撮影状態では全てのレンズ群を同一の光軸上に位置させ、沈胴状態では少なくとも1つのレンズを含む退避レンズを前記可動レンズ鏡筒の内径よりも外側に退避させるべく、前記退避レンズを保持し且つ移動させる退避レンズ保持枠を含むレンズ鏡胴において、
第1レンズ群11、第2レンズ群12、第3レンズ群13および第4レンズ群14は、物体側から順次配列されるとともに、第2レンズ群12と第3レンズ群13の間に、シャッタ/絞りユニット15が、挿入配置され、
第3レンズ群13は、第3レンズ保持枠31に保持され、第3レンズ保持枠31は、一端に第3レンズ群13を保持しており、他端が第3レンズ群13の光軸と実質的に平行な第3群主ガイド軸32によって回動可能に且つ第3群主ガイド軸32に沿ってスライド移動可能に支持され、第3レンズ保持枠31は、撮影状態における光軸上に第3レンズ群13を挿入した光軸上位置と、沈胴収納状態における第3レンズ群13を固定枠21の固定筒部分から外部に退避した収納位置との間で第3群主ガイド軸32を中心として回動するものであり、沈胴収納状態で第3レンズ群13は第4レンズ群14の像面側端より物体側に退避すること。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

(3)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-243701公報(以下「引用例3」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【請求項4】
複数枚のレンズを有するレンズ光学系と、
前記レンズ光学系に設けられ、その光軸と垂直な平面内で移動し、前記レンズ光学系の光路内に進入する進入位置と、前記レンズ光学系の光路外へ退避させる退避位置との間で移動する補正レンズと、
物体側に向けて前記レンズ光学系の少なくとも一部を移動させ、前記レンズ光学系の全長を長くするレンズ繰り出し動作と、像面側に向けて前記レンズ光学系の少なくとも一部を移動させ、前記レンズ光学系の全長を短くするレンズ収納動作とを行うためのレンズ移動手段とを備え、
前記補正レンズは、レンズ繰り出し動作時に前記進入位置に移動し、レンズ収納動作時には前記退避位置に移動し、振動の発生によって前記光学像の振れを打ち消すのに必要な移動量が算出された際には、前記移動量に基づいて前記光軸と垂直な平面内で移動することを特徴とするレンズ装置。」

イ 「【0021】
図3において、レンズ鏡胴4は、前方へ繰り出される移動鏡胴20と、固定鏡胴21とからなる。撮影レンズ5は、移動鏡胴20に保持された第1レンズ群G1と、撮影レンズ5の光軸A1と平行な支軸22により回転自在に支持された第2レンズ群G2と、フォーカス調節時に光軸A1に沿って進退移動する第3レンズ群G3とを備えている。撮影レンズ5の背後には光軸A1と垂直にCCDイメージセンサ23が設けられている。CCDイメージセンサ23は、撮影レンズ5を透過して形成される被写体の光学像を画像信号として光電変換する。
【0022】
第2レンズ群G2は、移動鏡胴20の繰り出し時にその光軸A2(図3(a)参照)が撮影レンズ5の光軸A1と合致する位置に進入し、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3の間に移動する。また、移動鏡胴20の繰り込み時には、支軸22を中心に回転し、第1レンズ群G1を透過する被写体光の光路の外側の位置へ退避する。これにより、第1レンズ群G1の像面側のレンズ表面は、第2レンズ群G2よりも像面に近い位置へ移動することができる。移動鏡胴20の繰り込み時には、第1レンズ群G1の物体側のレンズ表面から第3レンズ群G3の像面側のレンズ表面までの距離が、第1レンズ群G1,第2レンズ群G2,第3レンズ群G3の全レンズの厚みを合計した値よりも小さくなる。移動鏡胴20の半径は、第1レンズ群G1の半径と第2レンズ群G2の直径を足し合わせた大きさとほぼ等しくなっている。」

