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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1290029
審判番号 不服2012-4288  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-06 
確定日 2014-07-25 
事件の表示 特願2006-116097「秘匿通信システムおよびチャネル制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日出願公開、特開2007-288694〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

(1)本件請求に係る出願(以下、「本願」と記す。)は、
平成18年4月19日付けの出願であって、
平成21年3月11日付けで審査請求がなされ、
平成23年9月5日付けで拒絶理由通知(平成23年9月13日発送)がなされ、
平成23年11月14日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、
平成23年11月28日付けで拒絶査定(平成23年12月6日謄本送達)がなされたものである。

(2)本件審判請求は、
平成24年3月6日付けで、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」との趣旨で請求されたもので、
平成25年10月17日付けで拒絶理由通知(平成25年10月23日発送)がなされ、
平成25年12月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、
平成26年1月20日付けで拒絶理由通知(平成26年1月22日発送)がなされ、
平成26年3月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


第2.特許法第36条(明細書等の記載要件)について

1.当審拒絶理由
上記平成25年10月17日付けの拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由通知書」と記す。)によって通知された拒絶理由のうち特許法第36条についての拒絶理由の概要は下記のとおりのものである。

『理由2.この出願は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。


・・・(中略)・・・
(2)【請求項1】に「選択されたリモートノードに対して、量子信号の送信、前記第1チャネルを通した量子信号の検出により得られるデータに基づき前記第2チャネルを通したデータ通信により共有乱数を生成する共有乱数生成処理、および/または、前記共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信処理を実行するために、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立に切替制御する制御手段」との発明特定事項、
【請求項11】に「選択されたリモートノードに対して、量子信号の送信、前記第1チャネルを通した量子信号の検出により得られるデータに基づき前記第2チャネルを通したデータ通信により共有乱数を生成する共有乱数生成処理、および/または、前記共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信処理を実行するために、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立して切替制御する制御手段」との発明特定事項、
【請求項17】に「選択されたリモートノードに対して、量子信号の送信、前記第1チャネルを通した量子信号の検出により得られるデータに基づき前記第2チャネルを通したデータ通信により共有乱数を生成する共有乱数生成処理、および/または、前記共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信処理を実行するために、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立して切替制御する」との発明特定事項、
【請求項20】に「選択されたリモートノードに対して、量子信号の送信、前記第1チャネルを通した量子信号の検出により得られるデータに基づき前記第2チャネルを通したデータ通信により共有乱数を生成する共有乱数生成処理、および/または、前記共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信処理を実行するために、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立して切替制御するステップ」との発明特定事項の記載があるが、下記ア.?ウ.の点で、これらの発明特定事項の技術的意味および意味内容が、明細書の記載を参酌しても明確でない。
・・・(中略)・・・
イ.「前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立して切替制御する」ことの技術的意味および意味内容が明確でない。また、発明の詳細な説明での裏付けも明確でない。
(量子鍵暗号配布における共有乱数生成処理等は、量子チャネルのみで実現し得るものではなく、量子チャネルでの通信と伴に古典チャンネルを用いた同期等がなされる必要がある(これは、本願明細書において例示される「Plug & Play型量子暗号技術」「単一方向型量子暗号技術」のいずれにおいても必須のものである。)ので、「第1スイッチ手段」と「第2スイッチ手段」を完全な意味で「独立」に(何の制約もなく全くばらばらに)制御してしまっては、そもそも量子鍵暗号配布はできない(なお、これが可能であるならば、その旨を立証し得る文献等を提示して反論されたし。)。したがって、上記発明特定事項を「第1スイッチ手段」と「第2スイッチ手段」を完全な意味で「独立」に制御する旨に解釈すると、これは技術常識に反するものとなってしまう。
一方、共有乱数生成処理以外の時には、量子チャンネルを使った通信は無く、古典チャンネルだけが使用されるため、この時には第1スイッチ手段を第2スイッチ手段とは「独立」に制御することが許され、上記発明特定事項はこのようなことを意味するとも解しうるが、技術常識からみて、量子チャンネルをどのリモートノードに接続しても、乱数生成処理以外の時には量子チャンネルは何らの作用もなさないので、「第1スイッチ手段」を「第2スイッチ手段」と独立に制御することには何の技術的意味(請求項に係る発明において果たす働きや役割)も見いだせない。
また、上記発明特定事項は、第1スイッチ手段と第2スイッチ手段とが「独立」なのではなく、単に共有乱数生成処理時に選択するリモートノードと共有乱数生成処理以外の時に選択するリモートノードとが互いに「独立」している旨を表現しようとしたものともとらえることもできるが、これは原審での出願人の主張や審判請求書における請求人の主張とは相入れない。
さらに、発明の詳細な説明には下記(4)、(7)等に示す如き不備があるため、上記発明特定事項に関して、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その技術的意味も意味内容も明確に把握し得るものではなく、また、上記いずれの解釈も発明の詳細な説明において明確に裏付けられているものではない。)
・・・(中略)・・・
したがって、請求項1?21に係る発明は明確でない。
また、このため、本願請求項1?21に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとも言える。
さらに、このため、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?21に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるとともに、請求項1?21に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものであるとも言える。
・・・(中略)・・・
(4)【0011】に「すなわち、量子チャネルと古典チャネルとでは接続相手がそれぞれ異なり、そのために接続切り替えタイミングが異なるという条件を満たす必要がある。これまでの技術では、このような条件を満たすことができなかった。」とあるが、その理由(なぜ「量子チャネルと古典チャネルとでは接続相手がそれぞれ異な」るのか?どの様な構成・どの様な状況で量子チャネルの接続相手と古典チャネルの接続相手を異ならせる必要性が生じるのか?)が明確に説明されていないため、本願発明が解決しようとする課題を明確に把握することができない。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、請求項1?21に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。