ウ レンズ鏡胴の断面図である図3の記載からみて、第2レンズ群G2は、移動鏡胴20の繰り込み時に、第1レンズ群G1を透過する被写体光の光路の外側の位置へ退避した際に、第3レンズ群G3の像面側端よりも物体側に位置することが見て取れる。

エ 上記アないしウから、引用例3には次の事項が記載されているものと認められる。
「複数枚のレンズを有するレンズ光学系と、
前記レンズ光学系に設けられ、その光軸と垂直な平面内で移動し、前記レンズ光学系の光路内に進入する進入位置と、前記レンズ光学系の光路外へ退避させる退避位置との間で移動する補正レンズと、
物体側に向けて前記レンズ光学系の少なくとも一部を移動させ、前記レンズ光学系の全長を長くするレンズ繰り出し動作と、像面側に向けて前記レンズ光学系の少なくとも一部を移動させ、前記レンズ光学系の全長を短くするレンズ収納動作とを行うためのレンズ移動手段とを備え、
前記補正レンズは、レンズ繰り出し動作時に前記進入位置に移動し、レンズ収納動作時には前記退避位置に移動し、振動の発生によって前記光学像の振れを打ち消すのに必要な移動量が算出された際には、前記移動量に基づいて前記光軸と垂直な平面内で移動するレンズ装置であって、
移動鏡胴20に保持された第1レンズ群G1と、撮影レンズ5の光軸A1と平行な支軸22により回転自在に支持された第2レンズ群G2と、フォーカス調節時に光軸A1に沿って進退移動する第3レンズ群G3とを備え、第2レンズ群G2は、移動鏡胴20の繰り出し時にその光軸A2が撮影レンズ5の光軸A1と合致する位置に進入し、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3の間に移動し、移動鏡胴20の繰り込み時には、支軸22を中心に回転し、第1レンズ群G1を透過する被写体光の光路の外側の位置へ退避し、第2レンズ群G2は、移動鏡胴20の繰り込み時に、第1レンズ群G1を透過する被写体光の光路の外側の位置へ退避した際に、第3レンズ群G3の像面側端よりも物体側に位置すること。」(以下「引用例3の記載事項」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「レンズ鏡筒」、「一群レンズ」、「保持」、「一群枠」、「二群レンズ」、「二群枠」、「開口絞り」、「三群レンズ」、「『光軸方向に突出した撮影可能な状態』、『撮影可能なテレ状態あるいはワイド状態』」、「沈胴状態」、「退避」、「回動」、「三群枠」、「四群レンズ」、「四群枠」、「被写体側」、「結像側」、「『二群レンズ』の『被写体側レンズ』」、「『二群レンズ』の『結像側レンズ』」、「正レンズ」及び「負レンズ」は、それぞれ、本願補正発明の「レンズ鏡筒」、「一群レンズ」、「保持」、「一群枠」、「二群レンズ」、「二群枠」、「明るさ絞り」、「三群レンズ」、「レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態」、「沈胴状態」、「退避」、「揺動」、「三群枠」、「四群レンズ」、「四群枠」、「物体側」、「像側」、「二群物体側レンズ」、「二群像側レンズ」、「正レンズ」及び「負レンズ」に相当する。

(2)引用発明の「レンズ鏡筒(レンズ鏡筒)」は、光軸方向に突出した撮影可能な状態と収納された「沈胴状態(沈胴状態)」とに切り換え可能な沈胴式であるから、本願補正発明の「レンズ鏡筒」と、「伸縮可能なレンズ鏡筒」である点で一致する。

(3)引用発明の「一群枠(一群枠)」は、「保持(保持)」する「一群レンズ(一群レンズ)」が正レンズであり、「レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態(光軸方向に突出した撮影可能な状態)」と収納された「沈胴状態(沈胴状態)」とに切り換え可能な沈胴式「レンズ鏡筒(レンズ鏡筒)」において進退駆動されるのであるから、本願補正発明の「一群枠」と、「正の屈折力を有する一群レンズを保持し、光軸方向に移動可能な」点で一致する。

(4)引用発明の「二群枠(二群枠)」は、「保持(保持)」する「二群レンズ(二群レンズ)」が負レンズであり、「レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態(光軸方向に突出した撮影可能な状態)」と収納された「沈胴状態(沈胴状態)」とに切り換え可能な沈胴式「レンズ鏡筒(レンズ鏡筒)」において進退駆動されるのであるから、本願補正発明の「二群枠」と、「前記一群レンズの光軸上の像側に負の屈折力を有する二群レンズを保持し、前記光軸方向に移動可能な」点で一致する。

(5)引用発明の「三群枠(三群枠)」は、その「物体側(被写体側)」の端部に「明るさ絞り(開口絞り)」を配し、「三群レンズ(三群レンズ)」を「保持(保持)」し、「レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態(撮影可能なテレ状態あるいはワイド状態)」では、撮影光路内に挿入した進出位置にあり、「三群レンズ」が撮影光路内の光軸上の進出位置にあり、撮影しない状態である「沈胴状態(沈胴状態)」では、「退避(退避)」位置まで「回動(揺動)」し、「三群レンズ」が撮影光路外に「退避」し、「レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態(光軸方向に突出した撮影可能な状態)」と収納された「沈胴状態」とに切り換え可能な沈胴式「レンズ鏡筒(レンズ鏡筒)」において進退駆動されるのであるから、本願補正発明の「三群枠」と、「明るさ絞りおよび正の屈折力を有する三群レンズを保持し、前記レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸上の像側に位置させ、前記レンズ鏡筒が前記撮影可能状態より短縮した沈胴状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸から外れた位置に退避させる、前記光軸方向に移動可能で、かつ前記光軸方向と直交する方向に揺動可能」であり、「明るさ絞り」が「物体側端部に形成されて」いる点で一致する。

(6)引用発明の「四群枠(四群枠)」は、「四群レンズ(四群レンズ)」を「保持(保持)」し、「レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態(光軸方向に突出した撮影可能な状態)」と収納された「沈胴状態(沈胴状態)」とに切り換え可能な沈胴式「レンズ鏡筒(レンズ鏡筒)」において、「レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態」では三群レンズの「像側(結像側)」で進退駆動されるのであるから、本願補正発明の「四群枠」と、「正の屈折力を有する四群レンズを保持し、前記撮影可能状態では、前記三群レンズの光軸上の像側で前記光軸方向に移動可能な」点で一致する。

(7)引用発明の「二群レンズ(二群レンズ)」は、「二群物体側レンズ(『二群レンズ』の『被写体側レンズ』)」と該「二群物体側レンズ」よりも外形の小さい「二群像側レンズ(『二群レンズ』の『結像側レンズ』)」の2つのレンズからなるから、本願補正発明の「二群レンズ」と、「二群物体側レンズと、該二群物体側レンズよりも外形の小さい二群像側レンズとの少なくとも二つのレンズを有」する点で一致する。

(8)引用発明において、「三群レンズ(三群レンズ)」は、「物体側(被写体側)」から順に2枚の「正レンズ(正レンズ)」と1枚の「負レンズ(負レンズ)」とからなるから、引用発明の「三群レンズ」と本願補正発明の「三群レンズ」とは、「物体側から順に2枚の正レンズと一枚の負レンズとを有」する点で一致する。

(9)引用発明の「四群レンズ(四群レンズ)」は、「二群物体側レンズ(『二群レンズ』の『被写体側レンズ』)」よりも外形の小さいレンズからなるから、本願補正発明の「四群レンズ」と、「前記二群物体側レンズよりも外形の小さいレンズからな」る点で一致する。