(5)【0012】に「古典チャネルファイバへの盗聴行為を検出できないという問題があった。」とあるが、これと本願請求項に記載の事項との関連が明確でない。(本願請求項に記載の事項だけで当該問題を解決することはできないのでは?)
したがって、本願の発明の詳細な説明は、請求項1?21に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものである。

(6)本願発明の詳細な説明の段落【0014】の「選択されたリモートノードに対して、量子信号の送信、前記第1チャネルを通した量子信号の検出により得られるデータに基づき前記第2チャネルを通したデータ通信により共有乱数を生成する共有乱数生成処理、および/または、前記共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信処理を実行するために、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立に切替制御する制御手段」、同【0018】の「選択されたリモートノードに対して、量子信号の送信、前記第1チャネルを通した量子信号の検出により得られるデータに基づき前記第2チャネルを通したデータ通信により共有乱数を生成する共有乱数生成処理、および/または、前記共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信処理を実行するために、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立して切替制御する制御手段」、同【0019】の「選択されたリモートノードに対して、量子信号の送信、前記第1チャネルを通した量子信号の検出により得られるデータに基づき前記第2チャネルを通したデータ通信により共有乱数を生成する共有乱数生成処理、および/または、前記共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信処理を実行するために、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立して切替制御する」も上記(2)と同様に技術的意味、意味内容の不明なものである。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?21に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるとともに、請求項1?21に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものであるとも言える。

(7)【図3】a)に「Alice2」「・・・」「AliceN」と、同b)に「A1-B通信」「鍵K2生成」「A2-B通信」とあり、明細書の段落【0035】に「鍵生成プロセスは中断することも可能である。ここでは、リモートノード2(Alice2)の鍵生成プロセスの途中データを保存してスイッチ部103をリモートノード1(A1)へ切り替え、リモートノード1(A1)との間の暗号化データ通信を続行する。そして、リモートノード1(A1)との間の暗号化データ通信が終了すると、中断していたリモートノード2(Alice2)の鍵生成プロセスを再開し、共有乱数K2を鍵メモリ106に格納する。この共有乱数K2から暗号鍵を取り出すことで送信データを暗号化し、図3(b)に示すように、リモートノード2(A2)との間で暗号化データ通信を行うことができる。以下、同様である。」とあるが、ここで説明される動作(【図3】a)の「・・・」は何を意味するのか? 【図3】a)の「・・・」と【図3】b)の2つの「鍵K2生成」に挟まれた「A1-B通信」は同時に行われる動作なのか否か?【図3】a)の「AliceN」と【図3】b)の「A1-B通信」と「A2-B通信」に挟まれた「鍵K2生成」は同時に行われる動作なのか否か? 同時に行われる動作であるとしたら、「鍵K2生成」は「Alice2」との接続なしになされることになるが、これは如何にすれば実現できるのか、「AliceN」は古典チャンネル無しに何を行うのか? 【図3】a)の「AliceN」は本来は「Alice2」と記すべきものを誤記したものなのか? 【図3】a)の「・・・」は本来は【図3】b)の「・・・」のところまで延びているように記載すべきものを短く誤記してしまったものなのか?)が明確でない。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?21に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであるとともに、請求項1?21に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものであるとも言える。』


2.平成26年3月24日付け手続補正
上記平成26年3月24日付けの手続補正書は特許請求の範囲を下記本願特許請求の範囲に補正するとともに、これにあわせて明細書の【課題を解決するための手段】の記載を補正するものである。

<本願特許請求の範囲>
「 【請求項1】
センタノードと複数のリモートノードの各々とが光ファイバによって接続され、各リモートノードと前記センタノードとの間にそれぞれ複数のチャネルが設定された秘匿通信システムにおいて、
前記複数のチャネルは量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含み、
前記センタノードは、
量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、
データ通信を行う第2チャネルユニットと、
前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と、
前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段と、
前記第1チャネルユニットおよび前記第2チャネルユニットを制御し、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立に切替制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段が、前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて当該一つのリモートノードを選択し、前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理と、当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた当該一つのリモートノードとの暗号化通信処理と、を実行する、
ことを特徴とする秘匿通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1チャネルおよび前記第2チャネルが順次切り替わるように前記第1スイッチ手段および前記第2スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の秘匿通信システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記一つのリモートノードに対する前記共有乱数の蓄積量に基づいて前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、前記第1スイッチ手段および前記第2スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の秘匿通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記共有乱数の生成速度に基づいて前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、前記第1スイッチ手段および前記第2スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の秘匿通信システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記共有乱数の消費速度に基づいて前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、前記第1スイッチ手段および前記第2スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の秘匿通信システム。
【請求項6】
前記量子信号の送信、前記共有乱数生成処理および前記暗号鍵の生成が量子暗号鍵配布技術により実行されることを特徴とする請求項1-5のいずれか1項に記載の秘匿通信システム。
【請求項7】
前記量子暗号鍵配布技術はPlug & Play型量子暗号技術であることを特徴とする請求項6に記載の秘匿通信システム。
【請求項8】
前記量子暗号鍵配布技術は単一方向型量子暗号技術であることを特徴とする請求項6に記載の秘匿通信システム。
【請求項9】
前記暗号化通信処理は、前記共有乱数から暗号化鍵を生成し、One-time pad暗号化により実行することを特徴とする請求項1-8のいずれか1項に記載の秘匿通信システム。
【請求項10】
前記暗号化通信処理は、前記共有乱数から暗号化鍵を生成し、ブロック鍵暗号化によって実行することを特徴とする請求項1-8のいずれか1項に記載の秘匿通信システム。
【請求項11】
複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され、各リモートノードとの間にそれぞれ複数のチャネルが設定された秘匿通信装置において、
前記複数のチャネルは量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含み、
量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、
データ通信を行う第2チャネルユニットと、
前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と、
前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段と、
前記第1チャネルユニットおよび前記第2チャネルユニットを制御し、前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立に切替制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段が、前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて当該一つのリモートノードを選択し、前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理と、当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた当該一つのリモートノードとの暗号化通信処理と、を実行する、
ことを特徴とする秘匿通信装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記一つのリモートノードに対する前記共有乱数の蓄積量に基づいて、前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、前記第1スイッチ手段および前記第2スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項11に記載の秘匿通信装置。
【請求項13】
前記制御手段は、前記共有乱数の生成速度に基づいて前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、前記第1スイッチ手段および前記第2スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項12に記載の秘匿通信装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記共有乱数の消費速度に基づいて前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、第1スイッチ手段および前記第2スイッチ手段を制御することを特徴とする請求項12に記載の秘匿通信装置。
【請求項15】
前記暗号化通信処理は、前記共有乱数から暗号化鍵を生成し、One-time pad暗号化により実行することを特徴とする請求項11-14のいずれか1項に記載の秘匿通信装置。
【請求項16】
前記暗号化通信処理は、前記共有乱数から暗号化鍵を生成し、ブロック鍵暗号化によって実行することを特徴とする請求項11-14のいずれか1項に記載の秘匿通信装置。
【請求項17】
複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され、各リモートノードとの間にそれぞれ、量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含む複数のチャネルが設定された秘匿通信装置であって、量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、データ通信を行う第2チャネルユニットと、前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段とを有する秘匿通信装置のチャネル制御方法において、
前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて当該一つのリモートノードを選択し、前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理と、当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた当該一つのリモートノードとの暗号化通信処理と、を実行する、ことを特徴とする秘匿通信装置のチャネル制御方法。
【請求項18】
さらに、
前記一つのリモートノードに対する前記共有乱数の蓄積量を監視し、
前記共有乱数の蓄積量に基づいて前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、前記第1チャネルおよび前記第2チャネルを切り替える、
ことを特徴とする請求項17に記載の秘匿通信装置のチャネル制御方法。
【請求項19】
前記暗号化通信処理は、共通暗号鍵を前記複数のリモートノードに設定することにより、前記複数のリモートノード間で実行されることを特徴とする請求項17に記載の秘匿通信装置のチャネル制御方法。
【請求項20】
複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され、各リモートノードとの間にそれぞれ、量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含む複数のチャネルが設定された秘匿通信装置であって、量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、データ通信を行う第2チャネルユニットと、前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段とを有する秘匿通信装置の切替制御をコンピュータで実行するためのプログラムにおいて、
前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて当該一つのリモートノードを選択し、前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理と、当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた当該一つのリモートノードとの暗号化通信処理と、を実行する、ように前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
前記一つのリモートノードに対する前記共有乱数の蓄積量を監視し、
前記共有乱数の蓄積量に基づいて前記第1チャネルユニット、前記第2チャネルユニット、前記第1チャネルおよび前記第2チャネルを切り替える、
ように前記コンピュータを機能させることを特徴とする請求項20に記載のプログラム。」


3.当審判断
そこで、本願の特許請求の範囲及び明細書(上記平成26年3月24日付けの手続補正後の特許請求の範囲及び明細書)が、上記当審拒絶理由通知書の特許法第36条についての拒絶理由が解消されたものとなっているか否かについて検討する。

(1)理由2.(2)について
当審拒絶理由通知書の理由2.(2)のイ.に関して、上記平成25年12月19日付けの意見書の【意見の内容】「3.理由2の(1)?(7)について」「(2)」「イ.」において
『審判官殿が指摘されているように、第1チャネル(量子チャネル)と第2チャネル(古典チャネル)が何らかの関連をもって切り替えられることは必要であり、“完全に独立に”切替制御することはない。たとえば、本願図3において、量子チャネルの「Alice1」は、微弱光信号の送信/受信の期間を示し、古典チャネルの「鍵K1生成」は、「Alice1」で得られた検出データ(生鍵)に基づく基底照合等の鍵生成プロセスを実行する期間を示す。したがって、当然のこととして、「Alice1」による検出データの取得の後で「鍵K1生成」が開始される。この点を明確化するために、「前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、その後で、前記第1スイッチ手段とは独立に前記第2スイッチ手段を切り替えて、前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理と当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた当該一つのリモートノードとの暗号化通信処理とをスケジューリングする」というように限定補正した。この補正により、本願請求項1、11、17、20に係る発明は明確になったものと考える。』
と釈明している。
しかしながら、平成26年3月24日付けの手続補正書によって、当該明確化するための限定補正に係る記載は、
「前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて当該一つのリモートノードを選択し、前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理と、当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた当該一つのリモートノードとの暗号化通信処理と、を実行する」等の記載に補正されたため、第1スイッチ手段と第2スイッチ手段が「独立」に切替え制御されることが明確化された記載とはいえないものとなった。
してみると、本願の請求項1、11に残されている「前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立に切替制御する」との記載は、その技術的意味及び意味内容が明確なものではなく、また、発明の詳細な説明での裏付けも明確でないものになる。
したがって、当審拒絶理由通知書の理由2.(2)で指摘された不備は、解消されていないことになる。