(10)引用発明において、「明るさ絞り(開口絞り)」および「三群レンズ(三群レンズ)」を有する「三群枠(三群枠)」が、「レンズ鏡筒(レンズ鏡筒)」内で、「沈胴状態(沈胴状態)」において、光軸方向と直交する方向から見て、「二群像側レンズ(『二群レンズ』の『結像側レンズ』)」の「物体側(被写体側)」端より「像側(結像側)」に「退避(退避)」し、本願補正発明の「明るさ絞り」および「三群レンズ」は、レンズ鏡筒内で、沈胴状態において、光軸方向と直交する方向から見て、二群像側レンズの物体側端と、四群レンズの像側端との間に退避するものであるから、引用発明の「明るさ絞り」および「三群レンズ」と本願補正発明の「明るさ絞り」および「三群レンズ」とは、「レンズ鏡筒内で、沈胴状態において、光軸方向と直交する方向から見て、二群像側レンズの物体側端より像側に退避させるように構成した」点で一致する。

(11)上記(1)ないし(10)からみて、本願補正発明と引用発明とは、
「伸縮可能なレンズ鏡筒において、
正の屈折力を有する一群レンズを保持し、光軸方向に移動可能な一群枠と、
前記一群レンズの光軸上の像側に負の屈折力を有する二群レンズを保持し、前記光軸方向に移動可能な二群枠と、
明るさ絞りおよび正の屈折力を有する三群レンズを保持し、前記レンズ鏡筒が伸長した撮影可能状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸上の像側に位置させ、前記レンズ鏡筒が前記撮影可能状態より短縮した沈胴状態では、前記明るさ絞りおよび前記三群レンズを前記二群レンズの光軸から外れた位置に退避させる、前記光軸方向に移動可能で、かつ前記光軸方向と直交する方向に揺動可能な三群枠と、
正の屈折力を有する四群レンズを保持し、前記撮影可能状態では、前記三群レンズの光軸上の像側で前記光軸方向に移動可能な四群枠とを有し、
前記二群レンズは、二群物体側レンズと、該二群物体側レンズよりも外形の小さい二群像側レンズとの少なくとも二つのレンズを有し、
前記三群レンズは、物体側から順に2枚の正レンズと一枚の負レンズとを有しており、
前記明るさ絞りは、前記三群枠の物体側端部に形成されており、
前記四群レンズは、前記二群物体側レンズよりも外形の小さいレンズからなり、
前記明るさ絞りおよび前記三群レンズは、前記レンズ鏡筒内で、前記沈胴状態において、前記光軸方向と直交する方向から見て、前記二群像側レンズの物体側端より像側に退避させるように構成した、
レンズ鏡筒。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1:
前記三群レンズにおける「像側の正レンズ」と「負レンズ」とが、
本願補正発明では、「接合」されているのに対し、
引用発明では、接合されているかどうかが明らかでない点。

・相違点2:
沈胴状態において、明るさ絞りおよび三群レンズが退避するのが、光軸方向と直交する方向から見て、
本願補正発明では、「二群像側レンズの物体側端と、四群レンズの像側端との間」であるのに対し、
引用発明では、二群像側レンズの物体側端より像側であるが、四群レンズの像側端より像側に突出している点。

5 判断
(1)上記相違点1について検討する。
ア 撮影対象側から順に第1レンズ?第4レンズ群を有する撮影光学系において、第3レンズ群が撮影対象側から順に2枚の正レンズと1枚の負レンズとを有し、前記2枚の正レンズのうち、像面側の正レンズと前記負レンズとが接合された撮影光学系は本願の出願日前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開2007-139863号公報(【0028】、図3の第3レンズ群G3が、「撮像対象側から順に、撮像対象側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL8、両凸形状の正レンズL9、レンズL9と接合され像面側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL10」を有すること参照。)、特開2007-212962号公報(【0076】、図11の「第3レンズ群G3は、物体側から像側へと順に、物体側に凸面を向けた正メニスカス形状の第8レンズ素子L8と、両凸形状の第9レンズ素子L9と、両凹形状の第10レンズ素子L10とからなり、第9レンズ素子L9と第10レンズ素子L10とが接合されている」こと参照。)、特開2008-203453号公報(【0046】、図1の「第3レンズ群IIIは、物体側から順に、物体側により強い凸面を向けた両凸形状の両面非球面の正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合レンズからなる」こと参照。))。