(2)理由2.(4)について
当審拒絶理由通知書の理由2.(4)において指摘した段落【0011】に対しては何ら補正がなされておらず、上記平成25年12月19日付けの意見書の【意見の内容】「3.理由2の(1)?(7)について」「(4)」において、
『明細書段落0011において、「量子チャネルと古典チャネルとでは接続相手がそれぞれ異なり、そのために接続切り替えタイミングが異なるという条件を満たす必要がある。これまでの技術では、このような条件を満たすことができなかった。」という記載は、これまでの技術では、量子チャネルと古典チャネルとを独立して切り替えることができないために、「量子チャネルと古典チャネルとでは接続相手がそれぞれ異なり、そのために接続切り替えタイミングが異なるという条件を満たす」ことができなかった、という意味である。具体的には、本願図3を用いると、量子信号の送受信と並行して古典チャネルでは別ノード間での暗号化通信する状況もあることを示している。たとえば、量子チャネルがリモートノードA2とセンタノードBとの間で量子信号の送受信を行い(図3aの「Alice2」の期間)、古典チャネルがリモートノードA1とセンタノードBとの間で暗号化通信している(図3bの「A1-B通信」)こともありうる。』
と釈明されている。
しかしながら、平成26年3月24日付けの意見書の【意見の内容】「3.意見」においては、
『確かに、量子チャネルでの通信を実行しながら古典チャネルを用いて共有乱数生成処理を行うことは、実際の動作としてはその通りですが、・・・(後略)・・・』
と上記の釈明とは相反する釈明をし、さらに、上記2.のとおりの特許請求の範囲及び【課題を解決するための手段】の補正、すなわち「量子信号の送受信と並行して古典チャネルでは別ノード間での暗号化通信する」ものとはいえないものに補正された。
してみると、上記平成25年12月19日付けの意見書における釈明は明らかに誤りであり、「本願発明が解決しようとする課題を明確に把握することができない。」との、当審拒絶理由通知書の理由2.(4)で指摘された不備は、何ら解消されていないことになる。

(3)理由2.(5)について
当審拒絶理由通知書の理由2.(5)において指摘した段落【0012】に対しては何ら補正がなされておらず、上記平成25年12月19日付けの意見書の【意見の内容】「3.理由2の(1)?(7)について」「(5)」において、
『明細書段落0012において、「古典チャネルファイバへの盗聴行為を検出できないという問題があった。」とは、量子チャネルを伝送しているので盗聴行為を検出可能となるのであり、古典チャネルのみが伝送されているファイバでは盗聴検出ができないという意味である。たとえば本願図4や図7に示すように、量子チャネルと古典チャネルとが光ファイバに多重された構成であれば盗聴を検出可能である。』
と釈明されている。
しかしながら、本願特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、量子チャネルと古典チャネルとが光ファイバに多重された構成を特徴とするものではなく、この釈明によって当審拒絶理由通知書の理由2.(5)で指摘された不備が解消されるものではない。

(4)理由2.(6)について
上記「(1)理由2.(2)について」と同様に、当審拒絶理由通知書の理由2.(6)で指摘された不備は解消されていない。

(5)理由2.(7)について
当審拒絶理由通知書の理由2.(7)において指摘した、【図3】や段落【0035】の記載は、何ら補正がなされていない。そして、この点に関しては、上記平成25年12月19日付けの意見書の【意見の内容】「3.理由2の(1)?(7)について」「(7)」において
『本願図3について説明を補足する。上記理由2(2)イで述べたように、本願図3において、量子チャネルの「Alice1」は、微弱光信号の送信/受信の期間を示し、古典チャネルの「鍵K1生成」は、「Alice1」で得られた検出データ(生鍵)に基づく基底照合等の鍵生成プロセスを実行する期間を示す。したがって、当然のこととして、「Alice1」による検出データの取得の後で「鍵K1生成」を開始することができる。たとえば、本願図3の「Alice2」の場合、それにより検出データが得られていれば、遅れて「鍵K2生成」(図3(b)の2番目の「鍵K2生成」)が実行されてもよいはずである。その2番目の「鍵K2生成」の時に、量子チャネルが「Alice2」であるか、「AliceN」であるかは関係ないわけで、それを表現するために図3aでは「・・・」を用いている。本発明における「独立に切替制御する」とはこういう意味に解するべきである。』
と釈明されている。
しかしながら、平成26年3月24日付けの意見書の【意見の内容】「3.意見」においては、
『確かに、量子チャネルでの通信を実行しながら古典チャネルを用いて共有乱数生成処理を行うことは、実際の動作としてはその通りですが、・・・(後略)・・・』
と、上記の釈明とは相反する釈明をし、さらに、上記2.のとおりの特許請求の範囲及び【課題を解決するための手段】の補正、すなわち、『その2番目の「鍵K2生成」の時に、量子チャネルが「Alice2」であるか、「AliceN」であるかは関係ない』とは言えないものへの補正が行われた。
してみると、上記平成25年12月19日付けの意見書における釈明は明らかに誤りであり、段落【0035】【図3】で説明される動作が明確でない旨の、当審拒絶理由通知書の理由2.(7)で指摘された不備は、何ら解消されていないことになる。


4.小結
以上のとおり、本願は、明細書及び特許請求の範囲の記載が、依然として、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。


第3.特許法第29条第2項(進歩性)について

1.本願発明
本願の請求項17に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、平成26年3月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、該特許請求の範囲の請求項17に記載されたとおりの次のものと認める。
「複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され、各リモートノードとの間にそれぞれ、量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含む複数のチャネルが設定された秘匿通信装置であって、量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、データ通信を行う第2チャネルユニットと、前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段とを有する秘匿通信装置のチャネル制御方法において、
前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて当該一つのリモートノードを選択し、前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理と、当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた当該一つのリモートノードとの暗号化通信処理と、を実行する、ことを特徴とする秘匿通信装置のチャネル制御方法。」


2.引用文献

(1)平成25年10月17日付けの拒絶理由通知において引用された下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献1>
「単一光子を量子暗号として光スイッチ経由で配送に成功」,[online],2005年6月14日,日本電信電話株式会社,[2011年9月5日検索],

<引用文献記載事項1-1>
「<開発の背景>
例えば、極秘情報や金融データなどは万が一の事故のために必ずバックアップする必要があります。そのためには、専用の光ファイバ回線を直結して煩雑にデータをやり取りする必要がありました。今後は、こうしたバックアップが必要な情報の対象がもっと広がり、一般の企業や個人ユーザにも拡大していくと見られています。そうした際、ユーザとバックアップセンタ間にそれぞれ専用線を引くことはコスト的にも難しく、インターネットなどの汎用回線を使わざるを得なくなるとみられています。」(第1頁本文14行目?20行目)

<引用文献記載事項1-2>
「<実験の内容>
今回の実験では、インターネットなどのオープンな光ネットワーク環境で、<1>単一光子でも干渉現象が起きること、<2>多対多間で交換機能を果たす光スイッチ内部で経路を制御でき、なおかつ微弱な単一光子と並行して大量の強い光データ伝送が可能なことを実証しました。」(第2頁本文7行目?11行目)

<引用文献記載事項1-3>
「次に<2>の光スイッチの実験では、導波路構造を用いた干渉型(PLC-MZ)光スイッチを単位として構成された8×8マトリクススイッチを(最小単位の交換機として)使用しました。フォトニックネットワークにおいてすでに適用されている光スイッチと同一原理となっています。最初に単一光子レベルのパルスを光スイッチの1つに入力し、出力ポートで受光できることを確認しました。次に、同じマトリクススイッチに通常の光伝送で使われている強度の光パルスを別のポートから入力しました。構造上、2つの光はスイッチの途中で交差していますが、量子暗号の受光側に漏れ光除去用のフィルタを挿入すれば、両者独立に並行して動作することが確認されました(図5)。」(第2頁本文31目?40行目)

<引用文献記載事項1-4>
「図4 光マトリクススイッチを経由した量子鍵配送実験(1)
光マトリクススイッチを切り替えて、アリスとボブ1、アリスとボブ2の間で、それぞれ鍵を生成することができた.



<引用文献記載事項1-5>
「 図5 光マトリクススイッチを経由した量子鍵配送実験(2)
「通常の光通信」と「光子レベルの通信」の混在が可能
メイン信号の転送が行われている状況下で量子鍵配送が行えることを確認した.
フォトニックネットワークで量子暗号を用いた安全なネットワークが実現する見通し




<引用文献2>
特開2006-101491号公報(平成18年4月13日出願公開)

<引用文献記載事項2-1>
「【0036】
送信側の量子ユニット10と受信側の量子ユニット20とは光ファイバ伝送路5の量子チャネル51を介して暗号鍵を生成する。また、光ファイバ伝送路5の古典チャネル52を通して、たとえば同期確立や鍵生成に用いるBB84プロトコルに従った情報のやり取りを行うことができる。
【0037】
送信側の量子ユニット10は、位相変調器102およびファラデーミラー(FM)103を有する。位相変調器102は、暗号鍵の元データとなるランダムデータビットと変調時の基底+/×(基底情報)となるランダムデータビットとに従った位相変調を行う。」

<引用文献記載事項2-2>
「【0083】
本実施形態では、双方向の古典チャネル52および53がパワーの微弱な量子チャネルに代わってクロック同期を行うための同期チャネルとして使用される。また、双方向古典チャネル54および55が量子暗号鍵配布システムによって配布された暗号鍵を用いて暗号通信を行う暗号通信チャネルとして使用される。」

<引用文献記載事項2-3>


」(【図1】(A))

<引用文献記載事項2-4>


」(【図8】)


<引用文献3>
特開平8-65252号公報(平成8年3月8日出願公開)

<引用文献記載事項3-1>
「【0043】(第2実施例)図9は、本発明の第2実施例の構成を示すブロック図である。本実施例は、図1に示す第1実施例のセンタ装置10の構成において、高出力レーザ11を通常出力のレーザ16に代え、光スターカプラ12を1×n光スイッチ17に変える。1×n光スイッチ17は分配損失が小さいので通常出力のレーザ16で対応できる。センタ装置10のその他の構成およびユーザ装置20の構成は同様であるが、センタ装置10の各光変調器13-1?13-nは時分割動作するので、ユーザ装置数に応じた高速変調機能が必要となる。また、1×n光スイッチ17を用いた場合には、図10に示すように1×n光スイッチ17と各ユーザ装置対応の光変調器13-1?13-nとを集積化することができる。」