イ 引用発明において、三群レンズにおける「像側の正レンズ」と「負レンズ」とは、接合されているかどうかは不明であるものの、全面に亘り接触しているものであるから、上記アからみれば、前記三群レンズにおける「像側の正レンズ」と「負レンズ」とを接合するようになすこと、すなわち、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(2)上記相違点2について検討する。
ア 上記3(2)及び(3)のとおり、引用例2及び引用例3には、それぞれ引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項が記載されており、要するに、沈胴状態で撮影光学系の光軸から退避したレンズ群は、撮影光学系における最も像側に位置するレンズ群の像側端よりも物体側に位置することが記載されている。

イ 引用発明を認定した引用例1の【0079】?【0081】には、レンズ鏡筒本体部50単体の状態で動作確認を行った後、該レンズ鏡筒本体部50にぶれ補正機能なしのセンサユニット33Aとブレ補正機能付きのセンサユニット33Bとその他の仕様のセンサユニットを選択的に装着することによりそれぞれ異なる仕様のレンズ鏡筒を完成させることが記載され(上記3(1)ウ)、図9には、ぶれ補正機能なしのセンサユニット33Aを装着した態様が図示されているところ、ぶれ補正機能付きのセンサユニット33Bやその他の仕様のセンサユニットをレンズ鏡筒本体部50に装着した態様については図示がなく、また、沈胴状態において、退避した三群枠10とセンサユニットとが干渉するかどうかについても特に記載はない。ぶれ補正機能付きのセンサユニット33Bやその他の仕様のセンサユニットをレンズ鏡筒本体部50に装着した場合、引用発明の三群枠は、沈胴状態において、光軸方向を直交する方向から見て、二群像側レンズの物体側端より像側で、四群レンズの像側端より像側に突出して退避した際に、あらゆる仕様のセンサユニットに干渉しないように対応しているかどうかについて、特段の説明はないものの、レンズ鏡筒本体部50に装着されたセンサユニットの形状によっては、三群枠が光軸から光軸外に退避した際にセンサユニットと干渉することは想定の範囲内のものであり、引用発明において、前記干渉が生じた場合に三群枠をセンサユニットと干渉しないように位置調整することは当業者の通常の創作能力の発揮でしかない。
したがって、三群枠の沈胴状態での位置調整に際して、センサユニットとの位置関係を如何にするかは、センサユニットのぶれ補正機能部分との干渉の程度やレンズ鏡筒内の空きスペース等を総合的に勘案して、当業者が適宜決定し得る設計上の事項である。

ウ 本願補正発明において、明るさ絞りおよび三群レンズの退避位置の像側端を四群レンズの像側端より物体側とすることの技術上の意義は、本願明細書の【0010】等の記載からみて、退避レンズ群を保持するレンズ枠や退避レンズ群の退避機構等が、像ぶれ補正装置と干渉するのを避けることにあるものと認められるが、像ぶれ補正装置と退避レンズ群とが前記干渉を生じ得ない位置関係にあれば、明るさ絞りおよび三群レンズの退避位置の像側端が、四群レンズの像側端より像側に位置するような場合と四群レンズの像側端より物体側に位置するような場合とで、その効果に格別の差異は見出せない。

エ 上記アないしウからみて、引用発明において、明るさ絞りおよび三群レンズの退避位置を、二群像側レンズの物体側端と、四群レンズの像側端との間に設定すること、すなわち、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が引用例2の記載事項及び引用例3の記載事項に基づいて適宜なし得た設計的事項である。

(3)本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果、引用例3の記載事項の奏する効果及び周知技術の奏する効果から予測することができた程度のものである。

(4)したがって、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年11月16日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年11月16日付けで補正された特許請求の範囲の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
引用例及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-08 
結審通知日 2014-05-20 
審決日 2014-06-02 
出願番号 特願2008-311894(P2008-311894)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 良子  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 レンズ鏡筒およびそれを用いた電子撮像装置  
代理人 下地 健一  
代理人 杉村 憲司  

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