<引用文献記載事項3-2>
「【0048】(第3実施例)図13は、本発明の第3実施例の構成を示すブロック図である。本実施例は、図9に示す第2実施例のセンタ装置10の構成において、1×n光スイッチ17に代えて2×2n光スイッチ18を用いる。そして、各ユーザ装置に対応する受信手段として、2×2n光スイッチ18を介して1つの光検出器14を接続する。センタ装置10のその他の構成およびユーザ装置20の構成は同様である。
【0049】また、図14に示すように、2×2n光スイッチ18に代えて2つの1×n光スイッチ17-1、17-2を用いてもよい。この場合には、2つの1×n光スイッチ17-1、17-2によって送信時と受信時のスイッチ動作を独立に行うことができる。すなわち、送信時に受信タイミングを考慮してスイッチ動作を行う必要がない。」


3.引用発明の認定
(1)引用文献1は、引用文献記載事項1-3、1-4、1-5等に示される「量子鍵配送実験」のためのシステム、すなわち「量子鍵配送実験システム」を用いた実験を説明するものであり、当該実験は引用文献記載事項1-2記載の如く「経路」の「制御」が可能なことを実証するものである。
したがって、引用文献1から
「量子鍵配送実験システムの経路制御方法」
を読み取ることができる。

(2)上記引用文献記載事項1-4には、8×8光マトリクススイッチが、アリス、ボブ1、ボブ2の各々と光ファイバーによって接続されたものが図示されており、また、引用文献記載事項1-3記載のとおり「同じマトリクススイッチに通常の光伝送で使われている強度の光パルスを別のポートから入力」したものとして、引用文献記載事項1-5に8×8光マトリクススイッチが、量子暗号送信者、量子暗号受信者、メイン信号送信者、第1のメイン信号受信者及び第2のメイン信号受信者の各々と光ファイバーによって接続されたものが図示されており、ここでの「量子暗号送信者」「量子暗号受信者」はそれぞれ上記の「アリス」「ボブ」に他ならないと解される。
したがって、引用文献1からは、
“該量子鍵配送実験システムは、
8×8光マトリクススイッチが、量子暗号送信者、第1の量子暗号受信者及び第2の量子暗号受信者の各々と光ファイバーによって接続され、
さらに、前記8×8光マトリクススイッチが、メイン信号送信者、第1のメイン信号受信者及び第2のメイン信号受信者の各々と光ファイバーによって接続されたもの”
であることを読み取ることができる。

(3)引用文献記載事項1-4の「光マトリクススイッチを切り替えて、アリスとボブ1、アリスとボブ2の間で、それぞれ鍵を生成することができた.」との記載や、引用文献記載事項1-3の「最初に単一光子レベルのパルスを光スイッチの1つに入力し、出力ポートで受光できることを確認しました。」との記載等から、
“前記8×8光マトリクススイッチを切り替えて、前記量子暗号送信者と前記各量子暗号受信者の間で、単一光子レベルの通信を行って、それぞれ鍵を生成”
することも読み取ることができる。

(4)更に引用文献記載事項1-5の『「通常の光通信」と「光子レベルの通信」の混在が可能」「メイン信号の転送が行われている状況下で量子鍵配送が行えることを確認した. 」「両者独立に並行して動作することが確認されました」との記載などから。
“前記各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間での通常の光通信と前記単一光子レベルの通信とが混在し、両者独立に並行して動作し、前記メイン信号の転送が行われている状況下で前記量子鍵配送を行う”
ことも読み取ることができる。

(5)よって、引用文献1には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
“量子鍵配送実験システムの経路制御方法であって、
該量子鍵配送実験システムは、
8×8光マトリクススイッチが、量子暗号送信者、第1の量子暗号受信者及び第2の量子暗号受信者の各々と光ファイバーによって接続され、
さらに、前記8×8光マトリクススイッチが、メイン信号送信者、第1のメイン信号受信者及び第2のメイン信号受信者の各々と光ファイバーによって接続されたものであり、
前記8×8光マトリクススイッチを切り替えて、前記量子暗号送信者と前記各量子暗号受信者の間で、単一光子レベルの通信を行って、それぞれ鍵を生成し、
前記各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間での通常の光通信と前記単一光子レベルの通信とが混在し、両者独立に並行して動作し、前記メイン信号の転送が行われている状況下で前記量子鍵配送を行う
経路制御方法。”


4.対比
以下、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)
ア.引用発明における「8×8光マトリクススイッチ」「量子暗号送信者」及び「メイン信号送信者」は本願発明における「秘匿通信装置」に対応付けられるものであるところ、引用発明における「量子鍵配送」が秘匿通信のための鍵を配送するものであることは明らかであるから、前者も後者と同様に「秘匿通信装置」と言えるものである。
そして、引用発明は「量子鍵配送実験システムの経路制御方法」であるから、引用発明も本願発明と同様に「秘匿通信装置のチャネル制御方法」と言えるものである。

イ.
(ア)引用発明においては「8×8光マトリクススイッチが、量子暗号送信者、第1の量子暗号受信者及び第2の量子暗号受信者の各々と光ファイバーによって接続され」、「さらに、前記8×8光マトリクススイッチが、メイン信号送信者、第1のメイン信号受信者及び第2のメイン信号受信者の各々と光ファイバーによって接続され」ているのであるから、「第1の量子暗号受信者」「第2の量子暗号受信者」「第1のメイン信号受信者」「第2のメイン信号受信者」は「8×8光マトリクススイッチ」「量子暗号送信者」及び「メイン信号送信者」から見て物理的に離れた場所に位置していると認められるので「リモートノード」とも言えるものであり、また、「8×8光マトリクススイッチ」「量子暗号送信者」及び「メイン信号送信者」は「複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され」たものであると言えるものである。
(イ)また、引用発明においては「前記8×8光マトリクススイッチを切り替えて、前記量子暗号送信者と前記各量子暗号受信者の間で、単一光子レベルの通信を行って、それぞれ鍵を生成し」、「前記各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間での通常の光通信と前記単一光子レベルの通信とが混在し、両者独立に並行して動作し、前記メイン信号の転送が行われている状況下で前記量子鍵配送を行う」のであるから、「8×8光マトリクススイッチ」「量子暗号送信者」及び「メイン信号送信者」は「各リモートノードとの間にそれぞれ、量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含む複数のチャネルが設定された」ものであると言える。
(ウ)したがって、引用発明における、「8×8光マトリクススイッチ」「量子暗号送信者」及び「メイン信号送信者」も本願発明における「秘匿通信装置」と同様に「複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され、各リモートノードとの間にそれぞれ、量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含む複数のチャネルが設定された秘匿通信装置」と言えるものである。

ウ.
(ア)引用発明における「量子暗号送信者」は本願発明における「第1チャネルユニット」に対応付けられるものであるところ、引用発明においては「前記量子暗号送信者と前記各量子暗号受信者の間で、単一光子レベルの通信を行って、それぞれ鍵を生成」するのであるから、前者も後者と同様に「量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニット」と言えるものである。
(イ)引用発明における「メイン信号送信者」は本願発明における「第2チャネルユニット」に対応付けられるものであるところ、引用発明においては「前記各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間での通常の光通信」がなされるのであるから、前者も後者と同様に「データ通信を行う第2チャネルユニット」と言えるものである。
(ウ)引用発明における「8×8光マトリクススイッチ」は本願発明における「第1スイッチ手段」及び「第2スイッチ手段」に対応付けられるものであるところ、引用発明においては「前記8×8光マトリクススイッチを切り替えて、前記量子暗号送信者と前記各量子暗号受信者の間で、単一光子レベルの通信を行って、それぞれ鍵を生成し」、「前記各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間での通常の光通信と前記単一光子レベルの通信とが混在し、両者独立に並行して動作し、前記メイン信号の転送が行われている状況下で前記量子鍵配送を行う」のであるから、前者も「前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段」として動作するものであることは明らかである。
(エ)したがって、引用発明における、「8×8光マトリクススイッチ」「量子暗号送信者」及び「メイン信号送信者」も本願発明における「秘匿通信装置」と同様に「量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、データ通信を行う第2チャネルユニットと、前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段とを有する秘匿通信装置」と言えるものである。

エ.よって、引用発明も本願発明と同様に、
「複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され、各リモートノードとの間にそれぞれ、量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含む複数のチャネルが設定された秘匿通信装置であって、量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、データ通信を行う第2チャネルユニットと、前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段とを有する秘匿通信装置のチャネル制御方法」
であると言える。

(2)
ア.引用発明においては「前記8×8光マトリクススイッチを切り替えて、前記量子暗号送信者と前記各量子暗号受信者の間で、単一光子レベルの通信を行って、それぞれ鍵を生成」しているのであるから、本願発明と同様に「前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ」ていると言える。

イ.引用発明は「前記各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間での通常の光通信」がなされるものであり、当該「通常の光通信」が前記「メイン信号送信者」と「前記8×8光マトリクススイッチ」で選択された「メイン信号受信者」との間で行われることは明らかであるから、引用発明と本願発明とは
「前記第2スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択し、当該一つのリモートノードとの通信処理を実行する」
点で共通すると言える。

ウ.したがって、引用発明と本願発明とは
「前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択し、当該一つのリモートノードとの通信処理を実行する、秘匿通信装置のチャネル制御方法」
である点で、共通すると言える。

よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「複数のリモートノードの各々と光ファイバによって接続され、各リモートノードとの間にそれぞれ、量子信号を送信するための第1チャネルとデータ通信のための第2チャネルとを含む複数のチャネルが設定された秘匿通信装置であって、量子信号の送信または受信を行う第1チャネルユニットと、データ通信を行う第2チャネルユニットと、前記第1チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第1チャネルユニットとを接続する第1スイッチ手段と前記第2チャネルを切り替えて前記複数のリモートノードの選択された一つと前記第2チャネルユニットとを接続する第2スイッチ手段とを有する秘匿通信装置のチャネル制御方法において、
前記第1スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択した場合、前記第1チャネルユニットにより当該一つのリモートノードへの量子信号の送信あるいは当該一つのリモートノードからの量子信号の受信を実行させ、前記第2スイッチ手段を切り替えて一つのリモートノードを選択し、当該一つのリモートノードとの通信処理を実行する、秘匿通信装置のチャネル制御方法。」

<相違点1>
本願発明は、第2スイッチ手段を切り替えて選択される一つのリモートノードが「当該」一つのリモートノード、すなわち、第1スイッチ手段の切り替えで選択されたリモートノードと共通のリモートノードである。
(これに対して、引用文献1には、「量子暗号受信者」「メイン信号受信者」が共通の受信者である旨を直接的に明示する記載はない。)

<相違点2>
本願発明は、「前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理」を実行するものである。
(これに対して、引用文献1には、通常の光通信を用いた共有乱数生成を直接的に明示する記載はない。)

<相違点3>
本願発明は、第2スイッチ手段で選択したリモートノードとの間で「当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた」「暗号化」通信処理を行うものである。
(これに対して、引用文献1には、各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間で「共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた」「暗号化」通信を行う旨を直接的に明示する記載はない。)


5.判断
以下、上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
量子暗号鍵配布システムにおいては、暗号鍵の元となるランダムデータビットを量子チャネルで送受信しつつ、その同期確立や鍵生成に用いる情報のやり取りを古典チャネルで行いながら、暗号鍵を生成する必要があることは当該技術分野の技術常識にほかならず、このために、通常は量子化チャンネルのノードと古典チャネルのノードを一の送信機あるいは受信機として構成するのが普通である(必要があれば引用文献記載事項2-1、2-2、2-3、2-4等参照)。
したがって、引用発明において選択される「量子暗号受信者」「メイン信号受信者」とを共通の装置とすることで、本願発明と同様に、第2スイッチ手段を切り替えて選択される一つのリモートノードが、第1スイッチ手段の切り替えで選択されたリモートノードと共通のリモートノードとすること、すなわち、上記相違点1に係る構成は、量子鍵配送を行う際には当業者が必然的に採用する常識的な構成にすぎないものである。

(2)相違点2について
上記(1)でも述べたとおり、量子暗号鍵配布システムにおいては、暗号鍵の元となるランダムデータビットを量子チャネルで送受信しつつ、その同期確立や鍵生成に用いる情報のやり取りを古典チャネルで行いながら、暗号鍵を生成する必要があることは当該技術分野の技術常識にほかならない。
してみると、引用発明において単一光子レベルの通信による鍵の生成の際に、前記通常の光通信によって同期確立や鍵生成に用いる情報のやり取りを行い暗号鍵を生成するようにし、本願発明と同様に「前記第2チャネルユニットを通して当該一つのリモートノードとの間で当該一つのリモートノードからの前記量子信号の検出データに基づいて共有乱数を生成する共有乱数生成処理」を実行するものとすること、すなわち、上記相違点2にかかる構成も、当業者が必然的に採用する常識的な構成にすぎないものである。

(3)相違点3について
暗号鍵の配布がこれを用いた暗号化通信のためのものであることは明らかであり、当該暗号化通信のための古典チャネルのノードも量子化チャンネルのノードとともに一の送信機あるいは受信機として構成することも、適宜に採用されている構成である(必要があれば引用文献記載事項2-2、2-4等参照)。
してみると、引用発明における各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間で、上記共有乱数生成処理で得られた共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた暗号化通信を行い、本願発明と同様に第2スイッチ手段で選択したリモートノードとの間で「当該共有乱数から抽出された暗号鍵を用いた」「暗号化」通信処理を実行するものとすること、すなわち、上記相違点3に係る構成は、当業者であれば適宜に採用し得た設計的事項にすぎないものである。

(4)よって、本願請求項17に係る発明の構成は引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本願請求項17に係る発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.他の請求項について

(1)本願請求項20に係る発明は、本願請求項17に係る発明と実質的に同一の発明を「プログラム」の発明として表現したものであるから、本願請求項17に係る発明と同様に引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願請求項11に係る発明は、本願請求項17に係る発明と実質的に同一の発明に、更に「前記第1スイッチ手段と前記第2スイッチ手段とを独立に切替制御する」旨の限定を加え、「装置」の発明として表現したものであるところ、上記第2.において述べたように当該限定の意味は明確なものではないため、この限定に上記引用発明との明確な相違点を認め得るものではなく(なお、この限定は引用発明における「前記各メイン信号受信者と前記メイン信号送信者との間での通常の光通信と前記単一光子レベルの通信とが混在し、両者独立に並行して動作し、前記メイン信号の転送が行われている状況下で前記量子鍵配送を行う」ことと同様のことを意味するとも解し得るもので、この点からみても相違点とは認め得るものではない。)、また、格別な技術上の意義も認められない。
したがって、本願請求項11に係る発明も、本願請求項17に係る発明と同様に引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本願請求項1に係る発明は本願請求項11に係る発明と実質的に同一の装置を「センタノード」とした「システム」の発明であるところ、引用文献記載事項1-1記載の如く「ユーザ」と「バックアップセンタ」間の通信を秘匿化するといった1対多の通信における課題が、引用発明の背景となっている点や、スイッチをセンタ装置に設けることが適宜になされていたこと(引用文献記載事項3-1、3-2等参照)等を考慮すれば、本願請求項1に係る発明も引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7.小結
以上のとおり、本願請求項1、11、17、20に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4.むすび
上記第2.のとおり、本願は、明細書及び特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないものであり、また、上記第3.のとおり、本願請求項1、11、17、20に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願について「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものである」との審決をすることはできない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-23 
結審通知日 2014-05-27 
審決日 2014-06-10 
出願番号 特願2006-116097(P2006-116097)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
P 1 8・ 537- WZ (H04L)
P 1 8・ 536- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 山崎 達也
石井 茂和
発明の名称 秘匿通信システムおよびチャネル制御方法  
代理人 桂木 雄二  

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